JP5515623B2 - 高強度冷延鋼板およびその製造方法 - Google Patents

高強度冷延鋼板およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、主に自動車、電気等の産業分野で使用される部材として好適な加工性に優れた高強度冷延鋼板およびその製造方法に関する。
近年、地球環境保全の見地から、自動車の燃費向上が重要な課題となっている。これに伴い、車体材料の高強度化により薄肉化を図り、車体そのものを軽量化しようとする動きが活発となってきている。しかしながら、鋼板の高強度化は延性の低下、即ち成形加工性の低下を招く。このため、高強度と高加工性を併せ持つ材料の開発が望まれているのが現状である。
このような要求に対して、これまでにフェライトとマルテンサイトの二相鋼(DP鋼)や残留オーステナイトの変態誘起塑性を利用したTRIP鋼など、種々の複合組織型高強度冷延鋼板が開発されてきた。
例えば、特許文献1には、多量のSiを添加することにより残留γを確保し高延性を達成する加工性に優れた高強度鋼板の製造方法が提案されている。
しかしながら、特許文献1の方法により得られるDP鋼やTRIP鋼は伸び特性には優れるものの穴拡げ性が劣るという問題がある。穴拡げ性は加工穴部を拡張してフランジ成形させるときの加工性を示す指標で、伸び特性と共に高強度鋼板に要求される重要な特性である。
伸びフランジ性に優れる冷延鋼板の製造方法として、特許文献2には、焼鈍均熱後、焼入れ−焼戻しを行いフェライトと焼戻しマルテンサイトの複合組織とすることにより穴拡げ性を向上させる技術が開示されている。
しかしながら、特許文献2に記載の技術では高い穴拡げ性が得られるものの、伸び(EL)が低い。
特開平2-101117号公報 特開2004-256872号公報
上述したように、特許文献1、2に記載された冷延鋼板では、延性および伸びフランジ性に優れた高強度冷延鋼板は得られていない。
本発明は、かかる事情に鑑み、500MPa以上の強度(TS)を有し、かつ、延性および伸びフランジ性に優れた高強度冷延鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記した課題を達成し、延性および伸びフランジ性に優れた高強度冷延鋼板を製造するため、鋼板の成分組成およびミクロ組織の観点から鋭意研究を重ねた。
その結果、主相がフェライト相で、第2相に残留オーステナイト相とベイナイト相を含む組織とし、ベイナイトの面積率SBと残留オーステナイトの体積率VγRの比SB/VγRを2以上とすることにより、延性と伸びフランジ性を両立できることが分かった。
従来のTRIP鋼はフェライト・オーステナイト2相域での焼鈍後、冷却中にフェライト変態を進行させ未変態オーステナイトへのC濃化を促進したのち、ベイナイト変態域で保持するオーステンパー処理を施し製造されていた。このような従来の製造方法では残留オーステナイト量に対しベイナイトが少なく穴拡げ性が低くなる。しかし、本発明では、フェライト・オーステナイト2相域の高温側((A3変態点-80℃)〜A3変態点)で焼鈍した後、急速冷却(10℃/s以上の平均冷却速度で750℃から300〜500℃の温度域まで冷却)しオーステンパー処理を施すため、十分な量のベイナイトが確保でき高い伸びフランジ性を得ることが可能となる。
本発明は、以上の知見に基づいてなされたものであり、その要旨は以下のとおりである。
[1] 成分組成は、質量%で、C:0.04〜0.12%、Si:0.8〜2.5%、Mn:0.5〜2.0%、P:0.003〜0.100%、S:0.0200%以下、Al:0.01〜0.10%を含有し、SiとMnが[%Si]+4[%Mn]≦8を満足し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、組織は、フェライト相の面積率が70〜94%、残留オーステナイト相の体積率VγRが2〜10%、ベイナイト相の面積率SBが4〜20%であり、かつ、該ベイナイト相の面積率SBと前記残留オーステナイト相の体積率VγRとの比SB/VγRが2以上であることを特徴とする高強度冷延鋼板。
