JP2012214871A - 耐食性に優れたさび層付き鋼材 - Google Patents
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Abstract
【課題】塩分に富む高湿潤環境下に曝される部位に無塗装で使用できる塩化物イオン遮断性に優れたさび層付き鋼材を提供する。
【解決手段】本発明のさび層付き鋼材は、素地鋼材の表面にさび層を形成してなるさび層付き鋼材において、該さび層は、Wと、NbおよびSnのうちから選ばれる1種又は2種とを含み、WとNbのみを含有する場合には、該さび層中のW濃度およびNb濃度を、最大値にして、それぞれ0.2以上および0.03以上とし、また、WとSnのみを含有する場合には、該さび層中のW濃度およびSn濃度を、最大値にして、それぞれ0.2以上および0.015以上とし、さらに、W、NbおよびSnの全てを含有する場合には、該さび層中のW濃度、Nb濃度およびSn濃度を最大値にして、それぞれ0.2以上、0.01以上および0.005以上とする。
【選択図】図1
【解決手段】本発明のさび層付き鋼材は、素地鋼材の表面にさび層を形成してなるさび層付き鋼材において、該さび層は、Wと、NbおよびSnのうちから選ばれる1種又は2種とを含み、WとNbのみを含有する場合には、該さび層中のW濃度およびNb濃度を、最大値にして、それぞれ0.2以上および0.03以上とし、また、WとSnのみを含有する場合には、該さび層中のW濃度およびSn濃度を、最大値にして、それぞれ0.2以上および0.015以上とし、さらに、W、NbおよびSnの全てを含有する場合には、該さび層中のW濃度、Nb濃度およびSn濃度を最大値にして、それぞれ0.2以上、0.01以上および0.005以上とする。
【選択図】図1
Description
本発明は、主に橋梁などの屋外で用いられる鋼構造物に関し、特に海岸沿いや海岸近傍の地域(以下、単に「海岸地域」いう。)などのように、高塩分が存在する厳しい腐食環境下であっても、無塗装で耐食性(裸耐食性ともいう。)に優れたさび層付き鋼材に関する。
従来から、橋梁などの屋外で用いられる鋼構造物においては、耐候性鋼が用いられている。耐候性鋼は、大気暴露環境において、Cu、P、Cr、Niなどの合金元素が濃化した保護性の高いさび層に表面が覆われることにより、腐食速度を著しく低下させた鋼材である。その優れた耐候性により、耐候性鋼を使用した橋梁は、通常、無塗装のまま数十年間の使用に耐えることが知られている。しかしながら、海岸地域などのように、飛来塩分量が多い、厳しい腐食環境下では、上記保護性の高いさび層は鋼表面に生成しにくく、実用的な耐候性が得難いという問題がある。
非特許文献1によれば、従来の耐候性鋼(JIS G 3114:溶接構造用耐候性熱間圧延鋼材)は、飛来塩分量が0.05 mg・NaCl/dm2/day(以降、単位表示「mg・NaCl/dm2/day」を、単に「mdd」として簡略表記する場合がある。)以下の地域でのみ、無塗装での使用が可能であるとしている。
従って、海岸地域などの飛来塩分量が多い、厳しい腐食環境下では、普通鋼材(JIS G 3106:溶接構造用圧延鋼材)の表面に塗装等の防食措置を施して使用するのが一般的である。
しかしながら、塗装は、時間の経過とともに塗膜が劣化し、定期的な補修が必要となり、加えて、人件費が高騰するとともに、再塗装するのが困難であるという問題がある。このような理由から、現在、飛来塩分量が多い、厳しい腐食環境下においても、無塗装で使用可能な鋼材を開発することが強く求められようになってきた。
このような現状に対して、近年、海岸地域などの高飛来塩分量が多い、厳しい腐食環境下においても無塗装で使用可能な鋼材として、種々の合金元素、特にNiを多量に含有させた鋼材が開発されている。
例えば、特許文献1では、耐候性向上元素として、Cuと1%以上のNiを添加した高耐候性鋼材が開示されている。また、特許文献2では、1%以上のNiとMoを添加した耐候性に優れた鋼材が開示されている。さらに、特許文献3では、Niを多量に含有し、加えてMo、Sn、Sb、P等を含有した耐候性に優れた溶接構造用鋼が開示されている。その他、特許文献4では、Ti添加によりβ−FeOOHの結晶子サイズを微細にしたさび層が形成されることを特徴とした耐食性に優れた鋼材が開示されている.
