JP3418918B2 - 錆安定化処理鋼材および処理方法 - Google Patents

錆安定化処理鋼材および処理方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、錆安定化処理がな
された鋼材および錆安定化処理方法に関する。更に詳し
くは、錆安定化処理剤の硬化皮膜が表面に形成された、
Cu,Ni,Cr,P,Mo 等の合金元素を添加してなる耐候性鋼材
であって、耐候性鋼本来の安定錆が効率よく生成すると
共に、安定錆形成過程での流れ錆等による外観不良がな
く、あるいは更に処理剤皮膜下に安定錆を形成する際の
皮膜のフクレや剥離による外観悪化が極めて起こりにく
いことを目的とした錆安定化処理がなされた鋼材、およ
び錆安定化処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】耐候性鋼はCu,Ni,Cr,P,Mo 等の元素が少
量含有された低合金鋼であって、大気中に暴露すると腐
食し発錆する過程で保護性の強い錆層(安定錆)が自然
に形成される。そして前記錆層が形成された後はそれ以
降の鋼材の腐食は減少し、最終的には腐食が殆ど進行し
ない特性を持つ鋼材となる。
【0003】この様な耐候性鋼材は、形鋼、鋼板、鋼管
等各種鋼材に適用され、橋梁や鉄塔等の構造物として幅
広い用途があるが、次のような問題を有していた。
【0004】即ち、耐候性鋼材を裸使用する場合、鋼材
表面に保護性の強い安定した錆が形成されるまで5年以
上の長期間を要し、その間、浮き錆や流れ錆を生じ、流
出した錆汁により周囲環境を汚染し、外観を損なう問題
があった。
【0005】そこで、耐候性鋼の表面に錆安定化処理と
称される表面処理を行い、上記の問題を解決した鋼材に
関する技術が開示されている。この錆安定化処理鋼材
は、例えば、特開昭56−127774号公報では、カ
チオン型皮膜とアニオン型皮膜の2層皮膜が形成された
鋼材が、特公昭56−33991号公報では、下層に安
定錆成分を含有する樹脂層、上層に耐候性、耐腐食性に
優れた樹脂層を設けた2層被覆が形成された鋼材が、お
よび特許2666673号公報では、安定錆形成促進作
用を有する有機樹脂により被覆された鋼材について開示
されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかるに、上記従来技
術の内、特公昭56−33991号公報による方法で
は、安定錆形成過程の塗膜劣化過程での外観が悪く、塗
膜のフクレや剥離が発生し易い欠点がある。更に飛来塩
分に対する対応が不十分で、腐食性の厳しい環境での安
定錆形成能力が劣る欠点がある。また2層以上の塗装が
必要で、塗装作業性、塗装コストが上昇する欠点があ
る。
【0007】また特許2666673号公報では、安定
錆を早期に形成するため、処理後の外観不良が避けられ
ず、流れ錆等による周辺環境の汚損も問題となる。また
早期に形成した錆が真の安定錆として長期間機能するか
どうか、不明確である。
【0008】特開昭56−127774号公報記載の方
法では、カチオン型皮膜で流れ錆を防止し、アニオン型
皮膜で塩分に対する耐久性を増していることで、安定錆
形成環境を整え、効率的な安定錆形成を意図したもので
あるが、2層以上の異なる塗膜を形成する必要があり、
塗装作業性上問題がある。また安定錆形成能力とのバラ
ンス上、アニオン型皮膜の割合に制限があり、十分な耐
飛来塩分性が発揮できない点も問題であった。
【0009】本発明は、上記の課題を解決するためにな
されたものであって、飛来塩分等、腐食性アニオンの透
過がなく、安定錆が効率よく形成し、かつ、流れ錆を効
率よく防止することで、処理後の外観を著しく改善さ
せ、あるいは更に、皮膜下に安定錆が形成される過程に
おいて、皮膜のフクレや剥離を起こしにくくすること
で、暴露後から安定錆に置き換わるまでの間の外観が著
しく改善された、錆安定化処理剤鋼材および錆安定化処
