JP4400299B2 - 表面処理耐候性鋼材および耐候性鋼材の表面処理方法 - Google Patents

表面処理耐候性鋼材および耐候性鋼材の表面処理方法 Download PDF

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この発明は、橋梁などの鋼材として用いられる表面処理耐候性鋼材、および、耐候性鋼材の表面処理方法に関し、更に詳しくは、表面処理がなされた耐候性鋼材であって、客先の要望に応じて任意の着色が可能で、かつ耐候性鋼由来の安定錆の形成により、長期間の良好な景観の維持が可能な表面処理耐候性鋼材および耐候性鋼材の表面処理方法に関するものである。
耐候性鋼は、Cu、Ni、Cr、P、Mo等の元素が少量含有された低合金鋼であって、大気中に暴露すると、腐食し発錆する過程で保護性の強い錆層(安定錆)が自然に形成される。そして、前記錆層が形成された後はそれ以降の鋼材の腐食は減少し、最終的には腐食が殆ど進行しない特性を持つ鋼材となる。
このような耐候性鋼材は、形鋼、鋼板、鋼管等各種鋼材に適用され、橋梁や鉄塔等の構造物として幅広い用途があるが、次のような問題を有していた。
すなわち、耐候性鋼材を裸使用する場合、鋼材表面に保護性の強い安定した錆が形成されるまで5年以上の長期間を要し、その間、浮き錆や流れ錆を生じ、流出した錆汁により周囲環境を汚染し、外観を損なう問題があった。
そこで、耐候性鋼の表面に錆安定化処理と称される表面処理を行い、上記の問題を解決した鋼材に関する技術が開示されている。この錆安定化処理鋼材は、例えば、特許文献1に、カチオン型塗膜とアニオン型塗膜との2層塗膜が形成された鋼材(従来技術1)が、特許文献2に、下層に安定錆成分を含有する樹脂層、上層に耐候性、耐腐食性に優れた樹脂層を設けた2層被覆が形成された鋼材(従来技術2)が、特許文献3に、安定錆形成促進作用を有する有機樹脂により被覆された鋼材(従来技術3)が開示されている。
また、特許文献4には、アルミニウム、亜鉛およびそれらの合金からなる粒子を含有した塗料の上に、促進耐候性試験後の光沢保持率が80%以上である着色上塗り塗膜を形成する耐候性鋼の防食方法(従来技術4)が開示されている。
特開昭56−127774号公報 特公昭56−33991号公報 特許2666673号公報 特開2003−33719号公報
しかしながら、上記従来の錆安定化処理は、塗膜自体は徐々に安定錆と置換していくことから、塗膜の色調は基本的に安定錆と同系統の暗褐色に限定されるため、橋梁としての景観性に劣る。
また、従来技術4は、耐候性鋼を用いた任意の着色が可能な表面処理方法ではあるが、下層はアルミや亜鉛による犠牲防食作用により防食性を高めることを目的とした配合であり、塗膜下に安定錆を形成するという技術思想はない。従って、防食性を維持している間は良好な景観を保持するが、犠牲防食作用にも限度があり、いずれは塗膜下あるいは塗膜欠陥部分を基点として腐食する。これは一般の橋梁用重防食塗装に用いられるジンクリッチペイントを下地とした場合と同様である。その場合は、通常の橋梁用塗装の場合と同様、見苦しいブリスターや塗膜剥離、錆の流出を伴った劣化となり、景観性は失われることが予想されるが、かかる問題に対する対応策に関する開示はない。
一方、従来技術2は、上層塗膜が雨、空気、腐食性ガスなどの腐食因子の侵入を少なくする機能を持たせることで、安定錆生成速度を遅くさせることを目的としている。この方法では上層に着色して景観性を持たせることも可能である。しかし、この方法では、安定錆の生成前に塗膜が劣化、損傷した場合、流れ錆などの外観異常があり、また塗膜欠陥部分を基点とした局部腐食によるブリスター生成などの腐食形態をとりやすいことから、見苦しいブリスターや塗膜剥離、錆の流出を伴った劣化となることは避けられない。すなわち、上層塗膜の水や酸素などの環境遮断性を高めることで、通常の防食塗料と変わらない見苦しい劣化形態をとるなどの課題がある。
従って、この発明の目的は、上記課題を解決することにあり、錆安定化処理剤の自由な着色ができず景観性に劣るという問題と、従来の耐候性鋼用の着色塗料における劣化時の見苦しいブリスターやフィルム状剥離による景観異常の問題を解決することができる、表面処理耐候性鋼材および耐候性鋼材の表面処理方法を提供することにある。
