JP2023132089A - 鋼材 - Google Patents

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Abstract

【課題】塩化物を多く含む乾湿繰り返し環境において優れた耐食性を発揮する鋼材を提供する。【解決手段】鋼材の化学組成が、質量%で、C:0.01~0.20%、Si:0.01~1.0%、Mn:0.05~3.00%、P:0.050%以下、S:0.030%以下、Al:0.005~0.100%、Sn:0.01~0.30%、In:0.001~0.200%、残部:Feおよび不純物であり、鋼材の表面において測定される直径5μm以上のIn粒子の数密度が50/mm2以下である、鋼材。【選択図】 なし

Description

本発明は、鋼材に関する。
鋼材の腐食を加速する因子として、塩化物の影響が極めて大きいことがよく知られている。特に、海岸地域にある橋梁等の構造物、港湾施設に使用される鋼矢板、鋼管杭、船舶外板、バラストタンク、海洋構造物、洋上風力発電設備などにおいては、直接海水の飛沫を受け、さらに乾湿繰り返し環境に曝されるため、極めて腐食が大きい。
また、海水中においても、乾湿繰り返し環境ほどではないが腐食が大きい。海浜地域においては海水の飛沫はないものの、海塩粒子の飛来により腐食が促進される。内陸部においても、冬季には路面凍結を防ぐために塩化物を含む凍結防止剤を散布するなど、塩化物による腐食はいたる所で問題となっている。
さらには、直接海水環境には曝されないが海水による洗浄等が行われる鉱石運搬船または原油タンカーのタンクなども洗浄後に残留する塩化物による腐食が問題となる。また、原油タンカー内においては高濃度塩化物溶液であるドレン水が存在する厳しい腐食環境となっている。その他、オイルサンドの掘削・輸送設備においても塩化物による腐食が問題となる。
このような事情により、特に塩化物による腐食が問題となる環境では鋼材を塗装して用いられているが、塗膜の劣化により、また鋼材エッジなどの塗膜厚の薄い部分から腐食が発生・進行するため、構造物を長期使用する際にはメンテナンス(再塗装)が必須である。
その場合、構造物によっては足場を設置する必要があることなどからメンテナンス費が莫大なものとなること、また塗装により人体に有害とされているVOC(揮発性有機化合物)が大量に発生することなどが問題となる。こうしたことから、塗装をしなくても耐食性の良好な鋼材、または再塗装の間隔を延長可能な鋼材の開発が強く望まれてきた。
このような塩化物環境下で耐食性に優れた鋼材として、例えば、特許文献1にはCr含有量を増加させた鋼材が開示されており、特許文献2にはNi含有量を増加させた鋼材等が開示されている。
一方、CrまたはNiを増加させない鋼としては、例えば、特許文献3には、P、Ni、Moを必須元素とし、Sbおよび/またはSnを添加した鋼材が開示され、また、特許文献4には、P、Cu、Ni、Sbを必須添加した鋼材が開示されている。さらに、特許文献5には、Cuを必須元素とし、Sbおよび/またはSnを添加した鋼材が開示されており、特許文献6には、Snを必須元素とした鋼材が開示されている。
特開平9-176790号公報 特開平5-51668号公報 特開平10-251797号公報 特開2002-53929号公報 特開平9-25536号公報 特開2012-255184号公報
CrおよびNiは、一般に鋼材の耐食性に寄与する元素である。しかし、特許文献1および2に開示される鋼材は、非常に厳しい塩化物環境においては、耐食性の面で改善の余地が残されている。加えて、CrおよびNiは高価な元素であるため、CrおよびNiの含有量の増加は、コストの面でも問題となる。
また、特許文献3に開示される溶接構造物用鋼材は、溶接性を阻害するPを多量に含有することから、溶接性の面で問題がある。一方、特許文献4に開示される鋼材は、飛来塩分量0.8mddの環境において耐候性が良好であるとしているにすぎず、それを超えるような厳しい塩分飛来環境下においては、耐候性が十分でないという問題がある。
さらに、特許文献5に開示される鋼材は、重油などを燃焼させたときに排出される燃焼排ガスに対する耐食性を有する鋼材であって、塩化物環境下とは大きく異なる環境下で使用する鋼材である。したがって、必ずしもこのような鋼材を塩化物環境下で適用することはできない。
