JP2018103123A - 防食塗装鋼材及びその製造方法、塗装鋼材の防食方法 - Google Patents

防食塗装鋼材及びその製造方法、塗装鋼材の防食方法 Download PDF

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Abstract

【課題】亜鉛合金を含まない無機ジンク系塗料を利用し、特殊な顔料やインヒビターの添加に比べて耐食性能を向上させた、防食塗装鋼材及びその製造方法、無機ジンク系塗料を塗布して塗膜を形成し、後処理によって耐食性能を向上させる塗装鋼材の防食方法を提供する。【解決手段】鋼材と、第一の層及び第二の層からなる被覆層を有する被覆鋼材であって、前記第一の層は前記鋼材の表面に形成されている、粒状の亜鉛を含む層であり、前記第二の層は、前記第一の層上に形成されている、マグネシウム、カルシウムの一方又は両方と、亜鉛の水酸化物とを含む層である。前記第二の層は、前記マグネシウム濃度及び前記カルシウムの濃度の合計が0.2質量%以上あり、前記被覆層の厚さは10μm以上、前記第一の層の厚さは1μm以上、前記第二の層の厚さは5μm以上である。【選択図】図1

Description

本発明は、粒状の亜鉛と無機系バインダとを含む無機ジンクリッチプライマーや無機ジンクリッチペイントなどの無機ジンク系塗料を塗布した防食塗装鋼材及びその製造方法、塗装鋼材の防食方法に関する。
粒状の亜鉛(亜鉛末)による犠牲防食を利用する無機ジンクリッチプライマーや無機ジンクリッチペイントなどの無機ジンク系塗料は、鋼材の防食塗装に用いられている。例えば、無機ジンクリッチプライマーは、鋼材の一次防錆に使用されている。
一方、船舶のバランストタンクなどの厳しい腐食環境に曝される場合や、長期に亘る防食作用等が求められる場合がある。しかし、このような要求に対して、亜鉛末の含有量を高めたり、塗膜の厚さを増加させると、鋼材との密着性や施工性が損なわれることがある。
このような問題に対し、Mgによって防食性能を高めた無機ジンク系塗料が提案されている(例えば、特許文献1〜6、参照。)。このうち、特許文献1及び2では、粒状のZn-Mg合金を含む無機ジンク系塗料が提案されている。一方、特許文献3〜6では、金属MgやMg化合物などを添加した無機ジンク系塗料が提案されている。
特開2000−80309号公報 特開2005−305303号公報 特開2007−191730号公報 特開2007−224344号公報 特開2012−91428号公報 特開2012−92404号公報
従来、無機ジンク系塗料にZn−Mg合金を使用したり、Mg化合物などを含む顔料やインヒビターを添加するなど、塗膜自体の防食性能の向上を目的とする検討が行われている。しかし、微細なZn−Mg合金は粉末の入手が困難である場合があり、汎用の無機ジンク系塗料の利用が望まれている。また、本発明者らの検討により、市販の無機ジンク系塗料に顔料として含まれているMg化合物は、厳しい腐食環境では耐食性の向上に寄与しないことがわかった。
一方、従来、通常の亜鉛末を含有する無機ジンク系塗料を塗布して塗膜を形成し、後処理によって耐食性能を向上させる検討は行われていない。本発明は、MgやCaを含有する亜鉛合金ではなく、通常の亜鉛末を含む無機ジンク系塗膜の耐食性能を簡便な方法で向上させた、防食塗装鋼材及びその製造方法、無機ジンク系塗料を塗布して塗膜を形成し、簡便な後処理によって耐食性能を向上させる塗装鋼材の防食方法の提供を課題とするものである。
発明者らは、鋼材の腐食環境因子の主原因である塩化物に対する耐食性向上を目的に、亜鉛合金を含まない汎用の無機ジンク系塗料を塗布した鋼材への各種の後処理により耐食性能を向上させる検討を鋭意実施した。その結果、鋼材の表面に無機ジンク系塗料を塗布して塗膜(無機ジンク系塗膜という。)を形成した後、マグネシウムイオン、カルシウムイオンの一方又は両方を含有する塩化物水溶液に浸漬し、乾燥させる後処理によって、赤さびの発生が著しく遅延し、耐食性を顕著に向上させる被覆層が形成されることを見出した。同様の効果は、無機ジンク系塗膜にマグネシウムイオン、カルシウムイオンの一方又は両方を含有する塩化物水溶液を塗布し、乾燥させる後処理によっても得られることがわかった。
そして、塩化物水溶液による後処理が施された無機ジンク系塗膜(被覆層)の表面には、マグネシウム、カルシウムの一方又は両方と、亜鉛の水酸化物とを含む腐食生成物が形成され、粒状の亜鉛の溶解を抑制し、長期に亘り、犠牲防食作用が発現することがわかった。ここで、亜鉛の水酸化物は、OH基を有するZn化合物であって、Zn(OH)、[2ZnCO・3Zn(OH)・HO]、[ZnSO・3Zn(OH)]、[ZnCl・3Zn(OH)]、[Zn(OH)Cl・HO]の1種又は2種以上である。
本発明はこのような知見に基づいてなされたものであり、その要旨は以下のとおりである。
[1] 鋼材と、被覆層とを有し、
前記被覆層は、前記鋼材の表面に形成されている前記第一の層と、前記第一の層上に形成されている第二の層とからなり、
前記第一の層は、粒状の亜鉛と無機系バインダとを含み、
前記第二の層は、マグネシウム、カルシウムの一方又は両方と、亜鉛の水酸化物とを含み、
前記マグネシウムの濃度と前記カルシウムの濃度との合計は0.2質量%以上であり、
前記被覆層の厚さの平均値は10μm以上であり、
前記第一の層の厚さの最小値は5μm以上であり、
前記第二の層の厚さの最小値は1μm以上である
