JP2009179882A - 海浜耐候性に優れた鋼材と構造物 - Google Patents
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Abstract
発揮することができる、海浜耐候性に優れた低コストの鋼材を提供する。
【解決手段】質量%で、C:0.001〜0.15%、Si:2.5%以下、Mn:0.5%超〜2.5%以下、P:0.03%未満、S:0.005%以下、Cu:0.05〜1.0%、Ni:0.01〜0.5%、Cr:0.01〜3.0%、Al:0.003〜2.5%、およびN:0.001〜0.1%、Snおよび/またはSb:0.03〜0.50%、場合によりさらにTi:0.01〜0.3%、Nb:0.01〜0.1%、Mo:0.01〜1.0%、W:0.01〜1.0%、V:0.01〜1.0%、Ca:0.0001〜0.1%、Mg:0.0001〜0.1%、REM:0.0001%〜0.02%の1種もしくは2種以上を含有
し、残部がFeおよび不純物からなり、Ni/Cu質量比が0.5以下である組成を有する鋼材。鋼材表面が防食皮膜により被覆されていてもよい。
【選択図】なし
Description
例えば、特許文献1ではクロム(Cr)の含有量を増加させた耐候性鋼材、特許文献2ではニッケル(Ni)含有量を増加させた耐候性鋼材等が提案されている。
一方、Ni含有量を増加させた場合、耐候性はある程度改善されるが、鋼材自体のコストが高くなり、橋梁等の用途に使用される材料としては高価なものになる。これを避けるため、Ni含有量を少なくすると、耐候性はさほど改善されず、飛来塩分量が多い場合には、鋼材の表面に層状の剥離さびが生成し、腐食が著しく、長期間の使用に耐えられないという問題が生じる。
しかし、前述したように、Crの添加は飛来塩分量が比較的少ない環境では耐候性の向上に有効であるが、飛来塩分量が多い環境では、逆に耐候性を劣化させる。一方、Niの添加は、飛来塩分量の多い地域での耐候性の向上に有効であるとされてきた。
。
もちろん、この反応以外に
2H2O+O2+2e−→4OH−
2H++2e−→H2
のカソード反応も併発する。
アノード反応:Fe→Fe2++2e−(Feの溶解反応)
も起こる。従って、腐食の総括反応は、
2Fe3++Fe→3Fe2+ ・・・ 反応1
となる。
ついて検討した結果、下記の知見を得た。
(a)Snは、Sn2+として溶解し、2Fe3++Sn2+→2Fe2++Sn4+なる反応によりFe3+の濃度を低下させることで、反応1を抑制する。Snには、さらにアノード溶解を抑制するという作用もある。
(c)Cuは、飛来塩分量が多い環境でも、耐候性改善に効果があり、その効果はSnやSbの共存下でも発揮される。
(g)Nはアンモニアとして溶解し、腐食界面のpHを上昇させる作用を有する。飛来塩分量の多い環境では、上記Fe3+の加水分解によりpHが低下するが、Nを含有させることにより、腐食界面のpH低下が抑制され、海浜耐候性が向上する。
本発明は以上の知見に基づいて完成したものである。
ここに、本発明は、質量%で、C:0.001〜0.15%、Si:2.5%以下、Mn:0.5超〜2.5%、P:0.03%未満、S:0.005%以下、Cu:0.05〜1.0%、Ni:0.01〜0.5%、Cr:0.01〜3.0%、Al:0.003〜2.5%およびN:0.001〜0.1%、さらにSnおよび/またはSb:0.03〜0.50%を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、Ni/Cuが0.5以下である組成を有することを特徴とする海浜耐候性に優れた鋼材、である。
本発明はさらに、上記鋼材から作製された構造物にも関する。
Cは、鋼の強度を確保するために必要な合金元素であるが、多量に含有させると鋼材の溶接性が劣化する。したがって、C含有量は0.15%を上限とする。また、0.001%未満になると所定の強度が確保できないので、下限は0.001%とする。望ましい範囲は、0.005%〜0.15%である。
