JP3385934B2 - 鋼構造物ならびに鋼製タンク、鉄塔および鋼構造物の内面部の防食方法 - Google Patents

鋼構造物ならびに鋼製タンク、鉄塔および鋼構造物の内面部の防食方法

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JP3385934B2
JP3385934B2 JP24260797A JP24260797A JP3385934B2 JP 3385934 B2 JP3385934 B2 JP 3385934B2 JP 24260797 A JP24260797 A JP 24260797A JP 24260797 A JP24260797 A JP 24260797A JP 3385934 B2 JP3385934 B2 JP 3385934B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、タンカー等の鋼製
タンク(とくに鋼製バラストタンク)、鉄塔(とくに送
電鉄塔)および内面部を有する鋼構造物(とくに鋼製橋
梁の箱桁)の内面部の防食方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
1.鋼製タンク タンカーや鉱石運搬船は、バラストタンク、カーゴオイ
ルタンク、カーゴタンク等を有している。タンカー等が
空荷のときはバラストタンク内には海水が収納され、そ
の天井部には、昼間、海水から蒸発した水分が夜間甲板
面で冷却され、表面に水滴または薄膜水となって凝結す
る。本説明において、鋼製タンクの「天井部」を「気相
部」という場合がある。
【0003】バラストタンクは腐食の観点から大略3つ
の部分に分けられ、上記天井部以外には、海水の増減に
伴う乾湿くり返しを受ける干満部、および常に海水に接
している底板部がある。腐食が激しいのは、天井部およ
び干満部分の乾湿くり返し部であるが、従来はこれらの
部分の防食対策としてタールエポキシ樹脂を約200μ
m塗装する方法が通常用いられていた。この方法は、高
価であるとともに防食効果が維持される期間は約10年
であり、防食効果の長寿命化および低コスト化が求めら
れていた。以後の説明において、原油タンカーに限らず
鉱石運搬船等の空荷のときに海水が収納された状態のバ
ラストタンクを“海水収納バラストタンク”という。
【0004】一方、原油を積載中のタンカーにおいては
カーゴタンク等に原油が収納されるが、爆発防止のため
に不活性のガス(以後、「イナートガス」と記す)が充
填される。イナートガスとしては、費用節減のために通
例エンジンの排ガスが用いられるため、CO2、H2
とともにSO2も含まれることになる。このため、原油
が収納されたカーゴタンク等に、SO2 を溶解した水に
よる腐食が発生し、問題とされている。以後の説明にお
いて、原油が収納されかつ爆発防止のために排ガスが充
填された状態のタンク等を、“カーゴタンク”という。
【0005】カーゴタンクにおいても腐食の激しい部位
は、海水収納バラストタンクと同様に主として天井部で
ある。この防食対策として、タンクの天井部にプライマ
ーを数10μm塗装する方法があるが、その効果は完全
ではない。効果を高めようとしてさらに厚い塗膜にする
と費用が上昇するため限度があり、現状では適切な防食
法がないといっても過言ではない。
【0006】2.鉄塔 大気腐食環境中で使用される送電鉄塔や照明鉄塔は、防
食のために塗装や亜鉛メッキによる防食が行われてき
た。塗装は、所定の寿命期間ごとに塗り替え作業が必要
であるが、鉄塔のような高層建築物は、塗り替えのため
の足場の架設が困難かつ非常に高価となる。また、亜鉛
メッキ鋼材を使用した場合、亜鉛メッキの光沢が周辺の
自然景観を損なうため、化成処理等により表面光沢を減
少させる処理が必要であり、高コストになる。さらに、
亜鉛メッキには、溶融亜鉛による鋼材の脆化割れの恐れ
が存在する。これら短所に加えて、鉄塔用鋼管の内面は
不メッキが生じやすいが、水平連結に使用される小径鋼
管では、検査による不メッキの発見が困難である。内面
不メッキの鋼管を使用すると、鋼管内部に滞水を生じる
個所では滞水した水分により、鋼管内部から腐食が著し
く進行する場合がある。
【0007】一方、塗装や亜鉛メッキに頼らない方法と
して、Cr、Cu等の耐食性元素を微量含んだ耐候性鋼
の使用が考えられるが、耐候性鋼は海岸等海塩粒子の飛
来する環境では安定さびが生成できず、耐食性が劣り、
また、内陸部においても、安定さび化するまでに十数年
の歳月を必要とし、その間流れさびを生じ、自然景観や
周囲の環境を汚染するという問題があった。
【0008】3.鋼製橋梁の箱桁 内面部を有する鋼構造物、とくに橋梁の箱桁の内面に
は、外気温の変化に伴って結露が生じ、その水分が蒸発
しにくいために腐食が著しく促進される場合がある。こ
のような鋼構造物に耐候性鋼を使用しても、耐候性鋼は
大気中では防食性を向上させる安定さびを生成するが、
結露環境にある鋼構造物の内面では、安定さびを生成さ
せることができない。
【0009】このため、従来、鋼構造物を組み立て、内
面の防食を目的としてタ−ルエポキシ塗料等の有機樹脂
被覆が施されてきた。これらの被覆は、一般に200μ
m以上の被覆でなければ、防食性に劣り、比較的短い一
定期間経過後に腐食が進行する。また、このタールエポ
キシ樹脂被覆には下地処理としてブラスト処理が必要な
