JP4665692B2 - 曲げ剛性に優れた高強度薄鋼板およびその製造方法 - Google Patents

曲げ剛性に優れた高強度薄鋼板およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、主として自動車のサイドシル、センターピラー、サイドフレーム、クロスメンバーなど、剛性の板厚感受性指数が1に近いコラム状の構造部材に好適な、590MPa以上の引張強度(TS)を有し、曲げ剛性に優れた高強度薄鋼板およびその製造方法に関する。
近年、地球環境問題への関心の高まりを受けて、自動車の排ガス規制が行われるなど、自動車における車体の軽量化は極めて重要な課題となっている。車体の軽量化には、鋼板の高強度化により板厚を減少させること(薄肉化)が有効な方法であるが、最近では、鋼板の高強度化が顕著に進んだ結果、板厚2.0mmを下回るような薄鋼板の使用が増加してきている。
しかし、さらなる高強度化によって軽量化を図るためには、薄肉化による車体剛性の低下を同時に抑制することが不可欠になってきている。剛性には車体構造が最も大きな影響を与えるので、構造上剛性の低下を抑制することが効果的であるが、基本的な構造を変更することは容易ではない。また、スポット溶接がなされる部材に対しては、溶接点の増加や、ウエルドボンドによる接合あるいはレーザ溶接への切り替えなど溶接条件を変更することも有効であるが、コストが増加するという問題を伴う。さらに、剛性が必要な部分に樹脂などを貼り付けるなどの方法もあるがコスト増を招く。さらにまた、部材の断面などの形状を変えることも有効ではあるが、設計上の問題やプレス上の問題などがある。
そこで、部材に使用される鋼板の剛性を高めれば、部材形状や溶接条件を変更することなく、部材の剛性を高めることができることになる。特に、自動車のコラム状の構造部材に対しては、自動車の走行中に曲げ荷重がかかることから、曲げ剛性を高めることが必要であり、それには鋼板のヤング率を高めることが有効である。
ヤング率は、集合組織に大きく支配され、体心立方格子である鋼の場合は、原子の稠密方向である<111>方向に高く、逆に原子密度の小さい<100>方向に小さいことが知られている。結晶方位に異方性のない通常の鉄のヤング率はおよそ210GPa程度であることが知られているが、結晶方位に異方性を持たせ、特定方向の原子密度を高めることで、その方向のヤング率を高めることができる。しかし、自動車車体の曲げ剛性を考える場合には、様々な方向から荷重が加わるため、特定方向のみでなく、各方向に高いヤング率を有する鋼板が求められる。
鋼板のヤング率に関しては、これまで、集合組織を制御することで特定方向のヤング率を高めた鋼板の検討が種々なされてきている。例えば、特許文献1には、NbあるいはTiを添加した極低炭素鋼を用い、熱間圧延時にAr3変態点〜(Ar3変態点+150℃)での圧下率を85%以上とし、未再結晶オーステナイトからのフェライト変態を促進することで、熱間圧延後に{311}<011>および{332}<113>を発達させ、その後の冷間圧延、再結晶焼鈍により{211}<011>を発達させて、圧延方向に対して直角方向のヤング率を高める技術が開示されている。特許文献2には、Nbが添加されたC量が0.05質量%以下の低炭素鋼を、950℃以下の仕上圧延開始温度、(Ar3変態点-50℃)〜(Ar3変態点+100℃)の仕上圧延終了温度で熱間圧延し、オーステナイトの再結晶を抑制することで、ヤング率を低下させる{100}の発達を抑制し、圧延方向に対して直角方向のヤング率を高めた熱延鋼板の製造方法が開示されている。特許文献3には、SiとAlを添加してAr3変態点を高めたC量が0.05質量%以下の低炭素鋼を、Ar3変態点以下での圧下率を60%以上として熱間圧延し、{211}<110>を発達させることで、圧延方向に対して直角方向のヤング率を高めた熱延鋼板の製造方法が開示されている。特許文献4には、固溶(C+N)が10ppm以上の鋼を、200〜500℃の温度域で20%以上の圧下率で圧延し、再結晶焼鈍を行うことで、(110)[001]方位を発達させ、圧延方向に対して45〜67.5°の方向でのヤング率を高める方法が開示されている。特許文献5には、実部材の剛性を議論するにあたっては、応力が負荷された状態での変形量を考慮する必要があり、素材の物理定数であるヤング率では剛性を評価できないとして、加工・焼付後の引張試験による応力-歪み曲線における歪み量が0.06%のときの傾きとヤング率の比を0.8以上とした張り剛性に優れた鋼板が提案されている。
なお、下記の非特許文献1は、後述の[発明を実施するための最良の形態]で述べるODF解析のためのADC法に関する。
特開平5-255804号公報 特開平5-247530号公報 特開平9-53118号公報 特開昭58-9932号公報 特開2001‐348644号公報 Phys. Status Solid (b), 134 (1986) 447
しかしながら、上記の従来技術には、次のような問題がある。すなわち、特許文献1〜4の技術では、鋼板の一方向のみのヤング率を高めることには有効であるが、各方向に高いヤング率を有する鋼板が必要な自動車の構造部材の剛性向上には適用できない。また、上述のように、自動車のコラム状の構造用部材に対しては、良好な曲げ剛性が要求されるが、こうした従来技術では、曲げ剛性に関してなんら考慮されていない。特許文献5の技術も、パネル部品のような張り剛性を対象にしたものであり、ヤング率や応力-歪み曲線から求めた傾きの値自体が低く、自動車の構造部材の剛性向上には適用できない。
その他、特許文献1では、C量が0.01%以下の極低炭素鋼を用いるためTSがせいぜい450MPa程度と低く、TSが590MPa以上の高強度化を図るのが困難である、特許文献3では、フェライト域での圧延を行うため結晶粒が粗大化してしまい、加工性が著しく低下する、特許文献4では、200〜500℃で温間圧延を行う必要があり、また、通常の熱間圧延に比べて圧延荷重が非常に高くなることから、製造コストが増大する、などの問題もある。
本発明は、圧延方向に対して90°方向のTSが590MPa以上、好ましくは780MPa以上で、圧延方向、圧延方向に対して45°方向、および圧延方向に対して90°方向の曲げ剛性に優れた高強度薄鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らが、圧延方向に対して90°方向のTSが590MPa以上である高強度薄鋼板の圧延方向、圧延方向に対して45°方向、および圧延方向に対して90°方向における曲げ剛性について検討したところ、それぞれの方向に平行に切り出した短冊状の試験片に3点曲げ試験を行い、曲げ部外側の応力(σ)-歪(ε)曲線からσが200MPaのときの曲線の傾き(Δσ/Δε)を求めたとき、圧延方向に対して90°方向の(Δσ/Δε)cが230GPa以上であり、かつ上記3方向の平均の(Δσ/Δε)が200GPa以上であれば、鋼板を薄肉化しても自動車の構造部材の剛性を十分に確保できることを見出した。