そして、特許文献6に開示される鋼材は、塩化物を含む乾湿繰り返し環境下で用いられる耐食性に優れた鋼材である。しかし、さらに過酷な環境で使用するためには、改善の余地が残されている。
本発明は、上記の課題を解決し、塩化物を多く含む乾湿繰り返し環境において優れた耐食性を発揮する鋼材を提供することを目的とする。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、下記の鋼材を要旨とする。
(1)鋼材の化学組成が、質量%で、
C:0.01~0.20%、
Si:0.01~1.0%、
Mn:0.05~3.00%、
P:0.050%以下、
S:0.030%以下、
Al:0.005~0.100%、
Sn:0.01~0.30%、
In:0.001~0.200%、
残部:Feおよび不純物であり、
前記鋼材の表面において測定される直径5μm以上のIn粒子の数密度が50/mm以下である、
鋼材。
(2)前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、質量%で、
Cu:1.0%以下、
Ni:1.0%以下、
Cr:1.0%以下、
Mo:1.0%以下、
W:1.0%以下、
Sb:0.30%以下、
Co:1.0%以下、
As:0.30%以下、および
Pb:0.30%以下、
から選択される1種以上を含有するものである、
上記(1)に記載の鋼材。
(3)前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、質量%で、
Ti:0.200%以下、
Zr:0.20%以下、
Nb:0.10%以下、
V:0.50%以下、
B:0.010%以下、
Ca:0.010%以下、
Mg:0.010%以下、および
REM:0.0150%以下、
から選択される1種以上を含有するものである、
上記(1)または(2)のいずれかに記載の鋼材。
本発明によれば、塩化物を多く含む乾湿繰り返し環境において優れた耐食性を発揮する鋼材が得られる。
特願2022-23029で記載される発明では、SnとInとを同時に含有させることで、乾湿繰り返しによって生じるpHの変化に対して、それぞれ単独で含有させるよりも優れた腐食抑制効果を得ることができたとしている。
しかし、本発明者らのさらなる研究により、SnとInとを含有させた鋼材では、弱酸環境において腐食ピットが発生しやすいことが分かった。また、鋼材表面で測定される粗大なIn粒子を起点として、腐食ピットが発生していることが分かった。
In粒子は溶鋼段階で生成するため、In粒子の生成自体を抑制することは難しい。そこで、本発明者らは、熱間圧延後に適切な条件で熱処理を施すことで、粗大なIn粒子の数密度を小さくし、腐食ピットの発生を抑制できることを見出した。これにより、塩化物を多く含む乾湿繰り返し環境において耐食性を向上できることが分かった。
本発明は上記の知見に基づいてなされたものである。以下、本発明の各要件について詳しく説明する。
(A)化学組成
各元素の限定理由は下記のとおりである。なお、以下の説明において含有量についての「%」は、「質量%」を意味する。
C:0.01~0.20%
Cは材料としての強度を確保するために必要な元素である。しかし、過剰に含有させると溶接性が著しく低下する。また、C含有量の増大とともに、pHが低下する環境でカソードとなって腐食を促進するセメンタイトの生成量が増大するため、耐食性が低下する。そのため、C含有量は0.01~0.20%とする。C含有量は0.02%以上であるのが好ましく、0.05%以上であるのがより好ましい。また、C含有量は0.18%以下であるのが好ましく、0.16%以下であるのがより好ましい。
Si:0.01~1.0%
Siは脱酸に必要な元素である。しかし、過剰に含有させると母材および溶接継手部の靱性が損なわれる。そのため、Si含有量は0.01~1.0%とする。Si含有量は0.05%以上であるのが好ましく、0.10%以上であるのがより好ましい。また、Si含有量は0.80%以下であるのが好ましく、0.60%以下であるのがより好ましい。
Mn:0.05~3.00%