但し、[%Si]、[%Mn]はそれぞれ鋼中のSi含有量(質量%)、Mn含有量(質量%)を示す。
[2] さらに、成分組成として、質量%で、Ti:0.01〜0.20%、Nb:0.01〜0.20%から選ばれる1種または2種の元素を含有することを特徴とする前記[1]に記載の高強度冷延鋼板。
[3] さらに、成分組成として、質量%で、B:0.0002〜0.0050%を含有することを特徴とする前記[1]または[2]に記載の高強度冷延鋼板。
[4] さらに、成分組成として、質量%で、Ca:0.001〜0.005%、REM:0.001〜0.005%から選ばれる1種または2種の元素を含有することを特徴とする前記[1]〜[3]のいずれかに記載の高強度冷延鋼板。
[5] 前記[1]〜[4]のいずれかに記載の成分組成を有するスラブに熱間圧延、冷間圧延を施し、次いで、連続焼鈍を施すに際し、(A3変態点-80℃)〜A3変態点の温度域に加熱し、次いで、10秒以上保持した後、10℃/s以上の平均冷却速度で750℃から300〜500℃の温度域まで冷却し、該300〜500℃の温度域で10〜900秒保持した後、室温まで冷却することを特徴とする高強度冷延鋼板の製造方法。
なお、本明細書において、鋼の成分を示す%は、すべて質量%である。また、本発明において、「高強度冷延鋼板」とは、引張強度TSが500MPa以上である冷延鋼板である。
本発明によれば、500MPa以上の引張強度TSを有し、かつ、延性および伸びフランジ性に優れた高強度冷延鋼板が得られる。本発明の高強度冷延鋼板を例えば自動車構造部材に適用することにより、自動車の軽量化と衝突安全性向上との両立を可能とし、自動車車体の高性能化に大きく寄与するという優れた効果を奏する。
以下に、本発明の詳細を説明する。
1)成分組成
C:0.04〜0.12%
Cは、オーステナイト相を安定化させフェライト相以外の相を生成しやすくする、また、鋼板強度を上昇させるとともに、残留オーステナイト相の生成によりTSとELのバランスを向上させるために必要な元素である。C量が0.04%未満では製造条件の最適化を図ったとしても体積率で2%以上の残留オーステナイト相の確保が難しく、TSとELのバランスが低下する。一方、C量が0.12%を超えると、伸びフランジ性が低下する。以上より、C量は0.04%以上0.12%以下とする。好ましくは0.06%以上0.10%以下である。
Si:0.8〜2.5%
Siは鋼の強化に有効な元素である。また、フェライト相生成元素であり、オーステナイト相中へのCの濃化促進および炭化物の生成を抑制することから、残留オーステナイト相の生成を促進する働きを有する。このような効果を得るためには、Si量は0.8%以上必要である。ただし、過剰な添加は、延性や表面性状、溶接性を劣化させるので、上限は2.5%とする。好ましくは1.0%以上2.0%以下である。
Mn:0.5〜2.0%
Mnは鋼の強化に有効な元素である。また、オーステナイト相を安定化させ、残留オーステナイト相の増加に必要な元素である。このような作用は、Mn量が0.5%以上で認められる。ただし、Mn量が2.0%を超えて過剰に添加すると、伸びフランジ性が低下する。従って、Mn量は0.5%以上2.0%以下とする。好ましくは1.0%以上1.8%以下である。
P:0.003〜0.100%
Pは鋼の強化に有効な元素であり、この効果は0.003%以上で得られる。しかし、0.100%を超えて過剰に添加すると粒界偏析により脆化を引き起こし、耐衝撃性を劣化させる。従って、P量は0.003%以上0.100%以下とする。
S:0.0200%以下
SはMnSなどの介在物となって、耐衝撃特性の劣化や溶接部のメタルフローに沿った割れの原因になるので極力低い方が良いが、製造コストの面から0.0200%以下とする。
Al:0.01〜0.10%
Alは脱酸剤として作用し、鋼の清浄に有効な元素であり、脱酸工程で添加することが好ましい。このような効果を得るためには、Al量は0.01%以上必要である。一方、多量に添加すると介在物が増加し成形性を低下させる。従ってAl量の上限は0.10%とする。