この発明は、上述した目的を達成するためになされたものであって、下記を特徴とするものである。
請求項1記載の発明は、耐候性鋼の表面に、下層塗膜と任意の色調を有する上層塗膜とからなる二層塗膜が形成され、前記二層塗膜の水蒸気透過率が10〜1000g/m2・dayであり、前記下層塗膜の固形分あたりの顔料比率が重量比で50〜80%、前記上層塗膜の固形分あたりの顔料比率が重量比で30〜80%であり、かつ、前記下層塗膜の膜厚が10〜30μm、前記上層塗膜の膜厚が20〜60μmであることに特徴を有するものである。
請求項2記載の発明は、耐候性鋼を除錆処理後、前記耐候性鋼の表面に、固形分あたりの顔料比率が重量比で50〜80%の塗料を、乾燥膜厚10〜30μmで塗装して下層塗膜を形成し、乾燥後、前記下層塗膜上に、固形分あたりの顔料比率が重量比で30〜80%の、任意の色調を有する塗料を、乾燥膜厚で20〜60μmの範囲で塗装して上層塗膜を形成することに特徴を有するものである。
この発明によれば、客先の要望に応じて任意の着色が可能で、かつ耐候性鋼由来の安定錆の形成により、長期間の良好な景観の維持が可能である。
以下、この発明の実施の形態を詳細に説明する。
(対象鋼材)
この発明の表面処理耐候性鋼材は、Cu、Ni、Cr、P、Mo等の合金元素を少量含む低合金鋼である。また、処理面は、ブラスト処理等で表面のスケールや錆を落とした状態が好ましいが、必ずしもこの必要はない。
(水蒸気透過率)
この発明における上層塗膜と下層塗膜とを積層した二層塗膜の水蒸気透過率は、10〜1000g/m2・dayの範囲内である。水蒸気透過率は、40℃の条件で測定したものとする。水蒸気透過率の測定は、硬化被膜を単離して、JIS K−7129に規定された方法、あるいはこの方法に準じた方法で測定したものである。
この範囲は、一般の長期防食を目的とした塗料と比較し、著しく大きな水蒸気透過率であるが、上層塗膜と下層塗膜との合計の水蒸気透過率を、この範囲内とすることで塗膜下の安定錆が効率よく生成し、かつ流れ錆や塗膜の膨れ、フィルム状の剥離等の外観異常が極めて起こりにくい状態を維持したまま、長期間良好な着色景観を維持しうることを見出した。
図1に、塗膜の水蒸気透過率と屋外暴露(海岸地帯3年)でのブリスター径との関係を示す。
図1から明らかなように、通常の塗膜では劣化時にブリスター発生による塗膜剥離が起きるが、塗膜の水蒸気透過率が高まるに従い、ブリスターの発生が無くなり塗膜下で均一腐食が起きるようになる。均一腐食により生成する錆は、緻密で連続性が高く、長期的に安定錆へと成長していく錆と考えられる。但し、過剰に水蒸気透過率を高めると塗膜自体のバリア性が著しく低下し、塗膜下腐食時の流れ錆などの流出が問題となる。
このように大きな水蒸気透過率をもつ二層塗膜を鋼材表面に形成することにより、上述した効果が得られる理由は、塗膜下の乾湿繰り返しに効果的な寄与を及ぼしていること、ブリスターの原因となる塗膜上下の浸透圧発生を防止することが理由として考えられる。
図1から明らかなように、水蒸気透過率が10g/m2・day未満であると、不均一腐食が起きて、径の大きいブリスターが発生する。一方、1000g/m2・dayを超えると、ブリスターは発生しないが、塗膜下の腐食速度が大きくなりすぎ、流れ錆などの問題が起こりやすくなる。水蒸気透過率が10〜50g/m2・day未満では、径の小さいブリスターは発生するが、不均一腐食に影響は及ぼさない。従って、この発明では、水蒸気透過率を10〜1000g/m2・dayの範囲内とした。効率的な安定錆形成性と塗膜の長期耐候性の観点からは、50〜500m2・dayの範囲内が好ましい。
なお、水蒸気透過率測定用の単離被膜の作成には、この発明の表面処理耐候性鋼材の一部を有機溶剤等に浸漬して剥離させるか、予め、この発明の表面処理耐候性鋼材上の二層被膜と同一膜厚の被膜をポリエチレンやフッ素樹脂など塗膜が剥離しやすい素材の上に塗装し、硬化後、剥離させるか、水銀とアマルガムとを形成し得る亜鉛やスズ等の基板上に塗装し、硬化後、基板をアマルガムとして溶解して単離塗膜を得る等の方法を用いるのが好ましい。
(顔料比率と膜厚)
水蒸気透過率を上記範囲内とするための方法としては、下層および上層塗膜中の顔料の比率および膜厚をそれぞれコントロールすることが有効である。
