JP2002126636A - 耐候性表面処理鋼材および処理方法 - Google Patents

耐候性表面処理鋼材および処理方法

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JP2002126636A
JP2002126636A JP2000322538A JP2000322538A JP2002126636A JP 2002126636 A JP2002126636 A JP 2002126636A JP 2000322538 A JP2000322538 A JP 2000322538A JP 2000322538 A JP2000322538 A JP 2000322538A JP 2002126636 A JP2002126636 A JP 2002126636A
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rust
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chromium
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JP2000322538A
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Norifumi Doi
教史 土井
Takayuki Kamimura
隆之 上村
Kazuyuki Kajima
和幸 鹿島
Hideaki Yuki
英昭 幸
Seiji Kawanishi
征史 川西
Masafumi Ueda
雅文 上田
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Shinto Paint Co Ltd
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Shinto Paint Co Ltd
Sumitomo Metal Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】耐候性安定錆が早期に、しかも景観性の悪化を
伴うことなく形成される耐候性表面処理鋼材およびその
処理方法を提供する。 【解決手段】下層に、乾燥膜厚が5〜50μmであり、
硫酸クロムを少なくとも0.1mass%含有し、かつ硫酸
クロムおよび硫酸ナトリウムのいずれか一方または両方
の合計含有量が15mass%以下である有機樹脂塗膜を有
し、上層に、乾燥膜厚が5〜30μmで、15mass%以
下の硫酸鉄を含む有機樹脂塗膜を有する表面処理鋼材
で、上記の成分をそれぞれ含有する有機樹脂塗料を乾燥
膜厚が上記所定の厚さになるように下塗りおよび上塗り
する方法により得ることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、海岸地域等の塩分
の影響を受けて大気腐食が進行する厳しい環境下におい
ても、鋼材を腐食から保護する作用を有する錆層(以
下、「耐候性安定錆」または単に「安定錆」という)が
外観を損なうことなく早期に形成される耐候性に優れた
表面処理鋼材およびその処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、鋼にP、Cu、Cr、Ni等の
元素を添加することにより、大気中における鋼の耐食性
を向上させることができる。これらの低合金鋼は耐候性
鋼と呼ばれ、屋外において数年で腐食に対する保護性の
ある錆、すなわち「耐候性錆」が鋼表面に形成され、以
後塗装等の防食処理を必要としない、いわゆるメンテナ
ンスフリー鋼である。
【0003】しかしながら、耐候性錆が形成されるまで
に数年かかるため、それまでの期間中に赤錆や黄錆等の