ために、高コストをもたらすという問題があった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、塗装
を施し鋼材表面に安定さび層を早期に形成させることに
よる、(a)鋼製タンク、(b)鉄塔、特に送電鉄塔、
および(c)内面部を有する鋼構造物、とくに鋼製橋梁
の箱桁の内面部に対するメンテナンスフリーで経済的な
防食方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明は下記に説明する
事項をもとに、海水収納バラストタンク等の模擬環
境、試作模擬鉄塔および試作箱桁等における各試験
を経て完成されたものであり、その要旨は下記の鋼製タ
ンク、鉄塔および鋼構造物の内面部の防食方法にある。
【0012】(1)有機樹脂、および、固形分に占める
含有率が0.2〜12.0重量%の3価のクロムイオン
Cr3+を含む塗料を鋼製タンクに塗装し、クロムゲーサ
イト(α-(Fe,Cr)OOH)を形成させることを
特徴とする鋼製タンクの防食方法(〔発明1〕とす
る)。
【0013】(2)内面にクロム(III) 化合物の含有率
が0.1〜65重量%で、厚さ5〜150μmの有機樹
脂皮膜を備え、クロムゲーサイト(α-(Fe,Cr)
OOH)を形成させた鋼管および通常の鋼管を用いて鉄
塔を組み上げることを特徴とする鉄塔の防食方法(〔発
明2〕とする)。
【0014】(3)上記(2)の方法を適用した鉄塔、
または通常の鋼管もしくは形鋼を用いて建造した鉄塔の
鋼表面に固形分に占める含有率が0.1〜65重量%の
クロム(III)化合物を含む有機樹脂塗料を皮膜の厚さが
5〜150μmとなるように塗装し、クロムゲーサイト
(α-(Fe,Cr)OOH)を形成させることを特徴
とする鉄塔の防食方法(〔発明3〕とする)。更に、有
機樹脂、および、固形分に占める含有率が0.2〜1
2.0重量%の3価のクロムイオンCr3+を含む有機
樹脂皮膜を備え、クロムゲーサイト(α-(Fe,C
r)OOH)を形成させた鋼構造物。
【0015】(4)内面部を有する鋼構造物の内面部
に、固形分に占める含有率が0.1〜65重量%のクロ
ム(III) 化合物を含む有機樹脂塗料を皮膜の厚さが5〜
150μmとなるように塗装し、クロムゲーサイト(α
-(Fe,Cr)OOH)を形成させることを特徴とす
る鋼構造物の内面部の防食方法(〔発明4〕とする)。
【0016】〔発明1〕において、「鋼製タンク」は、
(a)タンカー、鉱石船等のバラストタンク、カーゴタン
ク等、(b)原油備蓄タンク(海上備蓄タンカー)、(c)陸
上の原油タンク等が該当する。
【0017】〔発明1〕〜〔発明4〕において、塗装対
象のタンク、鉄塔、箱桁等の「鋼材」は、さびを生成す
るものであれば、炭素鋼、耐候性鋼を含む低合金鋼等が
鋼種によらず該当する。「固形分」または「皮膜」と
は、「塗料」が塗装された後、乾燥固化したものをさ
す。固形分または皮膜は、3価のクロムイオン(以下、
単に「クロムイオン」と記す)またはクロム(III) 化合
物および有機樹脂を必ず含み、そのほかに後記するよう
に、モリブデン酸ナトリウム、硫酸バリウム、硫酸第一
鉄、ベンガラ等を用途に応じて含んでもよい。固形分に
は、塗装の際に塗料化するために溶剤や水を添加され
る。
【0018】くり返しになるが、「クロムイオンの重量
%」または「クロム(III) 化合物」は、水、溶剤等の揮
発分を除いた固形分、すなわち塗装され乾燥固化して生
成した皮膜における重量%を意味する。「有機樹脂皮
膜」は「有機」を省略して、単に「樹脂皮膜」という場
合がある。
【0019】上記〔発明2〕において、「内面に上記の
有機樹脂皮膜を備えた鋼管」は鉄塔に組み込まれて、主
として滞水を生じる個所に用いられる。「内面」全体に
わたって有機樹脂皮膜を有していてもよいし、内面の一
部に有していてもよい。「鉄塔の組み上げ」は、溶接施
工またはフランジ同士をボルトとナットで締結して組み
上げてもよい。
【0020】上記〔発明3〕において、鉄塔は、鋼管を
部材の主体とする鉄塔でもよいし、または、主に形鋼に
よって組み上げられていてもよい。また、新規に建造す
る鉄塔のみならず、鉄塔として何年か使用後に上記の有
機樹脂塗料を塗装する方法も本発明の方法のなかに含ま
れる。
【0021】「有機樹脂塗料」は、塗装前に適当量の溶
剤または水により塗装作業に適した粘度に調整されたも
のであり、これら溶剤または水分は塗装後自然乾燥によ
り蒸散してゆき、皮膜を形成する。
【0022】上記〔発明4〕において「内面部」とは、
鋼材によって周囲をある程度囲まれた部分をさすが、必
ずしも四周が密閉されていなくてもよい。例えば、箱型
構造の内部、H形鋼のリブの付け根部等が該当する。
「組み立て」は、主として溶接施工により行われるが、
ボルト、ナットで組み立ててもよい。
【0023】つぎに上記の発明の技術的背景について説
明する。
【0024】本発明者らは、大気において腐食が進行中
に鋼材に形成される安定さび層は、クロムゲーサイト
(化学式 α-(Fe,Cr)OOH)からなる微細結晶
の緻密な集合が主成分をなすことを見いだし、このクロ
ムゲーサイトを早期に育成する表面塗装技術を開発して
きた。これらの表面塗装方法は大気にさらされる鋼構造
物の耐候性向上を目的に開発されたもので、この目的の
達成には大きな効果が認められた。そこで、これらの表