耐候性鋼材の橋梁への適用に関する共同研究報告書(XX)、1993.3、建設省土木研究所、(社)鋼材倶楽部、(社)日本橋梁建設協会
しかしながら、特許文献1、2のように、高価なNiの含有量を増加させた場合、合金コストの上昇により鋼材の価格が上昇してしまうという問題点がある。また、特許文献3のように、高価なNi含有量を増加させ、加えて、Cu、Mo、Sn、Sb、P等を含有した鋼材では、合金コストの上昇により鋼材の価格が上昇する。さらに、特許文献4は、Ti添加によるβ−FeOOHを含むさび構造の微細化によって耐食性を向上させているが、より高塩分環境下で十分な耐食性を発揮しにくいという問題点がある。
本発明の目的は、特に海岸地域などの飛来塩分量が多い、厳しい腐食環境下であっても、無塗装で耐食性に優れたさび層付き鋼材を提供することにある。
本発明者らは、飛来塩分量が多い、厳しい腐食環境下での耐食性向上について鋭意検討した結果、ある適正含有量の、WとNbおよびSnの中から選ばれる1種または2種とを含むさび層を素地鋼材表面に形成することにより、無塗装で耐食性に優れたさび層付き鋼材を開発することに成功した。
すなわち、本発明の要旨構成は以下の通りである。
(1)素地鋼材の表面にさび層を形成してなるさび層付き鋼材において、該さび層は、WとNbを含有し、該さび層中におけるW濃度が最大値にして0.2以上で、かつ該さび層中におけるNb濃度が最大値にして0.03以上であることを特徴とする、耐食性に優れたさび層付き鋼材。
ここに、W濃度およびNb濃度とはそれぞれ、Fe原子数100に対するW原子数およびNb原子数を意味する。
(1)素地鋼材の表面にさび層を形成してなるさび層付き鋼材において、該さび層は、WとNbを含有し、該さび層中におけるW濃度が最大値にして0.2以上で、かつ該さび層中におけるNb濃度が最大値にして0.03以上であることを特徴とする、耐食性に優れたさび層付き鋼材。
ここに、W濃度およびNb濃度とはそれぞれ、Fe原子数100に対するW原子数およびNb原子数を意味する。
(2)素地鋼材の表面にさび層を形成してなるさび層付き鋼材において、該さび層は、WとSnを含有し、該さび層中におけるW濃度が最大値にして0.2以上で、かつ該さび層中におけるSn濃度が最大値にして0.015以上であることを特徴とする、耐食性に優れたさび層付き鋼材。
ここに、W濃度およびSn濃度とはそれぞれ、Fe原子数100に対するW原子数およびSn原子数を意味する。
ここに、W濃度およびSn濃度とはそれぞれ、Fe原子数100に対するW原子数およびSn原子数を意味する。
(3)素地鋼材の表面にさび層を形成してなるさび層付き鋼材において、該さび層は、WとNbおよびSnを含有し、該さび層中におけるW濃度が最大値にして0.2以上で、かつ該さび層中におけるNb濃度およびSn濃度が最大値にして、それぞれ0.01以上および0.005以上であることを特徴とする、耐食性に優れたさび層付き鋼材。
ここに、W濃度、Nb濃度およびSn濃度とはそれぞれ、Fe原子数100に対するW原子数、Nb原子数およびSn原子数を意味する。
ここに、W濃度、Nb濃度およびSn濃度とはそれぞれ、Fe原子数100に対するW原子数、Nb原子数およびSn原子数を意味する。
(4)前記素地鋼材は、質量%で、W:0.05%以上1.00%以下を含有し、さらに、Nb:0.005%以上0.200%以下およびSn:0.005%以上0.200%以下の中から選ばれる1種又は2種の成分を含有する上記(1)、(2)または(3)に記載の耐食性に優れたさび層付き鋼材。
(5)前記さび層の素地鋼材側部分は、Wと、NbおよびSnの中から選ばれる1種または2種の元素とを含むβ−オキシ水酸化鉄(FeOOH)を含有する上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の耐食性に優れたさび層付き鋼材。
本発明によれば、低コストかつ無塗装で耐食性に優れたさび層付き鋼材の提供が可能になった。本発明の鋼材は、耐食性向上に有効な元素を適量且つ有効に含有させることで、Niなどの高価な元素を多量に含有させることなく低コストで、飛来塩分量が多い、厳しい腐食環境下であっても優れた耐侯性を発揮することができる。本発明は、飛来塩分量が0.05mdd超えの高飛来塩分環境下において、特に顕著な効果を発揮することができる。
次に、本発明の実施形態について以下で詳細に説明する。
本発明に従うさび層付き鋼材は、素地鋼材の表面にさび層を形成してなるさび層付き鋼材であって、該さび層は、Wと、NbおよびSnのうちから選ばれる1種又は2種とを含み、WとNbのみを含有する場合には、該さび層中におけるW濃度およびNb濃度が最大値にして、それぞれ0.2以上および0.03以上であり、また、WとSnのみを含有する場合には、該さび層中におけるW濃度およびSn濃度が最大値にして、それぞれ0.2以上および0.015以上であり、そして、さらに、W、NbおよびSnの全てを含有する場合には、該さび層中におけるW濃度、Nb濃度およびSn濃度が最大値にして、それぞれ0.2以上、0.01以上および0.005以上である。
