JPH11217676A - 鋼材の表面処理剤および表面処理鋼材 - Google Patents

鋼材の表面処理剤および表面処理鋼材

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JPH11217676A
JPH11217676A JP1652798A JP1652798A JPH11217676A JP H11217676 A JPH11217676 A JP H11217676A JP 1652798 A JP1652798 A JP 1652798A JP 1652798 A JP1652798 A JP 1652798A JP H11217676 A JPH11217676 A JP H11217676A
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steel
chromium
sulfate
steel material
rust
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JP1652798A
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Takashi Doi
教史 土井
Kyoji Matsuda
恭司 松田
Hiroo Nagano
博夫 長野
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Sumitomo Metal Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】耐候性鋼や普通鋼などの鋼材の表面に耐候性安
定錆を早期に形成することができる表面処理剤、および
この表面処理剤が塗布された表面処理鋼材を提供する。 【解決手段】(1)硫酸クロムおよび硫酸ナトリウムの
いずれか一方または両方が塗料の固形分中に合計で1〜
15質量%含まれる有機樹脂塗料からなる鋼材の表面処
理剤。塗料の固形分中に少なくとも硫酸クロムが1質量
%以上含まれる場合は普通鋼にも適用できる。(2)表
面に、硫酸クロムおよび硫酸ナトリウムのいずれか一方
または両方が合計で1〜15質量%含まれる塗膜を有す
る表面処理鋼材。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、鋼材の表面処理剤、特
に海岸地帯等の塩分を含む厳しい大気腐食環境において
も保護作用を有する錆層(以下、「耐候性安定錆」とい
う)を鋼材表面に早期に形成することができる表面処理
剤、およびこの表面処理剤が塗布された表面処理鋼材に
関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、鋼にP、Cu、Cr、Ni等を
添加することにより、大気中における鋼の耐食性を向上
させることができる。これらの低合金鋼は耐候性鋼と呼
ばれ、屋外において数年で鋼の表面に耐候性安定錆が形
成され、それ以後は塗装等の耐食処理が不要とされるい
わゆるメンテナンスフリー鋼である。
【0003】しかしながら、耐食性安定錆が形成される
までに数年かかるため、それまでの期間中に赤錆や黄錆
等の浮き錆や流れ錆が生じ、外見的に好ましくないばか
りでなく、周囲の環境に対する汚染の原因にもなるとい
う問題を残している。特に、海塩粒子が飛来する環境に
おいては、この傾向が著しいばかりでなく、耐食性安定
錆が形成されないという問題があった。
【0004】この問題を解決するために、例えば、鋼材
表面にリン酸塩皮膜を形成させる表面処理方法が提案さ
れている(特開平1−142088号公報)。しかし、
この方法は、リン酸塩皮膜を形成させるに先立ち、あら
かじめFeイオンと、P、Cu、Cr、Ni、Mnイオ
ンの一種または二種以上を含有する酸性水溶液で鋼材表
面を処理する必要がある等、処理の内容が複雑であり、
建設現場でのこの方法による処理は容易ではなく、建築
構造物には適用が難しいという問題がある。また、この
方法は、母材が錆層に好ましい作用効果を及ぼすCr等
の元素を含む材料(耐候性鋼等)でなければ適用できな
い。さらに、海塩粒子が飛来する厳しい大気腐食環境下
での適用性(耐食性安定錆の形成)についても疑問が残
る。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明はこのような状