浮き錆や流れ錆が生じて好ましくない外観を呈するのみ
ならず、周囲環境の汚染源にもなるという問題点を残し
ている。特に、海岸地域等の海塩粒子が飛来する環境に
おいては、この傾向が著しいばかりでなく、耐候性鋼の
特質である耐候性錆が形成されないという問題があっ
た。
【0004】この問題については、例えば特開平1−1
42008号公報に記載されるように、鋼材表面にリン
酸塩皮膜を形成させる方法が提案されている。しかし、
リン酸塩皮膜を形成させる前に適当な前処理を施す必要
がある等、処理の内容が複雑であり、また鋼材の溶接が
必要な場合、溶接部に処理を施すことは容易ではなく、
建築構造物への適用にも問題がある。また、この方法で
は、海塩粒子等の塩分が飛来する厳しい大気腐食環境下
では、耐候性錆が形成されにくいと思われる。
【0005】また、特開平6−226198号公報に
は、硫酸クロムまたは硫酸銅を1〜65質量%含む有機
樹脂塗料を鋼材表面に被覆して安定さびを早期に生成さ
せる方法が開示されている。しかし、この方法は、流れ
錆を防止する効果は大きいが、使用環境や用途によって
は被覆材の表面に緑ないし白色の反応副生成物(硫酸
鉄)が析出し、鋼板の景観性が損なわれるという問題が
あり、特に、橋梁桁内部等の結露の激しい環境において
顕著である。また、田園地帯等の比較的マイルドな大気
腐食環境下において安定さびの生成が遅れる場合があっ
た。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、耐候
性鋼等の低合金鋼や普通鋼などのいわゆる錆を生成する
鋼材の表面に、耐候性安定錆が早期に、しかも安定錆の
形成過程において、流れ錆の発生や、硫酸鉄などの反応
副生成物による着色等、景観性の悪化を伴うことなく形
成される耐候性表面処理鋼材、および前記表面処理鋼材
を得るための表面処理方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、十数年間
大気中で曝露した、安定錆生成促進処理を施した鋼材に
ついて調査した結果、鋼材表面に耐候性安定錆が形成さ
れるまでの間、常に流れ錆により鋼材表面の景観性が悪
化するという問題があり、また、処理方法の如何によっ
ては錆色以外の色調を呈する反応副生成物が生成して景
観性が損なわれることを確認した。
【0008】この景観性の悪化を防止するために検討を
重ねた結果、トップコート、すなわち上層塗膜を設ける
ことが最適であり、その上層塗膜として水、空気の透過
性に優れているものを用い、上層塗膜中に錆の生成促進
因子を組み込むことにより、下層塗膜からの硫酸鉄など
の反応副生成物の浸みだしを抑制しながら塗膜下(塗膜
と母材鋼の界面近傍)を常時低pH化して安定錆の形成
に必要な母材鋼の腐食を促進する方法を見いだした。
【0009】なお、前記の耐候性安定錆は、α−(F
e、Cr)OOH(以下、「クロムゲーサイト」とい
う)からなる微細結晶の緻密な集合により構成されてい
ることが解明されている。微細化したα−(Fe、C
r)OOHは、X線回折では回折ピークを与えない、い
わゆるX線的非晶質物質となるが、メスバウアー分光分
析では、明瞭に耐候性安定錆(クロムゲーサイト)が形
成されていることが確認できる。
【0010】本発明は上記の知見に基づいてなされたも
のであり、その要旨は、下記(1)の耐候性表面処理鋼
材、および(2)の表面処理方法にある。 (1)下層に、乾燥膜厚が5〜50μmであり、硫酸ク
ロムを少なくとも0.1mass%含有し、かつ硫酸クロム
および硫酸ナトリウムのいずれか一方または両方の合計
含有量が15mass%以下である有機樹脂塗膜を有し、上
層に、乾燥膜厚が5〜30μmで、15mass%以下の硫
酸鉄を含む有機樹脂塗膜を有する耐候性表面処理鋼材。 (2)鋼材の表面に、塗料固形分に対して、硫酸クロム