Mnは低コストで鋼の強度を高める作用を有する元素である。しかし、過剰に含有させると溶接性が劣化するとともに継手靱性も劣化する。そのため、Mn含有量は0.05~3.00%とする。Mn含有量は0.20%以上であるのが好ましく、0.40%以上であるのがより好ましい。また、Mn含有量は2.50%以下であるのが好ましく、2.00%以下であるのがより好ましい。
P:0.050%以下
Pは鋼材中に不純物として存在する元素である。Pは鋼材の耐酸性を劣化させ、腐食界面のpHが低下する塩化物の多い腐食環境において耐食性を劣化させる。また、Pは溶接性および溶接熱影響部における靱性を劣化させる。そのため、P含有量は0.050%以下とする。P含有量は0.030%以下であるのが好ましく、0.010%未満であるのがより好ましい。P含有量の下限は特に規定する必要はなく、つまりP含有量が0%でもよいが、極度の低減は製鋼コストの増大を招く。そのため、P含有量は0.0001%以上としてもよい。
S:0.030%以下
Sは鋼材中に不純物として存在する元素である。Sは鋼中に腐食の起点となるMnSを形成し、その含有量が過剰であると、耐食性の低下が顕著になる。そのため、S含有量は0.030%以下とする。S含有量は0.025%以下であるのが好ましく、0.020%以下であるのがより好ましい。S含有量の下限は特に規定する必要はなく、つまりS含有量は0%でもよいが、極度の低減は製鋼コストの増大を招く。そのため、S含有量は0.0001%以上としてもよい。
Al:0.005~0.100%
Alは鋼の脱酸に有効な元素である。しかし、過剰に含有させるとpHが低下した塩化物の多い腐食環境における耐食性を劣化させるばかりでなく、窒化物が粗大化するため靱性の劣化を引き起こす。そのため、Al含有量は0.005~0.100%とする。Al含有量は0.080%以下であるのが好ましく、0.060%以下であるのがより好ましい。また、Alによる脱酸効果を安定して得るためには、Al含有量は0.010%以上であるのが好ましく、0.030%以上であるのがより好ましい。
Sn:0.01~0.30%
Snは腐食環境においてSn2+として溶解し、酸性塩化物溶液中でのインヒビター作用により腐食を抑制する作用を有する。さらに、Sn2+にはアンダーポテンシャル析出(UPD)によって鋼のアノード溶解反応を大幅に抑制する作用があることから、微量で耐食性を大幅に向上させることができる。しかし、過剰に含有させても前記の効果は飽和するばかりでなく、母材および大入熱溶接継手の靱性が劣化する。そのため、Sn含有量は0.01~0.30%とする。Sn含有量は0.05%以上であるのが好ましく、0.10%以上であるのがより好ましい。また、Sn含有量は0.25%以下であるのが好ましく、0.20%以下であるのがより好ましい。
In:0.001~0.200%
Inは腐食環境においてIn3+として溶解し、酸性塩化物溶液中でのインヒビター作用により腐食を抑制する作用を有する。さらに、In3+にはUPDによって鋼のアノード溶解反応を大幅に抑制する作用があることから、微量で耐食性を大幅に向上させることができる。しかし、過剰に含有させても前記の効果は飽和するばかりでなく、母材の靱性が劣化する。そのため、In含有量は0.001~0.200%とする。In含有量は0.010%以上であるのが好ましく、0.020%以上であるのがより好ましい。また、In含有量は0.150%以下であるのが好ましく、0.100%以下であるのがより好ましい。
また、In含有量が高いほど、In粒子の数密度は大きくなる傾向がある。そのため、直径5μm以上のIn粒子の数密度を50/mm以下とするために、鋼材のIn含有量に合わせ、後述するように、熱処理の条件を適宜調整する。
本発明に係る鋼材は、上記の化学組成を有し、残部がFeおよび不純物からなる。ここで、不純物とは、鋼材を工業的に製造する際に鉱石やスクラップ等のような原料をはじめとして製造工程の種々の要因によって混入する成分であって、本発明に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
本発明の鋼材の化学組成においては、Feの一部に代えて、下記の元素から選択される1種以上を、以下に示す範囲において含有させてもよい。各元素の限定理由について説明する。
Cu:1.0%以下
