以下に本発明の実施の形態を説明するが、本発明の構成要件と、明細書又は図面に記載の実施の形態との対応関係を例示すると、次のようになる。この記載は、本発明をサポートする実施の形態が、明細書又は図面に記載されていることを確認するためのものである。従って、明細書又は図面中には記載されているが、本発明の構成要件に対応する実施の形態として、ここには記載されていない実施の形態があったとしても、そのことは、その実施の形態が、その構成要件に対応するものではないことを意味するものではない。逆に、実施の形態が構成要件に対応するものとしてここに記載されていたとしても、そのことは、その実施の形態が、その構成要件以外の構成要件には対応しないものであることを意味するものでもない。
本発明の一側面のパネルは、駆動電流に応じて発光する発光素子(例えば、図5の発光素子34)と、映像信号をサンプリングするサンプリング用トランジスタ(例えば、図5のサンプリング用トランジスタ31)と、前記駆動電流を前記発光素子に供給する駆動用トランジスタ(例えば、図5の駆動用トランジスタ32)と、所定の信号電位を保持するキャパシタ(例えば、図5のキャパシタ33)とを備える画素回路を行列状に配置する画素アレイ部(例えば、図1の画素アレイ部102)を備え、
前記画素アレイ部に対して、電源ラインを全画素で共通とし(例えば、図16や図20に示されるように、電源線DSL212で共通とし)、1フィールドにおいて、閾値補正準備動作、閾値補正動作を全画素共通で行い、その後、行を単位とする信号書き込み動作を所定の順番で順次行っていく駆動制御(例えば、図20のタイミングで行っていく駆動制御)を行うパネル(例えば図16のELパネル200)において、
前記駆動制御の少なくとも一部として、
書き込み動作が終了した行の前記駆動用トランジスタに対して逆バイアスをかける逆バイアス動作(例えば図20における1行目乃至M行目逆バイアス期間における動作)を行単位で行い、フィールド周期の整数倍である一定周期内での前記逆バイアス動作の総期間(例えば図20の例では、2Fの周期における各行目逆バイアス期間の総期間)を各行で一致させる逆バイアス制御を含む。
以下、図を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
最初に、本発明の理解を容易にし、且つ、背景を明らかにするため、有機ELデバイスを用いたパネル(以下、ELパネルと称する)の基本となる構成と動作について図1乃至図15を参照して説明する。
図1は、基本となるELパネルの構成例を示すブロック図である。
図1のELパネル100は、N×M個の画素(画素回路)101−(1,1)乃至101−(N,M)が行列状に配置されている画素アレイ部102と、これを駆動する駆動部である水平セレクタ(HSEL)103、ライトスキャナ(WSCN)104、および電源スキャナ(DSCN)105とにより構成されている。
また、ELパネル100は、M本の走査線WSL10−1乃至10−M、M本の電源線DSL10−1乃至10−M、およびN本の映像信号線DTL10−1乃至10−Nも有する。
なお、以下において、走査線WSL10−1乃至10−M、映像信号線DTL10−1乃至10−N、画素101−(1,1)乃至101−(N,M)、または電源線DSL10−1乃至10−Mのそれぞれを特に区別する必要がない場合、単に、走査線WSL10、映像信号線DTL10、画素101、または電源線DSL10と称する。
画素101−(1,1)乃至101−(N,M)のうちの第1行目の画素101−(1,1)乃至101−(N,1)は、走査線WSL10−1でライトスキャナ104と、電源線DSL10−1で電源スキャナ105とそれぞれ接続されている。また、画素101−(1,1)乃至101−(N,M)のうちの第M行目の画素101−(1,M)乃至101−(N,M)は、走査線WSL10−Mでライトスキャナ104と、電源線DSL10−Mで電源スキャナ105とそれぞれ接続されている。画素101−(1,1)乃至101−(N,M)の行方向に並ぶその他の画素101についても同様である。
また、画素101−(1,1)乃至101−(N,M)のうちの第1列目の画素101−(1,1)乃至101−(1,M)は、映像信号線DTL10−1で水平セレクタ103と接続されている。画素101−(1,1)乃至101−(N,M)のうちの第N列目の画素101−(N,1)乃至101−(N,M)は、映像信号線DTL10−Nで水平セレクタ103と接続されている。画素101−(1,1)乃至101−(N,M)の列方向に並ぶその他の画素101についても同様である。