[%Si]+4[%Mn]≦8
Si量の増加に伴い、焼鈍・冷却時のフェライト相の生成量が増加し、未変態オーステナイト相へのC濃化によりベイナイト変態が抑制される。また、Mnはオーステナイト相安定化元素であり、Mn量の増加に伴い、ベイナイト変態が抑制される。このようにSi量、Mn量の増加に伴いベイナイト変態が抑制され、[%Si]+4[%Mn]が8%を超えると所望量のベイナイト相が得られなくなる。従って、[%Si]+4[%Mn]≦8とする。なお、[%Si]、[%Mn]はそれぞれ鋼中のSi含有量(質量%)、Mn含有量(質量%)を示す。
残部はFeおよび不可避的不純物である。
ただし、これらの成分元素に加えて、以下の合金元素を必要に応じて添加することができる。
Ti:0.01〜0.20%、Nb:0.01〜0.20%から選ばれる1種または2種
Ti、Nbは炭窒化物を形成し、鋼を析出強化により高強度化する作用を有する。このような効果はそれぞれ0.01%以上で認められる。一方、Ti、Nbをそれぞれ0.20%を超えて含有しても、過度に高強度化し、延性が低下する。従って、添加する場合は、Ti、Nbはそれぞれ0.01%以上0.20%以下とする。
B:0.0002〜0.0050%
Bはオーステナイト相粒界からのフェライト相の生成を抑制し強度を上昇させる作用を有する。その効果は0.0002%以上で得られる。一方、B量が0.0050%を超えるとその効果は飽和し、コストアップの要因となる。従って、添加する場合は、B量は0.0002%以上0.0050%以下とする。
Ca:0.001〜0.005%、REM:0.001〜0.005%から選ばれる1種または2種
Ca、REMはいずれも硫化物の形態制御により加工性を改善する効果を有しており、必要に応じてCa、REMの1種または2種をそれぞれ0.001%以上含有することができる。しかしながら過剰な添加は清浄度に悪影響を及ぼす恐れがあるため、それぞれ0.005%以下とする。
2)ミクロ組織
フェライト相の面積率が70%以上94%以下
フェライト相は、鉄炭化物を含まない軟質な相であり、高い変形能を有し、鋼板の延性を向上する作用を有する。本発明では、このようなフェライト相を面積率で70%以上含有する。一方、フェライト相の面積率が94%を超えると必要量のベイナイト相および残留オーステナイト相の確保ができなくなる。よって、フェライト相の面積率は94%以下とする。
残留オーステナイト相の体積率(以下、VγRと称することがある)が2〜10%、ベイナイト相の面積率(以下、SBと称することがある)が4〜20%、SB/VγRが2以上
残留オーステナイト相は、加工時にマルテンサイトに歪誘起変態し、局所的に加えられた加工歪を広く分散させ、鋼板の延性を向上する作用を有する。このような効果を得るため、本発明では、残留オーステナイト相を体積率で2%以上含有する。残留オーステナイト相が2%未満では、顕著な延性の向上が期待できない。
また、残留オーステナイト相は伸びフランジ性に悪影響を及ぼす。しかし、ベイナイト相と共存することにより残留オーステナイト相による伸びフランジ性の低下が抑制される。そのため、本発明では、第2相として残留オーステナイト相とベイナイト相を含む組織とし、上記残留オーステナイト相を体積率で2%以上含有するのに加え、ベイナイト相を面積率で4%以上含有することとする。特にベイナイト相の面積率と残留オーステナイト相の体積率との比SB/VγRが2以上で上記効果が顕著となる。
一方、残留オーステナイト相の体積率が10%を超えると上記のような組織制御を行っても伸びフランジ性の低下を抑制することが出来なくなるため、残留オーステナイト相の体積率の上限は10%とする。また、ベイナイト相の面積率が20%を超えると延性が低下するため、ベイナイト相の面積率の上限は20%とする。