況に鑑みなされたもので、その目的は、耐候性鋼等のC
rを含有する低合金鋼や普通鋼など、いわゆる錆を生成
する鋼材の表面に耐候性安定錆を早期に形成することが
できる表面処理剤、およびこの表面処理剤が塗布された
表面処理鋼材を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨は、下記の
表面処理剤およびその表面処理剤が塗布された表面処理
鋼材にある。
【0007】(1)硫酸クロムおよび硫酸ナトリウムの
いずれか一方または両方が塗料の固形分中に合計で1〜
15質量%含まれる有機樹脂塗料からなる鋼材の表面処
理剤。
【0008】(2)塗料の固形分中に少なくとも硫酸ク
ロムが1質量%以上含まれる上記(1)に記載の鋼材の
表面処理剤。
【0009】(3)表面に、硫酸クロムおよび硫酸ナト
リウムのいずれか一方または両方が合計で1〜15質量
%含まれる塗膜を有する表面処理鋼材。
【0010】(4)塗膜中に少なくとも硫酸クロムが1
質量%以上含まれる上記(3)に記載の表面処理鋼材。
【0011】前記(1)に記載の「塗料の固形分」と
は、塗料中に含まれる水や溶剤等の揮発分を除いたもの
で、樹脂、硫酸クロム、硫酸ナトリウムの他、後述する
着色顔料、体質顔料、防錆顔料、その他必要に応じて加
える添加剤(硫酸鉄、硫酸ニッケル等)など、鋼材表面
に塗布した際に「塗膜」として留まるものをいう。
【0012】また、前記(3)に記載の「表面」とは、
いわゆる錆がまだ生成していない表面のみならず、既に
錆が生成している表面をも含むものである。
【0013】本発明者らは、20年以上暴露して鋼材の
表面に生成させた安定錆を解析した結果、耐候性安定錆
はα−(Fe、Cr)OOH(以下、「クロムゲーサイ
ト」という)からなる微細結晶の緻密な集合により構成
されていることを解明した。したがって、耐候性安定錆
を早期に形成させて浮き錆や流れ錆の生成を抑えるため
には、緻密なクロムゲーサイトの生成をいかに促進させ
るかが重要となる。
【0014】そして、そのための具体的手段として、鋼
材が普通鋼の場合は、その表面を硫酸クロムを所定量含
有する有機樹脂塗料で、また、鋼材がクロム鋼の場合
は、その表面を硫酸クロムまたは硫酸ナトリウムを所定
量含有する有機樹脂塗料で被覆することにより流れ錆等
の発生を伴わずに耐候性安定錆を早期に形成させる手法
を開発し、上記本発明をなすに至った。なお、ここでい
う「クロム鋼」とは、大気中で耐候性安定錆を形成し得
る低合金鋼をいう。いわゆる耐候性鋼が代表例として挙
げられる。また、「普通鋼」とは、C、Si、Mn、
P、Sなどを少量づつ含む軟鋼またはそれに類する鋼を
いうが、その他に、大気中でその表面に安定錆が形成さ
れない低合金鋼も「普通鋼」の範疇に入る。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明
する。なお、樹脂、硫酸クロム、硫酸ナトリウム、顔
料、その他の添加剤の「%」は、「質量%」を意味す
る。
【0016】まず、本発明の表面処理剤に含有させる硫
酸クロムおよび硫酸ナトリウムの効果について説明す
る。
【0017】〔硫酸クロムの効果〕錆の構造が緻密であ
れば、鋼材の表面を大気腐食環境から物理的に遮断しや
すく、また、浮き錆や流れ錆の根本的な原因であるFe
イオンの溶出を軽減することができる。しかしながら、
錆中に割れや細孔があるとその部分が水や酸素の供給経
路となり、錆の防食性が低減する。したがって、鋼材の
大気中での腐食を防止するためには、鋼材の表面に緻密
で割れなどの欠陥のない錆層を形成させる必要がある。
【0018】本発明の表面処理剤を鋼材の表面に塗布し
て形成された被膜(以下、「塗膜」という)中の硫酸ク
ロムは、塗膜中に水分が浸透してくるとクロムイオンと
硫酸イオンになり、塗膜と鋼材の界面に到達する。硫酸
イオンは水分のpHを下げて鋼材からの鉄等の溶出を加
速するので、塗膜/鋼材界面に鉄イオンが生成する。ク
ロムイオンはこの鉄イオンとともに耐候性安定錆の主成
分であるクロムゲーサイトを形成する。なお、このと
き、硫酸イオンは初期の鉄イオン生成の加速のみなら
ず、鉄錆のα−FeOOH化と、安定錆層(すなわち、
クロムゲーサイト)の微細・緻密化に関与すると考えら
れる。
【0019】硫酸クロムは水に対する溶解度が小さいの
で、本発明の表面処理剤が鋼材表面に塗装された後数年