面塗装方法を用いて上記バラストタンク等の腐食、鉄
塔、箱桁等について試験したところ下記の事項を確認す
ることができ、〔発明1〕〜〔発明4〕の完成をするに
至った。
【0025】(a)バラストタンク等はほぼ密閉下にあ
り、その天井部は乾湿繰り返し頻度が屋外構造物に比し
て高いので、腐食は大気よりもけた違いに激しく生じ
る。
【0026】(b)クロムイオンを含む有機樹脂塗料に
より鋼製タンクの表面を塗装したところ、海水収納バラ
ストタンクおよびカーゴタンクの両方において、天井部
や乾湿くり返し部に相当する環境において、大気中より
も早期に安定さび層が形成されることが判明した。その
結果、海水収納バラストタンク等において、腐食が効果
的に抑制される。
【0027】(c)鉄塔の鋼管内面の滞水を生じる個所
においても、クロム(III) 化合物を含む有機樹脂塗料を
塗装すると安定さび層が形成される。
【0028】(d)鉄塔において滞水と接する個所で、
安定さび層を形成するためには、上記の塗装後の皮膜の
組成および厚さは一定範囲になければならない。
【0029】(e)内面部を有する鋼構造物の内面部に
おいてもクロム(III) 化合物を含む有機樹脂塗料を塗布
すると安定さび層が形成される。
【0030】(f)安定さび層を少しの欠落部も発生さ
せずに内面部の鋼表面に連続して形成させるためには、
塗料の固形分中のクロム(III) 化合物の含有率が一定範
囲含まれなければならない。また、皮膜の厚さにも制限
が必要である。
【0031】(g)クロム(III) 化合物等に関する条件
が満たされるかぎり顔料、上記の皮膜中には酸化防止剤
等の他の成分が含まれてもよい。
【0032】(h)上記のいずれの防食対象においても
安定さび層が早期に形成されれば、その後の重ね塗装等
は不要であり、上記のプライマー塗装のような費用の問
題はない。
【0033】
【発明の実施の形態】つぎに、本発明を限定した理由に
ついて説明する。
【0034】まず、クロムイオンを含んだ物質、すなわ
ちクロム(III) 化合物について説明する。
【0035】1.クロムイオン含有物質(クロム(III)
化合物) 一般に、さび層が緻密な場合には、酸素、炭酸ガス、亜
硫酸ガス、水等の腐食環境から物理的に遮断されやす
く、かつ鉄イオンの溶出が軽減される結果、腐食速度は
低下する。しかし、さび層中に割れや細孔があると腐食
性化学種の供給経路となりさび層の防食機能の低下をき
たす。したがって、緻密で連続した安定さび層、すなわ
ちクロムゲーサイト(α−FeOOH)を主体とするさ
び層を形成させる必要がある。
【0036】クロムイオンを含むクロム(III) 化合物と
して硫酸クロムを用いた場合、硫酸クロムは皮膜中に水
分が浸透してくると、クロムイオンと硫酸イオンSO4
2- とに解離し、双方のイオンとも皮膜と鋼との界面に
到達する。これらのイオンは鋼を溶解させ、その結果、
鉄イオンFe2+が生成する。クロムイオンはこのFe2+
を安定さび層の主体をなすクロムゲーサイトにする効果
を有する。
【0037】さびの構造が緻密であれば物理的に大気腐
食環境を遮断し易く、その後の腐食反応を軽減する。し
かしながら、さび層中に割れや細孔があると水や酸素の
供給経路となり、さびの防食性は低減する。このため緻
密で連続したさび層を形成させる必要がある。また、腐
食反応によって生成するさび層がγ−FeOOHである
場合、γ−FeOOHが酸化剤として働き、γ−FeO
OH自身が還元される代わりにFeを酸化して腐食を促
進する。このため、防食性の高いさび層を形成するに
は、緻密なα−FeOOHを形成させる必要がある。
【0038】クロムイオンは、通常、単独では取り扱わ
れることはなく、クロムイオンを含む塩である化学物質
のなかに含まれ、その塩により有機樹脂に添加される。
クロムイオンを含む塩としては、硫酸クロム、硝酸クロ
ム等のクロム(III) 化合物を用いることができる。クロ
ム(III) 化合物としては、硫酸クロムCr2(SO4
3 、硝酸クロムCr(NO33 等の無機酸クロム化合
物や酢酸クロムCr(CH3COO)3、蟻酸クロムCr
(HCOO)3 等の有機酸クロム化合物が好ましい。ク
ロム(III) 化合物であっても燐酸クロム等の水への溶解
度が非常に小さいものは、クロムイオンの生成がほとん
どないため、効果が小さい。また、塩化クロム等のハロ
ゲン化クロムは、加水分解したハロゲンイオンが、腐食
を促進し過ぎて、防食性さび層の生成を妨害するため、
使用は避けることが望ましい。
【0039】クロム化合物の中では、硫酸クロムを用い
る場合が最も好ましい。この理由は、硫酸イオンは鋼の
腐食を促進し、初期の鉄イオン生成を促進するが、その
後に生成されるさび層の結晶粒を微細化しかつ緻密化し
安定さびの生成を助長することによる。
【0040】〔発明1〕の対象とする海水収納バラスト
タンクまたはカーゴタンクの環境を模擬した環境におい
ては乾湿繰り返し頻度が大気中よりも高いため、クロム
ゲーサイトを含む安定さび層は、大気中に比して早期に
形成される。とくにカーゴタンクにおいては、イナート
ガス中にSO2 を含むために初期の腐食が加速されクロ
ムゲーサイトが早期に形成される。このため、大気中お
よび海水収納バラストタンク等における裸材の腐食の比
較から予測されるよりも顕著な効果が得られることが判
明した。これらの現象は、実際の海水収納バラストタン