ライトスキャナ104は、走査線WSL10−1乃至10−Mに水平周期(1H)で順次制御信号を供給して画素101を行単位で線順次走査する。電源スキャナ105は、線順次走査に合わせて電源線DSL10−1乃至10−Mに第1電位(後述するVcc)または第2電位(後述するVss)の電源電圧を供給する。水平セレクタ103は、線順次走査に合わせて各水平期間内(1H)で映像信号となる信号電位Vsigと基準電位Vofsとを切換えて列状の映像信号線DTL10−1乃至10−Mに供給する。
図1のように構成されるELパネル100に、ソースドライバおよびゲートドライバとからなるドライバIC(Integrated Circuit)が付加されることによりパネルモジュールが構成され、さらに、パネルモジュールに、電源回路、画像LSI(Large Scale Integration)などを付加したものが表示装置となる。ELパネル100を含む表示装置は、例えば、携帯電話機、デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ、テレビジョン受像機、プリンタ等の表示部として使用することができる。
図2は、図1に示したELパネル100に含まれるN×M個の画素101のうちの1つの画素101を拡大することにより、画素101の詳細な構成を示したブロック図である。
なお、図2において画素101と接続されている走査線WSL10、映像信号線DTL10、および電源線DSL10は、図1から明らかなように、画素101−(n,m)(n=1,2,・・・,N,m=1,2,・・・,M)に対して、走査線WSL10−(n,m)、映像信号線DTL10−(n,m)、および電源線DSL10−(n,m)となる。
図2に示す画素101の構成は、従来から用いられている構成であり、この構成を有する画素101を画素101aと呼ぶことにする。
画素101aは、サンプリング用トランジスタ21、駆動用トランジスタ22、保持容量23、および有機EL素子である発光素子24を含む。ここで、サンプリング用トランジスタ21はNチャネル型トランジスタであり、駆動用トランジスタ22はPチャネル型トランジスタである。サンプリング用トランジスタ21のゲートは走査線WSL10に接続し、サンプリング用トランジスタ21のドレインが映像信号線DTL10に接続し、ソースが駆動用トランジスタ22のゲートgに接続している。
駆動用トランジスタ22のソースsは電源線DSL10と接続され、ドレインdは発光素子24のアノードと接続されている。保持容量23は、駆動用トランジスタ22のソースsとゲートgの間に接続されている。また、発光素子24のカソードは接地されている。
有機EL素子は電流発光素子であるため、発光素子24に流れる電流値をコントロールすることで、発色の階調を得ることができる。図2の画素101aでは、駆動用トランジスタ22のゲート印加電圧を変化させることで、発光素子24に流れる電流値をコントロールしている。
より具体的には、駆動用トランジスタ22のソースsは電源線DSL10に接続されており、常に飽和領域で動作するように設計されているので、駆動用トランジスタ22は、次式(1)で表される電流値Idsを流す定電流源として機能する。
式(1)において、μは移動度を示し、Wはゲート幅を表し、Lはゲート長を表し、Coxは単位面積あたりのゲート酸化膜容量を示す。また、Vgsは、駆動用トランジスタ22のゲートgとソースs間の電圧(ゲートソース間電圧)であり、Vthは、駆動用トランジスタ22の閾値電圧である。なお、飽和領域とは、(Vgs−Vth<Vds)の条件を満たした状態をいう(Vdsは、駆動用トランジスタ22のソースsとドレインd間の電圧)。
図2の画素101aでは、経時劣化により有機EL素子のI−V特性は、図3に示すように変化し、駆動用トランジスタ22のドレイン電圧は変化するが、駆動用トランジスタ22のゲートソース間電圧Vgsを一定に保つことで、発光素子24には一定量の電流Idsが流れる。即ち、電流Idsと、有機EL素子の発光輝度とは比例関係にあるので、輝度自体は経時劣化によってもほぼ変化しない。
しかしながら、Pチャネル型トランジスタは、低温ポリシリコンよりも安価に作成できるアモルファスシリコンで作成することができないため、より安価に画素回路を構成しようとする場合には、Nチャネル型トランジスタで構成する方が望ましい。
