JP2827781B2 - 鋼材の表面処理方法 - Google Patents

鋼材の表面処理方法

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    • C23CCOATING METALLIC MATERIAL; COATING MATERIAL WITH METALLIC MATERIAL; SURFACE TREATMENT OF METALLIC MATERIAL BY DIFFUSION INTO THE SURFACE, BY CHEMICAL CONVERSION OR SUBSTITUTION; COATING BY VACUUM EVAPORATION, BY SPUTTERING, BY ION IMPLANTATION OR BY CHEMICAL VAPOUR DEPOSITION, IN GENERAL
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    • C23C22/82After-treatment
    • C23C22/83Chemical after-treatment
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、鋼材の表面処理方法に
係り、大気腐食環境に対する保護作用を有する錆層を、
流れ錆等による美観喪失を伴わずに形成する、いわゆる
耐候性安定錆を促進生成させるる鋼材の処理方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】一般に鋼にP,Cu,Cr,Ni等の元
素を添加することにより、大気中における耐食性を向上
させることができる。これらの低合金鋼は耐食性鋼と呼
ばれるが、屋外において数年で腐食に対して保護性のあ
る錆(以下、耐候性錆という)を形成し、以後塗装等の
耐食処理作業を不要とするいわゆるメインテナンスフリ
ー鋼である。
【0003】しかしながら、耐候性錆が形成されるまで
に数年かかるため、それまでの期間中に赤錆や黄錆等の
浮き錆や流れ錆を生じてしまい、外見的に好ましくない
ばかりでなく周囲の環境の汚染原因にもなるという問題
点を残している。特に、海塩粒子飛来環境下においては
その傾向が大きな問題であった。
【0004】この問題については、たとえば特開平1−
142088号に示されているように、リン酸塩被膜を
形成させる表面処理方法が開示されている。しかしこの
方法は、リン酸塩被膜を形成させる以前に適当な前処理
を施す必要がある等処理の内容が複雑であり、また鋼材
の溶接が必要な場合は溶接部に処理を施すことは容易で
はなく、建築構造物には適用が困難なものである。
【0005】また、従来より耐候性鋼の表面に塗装を施
すことや、リン酸塩被膜を形成させた上で塗装を施す等
の表面処理方法が行われているが、塗装により耐候性錆
の生成が遅くなり、また塗膜自体が劣化し外観を著しく
損ねる等の問題がある。
【0006】さらに、海岸地帯など海塩粒子飛来環境中
においては、耐候性鋼であっても耐候性錆の形成は困難
な環境が多く、上述の処理を施しても耐候性錆が形成さ
れないのが実情である。
【0007】一方、本発明者等は、特願平4−1997
01号において、鋼材表面あるいは鋼材の錆層に特定の
水溶液を塗布することにより、耐候性錆の生成を促進す
る方法を提案した。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記の特願平
4−199701号による方法においても、安定錆の保
護性被膜を生成するまでに時間を要し、その間の流れ錆
を完全に防止することはできない。すなわち、最初の水
溶液処理後pH7の環境としても鋼材表面の錆層が十分
成長していない場合は、連続した安定錆被膜を形成する
のに時間を要し、流れ錆の原因となる。また、十分に成
長している錆層に上記処理を施したとしても、安定錆に
変態するまでに降雨があると、やはり流れ錆を生じるこ
ととなるものである。
【0009】そこで、本発明の主たる課題は、耐候性鋼
の表面あるいは錆層の施工性および経済性の優れた表面
処理を行うことにより、赤錆や黄錆等の流れ錆を生じる
ことなく、早期に耐候性錆を形成させることにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、課題解決
のため鋭意研究を重ねた結果次の知見を得た。すなわ
ち、まず鋼材表面あるいは鋼材の錆層にCr,Cu,
P,Niイオン等を含有した水溶液を塗布する。その