理方法を提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】即ち、本発明は、(1)
鉄イオンに対し捕捉沈着作用を有するアニオンと対カチ
オンからなる、少なくとも1種以上の塩、およびマイナ
スの固定電荷を持つ樹脂組成物の硬化皮膜が表面に形成
された鋼材であって、更にその硬化皮膜の40℃における
水蒸気透過率が10〜1000g/m 2 ・day であることを特徴
とする錆安定化処理鋼材、(2)前記硬化皮膜を構成す
る樹脂組成物が少なくとも共役二重結合を有し、更に光
崩壊性官能基を有する構造を有することを特徴とする前
記(1)に記載の錆安定化処理鋼材、(3)前記硬化皮
膜100重量部に対し、無機顔料が30〜70重量部含
有されていることを特徴とする前記(1)または(2)
に記載の錆安定化処理鋼材、(4)前記硬化皮膜の膜厚
が10〜100 μm である前記(1)〜(3)のいずれかに
記載の錆安定化処理鋼材、(5)鉄イオンに対し捕捉沈
着作用を有するアニオンが、リン酸イオンおよび/また
はモリブデン酸イオンであることを特徴とする前記
(1)〜(4)のいずれかに記載の錆安定化処理鋼材、
(6)鋼材表面に前記(1)〜(5)のいずれかに記載
の硬化皮膜を形成しする処理液を塗布し、乾燥させるこ
とを特徴とする錆安定化処理方法、である。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を詳細
に説明する。
【0012】(対象鋼材)本発明の錆安定化処理鋼材と
して適用可能な鋼材は特に限定するものではない。普通
鋼に対しても効果は認められるが、耐候性鋼のようなC
u,Ni,Cr,P,Mo 等の合金元素を少量含む低合金鋼に対し
て特に有効である。また、処理面はブラスト処理等で表
面のスケールや錆を落とした状態が好ましいが、必ずし
もこの必要はない。
【0013】(塩)本発明において硬化皮膜中に含有さ
れる鉄イオンに対し捕捉沈着作用を有するアニオンと対
カチオンからなる塩とは、腐食反応で生成する鉄イオン
と反応し、ある条件下において沈着皮膜を形成しうるア
ニオンと対カチオンからなる塩のことを指す。かかるア
ニオンの例としては、リン酸イオン、クロム酸イオン、
ベリリウム酸イオン、ケイ酸イオン、チタン酸イオン、
バナジン酸イオン、マンガン酸イオン、セレニウム酸イ
オン、ジルコニウム酸イオン、モリブデン酸イオン、タ
ングステン酸イオン等が挙げられる。
【0014】これらの中で、リン酸イオンおよび/また
はモリブデン酸イオンをアニオンとした塩が含有された
硬化皮膜であることが錆安定化過程における流れ錆等に
よる外観劣化を効率よく防ぐと共に、皮膜下に効率よく
安定錆を生成しうるので好ましい。具体的な例として
は、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、リン酸アンモニ
ウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸カドミウム、リ
ン酸カリウム、リン酸カルシウム、リン酸銀、リン酸ク
ロム、リン酸コバルト、リン酸水銀、リン酸水素アンモ
ニウムナトリウム、リン酸水素ウラニル、リン酸水素ス
トロンチウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸水素
二カリウム、リン酸水素二銀、リン酸水素二ナトリウ
ム、リン酸水素バリウム、リン酸水素マグネシウム、リ
ン酸水素マンガン、リン酸セリウム、リン酸タリウム、
リン酸鉄、リン酸銅、リン酸トリウム、リン酸ナトリウ
ム、リン酸鉛、リン酸二水素亜鉛、リン酸二水素カドミ
ウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸二水素カリウ
ム、リン酸二水素カルシウム、リン酸二水素ナトリウ
ム、リン酸二水素バリウム、リン酸二水素マンガン、リ
ン酸二水素リチウム、リン酸ニッケル、リン酸バリウ
ム、リン酸ビスマス、リン酸マグネシウム、リン酸マグ