クやカーゴタンクに部分的にとりつけた試験材を定期的
に電子顕微鏡観察等で観察することにより、検証され
た。
【0041】海水収納バラストタンクの気相部および乾
湿くり返し部に生成するさび層は緻密であり、大気中と
同じように安定さび層として大気中よりも早期に機能す
る。また、カーゴタンクのように、SO2 が含まれるエ
ンジン排ガスがイナートガスとして用いられる場合の気
相部等においても、被覆層中のクロムイオンは安定さび
層を早期に形成するのに有効である。
【0042】〔発明1〕において皮膜中のクロムイオン
が0.2重量%未満では、塩分も共存する上記のバラス
トタンク等においてはFe2+はクロムゲーサイトに移行
せず安定さび層が形成されにくい。このため、皮膜中の
クロムイオンは0.2重量%以上とする。
【0043】0.2重量%以上のクロムイオンを含む固
形分を塗料化して塗布し、上記のバラストタンク等の環
境にさらされた場合、生成したクロムゲーサイトからな
るさび層には塩素イオンCl- のような腐食性アニオン
の透過を防止する効果が生じる。しかしながら、クロム
イオンが12.0重量%を超えるとアニオン透過抑制効
果がかえって減少するため、クロムイオンの上限は1
2.0重量%とする。
【0044】なお、硫酸クロム以外にモリブデン酸ナト
リウムNa2MoO4を0.1〜5重量%含有させると生
成する安定さび層のアニオン透過抑制作用がより一層顕
著となり塩素イオン濃度の高い環境下での耐食性が向上
する。
【0045】〔発明2〕〜〔発明4〕において、上記の
効果を得るには、皮膜中に0.1重量%以上のクロム(I
II) 化合物を必要とする。上限を65重量%以下に限定
したのは、含有率が65重量%を超えると、クロム(II
I) 化合物を結合する役割を担う有機樹脂分が不足し、
皮膜が脆くなり、剥離を発生しやすくなる。また、皮膜
表面から鋼面に達する貫通孔が多数形成されて、酸素や
水の供給が過多になる結果、生成するさびが、γ−Fe
OOHになりやすく防食性が低下する。
【0046】2.有機樹脂 皮膜に含まれるバインダーとしての有機樹脂は、とくに
限定する必要はなく、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ビ
ニル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、アルキド
樹脂、フタル樹脂、ブチラール樹脂、メラミン樹脂、フ
ェノール樹脂等が例示される。これら樹脂を塗料化する
場合、溶剤系の塗料にしても、水性塗料にしても特に問
題ない。但し、フェノ−ル樹脂(常温硬化するタイプを
除く)のように硬化に加熱を必要とするもの、またはポ
リエチレン樹脂のように接着する時に加熱して溶融させ
る必要がある樹脂は施工性、経済性の点で好ましくな
い。
【0047】3.顔料等 上記の皮膜中には、クロムイオンを含む塩および有機樹
脂のほかに、ベンガラ、二酸化チタン、カーボンブラッ
ク、フタロシアニンブルー等の着色顔料、タルク、シリ
カ、マイカ、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等の体質顔
料、酸化クロム、クロム酸亜鉛、クロム酸鉛、塩基性硫
酸鉛等の防食顔料、その他チキソ剤、分散剤、酸化防止
剤等慣用の添加剤を含むことができる。使用時には適当
量の溶剤または水により塗装作業に適した粘度に調整さ
れ塗料にされることは言うまでもない。これら溶剤また
は水分は、塗料を塗装後自然乾燥により蒸発する。水分
の一部は、耐候性安定さび生成反応にも寄与すると考え
られる。
【0048】さらには、硫酸鉄、硫酸銅、硫酸ニッケ
ル、燐酸等、またはその水溶液を添加してもよく、むし
ろ好適である。鉄イオン、銅イオン、ニッケルイオンま
たは燐酸は、クロムイオンと共存することにより、クロ
ムゲーサイトの生成を促進させる効果を有する。
【0049】4.皮膜 〔発明1〕において上記の塗料が塗装され乾燥固化した
後、皮膜が5〜150μmになれば、耐候性安定さび生
成段階でクロムイオンと鉄イオンの供給バランスが最適
であり、望ましい厚さである。
【0050】〔発明2〕〜〔発明4〕において、皮膜の
厚さを5〜150μmの範囲に限定した理由は、5μm
未満では、皮膜中にピンホ−ルが多数形成され、そのピ
ンホ−ル部分から腐食がさびこぶ状に進行し、かつ、生
成するさびがγ−FeOOHになりやすいことによる。
一方、150μmを超える皮膜の膜厚にすると、性能的
には問題ないが、経済的に不利となり、本発明の目的で
ある安価な防食法を提供するという主旨に反することに
なる。すなわち、本発明方法においては、結露した水分
が皮膜を透過して鋼面に到達する間に、皮膜に含有させ
たクロム(III) 化合物が加水分解され、クロム(III) イ
オンとなり水分と共に鋼面に達する。クロム(III) イオ
ンは、鋼面で安定さびであるα−FeOOHを生成し、
またはγ−FeOOHからα−FeOOHへの変態反応
を促進させ、防食性の高いさび層を形成することができ
る。この結果、経時的に鋼表面での腐食によりさび層の
剥離が発生しても、その後に形成される安定さび層によ
り鋼材を防食することが可能である。皮膜の厚さは、本
発明の限定範囲内で任意に変えることが可能である。上
記の塗料は、通常の塗装方法、たとえばエアスプレー、
エアレススプレー、刷毛塗り等の慣用の方法により塗装