後、鋼材表面の錆層にOH- を供給し、pH7を超える
環境とするか、あるいは上記水溶液にα−FeOOHの
粉末を加えた水溶液を塗布する処理を施す。さらにその
後、乾燥膜厚で5〜150μmの有機樹脂被膜を施すこ
とにより、以後大気腐食環境中で形成される安定錆およ
びすでに形成されている錆層の安定錆層への変態を、流
れ錆等の発生を伴わずに早期に形成できるものである。
この知見に基づく本発明の要旨は、次記の通りである。
【0011】<第1の発明> 鋼材表面あるいは鋼材の錆層に、0.2〜12.0重量
%のクロム(III)イオンを含む水溶液および0.3〜
7.0重量%の銅(II)イオンを含む水溶液の少なくとも
一方の水溶液を塗布した後、鋼材表面に形成された錆層
にOH- を供給し、pH7を超える環境とし、α−Fe
OOHの生成条件を与えた後、さらにその上層に乾燥膜
厚で5〜150μmの有機樹脂被覆を施すことを特徴と
する鋼材の表面処理方法。
【0012】<第2の発明> 鋼材表面あるいは鋼材の錆層に、0.2〜12.0重量
%のクロム(III) イオンを含む水溶液および0.3〜
7.0重量%の銅(II)イオンを含む水溶液の少なくとも
一方の水溶液と、Fe,P,Niイオンのうちの一種あ
るいは二種以上を0.1〜10.0重量%含む水溶液と
の混合水溶液を塗布した後、鋼材表面に形成された錆層
にOH- を供給し、pH7を超える環境とし、α−Fe
OOHの生成条件を与えた後、さらにその上層に乾燥膜
厚で5〜150μmの有機樹脂被覆を施すことを特徴と
する鋼材の表面処理方法。
【0013】<第3の発明>鋼材の表面あるいは鋼材の
錆層に、0.2〜12.0重量%のクロム(III) イオン
を含む水溶液および0.3〜7.0重量%の銅(II)イオ
ンを含む水溶液の少なくとも一方の水溶液と、その水溶
液0.005〜2倍の重量を有するα−FeOOHの粉
末との混合溶液を塗布し、さらにその上層に乾燥膜厚で
5〜150μmの有機樹脂被覆を施すことを特徴とする
鋼材の表面処理方法。
【0014】<第4の発明>鋼材の表面あるいは鋼材の
錆層に、0.2〜12.0重量%のクロム(III) イオン
を含む水溶液および0.3〜7.0重量%の銅(II)イオ
ンを含む水溶液の少なくとも一方の水溶液と、Fe,
P,Niイオンのうちの一種あるいは二種以上を0.1
〜10.0重量%を含む水溶液との混合水溶液と、この
混合水溶液の0.005〜2倍の重量を有するα−Fe
OOHの粉末との混合溶液を塗布し、さらにその上層に
乾燥膜厚で5〜150μmの有機樹脂被覆を施すことを
特徴とする鋼材の表面処理方法。
【0015】なお、ここでいう処理前の鋼材表面に形成
された錆層とは、水溶液が関与する腐食により形成する
沈澱型被膜を指しており、熱間加工時に形成される酸化
スケールなどは含まない。また、その錆層は屋外に大気
暴露することにより容易に形成されるものであるが、人
工的に鋼材表面を種々の水溶液を用いた乾湿の繰り返し
環境下に置くことにより、その頻度に応じて早期に形成
される。
【0016】
【作用】大気腐食環境中で錆が化学的に安定であれば、
錆の相変態や溶解に伴う電気化学反応が抑制される。さ
らに、化学的に安定な錆が物理的にも緻密であれば、割
れや空隙等の構造的欠陥が生成し難く、酸素や水さらに
大気中の腐食性物質の侵入を防ぐことにもなる。その結
果、大気腐食環境を遮断し易く、また浮き錆や流れ錆の
根本的な原因であるFeイオンの溶出を軽減できること
となる。
【0017】本発明者等は、鋼表面が通常の大気腐食環
境中で安定な最終生成化合物であるα−FeOOHで覆
われており、かつそのα−FeOOH錆中にCr,C
u,P,Niが含まれている場合には、その鋼の耐候性
が極めて良好となり、特に耐海塩粒子性に優れることを
見い出した。また、このα−FeOOHの生成過程にお
いて所定膜厚の有機樹脂被覆を施すことにより浮き錆、
流れ錆を伴うことなくα−FeOOH被膜を形成させる
ことができることを見い出した。なお、本発明で言う鋼
とはステンレス鋼やNi基合金等通常沈澱型被膜である
いわゆる錆を生成しないものは含まず、主として耐候性
鋼等の低合金鋼や炭素鋼を指す。
【0018】以下本発明について項を分けて詳細に説明
する。 (1)0.2〜12.0重量%(以下%としては、全て
重量%である)のクロム(III)イオンを含む水溶液、
0.3〜7.0%のの銅(II)イオンを含有する水溶液の
一方または両方を塗布することの効果 鋼の構造が緻密であれば物理的に大気腐食環境を遮断し