本発明は、こうした知見に基づいてなされたものであり、
質量%で、C:0.05〜0.15%、Si:0.3%以下、Mn:1.5〜2.5%、P:0.05%以下、S:0.01%以下、Al:1.0%以下、N:0.01%以下、Nb:0.02〜0.1%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有し、かつC、N、Nbの含有量が下記の(1)、(2)式を満たすか、
あるいは、質量%で、C:0.05〜0.15%、Si:0.3%以下、Mn:1.5〜2.5%、P:0.05%以下、S:0.01%以下、Al:1.0%以下、N:0.01%以下、Nb:0.02〜0.1%を含有し、さらにTi:0.01〜0.2%およびV:0.01〜0.2%から選ばれた少なくとも1種の元素を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなる組成を有し、かつC、N、S、Nb、Ti、Vの含有量が下記の(3)、(4)式を満たし、
面積率で60〜90%のフェライト相と10〜40%のマルテンサイト相を有し、前記フェライト相と前記マルテンサイト相の面積率の合計が95%以上であり、かつフェライト粒の平均粒径(dα)が1.0〜6.0μm、マルテンサイト粒の平均粒径(dM)が0.5〜3.0μmであり、dα/dM≧1.5を満たすミクロ組織を有し、圧延方向に対して90°方向の引張強度TSが590MPa以上であり、かつ圧延方向、圧延方向に対して45°方向、および圧延方向に対して90°方向について3点曲げ試験を行って得た曲げ部外側の応力(σ)-歪(ε)曲線から、σが200MPaのときの曲線の傾き(Δσ/Δε)を求めたとき、圧延方向に対して90°方向の(Δσ/Δε)cが230GPa以上であり、前記3方向の平均の(Δσ/Δε)が200GPa以上であることを特徴とする曲げ剛性に優れた高強度薄鋼板を提供する。
Nb-(92.9/14)×N≧0.02・・・・・(1)
C-(12/92.9)×Nb -1 ≧0.01・・・・ (2)
Nb-(92.9/14)×N -2 ≧0.02・・・・・・・・・・・・・・・・ (3)
C-(12/92.9)×Nb -2 -(12/47.9)×Ti -2 -(12/50.9)×V≧0.01・・・ (4)
ここで、Nb -1 =Nb-(92.9/14)×N、N -2 =N-(14/47.9)×Ti(ただし、N -2 ≦0のときは、N -2 =0)、Nb -2 =Nb-(92.9/14)×N -2 、Ti -2 =Ti-(47.9/14)×N-(47.9/32.1)×S(ただし、Ti -2 ≦0のときは、Ti=0)であり、式中の各元素記号は各元素の含有量(質量%)を表し、また、平均の(Δσ/Δε)とは、圧延方向、圧延方向に対して45°方向、および圧延方向に対して90°方向について求めた(Δσ/Δε)を、それぞれ(Δσ/Δε)l、(Δσ/Δε)d、(Δσ/Δε)cとしたとき、{(Δσ/Δε)l+2×(Δσ/Δε)d+(Δσ/Δε)c}/4で計算した値である。
本発明の高強度薄鋼板では、個々のフェライト粒径に関し、その自然対数を採った値の標準偏差をσAとしたとき、σA<0.7を満たすことが好ましい。
また、鋼板の1/4板厚における板面の(113)[1-10]〜(223)[1-10]方位における平均のODF解析強度が6以上であることが好ましい。ここで、[1-10]は(1,-1,0)の方向を表す。
本発明の高強度薄鋼板は、さらに、質量%で、Cr:0.05〜1.0%、Ni:0.05〜1.0%、Mo:0.05〜1.0%、B:0.0005〜0.0030%、Cu:0.1〜2.0%、W:0.1〜2.0%から選ばれた少なくとも1種の元素を含有することができる。
本発明の高強度薄鋼板は、上記のような成分組成からなる鋼を、鋳造し、そのまま、あるいは一旦冷却し再加熱した後、粗圧延し、Ar3変態点以上の仕上圧延終了温度で仕上圧延し、500℃以上の巻取温度で巻取った後、酸洗を行い、45〜85%の範囲の圧下率Rで冷間圧延を行った後、焼鈍を行うに際し、室温から下記の(5)式に定義する温度Ta℃までを平均1℃/s以上の昇温速度で加熱し、Ta〜(Ta+10+R0.9)℃の温度範囲に下記の(6)式を満たすような時間v(s)滞留させた後、Ta〜600℃の温度範囲を3〜30℃/sの平均冷却速度で冷却することを特徴とする曲げ剛性に優れた高強度薄鋼板の製造方法により製造できる。
Ta=930-200×C0.5+40×Si-30×Mn+40×Al-10×Cr+30×Mo-15×Ni-20×Cu+10×W
・ ・・(5)
ここで、式中の各元素記号は各元素の含有量(質量%)を表す。
Figure 0004665692
ここで、F(w)は、鋼板が温度TaになってからTa〜(Ta+10+R0.9)℃の温度範囲内に滞留する時間v(s)内の任意の時間w(s)のときの温度(℃)を表す。
本発明の製造方法では、鋼を鋳造し、一旦冷却したのち再加熱を行う際の加熱温度Th℃を、((-7020/(log(Nb・C0.87)-2.81))-273)〜1300℃[ただし、Nb、Cは、各元素の含有量(質量%)を表す。]の温度範囲とし、かつ加熱温度Th℃と加熱時間t(s)が下記の(7)式を満たすように再加熱を行うことが好ましい。
10-6≦((5.6×10-4×exp((-3.44×10)/(Th+273)))×t)0.5≦3×10-5・・・・・(7)
また、粗圧延を行うに際し、(Ar3変態点+100)℃以下における合計圧下率を20%以上とし、前記粗圧延後、Ar3変態点以上の仕上圧延終了温度を確保できるように(Ar3変態点+150)℃以下に再加熱して仕上圧延を行うことが好ましい。
さらに、仕上圧延を行うに際し、(Ar3変態点+100)℃以下における合計圧下率を50%以上とし、かつ仕上圧延終了温度をAr3変態点〜(Ar3変態点+50)℃の温度範囲とすることが好ましい。
さらにまた、仕上圧延を行うに際し、潤滑圧延を行ったり、仕上圧延後、3s以内に50℃/s以上の平均冷却速度で700℃以下まで冷却することが好ましい。
なお、焼鈍後に0.3〜10%の伸び率で調質圧延を行うことも可能である。