この発明においては、耐候性鋼の表面に形成された下層塗膜と上層塗膜とからなる二層塗膜において、下層塗膜の固形分あたりの顔料比率は、重量比で50〜80%であり、上層塗膜の固形分あたりの顔料比率は、重量比で30〜80%である。
下層塗膜の顔料比率が50%未満あるいは上層塗膜の顔料比率が30%未満であると、水蒸気透過率が小さくなり、効果的な安定錆形成が損なわれる。一方、下層あるいは上層の顔料比率が80%を超えると、塗膜強度が劣化すると共に流れ錆が発生しやすくなる。さらに、上層塗膜の顔料比率が80%を超えると、表面の光沢が失われて外観が劣化する。
ここでの顔料とは、一般の処理剤に含有されうる無機顔料および有機顔料を表すが、この発明の目的からは無機顔料が好ましい。無機顔料としては、バライト、沈降性硫酸バリウム、白亜、沈降性炭酸カルシウム、胡粉、クレー、砥の粉、タルク、ケイソウ土、シリカ白、アルミナ白、石膏、サチン白、グロスホワイト、ベントナイト、ケイ酸カルシウム、沈降性炭酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、酸化チタン、亜鉛華、リトボン、硫化亜鉛、酸化ジルコン、アンチモン白、酸化スズ、カーボンブラック、油煙、黒鉛、鉄黒、亜鉛末、炭化ケイ素、ベンガラ等が挙げられる。上層塗膜においては、上記顔料に加えて各種の着色顔料を含有させ、任意の着色を行う。
水蒸気透過率を上記範囲内とし、かつ、錆安定化処理鋼材としての安定錆形成機能、塗膜風化過程における外観保持機能を維持するためには、下層膜厚が10〜30μmであることが好ましい。10μm未満であると、流れ錆抑制効果、安定錆形成効果が劣り、一方、30μmを超えると、塗膜風化過程における外観保持機能が低下するからである。上層塗膜は、20〜60μmの範囲内であること好ましい。20μm未満であると、外観保持機能、特に下地の隠蔽性が劣り、一方、60μmを超えると水蒸気透過率を本発明範囲内とすることが難しく、安定錆形成効果が低下するからである。
(下層塗膜成分)
この発明は、鉄イオンに対し捕捉沈着作用を有するアニオンと対カチオンとからなる少なくとも1種の塩、および、酸価10〜100のフリーのカルボキシル基を有する樹脂を含有する塗料を塗装することによって、下層塗膜を形成することを特徴とする。
この発明において、下層塗膜中に含有される鉄イオンに対し捕捉沈着作用を有するアニオンと対カチオンとからなる塩とは、腐食反応で生成する鉄イオンと反応し、ある条件下において沈着被膜を形成しうるアニオンと対カチオンとからなる塩のことを指す。かかるアニオンの例としては、リン酸イオン、クロム酸イオン、バナジン酸イオン、モリブデン酸イオン、タングステン酸イオン等が挙げられる。
これらの中で、リン酸イオンおよびモリブデン酸イオンの内の少なくとも1つをアニオンとした塩が含有された硬化塗膜であることが、錆安定化過程における流れ錆等による外観劣化を効率よく防ぐと共に、塗膜下に効率よく安定錆を生成し得ることから好ましい。具体的な例としては、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸二水素亜鉛、リン酸二水素カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸マグネシウムアンモニウム、リンモリブデン酸ナトリウム、リンモリブデン酸アルミニウム、トリポリリン酸二水素アルミニウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸カリウム、モリブデン酸カルシウム、モリブデン酸鉛等が挙げられる。
上記塩の下層塗膜中への添加量は、下層塗膜100重量部中1〜20重量部が好ましい。1重量部未満であると、塗膜風化過程における外観を良好に保つ効果が不足し、20重量部を超えると塗膜の強度が不足し、塗膜風化過程における外観がかえって悪くなるからである。
この発明において、下層塗膜を構成するフリーのカルボキシル基を有する樹脂とは、処理剤中の樹脂成分の分子中に官能基としてカルボキシル基が〜COOHの形で存在することを指し、アミンなどの塩基性化合物との塩の形となっていないことを意味する。このフリーのカルボキシル基を含有する樹脂の酸価10〜100の樹脂を含有する処理剤が、耐飛来塩分性が良好で好ましい。酸価が10未満であると耐飛来塩分性が劣り、100を超えると安定錆形成性能が劣るからである。