を少なくとも0.1mass%含有し、かつ硫酸クロムおよ
び硫酸ナトリウムのいずれか一方または両方の合計含有
量が15mass%以下である有機樹脂塗料を乾燥膜厚が5
〜50μmになるように塗布した後、さらにその上に、
塗料固形分に対して15mass%以下の硫酸鉄を含む有機
樹脂塗料を乾燥膜厚が5〜30μmになるように塗布す
る表面処理方法。
【0011】前記の「鋼材」は、特に鋼種を限定される
ものではなく、普通鋼であっても、耐候性鋼等の低合金
鋼であってもよい。いわゆる錆を生成する鋼材であれば
よい。
【0012】「硫酸鉄」とは、硫酸鉄(II)FeSO4
または硫酸鉄(III) Fe2(SO4)3である。
【0013】「乾燥膜厚」とは、有機樹脂塗料を塗布し
た後、塗料の調製時に加える有機溶剤などが揮散した乾
燥後の膜厚であり、また、「塗料固形分」とは、バイン
ダーとしての樹脂と、この樹脂に添加する硫酸クロム、
硫酸ナトリウム、硫酸鉄、および樹脂に添加する顔料等
の塗料添加剤をいい、有機溶剤など、塗装後の自然乾燥
により揮散して、鋼材表面に形成される有機樹脂塗膜中
に残存しないものは含まない。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明の耐候性表面処理鋼
材および表面処理方法について詳細に説明する。
【0015】錆の構造が緻密であれば、鋼材表面は物理
的に大気腐食環境から遮断されやすく、また浮き錆や流
れ錆の根本的な原因である鉄イオンの溶出が軽減する。
しかしながら、錆中に割れや細孔などの欠陥があると水
や酸素の供給経路となり、錆の防食性能が低下する。し
たがって、鋼材表面に緻密で欠陥のない連続した錆層を
形成させる必要がある。本発明の耐候性表面処理鋼材
は、上記のように、母材鋼の表面に二層の有機樹脂塗膜
を有する鋼材である。
【0016】下層の有機樹脂塗膜(以下、有機樹脂塗膜
を単に「塗膜」ともいう)には、硫酸クロムが少なくと
も0.1mass%含まれ、かつ硫酸クロムおよび硫酸ナト
リウムのいずれか一方または両方が合計量で15mass%
以下含まれている。
【0017】硫酸クロムは、塗膜中に水分が浸透してき
たときに、クロムイオンと硫酸イオンになり、塗膜と母
材鋼の界面に到達する。硫酸イオンは水分のpHを低下
させて母材鋼の腐食を促進し、鉄イオンを生成させる。
一方、クロムイオンは、この鉄イオンを耐候性安定錆の
主成分であるクロムゲーサイトに変化させる。なお、母
材鋼に含まれ、腐食により溶けだしたクロムイオンも同
様に作用する。また、硫酸イオンも初期に腐食を促進し
て鉄イオンの生成を加速するだけではなく、安定錆の微
細化、緻密化に関与していると考えられる。
【0018】一方、硫酸ナトリウムは、塗膜中に水分が
浸透してきたときに、ナトリウムイオンと硫酸イオンに
なり、塗膜と母材鋼の界面に到達する。硫酸イオンは、
上記の硫酸クロムの場合と同様に作用し、水分のpHを
低下させて母材鋼の腐食を促進し、鉄イオンを生成させ
る。安定錆の微細化、緻密化にも関与すると考えられ
る。また、母材鋼に含まれるクロムが腐食により溶け出
してクロムイオンとなり、上記のように鉄イオンを耐候
性安定錆の主成分であるクロムゲーサイトに変化させ
る。
【0019】硫酸ナトリウムは硫酸クロムに比べて水に
対する溶解度が大きく、安定錆生成に対する促進効果の
早期発現が期待でき、安定錆生成に要する日数の短縮が
可能である。また、母材鋼にクロムが含まれる場合は、
塗膜中に硫酸クロムの代わりに硫酸ナトリウムを含有さ
せることによっても安定錆の生成を促進させ得るので、
必要に応じて、環境への影響(クロムイオンを取り扱う
こと、安定錆が形成されるまでの間の塗膜中にクロムイ
オンが存在すること等)に特に留意した施工を行うこと
が可能である。
【0020】硫酸クロムの含有量の下限を0.1mass%
