JP3297800B2 - 防食表面処理法と防食表面処理鋼材およびその使用方法 - Google Patents
防食表面処理法と防食表面処理鋼材およびその使用方法Info
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Description
理法、詳しくは、鋼材の表面に保護性を有する緻密なさ
びの層を形成させることにより腐食の抑制を図る防食表
面処理法と、その処理を施した防食表面処理鋼材および
その使用方法に関する。
使用されており、それぞれの用途に対応した鋼種が開発
され、また、適切な防食対策が採られている。
いても、材質面から耐食性の向上が図られる一方、種々
の表面処理を施すことによる腐食の防止ないしは抑制対
策が講じられている。しかしながら、必ずしも十分であ
るとはいえず、特に多量の塩化物が飛来するような環境
下においては、腐食が加速され、また鋼種によっては孔
食状に腐食する。
など、コンクリート中で使用される鋼材は、その表面が
コンクリートで覆われているので通常は腐食されにく
い。しかし、海岸地帯や、岩塩などの凍結防止剤が散布
される地域等においては、コンクリート表面に塩化物粒
子が付着し、塩素イオン(Cl- )が水分(H2 O)、
酸素(O2 )とともにコンクリート中に拡散浸透して鉄
筋等鋼材の表面に達し、その部分におけるCl- 濃度が
ある臨界濃度を超えると腐食する。したがって、このよ
うな塩化物が飛来する環境下にあるコンクリート中の鋼
材の防食対策としては、Cl- による腐食に対する対策
を講じることが必要となる。
防食対策としては、例えば鉄筋をエポキシ樹脂で被覆す
る重防食タイプのエポキシ鉄筋が知られている。これ
は、鉄筋を数100μmの厚さのエポキシ樹脂で腐食環
境から遮断することにより防食するものであるが、コス
ト高となるため一般には普及していない。
rを添加して低合金化し、鉄筋そのものの耐食性を高め
る方法がある。しかし、期待されるほどの防食効果が得
られず、あまり使用されていない。
食塗装を行ってコンクリートそのものを腐食環境から遮
断する方法も検討されはじめているが、コスト高となる
不利は避けられない。
造物等、土中に埋設された鋼材の腐食は、地下水位が比
較的低い場合には、雨水がしみ込んで鋼材の表面まで達
した水分と地表から拡散してくる酸素の作用により進行
する。
る場合、その防食方法としては、亜鉛メッキや重防食ラ
イニング等の対策が採られてきた。
が可能ではあるが、コストアップを招き、経済性の観点
から、ガス管を除いてはあまり用いられていないのが現
状である。また、亜鉛メッキによる防食方法には、メッ
キ目付け量にもよるが、長期的には腐食が避けられない
という問題があり、土中で使用される鋼構造物に適用し
得る安価で、かつ効果的な防食方法の開発が望まれてい
た。
が散布される地域等、多量の塩分が飛来する環境下にお
いては、従来、耐食性に優れるSUS304ステンレス
鋼以上の高Cr高Mo含有鋼が使用されてきた。このク
ラスより下の、例えばCr含有量が13%程度以下のク
ロム鋼は、赤色のさびを生じ、かつ孔食が相当深く進行
するため、このような飛来塩分量の多い場所では使用さ
れていない。
件の如何によっては発銹する場合が多く、海岸地帯等の
飛来塩分量の多い場所で使用し得る耐食性に優れた鋼材
の開発に対する要望が強い。
状況に鑑み、主として土木・建築構造物等に使用される
鋼材、特に海岸地帯や岩塩などの凍結防止剤が散布され
る地域等、塩化物が飛来する環境下で使用される鋼材の
防食表面処理法と、その処理を施した防食表面処理鋼材
およびその使用方法を提供することを課題としてなされ
たものである。
施した鋼材をコンクリート構造物の鉄筋や鉄骨など、コ
ンクリート中で使用される鋼材(以下、「コンクリート
用鋼材」とも記す)として、または土中に埋設される鋼
構造物用の鋼材(土中埋設構造物用鋼材)として使用す
る方法、および鋼材としてCr鋼(ここでは、Crを1
〜13質量%含有する鋼をいう)を用い、海岸地帯等の
飛来する塩分量の多い場所でも孔食を生じさせずに使用
し得る防食表面処理法を提供することを目的としてい