ネシウムアンモニウム、リン酸マンガン、リン酸リチウ
ム、リンタングステン酸ナトリウム、リンモリブデン酸
ナトリウム、リンモリブデン酸アルミニウム、リンモリ
ブデン酸アンモニウム、トリポリリン酸二水素アルミニ
ウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸亜鉛、モ
リブデン酸アンモニウム、モリブデン酸カリウム、モリ
ブデン酸カルシウム、モリブデン酸鉛等が挙げられる。
これら以外に、クロム酸塩、バナジン酸塩、タングステ
ン酸塩等、他の鉄イオンを捕捉沈着しうる塩を添加する
ことも出来る。
【0015】硬化皮膜中の添加量は硬化皮膜100重量
部中1〜10重量部が好ましい。この範囲以下であると
外観を良好に保つ効果が不足し、この範囲以上であると
皮膜の強度が不足し、外観がかえって悪くなる。
【0016】(マイナスの固定電荷を持つ樹脂組成物)
本発明におけるマイナスの固定電荷を持つ樹脂組成物と
は、樹脂、顔料その他の作用により、処理剤中の固定電
荷がマイナスである樹脂組成物のことを指し、具体的に
は処理剤中の樹脂成分の分子中に官能基としてカルボキ
シル基、スルホン基、リン酸基、フェノール性水酸基等
を有する樹脂組成物である。これらの官能基を有し、処
理剤の硬化皮膜を形成しうる樹脂であれば、ベースの樹
脂の種類は問わないが、例えばベースの樹脂としてはエ
ポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アク
リル樹脂、ポリウレタン樹脂、フッ素樹脂、ブチラール
樹脂、ビニル系樹脂、アルキッド樹脂、ポリスルホンフ
ミン酸、タンニン酸、陽イオン交換樹脂等のうちの1種
以上をそのまま、あるいは適宜変性したものを使用する
ことで得られる。
【0017】その中でも特に、カルボキシル基、スルホ
ン基等のフリーのアニオン性官能基を有する酸価10〜
100の樹脂を含有する処理剤が、耐飛来塩分性が良好
で好ましい。酸価10未満であれば耐飛来塩分性が劣
り、100超えでは安定錆形成性能が劣る。
【0018】処理剤固形分100重量部に対し、フリー
のアニオン性官能基を有する樹脂の含有量は、皮膜強度
と皮膜の劣化過程の外観保持機能のバランスの観点から
20〜50重量部が好ましい。またフリーのアニオン性
官能基を有する樹脂の種類としては、脂肪酸変性エポキ
シ樹脂と無水カルボン酸の反応生成物がもっとも外観保
持性能、安定錆形成機能に優れ、好ましく用いられる。
【0019】(共役二重結合を含む樹脂組成物)本発明
における、共役二重結合を有する樹脂組成物とは、複数
個の二重結合が単結合を挟んで存在した分子骨格を有す
る樹脂組成物で、非局在化したπ電子雲を有するので、
紫外線や可視光等を吸収しやすく、皮膜の表層からの劣
化による良好な風化性に寄与する。この様な共役二重結
合を有する樹脂組成物としては、ベンゼン、ナフタレ
ン、インデン、テトラリン、アントラセン、フェナント
レン等の芳香族炭化水素、フラン、チオフェン、ピロー
ル、ピラン、チオピラン、ピリジン、インドール、キノ
リン、プリン等の複素環式化合物等が上げられるが、ブ
タジエン等の脂肪族ポリエンでもよい。これらの中で、
特にベンゼン環を含むフェニル基、フェニレン基を含有
するものが、本発明の処理剤の外観保持機能上最も優
れ、好ましく用いられる。
【0020】(光崩壊性官能基)更に、本発明における
樹脂組成物に含まれる光崩壊性官能基とは、紫外線によ
り、主にNorrish I 型、およびNorrish II型の光崩壊反
応を行いうる官能基であり、ケトン、エステルが代表的
であるが、本発明においてはエステル基を光崩壊性官能
基として含有するものが、崩壊速度が適度であり本発明
の目的上好ましい。
【0021】上記の共役二重結合と光崩壊性官能基を有
し、マイナスの固定電荷を有する樹脂組成物としては、
脂肪酸変性芳香族系エポキシ樹脂と無水カルボン酸の反
応生成物が、錆安定化処理剤として適度な風化特性、外
観保持機能を有し、かつ耐飛来塩分性にも優れるので、
