JP3345023B2 - 鋼材の表面処理剤および表面処理鋼材 - Google Patents

鋼材の表面処理剤および表面処理鋼材

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三 神田
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    • C23C2222/10—Use of solutions containing trivalent chromium but free of hexavalent chromium

Description

【発明の詳細な説明】 発明の属する技術分野 本発明は鋼材の新規な表面処理剤に関するものであ
り、海岸地域等塩分の影響で厳しい大気腐食環境に対し
ても保護作用を有する錆層（以下、耐候性安定錆とい
う）を早期に形成することができる表面処理剤及びその
表面処理剤を塗付した鋼材に関するものである。
従来の技術 一般に鋼にP,Cu,Cr,Ni等の元素を添加することによ
り、大気中における耐食性を向上させることができる。
これらの低合金鋼は耐候性鋼と呼ばれるが、屋外にお
いて数年で腐食に対して保護性のある錆（以下耐候性錆
という）を形成するため塗装等の耐食処理作業を不要と
するいわゆるメインテナンスフリー鋼である。
しかしながら、耐候性錆が形成されるまでに十数年か
かるため、それまでの期間中に赤錆や黄錆等の浮き錆や
流れ錆を生じてしまい、外見的に好ましくないばかりで
なく周囲環境の汚染原因にもなるという問題点を残して
いる。特に海塩粒子飛来環境においては、この傾向が著
しいばかりではなく、耐候性錆が形成されないことが問
題であった。
この問題については、例えば特開平１−142088号にあ
るように、リン酸塩被膜を形成させる表面処理方法が提
案されている。
しかし、リン酸塩被膜を形成させる以前に適当な前処
理を施す必要があるため処理の内容が複雑であり、また
鋼材の溶接が必要な場合は溶接部に処理を施すことは容
易ではなく、建築構造物には適用が困難である等の問題
がある。
また、この方法により、塩分飛来環境の厳しい大気腐
食環境で耐候性錆が形成される点については、疑問が残
る。
発明が解決しようとする課題 本発明はかかる従来技術の現状に鑑み創案されたもの
であり、その課題は、耐候性鋼等の低合金鋼や普通鋼等
のいわゆる錆を生成する鋼材の表面あるいは錆層に塗付
することにより、早期に鋼材表面に耐候性安定錆を形成
できる表面処理剤及びその表面処理剤を塗付した鋼材を
開発することにある。
課題を解決するための手段 本発明者等は、前記課題を達成するために20年以上暴
露して生成させた安定錆を解析した結果、耐候性安定錆
がα−（Fe,Cr）OOH（以下クロムゲーサイトという）か
らなる微細結晶の緻密な集合により構成されていること
を解明した。
このため、耐候性安定錆を早期に生成して浮き錆や流
れ錆の生成を抑えるためには、緻密なクロムゲーサイト
生成をいかに促進させるかがポイントとなる。
また、本発明者等は、前記課題を解決する具体的手法
として、硫酸クロムとブチラール樹脂からなる処理剤を
鋼材表面あるいは鋼材の錆層に被覆することにより、流
れ錆等の発生を伴わずに耐候性安定錆を早期に形成させ
る手法を見出した。
本発明は、上記知見により完成したものであり、その
要旨は以下のごとくである。
即ち、本発明は硫酸クロムを0.1〜15質量％、ブチラ
ール樹脂またはブチラール樹脂とブチラール樹脂と相溶
する樹脂の混合物を含むバインダー樹脂を10〜40質量％
含有することを特徴とする鋼材の表面処理剤である。
発明の実施の形態 以下、本発明について詳細に説明する。
（１）硫酸クロムの効果 錆の構造が緻密であれば物理的に大気腐食環境を遮断
し易く、また浮き錆や流れ錆の根本的な原因であるFeイ
オンの溶出を軽減する。
しかしながら、錆中に割れや細孔があると水や酸素の
供給経路となり、錆の防食性が低減する。このため緻密
で連続した錆層を形成させる必要がある。
硫酸クロムは、被膜中に水分が浸透してきたときに、
クロムイオンと硫酸イオンになり被膜／鋼界面に到達す
る。硫酸イオン及び水分は鋼を腐食させ鉄イオンを生成
する。クロムイオンは、この鉄イオンを耐候性安定錆の
主成分であるクロムゲーサイトにする効果を有する。