ことを特徴とする防食塗装鋼材。
[2] 前記鋼材が、質量%で、
C:0.001%〜0.20%、
Mn:0.1〜3.0%
を含有し、更に、
Si:3.0%、
Al:2.0%以下
の一方又は両方を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなることを特徴とする上記[1]に記載の防食塗装鋼材。
[3] 前記鋼材が、更に、質量%で、
Cr:9.99%以下、
Cu:2.0%以下、
Ni:2.0%以下、
Mo:1.0%以下、
W:1.0%以下、
Sn:0.5%以下、
Sb:0.5%以下、
V:0.2%以下、
Nb:0.08%以下、
Ti:0.1%以下、
Mg:0.01%以下、
Zr:0.05%以下、
B:0.005%以下、
Ca:0.02%以下、
REM:0.02%以下、
Se:0.1%以下、
Hf:0.1%以下、
Sr:0.1%以下
の1種又は2種以上を含有し、
P:0.03%以下、
S:0.01%以下、
N:0.03%以下
に制限されたことを特徴とする上記[2]に記載の防食塗装鋼材。
[4] 鋼材の表面上に、粒状の亜鉛と無機系バインダとを含む無機ジンク系塗料を塗布して厚さが10μm以上の無機ジンク系塗膜を前記鋼材の表面の少なくとも一部に形成し、前記無機ジンク系塗膜の表面に、水溶性のMg化合物、水溶性のCa化合物の一方又は両方を、それぞれ、Mg換算濃度及びCa換算濃度の合計で0.3質量%以上含む塩化物水溶液を塗布するか、又は、前記無機ジンク系塗膜を形成した鋼材を前記塩化物水溶液中に浸漬し、その後、乾燥させることを特徴とする防食塗装鋼材の製造方法。
[5] 前記鋼材は、質量%で、
C:0.001%〜0.20%、
Mn:0.1〜3.0%
を含有し、更に、
Si:3.0%以下、
Al:2.0%以下
の一方又は両方を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなることを特徴とする[4]に記載の防食塗装鋼材の製造方法。
[6] 前記鋼材が、更に、質量%で、
Cr:9.99%以下、
Cu:2.0%以下、
Ni:2.0%以下、
Mo:1.0%以下、
W:1.0%以下、
Sn:0.5%以下、
Sb:0.5%以下、
V:0.2%以下、
Nb:0.08%以下、
Ti:0.1%以下、
Mg:0.01%以下、
Zr:0.05%以下、
B:0.005%以下、
Ca:0.02%以下、
REM:0.02%以下、
Se:0.1%以下、
Hf:0.1%以下、
Sr:0.1%以下
の1種又は2種以上を含有し、
P:0.03%以下、
S:0.01%以下、
N:0.03%以下
に制限されたことを特徴とする上記[5]に記載の防食塗装鋼材の製造方法。
[7] 鋼材の表面に、粒状の亜鉛と無機系バインダとを含む無機ジンク系塗料を塗布して厚さが10μm以上の無機ジンク系塗膜を前記鋼材の表面の少なくとも一部に形成し、前記無機ジンク系塗膜の表面に、水溶性のMg化合物、水溶性のCa化合物の一方又は両方を、それぞれ、Mg換算濃度及びCa換算濃度の合計で0.3質量%以上含む塩化物水溶液を塗布するか、又は前記無機ジンク系塗膜を表面に形成した鋼材を前記塩化物水溶液中に浸漬し、その後、乾燥させることを特徴とする塗装鋼材の防食方法。
[8] 前記鋼材は、質量%で、
C:0.001%〜0.20%、
Mn:0.1〜3.0%
を含有し、更に、
Si:3.0%以下、
Al:2.0%以下
の一方又は両方を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなることを特徴とする上記[7]に記載の塗装鋼材の防食方法。
[9] 前記鋼材が、更に、質量%で、
Cr:9.99%以下、
Cu:2.0%以下、
Ni:2.0%以下、
Mo:1.0%以下、
W:1.0%以下、
Sn:0.5%以下、
Sb:0.5%以下、
V:0.2%以下、
Nb:0.08%以下、
Ti:0.1%以下、
Mg:0.01%以下、
Zr:0.05%以下、
B:0.005%以下、
Ca:0.02%以下、
REM:0.02%以下、
Se:0.1%以下、
Hf:0.1%以下、
Sr:0.1%以下
の1種又は2種以上を含有し、
P:0.03%以下、
S:0.01%以下、
N:0.03%以下
に制限されたことを特徴とする上記[8]に記載の塗装鋼材の防食方法。
本発明によれば、亜鉛合金の粉末を使用することなく、特殊な顔料やインヒビターなどの添加と比較して、耐食性能を向上させた防食塗装鋼材及びその製造方法、亜鉛末を含む汎用の無機ジンク系塗料を塗布して塗膜を形成し、後処理によって耐食性能を向上させる塗装鋼材の防食方法の提供することができる。したがって、本発明は、汎用の無機ジンク系塗料の利用や、補修などによる塗装鋼材の耐食性能の向上などを可能にして、コストの削減に寄与することができるので、産業上の貢献が極めて顕著である。
耐食性に及ぼすマグネシウム、カルシウムの影響を説明する図である。 人工海水に浸漬した後の無機ジンク系塗膜に含まれる成分を電子線マイクロアナライザにて解析した画像である。 塩水に浸漬した後の無機ジンク系塗膜に含まれる成分を電子線マイクロアナライザにて解析した画像である。
本発明者らは、市販の無機ジンク系塗料を塗布した鋼材への後処理により耐食性能を向上させる検討を実施した。まず、日本ペイント製のJIS K 5553、1種の無機ジンク系塗料ニッペジンキ1000QC(登録商標)を鋼板の表面に塗布して無機ジンク系塗膜を形成した試料を準備した。これらの試料を、人工海水(3.5%NaCl、マグネシウムイオン、カルシウムイオンを含む)、又は、3.5%のNaCl水溶液(マグネシウムイオン、カルシウムイオンを含まない)に浸漬し、乾燥させて、耐食性に及ぼすマグネシウムイオン、カルシウムイオンの効果を検証した。