特に好ましく用いられる。
【0022】(水蒸気透過率)本発明における錆安定化
処理鋼材表面の硬化皮膜は、40℃における水蒸気透過率
が10〜1000g/m 2 ・day の範囲である。水蒸気透過率は
硬化皮膜を単離して、JIS K-5400に規定された方法、あ
るいはこの方法に準じた方法で測定したものである。こ
の範囲は一般の防食用塗料と比較し、著しく大きな水蒸
気透過率であるが、本発明者らは、鉄イオンに対し捕捉
沈着作用を有するアニオンと対カチオンからなる、少な
くとも1種以上の塩、およびマイナスの固定電荷を持つ
樹脂組成物の硬化皮膜の膜厚に関わらず、水蒸気透過率
をこの範囲とすることで皮膜下の安定錆が効率よく生成
し、かつ流れ錆や皮膜の膨れ、フィルム状の剥離等の外
観異常が極めて起こりにくいことを見出した。この様に
大きな水蒸気透過率をもつ硬化皮膜を鋼材表面に形成す
ることで、上記のような効果がみられることは予期せぬ
効果であるが、皮膜下の乾湿繰り返しに効果的な寄与を
及ぼしていること、皮膜フクレの原因となる皮膜上下の
浸透圧発生を防止することが理由として考えられる。な
お、水蒸気透過率が10g/m 2 ・day 未満であると、効率
的な安定錆形成が損なわれ、1000g/m 2 ・day 超えであ
ると、皮膜下の腐食速度が大きくなりすぎ、流れ錆など
の問題が起こりやすくなる。
【0023】尚、水蒸気透過率測定用の単離皮膜の作成
には、本発明の処理鋼材の一部を有機溶剤等に浸漬して
剥離させる、あるいは予め本発明の処理鋼材上の硬化皮
膜と同一膜厚の皮膜をポリエチレンやフッ素樹脂など皮
膜が剥離しやすい素材の上に塗装し、硬化後剥離させ
る、あるいは水銀とアマルガムを形成しうる亜鉛やスズ
等の基板上に塗装し、硬化後基板をアマルガムとして溶
解し単離皮膜を得る、等の方法が好ましく用いられる。
【0024】また、水蒸気透過率を前記の範囲とするた
めの方法としては、皮膜中の顔料の比率を高める、皮膜
構成樹脂の極性基含有率を高める、皮膜の膜厚を薄くす
る、皮膜構成樹脂の密度を下げる、等の方法があるが、
皮膜の外観異常を最も効果的に抑制する手段としては、
皮膜中の顔料の比率を高めるのが効果的である。即ち、
硬化皮膜100重量部中に顔料を30〜70重量部の範
囲で含有することが好ましい。ここでの顔料とは、一般
の処理剤に含有されうる無機顔料および有機顔料を表す
が、本発明の目的からは無機顔料が好ましい。更に無機
顔料としては、バライト、沈降性硫酸バリウム、白亜、
沈降性炭酸カルシウム、胡粉、クレー、砥の粉、タル
ク、ケイソウ土、シリカ白、アルミナ白、石膏、サチン
白、グロスホワイト、ベントナイト、ケイ酸カルシウ
ム、沈降性炭酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、鉛
酸カルシウム、酸化チタン、亜鉛華、リトボン、硫化亜
鉛、鉛白、酸化ジルコン、アンチモン白、酸化スズ、カ
ーボンブラック、油煙、黒鉛、鉄黒、亜鉛末、亜酸化
鉛、炭化ケイ素、ベンガラ、鉛丹、朱、カドミウム赤、
カドミウム水銀赤、モリブデン赤、亜酸化銅、アンバ
ー、黄鉛、ジンククロメート、カドミウム黄、合成オー
カ、チタン黄、アンチモン黄、バリウム黄、ストロンチ
ウム黄、クロム緑、酸化クロム緑、ビリジアン、亜鉛
緑、コバルト緑、エメラルド緑、マンガン緑、紺青、群
青、コバルト青、セルリアン青、マンガン青、マンガン
紫、濃口コバルト紫、淡口コバルト紫、マルス紫、アル
ミ粉等が上げられる。
【0025】これら顔料を適宜組み合わせ、所定の配合
量とすれば、いずれの顔料でもよいが、特に処理剤皮膜
の色が、概略安定錆と同様の濃褐色で有ることが好まし
く、これらの観点から、特にタルク、ベンガラ、鉄黒を
配合することが好ましい。
【0026】また、水蒸気透過率を前記の範囲とし、か
つ、錆安定化処理鋼材としての安定錆形成機能、皮膜風
化過程における外観保持機能を維持するため、硬化皮膜
の膜厚を10〜100 μm の範囲とすることが好ましい。こ
れ未満であると、流れ錆を抑制する効果が劣り、一方こ