本発明により、曲げ剛性、すなわち3点曲げ試験による(Δσ/Δε)を高めることができるメカニズムは、本発明を規定するものではないが、次のように考えられる。すなわち、熱間圧延において、仕上圧延をAr3変態点以上で終了し、500℃以上で巻取ることで、熱延鋼板のフェライト相を増加させた上で、冷間圧延での圧下率の適正化を行うことにより(113)[1-10]〜(223)[1-10]の集合組織を発達させ、さらに、その後の焼鈍時の昇温過程における再結晶をNbで抑制することで、未再結晶フェライトからのオーステナイト変態を促進するとともに、オーステナイト相中の変態に起因する歪みの回復を抑制することで、その後の冷却で(113)[1-10]〜(223)[1-10]の集合組織をもつフェライトへの再変態を促進し、さらにその際、変態前のオーステナイト相の粒成長も抑制することで(113)[1-10]〜(223)[1-10]の集合組織をもつフェライト変態における核発生頻度を大きくし、また、鋼組成の最適化によりこの(113)[1-10]〜(223)[1-10]の集合組織をもつフェライトの粒成長も促進することで、フェライト粒径の分散を小さくし、かつ微細なオーステナイト中にCを濃化させ、その後の冷却で生成するマルテンサイトを微細に生成させることで、高強度化と全方向の曲げ剛性と、特に圧延方向に対して90°方向の曲げ剛性を向上させることができる。このように、特定方向の曲げ剛性を向上させつつ、全方向の曲げ剛性を向上させることで、自動車部品としての剛性を大きく向上させることができる。
本発明により、自動車のサイドシル、センターピラー、サイドフレーム、クロスメンバーなど、剛性の板厚感受性指数が1に近いコラム状の構造部材に好適な、圧延方向に対して90°方向のTSが590MPa以上で、かつ各方向の曲げ剛性に優れた高強度薄鋼板を製造できるようになった。
以下に、本発明である高強度薄鋼板およびその製造方法について詳細に説明する。
1)ミクロ組織
フェライト相は、その集合組織を制御することで曲げ剛性を高めることができるため、面積率で60%以上とする必要がある。一方、面積率で90%を越えると590MPa以上のTSを確保することが困難になることから、フェライト相は面積率60〜90%とする。マルテンサイト相は、高強度化に有効であるが、590MPa以上のTSを確保するには、面積率で10%以上とする必要がある。一方、集合組織の制御が困難なマルテンサイト相が40%を越えると曲げ剛性が低下することから、マルテンサイト相は面積率で10〜40%以下とする。なお、フェライト相とマルテンサイト相以外のその他の相は極力少ないことが望ましいが、面積率で5%程度までは許容でき、本願発明の効果を阻害することはない。したがって、フェライト相とマルテンサイト相の面積率の合計は95%以上とする。
フェライト粒の平均粒径dαが1.0μm未満、あるいはマルテンサイト粒の平均粒径dMが0.5μm未満では、単位体積あたりの粒界面積が大きくなることから、荷重負荷時の曲げ剛性が低下する。一方、フェライト粒のdαが6.0μm超え、あるいはマルテンサイト粒のdMが3.0μm超えると、荷重負荷時の応力分配が不均一となることから、平均の曲げ剛性が低下してしまう。また、dα/dM<1.5となり、マルテンサイト粒径に対しフェライト粒径が細かくなり過ぎる、すなわちフェライト粒径に対してマルテンサイト粒径がある程度大きくなり過ぎると、荷重負荷時のマルテンサイト粒への応力分配が大きくなることから、曲げ剛性が低下してしまう。したがって、フェライト粒のdαは1.0〜6.0μm、マルテンサイト粒のdMは0.5〜3.0μm、かつdα/dM≧1.5とする必要がある。
なお、フェライト粒径分布が大きい場合、荷重負荷時の応力分配が大きくなることから、平均の曲げ剛性が低下し易くなる。そのため、個々のフェライト粒径に関し、その自然対数を採った値の標準偏差をσAとしたとき、σA<0.7となるようにすることが好ましい。
ここで、上記のフェライト相、マルテンサイト相、その他の相の面積率、フェライト粒とマルテンサイト粒の平均粒径、フェライト粒径分布は、鋼板断面をナイタール腐食した後、SEM観察を行い、30×30μm域の写真を3枚とって画像処理して測定した。
2)3点曲げ試験から求めた(Δσ/Δε)
上述したように、圧延方向、圧延方向に対して45°方向、および圧延方向に対して90°方向について3点曲げ試験を行って得た曲げ部外側の応力(σ)-歪(ε)曲線から、σが200MPaのときの曲線の傾き(Δσ/Δε)を求めたとき、圧延方向に対して90°方向の(Δσ/Δε)90が230GPa以上であり、かつ上記3方向の平均の(Δσ/Δε)が200GPa以上であれば、鋼板を薄肉化しても自動車の構造部材の剛性を大きく向上できる。ここで、(Δσ/Δε)を求めるにあたり、σが200MPaでの(Δσ/Δε)を求めたのは、自動車の走行において部材にかかる応力は、多くの場合、200MPaを超えないと考えられるためである。また、圧延方向に対して90°方向の(Δσ/Δε)cを230GPa以上とし、3方向の平均の(Δσ/Δε)を200GPa以上とすることにより、優れた曲げ剛性が得られるのは実際の自動車に応力が作用した場合の変形量が小さくなるためである。
ここで、圧延方向、圧延方向に対して45°方向、および圧延方向に対して90°方向の(Δσ/Δε)は、各方向と平行に切り出した短冊状の試験片に3点曲げ試験を次の条件で行って求めた。板厚t(mm)の試験片は端面研削加工により幅Wを10mmに仕上げ、曲げ試験における支点間距離Lを100mmとし、直径10mmφのポンチにより、押し込み速度1mm/分で3点曲げ試験を行った。そして、押し込み荷重Pと押し込み量Xを測定し、曲げ外径部での応力σと歪みεを次式より計算して応力-歪み曲線を作成し、σが200MPaのときの応力-歪み曲線の傾きを(Δσ/Δε)とした。
σ=(3LP)/(2Wt2)
ε=(6tX)/L2
平均の(Δσ/Δε)=(Δσ/Δε)avは、圧延方向(l方向)、圧延方向に対して45°方向(d方向)、および圧延方向に対して90°方向(c方向)で測定された(Δσ/Δε)l、(Δσ/Δε)d、および(Δσ/Δε)cを用い、次の式で求めた。
(Δσ/Δε)av=((Δσ/Δε)l+2×(Δσ/Δε)d+(Δσ/Δε)c)/4
3)集合組織
(113)[1-10]〜(223)[1-10]方位の集合組織を発達させることで、特に圧延方向に対して90°方向の曲げ剛性を向上させることができることから、鋼板の1/4板厚における板面の(113)[1-10]〜(223)[1-10]方位における平均のODF(Orientation Distribution Function)解析強度fを6以上とすることが好ましい。
ここで、(113)[1-10]〜(223)[1-10]方位における平均のODF解析強度fは、加工歪みの影響を除去するため化学研磨により1/4板厚まで減厚したのち、シュルツ法により(110)、(200)、(211)極点図を求め、非特許文献1に記載されたADC法によりODF解析を行い、φ1=0°、φ2=45°において、Φが25°、30°、35°、45°のときの解析強度の平均値である。
4)成分(以下の「%」は、「質量%」を表す。)
