JP6394839B1 - 鋼材 - Google Patents

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Abstract

化学組成が、質量%で、C:0.01〜0.20%、Si:0.01〜1.00%、Mn:0.05〜3.00%、P:0〜0.050%、S:0〜0.0100%、Sn:0.05〜0.25%、Al:0〜0.100%、N:0.0005〜0.0100%、O:0.0001〜0.0100%、Ti:0〜0.050%、Nb:0〜0.050%、V:0〜0.050%、W:0〜0.050%、Mo:0〜0.050%、Cu:0〜0.10%、Ni:0〜0.05%、Cr:0〜0.10%、Sb:0〜0.05%、B:0〜0.0010%、Ca:0〜0.0100%、Mg:0〜0.0100%、REM:0〜0.0100%、並びに残部:Feおよび不純物であり、結晶粒界のSn濃度[a]と結晶粒内のSn濃度[b]との[a/b]で表されるSn比が1.2以下である鋼材。

Description

本開示は、鋼材に関する。
近年、例えば氷海域に設置される海洋構造物または橋梁などの大型構造物に供される厚鋼板等の、各種鋼材において、材質特性の向上に対する要求が厳しくなっており、耐食性のみならず低温靱性および疲労特性の改善についても要望が高い。
従来、海水環境での耐食性を向上させるため、Sn添加鋼が提案されている。
例えば、特開2010−064110号公報、特開2012−057236号公報、および特開2012−255184号公報には、Snをそれぞれ0.005〜0.3質量%、0.02〜0.40質量%、0.01〜0.50質量%含有することで、塩化物イオン(Clイオン)を含む環境下における耐食性を向上させた鋼材が開示されている。
また、特開2012−144799号公報には、Sn:0.03〜0.5質量%を含み、フェライトと硬質第2相からなる海洋構造物用の鋼材が開示されている。
さらに、特許第5839151号公報には、水冷を2段階に分けて軟質組織と硬質組織のSn濃度比を定めることで、鋼の耐食性を向上させる技術が開示されている。
上記のように、海水環境等での耐食性を向上させるため、Sn添加鋼が提案されている。一方で、Snの添加によって耐食性を向上させつつ、さらに機械特性、特に靱性や疲労特性を改善させることが求められている。
例えば、Snの添加によって耐食性を向上させることが開示される特開2010−064110号公報、特開2012−057236号公報、および特開2012−255184号公報に記載の発明においても、靱性および疲労特性のさらなる向上に余地が残されており、耐食性、靱性および疲労特性の全てを満足させる技術が求められている。
また、特開2012−144799号公報に記載の発明では、耐食性および低温靱性をともに改善できる一方で、疲労特性にはさらなる向上に余地が残されている。
さらに、特許第5839151号公報では、水冷を2段階に分けて軟質組織と硬質組織とのSn濃度比を定めることで、鋼の耐食性を向上させている一方で、低温靱性及び疲労特性のさらなる向上に余地が残されている。
本開示は、優れた耐食性を有し、低温靱性および疲労特性にも優れた鋼材を提供することを目的とする。
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであり、下記の鋼材を要旨とする。
(1)化学組成が、質量%で、
C:0.01〜0.20%、
Si:0.01〜1.00%、
Mn:0.05〜3.00%、
P:0〜0.050%、
S:0〜0.0100%、
Sn:0.05〜0.25%、
Al:0〜0.100%、
N:0.0005〜0.0100%、
O:0.0001〜0.0100%、
Ti:0〜0.050%、
Nb:0〜0.050%、
V:0〜0.050%、
W:0〜0.050%、
Mo:0〜0.050%、
Cu:0〜0.10%、
Ni:0〜0.05%、
Cr:0〜0.10%、
Sb:0〜0.05%、
B:0〜0.0010%、
Ca:0〜0.0100%、
Mg:0〜0.0100%、
REM:0〜0.0100%、並びに
残部:Feおよび不純物であり、
結晶粒界のSn濃度[a]と結晶粒内のSn濃度[b]との[a/b]で表されるSn比が1.2以下である、
鋼材。
(2)板厚が6〜100mmの鋼板である前記(1)に記載の鋼材。
本開示によれば、耐食性、低温靱性および疲労特性の優れた鋼材を得ることが可能になる。
以下、本開示の実施形態に係る鋼材について詳述する。