ベースの樹脂の種類は問わないが、例えば、ベースの樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、フッ素樹脂、ブチラール樹脂、ビニル系樹脂、アルキッド樹脂、ポリスルホンフミン酸、タンニン酸、陽イオン交換樹脂等のうちの1種以上をそのまま、あるいは適宜変性したものを使用することで得られる。
フリーのカルボキシル基を有する樹脂の含有量は、下層塗膜を形成する処理剤固形分100重量部に対し、20〜50重量部が好ましい。20重量部未満では、耐飛来塩分性、流れ錆防止性に劣り、50重量部を超えると、水蒸気透過率が小さくなり、これをこの発明の範囲内に制御することが困難となって、ブリスターが発生しやすくなる。また、フリーのアニオン性官能基を有する樹脂の種類としては、脂肪酸変性エポキシ樹脂と無水カルボン酸の反応生成物が最も外観保持性能、安定錆形成機能に優れるので好ましい。
(上層塗膜成分)
上層塗膜の成分については、上述した顔料濃度および膜厚範囲で、任意の色調を有する塗料であれば特に成分を限定するものではないが、好ましくは使用期間中にチョーキングなどによる膜厚の損耗や退色が少ないものが好ましい。具体的にはアクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、ふっ素樹脂などが好ましい。
上層塗膜中の顔料の含有量は、上層塗膜を形成する処理剤固形分100重量部に対して20〜70重量部とすることが好ましい。20重量部未満では、塗膜強度、流れ錆防止性が劣り、70重量部を超えると、水蒸気透過率が小さくなり、これをこの発明の範囲内に制御することが困難となって、ブリスターが発生しやすくなる。
(その他の成分)
この発明の表面処理耐候性鋼材の二層塗膜には、上記成分以外に、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸鉛等の硬化促進剤、増粘剤、その他の無機塩、溶剤、処理剤添加物等を含有することができる。
(耐候性鋼材の表面処理方法)
この発明の表面処理耐候性鋼材は、鋼材表面のスケールをサンドブラスト、ショットブラスト等で除去した後に、この発明で規定した二層塗膜を形成し得る処理剤、すなわち、上述した成分を含む錆安定化処理剤を塗布し、乾燥して二層被膜を形成するのが好ましい。錆安定化処理剤の鋼材表面への塗布方法は、通常の塗料と同様、エアスプレー、エアレススプレー、刷毛塗り等の方法が適用できる。
以下、この発明を実施例によりさらに説明する。
JIS G 3114に規定された耐候性鋼材(SMA 400)試験片(150mm×70mm×6mm)をブラスト処理した後に、表1に示した成分系の処理剤を所定の膜厚に塗布し、乾燥し、この発明の表面処理耐候性鋼材の実施例(No.1〜21、24〜27)と、この発明の範囲を外れた比較例(No.1〜10)、参考例22、23を得た。なお、下層塗膜中のフリーのカルボキシル基含有樹脂は、ヒマシ油変性エポキシ樹脂とヘキサハイドロフタリックアシッドとの反応生成物を用い、その酸価は、エポキシ樹脂に対するヘキサハイドロフタリックアシッドの比率を種々変えることによって調整した。
また、上層塗膜の樹脂としては、耐候性に優れたポリウレタン樹脂塗料、着色顔料としては、赤色系にはキナクリロンレッド系、緑色系にはフタロシアニングリーン系、青色系にはフタロシアニンブルー系、黄色系にはアンスラキノン系イエローを使用したが、耐候性に優れる着色顔料であれば、これら以外の物を用いても、効果は同様である。
水蒸気透過率は、トータル膜厚、および下層塗膜と上層塗膜との総顔料比率(着色顔料と体質顔料(タルク)の固形分中に占める重量部)を変更することにより調整した。なお、表1に記載した以外の成分として、硬化促進剤としてナフテン酸コバルトを0.1重量部、チタンキレート(有効成分50%)を1重量部添加した。その他、処理剤としての物性を調整するための添加剤を適宜添加した。表1中の重量部は、各塗膜中の重量部である。
Figure 0004400299
表1に記載した処理剤を塗布した耐候性鋼材を下記の方法で評価し、耐候性鋼の錆安定化処理剤としての性能を評価した。なお、水蒸気透過率は、各処理鋼材と同一の膜厚の単離塗膜を別途作成し、この単離塗膜について、JIS K−7129で規定される水蒸気透過率を40℃で測定した。