易く、また浮き錆や流れ錆の根本的な原因であるFeイ
オンの溶出を軽減する。しかしながら、錆中に割れや細
孔があると水や酸素の供給経路となり、錆の防食性が低
減する。クロム(III) イオンを含む水溶液、銅(II)イオ
ンを含有する水溶液の塗布目的は、形成される錆を緻密
にし、割れや細孔の少ない構造にすることである。この
効果を得るためには、0.2%以上の濃度のクロム(II
I) イオンを含む水溶液、あるいは0.3%以上の濃度
の銅(II)イオンを含有する水溶液が必要であり、クロム
(III) イオン濃度が12.0%を超えても、また、銅(I
I)イオン濃度が7.0%を超えても効果は飽和し、経済
的にも不利となるので、クロム(III) イオン濃度の範囲
を0.2〜12.0%に、銅(II)イオン濃度の範囲を
0.3〜7.0%にそれぞれ限定した。
【0019】なお、硫酸イオンはα−FeOOH育成に
効果があるので、クロム(III) イオンおよび銅(II)イオ
ンを用いる際に、硫酸クロム(III) や硫酸銅(II)を使用
するのが、特に効果的である。
【0020】(2)イオン添加の効果 Fe,P,Niイオンをクロム(III) イオンあるいは銅
(II)イオン含有水溶液に添加することにより効果をより
高め、錆と鋼との界面構造を緻密にするとともに、錆粒
子自体を緻密にする効果がある。そのためには、Fe,
P,Niイオンの一種あるいは二種以上を0.1%以
上、当該水溶液に含んでいる必要があり、好ましくは二
種以上のイオンを添加するのがよい。しかし、10.0
%を超える添加では効果は飽和し経済的にも不利となる
ので添加イオン濃度の範囲を0.1〜10.0%に限定
した。
【0021】(3)錆層にOH- を供給し、pH7を超
える環境とすることの効果 鋼材表面の錆層にOH- を供給し、pH7を超える環境
とすることの効果は、鋼から溶出したFeイオンを環境
に対し安定なα−FeOOHに早期に変換すること、お
よびすでに形成されている錆層を安定なα−FeOOH
に早期に変換することである。これは、たとえばNaO
H水溶液を塗布することで容易に実現できる。なお、ア
ンモニア水やKOH水溶液等、他のアルカリ性の水溶液
を用いても同様の効果が得られる。また、処理時にpH
7を超えればよいが、初期に生成する錆層を早期にα−
FeOOHに変換するためには、特にpH9以上とする
のが望ましい。ただし、pH11を超えると、上塗りの
有機樹脂被膜の接着力を低下させてしまうため、pH9
〜11であるのが望ましい。また、作業環境改善の観点
からは、少々安定錆化を遅らせても中性環境での処理を
することは望ましいことである。一方、この処理は耐候
性鋼のようなCr、Cu、P、Ni等を含む低合金鋼に
特に有効であるが、炭素鋼にも効果がある。
【0022】(4)α−FeOOH粉末添加の効果 耐候性に優れた保護性安定錆は、α−FeOOHを主成
分としている。このため、最初の処理水溶液中にα−F
eOOHを混合しておくと、この粉末自身が安定錆の構
成要素として働くことにより連続した安定錆被膜の形成
を促進することができる。また、α−FeOOHは結晶
核として働くことにより、腐食して溶解してくるFeイ
オンのα−FeOOHへの変換を加速させる働きをも有
するものと考えられる。
【0023】この効果を得るには、鋼材に塗布する水溶
液の0.005倍以上の重量を有するα−FeOOHの
粉末を水溶液に添加する必要がある。また、2倍を超え
る量のα−FeOOHの粉末を添加した場合、その効果
は飽和するばかりか、上塗りの有機樹脂被膜の接着力を
低下させ、被膜の剥落の原因ともなるため、好ましくな
い。
【0024】(5)有機樹脂被覆の効果 上塗りの有機樹脂被覆を5〜150μmの膜厚に限定し
た理由を以下に述べる。まず、5μm以上としたのは、
5μmより薄い膜厚では、バリアー効果が低く、下地鋼
材で生成されてくるFeイオンの滲み出しを完全に防止
することができず、流れ錆を生じてしまうからである。
特に、海塩粒子飛来環境において、塩素イオンの透過に
より過度の腐食を生じ、連続した安定錆被膜の生成が阻
害されてしまうという理由にもよっている。
【0025】一方、150μmを超える膜厚とすると、
経済的に不利となるばかりでなく、錆層が形成されてい
ない下地に150μmを超える被覆をすると、バリアー
効果が高くなりすぎて下地鋼面に安定錆を形成するのに
かえって長時間を要するようになる。安定錆が生成する
以前に、衝撃等何らかの理由により被膜が剥落すると、
その部分から流れ錆が生じ、また安定錆の形成が阻害さ
れる可能性があるため、有機樹脂被膜を150μm以下