る。
題を解決するために検討を重ねた結果、鋼材の表面に保
護性を有する緻密なさびの層(微細なクロム置換ゲーサ
イトからなるさびの層)を形成させる方法が有効である
ことを確認した。
を含む特定の樹脂塗料を塗布することにより形成される
樹脂被膜がアニオン(Cl- )の鋼材表面への浸透を抑
制している間に、同時に浸透してくる酸素(O2 )と水
(H2 O)とにより鋼材表面にα−(Fe1-x 、Cr
x )OOH(クロム置換ゲーサイト)からなる緻密なさ
びの層(以下、「安定さび層」という)を形成させるの
である。樹脂被膜は、時間の経過とともに酸化等により
劣化するが、安定さび層はCl- の浸透を抑制する機能
を有するので、その後の腐食の進行を効果的に抑制する
ことができる。
される鉄筋や鉄骨等の鋼材の表面においても形成され
る。コンクリート中に拡散浸透する水分(H2 O)およ
び酸素(O2 )が鉄筋等鋼材の表面に達し、そこで安定
さび層を生成する。このさび層は、α−FeOOH(ゲ
ーサイト)のFeの一部がCrで置換されたα−(Fe
1-x 、Crx )OOH(クロム置換ゲーサイト)からな
る緻密なさび層である。
に、地下水位が比較的低い場合には、土中に雨水がしみ
込んで鋼材の表面まで達した水分(H2 O)と地表から
拡散してくる酸素(O2 )の作用により進行するので、
大気腐食と現象的によく類似しており、やはり、大気腐
食の場合と同様、鋼材表面にα−(Fe1-x 、Crx )
OOH(クロム置換ゲーサイト)からなる緻密な安定さ
び層が形成される。
塗布することによって、その表面にα−(Fe1-x 、C
rx )OOH(クロム置換ゲーサイト)からなる緻密な
安定さび層を形成させることができ、このさびの層がク
ロム鋼の孔食の発生およびその後の成長を効果的に抑制
することを確認した。
2- 、VO3 -およびNO3 -の酸素酸(オキソ酸)イオン
のうちのいずれか1種以上を含有させておくと、腐食
(クロム鋼の場合は孔食)の抑制に効果があることを知
見した。
の鋼材の防食表面処理法、(3)の防食表面処理鋼材、
ならびに(4)の防食表面処理鋼材の使用方法にある。
対して、硫酸クロム0.1〜15質量%と、ブチラール
樹脂、または、ブチラール樹脂およびブチラール樹脂と
相溶する樹脂の混合物からなる樹脂10〜40質量%を
主成分とし、さらに、MoO 4 2- 、WO 4 2- 、VO 3 - お
よびNO 3 - の酸素酸イオンのうちのいずれか1種以上を
含有する樹脂塗料を塗布することを特徴とする鋼材の防
食表面処理法。
るクロム鋼である上記(1)に記載の鋼材の防食表面処
理法。
15質量%と、ブチラール樹脂、または、ブチラール樹
脂およびブチラール樹脂と相溶する樹脂の混合物からな
る樹脂10〜40質量%を主成分とし、さらにMoO4
2- 、WO4 2- 、VO3 -およびNO3 -の酸素酸イオンの
うちのいずれか1種以上を含有する樹脂被膜で被覆され
ていることを特徴とする防食表面処理鋼材。
処理した鋼材をコンクリート用または土中埋設構造物用
として使用することを特徴とする防食表面処理鋼材の使
用方法。
硫酸クロム、およびMoO4 2- 等の酸素酸イオン、なら
びに樹脂塗料に添加する顔料等の塗料添加剤をいい、樹
脂塗料の調製時に加える溶剤など、塗布後の自然乾燥に
より蒸散して、鋼材表面に形成される樹脂被膜(以下、
単に「被膜」ともいう)中に残存しないものは含まな
い。つまり、「樹脂被膜」をいう。ただし、上記の酸素
酸イオンを、例えばNa塩やK塩として添加した場合、
Na+ やK+ は被膜中に残存することとなるが、ここで
は、これら陽イオンは含めない。
であるが、ここでは、同時にその材質の鋼材をも表す。
なお、この明細書でいうクロム鋼は、Cr含有量が1〜
13質量%の鋼をいう。
処理法(上記(1)および(2)の発明)、(3)の防
食表面処理鋼材、ならびに(4)の防食表面処理鋼材の
使用方法を詳細に説明する。なお、樹脂、硫酸クロムお
よび酸素酸イオンの「%」ならびにクロム鋼の「%」
は、「質量%」を意味する。
被膜によって塩素イオン(Cl- )の鋼材表面への浸透