することができるため、場所を選ばずに塗装が可能であ
る。また、1回の塗装作業で効果が得られるため、経済
性にも優れている。さらには、タンク建造現場での鋼材
の切断や溶接後の塗装によっても、またはタンク使用中
のさびの上からの塗装によっても安定さび層は塗装後早
期に形成される。
【0051】さらには、現地塗装が可能なため、現地で
の鋼材の切断、溶接等の加工後にも対応できる。皮膜の
膜厚は、塗布量や希釈率の調整によって変えることがで
きる。
【0052】安定さび層が生成した後は、鋼材の腐食速
度はきわめて低くなるため、上記の皮膜の上にさらに着
色塗膜を被覆することも可能である。このように上記の
皮膜にさらに着色塗膜が施された鋼は、ブラスト等処理
された裸仕様鋼材に着色塗膜が被覆された鋼に比べて、
着色塗膜の寿命延長が得られる。
【0053】安定さび層に何らかの外力が作用して亀裂
の生成や剥離を生じても、健全部の塗膜中にクロムイオ
ンが残存していれば、その亀裂個所等において健全部か
らのクロムイオンの供給があり、再度耐候性安定さび層
を生成する、いわゆる自己修復機能が発現することはい
うまでもない。
【0054】また、これらの皮膜は、そもそもカチオン
選択性があり、樹脂が劣化するまでは塩素イオンの浸透
を抑制する作用を有しており、初期に塩素イオンが浸透
しないうちに鋼と皮膜との界面で安定さび層を生成させ
るのに役だっている。
【0055】5.鋼材等 〔発明1〕の対象とするタンクの鋼材は、普通鋼、低合
金鋼等の厚鋼板、形鋼等が対象となる。また、加工熱処
理方法(TMCP)を適用した高張力鋼であってもよ
い。
【0056】〔発明2〕〜〔発明3〕の鉄塔に用いられ
る鋼材は、鋼管、形鋼、フランジ、ボルト、ナット等で
ある。鋼管は、継目無鋼管、溶接鋼管等が該当する。形
鋼は、L形鋼、I形鋼等を用いることができる。フラン
ジは予め鋼管等に溶接しておくことが望ましい。内面に
皮膜を有する鋼管は、鋼管単体であるときに後記する方
法で内面塗装をするか、またはフランジを溶接で取り付
けた後に内面塗装するのがよい。また、特に鋼種を限定
されるものではなく普通鋼であっても、耐候性鋼であっ
ても構わない。すなわち、本発明の皮膜中のクロム(II
I) 化合物の作用により、普通鋼であってもそのさびは
最終的に化学的に安定で緻密な耐候性さびに変態し、保
護作用を発揮できる。
【0057】さらには、従来の防食塗装のように、下地
処理にブラスト処理を施す必要が無く、下地がさびた状
態でも塗装することができる。これは、下地が腐食を促
進するγ−FeOOHのさびであっても、皮膜中に含ま
れるクロム化合物からクロムイオンが水分と共に拡散し
てくることにより、γ−FeOOHがα−FeOOHに
変態するからである。すなわち、鋼構造物を建造して何
年か経過した後、本発明方法の塗装を行っても本発明の
効果は発揮される。したがって、前記したように建造後
何年か経過した内面部を有する鋼構造物に本発明方法の
塗装を施すことも本発明方法に該当する。
【0058】鉄塔の組み上げは形鋼の場合はほとんど例
外なく溶接によって組み上げられる。一方、鋼管の場合
は、溶接または鋼管に溶接によって取り付けられたフラ
ンジ同士をボルトとナットで締結して組み上げることが
できる。
【0059】〔発明4〕の防食対象の鋼材には低合金鋼
である高張力鋼が使用される場合が多いが、軟鋼であっ
てもよい。内面部を有する鋼構造物の組み立ては、主と
して上記の鋼材を溶接することにより行われる。しか
し、溶接施工に限定されずボルト、ナット等により組み
立ててもよい。上記の鋼構造物は現地で組み上げてもよ
いし、ある程度組み上がったものを現地で手直ししなが
ら据え付けてもよい。次に説明するように鋼構造物の部
材に塗装を施し、その後部材を組み立て、最後に仕上げ
塗装をしてもよい。
【0060】
【実施例】つぎに実施例により本発明の効果を説明す
る。最初に、〔発明1〕の実施例である《実験1》につ
いて説明する。
【0061】《実験1》表1は試験に用いた厚鋼板(板
厚25mm)の化学成分を示す。
【0062】
【表1】
【0063】この厚鋼板は造船用HT32(降伏強さ3
2kgf/mm2 以上)として製造されたものである。
上記の厚鋼板から腐食試験用に150mm長さ×70m
m幅×3mm厚さの試験片を切り出し、ショットブラス
トを施した。
【0064】表2は試験に用いた8種類の有機樹脂の組
成を示す。また、表3は塗料の固形分(すなわち、皮
膜)の組成を示す。
【0065】
【表2】
【0066】
【表3】
【0067】表3に示す固形分に溶剤を加え、B型粘度
計による粘度で200〜1000cpsとした塗料を作
製し、エアスプレーにより塗装した。このようにして作
製した試験片について海水収納バラストタンクおよびカ
ーゴタンクの気相部を模擬した環境で2月間の腐食試験
を実施した。
【0068】図1は、海水収納バラストタンクの気相部
環境を模擬する試験装置を、また、図2は、カーゴタン
クの気相部環境を模擬する試験装置を示す模式的断面図
である。
【0069】表4および表5は、それぞれ海水収納バラ
ストタンクおよびカーゴタンクの気相部環境を模擬する
腐食試験の試験条件を示す。
【0070】
【表4】
【0071】
【表5】
【0072】表6は、これらの腐食試験結果を示す。
【0073】
【表6】
【0074】表3に示すように、比較例である試験番号