人工海水に浸漬した試料、及び、塩水(マグネシウムイオン、カルシウムイオンを含まない3.5%のNaCl水溶液)に浸漬した試料を硫酸ナトリウム溶液中にて、酸素飽和環境にてカソード分極測定を実施した。これらの試料のカソード分極曲線を図1に示す。両者を比較すると、人工海水に浸漬した(人工海水処理)試料は、塩水に浸漬した(塩水処理)試料に比べて、耐食性が向上していることがわかる。なお、無機ジンク系塗膜を形成した試料に特に処理を施さず、そのまま耐食性を評価した場合、塩水処理試料とほぼ同等の結果となっている。
次に、人工海水処理試料及び塩水処理試料の表面の板厚方向の断面を電子線マイクロアナライザ(Electron Probe Micro Analyzer、EPMA)で解析し、Zn、Mg、Ca、Siの濃度を測定した。結果を図2及び図3にそれぞれ示す。無機系バインダに含まれるSiが存在する部位は、無機ジンク系塗膜であり、その表面のSiが存在しない部位は亜鉛の水酸化物を含む腐食生成物である。
図2及び図3に示すように、人工海水処理試料及び塩水処理試料の表面には無機ジンク系塗膜の表面側に腐食生成物が存在している。ただし、図2に示されたCaの分布解析画像及びMgの分布解析画像と、図3に示されたCaの分布解析画像及びMgの分布解析画像とを比較すると、図2の方が表面側に明るい部分が多く存在しており、Mg、Caの濃度の高い部分は、人工海水処理試料の表面の方が、塩水処理試料の表面よりも明らかに多い。なお、人工海水処理試料及び塩水処理試料の両者とも、塗膜にMgが含まれているが、塩水処理試料の表面にはMgが見られず、人工海水処理試料に比べて耐食性が劣ることから、市販の無機ジンク系塗料に含まれるMgは耐食性に寄与しないと考えられる。
このように、分極曲線の比較から、無機ジンク系塗膜の表面に、マグネシウム、カルシウムの一方又は両方と、亜鉛の水酸化物とを含む腐食生成物が形成されていると、耐食性が向上することがわかった。この結果から、亜鉛の水酸化物を含む腐食生成物に、マグネシウム、カルシウムの一方又は両方を濃化させると、粒状の亜鉛の溶解が抑制され、長期に渡り、犠牲防食作用が発現すると考えられる。
(無機ジンク系塗料、無機ジンク系塗膜)
無機ジンク系塗膜は、鋼材の表面に無機ジンク系塗料を塗布することによって、鋼材の表面の少なくとも一部に形成される。本発明において使用される無機ジンク系塗料は、亜鉛合金の含有を必須とせずに、粒状の亜鉛(亜鉛末)とシリケートなどの無機系バインダを含む無機ジンクリッチプライマーや無機ジンクリッチペイントを利用することができる。前記無機ジンクリッチプライマーとして、JIS K 5552のジンクリッチプライマーが好ましい。また、前記無機ジンクリッチペイントとして、JIS K 5553のジンクリッチペイントが好ましい。そして、鋼材の表面に無機ジンク系塗料を塗布して形成させた塗膜は、水分や酸素が、シリケートのバインダを容易に透過することが可能である。一方、有機系ジンク塗料は、水分が塗膜を透過せず、マグネシウムやカルシウムの効果が発現しないため、本発明から除外する。
(無機ジンク系塗膜の厚さ)
無機ジンク系塗膜の厚さの平均値は、10μm以上であることが必要である。厚さが10μm未満の無機ジンク系塗膜を形成しても、亜鉛末の含有量が不足して、十分な防食性能が得られない。好ましくは、前記無機ジンク系塗膜の厚さを15μm以上、より好ましくは30μm以上、更に好ましくは70μm以上とする。前記無機ジンク系塗料組成物含有層の厚さの上限は、乾燥に要する時間などの施工性の観点から、300μm以下が好ましい。より好ましくは150μm以下とする。前記無機ジンク系塗料組成物含有層の厚さは、断面の5箇所をSEMによって観察し、平均値として測定することができる。
(被覆層、第一の層、第二の層)
無機ジンク系塗料を塗布して鋼材の表面に形成した無機ジンク系塗膜に、Mg化合物、Ca化合物の一方又は両方を溶解させた塩化物水溶液を塗布するか、又は、これらを含有させた塩化物水溶液中に塗装鋼材を浸漬する。その結果、無機ジンク系塗膜は、表面にマグネシウム、カルシウムの一方又は両方を含む腐食生成物が形成された被覆層となる。即ち、被覆層は、鋼材の表面上に形成されている、粒状の亜鉛及び無機系バインダを含む第一の層と、第一の層上に形成されている、マグネシウム、カルシウムの一方又は両方と、亜鉛の水酸化物とを含む第二の層とからなる。
第一の層は、鋼材の表面上に形成されている、粒状の亜鉛及び無機系バインダを含む層であって、上述の無機ジンク系塗膜と同等の層であり、優れた耐食性を得るために、厚さの最小値が5μm以上であることを必要とする。第二の層は、第一の層上に形成されている腐食生成物であって、優れた耐食性を得るために、厚さの最小値が1μm以上であることが必要である。第一の層及び第二の層の厚さは、断面の5箇所をSEMによって観察し、最小値として測定することができる。