ここに、W濃度、Nb濃度およびSn濃度とはそれぞれ、Fe原子数100に対するW原子数、Nb原子数およびSn原子数を意味する。例えば、Fe原子数100に対してW原子数が5である場合は、W濃度は5となる。
また、本発明において、「最大値にして」とは、さび層の断面において、各元素が最も濃化している部分の濃度のことであり、具体的には、さび層の断面の各部分につき直径1〜5μmの範囲での各元素の濃度(Fe原子数100に対する各元素の原子数)を求め、それが最大となる部分の濃度のことを意味する。
本発明に従うさび層付き鋼材は、素地鋼材の表面にさび層を形成してなるさび層付き鋼材であって、該さび層は、Wと、NbおよびSnのうちから選ばれる1種又は2種とを含み、WとNbのみを含有する場合には、該さび層中におけるW濃度およびNb濃度が最大値にして、それぞれ0.2以上および0.03以上であり、また、WとSnのみを含有する場合には、該さび層中におけるW濃度およびSn濃度が最大値にして、それぞれ0.2以上および0.015以上であり、そして、さらに、W、NbおよびSnの全てを含有する場合には、該さび層中におけるW濃度、Nb濃度およびSn濃度が最大値にして、それぞれ0.2以上、0.01以上および0.005以上である。
ここに、W濃度、Nb濃度およびSn濃度とはそれぞれ、Fe原子数100に対するW原子数、Nb原子数およびSn原子数を意味する。例えば、Fe原子数100に対してW原子数が5である場合は、W濃度は5となる。
また、本発明において、「最大値にして」とは、さび層の断面において、各元素が最も濃化している部分の濃度のことであり、具体的には、さび層の断面の各部分につき直径1〜5μmの範囲での各元素の濃度(Fe原子数100に対する各元素の原子数)を求め、それが最大となる部分の濃度のことを意味する。
ところで、一般に素地鋼材表面に形成されるさび層を構成する成分の種類としては、例えば、α−FeOOH、β−FeOOH、γ−FeOOHといった結晶性オキシ水酸化鉄とFe3O4、X線的非晶質がある。高塩分の環境下では、Fe3O4が多く、β−FeOOHが共存しており、空隙内に塩化物Cl−イオンを含むこのβ−FeOOHを起点にして、腐食が進行する。また、Cl−イオンの影響によって、これらさびの結晶化が促進し、欠陥の多いさび層となって緻密性が低下する為、海岸地域等では、多量の塩化物Cl−イオンがさび層深くまで浸入し、地鉄界面に濃化してしまう。従って、塩分量の多い過酷な腐食環境下で耐食性を高める為には、β−FeOOHを起点として発生する腐食の進行を如何にして抑えるか、また地鉄界面への腐食促進物質である塩化物Cl−イオンの侵入を防ぐかが重要となる。
本発明者らは、塩分量の多い環境下の耐食性を向上させるための検討を行ったところ、W、NbおよびSnのいずれか1種のみを含むさび層の形成では耐食性向上が達成できず、Wと、NbとSnから選ばれる1種または2種とを適正量含有するさび層を形成することによって、耐食性が格段に向上することを見出した。ここで、「さび層」とは,α−FeOOH、β−FeOOH、γ−FeOOHの結晶性オキシ水酸化鉄、Fe3O4、X線的非晶質の何れかもしくは複数種により構成される。
次に、本発明のさび層付き鋼材を構成するさび層の形成方法の一例を以下に示す。なお、以下に示す成分の含有量の単位である「%」は、特に断らない限り「質量%」を意味するものとする。
素地鋼材としては、特に限定はしないが、例えば、質量%で、W:0.05%以上1.00%以下を含有し、さらに、Nb:0.005%以上0.200%以下およびSn:0.005%以上0.200%以下の中から選ばれる1種又は2種の成分を含有する成分組成を有する熱延鋼板等の鋼材が挙げられる。
以下に、素地鋼材の好適な組成成分の限定理由を記載する。
・W:0.05%以上1.00%以下
Wは、本発明において最も重要な成分のうちの一つであって、Nbおよび/またはSnとβ-FeOOHに濃化することにより、高塩分環境における鋼材の耐候性を著しく向上させる効果がある。WとNbおよび/またはSnの濃化層は、位置が異なっており、Cl−イオンの侵入抑制サイトの増加・強化を図っている。鋼材のアノード反応に伴ってW04 2―が溶出し、さび層中にW04 2―として分布することによって、腐食促進因子のCl−イオンがさび層を透過して地鉄に到達するのを静電的に防止する。さらに、鋼材表面にWを含む化合物が沈殿することで、鋼材のアノード反応を抑制する。これらの効果を充分に得る為には、鋼中のW含有量が0.05%以上含有することが好ましい。一方、W含有量が1.00%を超えると、Wの消費量が増加するだけで効果の向上は認められず、コスト上昇を招くだけである。したがって、W含有量は0.05%以上1.00%以下とすることが好ましい。
・W:0.05%以上1.00%以下