また、硫酸イオンも初期の鉄イオン生成の加速のみな
らず、安定錆層の微細・緻密化に関与していると考えら
れる。
塩分の飛来するような厳しい大気腐食環境中でもこの
効果を得るには、処理剤中に0.1〜15質量％の硫酸クロ
ムを添加する必要がある。
0.1質量％以上の添加により、この処理剤を塗付し、
乾燥後の被膜を表面に有する鋼材が大気腐食環境におか
れたとき、早期に生成する耐候性安定錆には腐食性アニ
オンの透過を抑制する効果が現れる。
また、上限を15質量％に限定したのは、生成する耐候
性安定錆の腐食性アニオン透過抑制効果が低下すること
により、厳しい腐食環境において防食作用が保証できな
いからである。ここでいう硫酸クロムの質量割合は、溶
剤等の揮発分を除いた処理剤固形分に対する割合を意味
する。
（２）バインダー樹脂の効果 本発明において、使用されるバインダー樹脂は、ブチ
ラール樹脂単独、またはブチラール樹脂とブチラール樹
脂と相溶する樹脂（例えばメラミン樹脂やフェノール樹
脂等）の混合物を例示することができる。
処理剤中のバインダー樹脂量が10質量％未満では、均
一な被膜が得られず、また形成された被膜も供与に耐え
る強度と付着力を持ち合わせない。
一方バインダー樹脂量が40質量％を越えると被膜に浸
透する水分量が少なくなり、耐候性安定錆の形成が著し
く遅延する。
また、ブチラール樹脂は非常に柔軟性に富み錆層形成
に伴う鋼表面の変状に無理なく追従するため、本処理剤
では不可欠な成分である。
なお、処理剤は液状化して塗付するが、その他必要な
有機溶剤を含むことは勿論である。
また、本発明における処理在中には、硫酸クロムの他
に、酸化鉄、二酸化チタン、カーボンブラック、フタロ
シアニンブルー等の着色顔料、タルク、シリカ、マイ
カ、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等の体質顔料、酸化
クロム、クロム酸亜鉛、クロム酸鉛、塩基性硫酸塩等の
防錆顔料、その他増粘剤、分散剤、反応促進剤等の添加
剤を含むことができる。
本発明の処理剤の使用時には、塗付作業に適した粘度
に有機溶剤で調整されていることは言うまでもないこと
であり、溶剤は塗付後自然乾燥により蒸散していく。
さらには、燐酸あるいはその水溶液を添加しても良く
むしろ燐酸とクロムイオンと共存することにより、クロ
ムゲーサイトの生成を促進させる効果を有するため、好
適である。
なお、ここで述べた処理剤が乾燥固化した後には、５
〜50μｍの膜厚になれば、耐候性安定錆生成段階でクロ
ムイオンと鉄イオンの供給バランスが最適であり、望ま
しい膜厚である。
以上述べてきた処理剤は、通常の塗装方法と同じくエ
アスプレー、エアレススプレーあるいは刷毛塗り等慣用
の方法で塗付することができるため、場所を選ばず施工
が可能である。
また、１回の塗付作業で効果が得られるため、経済性
にも優れている。さらには、現地塗付が可能なため、現
地での鋼材の切断、溶接等の加工後や、表面に錆の発生
している鋼材にも対応できる。
耐候性安定錆が生成した後には、鋼材の腐食速度が極
めて低くなるため、さらに上層に着色塗膜を被覆するこ
とも可能で、ブラスト等の表面を有する裸仕様鋼材に着
色塗膜を被覆する場合に比べて、その着色塗膜の寿命延
長効果も期待できる。
なお、本処理剤を塗付する鋼材は、特に鋼種を限定さ
れるものではなく普通鋼であっても、耐候性鋼等の低合
金鋼であっても、いわゆる錆を生成するものであれば構
わない。
こうして生成された保護性の錆層に何らかの外力が作
用して亀裂の生成や剥離を生じても、健全部の被膜中に
硫酸クロムが残存しておれば、その損傷部において健全
部からの硫酸クロムの供給があり、再度耐候性安定錆を
生成する自己修復性能が期待できるのはいうまでもな
い。
実施例 本発明の処理前の優位性を以下の実施例により説明す
るが、本発明はこれらに限定されるものではない。
まず、本発明の実施例を用いた試験鋼の化学成分を表
１に、また鋼材の前処理を表２に示す。試験片の寸法は
150×70×3.2mmとした。
表３に試験に用いた処理剤の組成、サンプルの作製条
件及び試験結果を示す。
表３に示す樹脂、顔料、添加剤配合組成に適当量の溶
剤を加えて粘度（Ｂ型粘度計測定）を200〜1000CPSにし
た処理剤を作製し、エアースプレーにより塗付した。