なお、被覆層の厚さは平均値であり、無機ジンク系塗膜と同様に、10μm以上にする必要があり、好ましい下限値及び上限値も無機ジンク系塗膜と同様である。ここで、第一の層及び第二の層の厚さにはばらつきがあるため、合計の厚さは被覆層の厚さの平均値と同等にならない場合がある。特に、鋼材の表面に前処理としてブラスト処理が施されると、第一の層の厚さの最小値は、鋼材の表面の凹凸の影響を受け、平均値よりも小さく評価される。そのため、第一の層の厚さの最小値と第二の層の厚さの最小値との合計は、被覆層の厚さの平均値に比べて、2〜5μm程度薄くなる場合がある。但し、前記ブラスト処理を行った場合も、前記被覆層の厚さの平均値は10μm以上であれば良い。
第一の層及び第二の層の切断面を走査型電子顕微鏡(SEM)によって観察し、電子線マイクロアナライザー(Electron Probe MicroAnalyzer、EPMA)を用いて、Mg、Ca、Zn、Siの濃度分布を測定すると、無機バインダに含まれるSiの分布が見られる層が第一の層であり、更に第一の層上に形成されたSiの分布が見られない層が第二の層である。第一の層には、顔料に含まれるMgの分布が見られる場合がある。そして、第二の層にマグネシウムやカルシウムが存在していることが本発明の防食塗装鋼材の特徴である。
(第二の層に含まれるマグネシウム、カルシウムの一方又は両方の濃度)
第二の層において、マグネシウム濃度及びカルシウム濃度の合計が0.2質量%以上であると、マグネシウム、カルシウムによる防食性能の向上の効果が得られる。好ましくは、0.5質量%以上とする。第二の層は、マグネシウム濃度が0.0質量%となり、カルシウム濃度が0.2質量%以上となるように形成されていても良い。或いは、カルシウム濃度が0.0質量%となり、マグネシウム濃度が0.2質量%以上となるように第二の層が形成されていても良い。マグネシウム濃度、カルシウム濃度は高いほど好ましいが、マグネシウム、カルシウムを濃化させるには亜鉛末の腐食を促進させることが必要であり、亜鉛末の含有量が相対的に低下するので、耐食性を確保するために、マグネシウム濃度及びカルシウム濃度の合計を2.0質量%以下にすることが好ましい。より好ましくは1.5質量%以下とする。
Mg化合物、Ca化合物の一方又は両方を溶解させた塩化物水溶液を無機ジンク系塗膜に接触させた場合、無機ジンク系塗膜の表面に第二の層が形成される。第二の層の厚さは、1μmであれば耐食性が向上するため、防食塗装鋼材の最表面から厚さ方向に1μmの位置で、マグネシウム及びカルシウムの濃度を測定する。防食塗装鋼材の最表面から厚さ方向に1μmの位置で、マグネシウム及びカルシウムの濃度の合計が0.2質量%以上であれば、第二の層の表面から厚さ方向に1μmまでの厚さ部分も前記マグネシウム及び前記カルシウムの濃度の合計が0.2質量%以上になっている。第二の層に含まれるマグネシウム濃度及びカルシウム濃度の合計量の測定方法は特に限定されない。例えば、EPMAを用いてもマグネシウム及びカルシウムの濃度測定を行っても良い。
次に鋼材成分の範囲について具体的に説明する。
鋼材に含まれる主要な元素であるC、Mnの含有量は、以下の範囲が好ましく、更に、脱酸剤として、Si、Alの一方又は両方を含んでもよい。
(C:0.001〜0.20%)
Cは、鋼材の強度の向上に有効な元素である。強度を維持するため、C量は、0.001%以上とすることが好ましい。C量は、0.005%以上がより好ましく、0.01%以上が更に好ましい。一方、C量が0.20%を超えると、溶接性や靭性が低下することがあるため、上限を0.20%とすることが好ましい。C量は、溶接性を考慮すると、0.15%以下がより好ましく、加工性の点から、0.10%以下が更に好ましい。
(Mn:0.1〜3.0%)
Mnは、鋼の組織制御に有効な元素であり、0.1%以上を含有させることが好ましい。また、組織制御を安定的に行うためには、0.5%以上のMnを含有させることがより好ましい。一方、Mn量が3.0%を超えると、延性が低下する場合があるため、上限を3.0%とすることが好ましい。また、圧延などの製造性を考慮すると、Mn量は2.5%以下がより好ましい。
(Si:3.0%以下)
Siは、脱酸剤として作用し、また、強度の向上に有効な元素であるため、含有させてもよい。Si量が3.0%を超えると、延性が低下するため、上限を3.0%とすることが好ましい。また、鋼材の溶接性や靭性を考慮すると、Si量は0.5%以下がより好ましい。Alを脱酸剤として使用する場合はSiを含有させる必要はなく、Si量は0%でもよい。Siを含有させる場合、Si量が0.01%未満では、脱酸が不充分になる場合があるため、下限を0.01%とすることが好ましい。また、脱酸をより安定的に行うためには、Si量は0.05%以上がより好ましい。
(Al:2.0%以下)
Alは、脱酸剤として用いられ、鋼の耐食性を更に向上させるために、必要に応じて含有させてもよい。Al量が2.0%を超えると、鋳片の冷却過程で変態が起きず、フェライト単相組織となって、鋳片割れが生じることがあるため、上限を2.0%とすることが好ましい。Al量は、より好ましくは1.5%以下である。Siを脱酸剤として使用する場合はAlを含有させる必要はなく、Al量は0%でもよい。鋼の耐食性を更に向上させるためには、0.002%以上のAlを含有させることが好ましく、0.01%以上を含有させることがより好ましい。また、Al量は、0.02%以上とすることが更に好ましい。
本発明で用いられる鋼材には、鋼材の耐食性を更に向上させるため、Cr、Cu、Ni、Mo、W、Sn及びSbの1種又は2種以上を選択的に添加してもよい。以下に、Cr、Al、Cu、Ni、Mo、W、Sn及びSbの添加量を限定する理由について説明する。
(Cr:9.99%以下)