なお、本明細書中において、「〜」を用いて表される数値範囲は、特に断りの無い限り、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本実施形態に係る鋼材は、化学組成が、質量%で、C:0.01〜0.20%、Si:0.01〜1.00%、Mn:0.05〜3.00%、P:0〜0.050%、S:0〜0.0100%、Sn:0.05〜0.25%、Al:0〜0.100%、N:0.0005〜0.0100%、O:0.0001〜0.0100%、Ti:0〜0.050%、Nb:0〜0.050%、V:0〜0.050%、W:0〜0.050%、Mo:0〜0.050%、Cu:0〜0.10%、Ni:0〜0.05%、Cr:0〜0.10%、Sb:0〜0.05%、B:0〜0.0010%、Ca:0〜0.0100%、Mg:0〜0.0100%、REM:0〜0.0100%、並びに残部:Feおよび不純物であり、結晶粒界のSn濃度[a]と結晶粒内のSn濃度[b]との[a/b]で表されるSn比が1.2以下である。
本実施形態の鋼材によれば、上記の構成を備えることで、優れた耐食性を有しかつ低温靱性および疲労特性にも優れた鋼材が提供される。その理由は、明確ではないものの以下のように推察される。
本発明者らは、Snの含有量を変化させた各種鋼板を用意し、耐食性と靭性との関係を調査した。その結果、Sn含有量が多いほど耐食性は向上するが、シャルピー衝撃試験の0℃における吸収エネルギー(低温靭性)は悪くなる場合があることが分かった。例えば、SAE J2334試験耐食性の閾値を0.6mm以下、0℃における吸収エネルギーの閾値を150J以上とした場合、両方を安定して満足することが容易でないことが分かった。
そこで、さらに耐食性および吸収エネルギーの調査を行った結果、Sn含有量が高くても優れた吸収エネルギーが得られる鋼材の構成が明らかとなった。
つまり、吸収エネルギーが向上した鋼材について、詳細に調査を行った結果、結晶粒界と結晶粒内とのSn比が鋼の低温靱性に大きく寄与していることを見出した。さらに、結晶粒界と結晶粒内とのSn比は、鋼の疲労特性にも影響を及ぼすことが判明した。また、耐食性にも影響を及ぼすことが判明した。
発明者らは、さらに、耐食性、低温靱性および疲労特性の全てに優れる鋼材について、鋭意研究した結果、以下の知見を得るに至った。
鋼材にSnを添加すると、Snの融点が低いため、圧延後の冷却および再加熱により、Snが結晶粒内を拡散し、結晶粒界に偏析する。そして、Snが結晶粒界に偏析すると、鋼の靱性が著しく低下する。
そこで、鋼材におけるSnの結晶粒界への偏析を抑制し、特に、結晶粒界のSn濃度[a]と結晶粒内のSn濃度[b]との[a/b]で表されるSn比(以下単に「結晶粒界と結晶粒内とのSn比」とも称す)を1.2以下にすることによって、優れた耐食性を得つつかつ低温靱性および疲労特性が改善されることが明らかとなった。
なお、結晶粒界と結晶粒内とのSn比を1.2以下にするための手段としては、特に限定されるものではないが、例えば、適正な条件でSn含有鋼を製造すると、Snの結晶粒界偏析を抑制することが可能になる。具体的には、仕上げ圧延後の鋼をまず緩冷却した後、所定の温度で一定時間保持して復熱させ、さらにその後、550℃以下の温度まで強冷却することにより、Snの粒界偏析を抑制しSn比を上記範囲に制御することが可能になる。
本実施形態は上記の知見に基づいてなされたものである。以下、本実施形態の各要件について詳しく説明する。
(A)化学組成
各元素の限定理由は下記のとおりである。なお、以下の説明において含有量についての「%」は、「質量%」を意味する。
C:0.01〜0.20%
Cは、鋼材の強度を向上させる元素である。一方、C含有量が過剰となると溶接性が著しく低下する。また、C含有量の増大とともに、pHが低い環境でカソードとなって腐食を促進するセメンタイトの生成量が増大し、鋼材の耐食性が低下する。このため、C含有量は0.01〜0.20%とする。C含有量は0.02%以上であるのが好ましく、0.03%以上であるのがより好ましい。C含有量の下限は、0.05%、0.07%または0.09%としてもよい。また、C含有量は0.18%以下であるのが好ましく、0.16%以下であるのがより好ましい。C含有量の上限は、0.15%または0.13%としてもよい。
Si:0.01〜1.00%