C:Cは、オーステナイト安定化元素なので、冷間圧延後の焼鈍時の冷却過程において焼入れ性を高め、低温変態相の生成を促進して高強度化に大きく寄与する。また、Ar3変態点を低下させるので、Ar3変態点直上で圧延を行うに際して、より低温域での熱間圧延を可能にし、未再結晶オーステナイトからのフェライト変態を促進して{113}<110>方位を発達させることができ、冷間圧延、焼鈍後の曲げ剛性を向上させることができる。このような効果を得るためには、C量を0.05%以上とし、さらに、Nb炭化物として固定されない量として上記(2)式で計算される固溶Cを0.01%以上とする必要がある。一方、C量が0.15%を超えると、硬質な低温変態相が増加して鋼板が極端に高強度化し、その加工性が劣化するとともに、冷間圧延および焼鈍時に曲げ剛性向上に有利な集合組織の発達を抑制したり、溶接性の劣化を招く。したがって、C量は0.05〜0.15%、好ましくは0.05〜0.11%とする。
Si:Siは、Ar3変態点を上昇させので、Ar3変態点直上で圧延を行うに際して、熱間圧延中における加工オーステナイトの再結晶を促進するため、0.3%を超えて多量に含有されると曲げ剛性を向上させるために必要な結晶方位を発達させることができなくなり、また、鋼板の溶接性を劣化させたり、熱延加熱時にスラブ表面でファイヤライトの生成を促進し、いわゆる赤スケールと呼ばれる熱延鋼板の表面欠陥の発生を助長させる。さらに、冷延鋼板として使用される場合には、表面に生成するSi酸化物が化成処理性を劣化させ、溶融亜鉛めっき鋼板として使用される場合には、表面に生成するSi酸化物が不めっきを誘発する。したがって、Si量は0.3%以下とする。なお、Siはフェライト安定化元素であり、焼鈍時の冷却過程においてフェライト変態を促進して曲げ剛性を向上させるとともに、オーステナイト中にCを濃化させてオーステナイトを安定化させ、低温変態相の生成を促進する効果を有する。このような効果を得るためには、Si量を0.1%以上とすることが望ましい。
Mn:Mnは、本発明において重要な元素の1つであり、熱間圧延時に加工オーステナイトの再結晶を抑制するとともに、オーステナイトを安定化させる元素である。また、Ar3変態点を低下させるので、Ar3変態点直上で圧延を行うに際して、より低温域での熱間圧延を可能にし、加工オーステナイトの再結晶をさらに抑制し、未再結晶オーステナイトからのフェライト変態を促進して{113}<110>方位を発達させて、冷間圧延、焼鈍後の曲げ剛性を向上させることができる。さらに、Mnは、オーステナイト安定化元素でもあるので、焼鈍時の昇温過程においてAc1変態点を低下させ、未再結晶フェライトからのオーステナイト変態を促進することができる。さらにまた、オーステナイトの粒成長とともに、変態にともなって発生した歪みの回復を抑制することもできる。Mnは、焼鈍時の冷却過程において焼入れ性を高め、低温変態相の生成を大きく促進するので、高強度化に大きく寄与する。このような効果を得るためには、Mn量を1.5%以上とする必要がある。一方、Mn量が2.5%を超えると、焼鈍時の冷却過程においてフェライト変態を抑制し、曲げ剛性の向上に有利な集合組織の発達を妨げる。また、熱間圧延や冷間圧延時の圧延荷重を増加させたり、鋼板の溶接性を劣化させる。したがって、Mn量は1.5〜2.5%、好ましくは1.5〜2.2%とする。
P:Pは、0.05%を超えて含有されると粒界に偏析して鋼板の延性や靭性を低下させるとともに、溶接性を劣化させる。また、本発明の鋼板に合金化溶融亜鉛めっきを施す場合には、Pは合金化速度を遅滞させる。したがって、P量は0.05%以下とする。なお、Pは固溶強化元素であり、フェライトを安定化してオーステナイト中へのC濃化を促進する作用や、Siを添加した鋼において赤スケールの発生を抑制する作用も有する。そのため、P量は0.01%以上とすることが好ましい。
S:Sは、0.01%を超えて多量に含有されると熱間での延性を著しく低下させて熱間割れを誘起し、鋼板の表面性状を著しく劣化させる。また、強度にほとんど寄与しないばかりか、粗大なMnSとして析出し、穴広げ性などの延性を低下させる。したがって、S量は0.01%以下とする。なお、S量は少ないほど好ましいが、穴広げ性をより向上させる観点からは0.005%以下とすることがより好ましい。
Al:Alは、フェライト安定化元素であり、鋼のAr3変態点を大きく上昇させるため、Ar3変態点直上で圧延を行うに際して、加工オーステナイトの再結晶を促進して、曲げ剛性向上に有利な結晶方位の発達を抑制する。また、1.0%を超えて含有されるとオーステナイト単相域が消失し、熱間圧延時にオーステナイト域で圧延を終了させることが困難となる。したがって、Al量は1.0%以下とする。なお、Alは、焼鈍時の冷却過程においてフェライト生成を促進し、オーステナイト中にCを濃化させてオーステナイトを安定化させ、低温変態相の生成を促進し、高強度化に寄与するので、Al量は0.2%以上とすることが望ましい。
N:Nは、0.01%を超えて多量に含有されると熱間圧延中にスラブ割れを誘起し、鋼板の表面性状を劣化させる恐れがある。さらに、高温でNbやTiと粗大な窒化物を形成し、NbやTiの添加効果を減少させて製造コストの増大を招く。したがって、N量は0.01%以下、好ましくは0.005%以下とする。
Nb:Nbは、本発明における最も重要な元素である。すなわち、Nbは熱間圧延時に加工オーステナイトの再結晶を抑制し、未再結晶オーステナイトからのフェライト変態を促進し、微細な{113}<110>方位のフェライトを発達させることにより、冷間圧延、焼鈍後の曲げ剛性を向上させる。さらに、冷間圧延後の焼鈍時における昇温過程において、加工フェライトの再結晶を抑制し、未再結晶フェライトからのオーステナイト変態を促進するとともに、オーステナイト粒を微細化し、さらにオーステナイトの粒成長や変態歪みの回復を抑制して、曲げ剛性を向上させる。このような作用を有するために、Nb量は0.02%以上とするとともに、上記(1)式の左辺で計算される窒化物として固定されないNb量を0.02%以上とする必要がある。一方、0.1%を超えるNbを添加しても、熱間圧延時のオーステナイトや冷間圧延後の焼鈍時におけるフェライトの再結晶抑制効果は飽和するとともに、熱間圧延、冷間圧延における圧延荷重の増大も招く。しがたって、Nb量は0.02〜0.1%とする。
上記(1)式について:Nbは高温でNと結合して粗大な窒化物を形成するが、このようなNbは剛性向上に寄与しないことから、Nと結合しないNb量であるNb-(92.9/14)×Nを0.02%以上とする必要がある。
上記(2)について:CはNbと結合して炭化物を形成するが、このようなCはマルテンサイトの生成には寄与せず、高強度が得られないことから、Nb-1=Nb-(92.9/14)×NとしたときのC-(12/92.9)×Nb-1を0.01%以上とする必要がある。なお、ここで、Nb-1はNと結合しないNb量を表し、(12/92.9)×Nb-1はCと結合するNb量を表す。