(1)田園地帯暴露(3年、南面30°暴露)による流れ錆の有無、安定錆形成の有無、および塗膜外観の良否。
(2)海岸地帯暴露(3年、南面30°暴露)による流れ錆の有無、安定錆形成の有無、および塗膜外観の良否。
(3)促進試験(JIS K−7129に規定されたサンシャインウエザーメーター5000時間)による流れ錆の有無、安定錆形成の有無、第二層塗膜の膜厚減少および変色、光沢の減少。
流れ錆:サンプルの下端に白色ペンキを塗装し、流れ錆による白色ペンキの汚染状態より評価した。
◎:全く見られない。
○:殆ど見られない。
△:多少見られる。
×:顕著に見られる。
安定錆形成:塗膜を剥がし、塗膜下の錆の状況を調べ、以下の評価をした。
◎:緻密で欠陥の少ない錆が連続的に形成されている。
○:緻密な錆が連続的に形成されているが、僅かに欠陥がある。
△:錆が形成されているものの、緻密さに欠け、欠陥も多い。
×:層状の剥がれやすい錆が形成されている。
塗膜外観:塗膜にフクレやフィルム状の塗膜剥離が発生しているかどうか調べた。
◎:フクレや剥離が全く見られない。
○:フクレか剥離のいずれかが、わずかに見られるが、外観上良好。
△:フクレと剥離が見られ、やや外観が悪い。
×:フクレ、剥離が顕著に見られ、外観が極めて悪い。
評価結果を表2に示す。
Figure 0004400299
表2から以下のことが分かった。
この発明の実施例に係る全ての鋼材は、田園環境、海岸環境の何れにおいても良好な外観保持機能と安定錆形成機能とを有し、かつ厳しい環境を模した促進試験においても良好な流れ錆防止機能を有し、更に何れの試験においても塗膜のフクレやフィルム状剥離が極めて少なく、良好な塗膜外観を保持していた。
従って、この発明の錆安定化処理剤を耐候性鋼材に適用することで、良好な外観を保持しつつ、鋼材のメンテナンスフリー化が図れ、従来の塗装の塗り替え等の費用が不要となるといった多大な効果が得られることが分かった。
これに対して、比較例1は、下層塗膜の顔料が本発明範囲を外れて少ないので、水蒸気透過率が低く、安定錆形成および塗膜外観に劣っている。
比較例2は、下層塗膜の顔料が本発明範囲を外れて多いので、流れ錆防止性に劣っていた。
比較例3は、下層塗膜に塩がなく、しかも、下層塗膜顔料が本発明範囲を外れて少ないので、水蒸気透過率が低く、従って、流れ錆防止性、安定錆形成に劣っていた。
比較例4は、下層塗膜の膜厚が本発明範囲を外れて薄いので、全ての評価において劣っていた。
比較例5は、下層塗膜の膜厚が本発明範囲を外れて厚いので、水蒸気透過率が低く、安定錆形成に劣っていた。
比較例6は、上層塗膜の顔料が本発明範囲を外れて少ないので、流れ錆防止性以外の評価が劣っていた。
比較例7は、上層塗膜の顔料が本発明範囲を外れて多いので、特に、海岸地帯暴露試験結果の評価に劣っていた。
比較例8は、上層塗膜の膜厚が本発明範囲を外れて薄いので、下地隠蔽性が悪く下地が透けて見えた。
比較例9は、上層塗膜の膜厚が本発明範囲を外れて厚いので、安定錆形成の評価が劣っていた。
比較例10は、上下層塗膜の膜厚が本発明範囲を外れて薄いので、全ての評価が劣っていた。
塗膜水蒸気透過率と屋外暴露(海岸地帯3年)でのブリスター径との関係を示すグラフである。

Claims (2)

  1. 耐候性鋼の表面に、下層塗膜と任意の色調を有する上層塗膜とからなる二層塗膜が形成され、前記二層塗膜の水蒸気透過率が10〜1000g/m2・dayであり、前記下層塗膜の固形分あたりの顔料比率が重量比で50〜80%、前記上層塗膜の固形分あたりの顔料比率が重量比で30〜80%であり、かつ、前記下層塗膜の膜厚が10〜30μm、前記上層塗膜の膜厚が20〜60μmであることを特徴とする表面処理耐候性鋼材。
  2. 耐候性鋼を除錆処理後、前記耐候性鋼の表面に、固形分あたりの顔料比率が重量比で50〜80%の塗料を、乾燥膜厚10〜30μmで塗装して下層塗膜を形成し、乾燥後、前記下層塗膜上に、固形分あたりの顔料比率が重量比で30〜80%の、任意の色調を有する塗料を、乾燥膜厚で20〜60μmの範囲で塗装して上層塗膜を形成することを特徴とする、耐候性鋼材の表面処理方法。
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