なお、上記ミクロ組織の構成が満足されれば本発明の目的を達成できるため、フェライト相、残留オーステナイト相、ベイナイト相以外の相として、パーライト相およびマルテンサイト相を含むことができる。ただし、延性および穴拡げ性確保の観点からパーライト相およびマルテンサイト相はそれぞれ面積率で10%以下とすることが望ましい。
なお、本発明におけるフェライト相およびベイナイト相の面積率とは、観察面積に占める各相の面積の割合のことである。上記各面積率は、例えば、鋼板の圧延方向に平行な板厚断面を研磨後、3%ナイタールで腐食し、SEM(走査電子顕微鏡)を用いて2000倍の倍率で10視野観察し、市販の画像処理ソフトを用いて求めることができる。また、残留オーステナイト相の体積率とは、板厚1/4面における残留オーステナイト相の{111}、{200}、{220}、{311}面とフェライト相の{110}、{200}、{211}面の全ての組合せについて求めたX線回折積分強度比の平均値である。
3)製造条件
本発明の高強度冷延鋼板は、例えば、上記の成分組成を有するスラブに熱間圧延、冷間圧延を施し、次いで、連続焼鈍を施すに際し、(A3変態点-80℃)〜A3変態点の温度域に加熱し、次いで、10秒以上保持した後、10℃/s以上の平均冷却速度で750℃から300〜500℃の温度域まで冷却し、該300〜500℃の温度域で10〜900秒保持した後、室温まで冷却する。
以下、詳細に説明する。
上記の成分組成に調整した鋼を転炉などで溶製し、連続鋳造法等でスラブとする。
使用する鋼スラブは、成分のマクロ偏析を防止するために連続鋳造法で製造するのが好ましいが、造塊法、薄スラブ鋳造法で製造してもよい。また、鋼スラブを製造したのち、いったん室温まで冷却し、その後再度加熱する従来法に加え、室温まで冷却しないで、温片のままで加熱炉に挿入する、あるいはわずかの保熱をおこなった後に直ちに圧延する直送圧延・直接圧延などの省エネルギープロセスも問題なく適用できる。
スラブ加熱温度:1100℃以上(好適条件)
スラブ加熱温度は、低温加熱がエネルギー的には好ましいが、加熱温度が1100℃未満では、炭化物が十分に固溶できなかったり、圧延荷重の増大による熱間圧延時のトラブル発生の危険が増大するなどの問題が生じる。そのため、スラブ加熱温度は1100℃以上が好ましい。なお、酸化重量の増加にともなうスケールロスの増大などから、スラブ加熱温度は1300℃以下とすることが好ましい。
なお、スラブ加熱温度を低くしても熱間圧延時のトラブルを防止するといった観点から、シートバーを加熱する、いわゆるシートバーヒーターを活用してもよい。
仕上圧延終了温度:A3点以上(好適条件)
仕上げ圧延終了温度がA3点未満では、圧延中にα(フェライト)とγ(オーステナイト)が生成して、鋼板にバンド状組織が生成し易くなり、かかるバンド状組織は冷間圧延後や焼鈍後にも残留し、材料特性に異方性を生じさせたり、加工性を低下させる原因となる場合がある。このため、仕上げ圧延終了温度はA3変態点以上とすることが好ましい。
巻取り温度:450℃〜700℃(好適条件)
巻取り温度が450℃未満だと巻取り温度の制御が難しく温度ムラが生じやすくなり、その結果、冷間圧延性が低下するなどの問題が生じることがある。また巻取り温度が700℃を超えると地鉄表層で脱炭が生じるなどの問題が起こることがある。このため、巻取り温度は450〜700℃の範囲とするのが好ましい。
なお、本発明における熱延工程では、熱間圧延時の圧延荷重を低減するために仕上圧延の一部または全部を潤滑圧延としてもよい。潤滑圧延を行うことは、鋼板形状の均一化、材質の均一化の観点からも有効である。なお、潤滑圧延の際の摩擦係数は0.25〜0.10の範囲とすることが好ましい。また、相前後するシートバー同士を接合し、連続的に仕上圧延する連続圧延プロセスとすることが好ましい。連続圧延プロセスを適用することは、熱間圧延の操業安定性の観点からも好ましい。
次いで、熱延鋼板の表面の酸化スケールを酸洗により除去した後、冷間圧延に供して所定の板厚の冷延鋼板とする。ここで、酸洗条件や冷間圧延条件は特に制限されるものではなく、常法に従えば良い。冷間圧延の圧下率は40%以上とすることが好ましい。