そこで、図4の画素101bに示すように、Pチャネル型である駆動用トランジスタ22をNチャネル型の駆動用トランジスタ25に代えることが考えられる。
すなわち、図4の画素101bは、図3に示した画素101aの構成のうち、Pチャネル型の駆動用トランジスタ22をNチャネル型の駆動用トランジスタ25に代えた構成を示している。
図4の画素101bの構成では、駆動用トランジスタ25のソースsが発光素子24に接続されてしまうため、有機EL素子の経時変化とともに駆動用トランジスタ25のゲートソース間電圧Vgsが変化してしまう。これにより、発光素子24に流れる電流が変化し、発光輝度は変化してしまう。また、画素101bごとに駆動用トランジスタの閾値電圧Vthおよび移動度μは異なるため、式(1)に応じて電流値Idsにバラツキが生じ、発光輝度も画素ごとに異なることになる。
そこで、有機EL素子の経時劣化、駆動用トランジスタの特性バラツキを防止し、かつ、画素101を構成する素子数が少ない回路として、後述する本発明を適用したELパネルにも採用する図5に示す画素101cの構成が、本出願人により提案されている。
図5の画素101cは、サンプリング用トランジスタ31、駆動用トランジスタ32、保持容量33、および発光素子34を有する。サンプリング用トランジスタ31のゲートは走査線WSL10と接続され、サンプリング用トランジスタ31のドレインは映像信号線DTL10と接続されるとともに、ソースが駆動用トランジスタ32のゲートgと接続されている。
駆動用トランジスタ32のソースs及びドレインdの一方は発光素子34のアノードに接続され、他方が電源線DSL10に接続される。保持容量33は、駆動用トランジスタ32のゲートgと発光素子34のアノードの間に接続されている。また、発光素子34のカソードは所定の電位Vcatに設定されている配線35に接続されている。
以上のように構成される画素101cにおいて、サンプリング用トランジスタ31が、走査線WSL10から供給された制御信号に応じてオン(導通)すると、保持容量33は、映像信号線DTL10を介して水平セレクタ103から供給された電荷を蓄積して保持する。駆動用トランジスタ32は、第1電位Vccにある電源線DSL10から電流の供給を受け、保持容量33に保持された信号電位Vsigに応じて駆動電流Idsを発光素子34に流す。発光素子34に所定の駆動電流Idsが流れることにより、画素101cが発光する。
画素101cは、閾値補正機能を有する。閾値補正機能とは、駆動用トランジスタ32の閾値電圧Vthに相当する電圧を保持容量33に保持させる機能であり、これにより、ELパネル100の画素毎のばらつきの原因となる駆動用トランジスタ32の閾値電圧Vthの影響をキャンセルすることができる。
また、画素101cは、上述した閾値補正機能に加え、移動度補正機能も有する。移動度補正機能とは、保持容量33に信号電位Vsigを保持する際、駆動用トランジスタ32の移動度μに対する補正を信号電位Vsigに加える機能である。
さらに、画素101cは、ブートストラップ機能も備えている。ブートストラップ機能とは、駆動用トランジスタ32のソース電位Vsの変動にゲート電位Vgを連動させる機能であり、これにより、駆動用トランジスタ32のゲートgとソースs間の電圧Vgsを一定に維持することが出来る。
なお、閾値補正機能、移動度補正機能、およびブートストラップ機能については、後述する図10、図14、および図15などでも説明する。
以下では、単に画素101という場合であっても、画素101は、図5に示した画素101cの構成を有しているものとする。
図6は、画素101の動作を説明するタイミングチャートである。
図6は、同一の時間軸(図面横方向)に対する走査線WSL10、電源線DSL10、および映像信号線DTL10の電位変化と、それに対応する駆動用トランジスタ32のゲート電位Vg及びソース電位Vsの変化を示している。
図6において、時刻t1までの期間は、前の水平期間(1H)の発光がなされている発光期間T1である。
発光期間T1が終了した時刻t1から時刻t4までは、駆動用トランジスタ32のゲート電位Vg及びソース電位Vsを初期化することで閾電圧補正動作の準備を行う閾値補正準備期間T2である。