Siは脱酸に必要な元素である。十分な脱酸効果を得るため、0.01%以上含有させる必要がある。一方、Si含有量が過剰となると、鋼材の靱性、特に溶接が施される場合にはその母材および溶接熱影響部の靱性が損なわれる。このため、Si含有量は0.01〜1.00%とする。Si含有量は0.03%以上であるのが好ましく、0.05%以上であるのがより好ましい。Si含有量の下限は、0.10%、0.15%または0.20%としてもよい。また、Si含有量は0.80%以下であるのが好ましく、0.60%以下であるのがより好ましい。Si含有量の上限は、0.50%、0.40%または0.30%としてもよい。
Mn:0.05〜3.00%
Mnは低コストで鋼材の強度を高める作用を有する元素である。一方、Mn含有量が過剰となると、Mn偏析が多くなり、靱性が悪化する。このため、Mn含有量は0.05〜3.00%とする。Mn含有量は0.50%以上であるのが好ましく、0.80%以上であるのがより好ましい。また、Mn含有量は2.50%以下であるのが好ましく、2.00%以下であるのがより好ましい。
P:0〜0.050%
Pは鋼材中に不純物として存在する元素である。Pは鋼材の耐酸性を低下させる元素であり、腐食界面のpHが低下する塩化物腐食環境においては鋼材の耐食性を低下させる。また、Pは鋼材の溶接性および靱性を低下させる。そのため、P含有量を0.050%以下に制限する。P含有量は、0.040%以下であるのが好ましく、0.030%以下であるのがより好ましい。靱性の向上のため、P含有量の上限を0.020%、0.015%または0.010%としてもよい。Pを完全に取り除くことは容易ではないが、これを排除する必要はなく、P含有量の下限は0%である。極低燐化のための脱硫コストは高いため、P含有量の下限を0.0005%、0.001%または0.003%としてもよい。
S:0〜0.0100%
Sは鋼材中に不純物として存在する元素である。Sは鋼材中に腐食の起点となるMnSを形成する。S含有量が0.0100%を超えると、鋼材の耐食性の低下が顕著になる。このため、S含有量は0.0100%以下に制限する。S含有量は、0.0080%以下であるのが好ましく、0.0060%以下であるのがより好ましく、0.0040%以下であるのがさらに好ましい。Sを完全に取り除くことは容易ではないが、これを排除する必要はなく、S含有量の下限は0%である。極低硫化のための精錬コストは高いため、Sの下限を0.0005%または0.0010%としてもよい。
Sn:0.05〜0.25%
Snは、低pH塩化物環境において鋼材のアノード溶解反応を著しく抑制するので、塩化物腐食環境における鋼材の耐食性を大幅に向上させる。一方、Sn含有量が過剰となると、上記の効果が飽和するだけでなく、鋼材の靱性、特に溶接が施される場合にはその母材および大入熱溶接継手の靱性が劣化する。したがって、Sn含有量は0.05〜0.25%とする。Sn含有量は0.07%以上であるのが好ましく、0.09%以上であるのがより好ましく、0.10%以上であるのがさらに好ましい。また、Sn含有量は0.20%以下であるのが好ましく、0.18%以下であるのがより好ましく、0.016%以下であるのがさらに好ましい。
Al:0〜0.100%
Alは、鋼材の脱酸に有効な元素である。本実施形態においては、鋼材中にSiを含有させるので、Siによって脱酸が行われる。よって、Alで脱酸処理することは必ずしも必要でなく、Al含有量の下限は0%とする。しかし、Siに加えて、さらにAlによる脱酸を行ってもよい。一方、Al含有量が0.100%を超えると、低pH環境における鋼材の耐食性が低下することによって塩化物腐食環境における鋼材の耐食性が低下する。また、Al含有量が0.100%を超えると窒化物が粗大化することによって鋼材の靱性の低下を引き起こす。したがって、Al含有量は、0〜0.100%とする。Alによる脱酸効果を得るためには、Al含有量を0.005%以上とすることが好ましく、0.010%以上とすることがより好ましく、0.015%以上とすることがさらに好ましく、0.020%以上とすることがさらに好ましく、0.025%以上とすることが特に好ましい。また、Al含有量は0.060%以下であるのが好ましく、0.045%以下であるのがより好ましい。
N:0.0005〜0.0100%
Nは、アンモニアとなって溶解し、飛来塩分量が多い環境において、Fe3+の加水分解によるpH低下を抑制することにより、塩分環境における鋼板の耐腐食性を向上させる効果を有する。一方、N含有量が過剰となると、その効果が飽和するだけでなく、鋼板の靱性を劣化させる。したがって、N含有量は0.0005〜0.0100%とする。Nの下限を0.0005%より低減することは容易でなくコストも高くなるので、0.0005%を下限とする。必要に応じて、0.0010%または0.0020%をN含有量の下限としてもよい。Nの含有量が0.0100%を超えると、粗大なAlNが形成され靱性が低下する懸念があるため、0.0100%を上限とする。靱性をより高めるため、0.0080%または0.0060%をN含有量の上限としてもよい。
