JP2020158853A - 鋼材およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
C:0.01〜0.20%、
Si:0.01〜1.0%、
Mn:0.01〜3.0%、
P:0.050%以下、
S:0.010%以下、
Sn:0.01〜2.0%、
Al:0.10%以下、
Cu:0〜1.0%、
Ni:0〜1.0%、
Cr:0〜1.0%、
Mo:0〜1.0%、
W:0〜1.0%、
Sb:0〜0.20%、
Ti:0〜0.20%、
Zr:0〜0.20%、
Ca:0〜0.010%、
Mg:0〜0.010%、
Nb:0〜0.10%、
V:0〜0.50%、
B:0〜0.010%、
REM:0〜0.010%、
残部:Feおよび不純物であり、
前記母材の表面の少なくとも一部に、厚さが0.5〜6.0nmの酸化Sn層を有する、
鋼材。
Cu:0.02〜1.0%、
Ni:0.01〜1.0%、
Cr:0.01〜1.0%、
Mo:0.01〜1.0%、
W:0.01〜1.0%、
Sb:0.01〜0.20%、
Ti:0.001〜0.20%、
Zr:0.001〜0.20%、
Ca:0.0002〜0.010%、
Mg:0.0002〜0.010%、
Nb:0.001〜0.10%、
V:0.005〜0.50%、
B:0.0003〜0.010%、
REM:0.0002〜0.010%、
から選択される1種以上を含有する、
上記(1)に記載の鋼材。
鋼材の製造方法。
上記(3)に記載の鋼材の製造方法。
上記(4)に記載の鋼材の製造方法。
上記(3)または(4)に記載の鋼材の製造方法。
カソード反応:Fe3++e−→Fe2+(Fe3+の還元反応)
アノード反応:Fe→Fe2++2e−(Feの溶解反応)
2Fe3++Fe→3Fe2+ ・・・(i)
2H++2e−→H2
各元素の限定理由は下記のとおりである。なお、以下の説明において含有量についての「%」は、「質量%」を意味する。
Cは材料としての強度を確保するために必要な元素である。しかし、過剰に含有させると溶接性が著しく低下する。また、C含有量の増大とともに、pHが低下する環境でカソードとなって腐食を促進するセメンタイトの生成量が増大するため、耐食性が低下する。そのため、C含有量は0.01〜0.20%とする。C含有量は0.02%以上であるのが好ましく、0.03%以上であるのがより好ましい。また、C含有量は0.18%以下であるのが好ましく、0.16%以下であるのがより好ましい。
Siは脱酸に必要な元素である。しかし、過剰に含有させると母材および溶接継手部の靱性が損なわれる。そのため、Si含有量は0.01〜1.0%とする。Si含有量は0.03%以上であるのが好ましく、0.05%以上であるのがより好ましい。また、Si含有量は0.80%以下であるのが好ましく、0.60%以下であるのがより好ましい。
Mnは低コストで鋼の強度を高める作用を有する元素である。しかし、過剰に含有させると溶接性が劣化するとともに継手靱性も劣化する。そのため、Mn含有量は0.01〜3.0%とする。Mn含有量は0.20%以上であるのが好ましく、0.40%以上であるのがより好ましい。また、Mn含有量は2.5%以下であるのが好ましく、2.0%以下であるのがより好ましい。
Pは鋼材中に不純物として存在する元素である。Pは耐酸性を低下させる元素であり、腐食界面のpHが低下する塩化物腐食環境においては耐食性を低下させる。さらには溶接性および溶接熱影響部の靱性を低下させることから、含有量は少なければ少ないほどよい。そのため、P含有量は0.050%以下に制限する。P含有量は0.030%以下であるのが好ましく、0.010%未満であるのがより好ましい。
Sは鋼材中に不純物として存在する元素である。Sは鋼中に腐食の起点となるMnSを形成し、その含有量が過剰であると、耐食性の低下が顕著になる。そのため、S含有量は0.010%以下に制限する。S含有量は0.008%以下であるのが好ましく、0.006%以下であるのがより好ましい。
Snは鋼の耐食性を向上させる作用を有する元素である。加えて、上述のように、鋼材中にSnが含まれることにより、事前に鋼材の表面に酸化Sn層を形成することが可能となる。酸化Sn層を有することにより、低pH塩化物環境において鋼のアノード溶解反応および水素発生反応を著しく抑制するため、塩化物腐食環境における耐食性を大幅に向上させる作用を有する。
Alは鋼の脱酸に有効な元素である。本発明では鋼中に脱酸効果を有するSiを含有させるので、Alで脱酸処理することは必ずしも必要でない。しかし、Siに加えて、さらにAlを含有させて複合脱酸することもできる。ただし、Alの含有量が0.1%を超えると、低pH環境における耐食性が低下するため塩化物腐食環境における耐食性が低下するばかりでなく、窒化物が粗大化するために靱性の低下を引き起こす。したがって、Alを含有させる場合の含有量の上限を0.10%以下とする。Al含有量は0.060%以下であるのが好ましい。なお、Alによる脱酸効果を安定的に得るためには、Al含有量を0.010%以上とすることが好ましく、0.030%以上とすることがより好ましい。