連続焼鈍条件:(A3変態点−80℃)〜A3変態点の温度域まで加熱し、10秒以上保持
加熱温度が(A3変態点−80℃)未満あるいは保持時間が10秒未満では、焼鈍時のオーステナイト相の生成が不十分となり、焼鈍冷却後に十分な量の残留オーステナイト相およびベイナイト相が確保できなくなる。また、加熱温度がA3変態点を超えると冷却時のフェライト相の生成が抑制され、焼鈍冷却後に十分な量のフェライト相が確保できなくなる。従って加熱温度は(A3変態点−80℃)〜A3変態点の温度域とし、保持時間は10秒以上とする。
焼鈍温度から750℃までの冷却速度は特に規定しないが、通常の設備では1〜100℃/sとなる。
10℃/s以上の平均冷却速度で750℃から300〜500℃の温度域まで冷却
パーライト生成域である750℃以下の温度域での冷却速度が遅いと冷却時にパーライト相が生成し、所望量の残留オーステナイト相やベイナイト相が得られなくなる。従って、750℃からの平均冷却速度は10℃/s以上とする。冷却速度の上限は特に規定しないが、冷却速度が速すぎると鋼板形状が悪化したり、冷却到達温度の制御が困難となるため、好ましくは200℃/s以下とする。
冷却停止温度が500℃を超えるとパーライトが過度に生成し、300℃未満ではマルテンサイトが生成し、所望量の残留オーステナイト相やベイナイト相が得られなくなる。したがって、冷却停止温度は300〜500℃とする。
300〜500℃の温度域で10〜900秒保持
300〜500℃の温度域で保持することによりベイナイト変態が進行する。この保持により必要量のベイナイト相の確保が可能となり、また、ベイナイト変態に伴い未変態オーステナイトへのC濃化により残留オーステナイト相の確保が可能となる。保持温度が300℃未満、あるいは保持時間が10秒未満ではベイナイト相の生成が不十分となる。一方、保持温度が500℃を超えたり保持時間が900秒を超えるとパーライト相が生成したり過度にベイナイト変態が進行し、十分な量の残留オーステナイト相が確保できなくなる。従って、冷却後の保持は300〜500℃の温度域で10〜900秒の範囲とする。
次いで、室温まで冷却する。室温までの冷却速度および冷却方法は特に規定せず、ガス冷却、水冷却およびその組合せ等、いかなる方法でも構わない。
以上により、本発明の加工性に優れた高強度冷延鋼板が得られる。
表1に示す成分組成を有し、残部がFeおよび不可避的不純物よりなる鋼を転炉にて溶製し、連続鋳造法にて鋳片とした。得られた鋳片を板厚3.0mmまで熱間圧延した。熱間圧延の条件は仕上げ温度900℃、圧延後の平均冷却速度10℃/s、巻取り温度600℃で行った。次いで、熱延鋼板を酸洗した後、板厚1.2mmまで冷間圧延し、冷延鋼板を製造した。
次いで、上記により得られた冷延鋼板に、連続焼鈍ラインにて、表2に示す条件で焼鈍を行った。
Figure 0005515623
Figure 0005515623
以上により得られた冷延鋼板について、断面ミクロ組織、引張特性および穴拡げ性を調査した。得られた結果を表3に示す。
なお、鋼板の断面ミクロ組織は3%ナイタール溶液(3%硝酸+エタノール)で組織を現出し、走査型電子顕微鏡で2000倍で深さ方向板厚1/4位置を10視野観察して、撮影した組織写真を用いて、画像解析処理を行ない、フェライト相およびベイナイト相の分率を定量化した(なお、画像解析処理は市販の画像処理ソフトを用いることができる)。
残留オーステナイト相の体積率は、鋼板を板厚方向の1/4面まで研磨し、この板厚1/4面の回折X線強度により求めた。入射X線にはMoKα線を使用し、残留オーステナイト相の{111}、{200}、{220}、{311}面とフェライト相の{110}、{200}、{211}面のピークの積分強度の全ての組み合わせについて強度比を求め、これらの平均値を残留オーステナイト相の体積率とした。
また、引張特性は、引張方向が鋼板の圧延方向と直角方向となるようサンプル採取したJIS5号試験片を用いて、JISZ2241に準拠した引張試験を行ない、TS(引張強さ)、EL(伸び)を測定し、強度と伸びの積(TS×EL)で表される強度と伸びバランスの値を求めた。