Wは、本発明において最も重要な成分のうちの一つであって、Nbおよび/またはSnとβ-FeOOHに濃化することにより、高塩分環境における鋼材の耐候性を著しく向上させる効果がある。WとNbおよび/またはSnの濃化層は、位置が異なっており、Cl−イオンの侵入抑制サイトの増加・強化を図っている。鋼材のアノード反応に伴ってW04 2―が溶出し、さび層中にW04 2―として分布することによって、腐食促進因子のCl−イオンがさび層を透過して地鉄に到達するのを静電的に防止する。さらに、鋼材表面にWを含む化合物が沈殿することで、鋼材のアノード反応を抑制する。これらの効果を充分に得る為には、鋼中のW含有量が0.05%以上含有することが好ましい。一方、W含有量が1.00%を超えると、Wの消費量が増加するだけで効果の向上は認められず、コスト上昇を招くだけである。したがって、W含有量は0.05%以上1.00%以下とすることが好ましい。
・Nb:0.005%以上0.200%以下
Nbは、本発明において最も重要な成分のうちの一つであって、Wとβ-FeOOHに濃化することにより、高塩分環境における鋼材の耐候性を著しく向上させる効果がある。NbとWの濃化層は位置が異なっており、Cl−イオンの侵入抑制サイトの増加・強化を図っている。また、アノード部においてさび層と素地鋼材(地鉄)の界面付近に濃化し、アノード反応やカソード反応を抑制する。これらの効果を充分に得る為には、Nb含有量を0.005%以上含有することが好ましい。一方、0.200%を超えると靭性が低下する傾向がある。したがって、Nb含有量は0.005%以上0.200%以下とすることが好ましい。
Nbは、本発明において最も重要な成分のうちの一つであって、Wとβ-FeOOHに濃化することにより、高塩分環境における鋼材の耐候性を著しく向上させる効果がある。NbとWの濃化層は位置が異なっており、Cl−イオンの侵入抑制サイトの増加・強化を図っている。また、アノード部においてさび層と素地鋼材(地鉄)の界面付近に濃化し、アノード反応やカソード反応を抑制する。これらの効果を充分に得る為には、Nb含有量を0.005%以上含有することが好ましい。一方、0.200%を超えると靭性が低下する傾向がある。したがって、Nb含有量は0.005%以上0.200%以下とすることが好ましい。
・Sn:0.005%以上0.200%以下
Snは、本発明において最も重要な成分の一つであって、Nbと同様、Wとβ-FeOOHに濃化することにより、高塩分環境における鋼材の耐候性を著しく向上させる効果がある。また、鋼材表面にSnを含む酸化皮膜を形成し、鋼材のアノード反応やカソード反応を抑制することで構造用鋼材の耐侯性を向上させる。これらの効果を充分に得る為には、Sn含有量を0.005%以上含有することが好ましい。一方、Sn含有量が0.200%を超えると、鋼の延性や靭性の劣化を招く傾向がある。したがって、Sn含有量は0.005%以上0.200%以下とすることが好ましい。
Snは、本発明において最も重要な成分の一つであって、Nbと同様、Wとβ-FeOOHに濃化することにより、高塩分環境における鋼材の耐候性を著しく向上させる効果がある。また、鋼材表面にSnを含む酸化皮膜を形成し、鋼材のアノード反応やカソード反応を抑制することで構造用鋼材の耐侯性を向上させる。これらの効果を充分に得る為には、Sn含有量を0.005%以上含有することが好ましい。一方、Sn含有量が0.200%を超えると、鋼の延性や靭性の劣化を招く傾向がある。したがって、Sn含有量は0.005%以上0.200%以下とすることが好ましい。
また、NbとSnは、少なくとも1種をWとともに含有させれば本発明の効果を奏することができるが、本発明では、NbとSnの両方をWとともに含有させることが、W、NbおよびSnの濃化位置が異なることによるCl−イオンの透過抑制サイトが増加・強化されることによって、より顕著に耐候性を向上させる効果がある点でより好適である。また、鋼材の機械的性質、溶接性などを確保する上で、耐候性を劣化させずにNbおよびSnの各含有量の好適範囲を、NbまたはSnの単独含有の好適範囲に比べて、それぞれ低含有量側にシフトさせることが可能であるという利点もある。このような理由から、NbとSnの両方を含有することは、好ましい発明形態となる。
以上、本発明の鋼中に含有させる基本成分について説明したが、本発明ではその他の任意含有成分として、例えば、C:0.020%以上0.140%未満、Si:0.05%以上2.00%以下、Mn:0.20%以上2.00%以下、P:0.005%以上0.030%以下、S:0.0001%以上0.0200%以下、Al:0.001%以上0.100%以下、Cu:0.10%以上1.00%以下およびNi:0.10%以上0.65%未満を含有することができる。
以下に、素地鋼材の好適な任意含有成分の限定理由を記載する。
・C:0.020%以上0.140%未満
Cは、構造用鋼材の強度を向上させる元素であり、所定の強度を確保する為0.020%以上含有することが好ましい。一方、C含有量が0.140%以上では溶接性および靭性が劣化する傾向がある。したがって、C含有量は0.020%以上0.140%未満とすることが好ましい。
・C:0.020%以上0.140%未満
Cは、構造用鋼材の強度を向上させる元素であり、所定の強度を確保する為0.020%以上含有することが好ましい。一方、C含有量が0.140%以上では溶接性および靭性が劣化する傾向がある。したがって、C含有量は0.020%以上0.140%未満とすることが好ましい。