O:0.0001〜0.0100%
O(酸素)は、微量の含有により鋼材の靱性、特に溶接が施される場合にはその溶接継手の靱性を向上させる。一方、OはSnOおよびSnO等の酸化物を形成する。そのため、O含有量が過剰となると、O含有量が過剰になると、鋼中のSn濃度を十分に確保できない。また、上記酸化物は腐食の起点となるので、鋼材の耐食性が低下する。したがって、O含有量は0.0001〜0.0100%とする。O含有量は0.0002%以上であるのが好ましく、0.0003%以上であるのがより好ましい。O含有量の下限は、0.0005%、0.0010%、0.0015%または0.0019%としてもよい。また、O含有量は0.0090%以下であるのが好ましく、0.0080%以下であるのがより好ましい。O含有量の上限は、0.0060%、0.0040%または0.0030%としてもよい。
Ti:0〜0.050%
Nb:0〜0.050%
V:0〜0.050%
Ti、NbおよびVは、いずれも、析出物を生じて鋼材の強度を高める元素であり、必要に応じて含有させてもよい。これらの含有は必須ではなく、それらの含有量の下限はすべて0%である。一方、Ti、Nb、Vを過剰に含有させると靱性が低下することがあるため、いずれの含有量も0.050%以下とする。いずれの含有量も0.0030%以下とするのが好ましく、0.020%以下とするのがより好ましい。上記の効果を得るためには、Ti、NbおよびVから選択される1種以上を、0.001%以上含有させてもよい。
W:0〜0.050%
Mo:0〜0.050%
WおよびMoの含有量が0.050%を超えると、耐食性が低下する。したがって、WおよびMoの含有量は、それぞれ0.050%以下とする。いずれの含有量も0.040%以下であるのが好ましい。W含有量およびMo含有量のそれぞれの上限は、0.030%、0.020%、0.010%または0.005%としてもよい。耐食性の改善のためにはW含有量およびMo含有量は少ない方が好ましく、それらの含有量の下限は0%である。しかし、強度または靱性(特に低温靱性)などの特性向上のため、WおよびMoを含有してもよく、それらの含有量の下限を0.010%または0.020%としてもよい。
Cu:0〜0.10%
Cuは一般に、鋼材の耐食性を向上させる元素であると考えられている。しかしながら、本発明者らは、本実施形態で想定されるような塩化物を含む腐食環境下では、Cuを含有すると鋼材の耐食性が低下することを見出した。Cu含有量は、少ない方が好ましく、Cu含有量の下限を0%とする。一方、不純物として混入する場合を考慮し、Cu含有量は0.10%以下とする。耐食性の向上のため、Cu含有量は0.07%以下であるのが好ましく、0.05%以下であるのがより好ましく、0.03%以下であるのがさらに好ましく、0.02%以下であるのがさらに好ましい。Cu含有量は0.01%以下であるのが特に好ましい。
Ni:0〜0.05%
Niは一般に、Cuと同様に、鋼材の耐食性を向上させると考えられている。しかしながら、本発明者らは、本実施形態で想定されるような塩化物を含む腐食環境下では、Niを含有すると鋼材の耐食性が低下することを見出した。Ni含有量は、少ない方が好ましく、Ni含有量の下限は0%である。一方、不純物として混入する場合であっても、Ni含有量が0.05%以下であれば耐食性の低下は少ないことから、Ni含有量は0.05%以下とする。耐食性の向上のため、Ni含有量は0.03%以下であるのが好ましく、0.02%以下であるのがより好ましく、0.01%以下であるのがさらに好ましい。
Cr:0〜0.10%
Crは一般に、鋼材の耐食性を向上させる元素であると考えられている。しかしながら、本発明者らは、本実施形態で想定されるような塩化物を含む腐食環境下では、Crを含有すると鋼材の耐食性が悪化することを見出した。Cr含有量は、少ない方が好ましく、含有量の下限を0%とする。一方、不純物として混入する場合を考慮し、Cr含有量は0.10%以下とする。耐食性の向上のため、Cr含有量は0.07%以下であるのが好ましく、0.05%未満であるのがより好ましく、0.03%以下であるのがさらに好ましく、0.02%以下であるのがさらに好ましい。Cr含有量は0.01%以下であるのが特に好ましい。
Sb:0〜0.05%