Siは、製鋼時の脱酸に必要な合金元素であるとともに、耐候性を向上させる元素である。2.5%を超えて含有させると、鋼の靱性が損なわれる。したがって、その含有量は2.5%以下とする。下限は特に定めないが、含有量が少なすぎると脱酸が十分に行われないので、Alを含有しない場合には、0.1%以上含有させるのが望ましい。
Mnは、低コストで鋼の強度を高める作用効果を有する元素であるが、Sと結合してMnSを形成し、このMnSが腐食の起点となり、耐食性、ひいては耐候性を劣化させる。鋼中S量が低い場合には、一般に高飛来塩分環境における耐候性を向上させる作用を有する。しかし、機構は不明であるが、Niと共存する場合には2.5%を超えると耐候性が劣化する。したがって、その含有量は2.5%以下とする。望ましくは1.5%以下とする。なお、構造用鋼としての強度を維持するには0.5%以上含有させるのが望ましい。
Pは、耐候性を著しく向上させる元素である。しかし、過度に含有させると溶接性を劣化させる。したがって、その含有量は0.03%未満とする。下限は特に定めないが、耐候性向上効果を発揮させるために、0.005%以上含有させるのが望ましい。
Sは、Mnと結合して非金属介在物のMnSを形成して腐食の起点となり易く、耐候性を劣化させるので、できるだけ少なくする必要がある。したがって、その上限は0.005%とする。
Cuは、耐候性を向上させる基本元素であり、0.05%以上含有させると耐候性が向上する。しかし、1.0%を超えて含有させても、その効果が飽和するだけでなく、Cu脆化を起こす原因となる。したがって、その含有量は0.05〜1.0%とする。
Niは、飛来塩分量の多い環境下での耐食性(海浜耐候性)を著しく向上させる元素として従来から注目され、Ni系耐候性鋼として開発・実用化されている。しかし、理由は定かではないが、Sn、Sbと複合添加した場合には、耐食性の改善効果が無く、むしろSn、Sbによる耐候性改善効果を低下させるという悪影響が現れる。このNiの悪影響は、Ni含有量が0.5%を超えるか、Cu含有量の1/2を超えると顕著になる。しかし、Cu添加による熱間加工性の劣化、いわゆるCu脆化を防止するため、0.01%以上のNiの添加は必要である。そのため、本発明では、Ni含有量は0.01〜0.5%のごく少ない量に制限し、かつNi/Cu質量比が0.5以下となるようにNiを添加する。高価なNi含有量が少なくてすむことは経済的にも有利である。好ましくは、Ni:0.01%以上、0.4%未満である。
Crは、飛来塩分量がそれほど多くない環境では保護性さびの形成による耐食性の向上が期待できるが、飛来塩分量が多い環境において鋼のアノード溶解反応を促進し耐候性を劣化させる。
Alは、0.003%以上含有させると耐候性が向上するが、含有量が2.5%を超えるとその効果は飽和する。したがって、Al含有量は0.003〜2.5%とする。なお、多量に添加すると鋼が脆化し易くなるので、含有量の上限は2.0%とするのが望ましい。
Nは、アンモニアとなって溶解し、飛来塩分量の多い環境におけるFe3+の加水分解によるpH低下を抑制することで、塩分環境における耐候性を向上させる効果を有する。この効果は0.001%以上含有することにより得られ、0.1%を超えると飽和する。したがって、N含有量は0.001〜0.1%とする。含有量の望ましい範囲は0.002〜0.08%である。
Snは、Sn2+となって溶解し、酸性塩化物溶液中でのインヒビター作用により腐食を抑制する作用を有する。また、Fe3+を速やかに還元させ、酸化剤としてのFe3+濃度を低減することにより、Fe3+の腐食促進作用を抑制するので、高飛来塩分環境における耐候性を向上させる。
Tiは、TiCを形成してCを固定し、クロム炭化物の形成を抑制して耐候性を向上させるとともに、TiSの形成により腐食の起点となるMnSの形成を抑える。この効果は含有量が0.01%以上で現れ、0.3%を超えると、効果が飽和するだけでなく、鋼材のコストが上昇する。したがって、Tiを含有させる場合、その含有量は0.01〜0.3%とする。
