JP4003387B2 - 防食表面処理法と防食表面処理鋼材およびその使用方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、鋼材の表面に保護性を有する緻密なさびの層を形成させることにより腐食の抑制を図る鋼材の防食表面処理法、その処理を施した防食表面処理鋼材およびその使用方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
鋼材は、産業の各分野で広範囲にわたり使用されており、それぞれの用途に対応した鋼種が開発され、また、適切な防食対策が採られている。
土木・建築構造物等に使用される鋼材についても、材質面から耐食性の向上が図られる一方、種々の表面処理を施すことによる腐食の防止ないしは抑制対策が講じられている。しかしながら、以下に述べるように、必ずしも十分であるとはいえず、特に、海岸地帯や、岩塩などの凍結防止剤が散布される地域等、多量の塩化物が飛来するような環境下においては、腐食が加速され、また、鋼種によっては孔食状に腐食する。
例えば、一般に鋼にP、Cu、Cr等の合金元素を添加することにより大気中での耐食性(耐候性)を向上させることができ、これらの元素を添加した鋼は“耐候性鋼”と呼ばれている。この耐候性鋼は、腐食の進行に伴ってその表面に大気腐食に対して保護作用を有するさび層(以下、「安定さび層」という)が形成され、その後の腐食が著しく抑制されるので、塗装等の防食処理を施す必要がなく、メンテナンスフリーで使用することが可能である。しかし、安定さび層が形成されるまでには数年または10年以上かかり、その間、赤さび等が発生するという問題がある。
このため、従来から鋼表面に安定さび層を早期に形成させようとする研究がなされてきた。例えば、特公昭56− 33991号公報には、Fe3O4 +Fe2O3 、リン酸、およびPb、Ni、Cu、P、Zn、Cr等の単体もしくは化合物の1種以上をブチラール樹脂に含有させ、溶剤と混合して耐候性鋼に塗布し、さらにその上に耐候性皮膜を形成する処理液を塗布する表面処理法が開示されている。また、リン酸を補助化合物(ジンククロメート)とともに加え、これに酸化鉄とPVB(ポリビニルブチラール樹脂)を混合し、さらに溶剤を加えた処理液を耐候性鋼に塗布するさび安定化処理法が報告されている(「表面技術」Vol.47,No.3,1996,P.273)。
しかしながら、海岸地帯や、岩塩などの凍結防止剤が散布される地域等、多量の塩化物粒子が飛来して鋼表面に付着するような環境下においては、上記従来の技術では必ずしも安定さび層が形成されず、腐食が進行し、耐候性鋼を使用したにもかかわらず塗装による防食処理を施さざるを得ない場合があった。さらに、多量の塩化物粒子が飛来する環境において、例えば、建物の水平部や、橋梁では、内桁部のフランジの下面や上面など降雨、結露等により水が溜まりやすい場所では特に腐食が激しく、安定さび層が形成されにくいという問題があった。
本出願人は、硫酸クロムおよび硫酸銅のうちの少なくとも一方を所定量含む有機樹脂塗料を鋼材の表面に塗布して安定さび層を早期に生成させる方法を提案したが(特開平 6−226198号公報)、この方法も特に厳しい海岸地帯において適用するためには、処理効果の一層の向上が望まれていた。
また、コンクリート構造物の鉄筋や鉄骨など、コンクリート中で使用される鋼材は、その表面がコンクリートで覆われているので通常は腐食されにくい。しかし、海岸地帯や、岩塩などの凍結防止剤が散布される地域においては、コンクリート表面に塩化物粒子が付着し、塩化物イオン(Cl-) が水分(H2O) 、酸素(O2)とともにコンクリート中に拡散浸透して鉄筋等の鋼材の表面に達し、その部分におけるCl- 濃度がある臨界濃度を超えると鋼材は腐食する。したがって、このような塩化物が飛来する環境下にあるコンクリート中の鋼材の防食対策としては、Cl- による腐食に対する対策を講じることが必要となる。
従来、コンクリート中で使用される鋼材の防食対策としては、例えば、鉄筋をエポキシ樹脂で被覆する重防食タイプのエポキシ鉄筋が知られている。しかし、これは、鉄筋を数100 μm の厚さのエポキシ樹脂で被覆して腐食環境から遮断することにより防食するものであって、コスト高となるため一般には普及していない。また、鋼にCuおよびWを添加したり、Crを添加して低合金化し、鉄筋そのものの耐食性を高める方法があるが、期待されるほどの防食効果が得られず、あまり使用されていない。
そのため、最近は、コンクリートの表面に重防食塗装を行ってコンクリートそのものを腐食環境から遮断する方法も検討されはじめているが、コスト高となる不利は避けられない。
【0003】
一方、特開平11− 58600号公報には、PO4 3- 、MoO4 2- 、WO4 2- 、VO3 - およびNO3 -のうちのいずれか1種以上を含有する塗料を塗布することにより、さび層のCl- 透過抑制効果を高め、上記環境下におけるコンクリート中の鋼材の耐食性の向上を図る方法が示されている。
また、土中埋設配管や建家の土中基礎鋼構造物等、土中に埋設された鋼材の腐食は、地下水位が比較的低い場合には、雨水がしみ込んで鋼材の表面まで達した水分と地表から拡散してくる酸素の作用により進行する。
このような土中での鋼材の腐食が問題となる場合、その防食方法としては、亜鉛めっきや重防食ライニングを施す等の対策が採られてきた。しかし、重防食ライニングは、完全な防食が可能ではあるがコストの上昇を招き、経済性の観点から、ガス管を除いてはあまり用いられていないのが現状である。また、亜鉛めっきによる防食方法には、めっき目付量にもよるが、長期的には腐食が避けられないという問題があり、土中で使用される鋼構造物に適用し得る安価で、かつ効果的な防食方法の開発が望まれていた。
また、海岸地帯や、岩塩などの凍結防止剤が散布される地域等、多量の塩分が飛来する環境下においては、従来、耐食性に優れるSUS304ステンレス鋼以上の高Cr高Mo含有鋼が使用されてきた。このクラスより下の、例えばCr含有量が13質量%程度以下のCr鋼は赤色のさびを生じ、かつ孔食がかなり深く進行するため、このような飛来塩分量の多い場所では使用されていない。