Crは、鋼材の耐食性の向上に有効であり、必要に応じて添加してもよい。Cr量の下限は特に規定するものではなく、0%でもよいが、本発明では、無機ジンク系塗料組成物含有層と鋼材との相互作用によって顕著な耐食性向上効果を得るため、0.1%以上を添加することが好ましい。Cr量は、0.5%以上が好ましく、1%以上がより好ましい。一方、Cr量が9.99%を超えると、鋳片の冷却過程で変態が起きず、フェライト単相組織となって、鋳片割れが生じるため、上限を9.99%とする。また、Cr量は、合金コスト低減のため、8%以下が好ましく、6.5%以下がより好ましい。Cr量は、溶接性等を考慮して、5%以下、4%以下又は3%以下に制限してもよい。
(Cu:2.0%以下)
Cuは、鋼の耐食性を向上させる元素であるため、必要に応じて添加してもよい。一方、Cu量が2.0%を超えると、鋼材が脆化することがあるため、上限を2.0%とすることが好ましい。Cu量は、より好ましくは0.5%以下である。Cu量の下限は特に規定するものではなく、0%でもよいが、鋼の耐食性を安定的に向上させるためには、0.05%以上を添加することが好ましい。また、Cuは、強度を改善するとともに、鋳片割れを防止する元素でもあるため、Cu量は、0.10%以上とすることがより好ましい。
(Ni:2.0%以下)
Niは、鋼の耐食性を向上させる元素であり、また、Cuを添加する場合にはNiを同時に添加すると製造性の劣化を防止することができる。一方で、Niは高価な元素であり、上記の効果は2.0%を超えてNiを添加すると飽和することから、上限を2.0%とすることが好ましい。Ni量は、より好ましくは0.5%以下であり、更に好ましくは0.3%以下である。また、Ni量の下限は特に規定するものではなく、0%でもよいが、上記の効果を安定的に得るためには、0.05%以上を添加することが好ましく、0.10%以上を添加することがより好ましい。
(Mo:1.0%以下、W:1.0%以下)
Mo及びWは、鋼の耐食性を向上させる元素であり、必要に応じて添加してもよい。一方、Mo及びWは、1.0%を超えて添加しても効果が飽和するため、上限を1.0%とすることが好ましく、より好ましくは0.5%以下とする。Mo量及びW量は、より好ましくはそれぞれ0.3%以下である。Mo量及びW量の下限は特に規定するものではなく、0%でもよいが、鋼の耐食性を安定的に向上させるためには、それぞれ0.01%以上を添加することが好ましく、0.03%以上を添加することがより好ましい。
(Sn:0.5%以下、Sb:0.5%以下)
Sn及びSbは、鋼の耐食性を向上させる元素であり、必要に応じて添加してもよい。一方、Sn及びSbは、過剰に添加すると製造性や機械特性を損なう場合があるため、Sn量及びSb量の上限を、それぞれ0.5%とすることが好ましい。Sn量及びSb量は、より好ましくはそれぞれ0.2%以下である。Sn量及びSb量の下限は特に規定するものではなく、0%でもよいが、鋼の耐食性を安定的に向上させるためには、それぞれ0.01%以上を添加することが好ましく、0.05%以上を添加することがより好ましい。
本発明で用いられる鋼材には、機械特性、使用性能、製造安定性等の向上の観点から、更に、V、Nb、Ti、Mg、Zr、B、Ca及びREMの1種又は2種以上を選択的に添加してもよい。
(V:0.2%以下)
Vは、機械特性、使用性能、製造安定性を向上させる元素であり、必要に応じて添加してもよい。一方、Vを過剰に添加すると耐発錆性を損なう可能性があるため、V量の上限を0.2%とすることが好ましい。V量は、より好ましくは0.1%以下、更に好ましくは0.05%以下である。V量の下限は特に規定するものではなく、0%でもよいが、鋼材の諸特性を安定的に向上させるためには、0.005%以上を添加することが好ましく、0.01%以上を添加することがより好ましい。
(Nb:0.08%以下)
Nbは、機械特性、使用性能、製造安定性を向上させる元素であり、必要に応じて添加してもよい。一方、Nbを過剰に添加すると耐発錆性を損なう可能性があるため、Nb量の上限を0.08%とすることが好ましい。Nb量は、より好ましくは0.03%以下である。Nb量の下限は特に規定するものではなく、0%でもよいが、鋼材の諸特性を安定的に向上させるためには、0.002%以上を添加することが好ましく、0.005%以上を添加することがより好ましい。
(Ti:0.1%以下)
Tiは、機械特性、使用性能、製造安定性を向上させる元素であり、必要に応じて添加してもよい。一方、Tiを過剰に添加すると耐発錆性を損なう可能性があるため、Ti量の上限を0.1%とすることが好ましい。Ti量は、より好ましくは0.03%以下である。Ti量の下限は特に規定するものではなく、0%でもよいが、鋼材の諸特性を安定的に向上させるためには、0.005%以上を添加することが好ましく、0.01%以上を添加することがより好ましい。
(Mg:0.01%以下)
Mgは、機械特性、使用性能、製造安定性を向上させる元素であり、必要に応じて添加してもよい。一方、Mgを過剰に添加すると耐発錆性を損なう可能性があるため、Mg量の上限を0.01%とすることが好ましい。Mg量は、より好ましくは0.002%以下である。Mg量の下限は特に規定するものではなく、0%でもよいが、鋼材の諸特性を安定的に向上させるためには、0.0001%以上を添加することが好ましく、0.0005%以上を添加することがより好ましい。
(Zr:0.05%以下)
