JP4867258B2 - 剛性と加工性に優れた高強度薄鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Nb-(92.9/14)×N≧0.02・・・・・(1)
C-(12/92.9)×Nb-1≧0.05 ・・・・(2)
Si+Al≧0.5 ・・・・・(3)
ここで、Nb-1=Nb-(92.9/14)×Nであり、式中の各元素記号は各元素の含有量(質量%)を表す。
Nb-(92.9/14)×N-2≧0.02・・・・・(4)
C-(12/92.9)×Nb-2-(12/47.9)×Ti-2-(12/50.9)×V≧0.05・・・・・(5)
ここで、N-2=N-(14/47.9)×Ti (ただし、N-2≦0のときは、N-2=0)、
Nb-2=Nb-(92.9/14)×N-2、
Ti-2=Ti-(47.9/14)×N-(47.9/32.1)×S (ただし、Ti-2≦0のときは、Ti-2=0)であり、
式中の各元素記号は各元素の含有量(質量%)を表す。
C:Cは、オーステナイトを安定化させる元素であり、残留オーステナイト相の生成には不可欠な元素であるとともに、高強度化にも有効な元素である。そのため、C量は0.07%以上とし、さらに、炭化物として固定されない量として上記(2)式の左辺で計算される固溶C量を0.05%以上とする必要がある。一方、C量が0.20%を超えると、硬質な低温変態相が増加して鋼板が極端に高強度化し、その加工性が劣化するとともに、溶接性の劣化も招く。そのため、C量は0.20%以下、好ましくは0.15%以下とする必要がある。
フェライト相は、剛性向上に有利な集合組織の発達や、オーステナイト中へのCの濃化促進による残留オーステナイト相の生成に効果を有することから、体積率で50%以上とする必要がある。なお、後述する残留オーステナイト相やマルテンサイト等の低温変態相の量を増加させて加工性の向上や高強度化できるので、フェライト相の体積率は90%以下とすることが好ましい。また、加工性、特に延性の向上の観点から、TRIP効果を有する残留オーステナイト相を存在させることが効果的であるが、それには残留オーステナイト相は、体積率で5%以上とする必要がある。一方、その体積率が20%を超えると、C量の増加により溶接性が低下することから残留オーステナイト相は、体積率で20%以下とする必要がある。なお、本発明においては、上記フェライト相、残留オーステナイト相の体積率を満足すればよく、その他の相については、特に規定する必要はない。
(113)[1-10]〜(223)[1-10]方位の集合組織を発達させることで、特に圧延方向に対して直角方向のヤング率を向上させることができることから、鋼板の1/4板厚における板面の(113)[1-10]〜(223)[1-10]方位における平均のODF(Orientation Distribution Function)解析強度fは4以上とする必要がある。
本発明の高強度薄鋼板は、例えば、上記のような成分組成からなる鋼を、スラブ鋳造し、熱間圧延を行い熱延鋼板とし、巻取った後、酸洗し、冷間圧延を行って冷延鋼板とし、焼鈍を行って製造されるが、以下にその詳細を説明する。
熱間圧延時の仕上圧延の圧延終了温度(仕上圧延終了直後の温度)がAr3変態点を下回ると、フェライト粒が粗大化したり、巻取温度が低い場合には未再結晶の組織となって、剛性を向上させる集合組織を発達させることができない。したがって、仕上圧延終了温度はAr3変態点以上とする必要がある。なお、仕上圧延を行うに際し、Ar3変態点直上での圧延を行うと、組織を細粒化し、冷間圧延時に剛性向上に有利な集合組織を発達させることができる。それには、(Ar3変態点+100)℃以下における合計圧下率を50%以上で仕上圧延を行い、かつ仕上圧延終了温度をAr3変態点〜(Ar3変態点+50)℃の温度範囲とすることが好ましい。また、仕上圧延を行うに際し、潤滑圧延を行うと高剛性化に不利な剪断歪による集合組織の発達を抑制できる。
熱間圧延後の鋼板を巻取るにあたり、巻取温度が500℃を下回ると低温変態相が生成して、その後の冷間圧延において、剛性を向上させる集合組織を発達させることができない。したがって、巻取温度は500℃以上とする必要がある。一方、巻取温度が高いと、冷間圧延前のフェライト粒が粗大化し、剛性を向上させる集合組織の発達を抑制することから、巻取温度は650℃以下とすることが好ましい。
酸洗後の熱延鋼板を冷間圧延する際に、その圧下率を最適化することで、剛性の向上に有効な(113)[1-10]〜(223)[1-10]方位に回転させることができる。このような方位を発達させるには圧下率を40〜85%とする必要がある。一方、圧下率が高い場合は、圧延荷重が高くなり操業上のコストが増加することから、圧下率は60%以下とすることが好ましく、50%以下とすることがより好ましい。
焼鈍時の昇温速度が極端に遅いと、昇温途中でフェライトの再結晶が進行し、剛性が低下することから、焼鈍時の昇温速度は室温から800℃までの平均で1℃/s以上とする必要がある。なお、昇温速度は、特に上限を設けるものではないが、大きな昇温速度を得るには急速加熱設備等が必要となり製造コストが上昇するため、平均で30℃/s未満とすることが好ましい。