をある程度防ぐことができる。樹脂被膜は時間の経過と
ともに劣化するが、その間に、樹脂被膜を通過して鋼材
表面に達する酸素(O2 )と水(H2 O)の作用により
鋼材表面にα−(Fe1-x 、Crx )OOH(クロム置
換ゲーサイト)からなる緻密な安定さび層を形成させる
ことができれば、その後Cl- が被膜を透過してきて
も、この安定さび層によって鋼材表面への到達を防止
し、腐食を軽減し、もしくは孔食の発生およびその後の
成長を抑制することができる。そのためには、鋼材表面
に緻密で欠陥のない連続した安定さび層(クロム置換ゲ
ーサイト)を形成させる必要がある。
ロムは、被膜中に水分が浸透してくると、SO4 2- とC
r3+に解離して被膜と鋼の界面に到達する。ここで、S
O4 2- はH2 Oの存在下で鋼とO2 との反応に関与し、
生成するさびのほとんどをα−FeOOH(ゲーサイ
ト)化する。
るとともに、Feの一部をCrで置換して微細なα−
(Fe1-x 、Crx )OOH(クロム置換ゲーサイト)
を生成させる役割を果たす。なお、クロム置換ゲーサイ
トは、Crを含むことによって、アニオン(Cl- 等)
を選択的に透過させるアニオン選択性からカチオンを選
択的に透過させるカチオン選択性を有するようになり、
Cl- の安定さび層への浸透を防ぐので、海水と直接接
するような場合を除けば、耐食性はかなり良好である。
成するクロム置換ゲーサイトの生成に密接に関与してい
る。
表面に安定さび層を生成させるためには、樹脂塗料中に
0.1%以上の硫酸クロムを含有させることが必要であ
る。しかし、15%を超えて含有させると被膜の欠陥が
多くなり、被膜の劣化が速まる。したがって、硫酸クロ
ムの含有量は0.1〜15%とした。
ト)は、Crを含むことによって、アニオン選択性から
カチオン選択性を有するようになり、Cl- の安定さび
層への浸透を防ぐので、腐食(クロム鋼の場合は孔食)
は起こりにくい。
または孔食が発生しても、安定さび層中にSO4 2- が存
在しているため主としてゲーサイト(α−FeOOH)
が生成し、同時にCr3+が存在するので微細なクロム置
換ゲーサイトとなって腐食部または孔食部を覆い、腐食
または孔食の成長は抑制される。
が腐食生成物中にCr3+として含まれるため、孔食部に
生成するさびはCr含有量が高く、それだけ耐食性も高
まる。このように、孔食が発生しても進行することはな
く、他の部位で新たに孔食が発生することとなる。この
プロセスが繰り返されるので、クロム鋼の表面は、全面
が赤さび状態になるが、孔食は生じない。
4 2- を生成する、例えばCr(NO3 )3 とNa2 SO
4 を樹脂塗料中に含有させてもよい。しかし、硫酸クロ
ムを使用すれば、一種類の薬品の添加で済むという利点
がある。なお、CrCl3 のような塩化物は腐食を促進
し、さびの安定化を妨げるので、使用は好ましくない。
ただ、同時に添加する硫酸塩(Na2 SO4 )に対して
少量(5%以下)添加するのであれば問題はない。
ラール樹脂単独、または、ブチラール樹脂およびブチラ
ール樹脂と相溶する樹脂(例えば、メラミン樹脂やフェ
ノール樹脂)の混合物からなる樹脂である。ブチラール
樹脂は非常に柔軟性に富み、さび層の形成に伴う鋼材表
面の変化に無理なく追従できるので、この方法で用いる
樹脂塗料における不可欠の成分である。
の固形分に対して10%未満では、樹脂塗料を鋼材表面
に塗布したときに均一な被膜が得られず、また、形成さ
れる被膜の強度および付着力が小さい。一方、40%を
超えると、被膜を通して浸透する水分量が少なくなり、
安定さび層の形成が著しく遅延する。したがって、樹脂
量は、10〜40%とした。
ての作用以外に、次のように積極的な防食機能も有して
いる。すなわち、樹脂被膜は元来カチオン選択性を有し
ており、その被膜が劣化するまでは鋼材表面への塩素の
透過を防ぐ役割を果たすので、その間にCl- の透過し
にくい安定さびを形成させ得るからである。
剤または水を加えて塗布作業に適した粘度の樹脂塗料と
するのであるが、このとき、酸化鉄、二酸化チタン、カ
ーボンブラック、フタロシアニンブルー等の着色顔料、