しかし、ステンレス鋼であっても、使用条件の如何によっては発銹する場合が多く、海岸地帯等の飛来塩分量の多い場所で使用し得る耐食性に優れた鋼材の開発に対する要望が強い。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこのような状況に鑑みなされたもので、主として土木・建築構造物等に使用される鋼材、特に、海岸地帯や、岩塩などの凍結防止剤が散布される地域等、塩化物が飛来する環境下で使用される鋼材の防食表面処理法と、その処理を施した防食表面処理鋼材およびその使用方法を提供することを課題としている。
具体的には、多量の塩化物が飛来する環境下において、特に、水平部でかつ塩化物の付着・蓄積しやすい部位、例えば橋梁では、内桁部のフランジの下面や上面などの結露等により水が溜まるような部位に使用されている耐候性鋼等の低合金鋼や普通鋼等の鋼材の表面に安定さび層を形成させることができる防食表面処理法、およびその処理を施した防食表面処理鋼材を提供することを目的としている。さらに、上記防食表面処理を施した鋼材をコンクリート構造物の鉄筋や鉄骨など、コンクリート中で使用される鋼材(以下、「コンクリート用鋼材」とも記す)として、また、土中に埋設される鋼構造物用の鋼材(以下、「土中埋設構造物用鋼材」とも記す)として使用する方法を提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、20年以上の期間にわたり大気中に曝露した鋼の表面に形成された安定さび層をX線回折等の手段により解析した結果、安定さび層がα−FeOOH (ゲーサイト;一部、母材成分であるCr、Ni、CuなどがFeと置換していると考えられる)からなる微細結晶の緻密な集合により構成されていることを見いだし、このような安定さび層を鋼表面に人工的に形成させる表面処理技術を開発した。前掲の特開平 6−226198号公報で提案した方法がそれである。なお、微細化したα−FeOOH は、X線回折では回折ピークを与えない、いわゆるX線的非晶質物質になる場合もあるが、メスバウアー分光分析では微細なゲーサイトであることが明瞭に確認できる。
しかし、前記のように、飛来塩分量が多い環境下では安定さび層の形成が阻害され、特に水平部の塩分が濃縮し、水が溜まりやすい環境では安定さび層が形成されない場合があることが問題になっていた。
そこで、このような環境下でも安定さび層が形成されるような表面処理技術を開発するべく検討を重ねた結果、鋼表面に塗布する樹脂塗料中に炭酸イオン(CO3 2-) を含有させることにより所望の性能の安定さび層が得られることを見いだした。さらに、Cr3+、Ni2+、Cu2+、Al3+を含有させるとさびが緻密化するとともに、さびが還元されにくくなり、腐食が抑制される。
特に、鋼材の表面にNi2+とSO4 2- を含む特定の樹脂塗料を塗布することにより形成される樹脂被膜はアニオン(特に、Cl-) の鋼材表面への浸透を抑制する効果が大きく、樹脂被膜がCl- の鋼材表面への浸透を防止している間に、Cl- と同時に浸透してくる酸素(O2)と水(H2O) との作用により、鋼材表面に、α−FeOOH (ゲーサイト)のFeの一部がNiで置換されたα−(Fe1-y,Niy)OOH(ニッケル置換ゲーサイト)またはこれとスピネル型酸化物のFeの一部がNiで置換された酸化物(さび)との混合物からなる緻密な安定さび層を形成させ得ることを確認した。
【0006】
前記の樹脂塗料が、Ni2+とSO4 2- に加え、さらにCr3+を含む場合は、鋼材表面に、α−(Fe1-y,Niy)OOH(ニッケル置換ゲーサイト)またはこれとNiを含有するスピネル型のさびとの混合物、およびそれらとさらにα−(Fe1-x,Crx)OOH(クロム置換ゲーサイト)との混合物からなる安定さび層が形成される。
【0007】
前記の樹脂被膜は時間の経過とともに酸化等により劣化するが、安定さび層は緻密でCl- の浸透を抑制する機能を有するので、その後の腐食の進行を効果的に抑制することができる。
この安定さび層は、大気に曝された鋼材表面のみではなく、コンクリート中で使用される鉄筋や鉄骨等の鋼材の表面においても形成される。コンクリート中に拡散浸透する水分(H2O) と酸素(O2)が鉄筋等の鋼材の表面に達し、そこで安定さび層が生成する。このさび層は、α−(Fe1-y,Niy)OOH(ニッケル置換ゲーサイト)またはこれとNiを含有するスピネル型のさびとの混合物であり、樹脂塗料にさらにCr3+が含まれる場合は、それらの他に、それらとα−(Fe1-x,Crx)OOH(クロム置換ゲーサイト)との混合物も含まれる。このα−(Fe1-y,Niy)OOHや、スピネル型酸化物のFeの一部がNiで置換された酸化物、α−(Fe1-x,Crx)OOHは、しばしば結晶が微細化し、いわゆるX線的非晶質物質(アモルファス)となるが、メスバウアー分光分析では安定さびが形成されていることが明瞭に確認できる。
一方、土中での鋼の腐食は、前述したように、地下水位が比較的低い場合には、土中に雨水がしみ込んで鋼材の表面まで達した水分(H2O) と地表から拡散してくる酸素(O2)との作用により進行するので、大気腐食と現象的によく類似しており、上記の大気腐食の場合と同様の緻密な安定さび層が鋼材表面に形成される。
この鋼材の表面にNi2+とSO4 2- を含む特定の樹脂塗料を塗布する処理は、普通鋼材においてのみでなく、Cu、Cr、Ni、Mo等を含む低合金鋼、耐候性鋼、耐海水性低合金鋼の鋼材においても効果を発揮する。また、クロム鋼(ここでは、Crを 1〜13質量%含有する鋼をいう)の表面に上記の樹脂塗料を塗布することによって、その表面にα−(Fe1-y,Niy)OOH(ニッケル置換ゲーサイト)、これとNiを含有するスピネル型のさびとの混合物、さらにはそれらとα−(Fe1-x,Crx)OOH(クロム置換ゲーサイト)との混合物からなる安定さび層が形成され、このさびの層がクロム鋼の孔食の発生およびその後の成長を効果的に抑制することを確認した。
本発明はこれらの知見に基づいてなされたもので、その要旨は下記(1)および(3)の防食表面処理法、(2)および(4)の防食表面処理鋼材、ならびに(5)の防食表面処理鋼材の使用方法にある。
【0008】