Sbは、耐酸性を向上させる元素であるため、必要に応じて含有させてもよい。Sbの含有は必須ではなく、その含有量の下限は0%である。なお、0.05%を超える量のSbを含有させても、その効果が飽和するだけでなく、鋼材の靱性等の劣化を招く。そこで、Sb含有量は0.05%以下とする。Sb含有量の上限は、0.04%以下または0.03%以下としてもよい。上記の効果を得るためには、Sb含有量は0.005%以上であるのが好ましく、0.010%以上であるのがより好ましく、0.015%以上であるのがさらに好ましい。上記の効果を得る必要がない場合には、必要に応じて、Sb含有量の上限を0.015%、0.010%または0.005%としてもよい。
B:0〜0.0010%
Bは、微量の添加で鋼材の強度を高める元素であるため、必要に応じて含有させてもよい。Bの含有は必須ではなく、その含有量の下限は0%である。なお、0.0010%を超える量のBを含有させると、靱性が劣化することがあるため、B含有量は0.0010%以下とする。上記の効果を得るためには、B含有量は0.0003%以上であるのが好ましく、0.0005%以上であるのがより好ましい。上記の効果を得る必要がない場合には、必要に応じて、B含有量の上限を0.0005%または0.0003%としてもよい。
Ca:0〜0.0100%
Caは、鋼材中に酸化物の形で存在し、腐食反応部における界面のpHの低下を抑制して、腐食を抑える作用を有するため、必要に応じて含有させてもよい。Caの含有は必須ではなく、その含有量の下限は0%である。なお、Ca含有量が0.0100%を超えると、上記の効果が飽和する。したがって、Ca含有量は、0.0100%以下とする。Ca含有量は0.0050%以下であるのが好ましく、0.0040%以下であるのがより好ましい。上記の効果を得るためには、Ca含有量は0.0002%以上であるのが好ましく、0.0005%以上であるのがより好ましい。上記の効果を得る必要がない場合には、必要に応じて、Ca含有量の上限を0.0030%、0.0005%または0.0002%以下としてもよい。
Mg:0〜0.0100%
Mgは、Caと同様に、腐食反応部における界面のpHの低下を抑制して、鋼材の腐食を抑える作用を有するため、必要に応じて含有させてもよい。Mgの含有は必須ではなく、その含有量の下限は0%である。なお、Mg含有量が0.0100%を超えると、上記の効果が飽和する。したがって、Mg含有量は0.0100%以下とする。Mg含有量は0.0050%以下であるのが好ましく、0.0040%以下であるのがより好ましい。上記の効果を得るためには、Mg含有量は0.0002%以上であるのが好ましく、0.0005%以上であるのがより好ましい。上記の効果を得る必要がない場合には、必要に応じて、Mg含有量の上限を0.0030%、0.0005%または0.0002%としてもよい。
REM:0〜0.0100%
REM(希土類元素)は、鋼材の溶接性を向上させる元素であるため、必要に応じて含有させてもよい。REMの含有は必須ではなく、その含有量の下限は0%である。なお、REM含有量が0.0100%を超えると上記の効果が飽和する。したがって、REM含有量は0.0100%以下とする。REM含有量は0.0050%以下であるのが好ましく、0.0040%以下であるのがより好ましい。上記の効果を得るためには、REM含有量は0.0002%以上であるのが好ましく、0.0005%以上であるのがより好ましい。上記の効果を得る必要がない場合には、必要に応じて、Mg含有量の上限を0.0030%、0.0005%または0.0002%としてもよい。
ここで、REMとは、ランタノイドの15元素にYおよびScを合わせた17元素の総称である。これらの17元素のうちの1種以上を鋼材に含有することができ、REM含有量は、これらの元素の含有量の合計を意味する。
本実施形態の鋼材の化学組成において、残部はFeおよび不純物である。
ここで「不純物」とは、鋼材を工業的に製造する際に、鉱石、スクラップ等の原料、製造工程の種々の要因によって混入する成分であって、本実施形態に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
(B)Sn比
結晶粒界のSn濃度[a]と結晶粒内のSn濃度[b]との[a/b]で表されるSnの比:1.2以下
上述のように、結晶粒界と結晶粒内とのSn比は、鋼の低温靱性、疲労特性および耐食性に影響を及ぼす。Snが結晶粒界に偏析し、結晶粒界と結晶粒内とのSn比が1.2を超えると、低温靱性および疲労特性の改善効果が期待できない。そのため、結晶粒界と結晶粒内とのSn比は1.2以下とする。上記Sn比は、1.1以下であるのが好ましく、1.05以下であるのがより好ましい。上記Sn比の下限を特に定める必要はないが、その下限を0.7、0.8、0.9又は1.0としてもよい。