としたのは、母材鋼が普通鋼の場合に、塩分の飛来する
ような厳しい大気腐食環境中でも上記の効果、すなわち
クロムイオンが鉄イオンをゲーサイトに変化させるとい
う効果を得るためで、これによって、本発明の表面処理
鋼材が大気腐食環境に置かれたとき、耐候性安定錆が早
期に生成し、しかもこの錆は極めて緻密で、大気腐食環
境中に存在する塩化物イオン(Cl-1)等の腐食性アニ
オンの透過を抑制する優れた作用効果を有するものとな
る。なお、母材鋼がクロムを含有する低合金鋼の場合
は、前述したように、鋼から溶け出したクロムイオンが
硫酸クロムの解離により生じたクロムイオンと同様に作
用するので、塗膜中に硫酸クロムが含まれていなくても
よい。
【0021】硫酸クロムおよび硫酸ナトリウムのいずれ
か一方または両方の合計含有量の上限を15mass%とし
たのは、これを超えて含まれると、腐食性アニオン透過
抑制効果が低下し、厳しい大気腐食環境における防食効
果が保証され得ないからである。
【0022】下層塗膜に含まれる有機樹脂(基材樹脂を
いう)の種類は特に制限を受けるものではなく、エポキ
シ樹脂、ウレタン樹脂、ビニル樹脂、ポリエステル樹
脂、アクリル樹脂、アルキド樹脂、フタル酸樹脂等を使
用することができる。
【0023】下層塗膜には、硫酸クロム、硫酸ナトリウ
ムの他に、ベンガラ、二酸化チタン、カーボンブラッ
ク、フタロシアニンブルー等の着色顔料、タルク、シリ
カ、マイカ、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等の体質顔
料、酸化クロム、クロム酸亜鉛、クロム酸鉛、塩基性硫
酸鉛等の防錆顔料、その他チキソ剤、分散剤、酸化防止
剤等、慣用の添加剤が含まれていてもよい。
【0024】下層塗膜の膜厚(乾燥膜厚)を5〜50μ
mとしたのは、5μm未満では安定錆生成能力が劣り、
50μmを超えると効果が飽和し、経済的に不利である
とともに、大気腐食環境としてあまり厳しくない田園地
帯などにおいて安定錆の生成が遅延する場合があるから
である。
【0025】上層塗膜に含まれる樹脂(基材樹脂)とし
ては、下層塗膜中の樹脂と同種の樹脂を主成分とする樹
脂を用いるのがよい。異なる種類の樹脂を用いると、下
層塗膜と上層塗膜の層間密着性が低下し、上層塗膜が剥
離してくるため適当ではない。
【0026】上層塗膜を設ける目的として、下層塗膜に
含まれる硫酸クロムや硫酸ナトリウムに起因して生じる
反応副生成物(硫酸鉄)の生成、および塗膜外での析出
を抑制することに加え、下層塗膜中の硫酸クロムや硫酸
ナトリウムの逃散防止があげられる。上層塗膜がない場
合、硫酸クロムや硫酸ナトリウムが溶出していくので、
安定錆を生成させるために過剰の硫酸クロム、硫酸ナト
リウムを下層塗膜に含有させておくことが必要になる
が、上層塗膜が存在すると、硫酸クロムや硫酸ナトリウ
ムの溶出が抑えられるので、少量の硫酸クロムや硫酸ナ
トリウムで安定錆を生成させることができる。さらに、
上層塗膜の存在によって、上記生成した硫酸鉄を表面に
析出させず、母材鋼と塗膜の界面または塗膜内部で取り
込む(つまり、閉じ込める)ことが可能となり、錆の生
成が促進され、その結果、塗膜中の硫酸クロムと結びつ
いて安定錆となる。
【0027】このように、本発明の表面処理鋼材では、
上層塗膜と下層塗膜とが互いにその役割を補完しあい、
相乗的に作用して、母材鋼表面に早期に耐候性安定錆を
形成させることが可能になる。
【0028】本発明の表面処理鋼材では、この上層塗膜
に、15mass%以下の硫酸鉄を含有させる。塗膜に浸透
してくる水によってこの硫酸鉄が溶解し、生成した硫酸
イオンにより下層塗膜内がpHの低い状態になって母材
鋼の腐食が促進され、安定錆の生成が促進されるととも
に、硫酸鉄の溶解により生成した鉄イオンが外気にさら
されて鉄錆となり、それによって下層から浸みだし塗膜