(1)鋼材の表面に、塗料の固形分に対して、CO3 2-を0.03〜12質量%含有するとともに、Cr 3+ :1.9〜12質量%、Cu 2+ :2.1〜7質量%およびAl 3+ :0.1〜6質量%のうち一種以上を含有する樹脂塗料を塗布する防食表面処理法。
【0009】
上記の樹脂塗料は、上記範囲の質量%のCr 3+ 、Cu 2+ およびAl 3+ のうちの一種以上を含有するので、鋼材表面に形成されるさびが緻密化するとともに、さびが還元されにくくなって腐食が抑制される。また、0.1〜10質量%のNi 2+ を含有すれば、上記と同様の効果が得られ、腐食が抑制されるので好ましい。
【0010】
(2)鋼材の表面が、CO3 2-を0.03〜12質量%含有するとともに、Cr 3+ :1.9〜12質量%、Cu 2+ :2.1〜7質量%およびAl 3+ :0.1〜6質量%のうち一種以上を含有する樹脂被膜で被覆されている防食表面処理鋼材。
上記の樹脂被膜は、上記範囲の質量%のCr 3+ 、Cu 2+ およびAl 3+ のうちの一種以上を含有するので、前記のように、腐食の抑制効果が大きい。また、0.1〜10質量%のNi 2+ を含有するとすれば、前記と同様に好ましい。
上記(1)および(2)の発明において、「鋼材」は、特に鋼種が限定されるものではなく、普通鋼であっても、耐候性鋼等の低合金鋼であってもよい。いわゆる錆を生成する鋼材であればよい。
【0011】
(3)鋼材の表面に、塗料の固形分に対して、硫酸ニッケルを0.1〜10質量%、CO3 2-を0.01〜12質量%、ブチラール樹脂、または、ブチラール樹脂およびブチラール樹脂と相溶する樹脂の混合物からなる樹脂を10〜39質量%含有する樹脂塗料を塗布する防食表面処理法。
前記の樹脂塗料が、さらに硫酸クロムを0.1〜15質量%含有するものであれば、鋼材表面に形成される安定さび層へのCl-の浸透が抑制され、耐食性が一層良好になる。
【0012】
(4)鋼材の表面が、硫酸ニッケルを0.1〜10質量%、CO3 2-を0.01〜12質量%、ブチラール樹脂、または、ブチラール樹脂およびブチラール樹脂と相溶する樹脂の混合物からなる樹脂を10〜39質量%含有する樹脂被膜で被覆されている防食表面処理鋼材。
樹脂塗料が、さらに硫酸クロムを0.1〜15質量%含有するものであれば、前記のように、耐食性は一層良好である。
【0013】
(5)上記(3)に記載の方法で防食表面処理を施した鋼材を大気環境用、コンクリート用または土中埋設構造物用として使用する防食表面処理鋼材の使用方法。
上記(3)〜(5)の「鋼材」も、鋼種を問わず、耐候性鋼、その他の低合金鋼や普通鋼など、いわゆるさびを生成する鋼であればよい。例えば、炭素鋼、Cu:0.05〜1 質量%、Cr:0.05〜13質量%、Ni: 0.1〜5 質量%、Mo:0.05〜1 質量%のうちの1種以上を含有する鋼、耐候性鋼、耐海水性低合金鋼、または、Crを 13質量%以下含有するクロム鋼であってもよい。
「塗料の固形分」とは、バインダーとしての樹脂と、この樹脂に添加する炭酸イオン(CO3 2-) 、Cr3+、Ni2+、Cu2+、Al3+等の各イオン、硫酸ニッケル、硫酸クロム等(ここでは、前記の各イオンを含め「薬剤」という)、および樹脂に添加する顔料等の塗料添加剤をいい、塗料の調整時に加える溶剤など、塗装後の自然乾燥により揮散して、鋼材表面に形成される樹脂被膜中に残存しないものは含まない。なお、上記のCO3 2- をNa塩やCa塩として添加した場合、Na+ やCa+ は樹脂被膜中に残存することになるが、ここでは、これらの陽イオンは塗料の固形分には含めないこととする。また、CO3 2- の量は、添加の際に用いた塩には関係なく、CO3 2- としての量である。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の防食表面処理法、防食表面処理鋼材、およびその使用方法について詳細に説明する。なお、樹脂に添加するCO3 2-、硫酸ニッケル等の薬剤、塗料を構成する樹脂、鋼材に含まれる合金成分等の「%」はいずれも「質量%」を意味する。
上記(1)に記載の防食表面処理法は、鋼材の表面に、塗料の固形分に対して、CO3 2-を0.03〜12質量%含有するとともに、Cr 3+ :1.9〜12質量%、Cu 2+ :2.1〜7質量%およびAl 3+ :0.1〜6質量%のうち一種以上を含有する樹脂塗料(以下、単に「塗料」ともいう)を塗布する防食表面処理法である。上記のイオンの他にも、0.1〜10質量%のNi 2+ を含有することも好ましい。また、(3)に記載の防食表面処理法は、硫酸ニッケルを0.1〜10質量%、CO3 2-を0.01〜12質量%、ブチラール樹脂、または、ブチラール樹脂およびブチラール樹脂と相溶する樹脂の混合物からなる樹脂を10〜39質量%含有する樹脂塗料を塗布する表面処理方法であり、樹脂塗料に、さらに硫酸クロムが0.1〜15質量%含まれていれば耐食性が一層良好になる。鋼材の表面に、この(1)または(3)の処理を施すことによって、鋼材を使用する過程でその表面に安定さび層を早期に形成させることができる。
以下、塗料の構成要素および塗装方法について説明する。
イ.CO3 2-
塩化物イオンを多量に含む環境下において、腐食過程で生成するFe2+をα−FeOOHとし、鋼表面に安定さび層を早期に生成させるためには、CO3 2-の存在が必須である。
【0015】
CO3 2- を含有する化合物の水溶液の乾湿繰り返し条件下で鋼材の表面に生成するさびは、大半がα−FeOOH であることを本発明者らは確認した。鋼材をNaClやKCl 等のCl- を含む水溶液を鋼材の表面に塗布し、乾湿繰り返しの環境に曝した場合は、γ−FeOOH 、β−FeOOH 、Fe3O4 (上記のNiを含有するスピネル型のさびとは異なる)あるいはγ−Fe2O3 等からなるさびが主であり、安定さび層を構成し得るα−FeOOH の生成は極めて少ない。
【0016】