・Si 0.05%以上2.00%以下
Siは、製鋼時の脱酸剤として、また、構造用鋼材の強度を向上させ所定の強度を確保する元素として、0.05%以上含有することが好ましい。一方、Si含有量が2.00%を超えて過剰に含有すると靭性および溶接性が著しく劣化する傾向がある。したがって、Si含有量は0.05%以上2.00%以下とすることが好ましい。
Siは、製鋼時の脱酸剤として、また、構造用鋼材の強度を向上させ所定の強度を確保する元素として、0.05%以上含有することが好ましい。一方、Si含有量が2.00%を超えて過剰に含有すると靭性および溶接性が著しく劣化する傾向がある。したがって、Si含有量は0.05%以上2.00%以下とすることが好ましい。
・Mn:0.20%以上2.00%以下
Mnは、構造用鋼材の強度を向上させる元素であり、所定の強度を確保する為に0.20%以上含有することが好ましい。一方、Mn含有量が2.00%を超えて過剰に含有すると靭性および溶接性が劣化する傾向がある。したがって、Mn含有量は0.20%以上2.00%以下とすることが好ましい。
Mnは、構造用鋼材の強度を向上させる元素であり、所定の強度を確保する為に0.20%以上含有することが好ましい。一方、Mn含有量が2.00%を超えて過剰に含有すると靭性および溶接性が劣化する傾向がある。したがって、Mn含有量は0.20%以上2.00%以下とすることが好ましい。
・P:0.005%以上0.030%以下
Pは、構造用鋼材の耐候性を向上させる元素である。このような効果を得る為にはP含有量を0.005%以上含有することが好ましい。一方、P含有量が0.030%を超えて含有すると溶接性が劣化する傾向がある。したがって、P含有量は0.005%以上0.030%以下とすることが好ましい。
Pは、構造用鋼材の耐候性を向上させる元素である。このような効果を得る為にはP含有量を0.005%以上含有することが好ましい。一方、P含有量が0.030%を超えて含有すると溶接性が劣化する傾向がある。したがって、P含有量は0.005%以上0.030%以下とすることが好ましい。
・S:0.0001%以上0.0200%以下
Sは、0.0200%を超えて含有すると溶接性および靭性が劣化する傾向がある。一方、S含有量を0.0001%未満まで低減することは生産コストの増大を招く。したがって、S含有量は0.0001%以上0.0200%以下とすることが好ましい。
Sは、0.0200%を超えて含有すると溶接性および靭性が劣化する傾向がある。一方、S含有量を0.0001%未満まで低減することは生産コストの増大を招く。したがって、S含有量は0.0001%以上0.0200%以下とすることが好ましい。
・A1:0.001%以上0.100%以下
Alは、製鋼時の脱酸に必要な元素である。このような効果を得る為、Al含有量として0.001%以上含有することが好ましい。一方、Al含有量が0.100%を超えると溶接性に悪影響を及ぼす傾向がある。したがって、Al含有量は0.001%以上0.100%以下とすることが好ましい。
Alは、製鋼時の脱酸に必要な元素である。このような効果を得る為、Al含有量として0.001%以上含有することが好ましい。一方、Al含有量が0.100%を超えると溶接性に悪影響を及ぼす傾向がある。したがって、Al含有量は0.001%以上0.100%以下とすることが好ましい。
・Cu:0.10%以上1.00%以下
Cuは、さび粒を微細化することで徽密なさび層を形成し、構造用鋼材の耐候性を向上させる効果を有する。このような効果はCu含有量が0.10%以上で得られる。一方、Cu含有量が1.00%を超えると、Cu消費量増加に伴うコスト上昇を招くだけである。したがって、Cu含有量は0.10%以上1.00%以下とすることが好ましい。
Cuは、さび粒を微細化することで徽密なさび層を形成し、構造用鋼材の耐候性を向上させる効果を有する。このような効果はCu含有量が0.10%以上で得られる。一方、Cu含有量が1.00%を超えると、Cu消費量増加に伴うコスト上昇を招くだけである。したがって、Cu含有量は0.10%以上1.00%以下とすることが好ましい。
・Ni:0.10%以上0.65%未満
Niは、さび粒を微細化することで徽密なさび層を形成し、構造用鋼材の耐候性を向上させる効果を有する。この効果を充分に得る為にはNi含有量を0.10%以上とすることが好ましい。一方、Ni含有量が0.65%以上であるとNi消費量増加に伴うコスト上昇を招くだけである。したがって、Ni含有量は0.10%以上0.65%未満とすることが好ましい。
Niは、さび粒を微細化することで徽密なさび層を形成し、構造用鋼材の耐候性を向上させる効果を有する。この効果を充分に得る為にはNi含有量を0.10%以上とすることが好ましい。一方、Ni含有量が0.65%以上であるとNi消費量増加に伴うコスト上昇を招くだけである。したがって、Ni含有量は0.10%以上0.65%未満とすることが好ましい。