外で析出する緑色や白色の反応副生成物による変色が隠
蔽されて鉄錆色が維持され、鋼材表面の景観性の低下、
ひいては意匠性の劣化が抑制される。
【0029】硫酸鉄の含有量を15mass%以下と規定し
たのは、15mass%を超えて含有させると、上記の効果
が飽和し、また添加した硫酸鉄そのものが流れ錆状態と
なり、景観性を逆に悪化させるからである。含有量の下
限は特に限定しない。鋼材が反応副生成物の生成しにく
い大気環境下で使用される場合は、硫酸鉄が全く含まれ
ていなくてもよい。上述した上層塗膜が有する効果、す
なわち下層塗膜中の硫酸クロム、硫酸ナトリウムの逃散
防止効果、生成した硫酸鉄の閉じ込め効果等により、高
い安定錆生成促進効果が維持される。
【0030】上層塗膜には、上記の下層塗膜の場合と同
様、ベンガラ、二酸化チタン、カーボンブラック、フタ
ロシアニンブルー等の着色顔料、タルク、シリカ、マイ
カ、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等の体質顔料、酸化
クロム、クロム酸亜鉛、クロム酸鉛、塩基性硫酸鉛等の
防錆顔料、その他チキソ剤、分散剤、酸化防止剤等の添
加剤が含まれていてもよい。しかし、硫酸クロムは含ま
れない。上層塗膜に硫酸クロムが含まれると、緑色や白
色の反応副生成物、すなわち母材鋼から溶解した鉄イオ
ンと硫酸イオンとの反応で生じた硫酸鉄が塗膜外へ浸み
だして塗膜表面で析出し、景観性が悪化する。
【0031】上層塗膜の膜厚(乾燥膜厚)は5〜30μ
mとする。膜厚が5μm未満では硫酸鉄析出抑制効果が
小さく、鋼板の景観性が劣化する場合があり、一方、3
0μmを超えると、塗膜の表面から母材鋼への水分の透
過が過度に抑制され、安定錆の生成が著しく遅延する場
合がある。
【0032】本発明の表面処理方法は、前記本発明の耐
候性表面処理鋼材を得るための方法で、前記のように、
鋼材の表面に、塗料固形分に対して硫酸クロムの含有量
が少なくとも0.1mass%で、かつ硫酸クロムおよび硫
酸ナトリウムのいずれか一方または両方の合計含有量が
15mass%以下である有機樹脂塗料(以下、単に「塗
料」ともいう)を塗布して下層塗膜を形成させ、さらに
その上に15mass%以下の硫酸鉄を含む塗料を塗布して
上層塗膜を形成させる方法である。
【0033】下層塗膜の形成に使用される塗料(下塗り
塗料)および上層塗膜の形成に使用される塗料(上塗り
塗料)は、いずれも使用時に適当量の有機溶剤(以下、
単に「溶剤」という)または水により塗装作業に適した
粘度に調整される。溶剤または水分は、塗装後自然乾燥
により蒸散していくが、特に下塗り塗料に含まれる水分
の一部は、耐候性安定錆の生成反応にも寄与するするも
のと考えられる。
【0034】下塗り塗料、上塗り塗料のいずれにおいて
も、前述した着色顔料、体質顔料、防錆顔料、その他、
慣用の添加剤が含まれていてよい。
【0035】さらに、下塗り塗料には、鉄、銅、ニッケ
ルの化合物や、リン酸あるいはその水溶液が含まれてい
てもよく、むしろその方が好適である。鉄イオンや銅イ
オン、ニッケルイオンあるいはリン酸はクロムイオンと
共存することにより、クロムゲーサイトの生成を促進さ
せる作用効果を有する。ただし、鉄、銅、ニッケルの化
合物を硫酸化合物として添加するときは、硫酸クロム、
硫酸ナトリウムとの合計量で15mass%以下にしておく
ことが好ましい。前記合計量が15%を超えると、硫酸
イオンによる初期の腐食が加速されすぎる結果、安定錆
の生成が阻害されたり、あるいは塗膜の表面に硫酸鉄が
析出して外観が損なわれるおそれが生じるからである。
【0036】これらの下塗り塗料、上塗り塗料の塗装に
は、通常の塗装と同じくエアスプレー、エアレススプレ
ーあるいは刷毛塗り等慣用の方法を用いることができる