Cuは低pH環境における鋼のアノード溶解を抑制することにより耐食性を向上させる作用を有するので、必要に応じて含有させることができる。ただし、過剰に含有させると効果が飽和するだけでなく、脆化を起こす原因となる。したがって、その含有量は1.0%以下とする。上記効果を安定的に得るためには、Cu含有量を0.02%以上とすることが好ましく、0.03%以上とすることがより好ましい。
NiもCuと同様に、低pH環境における鋼のアノード溶解を抑制することにより耐食性を向上させる作用を有するので、必要に応じて含有させることができる。ただし、過剰に含有させると効果が飽和するだけでなく、コストの著しい上昇につながる。したがって、その含有量は1.0%以下とする。Ni含有量は0.80%以下であるのが好ましい。上記効果を安定的に得るためには、Ni含有量を0.01%以上とすることが好ましく、0.02%とすることがより好ましい。
Crは耐食性を向上させる作用を有するので、必要に応じて含有させることができる。ただし、過剰に含有させると耐酸性が低下することから、塩化物が多い環境においては耐食性が低下する場合がある。一方、1.0%以下の含有量であれば耐酸性の低下は見られないことから、Cr含有量は1.0%以下とする。Cr含有量は0.80%以下であるのが好ましい。耐食性向上効果を安定的に得るためには、Cr含有量を0.01%以上とすることが好ましく、0.02%以上とすることがより好ましい。
Moは溶解して酸素酸イオンMoO4 2−の形でさびに吸着し、さび層中の塩化物イオンの透過を抑制する作用効果を有する元素であるので、必要に応じて含有させることができる。ただし、過剰に含有させると効果が飽和するだけでなく、鋼材のコストが大幅に上昇する。したがって、Mo含有量は1.0%以下とする。Mo含有量は0.70%以下であるのが好ましい。上記効果を安定的に得るためには、Mo含有量を0.01%以上とすることが好ましく、0.02%以上とすることがより好ましい。
WはMoと同様に、溶解して酸素酸イオンWO4 2−の形で存在し、さび層中の塩化物イオンの透過を抑制する作用効果を有する元素であるので、必要に応じて含有させることができる。ただし、過剰に含有させると効果が飽和するだけでなく、鋼材のコストが大幅に上昇する。したがって、W含有量は1.0%以下とする。W含有量は0.70%以下であるのが好ましい。上記効果を安定的に得るためには、W含有量を0.01%以上とすることが好ましく、0.02%以上とすることがより好ましい。
Sbは耐酸性を向上させる作用を有する元素であり、低pH環境において鋼のアノード溶解反応を抑制するとともに、水素ガス発生反応およびFe3+の還元反応を抑制することで塩化物環境における耐食性を向上させるので、必要に応じて含有させることができる。ただし、過剰に含有させると靱性が著しく劣化する。したがって、Sb含有量は0.20%以下とする。Sb含有量は0.15%以下であるのが好ましい。上記効果を安定的に得るためには、Sb含有量を0.01%以上とすることが好ましく、0.02%以上とすることがより好ましい。
Tiは硫化物の形成により腐食の起点となるMnSの形成を抑える作用効果を有する元素であるので、必要に応じて含有させることができる。ただし、過剰に含有させると効果が飽和するだけでなく鋼材のコストが上昇する。したがって、Ti含有量は0.20%以下とする。Ti含有量は0.15%以下であるのが好ましい。上記効果を安定的に得るためには、Ti含有量を0.001%以上とすることが好ましく、0.005%以上とすることがより好ましい。
ZrはTiと同様に、硫化物を形成することにより腐食の起点となるMnSの形成を抑える作用効果を有しているので、必要に応じて含有させることができる。ただし、過剰に含有させると効果が飽和するだけでなく鋼材のコストが上昇する。したがって、Zr含有量は0.20%以下とする。Zr含有量は0.15%以下であるのが好ましい。上記効果を安定的に得るためには、Zr含有量を0.001%以上とすることが好ましく、0.005%以上とすることがより好ましい。
Caは鋼中に酸化物の形で存在し、腐食反応部における界面のpHの低下を抑制して、腐食の促進を抑える作用を有しているので、必要に応じて含有させることができる。ただし、過剰に含有させると効果が飽和する。したがって、Ca含有量は0.010%以下とする。Ca含有量は0.0050%以下であるのが好ましい。上記効果を安定的に得るためには、Ca含有量を0.0002%以上とすることが好ましく、0.0005%以上とすることがより好ましい。
MgはCaと同様に、腐食反応部における界面のpHの低下を抑制するので、必要に応じて含有させることができる。ただし、過剰に含有させると効果が飽和する。したがって、Mg含有量は0.010%以下とする。Mg含有量は0.0050%以下であるのが好ましい。上記効果を安定的に得るためには、Mg含有量を0.0002%以上とすることが好ましく、0.0005%以上とすることがより好ましい。