Nbには、Tiと同様、NbCを形成してクロム炭化物の形成を抑制して耐候性を向上させる効果がある。この効果は含有量が0.01%以上で現れ、0.1%を超えると飽和する。このため、Nbを含有させる場合、その含有量は、0.01〜0.1%とする。
Moは、溶解して酸素酸イオンMoO4 2−の形でさびに吸着し、さび層中の塩化物イオンの透過を抑制し、耐食性を向上させる元素である。鋼中における含有量が0.01%以上になるとこの効果が得られるが、1.0%を超えると効果が飽和するだけでなく、鋼材のコストが上昇する。したがって、Moを含有させる場合、その含有量は0.01〜1.0%とする。
Wは、Moと同様、溶解して酸素酸イオンの形で存在し、さび層中の塩化物イオンの透過を抑制し、耐食性を向上させる。この効果は含有量が0.01%以上で現れ、1.0%を超えると飽和するだけでなく、鋼材のコストが上昇する。したがって、Wを含有させる場合、その含有量は0.01〜1.0%とする。
Vは、MoやWと同様、溶解して酸素酸イオンの形で存在し、さび層中の塩化物イオンの透過を抑制し、耐食性を向上させる。この効果は0.01%以上含有させると現れ、1.0%を超えると飽和する。したがって、Vを含有させる場合、その含有量は0.01〜1.0%とする。
Caは、鋼中に酸化物の形で存在し、腐食反応部における界面のpHの低下を抑制して、腐食の促進を抑える作用を有している。この効果は0.0001%以上含有させることにより得られるが、0.1%を超えると飽和する。したがって、Caを含有させる場合、その含有量は0.0001〜0.1%する。
Mgは、Caと同様、腐食反応部における界面のpHの低下を抑制し、耐食性を向上させる。この効果は0.0001%以上含有させることにより得られるが、0.1%を超えると飽和する。したがって、Mgを含有させる場合、その含有量は0.0001〜0.1%とする。
REMは、鋼の溶接性を向上させる目的で含有させる。含有量が0.0001%以上でその効果を発揮し、0.02%を超えると効果が飽和する。このため、REMを含有させる場合には、その含有量は0.0001〜0.02%とする。
しい。本発明において用いる防食皮膜とは、鋼材の防食目的で施される皮膜を意味する。具体的には、耐候性鋼材において周知の各種のさび安定化処理皮膜(化成処理系と塗装系とを含む);Znめっき、Alめっき、Zn−Alめっき等の防食めっき皮膜;Zn溶射、Al溶射等の金属溶射皮膜;ビニルブチラール系、エポキシ系、ウレタン系、フタル酸系などの一般の防食塗装皮膜等を包含する。いずれの防食皮膜を施した場合であっても、優れた耐候性と高い防食性能を発揮することができる。これらの防食皮膜の膜厚または付着量は特に制限されず、通常の範囲内でよい。
Claims (5)
- 質量%で、C:0.001〜0.15%、Si:2.5%以下、Mn:0.5%超、2.5%以下、P:0.03%未満、S:0.005%以下、Cu:0.05〜1.0%、Ni:0.01〜0.5%、Cr:0.01〜3.0%、Al:0.003〜2.5%、およびN:0.001〜0.1%、さらにSnおよび/またはSb:0.03〜0.50%を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、Ni/Cu質量比が0.5以下である組成を有することを特徴とする、海浜耐候性に優れた鋼材。
- さらに、質量%で、Ti:0.01〜0.3%、Nb:0.01〜0.1%、Mo:0.01〜1.0%、W:0.01〜1.0%、V:0.01〜1.0%、Ca:0.0001〜0.1%およびMg:0.0001〜0.1%よりなる群から選ばれた1種または2種以上を含有する請求項1に記載の海浜耐候性に優れた鋼材。
- さらに、質量%で、REMを0.0001%〜0.02%含有する、請求項1または2に記載の海浜耐候性に優れた鋼材。
- 表面が防食皮膜により被覆されている請求項1〜3のいずれかに記載の鋼材。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の鋼材から作製された構造物。
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