さらに、水が長い間溜まる状態にある場合は(例えば、橋梁内桁部のフランジの下面や上面)、特にFe3O4が多量に生成するが、CO3 2-が存在すると、Fe3O4の生成が抑制され、安定さび層の形成に有効に作用する。Ni2+、Cr3+、SO4 2-が存在する状態であっても、長期間にわたりCl-を含む水溶液に曝した場合は、特に前記のFe3O4あるいはγ−Fe2O3が多量に生成する。しかし、このときCO3 2-が存在すると、Fe3O4あるいはγ−Fe2O3の生成が抑制される。これは、塩化物イオンを多量に含む強い腐食環境下においては、鋼材の電位は卑で、生成したさびは断続的に還元されてFe3O4が生成するが、CO3 2-の存在下で生成するさびはα−FeOOHとなり、強い腐食環境下においても還元されないためであると考えられる。
鋼材の表面に形成させた樹脂被膜はCl-の鋼表面への浸透をある程度防ぐことができるが、水が溜まる環境においては、Cl-の鋼表面への浸透は比較的速い。このようなCl-が存在する厳しい腐食環境においても、樹脂被膜中にCO3 2-が含まれているとα−FeOOHが生成するが、ほぼ完全な安定さび層を生成させるためには、樹脂被膜に含有させるCO3 2-の量が0.03%以上であることが必要である。一方、12%を超えて含有させると、上記の効果が飽和し、さらに、被膜が水分を吸収しやすく、ポーラスになるため、生成した初期さびの一部が被膜の外面にしみ出して鋼材の外観が損なわれるだけでなく、樹脂被膜自体の可撓性が失われ、かつ密着力が低下する。したがって、上記(1)に記載の防食表面処理法において、CO3 2-の含有量は、塗料の固形分に対して0.03〜12%とする。
一方、上記(3)に記載の防食表面処理法の場合、すなわち、樹脂被膜がCO3 2-に加えて硫酸ニッケルを含有し、かつ、樹脂被膜が、ブチラール樹脂、または、ブチラール樹脂およびブチラール樹脂と相溶する樹脂の混合物からなる樹脂の被膜である場合は、CO3 2-の含有量の下限は0.01%とする。この場合は、CO3 2-の含有量が0.01%以上であれば、ほぼ完全な安定さび層を生成させることができる。
樹脂塗料中にCO3 2-を含有させるには、炭酸ナトリウム(Na2CO3)、炭酸カリウム(K2CO3)、炭酸カルシウム(CaCO3)などの塩を用いればよい。さらに、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)、炭酸水素カリウム(KHCO3)などの重炭酸塩(HCO3 -を含む塩)を用いてもよい。
さらに、樹脂塗料中にPO4 3-、MoO4 2-、WO4 2-、VO3 -およびNO3 -のうちのいずれか1種以上を含有させると、安定さび層へのCl-の浸透に対する抑制効果を高めることができる。
ロ.Cr3+、Ni2+、Cu2+、Al3+
さびの構造が緻密であると、鋼の表面が腐食性化学種から遮蔽されやすく、腐食は軽減する。Cr3+、Ni2+、Cu2+、Al3+はさびを微細化する作用効果を有しており、樹脂塗料中にこれらのイオンを含有させると、α−FeOOHのFeの一部がこれらのイオンにより置換されたα−(Fe1-x,Mx)OOH(ここで、MはCr、Ni、CuまたはAlである)となり、さびが微細化し、緻密になる。さらに、一時的に非常に激しく腐食が進行した際に微量に生成すると考えられるγ−FeOOHのFeの一部が、これらのイオンが存在することにより同様に置換されてγ−(Fe1-x,Mx)OOH(MはCr、Ni、CuまたはAl)となり、これによってさびが還元されにくくなり、腐食が抑制される。なお、このとき、CO3 2-が存在すれば、γ−FeOOHが生成しても、速やかにα−(Fe1-x,Mx)OOH(MはCr、Ni、CuまたはAl)に変化する。
このようなα−(Fe1-x,Mx)OOH(MはCr、Ni、CuまたはAl)が生成するためには、xが0.05以上になる必要があり、そのためには、樹脂塗料中に1.9%以上のCr3+ 、2.1%以上のCu2+および0.1%以上のAl3+のうちの一種以上を含有させることが必要であり、さらに0.1%以上のNi 2+ を含有させることができる。一方、12%を超えるCr3+ 、7%を超えるCu2+、6%を超えるAl3+を含有させると、また、Ni 2+ を含有させる場合に10%を超えると、樹脂被膜自体の可撓性が低下し、被膜が傷つきやすくなるだけでなく、多量の反応副生成物が被膜外へ浸みだして外観が損なわれる場合がある。したがって、上記(1)に記載の防食表面処理法において、樹脂塗料中にCr 3+ 、Cu 2+ 、Al 3+ のうちの一種以上を必ず含有させるとともに、Cr3+含有量を1.9〜12質量%、Cu2+含有量を2.1〜7質量%およびAl3+含有量を0.1〜6質量%とする。また、Ni 2+ を含有する場合は、Ni 2+ 含有量を0.1〜10質量%とするのが好ましい。
樹脂塗料中にCr3+、Ni2+、Cu2+、Al3+を含有させるには、硫酸クロム(Cr2(SO4)3)、硫酸ニッケル(NiSO4)、硫酸銅(CuSO4)、硫酸アルミニウム(Al2(SO4)3)等の硫酸塩、硝酸クロム(Cr(NO3)3)、硝酸ニッケル(Ni(NO3)2)、硝酸銅(Cu(NO3)2)、硝酸アルミニウム(Al(NO3)3)等の硝酸塩など、塩化物以外の塩を用いればよい。特に、硫酸塩を用いれば、次に述べるように、SO4 2-の存在によりゲーサイトが生成されやすくなるので好適である。塩化クロム(CrCl3)等の塩化物を単独で用いるのは安定さび層が生成しないので避けなければならないが、硫酸ナトリウム等の硫酸塩とともにその硫酸塩に対して少量(望ましくは5%以下)用いるのであれば問題はない。
ハ.硫酸ニッケルおよび硫酸クロム
鋼材の表面に形成させる樹脂被膜が健全である限りその被膜によって鋼材表面への塩素イオン(Cl-)の浸透をある程度防ぐことができるが、樹脂皮膜は時間の経過とともに劣化する。しかし、被膜により鋼材とCl-の接触が妨げられている間に、鋼材表面に緻密で欠陥のない連続した安定さび層を形成させることができれば、その後Cl-が被膜を透過してきても、この安定さび層によって鋼材表面への到達を防止し、腐食を軽減し、また孔食の発生およびその後の成長を抑制することができる。