タルク、シリカ、マイカ、硫酸バリウム、炭酸カルシウ
ム等の体質顔料、酸化クロム、クロム酸亜鉛、クロム酸
鉛、塩基性硫酸鉛等の防錆顔料、その他増粘剤、分散
剤、反応促進剤等の添加剤を加えてもよい。
てもよく、むしろ燐酸とクロムイオンとが共存すること
によりクロム置換ゲーサイトの生成が促進されるので、
その方が好適である。
常の塗料の塗装と同様にエアスプレー、エアレススプレ
ーあるいは刷毛塗り等、慣用の方法で鋼材表面に塗布す
る。溶剤または水分は、塗布後、自然乾燥により蒸散す
る。
の他の低合金鋼や普通鋼など、いわゆるさびを生成する
鋼であれば鋼種を問わない。Crを1〜13%含有する
クロム鋼であってもよい。
後に5〜50μmとなるようにするのが望ましい。この
膜厚であれば、安定さび層の生成段階における鋼表面へ
のクロムイオンと鉄イオンの供給バランスが最適とな
る。
なので、製造元で出荷前に行う場合はもちろん、例え
ば、施工現場で鋼材を切断し、溶接等の加工を行った後
の鋼材にも適用することができる。また、1回の塗装で
効果が得られるので、経済性にも優れている。なお、コ
ンクリート構造物に使用される鉄筋や鉄骨等に塗布する
場合は、コンクリート打設前であれば可能である。
洗したままの状態、ショットブラストを施した状態等、
いずれであってもよい。また、表面にさびが発生した状
態であってもこの方法の適用は可能である。
して含有する樹脂塗料を鋼材の表面に塗布する方法が前
記(1)の発明の鋼材の防食表面処理法である。
飛来する厳しい環境下においても、鋼材の表面に緻密な
安定さび層を形成させ、その後の腐食あるいは孔食の進
行を抑制することができる。
さび層に何らかの外力が作用してさび層に亀裂や剥離が
生じても、健全部の被膜中に硫酸クロムが残存していれ
ば、健全部から損傷部へ硫酸クロムが供給され、再度安
定さび層を生成する自己補修性能の発現が期待できる。
に、MoO4 2- 、WO4 2- 、VO3 -およびNO3 -の酸素
酸イオンのうちのいずれか1種以上が含まれた樹脂塗料
を用いる鋼材の防食表面処理法である。
鋼材の塩化物による腐食は、コンクリート中に浸透して
きたCl- による鋼材表面の不動態被膜の局部的な破壊
により始まるが、この場合、MoO4 2- 、WO4 2- 、V
O3 -またはNO3 -の酸素酸イオンがさび中に存在してい
ると、不動態被膜の破壊が抑制される。なお、上記の酸
素酸イオンは1種でもよいし、いずれか2種以上であっ
てもよい。
は、樹脂塗料中の酸素酸イオンの含有量が、樹脂塗料の
固形分に対して、合計で0.01%以上含まれる場合に
顕著に認められる。一方、10%を超えて含有させる
と、被膜の欠陥が多くなり、保護性が損なわれる。した
がって、酸素酸イオンの含有量は、合計で0.01〜1
0%とするのが望ましい。
- 量が多い場合は、酸素酸イオンが存在していても不動
態被膜は破壊されるが、SO4 2- の存在下では主として
α−FeOOH(ゲーサイト)が生成し、さらにCr3+
が存在するので微細なクロム置換ゲーサイトとなって、
孔食部を覆い、それ以降の腐食の進行が抑制される。
問題となるのは、マクロセルによる孔食である。アノー
ドである孔食部においても、生成するさびは、硫酸クロ
ムの作用によって大半がクロム置換ゲーサイトからなる
ものであり、保護性を有するが、さらに、さび中に、M
oO4 2- 、WO4 2- 、VO3 -またはNO3 -の酸素酸イオ
ンが存在すると、Cl- に対するバリヤーとなり、鋼表
面へのCl- の透過が抑制されるので、腐食の進行も抑
制される。なお、上記の酸素酸イオンは1種でもよい
し、いずれか2種以上であってもよい。
は、上記のコンクリート用鋼材の場合と同様で、樹脂塗
料中に酸素酸イオンが合計で0.01%以上含まれる場
合に顕著に認められる。一方、10%を超えて含有させ
ると、被膜の欠陥が多くなり、保護性が損なわれる。し
たがって、酸素酸イオンの含有量は、合計で0.01〜
10%とするのが望ましい。
し、孔食の多発化現象として観察される。しかし、上述
したように、硫酸クロムを含有する樹脂塗料をクロム鋼
の表面に塗布することによって、孔食が生じても、SO