Cuは低pH環境における鋼のアノード溶解を抑制することにより耐食性を向上させる作用を有するので、必要に応じて含有させることができる。ただし、過剰に含有させると効果が飽和するだけでなく、脆化を起こす原因となる。したがって、Cu含有量は1.0%以下とする。上記効果を安定的に得るためには、Cu含有量を0.02%以上とすることが好ましく、0.03%以上とすることがより好ましい。
Ni:1.0%以下
Niは保護性さびの形成が期待できない高塩化物環境において、鋼のアノード溶解を抑制することにより、耐食性を向上させる作用を有するので、必要に応じて含有させることができる。ただし、過剰に含有させると効果が飽和するだけでなく、コストの上昇につながる。したがって、Ni含有量は1.0%以下とする。Ni含有量は0.80%以下とすること好ましい。上記効果を安定的に得るためには、Ni含有量を0.01%以上とすることが好ましく、0.02%以上とすることがより好ましい。
Cr:1.0%以下
Crは耐食性を向上させる作用を有するので、必要に応じて含有させることができる。ただし、過剰に含有させると耐酸性が劣化し、塩化物が多い環境においては耐食性が劣化するおそれがある。したがって、Cr含有量は1.0%以下とする。Cr含有量は0.80%以下とすることが好ましい。また、上記効果を安定的に得るためには、Cr含有量を0.01%以上とすることが好ましく、0.02%以上とすることがより好ましい。
Mo:1.0%以下
Moは溶解して酸素酸イオンMoO 2-の形でさびに吸着し、さび層中の塩化物イオンの透過を抑制する作用効果を有する元素であるので、必要に応じて含有させることができる。ただし、過剰に含有させると効果が飽和するだけでなく、鋼材のコストが大幅に上昇する。したがって、Mo含有量は1.0%以下とする。Mo含有量は0.70%以下であるのが好ましい。上記効果を安定的に得るためには、Mo含有量を0.01%以上とすることが好ましく、0.02%以上とすることがより好ましい。
W:1.0%以下
WはMoと同様に、溶解して酸素酸イオンWO 2-の形で存在し、さび層中の塩化物イオンの透過を抑制する作用効果を有する元素であるので、必要に応じて含有させることができる。ただし、過剰に含有させると効果が飽和するだけでなく、鋼材のコストが大幅に上昇する。したがって、W含有量は1.0%以下とする。W含有量は0.70%以下であるのが好ましい。上記効果を安定的に得るためには、W含有量を0.01%以上とすることが好ましく、0.02%以上とすることがより好ましい。
Sb:0.30%以下
Sbは酸性環境での耐食性を向上させる作用を有する元素であり、低pH環境において鋼のアノード溶解反応を抑制するとともに、水素ガス発生反応およびFe3+の還元反応を抑制することで塩化物環境における耐食性を向上させるので、必要に応じて含有させることができる。ただし、過剰に含有させると靱性が著しく劣化する。したがって、Sb含有量は0.30%以下とする。Sb含有量は0.15%以下であるのが好ましい。上記効果を安定的に得るためには、Sb含有量を0.05%以上とすることが好ましく、0.08%以上とすることがより好ましい。
Co:1.0%以下
Coは酸性環境での耐食性を向上させる元素であるので、必要に応じて含有させることができる。ただし、過剰に含有させると効果が飽和するだけでなく、鋼材のコストが大幅に上昇する。したがって、Co含有量は1.0%以下とする。Co含有量は0.70%以下であるのが好ましい。上記効果を安定的に得るためには、Co含有量を0.01%以上とすることが好ましく、0.02%以上とすることがより好ましい。
As:0.30%以下
Asは、Sb、Snに比べて効果は顕著ではないが、酸性環境での耐食性の向上に有効な元素であるので、必要に応じて含有させることができる。ただし、過剰に含有させると熱間加工性が低下する。したがって、As含有量は0.30%以下とする。As含有量は0.20%以下であるのが好ましい。上記効果を安定的に得るためには、As含有量を0.02%以上とすることが好ましく、0.05%以上とすることがより好ましい。
Pb:0.30%以下
Pbは酸性環境での耐食性の向上に有効な元素であるので、必要に応じて含有させることができる。ただし、過剰に含有させると熱間加工性が劣化する。したがって、Pbの含有量は、0.30%以下とする。Pbの含有量は、0.15%以下であるのが好ましい。上記効果を安定的に得るためには、Pbの含有量を0.005%以上とすることが好ましく、0.010%以上とすることがより好ましい。