24〜29は、いずれも固形分中の硫酸クロムの含有率
が低いためにクロムイオン濃度が本発明の限定範囲より
低くなった。この結果、表6に示すように海水収納バラ
ストタンク腐食試験においては、平均腐食厚さは30〜
321μmとなった。とくに有機樹脂皮膜は備えるがそ
のクロムイオン濃度がゼロの試験番号24および無被覆
の試験番号29においては、平均腐食厚さはそれぞれ1
53μmおよび321μmにも達した。
【0075】これに対して、本発明例の試験番号1〜2
3においては、海水収納バラストタンク腐食試験の平均
腐食厚さは4〜20μmであり、腐食が抑制されている
ことが明白な結果となった。このような平均腐食厚さの
差異は、クロムゲーサイトの生成と対応しており、クロ
ムゲーサイトの生成が認められたものは平均腐食速度が
抑制される傾向が歴然と認められた。
【0076】このような試験番号24〜29における大
きな平均腐食厚さ、およびクロムゲーサイトの生成と平
均腐食厚さとの対応関係等は、カーゴタンク腐食試験に
おいても同様であった。試験番号25においてはクロム
ゲーサイトの生成は少し認められたが腐食を効果的に抑
制するまでに至らなかった。
【0077】つぎに、〔発明2〕および〔発明3〕に対
する実施例である《実験2》および《実験3》について
説明する。
【0078】表7は、《実験2》および《実験3》に用
いた鋼の化学組成を示す一覧表である。
【0079】
【表7】
【0080】以後の説明では、実際に模擬鉄塔を製作し
て防食性を試験した《実験2》および小サイズの試験片
による試験を行った《実験3》に分けて説明する。
【0081】《実験2》表7の鋼の化学組成を有する
外径89.1mm、肉厚4mmの鋼管および外径27.
2mm、肉厚2.3mmの鋼管を用い、高さ3mの模擬
鉄塔を製作した。
【0082】図3は《実験2》において製作した模擬鉄
塔の模式図である。模擬鉄塔の製作に用いた鋼管はブラ
スト処理によってさびを除去した後、下記の配合剤に溶
剤を添加して粘度を調整した塗料を皮膜厚さ(乾燥膜
厚)15μmになるよう塗装した。
【0083】配合剤:有機樹脂としてビニルブチラール
樹脂40重量%、クロム(III) 化合物として硫酸クロム
15重量%、また、燐酸3重量%、ベンガラ18重量
%、シリカ20重量%、クロム酸亜鉛2重量%、その他
添加剤2重量%を含む(後記する表12の試験番号14
の配合)。この配合剤は皮膜の成分組成を表すと考えて
よい。
【0084】縦管には、長さ1m、外径89.1mmの
鋼管をフランジ接続して3本つないだものを用いた。鋼
管の端にはフランジを溶接し、塗装は鋼管の内外面およ
びフランジの内外面、端面等全てについて行った。横管
には長さ0.8mおよび0.6mで外径27.2mmの
ものを用いた。縦管と横管の接続は、溶接により行い、
溶接部は予め電動工具で皮膜を除去し、溶接後に同じ塗
料で同じ厚さの皮膜となるように塗装し直した。また、
鋼管の管端は横管および縦管ともに開放とし、雨水が鋼
管内面に流れ込む構造にした。この模擬鉄塔の比較例と
して、塗装をしない上記と同じ構造の鉄塔を製作した。
これら両者を新潟県直江津市の海岸線から100m離れ
た内陸部に設置し、暴露試験を行った。2年間の暴露を
行った後、解体し、鋼管内外面およびフランジの減肉量
を測定した。
【0085】減肉量の測定において、鋼管内外面の減肉
量を区別するために、予め、外面の測定ポイントに対応
する内面を、また、内面の測定ポイントに対応する外面
を、それぞれタ−ルエポキシで膜厚400μm以上にな
るように防食シ−ルを行った。フランジについては、防
食シ−ルを行わなかったため、後記する表8において、
上下面の合計の減肉量を示してある。
【0086】測定は、測定ポイントを切り出して残存皮
膜およびさび層を除去後、メカニカルな肉厚測定を行
い、初期肉厚からの差を算出した。測定は、それぞれ8
箇所で行った。
【0087】表8は、減肉量の平均値を示す一覧表であ
る。
【0088】
【表8】
【0089】比較例では、鋼管の内面および外面ともに
50〜60μmの減肉量が認められた。フランジにおい
ては130μmという大きな減肉を示した。これに対し
て、本発明例では、鋼と皮膜の界面において、何れの部
位でも、安定さびの生成が認められ、腐食量も著しく抑
制される結果が得られた。
【0090】《実験3》実験3に用いた供試鋼の化学組
成を表7に示す。
【0091】表9は鋼材の塗装前の処理方法を示す。ま
た、表10は、塗料中に含まれる有機樹脂の組成を示
す。
【0092】
【表9】
【0093】
【表10】
【0094】試験片の寸法は、150×70×3.2m
mとし、表9に記載する塗装処理前に表面にショットブ
ラスト処理を施した。
【0095】表11および表12はサンプルの作製条件
および試験結果を示す。
【0096】
【表11】
【0097】
【表12】
【0098】表11および表12に示す有機樹脂とクロ
ム化合物等の配合組成に適当量の溶剤を加えてB型粘度
計測定において200〜1000CPSとした塗料を作
製し、エア−スプレ−塗装により塗装した。溶剤は樹脂
等に応じて配合を変化させて、トルエン、キシレン、イ
ソプロピルアルコール、メチルエチルケトン等を混合し
たものを用いた。このサンプル試験片を恒温恒湿器に入
れ、下記の(a)、(b)および(c)を1サイクルと
して、1日2サイクル、1年間730サイクルの複合サ