鋼材表面に形成された樹脂被膜中の硫酸ニッケルは、被膜中に水分が浸透してくるとSO4 2-とNi2+に解離して被膜と鋼の界面に到達し、ここで、SO4 2-は水分(H2O)の存在下で鋼と酸素(O2)との反応に関与し、生成するさびの大部分を安定さび層化する。樹脂被膜中にさらに硫酸クロムが含まれている場合、硫酸クロムはSO4 2-とCr3+に解離し、SO4 2-は同様に作用する。一方、Ni2+、Cr3+は、上記の安定さび層の生成反応の速度を速めるとともに、さび層中のFeの一部をNi、さらにはCrで置換して微細なα−(Fe1-y,Niy)OOH(ニッケル置換ゲーサイト)またはこれとNiを含有するスピネル型のさびとの混合物、さらには、それらとα−(Fe1-x,Crx)OOH(クロム置換ゲーサイト)との混合物を生成させる役割を果たす。
【0017】
その結果、鋼材表面にα−(Fe1-y,Niy)OOH(ニッケル置換ゲーサイト)またはこれとNiを含有するスピネル型のさびとの混合物からなる緻密な安定さび層、また、さらには、それらとα−(Fe1-x,Crx)OOH(クロム置換ゲーサイト)との混合物も含まれた緻密な安定さび層が形成される。
前記のα−(Fe1-x,Crx)OOH(クロム置換ゲーサイト)は、Crを含むことによって、Cl-等のアニオンを選択的に透過させるアニオン選択性からカチオンを選択的に透過させるカチオン選択性を有するようになり、Cl-の安定さび層への浸透を防ぐので、海水と直接接するような場合を除けば、Cl-が存在する環境下においても耐食性はかなり良好である。また、α−(Fe1-y,Niy)OOH(ニッケル置換ゲーサイト)はこのようなカチオン選択性とはならないが、Niを含むことによってさびを非常に緻密化し、同時にさびの粒子間をつなぐバインダーとして作用してさび層の凝集力を高め、さび層を防食性の非常に優れた保護性のあるさび層とするものと推察される。
このように、硫酸ニッケル、さらには硫酸クロムは安定さび層の形成に密接に関与しており、上記(3)に記載の防食表面処理法はこの作用効果を利用する方法であるが、Cl-の鋼材表面への到達を防止し得る安定さび層を生成させるためには、樹脂塗料中に、塗料の固形分に対して、0.1%以上の硫酸ニッケルを含有させることが必要である。しかし、10%を超える硫酸ニッケルを含有させると樹脂被膜の欠陥が多くなり、被膜の劣化が速まる。したがって、上記(3)に記載の防食表面処理法において、樹脂塗料中の硫酸ニッケルの含有量は、塗料の固形分に対して0.1〜10%とする。
硫酸ニッケルに加え、さらに硫酸クロムを含有させる場合、硫酸クロムの含有量は、塗料の固形分に対して0.1〜15%とする。含有量が0.1%に満たないと、上述したCrの効果が十分に発揮されず、15%を超えて含有させると、硫酸ニッケルの場合と同様に樹脂被膜の劣化が促進されるからである。なお、硫酸ニッケルと硫酸クロムを同時に含有させることは、両方の性能が引き出されるので好ましいが、それらの合計の含有量が20%を超えると、鋼材の表面に樹脂塗料を塗布した初期の段階で反応副生成物が生じるので好ましくない。
樹脂塗料中に硫酸ニッケルや硫酸クロムを添加するに際し、硫酸ニッケル、硫酸クロムを用いず、例えば、硝酸ニッケル(Ni(NO3)2)や硝酸クロム(Cr(NO3)3)と硫酸ナトリウム(Na2SO4)を用いてもよい。樹脂被膜中に水分が浸透してくると、Ni2+とSO4 2-や、Cr3+とSO4 2-が生成する。しかし、硫酸ニッケルや硫酸クロムを使用すれば、一種類の薬剤の添加で済むという利点がある。なお、塩化ニッケル、塩化クロムのような塩化物は、腐食を促進し、さびの安定化を妨げるので、好ましくない。ただし、同時に添加する硫酸塩(例えば、硫酸ナトリウム)に対して望ましくは5%以下だけ用いるのであれば問題はない。
ニ.樹脂
上記(1)に記載の防食表面処理法で用いるバインダーとしての樹脂は特に制限されず、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、アルキル樹脂、フタル酸樹脂、メラミン樹脂、ブチラール樹脂、フェノール樹脂等を使用することができる。
バインダーとしての樹脂の量が塗料の固形分に対して10%未満では、塗料として鋼材表面に塗布したときに均一な被膜が得られず、強度および付着力が小さくなり、50%を超えると、被膜を通して浸透する水分量が少なくなって安定さび層の生成が遅延する場合がある。したがって、樹脂量は塗料の固形分に対して10〜50%とするのが好ましい。
上記(3)に記載の防食表面処理法で用いるバインダーとしての樹脂は、ブチラール樹脂、または、ブチラール樹脂およびブチラール樹脂と相溶する樹脂の混合物からなる樹脂である。ブチラール樹脂は非常に柔軟性に富み、さび層の形成に伴う鋼材表面の変化に無理なく追従できるので、本発明(上記(3)に記載の発明)の防食表面処理法で用いる樹脂塗料における不可欠の成分である。ブチラール樹脂単独で用いてもよいし、ブチラール樹脂にこの樹脂と相溶する樹脂(例えば、メラミン樹脂やフェノール樹脂)を混合して用いてもよい。
この場合のバインダーとしての樹脂の量は、樹脂塗料の固形分に対して、10%未満では樹脂塗料を鋼材表面に塗布したときに均一な被膜が得られず、また、形成される被膜の強度および付着力が小さい。一方、39%を超えると、被膜を通して浸透する水分量が少なくなり、安定さびの形成が著しく遅延する。したがって、この場合の樹脂量は、10〜39%とする。
樹脂は、CO3 2-や、Cr3+、Ni2+、Cu2+、Al3+、または硫酸ニッケル等を樹脂被膜中に保持するバインダーとしての作用以外に、次のような積極的な防食機能も有している。すなわち、樹脂被膜は元来カチオン選択性(カチオンを選択的に透過させる性質)を有しており、被膜が劣化するまで鋼材表面へのCl-の透過を防ぐ役割を果たす。したがって、その間にCl-の透過しにくい安定さび層を形成させることができる。
ホ.樹脂被膜の形成
上記の樹脂に、前述したCO3 2-を含む炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等の塩や、Cr3+、Ni2+、Cu2+、Al3+を含む硫酸塩や硝酸塩、または硫酸ニッケル、さらには硫酸クロムを所定量添加し、適当量の溶剤または水を加えて塗布作業に適した粘度の樹脂塗料とする。このとき、ベンガラ、二酸化チタン、カーボンブラック、フタロシアニンブルー等の着色顔料、タルク、シリカ、マイカ、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等の体質顔料、酸化クロム、クロム酸亜鉛、クロム酸鉛、塩基性硫酸鉛等の防錆顔料、その他チキソ剤、分散剤、酸化防止剤等、慣用されている添加剤を加えてもよい。