残部は、Feおよび不可避的不純物とすることが好ましいが、他の微量元素を含有しても、本願発明の効果を損なうものではない。他の微量元素としては、例えばCa、REM等が挙げられ、これらの元素は、硫化物系介在物の形態を制御することで鋼板の伸びフランジ性向上に寄与する。したがって、特に限定はしないが、この効果を得るためには、Ca、REMのうち1種以上を含み、これらの含有量の合計を0.001%以上とすることが好ましい。また、Ca、REMの含有量の合計が0.01%を超えると効果が飽和することから、これらの含有量の合計は0.01%以下とするのが好ましく、より好ましくは、0.005%以下である。また、不純物元素としては、例えばSb、Sn、Zn、Co等が挙げられ、これらの含有量の許容範囲としては、Sb:0.01%以下、Sn:0.1%以下、Zn:0.01%以下、Co:0.1%以下である。
上記成分元素に加え、下記の元素のうちから選ばれた少なくとも1つの元素を含有させることが好ましい。
Ti:Tiは、微細な炭窒化物として析出し、強度上昇に寄与する。また、熱間圧延時に加工オーステナイトの再結晶を抑制し、未再結晶オーステナイトからのフェライト変態を促進して曲げ剛性の向上に寄与する。さらに、焼鈍時の昇温過程において加工フェライトの再結晶を抑制することで、未再結晶フェライトからのオーステナイト変態を促進するとともに、オーステナイト粒を微細化し、オーステナイトの粒成長や変態歪みの回復を抑制することで、曲げ剛性を向上させる。さらにまた、Nを窒化物として固定することで、Nbが窒化物として固定されるのを抑制することができる。このような作用を有するためには、Ti量を0.01%以上とする必要がある。一方、Ti量が0.2%を超えると、熱間圧延時のオーステナイトや冷間圧延後の焼鈍時のフェライトの再結晶抑制効果が飽和し、合金コストの増加を招く。したがって、Ti量は0.01〜0.2%とすることが好ましい。
V:Vは、微細な炭窒化物として析出し、強度上昇に寄与する。そのためには、V量を0.01%以上とする必要がある。一方、V量が0.2%を超えても強度上昇効果は小さく、合金コストの増加を招く。したがって、V量は0.01〜0.2%とすることが好ましい。
TiやVを添加する場合は、C、N、S、Nb、Ti、Vの含有量が上記(3)式と上記(4)式を満足するようにする必要がある。
上記(3)式について:TiはNbに優先して窒化物を生成することから、N-2=N-(14/47.9)×Ti(ただし、N-2≦0のときは、N-2=0)としたときの(Nb-(92.9/14)×N-2)を0.02%以上とする必要がある。
上記(4)式について:Ti、Vは炭窒化物を形成することで、炭窒化物として固定されないC量を減少させる。さらに、Tiは硫化物を形成により固定されるので、炭窒化物として固定されないC量を0.01%以上とするため、(C-(12/92.9)×Nb-2-(12/47.9)×Ti-2-(12/50.9)×V)を0.01%以上とする必要がある。ただし、Nb-2=Nb-(92.9/14)×N-2、Ti-2=Ti-(47.9/14)×N-(47.9/32.1)×S(ただし、Ti-2≦0のときは、Ti-2=0)
Cr:Crは、セメンタイトの生成を抑制して焼入れ性を高める元素であり、焼鈍時の冷却過程において低温変態相の生成を促進して高強度化に大きく寄与する。また、熱間圧延時に加工オーステナイトの再結晶を抑制し、未再結晶オーステナイトからのフェライト変態を促進して{113}<110>方位を発達させ、焼鈍後の曲げ剛性を向上させる。このような効果を得るには、Cr量を0.05%以上とする必要がある。一方、Cr量が1.0%を超えると、その効果が飽和するだけでなく、合金コストの増加を招く。したがって、Cr量は0.05〜1.0%とすることがこのましい。なお、本発明の鋼板に溶融亜鉛めっきを施す場合には、表面に生成するCrの酸化物が不めっきを誘発するので、Cr量は0.5%以下とすることがより好ましい。
Ni:Niは、オーステナイトを安定化することで焼入れ性を高める元素であり、焼鈍時の冷却過程において低温変態相の生成を促進して高強度化に大きく寄与する。また、焼鈍時の昇温過程においてAc1変態点を低下させ、未再結晶フェライトからのオーステナイト変態を促進し、冷却過程において曲げ剛性に有利な低温変態相の方位を発達させる。さらに、熱間圧延時に加工オーステナイトの再結晶を抑制するとともに、Ar3変態点を低下させ、Ar3変態点直上で圧延をおこなうに際し、より低温域での熱間圧延を可能にすることで、未再結晶オーステナイトからのフェライト変態を促進して{113}<110>方位を発達させ、焼鈍後の曲げ剛性を向上させる。さらにまた、Cu添加の場合に起こり易い熱間圧延時の割れを防止する。このような作用を得るためには、Ni量を0.05%以上とする必要がある。一方、Ni量が1.0%を超えると、焼鈍時の冷却過程でフェライト変態を抑制し、曲げ剛性の向上に有利な集合組織を発達させることができなくなったり、合金コストの増加を招く。したがって、Ni量は0.05〜1.0%とすることが好ましい。
Mo:Moは、界面の移動度を小さくすることにより焼入れ性を高める元素であり、焼鈍時の冷却過程において低温変態相の生成を促進して高強度化に大きく寄与する。また、熱間圧延時に加工オーステナイトの再結晶を抑制し、未再結晶オーステナイトからのフェライト変態を促進して{113}<110>方位を発達させ、焼鈍後の曲げ剛性を向上させる。このような作用を得るためには、Mo量を0.05%以上とする必要がある。一方、Mo量が1.0%を超えると、その効果が飽和するだけでなく、合金コスト増を招く。したがって、Mo量は0.05〜1.0%とすることが好ましい。
B:Bは、オーステナイトからフェライトへの変態を抑制し、焼入れ性を高める元素であり、焼鈍時の冷却過程において低温変態相の生成を促進して高強度化に大きく寄与する。また、熱間圧延時に加工オーステナイトの再結晶を抑制し、未再結晶オーステナイトからのフェライト変態を促進して{113}<110>方位を発達させ、焼鈍後の曲げ剛性を向上させる。こうした効果を得るためには、B量を0.0005%以上とする必要がある。一方、B量が0.0030%を超えると、焼鈍時の冷却過程でフェライトの変態を抑制して曲げ剛性の向上に寄与しなくなる。したがって、B量は0.0005〜0.0030%とすることが好ましい。
Cu:Cuは、焼入れ性を高める元素であり、焼鈍時の冷却過程において低温変態相の生成を促進して高強度化に大きく寄与する。この効果を得るためには、Cu量を0.1%以上とする必要がある。一方、Cu量が2.0%を超えると熱間での延性を低下させて、熱間圧延時の割れにともなう表面欠陥を誘発するとともに、焼入れ性の効果も飽和する。したがって、Cu量は0.1〜2.0%とすることが好ましい。なお、Cuを添加する場合、前述のように熱間圧延時の割れを防止するため、Niも添加することが好ましい。
W:Wは、固溶元素や炭化物として存在することで、曲げ剛性を向上させる。この効果を得るためには、W量を0.1%以上とする必要がある。一方、W量が2.0%を超えると合金コストが増加することから、W量は0.1〜2.0%とすることが好ましい。