なお、本実施形態の鋼材中にはSnの析出物はなく、抽出残査は0%である。つまり、鋼材中では、Snは全て固溶している。
本実施形態において、結晶粒界と結晶粒内とのSn比は、以下の方法により求める。まず、鋼材の1/4tの位置(tは板厚又は肉厚を表す)の部位から直径3mm、長さ10mmの円筒形の試料を用意する。そして、当該試料をオージェ分光装置(アルバック・ファイ株式会社製 Model 670i)に付属した超高真空中衝撃破断機構で、真空度(1.0e−9torr以下)で液体窒素温度(−150℃)の雰囲気で破断作製した破面を観察する。破面はリバーパターンを有するへき界破面とディンプル破面が殆どで、粒界破面がまばらに観察される。マクロフラクトグラフィ法により破面の結晶粒界と結晶粒内を判断し、結晶粒界と結晶粒内それぞれ10点にてオージェ分光スペクトルを測定する。結晶粒界と結晶粒内の判定を確定するためにマクロフラクトグラフィ法で判定した破面をオージェ分光スペクトルで結晶粒界に偏析しやすいCを分析し、結晶粒界と結晶粒内を決定する。その結晶粒界と結晶粒内のSnの濃度(原子%)の比を測定することでSn比を算出する。なお、相対感度係数は、Auで校正する。
(C)寸法
本実施形態の鋼材の厚さ等の寸法については特に制限は設けない。しかし、耐食性、低温靱性および耐疲労特性を改善する効果は、前記鋼材を厚さが6〜100mmの鋼板として用いる際により顕著に発揮される。前記鋼板の厚さ(板厚)は10〜40mmであることが好ましい。鋼材は鋼管又は形鋼などであってもよく、その厚さ又は肉厚は3〜50mm程度であってもよい。
(D)製造方法
本実施形態に係る鋼材は、例えば、以下に示す製造方法を用いることにより、製造することができる。
化学組成が前述の組成であるスラブを準備する工程と
前記スラブを1000〜1150℃に加熱を施す加熱工程と、
前記スラブに粗圧延を施す粗圧延工程と、
粗圧延が施された前記スラブに、950℃からの圧下率を50%以上としつつ、表面の仕上温度が900〜750℃となるよう仕上げ圧延を施す仕上圧延工程と、
仕上圧延が施された前記スラブ(鋼材)を、表面温度が630℃以下となるまで5〜10℃/sの冷却速度で加速冷却する第1加速冷却工程と、
前記第1加速冷却工程後の前記スラブ(鋼材)を30〜120秒間加速冷却を中断し空冷(以下、加速冷却を中断し空冷することを「保持」という。)し、前記スラブ(鋼材)内部からの熱によって表面温度を650〜700℃となるまで復熱させる復熱工程と、
前記復熱工程後の前記スラブ(鋼材)を、表面温度が550℃以下となるまで10〜60℃/sの冷却速度で加速冷却する第2加速冷却工程と、
第2加速冷却工程後に空冷を施す空冷工程と、
を有する鋼材の製造方法である。
加熱工程における加熱温度は、1000〜1150℃にする。上記温度範囲にすることによって、加熱時のオーステナイト粒を小さく保ち、圧延組織の細粒化を図ることが可能になる。加熱温度が1150℃以下であることでオーステナイト粒の粗大化が抑制され、冷却変態後の組織の粗大化も抑制されるため低温靱性に優れる。一方、加熱温度が1000℃以上であることで、合金元素が十分に溶体化され、鋼の内質の劣化が抑制されると共に、圧延の仕上温度が下がり過ぎることがないため、低温靱性の向上が期待できる。
また、圧延工程における表面の仕上温度が900℃以下であることで、再結晶したオーステナイト粒の成長が抑制され細粒化が促進される。また、仕上温度が750℃以上であることで、フェライト組織が加工を受け難くなるため、低温靱性が向上する。このため、仕上温度を900〜750℃にする。
さらに、950℃からの圧下率が50%以上であることで、オーステナイトの部分的な再結晶が生じ難く、混粒組織となることが抑制されて低温靱性が向上する。そのため、950℃からの圧下率は50%以上とする。
圧延後の冷却に関しては、以下に示す条件によって水冷する。
<圧延終了後の緩冷却(第1加速冷却工程)>
仕上げ圧延後に、速やかに鋼材表面温度が630℃以下となるまで、5〜10℃/sの冷却速度で加速冷却する。上記の範囲の冷却速度とすることで、Snの結晶粒界偏析を抑制することができる。冷却速度が5℃/s以上であることで、Snの拡散が抑制される。また10℃/s以下であることで、原因は定かではないが、結晶粒界と結晶粒内とのSn比が低減される。その結果、いずれの場合も、低温靱性および疲労特性が向上する。