4 2- とCr3+の作用により生成する微細なクロム置換ゲ
ーサイトが孔食部を覆い、孔食の進行が抑制される。こ
のとき、樹脂あるいはさび中に、MoO4 2- 、WO
4 2- 、VO3 -またはNO3 -の酸素酸イオンが含まれてい
ると、これらのイオンが孔食のインヒビターとして作用
し、孔食の発生、成長ともに緩和される。なお、上記の
酸素酸イオンは1種でもよいし、いずれか2種以上であ
ってもよい。
イオンの腐食抑制作用は、樹脂塗料中に酸素酸イオンが
合計で0.01%以上含まれる場合に認められる。一
方、10%を超えて含有させると、被膜の欠陥が多くな
り、保護性が損なわれる。したがって、酸素酸イオンの
含有量は、合計で0.01〜10%とするのが望まし
い。
素酸イオンを含有させるには、Na塩、K塩等として添
加すればよい。
記の酸素酸イオンと同様に安定さび層へのCl- の浸透
抑制作用を有することはいうまでもない。
鋼材表面の樹脂被膜でCl- の浸透がある程度抑制さ
れ、被膜を通過して浸透してくるCl- は酸素酸イオン
によりその攻撃性が弱められる。また、生成するさび層
はそのほとんどが微細なクロム置換ゲーサイトとなって
おり、樹脂被膜が劣化した後の腐食がこのさび層により
抑制されるが、酸素酸イオンがさび層に含まれることに
よってさび層のカチオン選択性が一層強められ、Cl-
の透過性が弱められる。このため、Cl- による腐食あ
るいは孔食が起こりにくくなる。
明の方法において、鋼材がCrを1〜13%含有するク
ロム鋼の場合で、上記のように、安定さび層を形成させ
ることができる。
のは、前述したように、耐食性に優れるSUS304ス
テンレス鋼以上の高Cr高Mo含有鋼ではなく、これよ
りグレードの低い材料を対象として、これに表面処理を
施し、孔食を生じさせずに使用することを前提としてい
るからである。
されるので、従来、不適とされている海岸地帯等の飛来
する塩分量の多い場所でも孔食を生じさせずに使用する
ことができ、これによって、より安価な材料の提供が可
能となる。
上述した(1)の発明の方法によるさび安定化処理を施
した鋼材、すなわち、表面が、所定量の硫酸クロムと、
ブチラール樹脂、または、ブチラール樹脂およびブチラ
ール樹脂と相溶する樹脂の混合物からなる樹脂を主成分
とし、さらにMoO4 2- 、WO4 2- 、VO3 -およびNO
3 -の酸素酸イオンのうちのいずれか1種以上を含有する
樹脂被膜で被覆された鋼材である。
に限定されず、その他の低合金鋼や普通鋼など、いわゆ
るさびを生成する鋼を用いることができる。Crを1〜
13%含有するクロム鋼であってもよい。
前記のように、切断、溶接等の加工を行った後の鋼材で
あってもよいし、研磨した状態、酸洗したままの状態、
ショットブラストを施した状態、あるいは、表面にさび
が発生した状態のものであってもよい。
酸素酸イオンの作用効果、ならびにそれらの含有量の限
定理由は、上述したとおりである。
0μmであるのが望ましい。
の方法で防食表面処理した鋼材、すなわち前記(3)の
発明の防食表面処理鋼材をコンクリート用鋼材として、
または土中埋設構造物用鋼材として使用する方法であ
る。
岸地帯等の多量の塩化物が飛来する場所に建設されてい
る場合でも、あるいは土中に最初からCl- 等の腐食性
イオンが多量に含まれている場合であっても、安定さび
層の形成が可能である。したがって、コンクリート構造
物が海岸地帯等の多量の塩化物が飛来する場所に建設さ
れる場合でも、あるいは土中に最初からCl- 等の腐食
性イオンが多量に含まれる場合であっても十分使用する
ことができる。
に示す樹脂塗料を塗布した試験片(直径10mm×長さ
100mm)をそれぞれ1本ずつ図1に示すようにコン
クリート中に打設して、コンクリートブロック供試体を
作製した。表3に使用したコンクリートの配合を示す。
なお、供試材(丸棒)は、腐食減量が求めやすいように
表面のミルスケールを硫酸によりあらかじめ除去して用
いた。
ムおよび酸素酸イオンの他に、顔料として、ベンガラ、
シリカ、硫酸バリウム等を適宜添加し、溶剤(シンナ
ー)を加えて粘度(B型粘度計測定)が200〜100