なお、本発明の高強度薄鋼板には、熱延鋼板、冷延鋼板の他に、電気めっき法あるいは合金化を含む溶融めっき法などにより、純亜鉛、亜鉛系合金、純Al、Al系合金などのめっき層を表面に設けた薄鋼板も含まれる。
5)製造方法
本発明の高強度薄鋼板は、例えば、上記のような成分組成からなる鋼を、スラブ鋳造し、そのまま、あるいは一旦冷却し再加熱した後、粗圧延と仕上圧延からなる熱間圧延を行い熱延鋼板とし、巻取った後、酸洗し、冷間圧延を行って冷延鋼板とし、焼鈍を行って製造されるが、以下にその詳細を説明する。
5-1)熱間圧延前の再加熱
鋳造後のスラブは、そのまま、あるいは一旦冷却したのち再加熱を行って熱間圧延されるが、再加熱を行う場合は、加熱温度Th℃を、((-7020/(log(Nb・C0.87)-2.81))-273)〜1300℃の温度範囲とし、かつThと加熱時間t(s)が上記の(7)式を満たすように再加熱を行うことが好ましい。なお、該式中、Nb、Cは各々の元素の含有量(質量%)である。一旦冷却したのち再加熱を行うと、オーステナイト→フェライト→オーステナイト変態が起こるので、オーステナイト粒を細粒化でき、曲げ剛性をより向上させることができるが、そのときThとtを上記の(7)式のように制御する必要がある。特に、Thとtを確保することで、炭化物として析出しているNbを再固溶させ、Nbの効果を大きくするには、((5.6×10-4×exp((-3.44×10)/(Th+273)))×t)0.5を10-6以上とすることが好ましい。一方、Thとtが大きくなると、オーステナイトが粗大化し、曲げ剛性が低下することから、((5.6×10-4×exp((-3.44×10)/(Th+273)))×t)0.5を3×10-5以下とすることが好ましい。
なお、ここで、上記(7)式はオーステナイト中のNbの拡散距離を表す指標であり、また((-7020/(log(Nb・C0.87)-2.81))-273)はNbの溶解限温度を表す。
5-2)熱間圧延
熱間圧延時の粗圧延を低温で行うと、オーステナイト域で圧延するときは、加工歪みによりオーステナイト粒を細粒化でき、また、フェライト域やフェライト+オーステナイト域で圧延するときは、その後の再加熱時の再変態でオーステナイト粒を細粒化できるので、曲げ剛性をより向上させることができる。したがって、特に限定しないが、(Ar3変態点+100)℃以下における合計圧下率を20%以上として粗圧延を行うことが好ましく、この場合は、その後、Ar3変態点以上の仕上圧延終了温度を確保できるように、粗圧延した鋼を再加熱することが好ましい。なお、再加熱するにあたり、オーステナイト粒が粗大化しないように(Ar3変態点+150)℃以下に再加熱して仕上圧延を行うことが好ましい。
熱間圧延時の仕上圧延の圧延終了温度がAr3変態点を下回ると、フェライト粒が粗大化したり、巻取温度が低い場合には未再結晶の組織となって、曲げ剛性を向上させる集合組織を発達させることができない。したがって、仕上圧延終了温度はAr3変態点以上とする必要がある。なお、仕上圧延の圧延終了温度は仕上圧延終了直後の温度である。また、仕上圧延を行うに際し、Ar3変態点直上での圧延を行うと{112}<111>の結晶方位からなる未再結晶のオーステナイト組織を発達させ、その後の冷却過程において{112}<111>未再結晶オーステナイトからフェライト変態させることで{113}<110>のフェライト方位を発達させることができ、冷間圧延、焼鈍後に(113)[1-10]〜(223)[1-10]方位を高めることができ、曲げ剛性をより向上させることができる。それには、(Ar3変態点+100)℃以下における合計圧下率を50%以上で仕上圧延を行い、かつ仕上圧延終了温度をAr3変態点〜(Ar3変態点+50)℃の温度範囲とすることが好ましい。
また、仕上圧延を行うに際し、潤滑圧延を行うと剪断歪みを抑制することができる。特に、未再結晶オーステナイト域で圧延する場合には、{112}<111>方位からなる未再結晶のオーステナイト組織を発達させることができ、曲げ剛性の向上に効果的である。したがって、仕上圧延を行うとき、潤滑を施すことが好ましい。ここで、潤滑は熱間圧延機の全スタンドで行うことが好ましい。なお、潤滑圧延では、例えば、油系潤滑剤等を用いてロールと鋼板との摩擦係数を0.2以下とすることが好ましい。
5-3)熱間圧延後の冷却
仕上圧延後の冷却速度を高めると、フェライト粒を細粒化し、冷間圧延、焼鈍後に(113)[1-10]〜(223)[1-10]方位を高めることができたり、また未再結晶オーステナイト域で圧延を終了する場合には、オーステナイトの再結晶を抑制し、未再結晶オーステナイトからのフェライト変態を進行させることができ、曲げ剛性をより向上させることができる。そのためには、仕上圧延後、3s以内に50℃/s以上の平均冷却速度で700℃以下まで冷却することがより好ましい。仕上圧延終了後冷却開始までの時間を3s以下とすることは、オーステナイトの再結晶を抑制する上で効果的であり、また、平均冷却速度を50℃/s以上とすることは、フェライト粒の粗大化を抑制する上で効果的であり、さらに、700℃以下まで冷却することは、加工オーステナイトの再結晶の進行やフェライト粒の粗大化を防止する上で効果的である。
5-4)巻取温度
熱間圧延後の鋼板を巻取るにあたり、巻取温度が500℃を下回ると低温変態相が生成して、その後の冷間圧延において、曲げ剛性を向上させる集合組織を発達させることができない。したがって、巻取温度は500℃以上とする必要がある。一方、巻取温度が高いと、冷間圧延前のフェライト粒が粗大化し、曲げ剛性を向上させる集合組織の発達を抑制することから、巻取温度は650℃以下とすることが好ましい。
巻取り後の熱延鋼板は、スケールを除去するため冷間圧延前に酸洗を行う必要がある。なお、酸洗条件は通常の条件で行えばよい。
5-5)冷間圧延時の圧下率
酸洗後の熱延鋼板を冷間圧延する際に、その圧下率を最適化することで、曲げ剛性の向上に有効な(113)[1-10]〜(223)[1-10]方位に回転させることができる。このような方位を発達させるには圧下率を45〜85%とする必要がある。圧下率が45%未満あるいは85%を超えると(113)[1-10]〜(223)[1-10]方位への回転が不十分となり、曲げ剛性を向上させることが困難となる。
5-6)焼鈍
焼鈍時の昇温速度が極端に遅いと、昇温途中でフェライトの再結晶が進行することから、焼鈍時の昇温速度は、室温から後述するTaまで平均で1℃/s以上とする必要がある。なお、昇温速度は、特に上限を設けるものではないが、大きな昇温速度を得るには急速加熱設備等が必要となり製造コストが上昇するため、平均で30℃/s未満とすることが好ましい。