なお、残部はFeおよび不可避的不純物である。ここで不可避的不純物として、N:0.010%以下、O:0.010%以下、Ca:0.0010%以下が許容できる。特に、不可避的不純物として含有するCaは、鋼中に多量に存在すると溶接熱影響部の靭性を劣化させることに加えて、後述するさび層形成に影響を及ぼす為、0.0010%以下とすることが好ましい。
本発明における素地鋼材は、上記成分組成を有する鋼を通常の連続鋳造や分塊法により得られたスラブを熱間圧延することにより厚板や形鋼、薄鋼板、棒鋼等の鋼材に製造され、得られる。加熱、圧延条件は、要求される材質に応じて適宜決定すればよく、制御圧延、加速冷却、あるいは再加熱熱処理等の組合せも可能である。また、上記成分以外の元素は、靭性および溶接性等の要求に従って適量添加してよい。
本発明では、高塩分環境下で耐食性を向上させるため、上記素地鋼材に、適正化を図ったさび層を形成することが必要となる。
次に、上記成分組成を有する素地鋼材の表面にさび層を形成する方法の一例を以下で説明する。
上記成分組成を有する、厚さ:6mmの熱延鋼板を素地鋼材として用い、この熱延鋼板からサイズ:35mm×35mm×5mmの試験片を採取し、鋼板表面に、算術平均粗さRaが1.6μm以下となるよう研削加工を施す。次に、この試験片について、温度40℃、相対湿度40%RHの乾燥雰囲気内で11時間放置し、その後、1時間の移行時間をとった後、温度25℃、相対湿度95%RHの湿潤雰囲気内で11時間放置し、その後、1時間の移行時間をとる、合計24時間の工程を1サイクルとして、1日1サイクルを1年間(365日)繰り返すとともに、試験片の表面に付着する塩分が0.2mddとなるような量の人工海水溶液(1.4mg/dm2の塩分が付着するような量の人工海水溶液)を週に一回、乾燥工程中に試験片の表面に塗布することによりさび層の形成を行った。この時の有効なさび層形成を促進する望ましい形態は、付着塩分量0.1mdd以上である。
このさび層の形成を行った試験片は、その後さらに6ヶ月間、0.2mddの高塩分環境下で腐食試験を行った。腐食試験終了後、試験片は、塩酸にヘキサメチレンテトラミンを加えた水溶液に浸潰して脱さびしてから重量を測定し、さび層形成前の試験片の初期重量と、脱さび後の試験片重量との差を求めて片面当りの平均腐食速度(μm/年)を求めた。この平均腐食速度が60μm/年以下であれば、従来の耐候性鋼に比べて、裸耐食性に優れているとして評価した。
本発明では、さび層中で、WとNb及び/又はSnが最も濃化している部分でのそれら各元素の濃度が重要な因子となるが、その濃度はさび層の断面において直径1〜5μmの範囲での濃度を用いることが好ましい。具体的には、さび層断面において無作為に選んだ多数の場所につき、直径1〜5μmの範囲でFeに対する各元素の濃度を求め、各元素においてその値が最大となった時の濃度を用いる。
前述のさび層中のW、Nb、Snそれぞれの濃度(Fe原子数100に対する各元素の原子数)は種々の方法で求めることができるが、一例として、電子線マイクロアナライザ(EPMA)により求める方法を以下に示す。
まず、さび層付き鋼材の断面試料を作成する。さび層付き鋼材の試験片をせん断し、樹脂への埋め込み(直径25 mm)後、エタノール使用(水不使用)で研摩#4000仕上げを施した。電子線マイクロアナライザ(EPMA)の測定条件は、加速電圧15kV、照射電流2×10−7A、ビーム径2μm、走査範囲1.5mm×0.5mmである。
ここでは、濃度の最大値の算出方法をNbの場合を用いて説明する。
素地鋼材(母材)につき任意の5箇所につき測定を行い、Fe、NbそれぞれのX線強度の平均を求め、それぞれIFeStnd,INbStndとし、INbStndをIFeStndで除算したものを基準値とした。さらに、さび層内の無作為に選んだ任意の場所10万点につき測定し、NbのX線強度が高い方から上位30点につきFe、NbそれぞれのX線強度の平均を求め、それぞれIFeAve,INbAveとし、INbAveをIFeAveで除算したものを濃化指数とした。得られた濃化指数を基準値で除算したものに素地鋼材(母材)のFe原子数100に対するNbの原子数を乗算し、さび層中におけるNbの濃度(Fe原子数100に対するNb原子数)の最大値を算出した。この手順によりSn、Wの濃度の最大値も同様に求めることができる。素地鋼材(母材)のFe原子数100に対するNb、W、Snの原子数は、素地鋼材(母材)作製の際のFeに対する各成分の添加比、または、素地鋼材(母材)の湿式分析(従来公知)により求めることができる。また、各元素のX線強度を求めるに当たっては、バックグラウンドの補正等を適宜行なってもよい。
前述のさび層中のW、Nb、Snそれぞれの濃度(Fe原子数100に対する各元素の原子数)は種々の方法で求めることができるが、一例として、電子線マイクロアナライザ(EPMA)により求める方法を以下に示す。
まず、さび層付き鋼材の断面試料を作成する。さび層付き鋼材の試験片をせん断し、樹脂への埋め込み(直径25 mm)後、エタノール使用(水不使用)で研摩#4000仕上げを施した。電子線マイクロアナライザ(EPMA)の測定条件は、加速電圧15kV、照射電流2×10−7A、ビーム径2μm、走査範囲1.5mm×0.5mmである。