0センチポアズ(cps)となるように調製した。この
樹脂塗料をエアースプレーにより表2に示した所定の膜
厚になるように上記寸法の供試材の表面に塗布して試験
片とした。
0℃の人工海水を用いて、〔wet:6h→dry:6
h〕を1サイクルとする乾湿繰り返し試験を3ヶ月間行
った。
クリート中から取り出した試験片表面の被膜およびさび
を除去した後、重量測定を行い、試験前後の重量差から
1年当たりの腐食深さとして求めたものである。また、
「クロム置換ゲーサイト生成の有無」は、さびの元素分
析を行うとともに、さび層の断面のラマン分光法による
さびの同定を行うことによって確認した。さらに、さび
層の断面の偏光顕微鏡観察により安定さび層の存在をチ
ェックした(安定さび層は消光)。なお、「供試材の材
質」の欄の数字は、表1のNo.(すなわち材質)に対
応する。
1〜7)では、いずれもクロム置換ゲーサイトからなる
安定さび層が生成し、平均腐食量も0.01mm/y未
満であるのに対し、比較例(No.8〜12)では安定
さび層は形成されず、腐食量が大きかった。
O3 -、CO3 2- 等の他の酸素酸イオンを添加した樹脂塗
料を供試材表面に塗布した場合についても同様の効果が
認められた。
とし、表5に示す樹脂塗料を塗布した試験片を作製して
土中埋設腐食試験を行い、試験後の腐食量を測定した。
5mm(厚み)とした。
ムおよび酸素酸イオンの他に、顔料としてベンガラ、シ
リカ、硫酸バリウム等を適宜添加し、溶剤(シンナー)
を加えて粘度が200〜1000センチポアズ(cp
s)となるように調製した。この樹脂塗料をエアースプ
レーにより表2に示した所定の膜厚になるように上記寸
法の供試材の表面に塗布して試験片とした。
試験片を深さ50cmの土中に水平に4年間埋設するこ
とにより行った。なお、腐食を加速するとともに、腐食
に対するCl- の作用も想定して、試験の最初に、人工
雨(3%NaCl水溶液)を5mm(雨量)散布した。
腐食量」は、試験後の試験片表面の被膜およびさびを除
去した後、重量測定を行い、試験前後の重量差から1年
当たりの腐食深さとして求めたものであり、「最大腐食
深さ」は、ポイントマイクロメーターを用いて測定し
た。また、「クロム置換ゲーサイト生成の有無」は、さ
びの元素分析を行うとともに、さび層の断面のラマン分
光法によるさびの同定を行うことによって確認した。さ
らに、さび層の断面の偏光顕微鏡観察により安定さび層
の存在をチェックした。
1〜7)では、いずれもクロム置換ゲーサイトからなる
安定さび層が生成し、平均腐食量も0.01mm/y未
満と小さく、最大腐食深さも小さかったが、比較例(N
o.8〜12)では安定さび層は形成されず、平均腐食
量および最大腐食深さのいずれも本発明例に比べ大きか
った。
O3 -、CO3 2- 等の他の酸素酸イオンを添加した樹脂塗
料を供試材表面に塗布した場合についても同様の効果が
認められた。
とし、表7に示す樹脂塗料を塗布した試験片を作製し
て、海岸地帯(海岸から100m離れた場所(新潟県直
江津市内))で2年間の大気暴露試験を行い、試験後の
最大孔食深さを測定した。
3mm(厚み)とした。
ムおよび酸素酸イオンの他に、顔料としてベンガラ、シ
リカ、硫酸バリウム等を適宜添加し、溶剤(シンナー)
を加えて粘度が200〜1000センチポアズ(cp
s)となるように調製た。この樹脂塗料をエアースプレ
ーにより表7に示した所定の膜厚になるように上記寸法
の供試材の表面に塗布して試験片とした。なお、供試材
の表面はいずれもエメリー紙(600番)で研磨した。
イントマイクロメーターを用いて測定した。また、「ク
ロム置換ゲーサイト生成の有無」は、さびの元素分析を
行うとともに、さび層の断面のラマン分光法によるさび
の同定を行うことによって確認した。さらに、さび層の
断面の偏光顕微鏡観察により安定さび層の存在をチェッ
クした。なお、「供試材の材質」の欄の数字は、表6の
No.(すなわち材質)に対応する。
1〜8)では、いずれもクロム置換ゲーサイトからなる
安定さび層が生成し、最大孔食深さは7μm以下と浅か
ったが、比較例(No.9〜13)では安定さび層は形