れ越えであると、塗膜風化過程における外観保持機能が
低下する。
【0027】(その他の成分)本発明の錆安定化処理鋼
材の硬化皮膜には、上記以外に、ナフテン酸コバルト、
ナフテン酸鉛等の硬化促進剤、増粘剤、その他の無機
塩、溶剤、処理剤添加物等を含有することが出来る。
【0028】(錆安定化処理鋼材の製造方法)本発明の
錆安定化処理鋼材は、鋼材表面のスケールをサンドブラ
スト、ショットブラスト等で除去した後に、本発明で規
定した硬化皮膜を形成しうる処理剤、すなわち前記した
成分を含む錆安定化処理剤を塗布し、乾燥して硬化皮膜
を形成するのが好ましい。錆安定化処理剤の鋼材表面へ
の硬化皮膜形成方法は、通常の塗料と同様、エアスプレ
ー、エアレススプレー、刷毛塗り等の方法が適用でき
る。
【0029】
【実施例】以下、本発明の実施例を説明する。
【0030】JIS G 3114に規定された耐候性鋼材(SMA 4
00) 試験片(150mm ×70mm×6mm )をブラスト処理した
後に表1〜3に示した成分系の処理剤を所定の膜厚塗
布、乾燥し、本発明の錆安定化処理鋼材を得た。なお、
基体樹脂にカルボキシル基またはスルホン基の何れかの
フリーのアニオン性官能基を有する樹脂を配合した場
合、カルボキシル基の場合にはヒマシ油変性エポキシ樹
脂とヘキサハイドロフタリックアシッドとの反応生成物
を用い、酸価はエポキシ樹脂に対するヘキサハイドロフ
タリックアシッドの比率を種々変えることで調整した。
またスルホン基の場合にはスルホン化ポリスチレン−ジ
ビニルベンゼン共重合体とヒマシ油変性エポキシ樹脂を
混合したものを用い、酸価は混合比を種々変えることで
調整した。また水蒸気透過率は塗膜中の顔料の比率、お
よび塗膜の膜厚を種々変えることで調整した。また着色
顔料としては、ベンガラと鉄黒を1:3の重量比率で混
合した。尚、表1〜3に記載した以外の成分として、硬
化促進剤としてナフテン酸コバルトを0.1重量部、ナ
フテン酸鉛を0.1重量部、その他処理剤としての物性
を調整するための添加剤を適宜添加した。尚表1〜3中
の重量部は硬化塗膜中の重量部である。
【0031】表1〜3に記載した処理剤を塗布した耐候
性鋼材を下記の方法で評価し、耐候性鋼の錆安定化処理
剤としての性能を評価した。尚、水蒸気透過率は、各処
理鋼材と同一の膜厚の単離塗膜を別途作成し、この単離
塗膜について、JIS K-5400規定の水蒸気透過率を40℃で
測定した。
【0032】(1) 田園地帯暴露( 3年、南面30°暴
露) による流れ錆有無、安定錆形成の有無、および塗膜
外観の良否。
【0033】(2) 海岸地帯暴露( 3年、南面30°暴
露) による流れ錆有無、安定錆形成の有無、および塗膜
外観の良否。
【0034】(3)促進試験(JIS K-5400 に規定された塩
水噴霧試験、1ヶ月) による流れ錆有無、安定錆形成の
有無、および塗膜外観の良否で評価した。
【0035】流れ錆:サンプルの下端に白色ペンキを塗
装し、流れ錆による白色ペンキの汚染状態より評価し
た。 ◎:全く見られない、○:殆ど見られない、 △:多少見られる、×:顕著に見られる
【0036】安定錆形成:塗膜を剥がし、塗膜下の錆の
状況を調べ、以下の評価をした。 ◎:緻密で欠陥の少ない錆が連続的に形成されている ○:緻密な錆が連続的に形成されているが、僅かに欠陥
がある △:錆が形成されているものの、緻密さに欠け、欠陥も
多い ×:層状の剥がれやすい錆が形成されている
【0037】塗膜外観:塗膜にフクレやフィルム状の塗
膜剥離が発生しているかどうか調べた。 ◎:フクレや剥離が全く見られない ○:フクレか剥離のいずれかが、わずかに見られるが、
外観上良好 △:フクレと剥離が見られ、やや外観が悪い ×:フクレ、剥離が顕著に見られ、外観が極めて悪い 評価結果を表1 〜3に併せて示す。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
【表3】
【0041】表1〜3から以下のことが分かる。本発明