Ti:0.200%以下
Tiは硫化物の形成により腐食の起点となるMnSの形成を抑える作用効果を有する元素であるので、必要に応じて含有させることができる。ただし、過剰に含有させると効果が飽和するだけでなく鋼材のコストが上昇する。したがって、Ti含有量は0.200%以下とする。Ti含有量は0.150%以下であるのが好ましい。上記効果を安定的に得るためには、Ti含有量を0.001%以上とすることが好ましく、0.005%以上とすることがより好ましい。
Zr:0.20%以下
ZrはTiと同様に、硫化物を形成することにより腐食の起点となるMnSの形成を抑える作用効果を有しているので、必要に応じて含有させることができる。ただし、過剰に含有させると効果が飽和するだけでなく鋼材のコストが上昇する。したがって、Zr含有量は0.20%以下とする。Zr含有量は0.15%以下であるのが好ましい。上記効果を安定的に得るためには、Zr含有量を0.001%以上とすることが好ましく、0.005%以上とすることがより好ましい。
Nb:0.10%以下
Nbは鋼材の強度を上昇させる元素であるので、必要に応じて含有させることができる。ただし、過剰に含有させると効果が飽和するだけでなくHAZの靭性が低下する。したがって、Nb含有量は0.10%以下とする。Nb含有量は0.050%以下であるのが好ましい。上記効果を安定的に得るためには、Nb含有量を0.001%以上とすることが好ましく、0.003%以上とすることがより好ましい。
V:0.50%以下
VはNbと同様に鋼材の強度を上昇させる元素である。また、MoおよびWと同様に、溶解して酸素酸イオンの形で存在し、さび層中の塩化物イオンの透過を抑制する作用も有するので、必要に応じて含有させることができる。ただし、過剰に含有させると効果が飽和するばかりでなくコストが著しく上昇する。したがって、V含有量は0.50%以下とする。V含有量は0.30%以下であるのが好ましい。上記効果を安定的に得るためには、V含有量を0.005%以上とすることが好ましく、0.010%以上とすることがより好ましい。
B:0.010%以下
Bは焼入性を向上させて強度を高める元素であるので、必要に応じて含有させることができる。ただし、過剰に含有させると強度を高める効果が飽和し、また、母材、HAZともに靱性劣化の傾向が著しくなる。したがって、B含有量は0.010%以下とする。上記効果を安定的に得るためには、B含有量を0.0003%以上とすることが好ましい。
Ca:0.010%以下
Caは、主に硫化物の形態の制御に用いられる元素であり、必要に応じて含有させることができる。また、腐食反応部における界面のpHの低下を抑制して、腐食の促進を抑える作用も有する。ただし、過剰に含有させると機械特性が損なわれる場合がある。したがって、Ca含有量は0.010%以下とする。Ca含有量は0.0050%以下であるのが好ましい。上記効果を安定的に得るためには、Ca含有量を0.0002%以上とすることが好ましく、0.0005%以上とすることがより好ましい。
Mg:0.010%以下
MgはCaと同様に、腐食反応部における界面のpHの低下を抑制するので、必要に応じて含有させることができる。ただし、過剰に含有させると効果が飽和する。したがって、Mg含有量は0.010%以下とする。Mg含有量は0.0050%以下であるのが好ましい。上記効果を安定的に得るためには、Mg含有量を0.0002%以上とすることが好ましく、0.0005%以上とすることがより好ましい。
REM:0.0150%以下
REM(希土類元素)は、鋼の溶接性を向上させる作用を有するので、必要に応じて含有させることができる。ただし、過剰に含有させると効果が飽和するため、REM含有量は0.0150%以下とする。REM含有量は0.0100%以下であるのが好ましい。上記効果を安定的に得るためには、REM含有量を0.0002%以上とすることが好ましく、0.0005%以上とすることがより好ましい。
ここで、REMは、Sc、Yおよびランタノイドの合計17元素の総称であり、REMの含有量は上記元素の合計量を意味する。なお、ランタノイドは、工業的には、ミッシュメタルの形で添加される。