成されず、最大孔食深さは20μm以上と深かった。
O3 -、CO3 2- 等の他の酸素酸イオンを添加した樹脂塗
料を供試材表面に塗布した場合についても同様の効果が
認められた。
ば、海岸地帯や、岩塩などの凍結防止剤が散布される地
域等の塩化物が飛来する環境下においても鋼材の表面に
緻密な安定さび層を形成させ、腐食の進行を抑制するこ
とができる。したがって、この処理を施した本発明の防
食表面処理鋼材は、このような厳しい環境下において
も、土木・建築構造物等を対象とした比較的安価な鋼材
として使用することが可能である。
等のコンクリート用鋼材、あるいは、土中埋設配管や建
屋の土中基礎鋼構造物等の土中で使用される土中埋設構
造物用鋼材として使用することができ、また、耐食性に
優れた高Cr高Mo鋼等に代わる安価な代替材として飛
来する塩分量の多い場所でも孔食を生じさせずに使用す
ることができるクロム鋼の提供が可能となる。
作製方法の説明図で、(a)は供試体の縦断面図、
(b)は(a)のA−A矢視断面図である。
Claims (4)
- 【請求項1】鋼材の表面に、樹脂塗料の固形分に対し
て、硫酸クロム0.1〜15質量%と、ブチラール樹
脂、または、ブチラール樹脂およびブチラール樹脂と相
溶する樹脂の混合物からなる樹脂10〜40質量%を主
成分とし、さらに、MoO 4 2- 、WO 4 2- 、VO 3 - およ
びNO 3 - の酸素酸イオンのうちのいずれか1種以上を含
有する樹脂塗料を塗布することを特徴とする鋼材の防食
表面処理法。 - 【請求項2】鋼材が、Crを1〜13質量%含有するク
ロム鋼である請求項1に記載の鋼材の防食表面処理法。 - 【請求項3】鋼材の表面が、硫酸クロム0.1〜15質
量%と、ブチラール樹脂、または、ブチラール樹脂およ
びブチラール樹脂と相溶する樹脂の混合物からなる樹脂
10〜40質量%を主成分とし、さらにMoO4 2- 、W
O4 2- 、VO3 -およびNO3 -の酸素酸イオンのうちのい
ずれか1種以上を含有する樹脂被膜で被覆されているこ
とを特徴とする防食表面処理鋼材。 - 【請求項4】請求項1に記載の方法で防食表面処理した
鋼材をコンクリート用または土中埋設構造物用として使
用することを特徴とする防食表面処理鋼材の使用方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP22458197A JP3297800B2 (ja) | 1997-08-21 | 1997-08-21 | 防食表面処理法と防食表面処理鋼材およびその使用方法 |
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Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH1157612A JPH1157612A (ja) | 1999-03-02 |
JP3297800B2 true JP3297800B2 (ja) | 2002-07-02 |
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JP4665272B2 (ja) * | 1999-10-28 | 2011-04-06 | Jfeスチール株式会社 | 加工性および耐候性に優れる表面処理鋼板 |
JP5644046B2 (ja) * | 2008-12-18 | 2014-12-24 | Jfeスチール株式会社 | 土中埋設用鋼材 |
JP6552908B2 (ja) | 2015-08-07 | 2019-07-31 | 株式会社東芝 | 発振器 |
-
1997
- 1997-08-21 JP JP22458197A patent/JP3297800B2/ja not_active Expired - Lifetime
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH1157612A (ja) | 1999-03-02 |
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