ここでは、濃度の最大値の算出方法をNbの場合を用いて説明する。
素地鋼材(母材)につき任意の5箇所につき測定を行い、Fe、NbそれぞれのX線強度の平均を求め、それぞれIFeStnd,INbStndとし、INbStndをIFeStndで除算したものを基準値とした。さらに、さび層内の無作為に選んだ任意の場所10万点につき測定し、NbのX線強度が高い方から上位30点につきFe、NbそれぞれのX線強度の平均を求め、それぞれIFeAve,INbAveとし、INbAveをIFeAveで除算したものを濃化指数とした。得られた濃化指数を基準値で除算したものに素地鋼材(母材)のFe原子数100に対するNbの原子数を乗算し、さび層中におけるNbの濃度(Fe原子数100に対するNb原子数)の最大値を算出した。この手順によりSn、Wの濃度の最大値も同様に求めることができる。素地鋼材(母材)のFe原子数100に対するNb、W、Snの原子数は、素地鋼材(母材)作製の際のFeに対する各成分の添加比、または、素地鋼材(母材)の湿式分析(従来公知)により求めることができる。また、各元素のX線強度を求めるに当たっては、バックグラウンドの補正等を適宜行なってもよい。
また、平均腐食速度とさび層中におけるNb、Sn、Wの濃度の最大値との関係について調査した。
その結果を整理して図1および図2に示す。上記の耐食評価方法により、耐食性が優れているものを「○」、劣るものを「×」として図中に表記した。
ここに、「○」は平均腐食速度が60μm/年以下の場合、また「×」は平均腐食速度が60μm/年を超える場合である。
その結果を整理して図1および図2に示す。上記の耐食評価方法により、耐食性が優れているものを「○」、劣るものを「×」として図中に表記した。
ここに、「○」は平均腐食速度が60μm/年以下の場合、また「×」は平均腐食速度が60μm/年を超える場合である。
図1および図2の結果から、さび層がWとNbを含有する場合、さび層中におけるW、Nbの濃度が最大値にして、それぞれ0.2以上および0.03以上であるとき、耐食性に優れていることがわかる。なお、この時、W濃度とNb濃度の上限値については特に制限されることはないが、W濃度もしくはNb濃度があまりに高くなるとそれらの酸素酸イオンなどによる塩化物イオンの遮断性(イオン選択透過性)の効果が飽和するので、W濃度およびNb濃度の上限値はそれぞれ8.0および2.5程度とすることが好ましい。
また、さび層がWとSnを含有する場合、W、Snの濃度が最大値にして、それぞれ0.2以上および0.015以上であるとき、耐食性に優れていることがわかる。なお、この時、Sn濃度の上限値については特に制限されることはないが、Sn濃度があまりに高くなるとSnの酸素酸イオンなどによる塩化物イオンの遮断性(イオン選択透過性)の効果が飽和するので、Sn濃度の上限値は1.5程度とすることが好ましい。
さらに、さび層がWとNbとSnを含有する場合、W、Nb、Snの濃度が最大値にして、それぞれ0.2以上、0.01以上、0.005以上であるとき、耐食性に優れていることがわかる。なお、この場合におけるNb濃度とSn濃度の上限値は、上記と同様の理由でそれぞれ2.0および1.0程度とすることが好ましい。
また、さび層がWとSnを含有する場合、W、Snの濃度が最大値にして、それぞれ0.2以上および0.015以上であるとき、耐食性に優れていることがわかる。なお、この時、Sn濃度の上限値については特に制限されることはないが、Sn濃度があまりに高くなるとSnの酸素酸イオンなどによる塩化物イオンの遮断性(イオン選択透過性)の効果が飽和するので、Sn濃度の上限値は1.5程度とすることが好ましい。
さらに、さび層がWとNbとSnを含有する場合、W、Nb、Snの濃度が最大値にして、それぞれ0.2以上、0.01以上、0.005以上であるとき、耐食性に優れていることがわかる。なお、この場合におけるNb濃度とSn濃度の上限値は、上記と同様の理由でそれぞれ2.0および1.0程度とすることが好ましい。
また、集束イオンビーム加工(FIB)した後の試験片を、透過電子顕微鏡(TEM)を用いて観察するとともに、電子回折パターンにより、濃化しているW、Nb、Snの位置におけるさび層の同定を行った。その結果、WとNbおよびSnから選ばれる1種または2種の成分は、何れもβ−オキシ水酸化鉄(FeOOH)に位置していることが分かった。また、Nb、Sn、Wが存在する位置のさびの同定には、TEMを用いた電子回折パターンの他、ラマン分光等が挙げられ、特に、高い位置分解能でのさび層の同定においては、回折パターン解析が推奨される。
上述したところは、この発明の実施形態の一例を示したにすぎず、請求の範囲において種々の変更を加えることができる。