間は硫酸クロムによる安定錆の形成促進効果が期待でき
る。
【0020】〔硫酸ナトリウムの効果〕硫酸ナトリウム
を含有させた表面処理剤を鋼材の表面に塗布して形成さ
れる塗膜中の硫酸ナトリウムは、塗膜中に水分が浸透し
てくるとナトリウムイオンと硫酸イオンになり、塗膜/
鋼材界面に到達する。前記の硫酸クロムの場合と同様
に、硫酸イオンは水分のpHを下げて鉄やクロムの溶出
を加速する。しかし、硫酸クロムに比べて硫酸ナトリウ
ムは水に対する溶解度が大きいので、硫酸ナトリウムを
含む表面処理剤を塗布した表面処理鋼材は施工した直後
から安定錆形成の促進効果が期待でき、安定錆の生成に
要する日数を短縮することが可能である。
【0021】また、安定錆の形成に必要な硫酸イオンの
塗膜/鋼材界面への供給を硫酸クロムのみに担わせず、
硫酸ナトリウムによっても行うことができるので、その
分だけ硫酸クロム量を減らすことができ、安定錆が形成
されるまでの間における塗膜中での必要量以上のクロム
イオンの存在を避けることができる。
【0022】したがって、耐候性安定錆の形成期間を調
整(短縮)したい場合、あるいは環境への影響(鋼材表
面でのクロムイオンの存在)に特に留意した施工を行う
必要がある場合等においては、適宜、表面処理剤に含有
させる硫酸クロムに替えて硫酸ナトリウムを使用した
り、硫酸クロムと硫酸ナトリウムの含有比率を調整した
りすることが可能である。
【0023】上記(1)の表面処理剤は、硫酸クロムお
よび硫酸ナトリウムのいずれか一方または両方が塗料の
固形分中に合計で1〜15%含まれる有機樹脂塗料から
なる鋼材の表面処理剤である。
【0024】処理剤が硫酸クロム、または硫酸クロムと
硫酸ナトリウムを所定量含むものである場合は、上述し
たように、塗膜中の硫酸クロムの溶解により生成したク
ロムイオンと鋼材から溶出した鉄イオンから耐候性安定
錆の主成分であるクロムゲーサイトが塗膜/鋼材界面に
形成される。したがってこの場合は、(1)の表面処理
剤はクロム鋼、普通鋼のいずれの鋼材にも適用できる。
【0025】一方、処理剤が硫酸ナトリウムのみを所定
量含むものである場合は、(1)の表面処理剤は、クロ
ム鋼からなる鋼材には適用できるが、普通鋼からなる鋼
材には適用できない。鋼材がクロム鋼の場合は、母材か
らの鉄の溶出と同時にクロムも溶け出し、この溶け出し
たクロムが塗膜と鋼材の界面で濃化し、硫酸クロムから
溶け出したクロムと同様に作用して塗膜/鋼材界面にク
ロムゲーサイトが生成するが、普通鋼の場合は、母材お
よび塗膜のいずれからもクロムイオンの供給がなく、ク
ロムゲーサイトが生成しないからである。
【0026】硫酸クロムまたは硫酸ナトリウムの含有量
の下限を1%としたのは、鋼材の表面に耐候性安定錆を
早期に形成させるために、鋼材からの鉄やクロム等の溶
出を加速する硫酸イオンが少なくともこの程度は必要だ
からである。硫酸クロムと硫酸ナトリウムの両者を含有
させる場合は、その合計量が1%以上となるようにすれ
ばよい。一方、硫酸クロムまたは硫酸ナトリウムの含有
量の上限を15%としたのは、この上限を超えて含有さ
せると、生成する耐候性安定錆の腐食性アニオンに対す
る透過抑制効果が低下し、厳しい大気腐食環境下におけ
る錆の防食作用が不十分となるからである。硫酸クロム
と硫酸ナトリウムの両者を含有させる場合は、その合計
量が15%以下となるようにする。
【0027】上記(2)の表面処理剤は、(1)の表面
処理剤において少なくとも硫酸クロムが1%以上含まれ
る表面処理剤である。
【0028】この表面処理剤は、硫酸クロムを含有して
いるので、鋼材が普通鋼の場合にも適用できる。
【0029】硫酸クロムの含有量の下限を1%としたの
は、塩分の飛来する厳しい大気腐食環境下においても鋼
材の表面に腐食性アニオンの透過を抑制する効果のある
耐候性安定錆を早期に形成することができるようにする
ためである。
【0030】次に、本発明の表面処理剤を構成する有機
樹脂塗料について説明する。
【0031】〔有機樹脂塗料〕本発明の表面処理剤に使
用される有機樹脂は、水または有機溶剤により塗料とし
て用いることができるものであれば特に限定されない。
例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ビニル樹脂、ポ
リエステル樹脂、アクリル樹脂、アルキド樹脂、フタル