Zrは、機械特性、使用性能、製造安定性を向上させる元素であり、必要に応じて添加してもよい。一方、Zrを過剰に添加すると耐発錆性を損なう可能性があるため、Zr量の上限を0.05%とすることが好ましい。Zr量は、より好ましくは0.02%以下である。Zr量の下限は特に規定するものではなく、0%でもよいが、鋼材の諸特性を安定的に向上させるためには、0.003%以上を添加することが好ましく、0.005%以上を添加することがより好ましい。
(B:0.005%以下)
Bは、機械特性、使用性能、製造安定性を向上させる元素であり、必要に応じて添加してもよい。一方、Bを過剰に添加すると耐発錆性を損なう可能性があるため、B量の上限を0.005%とすることが好ましい。B量は、より好ましくは0.002%以下である。B量の下限は特に規定するものではなく、0%でもよいが、鋼材の諸特性を安定的に向上させるためには、0.0002%以上を添加することが好ましく、0.0005%以上を添加することがより好ましい。
(Ca:0.02%以下)
Caは、機械特性、使用性能、製造安定性を向上させる元素であり、必要に応じて添加してもよい。一方、Caを過剰に添加すると耐発錆性を損なう可能性があるため、Ca量の上限を0.02%とすることが好ましい。Ca量は、より好ましくは0.003%以下である。Ca量の下限は特に規定するものではなく、0%でもよいが、鋼材の諸特性を安定的に向上させるためには、0.0002%以上を添加することが好ましく、0.0005%以上を添加することがより好ましい。
(REM:0.02%以下)
REMは、機械特性、使用性能、製造安定性を向上させる元素であり、必要に応じて添加してもよい。REMは、希土類金属(Rare Earth Metals)を表しており、原子番号57のLaから原子番号71までの、いわゆるランタノイド元素に対応する。本実施形態では、REMに属する一種類の元素の単体や化合物を添加してもよいし、複数種類のREMを含有する混合物を添加してもよい。このような混合物としては、Ce、La、Nd等を主成分とするミッシュメタルを挙げることができる。
一方、REMを過剰に添加すると耐発錆性を損なう可能性があるため、REM量の上限を0.02%とすることが好ましい。REM量は、より好ましくは0.01%以下である。REM量の下限は特に規定するものではなく、0%でもよいが、鋼材の諸特性を安定的に向上させるためには、0.0002%以上を添加することが好ましく、0.0005%以上を添加することがより好ましい。
本発明で用いられる鋼材には、耐食性の向上の観点から、更に、Se、Hf、Srの1種又は2種以上を選択的に添加してもよい。
(Se:0.1%以下、Hf:0.1%以下、Sr:0.1%以下)
Se、Hf及びSrは、耐食性向上に有効な元素であり、必要に応じて添加してもよい。一方、Se、Hf及びSrを過剰に添加すると製造性や機械特性を損なう場合があるため、Se、Hf及びSrの含有量の上限を、それぞれ0.1%とすることが好ましく、より好ましくは0.05%以下とする。Se、Hf及びSrの含有量の下限は特に規定するものではなく、0%でもよいが、鋼材の耐食性を安定的に向上させるためには、それぞれ0.0002%以上を添加することが好ましく、0.0005%以上を添加することがより好ましい。
なお、上述の選択元素(Cr、Al、Cu、Ni、Mo、W、Sn、Sb、V、Nb、Ti、Mg、Zr、B、Ca、REM、Se、Hf及びSr)の添加量は、鋼材質量に対して、添加する元素の合計で0.004〜1.5%とすることがより好ましく、更に好ましくは0.01〜0.5%とする。
本発明で用いられる鋼材では、上記の元素以外の残部は、Fe及び不可避的不純物である。かかる不可避的不純物としては、例えば、P、S、N等を挙げることができ、鋼材の耐発錆性の向上を妨げない範囲で許容される。
(P:0.03%以下)
P量は、0.03%を超えると、靭性や延性が低下する場合があるため、上限を0.03%に制限することが好ましい。より好ましいP量の上限は、0.01%である。一方、P量を0.001%未満に低減すると製造コストが上昇するため、P量は0.001%以上が好ましい。
(S:0.01%以下)
S量は、0.01%を超えると、靭性や延性が低下したり、熱間加工性を損なったりする場合があるため、上限を0.01%に制限することが好ましい。より好ましいS量の上限は、0.003%である。一方、S量を0.0001%未満に低減すると製造コストが上昇するため、S量は0.0001%以上が好ましい。
(N:0.03%以下)
N量は、0.03%を超えると、靭性や延性が低下する場合があるため、上限を0.03%に制限することが好ましい。より好ましいN量の上限は、0.01%であり、更に好ましくは0.006%とする。一方、N量を0.001%未満に低減すると製造コストが上昇するため、N量は0.001%以上が好ましい。
本発明で用いられる鋼材は、一般的な製造工程(例えば、鋳造、加熱・圧延、冷延、及び、必要に応じた熱処理)を経て製造される。すなわち、本発明では、溶鋼を鋳造して鋼片とし、次いで、熱間圧延、冷間圧延などを施し、必要に応じて熱処理を施し、鋼板、鋼帯、形鋼、鋼管、棒鋼、鋼線等の形状で、通常の一般的な製鉄工程を経て製造される鋼材を用いることができる。また、本発明では、かかる鋼材を用いて構築した溶接構造や鋼構造物についても用いることができる。鋼材の厚さは特に限定されないが、通常3〜50mmである。
(防食塗装鋼材の製造方法、防食方法)