表1に示す成分組成を有するNo.1〜16を溶製し、1150℃に加熱した後、熱間圧延を行い、室温まで空冷して厚さ6mmの熱延鋼板を試作した。次いで、得られた鋼板からサイズ:35mm×35mm×5mmの試験片を採取した。試験片は、表面に、算術平均粗さRaが1.6μm以下となるよう研削加工を施し、端面、裏面をテープシールし、試験片の表面露出部の面積が25mm×25mmとなるよう表面もテープシールした。以上により得られた試験片について、温度40℃、相対湿度40%RHの乾燥雰囲気内で11時間放置し、その後、1時間の移行時間をとった後、温度25℃、相対湿度95%RHの湿潤雰囲気内で11時間放置し、その後、1時間の移行時間をとる、合計24時間の工程を1サイクルとして、1日1サイクルを1年間(365日)繰り返すとともに、試験片の表面に付着する塩分が有効さび層形成に好適な0.2mddとなるような量の人工海水溶液(1.4mg/dm2の塩分が付着するような量の人工海水溶液)を週に一回、乾燥工程中に試験片の表面に塗布することによりさび層の形成を行った。この試験片を、塩酸にヘキサメチレンテトラミンを加えた水溶液に浸漬して脱さびしてから鋼材の重量を測定し、本試験前鋼材重量(A)を求めた。また、このさび層の形成を行った試験片に対し、その後さらに6ヶ月間、付着塩分量0.2mddの高塩分環境下で腐食試験(本試験)を行った。腐食試験終了後、試験片は、塩酸にヘキサメチレンテトラミンを加えた水溶液に浸漬して脱さびしてから鋼材の重量を測定し、本試験前鋼材重量(A)との差を求め、それにより片面当りの平均腐食速度(μm/年)を求めた。この平均腐食速度が60μm/年以下であれば、耐食性が優れているとして評価した。
また、各試験片について、表2に、上述の方法で求めたさび層中におけるW、Nb、Snの濃度の最大値(Fe原子数100に対する各元素の原子数)、ならびに平均腐食速度について調べた結果を示す。
また、各試験片について、表2に、上述の方法で求めたさび層中におけるW、Nb、Snの濃度の最大値(Fe原子数100に対する各元素の原子数)、ならびに平均腐食速度について調べた結果を示す。
表2の結果から、発明例1〜8は、いずれも平均腐食速度が54.9μm/年以下であり、高塩分が存在する厳しい腐食環境下であっても、従来の耐候性鋼に比べて耐食性に優れている。一方、さび層中において、W濃度と、Nb濃度およびSn濃度の1種又は2種のいずれかが適正範囲外である比較例1〜7は、いずれも平均腐食速度が60μm/年超えであり、高塩分が存在する厳しい腐食環境下での耐食性が劣っており、また、鋼材中に高価なNiを1.53%と多量に含有させた比較例8は、耐食性は発明例1〜8と同等レベルであるものの、製品コストが発明例1〜8に比べて約50%程度高くなった。
本発明によれば、低コストかつ無塗装で耐食性に優れたさび層付き鋼材の提供が可能になった。本発明の鋼材は、耐食性向上に有効な元素を適量且つ有効に含有させることで、Niなどの高価な元素を多量に含有させることなく低コストで、飛来塩分量が多い、厳しい腐食環境下であっても優れた耐侯性を発揮することができる。本発明は、飛来塩分量が0.05mdd超えの高飛来塩分環境下において、特に顕著な効果を発揮することができる。
Claims (5)
- 素地鋼材の表面にさび層を形成してなるさび層付き鋼材において、
該さび層は、WとNbを含有し、該さび層中におけるW濃度が最大値にして0.2以上で、かつ該さび層中におけるNb濃度が最大値にして0.03以上であることを特徴とする、耐食性に優れたさび層付き鋼材。
ここに、W濃度およびNb濃度とはそれぞれ、Fe原子数100に対するW原子数およびNb原子数を意味する。 - 素地鋼材の表面にさび層を形成してなるさび層付き鋼材において、
該さび層は、WとSnを含有し、該さび層中におけるW濃度が最大値にして0.2以上で、かつ該さび層中におけるSn濃度が最大値にして0.015以上であることを特徴とする、耐食性に優れたさび層付き鋼材。
ここに、W濃度およびSn濃度とはそれぞれ、Fe原子数100に対するW原子数およびSn原子数を意味する。 - 素地鋼材の表面にさび層を形成してなるさび層付き鋼材において、
該さび層は、WとNbおよびSnを含有し、該さび層中におけるW濃度が最大値にして0.2以上で、かつ該さび層中におけるNb濃度およびSn濃度が最大値にして、それぞれ0.01以上および0.005以上であることを特徴とする、耐食性に優れたさび層付き鋼材。
ここに、W濃度、Nb濃度およびSn濃度とはそれぞれ、Fe原子数100に対するW原子数、Nb原子数およびSn原子数を意味する。 - 前記素地鋼材は、質量%で、W:0.05%以上1.00%以下を含有し、さらに、Nb:0.005%以上0.200%以下およびSn:0.005%以上0.200%以下の中から選ばれる1種又は2種の成分を含有する請求項1、2または3に記載の耐食性に優れたさび層付き鋼材。
- 前記さび層の素地鋼材側部分は、Wと、NbおよびSnの中から選ばれる1種または2種の元素とを含むβ−オキシ水酸化鉄(FeOOH)を含有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の耐食性に優れたさび層付き鋼材。
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