焼鈍時の加熱温度は、未再結晶フェライトからのオーステナイト変態を進行させる必要があることから、Ac3変態点に影響を及ぼすC、Si、Mn、Al、Cr、Mo、Ni、Cu、Wの含有量から求まる上記(5)式のTa=930-200×C0.5+40×Si-30×Mn+40×Al-10×Cr+30×Mo-15×Ni-20×Cu+10×W(℃)以上の温度とする必要がある。なお、Taは、昇温時のオーステナイト変態の完了の目安となる温度であり、発明者らの求めた回帰式である。一方、加熱温度が高い場合には、オーステナイトが粗大化し、曲げ剛性を高めることができなくなり、また、この傾向は圧下率が低いほど顕著であることから、加熱温度は(Ta+10+R0.9)℃以下とする必要がある。
焼鈍時の加熱温度が高いところで、長時間滞留させるとオーステナイトが粗大化し、曲げ剛性を高めることができなることから、焼鈍加熱時に鋼板をTa〜(Ta+10+R0.9)℃の温度範囲に上記(6)式を満たすような時間v(s)滞留させる必要がある。なお、Ta〜(Ta+10+R0.9)℃の温度範囲では、上記滞留時間v(s)を満足しさえすればよく、この温度範囲における熱履歴は、特に規定する必要はなく、製造設備に合わせ設定すればよい。ここで、上記(6)式は、オーステナイトが粗大化し過ぎず曲げ剛性を確保することができるための滞留時間を求めた実験式である。
焼鈍時に加熱後の冷却は、(113)[1-10]〜(223)[1-10]方位をもつフェライトを生成、成長させる必要があることから、Ta〜600℃の温度範囲を30℃/s以下の平均冷却速度で冷却する必要がある。一方、平均冷却速度が3℃/sを下回る場合には、フェライト粒が大きくなるとともに、粒径分布の分散も大きくなり、優れた曲げ剛性が得られない。したがって、加熱後は、Ta〜600℃の温度範囲を3〜30℃/sの平均冷却速度で冷却する必要がある。なお、600℃未満の冷却は、特に規定する必要はなく、製造設備に合わせ設定すればよい。
焼鈍後は、形状を矯正するとともに、加工により結晶が回転することでさらに剛性を向上させることができるので、0.3%以上の伸び率で調質圧延を行うことが望ましい。一方、伸び率が10%を越えると加工性が低下するため、伸び率は0.3〜10%であることが好ましい。
発明の実施に当たっては、目的とする強度レベルに応じた化学成分の鋼を、通常の転炉法、電炉法などで溶製する。また、焼鈍時には、冷却途中で過時効処理を行ってもよいし、一旦冷却した後、再加熱して過時効処理を行ってもよい。溶融亜鉛めっき鋼板を製造する場合には、溶融亜鉛中に浸漬させることでめっきすることもできるし、浸漬後、めっき層の合金化処理のため500℃以上の加熱を行うこともできる。
表1〜2に示す成分組成とAr3変態点を有する鋼A〜AJを溶製し、スラブに鋳造した。ここで、表中のAr3変態点は、発明者らが求めた実験式である900-200×C0.5+40×Si-30×Mn+40×Al-10×Cr+30×Mo-15×Ni-20×Cu+10×Wより求めた(ただし、各元素記号は各元素の含有量を表す。)。このスラブは、その後、表3〜5に示す熱間圧延条件で、直接、あるいは一旦室温まで冷却した後再加熱し、粗圧延し、そのまま仕上圧延、あるいは再加熱を行った後に仕上圧延を行い、巻取って熱延鋼板を作製した。ここで、仕上圧延を潤滑した場合は、全スタンドで潤滑圧延(摩擦係数≦0.2)を行った。その後、酸洗し、表6〜8に示す冷間圧延、焼鈍、調質圧延の各条件で、冷間圧延し、焼鈍、調質圧延を行って板厚1.4mmの鋼板1〜87を作製した。なお、焼鈍では、冷却途中で350℃で150sの時効処理を行って冷延鋼板を、あるいは冷却途中の470℃で溶融亜鉛めっきし、500〜550℃に再加熱して合金化処理を行い合金化溶融亜鉛めっき鋼板を作製した。
そして、上記した方法で、ミクロ組織、集合組織、3点曲げ試験によるσが200MPaのときの圧延方向に対して0°、45°、90°方向の(Δσ/Δε)を求め、また、圧延方向に対して90°方向の引張特性値(降伏強度YP、引張強度TS、伸びEl)を、JIS 5 号引張試験片を用い、引張速度1mm/分で求めた。
結果を表9〜11および図1〜5に示す。本発明例では、圧延方向に対して90°方向の(Δσ/Δε)が230GPa以上であり、かつ3方向の平均の(Δσ/Δε)が200GPa以上であり、優れた曲げ剛性が得られることがわかる。
Figure 0004665692
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圧延方向に対して90°方向の(Δσ/Δε)とフェライト相の面積率との関係を示す図である。 圧延方向に対して90°方向の(Δσ/Δε)とフェライト平均粒径との関係を示す図である。 圧延方向に対して90°方向の(Δσ/Δε)と(フェライト平均粒径dα/マルテンサイト平均粒径dM)との関係を示す図である。 圧延方向に対して90°方向の(Δσ/Δε)とフェライト粒径の標準偏差σAとの関係を示す図である。 圧延方向に対して90°方向の(Δσ/Δε)とODF解析強度fとの関係を示す図である。

Claims (14)

  1. 質量%で、C:0.05〜0.15%、Si:0.3%以下、Mn:1.5〜2.5%、P:0.05%以下、S:0.01%以下、Al:1.0%以下、N:0.01%以下、Nb:0.02〜0.1%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有し、かつC、N、Nbの含有量が下記の(1)、(2)式を満たし、面積率で60〜90%のフェライト相と10〜40%のマルテンサイト相を有し、前記フェライト相と前記マルテンサイト相の面積率の合計が95%以上であり、かつフェライト粒の平均粒径(dα)が1.0〜6.0μm、マルテンサイト粒の平均粒径(dM)が0.5〜3.0μmであり、dα/dM≧1.5を満たすミクロ組織を有し、圧延方向に対して90°方向の引張強度TSが590MPa以上であり、かつ圧延方向、圧延方向に対して45°方向、および圧延方向に対して90°方向について3点曲げ試験を行って得た曲げ部外側の応力(σ)-歪(ε)曲線から、σが200MPaのときの曲線の傾き(Δσ/Δε)を求めたとき、圧延方向に対して90°方向の(Δσ/Δε)cが230GPa以上であり、前記3方向の平均の(Δσ/Δε)が200GPa以上であることを特徴とする曲げ剛性に優れた高強度薄鋼板;
    Nb-(92.9/14)×N≧0.02・・・・・(1)
    C-(12/92.9)×Nb-1≧0.01・・・・ (2)
    ここで、Nb-1=Nb-(92.9/14)×Nであり、式中の各元素記号は各元素の含有量(質量%)を表し、また、平均の(Δσ/Δε)とは、圧延方向、圧延方向に対して45°方向、および圧延方向に対して90°方向について求めた(Δσ/Δε)を、それぞれ(Δσ/Δε)l、(Δσ/Δε)d、(Δσ/Δε)cとしたとき、{(Δσ/Δε)l+2×(Δσ/Δε)d+(Δσ/Δε)c}/4で計算した値である。