ため、場所を選ばずに施工が可能であり、また1回の塗
装で効果が得られるため経済性にも優れている。さらに
は、現地塗装が可能なため、現地で鋼材の切断、溶接等
の加工を施した後の塗装や、表面に錆が発生した鋼材の
塗装にも対応できる。なお、所定の乾燥膜厚になるよう
に塗料を塗布するには、あらかじめ塗布時の塗膜の膜厚
(塗膜厚)と乾燥後の膜厚との関係を求めておき、その
関係に基づいて塗布時の塗膜厚を定めればよい。
【0037】鋼材表面に耐候性安定錆が生成した後には
鋼材の腐食速度が極めて低くなるため、さらに、上層に
着色塗膜を被覆することも可能である。ブラスト処理等
を施した表面を有する鋼材に着色塗料を被覆する場合に
比べて、その着色塗膜の寿命が延長される。また、使用
中に錆が発生した鋼材の補修のための塗装にも対応でき
る。
【0038】このようにして得られる本発明の表面処理
鋼板は、厳しい大気腐食環境下においても、鋼材表面に
耐候性安定錆を早期に形成させることができ、しかも安
定錆の形成過程において赤錆や黄錆等の浮き錆、流れ錆
の発生や、反応副生成物による着色等による景観性の悪
化を伴うことなく、優れた耐候性を確保することができ
る。
【0039】また、上記の耐候性安定錆に何らかの外力
が作用して亀裂や剥離が生じても、健全部の塗膜中に硫
酸クロムが残存していれば、その硫酸クロムが損傷部に
供給され、再度耐候性安定錆が生成する自己補修性能が
期待できる。
【0040】
【実施例】本発明の表面処理方法により作製したサンプ
ルについて、暴露試験を行った後、腐食減量、クロムゲ
ーサイトの生成状態および外観を調査した。用いた試験
鋼 (1)および (2)の化学組成を表1に示す。また、塗料
に用いた基材樹脂A、BおよびCの組成を表2に示す。
表2において、硬化剤を使用する基材樹脂BとCは2液
タイプで、樹脂(基材樹脂+添加剤)と硬化剤を塗装直
前に混合して使用した。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】表面処理前の母材試験片の寸法は150m
m×70mm×3.2mm(厚さ)とし、ブラスト処理
により除錆度がSa(SISスウェーデン規格)で2.
5になるまで除錆した。表3および表4(表3の続き)
に暴露試験に用いたサンプルの作製条件を示す。
【0044】
【表3】
【0045】
【表4】
【0046】表3および表4に示した配合の樹脂に適当
量の溶剤を加えて粘度を0.2〜1N・s/m2 (2
00〜1000センチポアズ、B型粘度計を用いて測
定)にした塗料を作製し、エアスプレーにより母材試験
片の両面に塗装してサンプルとした。このサンプルを水
平に設置し、海岸から100mの位置にある新潟県の海
岸地帯に1年間または2年間曝露して、人工海水の原粉
末を1mg/dm2 となるよう毎日サンプルの上面に散
布した。
【0047】曝露試験後、表面に残存する塗膜および錆
を除去した母材試験片の質量を測定し、あらかじめ測定
しておいた塗装前の質量との差から腐食減量を求めた。
なお、表3および表4には、腐食減量の半分である片面
の平均腐食減量を腐食深さに換算して示した。
【0048】クロムゲーサイトの生成状態については、
錆の断面をラマン分光法で構造解析するとともに錆中の
元素分析を行うことにより調査し、ゲーサイトからなる
耐候性安定錆が生成されていれば良好(○印で表示)、
生成が不完全であれば不良(×印で表示)と評価した。
【0049】塗膜表面の外観については、緑色または白
色の反応副生成物(硫酸鉄)の析出、上層塗膜の浮きや
はがれ等の有無を調査し、それらがほとんど認められな
い場合は良好(○印で表示)、それらのいずれかが発生
していた場合は不良(×印で表示)と評価した。
【0050】調査結果を表3および表4に併せて示す。
この結果から、本発明例1〜7(表3参照)では、曝露