焼鈍時の加熱温度が800℃未満だと、焼鈍後に未再結晶組織が残り、加工性が著しく低下するので、加熱温度は800℃以上とする必要がある。一方、加熱温度が900℃を超えると、剛性の向上に有効な集合組織の発達が阻害されるとともに、オーステナイトが粗大化し、その後の冷却でフェライトの生成や残留オーステナイト相の生成が抑制されるので、高剛性化や加工性向上を図れないため加熱温度は900℃以下とする必要がある。
焼鈍時の加熱温度が本発明範囲内であっても、長時間滞留させると剛性の向上に有効な集合組織の発達が阻害されるとともに、オーステナイトが粗大化することから、800〜900℃の温度範囲に上記(6)式を満たすような時間v(s)滞留させる必要がある。ここで、上記(6)式は、オーステナイトが粗大化し過ぎず剛性を確保することができるための滞留時間を求めた実験式である。
焼鈍時の加熱後の冷却は、フェライト変態を促進して剛性向上に有利な集合組織を発達させるとともに、オーステナイト中へのCの濃化を促進して残留オーステナイト相の生成を促進させるために、800〜500℃の温度範囲の平均冷却速度は100℃/s以下、好ましくは30℃/s以下とする必要がある。一方、平均冷却速度が1℃/s未満だと、粒が粗大化して高強度化に不利になることから、800〜500℃の温度範囲の平均冷却速度は1℃/s以上とする必要がある。
Claims (6)
- 質量%で、C:0.07〜0.20%、Si:1.5%以下、Mn:1.0〜2.5%、P:0.05%以下、S:0.01%以下、Al:1.5%以下、N:0.01%以下、Nb:0.02〜0.1%を含有し、C、N、Nbの含有量が下記の(1)式と(2)式を満たすとともに、SiとAlの含有量が下記の(3)式を満たし、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有し、体積率で50%以上のフェライト相と体積率で5〜20%の残留オーステナイト相を含有するミクロ組織を有し、かつ鋼板の1/4板厚における板面の(113)[1-10]〜(223)[1-10]方位における平均のODF解析強度fが4以上であることを特徴とする剛性と加工性に優れた高強度薄鋼板;
Nb-(92.9/14)×N≧0.02・・・・・(1)
C-(12/92.9)×Nb-1≧0.05 ・・・・(2)
Si+Al≧0.5 ・・・・・(3)
ここで、[1-10]は(1,-1,0)の方向を表し、Nb-1=Nb-(92.9/14)×Nであり、式中の各元素記号は各元素の含有量(質量%)を表す。 - さらに、質量%で、Ti:0.01〜0.2%、V:0.01〜0.2%の中から選ばれた少なくとも1種の元素を含有し、上記の(1)式と(2)式の代わりに、C、N、S、Nb、Ti、Vの含有量が下記の(4)式と(5)式を満たすことを特徴とする請求項1に記載の剛性と加工性に優れた高強度薄鋼板;
Nb-(92.9/14)×N-2≧0.02・・・・・(4)
C-(12/92.9)×Nb-2-(12/47.9)×Ti-2-(12/50.9)×V≧0.05・・・・・(5)
ここで、N-2=N-(14/47.9)×Ti (ただし、N-2≦0のときは、N-2=0)、
Nb-2=Nb-(92.9/14)×N-2、
Ti-2=Ti-(47.9/14)×N-(47.9/32.1)×S (ただし、Ti-2≦0のときは、Ti-2=0)であり、
式中の各元素記号は各元素の含有量(質量%)を表す。 - さらに、質量%で、Cr:0.05〜1.0%、Ni:0.05〜1.0%、Mo:0.05〜1.0%、B:0.0005〜0.0030%の中から選ばれた少なくとも1種の元素を含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の剛性に優れた高強度薄鋼板。
- さらに、質量%で、Cu:0.1〜2.0%を含有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の剛性と加工性に優れた高強度薄鋼板。
- さらに、質量%で、W:0.1〜2.0%を含有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の剛性と加工性に優れた高強度薄鋼板。
- 請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の組成からなる鋼を、鋳造し、Ar3変態点以上の仕上圧延終了温度で熱間圧延し、500℃以上の巻取温度で巻取った後、酸洗を行い、40〜85%の範囲の圧下率で冷間圧延を行った後、焼鈍を行うに際し、室温から800℃までを平均1℃/s以上の昇温速度で加熱し、加熱温度を900℃以下として800〜900℃の温度範囲に下記の(6)式を満たすような時間v(s)滞留させた後、800〜500℃の温度範囲を1〜100℃/sの平均冷却速度で冷却し、500〜350℃の温度範囲に30〜300s滞留させることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の剛性と加工性に優れた高強度薄鋼板の製造方法;
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