さらに、穴拡げ率(λ)は日本鉄鋼連盟規格JFST1001に準じた穴拡げ試験を行い、測定した。
Figure 0005515623
表3より、本発明例の鋼板はTSとELのバランス(TS×EL)が21000MPa・%以上、λが70%以上であり、優れた強度、延性および伸びフランジ性を示している。
一方、本発明の範囲をはずれる比較例の鋼板はTSとELのバランス(TS×EL)が21000MPa・%未満および(または)λが70%未満となり、強度、延性および伸びフランジ性のいずれかが劣っている。

Claims (5)

  1. 成分組成は、質量%で、C:0.04〜0.12%、Si:0.8〜2.5%、Mn:0.5〜2.0%、P:0.003〜0.100%、S:0.0200%以下、Al:0.01〜0.10%を含有し、SiとMnが[%Si]+4[%Mn]≦8を満足し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、組織は、フェライト相の面積率が70〜94%、残留オーステナイト相の体積率VγRが2〜10%、ベイナイト相の面積率SBが4〜20%からなり、かつ、該ベイナイト相の面積率SBと前記残留オーステナイト相の体積率VγRとの比SB /VγRが2以上であることを特徴とする、TS(引張強さ)とEL(伸び)のバランス(TS×EL)が21000MPa・%以上、λ(穴拡げ率)が70%以上である高強度冷延鋼板。
    但し、[%Si]、[%Mn]はそれぞれ鋼中のSi含有量(質量%)、Mn含有量(質量%)を示す。
    また、前記残留オーステナイト層の体積率V γR とは、板厚1/4面における残留オーステナイト相の{111}、{200}、{220}、{311}面とフェライト相の{110}、{200}、{211}面の全ての組合せについて求めたX線回折積分強度比の平均値である。
  2. さらに、成分組成として、質量%で、Ti:0.01〜0.20%、Nb:0.01〜0.20%から選ばれる1種または2種の元素を含有することを特徴とする請求項1に記載の高強度冷延鋼板。
  3. さらに、成分組成として、質量%で、B:0.0002〜0.0050%を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の高強度冷延鋼板。
  4. さらに、成分組成として、質量%で、Ca:0.001〜0.005%、REM:0.001〜0.005%から選ばれる1種または2種の元素を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の高強度冷延鋼板。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の成分組成を有するスラブに熱間圧延、冷間圧延を施し、次いで、連続焼鈍を施すに際し、(A3変態点−80℃)〜A3変態点の温度域に加熱し、次いで、10秒以上保持した後、10℃/s以上の平均冷却速度で750℃から300〜500℃の温度域まで冷却し、該300〜500℃の温度域で10〜900秒保持した後、室温まで冷却することを特徴とする、組織がフェライト相の面積率が70〜94%、残留オーステナイト相の体積率V γR が2〜10%、ベイナイト相の面積率S B が4〜20%からなり、かつ、該ベイナイト相の面積率S B と前記残留オーステナイト相の体積率V γR との比S B /V γR が2以上であり、TS(引張強さ)とEL(伸び)のバランス(TS×EL)が21000MPa・%以上、λ(穴拡げ率)が70%以上である高強度冷延鋼板の製造方法。
    但し、前記残留オーステナイト相の体積率V γR とは、板厚1/4面における残留オーステナイト相の{111}、{200}、{220}、{311}面とフェライト相の{110}、{200}、{211}面の全ての組合せについて求めたX線回折積分強度比の平均値である。
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