鋼材の表面上には、粒状の亜鉛を含む前記無機ジンク系塗料が、乾燥後の塗膜の厚さが10μm以上になるように塗布される。好ましくは塗膜の厚さを25μm以上とし、より好ましくは50μm以上とする。塗膜は厚いほど耐食性が向上するため、厚さの上限は規定しないが、作業性の観点から200μm以下が好ましい。より好ましくは150μm以下、更に好ましくは100μm以下とする。尚、無機ジンク系塗料の乾燥方法は、特に限定されず、室温下で放置することにより前記無機ジンク系塗料を乾燥しても良い。また、無機ジンク系塗料を塗布する前に、鋼材の表面に、密着性の向上を目的とするショットブラスト処理を施してもよい。ショットブラスト処理は、ISO 8501−1の除せい度がSa2.5(JIS Z 0313のSa2 1/2)以上になるように施すことが好ましい。
前記のようにして表面に無機ジンク系塗料の塗膜が形成された鋼材を、Mg化合物又はCa化合物を溶解させた塩化物溶液中に、浸漬することにより、マグネシウムやカルシウムと、亜鉛の水酸化物とを含有する第二の層を形成させても良い。前記のようにして鋼材の表面に形成された無機ジンク系塗料の塗膜に、Mg化合物及び/又はCa化合物を溶解させた塩化物溶液を塗布しても良い。
尚、無機ジンク系塗料に含まれる亜鉛末は、強酸性又は強アルカリ性の溶液中では溶解速度が著しく増加するため、マグネシウムイオン、カルシウムイオンを含む塩化物水溶液のpHは弱酸性から弱アルカリ性の範囲が望ましい。Mg化合物やCa化合物は、水溶性であること、即ち、中性のpH領域において水溶液に対して十分な溶解度を有することが必要となる。また、水に溶解させた際に塩化物溶液となるMg化合物として塩化マグネシウム、Ca化合物として塩化カルシウム溶液が好ましい。
また、亜鉛末を含む無機ジンク系塗料を塗布した後に、Mg化合物、及び/又は、Ca化合物を溶解させた溶液を塗布又は溶液中に鋼材を浸漬する場合、溶液中のマグネシウムイオン、Caイオンの合計は、0.3質量%以上とすることが必要である。好ましくは1.0質量%以上、より好ましくは2.0%質量%以上、更に好ましくは3.0質量%以上とする。溶液中のMgイオン、Caイオンの合計が0.3質量%未満であると、十分な耐食性の向上の効果を得ることができない。マグネシウムイオン、カルシウムイオンの濃度の上限は規定せず、水溶液の飽和マグネシウムイオン濃度、飽和カルシウムイオン濃度とする。好ましくは15.0質量%以下、より好ましくは10.0質量%以下、更に好ましくは5.0質量%以下とする。
尚、Mg化合物、Ca化合物を溶解させた塩化物水溶液を塗布又は溶液中に鋼材を浸漬後、当該鋼材を乾燥する方法は特に限定されない。室温或いは温水程度の温度にて、前記鋼材を乾燥しても良い。
表1に示す成分の鋼を溶製し、鋼塊に熱間圧延を施して厚さが10mmの鋼板を製造した。得られた鋼板から試験片を採取し、表面にショットブラスト処理を施して除せい度をSa2.5(ISO 8501−1)に調整した後、日本ペイント製のJIS K 5553、1種の無機ジンクリッチ塗料(ニッペジンキ1000QC:登録商標)を表2に示す厚さで塗布した。乾燥後、試料を採取し、無機系ジンク塗膜の断面をSEMで観察し、5箇所の厚さの平均値を求めた。
次に、純水中に塩化マグネシウム試薬及び/又は塩化カルシウムを溶解させ、表2に示す濃度のMgイオン及び/又はカルシウムイオンを含む溶液を作製した。これらの溶液を、室温で、試験片の表面に噴霧した。乾燥後、試料を採取し、断面をSEMで観察して、被覆層の厚さの平均値、第一の層の厚さ及び第二の層の厚さの最小値を測定した。また、被覆層の表層側からMg、Ca、Zn、Siの濃度分布をEPMAで測定し、1μmの位置のMg濃度を求めた。EPMAによる前記測定後、試験片を蒸留水で洗浄し、塗膜の表面に5質量%濃度の塩化ナトリウム水溶液での噴霧試験にて、25℃で保持して赤錆が発生するまでの時間を計測した。
前記塗膜の表面に水溶液処理をしていない試験片(基準試験片)についても、同様に塩化ナトリウム水溶液での噴霧試験を実施して、赤錆が発生するまでの時間を計測し、耐食性の評価の基準とし、これに対する赤錆発生に要した日数の比を腐食比として求めた。その結果を表2に示す。「第1層の厚さ」及び「第2層の厚さ」は、それぞれ、第一の層の厚さの最小値及び第二の層の厚さの最小値であり、表2の「塗膜の厚さ」は、無機ジンク系塗膜の厚さの平均値である。被覆層の厚さの平均値は、無機ジンク系塗膜の厚さの平均値とほぼ同等であるので、記載を省略した。
表2に示したように、無機ジンク塗料を塗布して形成された塗膜の表面から1μmの位置において、マグネシウムイオン、カルシウムイオンの合計が0.2質量%以上である場合に、腐食比が増加し、高耐食性がもたらされることがわかる。このように、表2に示した結果、及び、上述の人工海水によって後処理を行った検討の結果から、MgCl溶液、CaCl溶液や、MgClとCaClとを混合した溶液を用いて後処理を行った場合、高耐食性がもたらされると考えられる。
本発明は、汎用の無機ジンク系塗料の利用や、補修などによる塗装鋼材の耐食性能の向上などを可能にして、コストの削減に寄与することができる。

Claims (9)

  1. 鋼材と、被覆層とを有し、
    前記被覆層は、前記鋼材の表面に形成されている第一の層と、前記第一の層上に形成されている第二の層とからなり
    前記第一の層は、粒状の亜鉛と無機系バインダを含み、
    前記第二の層は、マグネシウム、カルシウムの一方又は両方と、亜鉛の水酸化物とを含み、前記マグネシウムの濃度と前記カルシウムの濃度との合計は0.2質量%以上あり、