酸樹脂等を使用することができる。これらの樹脂を水性
塗料、あるいは有機溶剤系の塗料として用いればよい。
【0032】本発明の表面処理剤は、これらの樹脂とと
もに前記の硫酸クロムおよび/または硫酸ナトリウムが
所定量含まれた有機樹脂塗料からなる処理剤である。さ
らに、ベンガラ、二酸化チタン、カーボンブラック、フ
タロシアニンブルー等の着色顔料、タルク、シリカ、マ
イカ、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等の体質顔料、酸
化クロム、クロム酸亜鉛、クロム酸鉛、塩基性硫酸鉛等
の防錆顔料、その他チキソ剤、分散剤、酸化防止剤等、
慣用の添加剤が通常用いられる量含まれていてもよい。
【0033】さらにまた、硫酸鉄、硫酸ニッケル、燐酸
等、またはそれらの水溶液が添加されていてもよく、む
しろ好適である。鉄イオンやニッケルイオンあるいは燐
酸には、クロムイオンと共存することによりクロムゲー
サイトの生成を促進させる効果に加えて、燐酸には初期
の腐食を抑制して流れ錆の発生を抑える効果があるから
である。なお、添加する場合、その量は、塗料の固形分
中、硫酸鉄および硫酸ニッケルについてはそれぞれ5%
以上、燐酸については20%以上とするのが好ましい。
【0034】これら有機樹脂、硫酸クロムおよび硫酸ナ
トリウムをはじめ各種の添加剤を適当量の有機溶剤また
は水に溶かし、塗装作業に適した粘度に調整する。有機
溶剤としては、通常の塗装で用いられているシンナー等
を適宜使用すればよい。
【0035】前記の(3)および(4)の発明は上記
(1)または(2)の表面処理剤が塗布されてなる表面
処理鋼材である。すなわち、(3)の発明は、表面に、
硫酸クロムおよび硫酸ナトリウムのいずれか一方または
両方が合計で1〜15%含まれる塗膜を有する表面処理
鋼材であり、(4)の発明は、(3)の発明の表面処理
鋼材において、塗膜中に少なくとも硫酸クロムが1%以
上含まれる表面処理鋼材である。
【0036】母材(被処理鋼材)は、いわゆる錆を生成
する鋼材(前記のクロム鋼または普通鋼からなる鋼材)
であればよいが、鋼材表面に形成される塗膜によって材
質を選択することが必要である。
【0037】(3)の表面処理鋼材において、塗膜中に
硫酸クロムが含まれている場合は、母材はクロム鋼、普
通鋼のいずれであってもよい。塗膜からクロムイオンが
供給されて、塗膜/鋼材界面にクロムゲーサイトが生成
するからである。一方、塗膜中に硫酸ナトリウムのみが
含まれる場合はクロム鋼が母材として使用される。クロ
ム鋼であれば、母材からクロムイオンが供給されるの
で、クロムゲーサイトの生成が可能だからである。な
お、(4)の表面処理鋼材では、塗膜中に硫酸クロムが
含まれているので、母材はクロム鋼、普通鋼のいずれで
あってもよい。
【0038】表面処理剤の鋼材への塗布方法としては、
エアスプレー、エアレススプレーあるいは刷毛塗り等、
通常の塗装で用いられている方法が採用できる。したが
って、場所を選ばず施工が可能であり、また、1回の塗
装作業で効果が得られるので経済性にも優れている。さ
らには、現地塗装が可能なので、建設現場での鋼材の切
断、溶接等の加工後にも適用でき、表面に錆が発生して
いる鋼材にもそのままで適用できる。
【0039】塗膜の厚さは、表面処理剤が乾燥固化した
後の厚さで5〜150μmの範囲内とするのが好まし
い。塗膜の厚さがこの範囲内であれば、耐候性安定錆の
生成段階でのクロムイオンと鉄イオンの供給バランスが
最適で、鋼材の表面に耐候性安定錆が形成されやすい。
【0040】(1)または(2)の表面処理剤を鋼材の
表面に塗布すると、有機溶剤または水分は自然乾燥によ
り蒸発して(3)または(4)の表面処理鋼材となる。
なお、溶剤として水を用いた場合は、その水分の一部は
耐候性安定錆の生成反応にも寄与するものと考えられ
る。
【0041】耐候性安定錆が塗膜/鋼材界面に生成した
後は鋼材の腐食速度が極めて小さくなるため、さらにそ
の上層に着色塗膜を被覆することも可能である。ブラス
ト処理等が施された表面を有する裸仕様鋼材に着色塗膜
を被覆する場合に比べて、その着色塗膜の寿命延長効果
も期待できる。
【0042】上記のように生成させた安定錆層に何らか
の外力が作用して亀裂や剥離が生じても、健全部の塗膜
中に硫酸クロム、硫酸ナトリウムが残存していれば、健
全部から損傷部へ硫酸イオン、クロムイオンが供給さ