イクル試験を行った。
【0099】(a)35℃、0.5%塩水噴霧4時間 (b)60℃、Rh(Relative humidity)60% 2時間 (c)60℃、Rh95%6時間 また、鋼管内面の滞水を模擬するため、50℃の温度で
温水浸漬試験を行った。
【0100】試験後のサンプルについて偏光顕微鏡によ
る断面観察により安定さび生成有無(安定さび部分は消
光)を確認し、安定さびの連続皮膜が鋼面に生成してい
る場合を評価:マル(○)とした。
【0101】裸鋼材の大気腐食環境での腐食速度が平均
30μm/年であるのに対し、本試験での裸材の腐食量
が複合サイクルで300μm、浸漬試験で200μmで
あることから、本実施例で採用した複合サイクル試験で
10倍、浸漬試験で7倍の腐食促進性を有していると考
えられる。
【0102】上記の試験結果を表11および表12の複
合サイクル試験および浸漬試験に示す。
【0103】比較例である試験番号22や25は、皮膜
中のCr(III) 化合物の含有率が0.1重量%未満であ
ったり、皮膜厚さが5μm未満であるために、安定さび
の生成が不十分であり、防食性が不十分な結果となっ
た。また、従来、使われているタ−ルエポキシ被覆の場
合、200μmの被覆では、優秀な防食性を発揮してい
るが、下地鋼面の腐食が徐々に発生し始めており、これ
から先の防食性は期待できない。また、何よりも経済性
も劣ることになる。また試験番号23、24のようにタ
−ルエポキシ樹脂被覆の場合(有機樹脂符号E)、膜厚
を薄くすると、試験番号24に示すように、安定さび皮
膜の生成がないため、腐食速度が非常に大きい結果とな
った。
【0104】これに対して、本発明例である試験番号1
〜21では、流れさびの発生が認められず、かつ鋼表面
に安定さびが連続皮膜として生成しているのが認められ
た。また、腐食速度も、40μm/年以下であり、実環
境では6μm以下に相当するものであった。このような
防食効果は、複合サイクル試験のみならず浸漬試験にお
いても認められた。すなわち、複合サイクル試験が模擬
する乾湿繰り返し環境のみならず浸漬試験が模擬する湿
潤環境においても防食効果は発揮された。
【0105】一般に、鉄塔設計においては、腐食しろと
して300μm/50年で見積もられるため、上記の腐
食量の値は、本発明方法以外に特別な処理を施すことな
く、メンテナンスフリ−での使用が可能であることを意
味する。また、本発明方法は、母材として耐候性鋼を用
いずに、普通鋼を用いた場合にも効果がある。さらに、
下地さび層の上に本発明方法の塗料を塗装した場合でも
効果を発揮する。したがって、前記したように鉄塔を何
年間か使用した後に本発明方法の塗料で本発明方法の条
件に合致する塗装する場合も本発明方法に該当する。
【0106】《実験4》表13は、《実験4》に用いた
試験鋼の化学成分を、また、表14は被覆前の鋼材の前
処理を示す。表15は塗装に用いる塗料中に含まれる有
機樹脂の組成を示す。試験片の寸法は、150mm×7
0mm×3.2mmとし、表14に示す処理前の表面は
ショットブラスト処理とした。
【0107】
【表13】
【0108】
【表14】
【0109】
【表15】
【0110】表16および表17にサンプルの作製条件
および試験結果を示す。表16および表17に示す皮膜
を構成する有機樹脂および添加剤の配合組成に適当量の
溶剤を加えて粘度(B型粘度計測定)を200〜100
0CPSにした塗料を作製し、エア−スプレ−塗装を行
った。前記したように、表16および表17において、
「皮膜中の組成」は「水または溶剤を除いた塗料中の組
成」と判断してよい。
【0111】
【表16】
【0112】
【表17】
【0113】このサンプル試験片を恒温恒湿器に入れ、
下記の(a)、(b)および(c)を1サイクル、12時間と
して、1日2サイクル、1年730サイクルにわたる結
露と乾燥の試験を行った。
【0114】 (a)15℃、Rh(Relative humidity)60% 4時間 (b)60℃、Rh95%6時間 (c)60℃、Rh60%2時間 橋梁等の実結露環境での腐食速度が概ね50μm/年で
あるのに対し、本試験での普通鋼の裸材の腐食量が26
0μmであったことから、概ね5倍以上の促進性を有し
ていると判断した。
【0115】試験後のサンプルについて偏光顕微鏡によ
る断面観察により安定さび生成有無(安定さび部分は消
光)を確認し、安定さびの連続皮膜が鋼面に生成してい
る場合を評価マル(マーク○)とした。
【0116】試験結果を表16および表17に示す。本
発明例である試験番号1〜21では、流れさびの発生が
認められず、かつ下地の鋼表面に安定さびが連続皮膜と
して生成しているのが認められた。また、腐食速度も、
30μm/年以下であり、実環境では6μm以下に相当
する結果となった。
【0117】一般に、橋梁設計においては、腐食しろを
300μm/50年と見積もるので、上記の腐食結果
は、本発明方法以外の特別な処理を施すことなく、メン
テナンスフリ−での使用が可能であることを示唆する。
また、本発明方法は、母材として耐候性鋼だけでなく、
普通鋼を用いた場合も効果がある。さらに鋼表面にすで
にさび層が発生していても、その上に塗装することによ
っても防食効果を発揮する。
【0118】一方、比較例である試験番号22や25の
ように、皮膜中のクロム(III) 化合物の含有率が、0.