    前記被覆層の厚さの平均値は10μm以上であり、
    前記第一の層の厚さの最小値は5μm以上であり、
    前記第二の層の厚さの最小値は1μm以上である
    ことを特徴とする防食塗装鋼材。
  2. 前記鋼材が、質量%で、
    C:0.001%〜0.20%、
    Mn:0.1〜3.0%
    を含有し、更に、
    Si:3.0%以下、
    Al:2.0%以下
    の一方又は両方を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1に記載の防食塗装鋼材。
  3. 前記鋼材が、更に、質量%で、
    Cr:9.99%以下、
    Cu:2.0%以下、
    Ni:2.0%以下、
    Mo:1.0%以下、
    W:1.0%以下、
    Sn:0.5%以下、
    Sb:0.5%以下、
    V:0.2%以下、
    Nb:0.08%以下、
    Ti:0.1%以下、
    Mg:0.01%以下、
    Zr:0.05%以下、
    B:0.005%以下、
    Ca:0.02%以下、
    REM:0.02%以下、
    Se:0.1%以下、
    Hf:0.1%以下、
    Sr:0.1%以下
    の1種又は2種以上を含有し、
    P:0.03%以下、
    S:0.01%以下、
    N:0.03%以下
    に制限されたことを特徴とする請求項2に記載の防食塗装鋼材。
  4. 鋼材の表面上に、粒状の亜鉛と無機系バインダとを含む無機ジンク系塗料を塗布して厚さが10μm以上の無機ジンク系塗膜を前記鋼材の表面の少なくとも一部に形成し、前記無機ジンク系塗膜の表面に、水溶性のMg化合物、水溶性のCa化合物の一方又は両方を、それぞれ、Mg換算濃度及びCa換算濃度の合計で0.3質量%以上含む塩化物水溶液を塗布するか、又は、前記無機ジンク系塗膜を表面に形成した鋼材を前記塩化物水溶液中に浸漬し、その後、乾燥させることを特徴とする防食塗装鋼材の製造方法。
  5. 前記鋼材は、質量%で、
    C:0.001%〜0.20%、
    Mn:0.1〜3.0%
    を含有し、更に、
    Si:3.0%、
    Al:2.0%以下
    の一方又は両方を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなることを特徴とする請求項4に記載の防食塗装鋼材の製造方法。
  6. 前記鋼材が、更に、質量%で、
    Cr:9.99%以下、
    Cu:2.0%以下、
    Ni:2.0%以下、
    Mo:1.0%以下、
    W:1.0%以下、
    Sn:0.5%以下、
    Sb:0.5%以下、
    V:0.2%以下、
    Nb:0.08%以下、
    Ti:0.1%以下、
    Mg:0.01%以下、
    Zr:0.05%以下、
    B:0.005%以下、
    Ca:0.02%以下、
    REM:0.02%以下、
    Se:0.1%以下、
    Hf:0.1%以下、
    Sr:0.1%以下
    の1種又は2種以上を含有し、
    P:0.03%以下、
    S:0.01%以下、
    N:0.03%以下
    に制限されたことを特徴とする請求項5に記載の防食塗装鋼材の製造方法。
  7. 鋼材の表面に、粒状の亜鉛と無機系バインダとを含む無機ジンク系塗料を塗布して厚さが10μm以上の無機ジンク系塗膜を前記鋼材の表面の少なくとも一部に形成し、前記無機ジンク系塗膜の表面に、水溶性のMg化合物、水溶性のCa化合物の一方又は両方を、それぞれ、Mg換算濃度及びCa換算濃度の合計で0.3質量%以上含む塩化物水溶液を塗布するか、又は、前記無機ジンク系塗膜を表面に形成した鋼材を前記塩化物水溶液中に浸漬させ、その後、乾燥させることを特徴とする塗装鋼材の防食方法。
  8. 前記鋼材は、質量%で、
    C:0.001%〜0.20%、
    Mn:0.1〜3.0%
    を含有し、更に、
    Si:3.0%以下、
    Al:2.0%以下
    の一方又は両方を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなることを特徴とする請求項7に記載の塗装鋼材の防食方法。
  9. 前記鋼材が、更に、質量%で、
    Cr:9.99%以下、
    Cu:2.0%以下、
    Ni:2.0%以下、
    Mo:1.0%以下、
    W:1.0%以下、
    Sn:0.5%以下、
    Sb:0.5%以下、
    V:0.2%以下、
    Nb:0.08%以下、
    Ti:0.1%以下、
    Mg:0.01%以下、
    Zr:0.05%以下、
    B:0.005%以下、
    Ca:0.02%以下、
    REM:0.02%以下、
    Se:0.1%以下、
    Hf:0.1%以下、
    Sr:0.1%以下
    の1種又は2種以上を含有し、
    P:0.03%以下、
    S:0.01%以下、
    N:0.03%以下
    に制限されたことを特徴とする請求項8に記載の塗装鋼材の防食方法。
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