として、早期に安定錆を形成させることが好ましい。
【0026】上述のように、本発明に係る有機樹脂によ
る上塗り被膜は、適度の水分や酸素を鋼面に透過させる
ことにより下地鋼面で安定錆生成あるいは変態反応を進
行させ、その間Feイオンの滲み出しを防止し、流れ錆
を生じることなく安定錆生成を完了させる働きを持つも
のである。
【0027】また、本発明において使用される有機樹脂
は特に限定されるものではなく、エポキシ樹脂、ウレタ
ン樹脂、ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹
脂、アルキド樹脂、ブチラール樹脂、フタル樹脂等を例
示できる。一方、上記樹脂を塗料化して塗装を行うにあ
たり、有機溶剤系の塗料にしても、水性塗料にしても特
に問題はない。ただし、フェノール樹脂のように硬化に
加熱を必要とする樹脂、あるいはポリエチレン樹脂のよ
うに接着するときに加熱して溶融させる必要がある樹脂
は、施工性、経済性の点で好ましくない。
【0028】他方、本発明にける有機樹脂被膜中には、
ベンガラ、二酸化チタン、カーボンブラック、フタルシ
アニンブルー等の着色顔料、タルク、シリカ、マイカ、
硫酸バリウム、炭酸カルシウム等の体質顔料、酸化クロ
ム、クロム酸亜鉛、クロム酸鉛、塩基性硫酸鉛等の防錆
顔料、その他チキソ剤、分散剤、酸化防止剤等慣用の添
加剤を含むことができる。特に、上塗りの有機樹脂被膜
が将来的に損耗ないし剥落しても外観を損なわないよう
に、有機樹脂被膜は着色顔料により安定錆と同色ないし
はチョコレート色にしておくことが好ましい。また、こ
れを目的として有機樹脂被膜中にα−FeOOHを含ま
せておくこともできる。
【0029】以上述べてきた下塗り処理液、上塗り塗料
はどちらも、通常の塗装方法と同じくエアスプレー、エ
アレススプレーあるいは刷毛塗り等いずれの方法によっ
ても塗布することができるため、場所を選ばず塗装施工
が可能である。また、下塗り、上塗りそれぞれ1回、合
計2回あるいはOH- 処理を含めた3回の塗布作業で効
果があるため、施工経済性にも優れている。さらに、現
地塗装が可能なため、現地での鋼材の切断、溶接等の加
工後にも対応できる。
【0030】なお、本発明に用いられる鋼材は、特に鋼
種を限定されるものではない。普通鋼であっても、耐候
性鋼であっても鋼材に生成する錆は、最終的に化学的に
安定で緻密な耐候性鋼に変態し、保護作用を発揮するか
らである。
【0031】ただし、このようにして生成された保護性
の錆層に何らかの外力が作用して亀裂が生じたり剥離が
起こった場合、普通鋼はその損傷部において再度安定錆
を生成する自己修復性能に劣るため、JIS G 3114やJIS
G 3125に規定されている耐候性鋼を用いておくことが好
ましい。
【0032】
【実施例】以下、本発明の効果を実施例により具体的に
説明する。本実施例に用いた試験鋼の化学成分を表1に
示す。また、本処理を行う前のサンプルの前処理の内容
を表2に示す。下塗り処理液の組成、pH調整液組成、
上塗り塗料組成をそれぞれ表3〜5に示す。試験片の寸
法は、150 ×70×3.2mm とし、処理液の表面はエメリー
紙研磨およびバフ研磨により、鏡面となっている。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
【表3】
【0036】
【表4】
【0037】
【表5】
【0038】下塗りおよびpH調整処理液はエアスプレ
ー塗装により、また上塗り塗料は、エアレススプレーに
より被覆した。得られたサンプル試片を、同一条件のも
とに、海岸より10mの位置にある兵庫県尼崎市の工業
地帯に1年間暴露し、その間、経時的に流れ錆発生を有
無を評価した。また、暴露後のサンプルについて偏光顕
微鏡による断面観察により安定錆の生成の有無(安定錆
部分は消光)を確認し、さらに画像解析により全錆量中
に対する安定錆量を百分率で求めた。その結果をサンプ
ルの作製条件と合わせて表6に示す。
【0039】
【表6】
【0040】表6から判るように、本発明例である試験
番号1〜35では、流れ錆の発生は認められず、かつ下
地鋼面部分に安定錆が高い割合で生成しているのが認め
られた。特に、試験番号3〜7の場合には、Cr以外の
添加イオンの効果により安定錆の生成比率が高く、安定
錆生成に対する促進効果が顕著であった。また、試験番
号28〜30についても、安定錆の生成比率が高く、そ
の促進効果がよく判る。さらに、安定錆生成率が55%
を超えるものは、安定錆が連続被膜として生成している