れ、再度、耐候性安定錆が形成されるという自己修復機
能が働く。
【0043】
【実施例】表1に示す化学組成の鋼材(試験鋼材)に表
2に示す前処理を施し、その上に表3に示す樹脂系を基
材とする塗料を塗布した表面処理鋼材(試験片)を作製
し、海岸地帯で1年間暴露した後の腐食減量を測定し
た。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
【表3】
【0047】表4〜表6に表面処理鋼材(試験片)の作
製条件を示す。これらの表において、試験鋼材、前処理
および樹脂系の欄の記号はそれぞれ表1、表2および表
3に示した記号に対応する。
【0048】表4〜表6に示した樹脂、硫酸クロム、硫
酸ナトリウム、その他の添加剤に溶剤(シンナー)を加
えて粘度(B型粘度計により測定)を200〜1000
センチポアズにした表面処理剤を調製し、これをエアス
プレー塗装により鋼材表面に塗布して試験片とした。
【0049】この試験片を水平に設置し、その上面に人
工海水調製用の粉末(塩化ナトリウム)を毎日1mg/
dm2 となるように散布する条件のもとに、海岸地帯で
1年間暴露した。その後、試験片表面に残存する塗膜お
よび錆を除去して重量測定し、予め求めておいた塗装前
の試験片重量から差し引くことにより腐食減量(侵食深
さに換算して表示)を求めた。また、1年間暴露後の試
験片表面の錆の元素分析を行うとともに、錆層の断面を
ラマン分光法で構造解析することによってクロムゲーサ
イト層(耐候性安定錆層)の生成の有無を確認した。
【0050】結果を表4〜表6に併せて示す。なお、表
4〜表6における片面腐食減量とは、上記のように測定
した腐食減量(侵食深さ)の半分の値を示したものであ
る。
【0051】表4〜表6の結果から明らかなように、本
発明例(試験番号1〜26)では、流れ錆の発生は認め
られず、腐食減量が小さく、かつ下地の鋼材表面部分に
クロムゲーサイト層の生成が認められた。特に、樹脂に
硫酸クロム、硫酸ナトリウム(試験番号10、19、2
0では添加せず)およびベンガラ、シリカ等の慣用の添
加剤のみを含有させた表面処理剤を用いた場合に比べ、
さらに硫酸銅や硫酸ニッケル等を加えた表面処理剤を用
いた場合(例えば、試験番号13、17)は、その相乗
効果により腐食減量が小さくなる傾向がみられた。ま
た、試験番号8、22〜25に見られるように、錆層を
形成させた後に表面処理剤を塗布した場合も、十分な効
果が認められた。
【0052】一方、試験番号27〜38の比較例に示す
ように、硫酸クロム、硫酸ナトリウムを添加せず、添加
してもその量が本発明で規定する範囲から外れる場合
は、クロムゲーサイト層の生成が不十分で、腐食減量が
大きかった。
【0053】
【表4】
【0054】
【表5】
【0055】
【表6】
【0056】
【発明の効果】本発明の表面処理剤を用いれば、クロム
鋼(耐候性鋼等)や普通鋼などの鋼材の表面に耐候性安
定錆を早期に形成することができる。現場塗装が可能で
あり、防食のためのメンテナンスが最低限ですむので、
土木、建築構造物用鋼材の表面処理剤として極めて有用
である。
【0057】また、この表面処理剤が塗布された本発明
の表面処理鋼材は、母材表面に耐候性安定錆が早期に形
成されるので浮き錆や流れ錆を生じることなく、特に、
海岸近傍の海塩粒子が飛来する厳しい腐食環境下でも優
れた防食効果を発揮する。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】硫酸クロムおよび硫酸ナトリウムのいずれ
    か一方または両方が塗料の固形分中に合計で1〜15質
    量%含まれる有機樹脂塗料からなる鋼材の表面処理剤。
  2. 【請求項2】塗料の固形分中に少なくとも硫酸クロムが
    1質量%以上含まれる請求項1に記載の鋼材の表面処理
    剤。
  3. 【請求項3】表面に、硫酸クロムおよび硫酸ナトリウム
    のいずれか一方または両方が合計で1〜15質量%含ま
    れる塗膜を有する表面処理鋼材。
  4. 【請求項4】塗膜中に少なくとも硫酸クロムが1質量%
    以上含まれる請求項3に記載の表面処理鋼材。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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