<加速冷却前の保持による復熱(復熱工程)>
緩冷却後、冷却された鋼材の表面温度が鋼材内部温度により再び上昇し、表面温度が650〜700℃の温度に均一化するまで、復熱のため加速冷却を中断し空冷(保持)する。その保持時間(この時間は加速冷却中断時間であり、復熱時間に相当する。)は、30〜120秒間とする。復熱工程により、SやP、Cなど偏析しやすい元素を粒界へ偏析させ、Snの拡散を抑制することができる。保持時間が30秒以上であることで鋼材内部まで均一に復熱することができる。保持時間が120秒以下であることで鋼材表面温度が700℃超の範囲にまで上昇することが抑制され易く、Snの拡散が低減され偏析が抑制される。
<加速冷却(第2加速冷却工程)>
その後、表面温度550℃以下の温度まで10〜60℃/sの冷却速度で冷却する。上記の条件で加速冷却することで、Snの結晶粒界偏析を抑制するとともに、鋼の組織を細粒化することが可能となる。冷却速度が10℃/s以上であることで、Snの拡散が抑制され、結晶粒界偏析が抑制される。一方、冷却速度が60℃/s以下であることで、鋼材板の強度の上昇が抑制され、耐疲労性が向上する。
第2加速冷却工程の後には、空冷が施される。
本実施形態の鋼材を橋梁、海洋構造物等の大型構造物として用いる場合には、引張強さを400〜650MPaの範囲とすることが好ましい。引張強さを480〜580MPaとしてもよい。
以下、実施例によって本開示をより具体的に説明するが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。
表1に示した化学組成を有する鋼を炉で溶製した後、鋳造によって厚さが300mmのスラブを作製した。このスラブを加熱し、粗圧延、仕上げ圧延を行った後に速やかに冷却し、板厚20mmの鋼板とした。製造条件を表2に示す。
その後、各鋼板から、直径3mm、長さ10mmの円筒形の試料を切り出し、オージェ分光装置(アルバック・ファイ株式会社製 Model 670i)に付属した超高真空中衝撃破断機構で、真空度(1.0e−9torr以下)で液体窒素温度(−150℃)の雰囲気で破断作製した破面を観察した。破面はリバーパターンを有するへき界破面とディンプル破面が殆どで、粒界破面がまばらに観察された。マクロフラクトグラフィ法により破面の結晶粒界と結晶粒内を判断し、結晶粒界と結晶粒内それぞれ10点にてオージェ分光スペクトルを測定した。結晶粒界と結晶粒内の判定を確定するためにマクロフラクトグラフィ法で判定した破面をオージェ分光スペクトルで結晶粒界に偏析しやすいCを分析し、結晶粒界と結晶粒内を決定した。その結晶粒界と結晶粒内のSnの濃度(原子%)の比を測定することでSn比を算出した。なお、相対感度係数は、Auで校正した。
さらに、各鋼板について、耐食性試験、靱性試験および疲労試験を行った。
<耐食性試験>
各鋼板から、長さ60mm、幅100mm、厚さ3mmの試験片を切り出し、SAE J2334試験に供した。なお、各鋼板から試験片を2つ採取し、そのうちの1つの表面には、事前に防食皮膜を形成させた。以下に、SAE J2334試験について説明する。
SAE J2334試験とは、乾湿繰り返し(湿潤→塩分付着→乾燥)の条件を1サイクル(合計24時間)として行う加速劣化試験であり、飛来塩分量が1mddを超えるような厳しい腐食環境を模擬する試験である。SAE J2334試験は以下の条件を1サイクルとして行った。下記の条件下における腐食形態は、大気暴露試験の腐食形態と類似している。
(試験条件)
・湿潤:50℃、100%RH、6時間、
・塩分付着:0.5質量%NaCl、0.1質量%CaCl、0.075質量%NaHCO水溶液浸漬、0.25時間、
・乾燥:60℃、50%RH、17.75時間
また、各試験片の表面には、ショットブラスト処理を施した。そして、一部の試験片については、ショットブラスト処理を施した後、防食下地、下塗、中塗および上塗を順に塗布し、膜厚が合計で250μmの防食皮膜を形成した。
なお、防食下地としては、無機ジンクリッチペイント(神東塗料株式会社製「シントージンク#2000」)を75μm、ミストコートとしてエポキシ樹脂塗料(神東塗料株式会社製「ネオゴーセイ#2300MC」)を塗布した。下塗としては、エポキシ樹脂塗料(神東塗料株式会社製「ネオゴーセイ#2300PS」)を膜厚120μmになるようにスプレー塗装した。また、中塗としては、ふっ素樹脂塗料用中塗塗料(神東塗料株式会社製「シントーフロン#100中塗」)を30μm塗布した。さらに、上塗としては、ふっ素樹脂塗料(神東塗料株式会社製「シントーフロン#100」)を膜厚25μmになるようにスプレー塗装した。