のに対し、これ以下のものは不連続被膜になる傾向を示
しており、安定錆生成率55%以下のものは、防食効果
に劣ることが判る。
【0041】一方、比較例である試験番号36〜43も
のは、下塗り処理でCr濃度が0.2重量%未満であっ
たり、pH調整がない、あるいは上塗り塗料の被覆厚が
5〜150μmの範囲外の場合である。これらの場合
は、流れ錆を生じたり、安定錆の生成が不十分になった
りするために、流れ錆を生じることなく早期に安定錆を
生成させる本発明の目的を達成することが困難となるこ
とが判る。
【0042】さらに、試験番号7および20のサンプル
を1年間暴露した後、ナイフにより鉄素地に達する傷を
入れ、さらに3ヶ月間暴露を継続した。試験番号20は
傷部から流れ錆の発生が非常に多かったが、試験番号7
については、少量の流れ錆した認められなかった。これ
は耐候性鋼が、安定錆生成に関し、自己修復機能を有す
るためと考えられる。
【0043】
【発明の効果】以上の説明から明らかな如く、本発明に
よれば、大気腐食環境中、特に海岸近傍の海塩粒子飛来
環境において、腐食速度を低減する機能を持ついわゆる
耐候性安定錆を浮き錆や流れ錆を生じることなく早期に
形成することが可能となる。しかもその処理は容易であ
り、土木あるいは建築構造物として使用される鋼材等に
広く用いることが可能であり、それら鋼材がメンテナン
ス不要となる等の利点ももたらされる。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭62−260866(JP,A) 特開 昭55−97477(JP,A) 特開 昭55−97478(JP,A) 特開 昭62−103373(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C23C 22/00 - 22/86 B32B 15/08 C23C 24/00 - 30/00

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】鋼材表面あるいは鋼材の錆層に、0.2〜
    12.0重量%のクロム(III)イオンを含む水溶液およ
    び0.3〜7.0重量%の銅(II)イオンを含む水溶液の
    少なくとも一方の水溶液を塗布した後、鋼材表面に形成
    された錆層にOH- を供給し、pH7を超える環境と
    、α−FeOOHの生成条件を与えた後、さらにその
    上層に乾燥膜厚で5〜150μmの有機樹脂被覆を施す
    ことを特徴とする鋼材の表面処理方法。
  2. 【請求項2】鋼材表面あるいは鋼材の錆層に、0.2〜
    12.0重量%のクロム(III) イオンを含む水溶液およ
    び0.3〜7.0重量%の銅(II)イオンを含む水溶液の
    少なくとも一方の水溶液と、Fe,P,Niイオンのう
    ちの一種あるいは二種以上を0.1〜10.0重量%含
    む水溶液との混合水溶液を塗布した後、鋼材表面に形成
    された錆層にOH- を供給し、pH7を超える環境とし
    、α−FeOOHの生成条件を与えた後、さらにその
    上層に乾燥膜厚で5〜150μmの有機樹脂被覆を施す
    ことを特徴とする鋼材の表面処理方法。
  3. 【請求項3】鋼材の表面あるいは鋼材の錆層に、0.2
    〜12.0重量%のクロム(III) イオンを含む水溶液お
    よび0.3〜7.0重量%の銅(II)イオンを含む水溶液
    の少なくとも一方の水溶液と、その水溶液0.005〜
    2倍の重量を有するα−FeOOHの粉末との混合溶液
    を塗布し、さらにその上層に乾燥膜厚で5〜150μm
    の有機樹脂被覆を施すことを特徴とする鋼材の表面処理
    方法。
  4. 【請求項4】鋼材の表面あるいは鋼材の錆層に、0.2
    〜12.0重量%のクロム(III) イオンを含む水溶液お
    よび0.3〜7.0重量%の銅(II)イオンを含む水溶液
    の少なくとも一方の水溶液と、Fe,P,Niイオンの
    うちの一種あるいは二種以上を0.1〜10.0重量%
    を含む水溶液との混合水溶液と、この混合水溶液の0.
    005〜2倍の重量を有するα−FeOOHの粉末との
    混合溶液を塗布し、さらにその上層に乾燥膜厚で5〜1
    50μmの有機樹脂被覆を施すことを特徴とする鋼材の
    表面処理方法。
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