(B)In粒子
本発明に係る鋼材は、鋼材の表面において測定される直径5μm以上のIn粒子の数密度が、50/mm以下である。なお、直径が5μm未満のIn粒子は腐食ピットの発生にはほとんど影響を与えないため、本発明においては、直径が5μm以上のIn粒子を対象とする。以下の説明では、直径が5μm以上のIn粒子を単にIn粒子とも呼ぶ。
上述のとおり、本発明の鋼材において、In粒子は溶鋼段階で生成してしまう。しかしながら、鋼材の表面において測定される粗大なIn粒子は腐食の起点となり、塩化物を多く含む乾湿繰り返し環境において耐食性を劣化させる。そのため、鋼材の表面において測定される直径が5μm以上のIn粒子の数密度を50/mm以下とする。
In粒子の数密度は、以下の方法により測定する。まず、鋼材の表面を鏡面研磨した後、電子線マイクロアナライザ(EPMA)により鋼材表面のInのマッピング像を取得する。そして、得られたInのマッピング像から直径が5μm以上のIn粒子の数を数え、視野面積で除することで、数密度を求める。
EPMAでは、鋼材表面から1μm深さ程度の位置までの元素分析を行うため、鋼材の表面には表れていないIn粒子も数えることになる。しかし、鋼材の表面から1μm深さ程度の位置までに存在するIn粒子であれば、鋼材が腐食を受けて減肉した際に容易に表面に露出するため、塩化物を多く含む乾湿繰り返し環境において腐食の起点となり得る。そのため、本発明では、鋼材の表面においてEPMAで測定されたIn粒子を対象とする。
また、In粒子の同定は、EPMA定量分析から得られたInの含有量を用いて行い、分析視野全体の平均含有量よりも2倍以上高いIn含有量を有する粒子をIn粒子と判断する。本発明においては、加速電圧:15kV、ビーム径:100nm以下、測定ピッチ:0.2μmの条件で測定を行うものとする。
(C)製造方法
本発明に係る鋼材の製造方法については、後述するように熱間圧延後の熱処理条件に特徴があるが、その他の製造方法には特に制限はない。例えば、上述した化学組成を有するインゴットに対して、熱間圧延を施し、さらに必要に応じて冷間圧延を施して製造される、鋼板、鋼管などが含まれる。熱間圧延を行うに際しての加熱条件については特に制限はなく、通常の条件を採用すればよい。
鋼材を製造する場合は、常法で鋼を溶製し、成分の調整後、鋳造して得られた鋼片を熱間圧延し、熱処理を行う。さらに必要に応じて冷間圧延を施して製造される。
Fe-In二元系におけるInの固溶限は0.57%であるが、鋼には他にも様々な元素が固溶しているため、鋼中におけるInの固溶限はFe-In二元系における固溶限よりも低くなる。鋼中に固溶しないInは、In粒子として鋼中に存在することとなる。
そのため、熱間圧延後、1000~1200℃で20~40分保持する熱処理を施す。この温度範囲で熱処理を施すことで、In粒子を微細に分散、または母相中にInを固溶させ、鋼材の表面において測定される粗大なIn粒子の数密度を50/mm以下とすることができる。
また、上記温度域での保持時間を20分以上とすることで、鋼材の表面において測定される粗大なIn粒子の数密度を50/mm以下とすることができる。一方、上記保持温度での保持時間が40分以上では、製造コストが上昇する。
In粒子の数密度は、鋼材のIn含有量、および熱処理の条件によって調整することができる。具体的には、鋼材のIn含有量が高いほど、In粒子の数密度は大きくなる傾向がある。一方、熱処理の保持温度を高くするほど、または保持時間を長くするほど、In粒子の数密度は小さくなる傾向がある。そのため、鋼材のIn含有量に合わせて、適宜熱処理条件を上記の範囲内で調整することで、In粒子の数密度を50/mm以下とすることができる。
熱処理後は、そのまま水冷するか、または空冷した後、再加熱して焼入れてもよい。熱処理後は、コイル状に巻き取ってもよい。熱処理後、冷間圧延して、さらに熱処理を施してもよい。
鋼管を製造する場合は、鋼板を管状に成形して溶接してもよく、UO鋼管、電縫鋼管、鍛接鋼管、スパイラル鋼管などにすることができる。鋼片に熱間押出または穿孔圧延を施して製造されるシームレス鋼管も本発明の鋼材に含まれる。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