試験後のサンプルに流れ錆や硫酸鉄による汚損は認めら
れず、腐食減量が小さく、耐候性安定錆の生成が認めら
れた。
【0051】一方、比較例8〜14(表4参照)では、
下層塗膜と上層塗膜の基材樹脂が異なる場合(比較例
8)、上層塗膜に添加する硫酸鉄の含有量が規定範囲外
の場合(比較例9)、上層塗膜の乾燥膜厚が規定範囲外
の場合(比較例10、11)、上層塗膜がない場合(比
較例12)および硫酸クロムの含有量が規定範囲外の場
合(比較例13、14)、上層塗膜の剥離、硫酸鉄の析
出や流れ錆による景観性の低下が認められ、あるいは耐
候性安定錆の生成が不十分で、腐食減量が大きかった。
【0052】
【発明の効果】本発明の耐候性表面処理鋼板は、厳しい
大気腐食環境下においても鋼材表面に耐候性安定錆を早
期に形成させることができ、優れた耐候性を有する。し
かも安定錆の形成過程において赤錆や黄錆等の浮き錆、
流れ錆の発生や、反応副生成物による着色等、鋼板の景
観性の悪化を伴うこともない。鋼材の防食に関するメン
テナンスが不要であり、かつ景観性を損なうことがない
ので、土木・建築構造物用の鋼材として好適である。こ
の表面処理鋼板は、本発明の処理方法によって容易に、
かつ経済的に得ることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 上村 隆之 大阪府大阪市中央区北浜4丁目5番33号 住友金属工業株式会社内 (72)発明者 鹿島 和幸 大阪府大阪市中央区北浜4丁目5番33号 住友金属工業株式会社内 (72)発明者 幸 英昭 大阪府大阪市中央区北浜4丁目5番33号 住友金属工業株式会社内 (72)発明者 川西 征史 兵庫県尼崎市南塚口町6丁目10番73号 神 東塗料株式会社内 (72)発明者 上田 雅文 兵庫県尼崎市南塚口町6丁目10番73号 神 東塗料株式会社内 Fターム(参考) 4D075 AE03 CA32 CA33 DA03 DB02 DC10 EC02 4F100 AA07 AA07A AA07B AA20 AA23 AB03 AK01A AK01B AT00C BA03 BA07 CC00A CC00B EH46 EH462 GB07 GB90 JL09 YY00A YY00B

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】下層に、乾燥膜厚が5〜50μmであり、
    硫酸クロムを少なくとも0.1mass%含有し、かつ硫酸
    クロムおよび硫酸ナトリウムのいずれか一方または両方
    の合計含有量が15mass%以下である有機樹脂塗膜を有
    し、上層に、乾燥膜厚が5〜30μmで、15mass%以
    下の硫酸鉄を含む有機樹脂塗膜を有することを特徴とす
    る耐候性表面処理鋼材。
  2. 【請求項2】鋼材の表面に、塗料固形分に対して、硫酸
    クロムを少なくとも0.1mass%含有し、かつ硫酸クロ
    ムおよび硫酸ナトリウムのいずれか一方または両方の合
    計含有量が15mass%以下である有機樹脂塗料を乾燥膜
    厚が5〜50μmになるように塗布した後、さらにその
    上に、塗料固形分に対して15mass%以下の硫酸鉄を含
    む有機樹脂塗料を乾燥膜厚が5〜30μmになるように
    塗布することを特徴とする表面処理方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN112501600A (zh) * 2020-11-20 2021-03-16 张国学 一种桥梁耐候钢加速锈层形成的液体及其防腐施工工艺

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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