Nbは鋼材の強度を上昇させる元素であるので、必要に応じて含有させることができる。ただし、過剰に含有させると効果が飽和するため、Nb含有量は0.10%以下とする。Nb含有量は0.050%以下であるのが好ましい。上記効果を安定的に得るためには、Nb含有量を0.001%以上とすることが好ましく、0.003%以上とすることがより好ましい。
VはNbと同様に鋼材の強度を上昇させる元素であり、また、MoおよびWと同様に、溶解して酸素酸イオンの形で存在しさび層中の塩化物イオンの透過を抑制する作用も有するので、必要に応じて含有させることができる。ただし、過剰に含有させると効果が飽和するばかりでなくコストが著しく上昇する。したがって、V含有量は0.50%以下とする。V含有量は0.30%以下であるのが好ましい。上記効果を安定的に得るためには、V含有量を0.005%以上とすることが好ましく、0.010%以上とすることがより好ましい。
Bは焼入性を向上させて強度を高める元素であるので、必要に応じて含有させることができる。ただし、過剰に含有させると強度を高める効果が飽和し、また、母材、HAZともに靱性劣化の傾向が著しくなる。したがって、B含有量は0.010%以下とする。上記効果を安定的に得るためには、B含有量を0.0003%以上とすることが好ましい。
REM(希土類元素)は鋼の溶接性を向上させる作用を有するので、必要に応じて含有させることができる。ただし、過剰に含有させると効果が飽和するため、REM含有量は0.010%以下とする。REM含有量は0.0050%以下であるのが好ましい。上記効果を安定的に得るためには、REM含有量を0.0002%以上とすることが好ましく、0.0005%以上とすることがより好ましい。
本発明に係る鋼材は、母材の表面の少なくとも一部に、厚さが0.5〜6.0nmの酸化Sn層を有する。上述のように、酸化Sn層を事前に形成しておくことによって、使用環境中での初期の腐食を抑制することが可能となる。
上記に説明した本発明の酸化Sn層を有する鋼材は、そのまま使用しても良好な耐食性を示す。しかし、その表面に防食処理を施した場合、具体的には有機樹脂または金属からなる防食被膜で表面を被覆した場合には、従来の鋼材に比べ防食被膜の耐久性が向上し、耐食性が一段と向上する。
本発明に係る鋼材は、鋼中にSnを含有する母材を、SnのUPDが生じる条件で水溶液に曝し、母材の表面に、厚さが4.5nm以下の金属Sn層を形成することによって製造することができる。形成された金属Sn層は、大気中の酸素と反応し、速やかに酸化Sn層となる。SnのUPDが生じる条件について具体的に説明する。
Claims (6)
- 母材の化学組成が、質量%で、
C:0.01〜0.20%、
Si:0.01〜1.0%、
Mn:0.01〜3.0%、
P:0.050%以下、
S:0.010%以下、
Sn:0.01〜2.0%、
Al:0.10%以下、
Cu:0〜1.0%、
Ni:0〜1.0%、
Cr:0〜1.0%、
Mo:0〜1.0%、
W:0〜1.0%、
Sb:0〜0.20%、
Ti:0〜0.20%、
Zr:0〜0.20%、
Ca:0〜0.010%、
Mg:0〜0.010%、
Nb:0〜0.10%、
V:0〜0.50%、
B:0〜0.010%、
REM:0〜0.010%、
残部:Feおよび不純物であり、
前記母材の表面の少なくとも一部に、厚さが0.5〜6.0nmの酸化Sn層を有する、
鋼材。 - 前記母材の化学組成が、質量%で、
Cu:0.02〜1.0%、
Ni:0.01〜1.0%、
Cr:0.01〜1.0%、
Mo:0.01〜1.0%、
W:0.01〜1.0%、
Sb:0.01〜0.20%、
Ti:0.001〜0.20%、
Zr:0.001〜0.20%、
Ca:0.0002〜0.010%、
Mg:0.0002〜0.010%、
Nb:0.001〜0.10%、
V:0.005〜0.50%、
B:0.0003〜0.010%、
REM:0.0002〜0.010%、
から選択される1種以上を含有する、
請求項1に記載の鋼材。 - 請求項1または請求項2に記載の化学組成を有する母材の表面に、厚さが4.5nm以下の金属Sn層を形成する工程を備える、
鋼材の製造方法。 - 前記金属Sn層を形成する工程において、前記母材をpHが3.0以下の水溶液に曝す、
請求項3に記載の鋼材の製造方法。 - 前記水溶液が、0.1〜2.0mol/Lの濃度の塩化物イオンを含有する、
請求項4に記載の鋼材の製造方法。 - 前記金属Sn層を形成する工程において、前記母材を前記水溶液に曝す時間が1分間以上である、
請求項3または請求項4に記載の鋼材の製造方法。
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