の錆安定化処理を適用された発明例の鋼材は、田園環
境、海岸環境のいずれにおいても良好な外観保持機能と
安定錆形成機能を有し、かつ厳しい環境を模した促進試
験においても良好な流れ錆防止機能を有し、あるいは更
にいずれの試験においても塗膜のフクレやフィルム状剥
離が極めて少なく、良好な塗膜外観を保持する。
【0042】特に、前記硬化皮膜を構成する樹脂組成物
が共役二重結合を有し、更に光崩壊性官能基を有する構
造を有することで、一層優れた外観保持機能と安定錆形
成機能の両立が図れる。
【0043】また、硬化皮膜100重量部に対し、無機
顔料が30〜70重量部含有されていることで、一層優
れた外観保持機能と安定錆形成機能の両立が図れる。
【0044】また、硬化皮膜の膜厚を10〜100 μm とす
ることで、一層優れた外観保持機能と安定錆形成機能の
両立が図れる。
【0045】さらに、鉄イオンに対し捕捉沈着作用を有
するアニオンをリン酸イオンおよび/またはモリブデン
酸イオンとすることで、一層優れた外観保持機能と安定
錆形成機能の両立が図れる。
【0046】
【発明の効果】以上述べたように、本発明の錆安定化処
理剤の硬化皮膜を形成した鋼材は、田園環境、海洋環境
のいずれにおいても流れ錆防止性能と効率的な安定錆形
成性能を兼ね備えており、非常に厳しい促進試験におい
ても十分な流れ錆防止性能、あるいは更に皮膜のフク
レ、フィルム状剥離防止効果を有することが分かった。
【0047】本発明の錆安定化処理剤を耐候性鋼材に適
用することで、良好な外観を保持しつつ、鋼材のメンテ
ナンスフリー化が図れ、従来の塗装の塗り替え等の費用
が不要となり、その経済効果は計り知れない。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平11−241174(JP,A) 特開 平11−241180(JP,A) 特開 平5−271574(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C23C 22/00 - 22/86

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鉄イオンに対し捕捉沈着作用を有するア
    ニオンと対カチオンからなる、少なくとも1種以上の
    塩、およびマイナスの固定電荷を持つ樹脂組成物の硬化
    皮膜が表面に形成された鋼材であって、更にその硬化皮
    膜の40℃における水蒸気透過率が10〜1000g/m 2 ・day
    であることを特徴とする錆安定化処理鋼材。
  2. 【請求項2】 前記硬化皮膜を構成する樹脂組成物が少
    なくとも共役二重結合を有し、更に光崩壊性官能基を有
    する構造を有することを特徴とする請求項1に記載の錆
    安定化処理鋼材。
  3. 【請求項3】 前記硬化皮膜100重量部に対し、無機
    顔料が30〜70重量部含有されていることを特徴とす
    る請求項1または2に記載の錆安定化処理鋼材。
  4. 【請求項4】 前記硬化皮膜の膜厚が10〜100 μm であ
    る請求項1〜3のいずれかに記載の錆安定化処理鋼材。
  5. 【請求項5】 鉄イオンに対し捕捉沈着作用を有するア
    ニオンが、リン酸イオンおよび/またはモリブデン酸イ
    オンであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに
    記載の錆安定化処理鋼材。
  6. 【請求項6】 鋼材表面に請求項1〜5のいずれかに記
    載の硬化皮膜を形成しうる処理液を塗布し、乾燥させる
    ことを特徴とする錆安定化処理方法。
JP25924699A 1999-09-13 1999-09-13 錆安定化処理鋼材および処理方法 Expired - Lifetime JP3418918B2 (ja)

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