防食皮膜を有する各試験片については、防食皮膜に十字の疵を形成して、鋼材の一部を露出させた。防食皮膜を形成しなかった各試験片には、試験後にその表面全域に均一なさび層が形成されたため、腐食量を求めた。「腐食量」は、表面のさび層を除去した場合における試験片の平均の板厚減少量として求めた。具体的には、試験の前後における試験片の重量減少量と、試験片の表面積とを用いて板厚減少量を算出し、腐食量とした。
なお、耐食性試験における合否判断基準は以下のとおりである。防食皮膜を形成しなかった試験片を用いてSAE J2334試験を120サイクル行い、腐食量が0.60mm以下であったものを合格とした。また、防食皮膜を有する試験片を用いてSAE J2334試験を200サイクル行い、疵部における剥離面積が20%以下で、かつ、最大腐食深さが0.40mm以下であったものを合格とした。
<低温靱性試験>
低温靱性は、板厚中心部から圧延方向に直角な方向から衝撃試験片を採取し、JIS Z 2242のVノッチ試験片による0℃での吸収エネルギー(vE)を求めて評価した。低温靱性は、吸収エネルギーが150J以上のものを合格とした。
<疲労試験>
疲労試験では、応力振幅を試験条件として変化させ、応力振幅と疲労破断寿命との関係をSN線図で表し、疲労限度を導出した。この疲労試験においては、JIS Z 2275で規定される2号試験片を用い、荷重比(最小荷重を最大荷重で除した値)は0.1とした。なお、疲労破断寿命は、最大荷重時の変位(試験体に荷重を負荷するアクチュエータのシリンダーの変位)が、試験開始時に比べ1mm増した時点と定義した。耐疲労特性は、疲労破断寿命が5.5×10回以上であるものを合格とした。
それらの結果を表3にまとめて示す。
試験No.1〜10は、本開示の規定を全て満足する本開示例である。表3から分かるように、SAE J2334試験においては、無塗装の試験片での腐食量が0.60mm以下で、塗装した試験片での疵部における剥離面積が20%以下、最大腐食深さが0.40mm以下であった。また、靱性試験においては、0℃でのシャルピー吸収エネルギーが150J以上となった。さらに、疲労試験においては、疲労破断寿命が5.5×10回以上であった。
これらに対して、比較例である試験No.15および16は、鋼材中のSn含有量が規定される下限値未満であったため、耐食性が劣る結果となった。また、試験No.17は、鋼材中のSn含有量が規定される上限値を超えたため、結晶粒界と結晶粒内とのSn比が1.2を超え、低温靱性および耐疲労特性が劣る結果となった。
さらに、試験No.18〜23は、結晶粒界と結晶粒内とのSn比が1.2を超えたため、耐食性がわずかに低下するとともに、低温靱性および耐疲労特性も劣る結果となった。
さらに、比較例である試験No.11〜14は、鋼材中のMo、Cu、Ni、またはCr含有量が規定される上限値を超えるため、耐食性が劣る結果となった。
本開示によれば、耐食性、低温靱性および疲労特性の優れた鋼材を得ることが可能になる。したがって、本開示に係る鋼材は、寒冷地で使用される海洋構造物、橋梁等の大型構造物の材料として用いるのに好適である。

Claims (2)

  1. 化学組成が、質量%で、
    C:0.01〜0.20%、
    Si:0.01〜1.00%、
    Mn:0.05〜3.00%、
    P:0〜0.050%、
    S:0〜0.0100%、
    Sn:0.05〜0.25%、
    Al:0〜0.100%、
    N:0.0005〜0.0100%、
    O:0.0001〜0.0100%、
    Ti:0〜0.050%、
    Nb:0〜0.050%、
    V:0〜0.050%、
    W:0〜0.050%、
    Mo:0〜0.050%、
    Cu:0〜0.10%、
    Ni:0〜0.05%、
    Cr:0〜0.10%、
    Sb:0〜0.05%、
    B:0〜0.0010%、
    Ca:0〜0.0100%、
    Mg:0〜0.0100%、
    REM:0〜0.0100%、並びに
    残部:Feおよび不純物であり、
    結晶粒界のSn濃度[a](原子%)と結晶粒内のSn濃度[b](原子%)との[a/b]で表されるSn比が1.2以下である、
    鋼材。
  2. 板厚が6〜100mmの鋼板である請求項1に記載の鋼材。
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