このサンプル試験片を、水平設置し人工海水の原粉末
を1mg/dm2となるよう毎日試験片上面に散布するという
同一条件のもとに、海岸より100mの位置にある新潟県直
江津市の海岸地帯に１年間暴露した。
残存被膜および錆を除去後、重量測定し、予め測定し
ていた塗付前の鋼材重量から減ずることにより、腐食減
量を測定した。表３の結果には、測定した腐食減量の半
分である片面の平均腐食減量を示した。
Ｙのサンプル（実施例４）については、塗付しないサ
ンプルの平均腐食減量を求めて、初期暴露による錆生成
量の平均値を計算し、これをブランク値として差し引い
た。
また暴露後のサンプルについて、生成した錆の断面を
ラマン分光法で構造解析するとともに錆中元素分析を行
うことにより、クロムゲーサイト層の生成有無を確認し
た。クロムゲーサイト層の生成状況に合わせて以下のよ
うに表示した：○……生成、△……痕跡あり、×……生
成なし。
また碁盤面付着性はJIS K5400−8.5.1（すきま間隔2
mm）で評価し、［10（良い）〜０（悪い）］のように表
示した。
その結果、実施例１〜６は、流れ錆の発生は認められ
ず、腐食減量が小さく且つ下地鋼面部分に耐候性安定錆
（クロムゲーサイト層）が生成しているのが認められ
た。
特に実施例４のように下地に錆が発生している鋼材
や、実施例５のように普通鋼に被覆した場合でもその効
果を発揮することが認められる。
一方、比較例7,8に示すように、硫酸クロムの添加量
が適正範囲外のものは、耐候性安定錆の生成が不十分で
あったり腐食減量が大きかったり、また被膜の付着性が
低かったり、外観状態が良くなかったり、処理被膜とし
ての適正に欠ける。
比較例９に示すように、バインダー樹脂がブチラール
樹脂以外では、腐食減量が大きくなり、また被膜は粗く
更に細かい割れが生じ、付着力も低く、処理剤としての
適正に欠ける。
比較例10に示すように、バインダー樹脂量が少ないと
被膜が粗く、付着性も低く処理剤としての適性に欠け
る。
比較例11に示すように、バインダー樹脂量が多くなり
過ぎると、クロムゲートサイト層の生成が悪くなる。
発明の効果 以上詳述したように、本発明の処理剤は硫酸クロムを
0.1〜15質量％、ブチラール樹脂またはブチラール樹脂
とブチラール樹脂と相溶する樹脂の混合物を含むバイン
ダー樹脂10〜40質量％を含有するため、これを鋼材に塗
付乾燥することにより、厳しい大気腐食環境中でも赤錆
や黄錆等の浮き錆や流れ錆を生じることなく、鋼材表面
に耐候性安定錆層を早期に形成させる鋼材の耐食性を確
保することができる。特に厳しい腐食環境である海岸近
傍の海塩粒子飛来環境でもその効果を発揮するため、非
常に有用な処理剤と言える。
土木或いは建築構造物用鋼材に本発明の処理剤を適用
した場合、赤錆や黄錆等の浮き錆や流れ錆を生じること
なく、早期に耐候性安定錆を形成させることができるた
め、鋼材の防食に関するメンテナンスが不要になり、社
会資本の充実に大きく寄与することが期待される。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 神田 三 兵庫県尼崎市南塚口町６丁目10番73号 神東塗料株式会社内 (72)発明者 小野 博 兵庫県尼崎市南塚口町６丁目10番73号 神東塗料株式会社内 (56)参考文献 特開 平６−136557（ＪＰ，Ａ) 特開 平５−156466（ＪＰ，Ａ) (58)調査した分野(Int.Cl.7，ＤＢ名) C23C 22/00 - 22/86

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項１】硫酸クロムを0.1〜15質量％、ブチラール
    樹脂またはブチラール樹脂とブチラール樹脂と相溶する
    樹脂の混合物を含むバインダー樹脂を10〜40質量％含有
    することを特徴とする鋼材の表面処理剤。
  2. 【請求項２】請求の範囲１記載の表面処理剤で処理した
    鋼材。
JP53182098A 1997-01-27 1998-01-22 鋼材の表面処理剤および表面処理鋼材 Expired - Lifetime JP3345023B2 (ja)

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