さらに、燐酸あるいはその水溶液を添加してもよく、むしろ燐酸とニッケルイオン、さらにはクロムイオンとが共存することにより、ニッケル置換ゲーサイト、これとNiを含有するスピネル型のさびとの混合物、さらにはクロム置換ゲーサイトの生成が促進されるので、その方が好適である。
上記のようにして得られた樹脂塗料を、通常の塗装と同様にエアスプレー、エアレススプレーあるいは刷毛塗り等、慣用の方法で鋼材表面に塗布する。溶剤または水分は、塗装後、自然乾燥により蒸散するが、水分の一部は、安定さびの生成反応に寄与するものと考えられる。
鋼材としては、前記のように、耐候性鋼に限定されず、その他の低合金鋼や普通鋼など、いわゆるさびを生成する鋼であれば鋼種を問わない。上記(3)に記載の防食表面処理法では、Crを13%以下含有するクロム鋼であってもよい。なお、クロム鋼におけるCrの含有量を13%以下とするのは、耐食性に優れるSUS304ステンレス鋼以上の高Cr高Mo含有鋼ではなく、これよりグレードの低い材料を対象として、これに表面処理を施し、孔食を生じさせずに使用することを前提としているからである。
塗装時の膜厚は、上記(1)に記載の防食表面処理法では、塗料が乾燥固化した後の乾燥膜厚で5〜150μmとなるようにするのが望ましい。この膜厚であれば、安定さび層の生成段階における鋼表面へのCO3 2-や、Cr3+ 、Cu2+、Al3+等のイオンと鉄イオンの供給バランスが最適となる。一方、上記(3)に記載の防食表面処理法では、塗装時の膜厚は、乾燥膜厚で5〜50μmとなるようにするのが望ましく、鋼表面へのニッケルイオン、さらにはクロムイオンと、鉄イオンの供給バランスが最適となる。なお、所定の乾燥膜厚になるように塗料を塗布するには、あらかじめ塗布時の塗膜の膜厚(塗膜厚)と乾燥後の膜厚との関係を求めておき、その関係に基づいて塗布時の塗膜厚を定めればよい。
塗布は、場所を選ばずどこでも施工可能なので、製造元で出荷前に行う場合はもちろん、施工現場で鋼材を切断し、溶接等の加工を行った後の鋼材にも適用することができる。また、1回の塗装で効果が得られるので、経済性にも優れている。なお、コンクリート構造物に使用される鉄筋や鉄骨等に塗布する場合は、コンクリート打設前であれば可能である。また、塗布前の鋼材の表面は、研磨した状態、酸洗したままの状態、ショットブラスト等による処理を施した状態等、いずれであってもよい。表面にさびが発生した状態であってもこの方法の適用は可能である。
鋼材表面に安定さび層が生成した後には鋼材の腐食速度が極めて低くなるため、さらに、上層に着色塗膜を被覆することも可能である。ブラスト処理等を施した表面を有する鋼材に着色塗料を被覆する場合に比べて、その着色塗膜の寿命が延長される。
上述した本発明の防食表面処理法によれば、海岸地帯等の塩化物が飛来する厳しい環境下においても、鋼材の表面に緻密な安定さび層を形成させ、その後の腐食の進行を抑制することができる。また、鋼材としてクロム鋼を用いた場合は孔食の発生および進行を抑制することができる。クロム鋼は、従来、海岸地帯等の飛来する塩分量の多い場所での使用は不適とされていたが、本発明の防食表面処理法を施すことにより、このような場所でも孔食を生じさせずに使用することができる。これによって、安価な材料の提供が可能となる。
さらに、土中に埋設された鋼材の腐食で一番の問題となるのは塩化物による腐食で、通常は鋼材表面に局部電池(マイクロセル)が形成されることにより孔食の形態を採って進行する。しかし、本発明の防食表面処理法を施すことにより、孔食部においても、生成するさびはニッケル置換ゲーサイト、これとNiを含有するスピネル型のさびとの混合物、さらには、クロム置換ゲーサイトからなる緻密な保護性のある安定さびとなるので、孔食の進行は抑制される。
次に、本発明の防食表面処理鋼材は、上述した本発明の防食表面処理法を用いてさび安定化処理を施した鋼材である。すなわち、上記(2)に記載の防食表面処理鋼材は、鋼材の表面が、CO3 2-を0.03〜12質量%含有するとともに、Cr 3+ :1.9〜12質量%、Cu 2+ :2.1〜7質量%およびAl 3+ :0.1〜6質量%のうち一種以上を含有する樹脂被膜で被覆されている防食表面処理鋼材であり、上記(4)に記載の防食表面処理鋼材は、鋼材表面が、硫酸ニッケルを0.1〜10質量%、CO3 2-を0.01〜12質量%、ブチラール樹脂、または、ブチラール樹脂およびブチラール樹脂と相溶する樹脂の混合物からなる樹脂を10〜39質量%含有する樹脂被膜で被覆された鋼材である。上記(2)に記載の防食表面処理鋼材において、樹脂被膜が、0.1〜10質量%のNi2+ を含有するものであっても、上述したように、好ましい。また、上記(4)に記載の防食表面処理鋼材においては、樹脂被膜にさらに硫酸クロムが0.1〜15質量%含まれていると、耐食性が一層良好になる。
素材鋼としては、前述した鋼を使用することができる。
素材鋼の形状について、何ら限定はない。前記のように、切断、溶接等の加工を行った後の鋼材であってもよいし、研磨した状態、酸洗したままの状態、ショットブラスト等による処理を施した状態等、あるいは、表面にさびが発生した状態のものであってもよい。
樹脂、および樹脂に添加するCO3 2-や、Cr3+、Ni2+、Cu2+、Al3+等のイオン、硫酸ニッケル、さらには硫酸クロムの作用効果、含有量の限定理由は、上述したとおりである。
樹脂被膜の膜厚は、前記のように、上記(2)に記載の防食表面処理鋼材では5〜150μm、(4)に記載の防食表面処理鋼材では5〜50μmであるのが望ましい。
本発明の防食表面処理鋼材の使用方法は、上記(4)に記載の防食表面処理鋼材を大気環境中で土木・建築構造物の素材として、鉄筋や鉄骨などコンクリート中で使用されるコンクリート用鋼材として、または土中埋設配管や建家の土中基礎鋼構造物等、土中埋設構造物用鋼材として使用する方法である。