1wt%未満であったり、皮膜厚さが、5μm未満の時
は、安定さびの生成が不十分になり、防食性が低下し
た。また、試験番号23、24のように従来から使われ
ているタ−ルエポキシ被覆の場合、200μmの皮膜で
は、優秀な防食性を発揮するものの、下地の鋼表面の腐
食がすでに緩やかに発生し始めており、これから先の防
食性を期待できない。また、経済性も劣ることは前記し
たとおりである。タ−ルエポキシ被覆の場合、膜厚を薄
くすると、試験番号24に示すように、安定さび層の生
成がないために、腐食速度は非常に大きな値になった。
【0119】
【発明の効果】本発明により、各種の鋼製タンクの腐食
を簡便にかつ安価に抑制することができ、原油等の輸
送、貯蔵等に関連する産業に資するところが大きい。ま
た、鉄塔に対しては、鋼材表面に安定さびを早期に生成
することにより滞水、大気等に対して優れた防食性を発
揮する。鋼構造物の内面部の結露環境中においても連続
した安定さび層を形成し、安価な塗装により長期の防食
性を付与することができる。本発明方法は安価な製造方
法であり、メンテナンスフリーで防食性を維持するため
橋梁等の公共施設の充実に寄与することが期待される。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は海水収納バラストタンクの気相部での腐
食を模擬する試験装置の模式的断面図である。
【図2】図2はカーゴタンクの気相部での腐食を模擬す
る試験装置の模式的断面図である。
【図3】図3は実施例に用いた模擬鉄塔を示す模式
ある。
【符号の説明】
1…試験片 2…人工海水 3…恒温槽 4…空気入口 5…空気出口 6…スプレーポンプ 7…イナートガス入口 8…イナートガス出口 11…縦鋼管 12…横鋼管 13…フランジ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C23C 22/30 C23C 22/30 C23F 11/00 C23F 11/00 B F (56)参考文献 特開 平9−3657(JP,A) 特開 平6−146002(JP,A) 特開 平3−219086(JP,A) 特開 平10−204650(JP,A) 特開 平8−13158(JP,A) 特開 平6−173027(JP,A) 特開 平8−176845(JP,A) 特開 昭63−218279(JP,A) 特開 平9−31666(JP,A) 特開 平8−296062(JP,A) 特開 平8−60175(JP,A) 特開 昭63−145785(JP,A) 特公 昭56−39393(JP,B1) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B05D 7/14 B05D 5/00 B05D 7/22 B63B 59/04 C23C 22/30 C23F 11/00

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】有機樹脂、および、固形分に占める含有率
    が0.2〜12.0重量%の3価のクロムイオンCr3+
    を含む塗料を鋼製タンクに塗装し、クロムゲーサイト
    (α-(Fe,Cr)OOH)を形成させることを特徴
    とする鋼製タンクの防食方法。
  2. 【請求項2】内面にクロム(III) 化合物の含有率が0.
    1〜65重量%で、厚さ5〜150μmの有機樹脂皮膜
    を備え、クロムゲーサイト(α-(Fe,Cr)OO
    H)を形成させた鋼管および通常の鋼管を用いて鉄塔を
    組み上げることを特徴とする鉄塔の防食方法。
  3. 【請求項3】請求項2の方法を適用した鉄塔、または通
    常の鋼管もしくは形鋼を用いて建造した鉄塔の鋼表面に
    固形分に占める含有率が0.1〜65重量%のクロム(I
    II)化合物を含む有機樹脂塗料を皮膜の厚さが5〜15
    0μmとなるように塗装し、クロムゲーサイト(α-
    (Fe,Cr)OOH)を形成させることを特徴とする
    鉄塔の防食方法。
  4. 【請求項4】内面部を有する鋼構造物の内面部に、固形
    分に占める含有率が0.1〜65重量%のクロム(III)
    化合物を含む有機樹脂塗料を皮膜の厚さが5〜150μ
    mとなるように塗装し、クロムゲーサイト(α-(F
    e,Cr)OOH)を形成させることを特徴とする鋼構
    造物の内面部の防食方法。
  5. 【請求項5】有機樹脂、および、固形分に占める含有率
    が0.2〜12.0重量%の3価のクロムイオンCr
    3+を含む有機樹脂皮膜を備え、クロムゲーサイト(α
    -(Fe,Cr)OOH)を形成させた鋼構造物。
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