表1に示す化学組成を有する鋼を溶製し、50kgのインゴットとした後、通常の方法で熱間鍛造して、厚さが60mmのブロックを作製した。次いで、上記ブロックを、1120℃で1時間加熱してから熱間圧延し、850℃で厚さ20mmに仕上げた。そして、表2に示す条件で加熱した後水冷し、鋼板とした。
Figure 2023132089000001
Figure 2023132089000002
そして、各鋼板の表層から、幅25mm、長さ25mm、厚さ4mmの試験片を2つずつ採取し、片方の試験片は、In粒子の数密度を測定した。もう一方の試験片は、塩化物環境を模擬した、下記の腐食試験に供した。
<In粒子の数密度の測定>
In粒子の数密度は、以下の方法により測定した。まず、鋼材の表面を鏡面研磨した後、EPMAにより鋼材表面のInのマッピング像を取得した。そして、直径が5μm以上のIn粒子の数を数え、視野面積で除することで、数密度を求めた。なお、EPMAによる測定条件としては、加速電圧:15kV、ビーム径:100nm以下、測定ピッチ:0.2μmとした。
<腐食試験>
耐食性の評価は、pHを3に調整した硫酸水溶液への浸漬試験により行った。60℃の溶液に試験片を24時間浸漬し、それぞれ板厚減少量を測定することによって行った。
試験結果を表2に示す。同表における「腐食減量」は、試験片の平均の板厚減少量であり、試験前後の重量減少と試験片の表面積とを用いて算出したものである。また、「腐食ピット数」は、試験後の試験片表面において、25mm×25mmの一面に観察された目視可能なサイズのピットの数である。
表2の結果から明らかなように、比較例である試験No.3では熱処理が不十分であったため、また試験No.4では熱処理を行っていないため、In粒子の数密度が50/mmを超え、腐食ピット数が15個以上となった。また、比較例である試験No.7は、In粒子の数密度および腐食ピット数がともにゼロであるが、試験に供した鋼No.4がInを含まないため、腐食減量が2.1g/m/hと大きくなった。
一方、本発明例である試験No.1、2、5、6、8~25では、いずれも本発明で規定する成分含有量を満足しているため、腐食減量は1.5g/m/h以下であり、腐食ピット数は6個以下と小さくなっていた。
本発明に係る鋼材は、塩化物を多く含む乾湿繰り返し環境下で用いられる、耐食性に優れた耐食鋼として利用可能である。

Claims (3)

  1. 鋼材の化学組成が、質量%で、
    C:0.01~0.20%、
    Si:0.01~1.0%、
    Mn:0.05~3.00%、
    P:0.050%以下、
    S:0.030%以下、
    Al:0.005~0.100%、
    Sn:0.01~0.30%、
    In:0.001~0.200%、
    残部:Feおよび不純物であり、
    前記鋼材の表面において測定される直径5μm以上のIn粒子の数密度が50/mm以下である、
    鋼材。
  2. 前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、質量%で、
    Cu:1.0%以下、
    Ni:1.0%以下、
    Cr:1.0%以下、
    Mo:1.0%以下、
    W:1.0%以下、
    Sb:0.30%以下、
    Co:1.0%以下、
    As:0.30%以下、および
    Pb:0.30%以下、
    から選択される1種以上を含有するものである、
    請求項1に記載の鋼材。
  3. 前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、質量%で、
    Ti:0.200%以下、
    Zr:0.20%以下、
    Nb:0.10%以下、
    V:0.50%以下、
    B:0.010%以下、
    Ca:0.010%以下、
    Mg:0.010%以下、および
    REM:0.0150%以下、
    から選択される1種以上を含有するものである、
    請求項1または請求項2のいずれかに記載の鋼材。
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