上述したように、海岸地帯や、岩塩などの凍結防止剤が散布される地域等、多量の塩分が飛来する大気環境下であっても、また、そのような場所にコンクリート構造物が建設されている場合、あるいは土中に最初からCl-等の腐食性イオンが多量に含まれている場合であっても、鋼材の表面に安定さび層が形成される。したがって、上記(4)に記載の防食表面処理鋼材は、そのような厳しい環境下においても十分使用することができる。
【0018】
【実施例】
(実施例1)
表1に示す鋼を供試材とし、これに表2に示す前処理を施した後、表4に示す条件で塗装を施した試験片について、海岸地帯で大気暴露試験を行った。なお、表3にバインダーとして用いた樹脂を示す。
【0019】
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
試験片の寸法は、100mm×60mm×3.0mm(厚み)とした。
樹脂塗料は、表3に示したバインダー樹脂にNa2CO3もしくはNaHCO3を添加し、または、さらに、Cr3+、Ni2+、Cu2+、Al3+が表4に示した含有量になるようにCr2(SO4)3、NiSO4、CuSO4、Al2(SO4)3を添加した。また、顔料としてベンガラ、シリカ、硫酸バリウム等を適宜添加し、溶剤(シンナー)を加えて粘度が0.2〜1N・s/m2(200〜1000センチポアズ、B型粘度計で測定)となるように調整した。この樹脂塗料をエアスプレーにより表4に示した所定の膜厚になるように上記寸法の供試材の表面(表裏両面)に塗布し、試験片とした。
【0020】
大気暴露試験は、海岸から100m離れた場所(新潟県直江津市内)で、試験片を水平に設置し、5年間暴露することにより行った。水平に設置した試験片では、降雨時に試験片表面に厚さ300〜500μmの液膜が形成される。
試験結果を表4に併せて示す。
表4において、「平均腐食量」は、試験片表面のさびを除去した後、質量測定を行い、試験前後の質量差から1年当たりの腐食深さとして求めたものである。なお、表示した値は、表裏両面における腐食深さの平均値である。
【0021】
「流れさび/副生成物の有無」については、肉眼観察により流れさびまたは反応副生成物の生成の有無を調査した。また、「安定さび以外のさび生成の有無」については、さびのX線回折を行うとともに、さび層の断面のラマン分光法による構造解析により確認した。X線回折での評価が困難な一部のさびについては、メスバウアー分光分析を実施した。さらに、さび層の断面の偏光顕微鏡観察を行い、安定さび層は消光することにより安定さび層の存在の有無を判定した。なお、「樹脂の種類」の欄の記号は表3の記号に対応し、「供試材」の「鋼種」の欄の記号(数字)は表1の供試材の記号に、「前処理」の欄の記号は表2の記号に対応する。また、「曝露状況」の欄の「H」は試験片を水平に設置したことを表す。
表4に示した結果から、本発明(前記の(2)に記載の防食表面処理鋼材)で規定する条件を満たすNo.5、11、13、14、16〜20および22では、いずれも安定さび層が生成し、腐食量が10μm/y以下と少なく、流れさび等も認められなかった。
【0022】
これに対して、樹脂塗料による塗装をしなかった場合(No.32) は、素材鋼が耐候性鋼であっても安定さび層が生成せず、腐食量が極端に大きく、また、塗装を行っても、樹脂塗料中に本発明で規定する薬剤が所定量含まれていない場合(No.28、29、31)は、安定さび層が生成せず、腐食抑制効果が十分ではなかった。No.30 は、CO3 2- の含有量が上限の12%を超えた場合であるが、初期に流れさびが一部観察された。
(実施例2)
表5に示す化学組成を有する丸棒を供試材として、表6に示す樹脂塗料を塗布した試験片を作製し、これをコンクリート中に打設して得たコンクリートブロック供試体について、乾湿繰り返し試験を実施した。
【0023】
【表5】
【表6】
供試材(丸棒)は、腐食減量が求めやすいように表面のミルスケールをあらかじめ硫酸水溶液により除去して用いた。
【0024】
試験片の寸法は、直径10mm×長さ100mm とした。
樹脂塗料は、表6に示した樹脂、硫酸ニッケル、硫酸クロム、CO3 2-(Na2CO3またはNaHCO3として添加)の他に、顔料として、ベンガラ、シリカ、硫酸バリウム等を適宜添加し、溶剤(シンナー)を加えて粘度が 0.2〜 1N・s/m2(200〜1000センチポアズ、B型粘度計で測定) となるように調整した。この樹脂塗料をエアスプレーにより表6に示した所定の膜厚になるように上記寸法の供試材の表面に塗布し、試験片とした。
図1は、コンクリートブロック供試体の作製方法の説明図で、樹脂塗料を塗布した試験片1をかぶり2を10mmとしてコンクリート3中に打設し、コンクリートブロック供試体を作製した。表7に使用したコンクリートの配合を示す。
【0025】
【表7】
上記のコンクリートブロック供試体について、40℃の人工海水を用いて、〔湿潤状態(wet) 6h→乾燥状態(dry) 6h〕を1サイクルとする乾湿繰り返し試験を3ヶ月間実施した。
試験結果を表6に併せて示す。
表6において、「平均腐食量」は、コンクリート中から取りだした試験片の表面の樹脂被膜およびさびを除去した後、質量測定を行い、試験前後の質量差から1年当たりの腐食深さとして求めたものである。
【0026】
また、「安定さび以外のさびの生成」については、実施例1と同様の方法で判定した。なお、「供試材」の欄の記号(数字)は表5の供試材記号に対応する。
表6に示した結果から、本発明で規定する条件を満たすNo.1〜9 では、いずれもニッケル置換ゲーサイト、およびこれとNiを含有するスピネル型のさびとの混合物、さらにはクロム置換ゲーサイトとの混合物からなる安定さび層が生成し、平均腐食量も0.01mm/y未満であった。これに対し、本発明で規定する条件から外れる No.10〜14では、安定さび層は形成されず、平均腐食量が大きかった。 No.12のCO3 2- を14.0%含有する場合、さびはほとんどがゲーサイト構造を有していたが、初期から腐食副生成物が鋼材表面に現れ、さび層の外面側にゲーサイト以外の錆がわずかに生成していた。
(実施例3)
表8示す化学組成を有する鋼を供試材とし、表9に示す樹脂塗料を塗布した試験片を作製して土中埋設腐食試験を行った。