  2. 質量%で、C:0.05〜0.15%、Si:0.3%以下、Mn:1.5〜2.5%、P:0.05%以下、S:0.01%以下、Al:1.0%以下、N:0.01%以下、Nb:0.02〜0.1%を含有し、さらにTi:0.01〜0.2%およびV:0.01〜0.2%から選ばれた少なくとも1種の元素を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなる組成を有し、かつC、N、S、Nb、Ti、Vの含有量が下記の(3)、(4)式を満たし、面積率で60〜90%のフェライト相と10〜40%のマルテンサイト相を有し、前記フェライト相と前記マルテンサイト相の面積率の合計が95%以上であり、かつフェライト粒の平均粒径(dα)が1.0〜6.0μm、マルテンサイト粒の平均粒径(dM)が0.5〜3.0μmであり、dα/dM≧1.5を満たすミクロ組織を有し、圧延方向に対して90°方向の引張強度TSが590MPa以上であり、かつ圧延方向、圧延方向に対して45°方向、および圧延方向に対して90°方向について3点曲げ試験を行って得た曲げ部外側の応力(σ)-歪(ε)曲線から、σが200MPaのときの曲線の傾き(Δσ/Δε)を求めたとき、圧延方向に対して90°方向の(Δσ/Δε)cが230GPa以上であり、前記3方向の平均の(Δσ/Δε)が200GPa以上であることを特徴とする曲げ剛性に優れた高強度薄鋼板;
    Nb-(92.9/14)×N-2≧0.02・・・・・・・・・・・・・・・・ (3)
    C-(12/92.9)×Nb-2-(12/47.9)×Ti-2-(12/50.9)×V≧0.01・・・ (4)
    ここで、N-2=N-(14/47.9)×Ti(ただし、N-2≦0のときは、N-2=0)、Nb-2=Nb-(92.9/14)×N-2、Ti-2=Ti-(47.9/14)×N-(47.9/32.1)×S(ただし、Ti-2≦0のときは、Ti=0)であり、式中の各元素記号は各元素の含有量(質量%)を表し、また、平均の(Δσ/Δε)とは、圧延方向、圧延方向に対して45°方向、および圧延方向に対して90°方向について求めた(Δσ/Δε)を、それぞれ(Δσ/Δε)l、(Δσ/Δε)d、(Δσ/Δε)cとしたとき、{(Δσ/Δε)l+2×(Δσ/Δε)d+(Δσ/Δε)c}/4で計算した値である。
  3. 個々のフェライト粒径に関し、その自然対数を採った値の標準偏差をσAとしたとき、σA<0.7を満たすことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の曲げ剛性に優れた高強度薄鋼板。
  4. 鋼板の1/4板厚における板面の(113)[1-10]〜(223)[1-10]方位における平均のODF解析強度fが6以上であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の曲げ剛性に優れた高強度薄鋼板;ここで、[1-10]は(1,-1,0)の方向を表す。
  5. さらに、質量%で、Cr:0.05〜1.0%、Ni:0.05〜1.0%、Mo:0.05〜1.0%、B:0.0005〜0.0030%から選ばれた少なくとも1種の元素を含有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の曲げ剛性に優れた高強度薄鋼板。
  6. さらに、質量%で、Cu:0.1〜2.0%を含有することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の曲げ剛性に優れた高強度薄鋼板。
  7. さらに、質量%で、W:0.1〜2.0%を含有することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の曲げ剛性に優れた高強度薄鋼板。
  8. 請求項1、請求項2、請求項5から請求項7のいずれか1項に記載の組成からなる鋼を、鋳造し、そのまま、あるいは一旦冷却し再加熱した後、粗圧延し、Ar3変態点以上の仕上圧延終了温度で仕上圧延し、500℃以上の巻取温度で巻取った後、酸洗を行い、45〜85%の範囲の圧下率Rで冷間圧延を行った後、焼鈍を行うに際し、室温から下記の(5)式に定義する温度Ta℃までを平均1℃/s以上の昇温速度で加熱し、Ta〜(Ta+10+R0.9)℃の温度範囲に下記の(6)式を満たすような時間v(s)滞留させた後、Ta〜600℃の温度範囲を3〜30℃/sの平均冷却速度で冷却することを特徴とする曲げ剛性に優れた高強度薄鋼板の製造方法。
    Ta=930-200×C0.5+40×Si-30×Mn+40×Al-10×Cr+30×Mo-15×Ni-20×Cu+10×W
    ・・・・(5)
    ここで、式中の各元素記号は各元素の含有量(質量%)を表す。
    Figure 0004665692
    ここで、上記(6)式のF(w)は、鋼板が温度TaになってからTa〜(Ta+10+R0.9)℃の温度範囲内に滞留する時間v(s)内の任意の時間w(s)のときの温度(℃)を表す。
  9. 鋼を鋳造し、一旦冷却したのち再加熱を行う際の加熱温度Th℃を、((-7020/(log(Nb・C0.87)-2.81))-273)〜1300℃[ただし、Nb、Cは、各元素の含有量(質量%)を表す。]の温度範囲とし、かつ加熱温度Th℃と加熱時間t(s)が下記の(7)式を満たすように再加熱を行うことを特徴とする請求項8に記載の曲げ剛性に優れた高強度薄鋼板の製造方法。
    10-6≦((5.6×10-4×exp((-3.44×10)/(Th+273)))×t)0.5≦3×10-5・・・・・(7)
  10. 粗圧延を行うに際し、(Ar3変態点+100)℃以下における合計圧下率を20%以上とし、前記粗圧延後、Ar3変態点以上の仕上圧延終了温度を確保できるように(Ar3変態点+150)℃以下に再加熱して仕上圧延を行うことを特徴とする請求項8または請求項9に記載の曲げ剛性に優れた高強度薄鋼板の製造方法。
  11. 仕上圧延を行うに際し、(Ar3変態点+100)℃以下における合計圧下率を50%以上とし、かつ仕上圧延終了温度をAr3変態点〜(Ar3変態点+50)℃の温度範囲とすることを特徴とする請求項8から請求項10のいずれか1項に記載の曲げ剛性に優れた高強度薄鋼板の製造方法。
  12. 仕上圧延を行うに際し、潤滑圧延を行うことを特徴とする請求項8から請求項11のいずれか1項に記載の曲げ剛性に優れた高強度薄鋼板の製造方法。
  13. 仕上圧延後、3s以内に50℃/s以上の平均冷却速度で700℃以下まで冷却することを特徴とする請求項8から請求項12のいずれか1項に記載の曲げ剛性に優れた高強度薄鋼板の製造方法。
  14. 焼鈍後に0.3〜10%の伸び率で調質圧延を行うことを特徴とする請求項8から請求項13のいずれか1項に記載の曲げ剛性に優れた高強度薄鋼板の製造方法。
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