【0027】
【表8】
【表9】
試験片の寸法は、50mm× 300mm× 5mm(厚み)とした。
樹脂塗料は、表9に示した樹脂、硫酸ニッケル、硫酸クロム、CO3 2-(Na2CO3またはNaHCO3として添加)の他に、顔料として、ベンガラ、シリカ、硫酸バリウム等を適宜添加し、溶剤(シンナー)を加えて粘度が 0.2〜1 N・s/m2 (200〜1000センチポアズ、B型粘度計で測定)となるように調整した。この樹脂塗料をエアスプレーにより表9に示した所定の膜厚になるように上記寸法の供試材の表面に塗布し、試験片とした。
土中埋設腐食試験は、上記の試験片を深さ50cmの土中に水平に4年間埋設することにより行った。なお、腐食を加速するとともに、腐食に対するCl- の作用も想定して、試験の最初に人工雨(3%NaCl水溶液: HClによりpHを 4.5に調整)を 5mm(雨量)散布した。
試験結果を表9に併せて示す。
表9において、「平均腐食量」は、試験後の試験片の表面の樹脂被膜およびさびを除去した後、質量測定を行い、試験前後の質量差から1年当たりの腐食深さに換算したものである。「最大腐食深さ」は、ポイントマイクロメーターを用いて測定した。また、「安定さび以外のさびの生成」については、実施例1と同様の方法で判定した。
表9に示した結果から、本発明で規定する条件を満たすNo.1〜9 では、いずれもニッケル置換ゲーサイト、およびこれとNiを含有するスピネル型のさびとの混合物、さらにはクロム置換ゲーサイトとの混合物からなる安定さび層が生成し、平均腐食量も0.01mm/y未満と小さく、最大腐食深さも浅かったが、本発明で規定する条件から外れる No.10〜13では、安定さび層は形成されず、平均腐食量および最大腐食深さのいずれもNo.1〜9 に比べて大きかった。
(実施例4)
表10に示す化学組成を有する鋼を供試材とし、表11に示す樹脂塗料を塗布した試験片を作製して海岸地帯で大気暴露試験を行った。
【0028】
【表10】
【表11】
供試材の表面は、いずれもエメリー紙(600番) で研磨した。また、試験片の寸法は、60mm× 100mm× 3mm(厚み)とした。
樹脂塗料は、表11に示した樹脂、硫酸ニッケル、硫酸クロム、CO3 2-(Na2CO3またはNaHCO3として添加)の他に、顔料として、ベンガラ、シリカ、硫酸バリウム等を適宜添加し、溶剤(シンナー)を加えて粘度が 0.2〜1 N・s/m2 (200〜1000センチポアズ、B型粘度計で測定)となるように調整した。この樹脂塗料をエアスプレーにより表11に示した所定の膜厚になるように上記寸法の供試材の表面に塗布し、試験片とした。
大気暴露試験は、海岸から100m離れた場所で、地上1mの高さで、水平に設置し、2年間暴露することにより行った。
試験結果を表11に併せて示す。
表11において、「最大孔食深さ」は、ポイントマイクロメーターを用いて測定した。また、「安定さび以外のさびの生成」については、実施例1と同様の方法で判定した。
表11に示した結果から、本発明で規定する条件を満たすNo.1〜13では、いずれもニッケル置換ゲーサイト、およびこれとNiを含有するスピネル型のさびとの混合物、さらにはクロム置換ゲーサイトとの混合物からなる安定さび層が生成し、最大孔食深さは10μm 以下と浅かったが、本発明で規定する条件から外れる No.14〜18では、安定さび層は形成されず、最大孔食深さは15μm 以上と深かった。
【0029】
【発明の効果】
本発明の防食表面処理法によれば、海岸地帯や、岩塩などの凍結防止剤が散布される地域等、塩化物が飛来する厳しい環境下においても鋼材の表面に緻密な安定さび層を形成させ、腐食の進行を抑制することができる。特に、水平部でかつ塩化物の付着・蓄積しやすい部位、例えば橋梁の内桁部のフランジの下面や上面などの結露等により水が溜まるような部位に使用されている鋼材の表面に安定さび層を早期に形成させることができる。
【0030】
したがって、この処理を施した本発明の防食表面処理鋼板は、このような厳しい環境下において、土木・建築構造物等を対象とした比較的安価な鋼材として使用することが可能である。大気環境下のみではなく、例えば、コンクリート構造物の鉄筋や鉄骨等のコンクリート用鋼材、土中配設管や建家の土中基礎構造物等の土中で使用される土中埋設構造物用鋼材としても使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例で用いたコンクリートブロック供試体の作製方法の説明図で、(a)は供試体の縦断面図、(b)は(a)のA−A矢視断面図である。
【符号の説明】
1:試験片
2:かぶり
3:コンクリート
Claims (5)
- 鋼材の表面に、塗料の固形分に対して、CO3 2-を0.03〜12質量%含有するとともに、Cr 3+ :1.9〜12質量%、Cu 2+ :2.1〜7質量%およびAl 3+ :0.1〜6質量%のうち一種以上を含有する樹脂塗料を塗布することを特徴とする防食表面処理法。
- 鋼材の表面が、CO3 2-を0.03〜12質量%含有するとともに、Cr 3+ :1.9〜12質量%、Cu 2+ :2.1〜7質量%およびAl 3+ :0.1〜6質量%のうち一種以上を含有する樹脂被膜で被覆されていることを特徴とする防食表面処理鋼材。
- 鋼材の表面に、塗料の固形分に対して、硫酸ニッケルを0.1〜10質量%、CO3 2-を0.01〜12質量%、ブチラール樹脂、または、ブチラール樹脂およびブチラール樹脂と相溶する樹脂の混合物からなる樹脂を10〜39質量%含有する樹脂塗料を塗布することを特徴とする防食表面処理法。
- 鋼材の表面が、硫酸ニッケルを0.1〜10質量%、CO3 2-を0.01〜12質量%、ブチラール樹脂、または、ブチラール樹脂およびブチラール樹脂と相溶する樹脂の混合物からなる樹脂を10〜39質量%含有する樹脂被膜で被覆されていることを特徴とする防食表面処理鋼材。
- 請求項3に記載の方法で防食表面処理を施した鋼材を大気環境用、コンクリート用または土中埋設構造物用として使用することを特徴とする防食表面処理鋼材の使用方法。
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