閾値補正準備期間T2では、時刻t1において、電源スキャナ105が、電源線DSL10の電位を高電位であるVccから低電位であるVssに切換え、時刻t2において、水平セレクタ103が、映像信号線DTL10の電位を信号電位Vsigから基準電位Vofsに切換える。次に、時刻t3において、ライトスキャナ104が、走査線WSL10の電位を高電位に切換え、サンプリング用トランジスタ31をオンさせる。これにより、駆動用トランジスタ32のゲート電位Vgが基準電位Vofsにリセットされ、且つ、ソース電位Vsが映像信号線DTL10の低電位Vssにリセットされる。
時刻t4から時刻t5までは、閾値補正動作を行う閾値補正期間T3である。閾値補正期間T3では、時刻t4において、電源スキャナ105により、電源線DSL10の電位が高電位Vccに切換えられ、閾値電圧Vthに相当する電圧が、駆動用トランジスタ32のゲートgとソースsとの間に接続された保持容量33に書き込まれる。
時刻t5から時刻t7までの書き込み+移動度補正準備期間T4では、走査線WSL10の電位が高電位から低電位一旦切換えられるとともに、時刻t7の前の時刻t6において、水平セレクタ103が、映像信号線DTL10の電位を基準電位Vofsから階調に応じた信号電位Vsigに切換える。
そして、時刻t7から時刻t8までの書き込み+移動度補正期間T5において、映像信号の書き込みと移動度補正動作が行われる。即ち、時刻t7から時刻t8までの間、走査線WSL10の電位が高電位に設定され、これにより、映像信号の信号電位Vsigが閾値電圧Vthに足し込まれる形で保持容量33に書き込まれると共に、移動度補正用の電圧ΔVμが保持容量33に保持された電圧から差し引かれる。
書き込み+移動度補正期間T5終了後の時刻t8において、走査線WSL10の電位が低電位に設定され、それ以降、発光期間T6として、信号電圧Vsigに応じた発光輝度で発光素子34が発光する。信号電圧Vsigは、閾値電圧Vthに相当する電圧と移動度補正用の電圧ΔVμとによって調整されているため、発光素子34の発光輝度は駆動用トランジスタ32の閾値電圧Vthや移動度μのばらつきの影響を受けることがない。
なお、発光期間T6の最初でブートストラップ動作が行われ、駆動用トランジスタ32のゲート‐ソース間電圧Vgs=Vsig+Vth−ΔVμを一定に維持したまま、駆動用トランジスタ32のゲート電位Vg及びソース電位Vsが上昇する。
また、時刻t8から所定時間経過後の時刻t9において、映像信号線DTL10の電位が、信号電位Vsigから基準電位Vofsに落とされる。図6において、時刻t2から時刻t9までの期間は水平期間(1H)に相当する。
以上のようにして、画素101として画素101cの構成を有するELパネル100では、駆動用トランジスタ32の閾値電圧Vthや移動度μのばらつきの影響を受けることがなく、発光素子34を発光させることができる。
図7乃至図15を参照して、画素101(101c)の動作についてさらに詳細に説明する。
図7は、発光期間T1の画素101の状態を示している。
発光期間T1では、サンプリング用トランジスタ31がオフ(走査線WSL10の電位が低電位)、かつ電源線DSL10の電位が高電位Vccとなっており、駆動用トランジスタ32が駆動電流Idsを発光素子34に供給している。このとき駆動用トランジスタ32は飽和領域で動作するように設定されているため、発光素子34に流れる駆動電流Idsは、駆動用トランジスタ32のゲートソース間電圧Vgsに応じて式(1)で表される値をとる。
そして、閾値補正準備期間T2の最初の時刻t1において、図8に示すように、電源スキャナ105は、電源線DSL10の電位を高電位Vcc(第1電位)から低電位Vss(第2電位)に切換える。このとき電源線DSL10の電位Vssが発光素子34の閾値電圧Vthelとカソード電位Vcatの和よりも小さければ(Vss<Vthel+Vcat)発光素子34は消光し、駆動用トランジスタ32の電源線DSL10と接続された側がソースsとなる。また、発光素子34のアノードは電位Vssに充電される。
次に、図9に示すように、時刻t2において、水平セレクタ103が映像信号線DTL10の電位を基準電位Vofsにした後、時刻t3において、ライトスキャナ104が、走査線WSL10の電位を高電位に切換えることより、サンプリング用トランジスタ31をオンにする。これにより、駆動用トランジスタ32のゲート電位VgはVofsとなり、ゲートソース間電圧Vgsは、Vofs−Vssという値をとる。ここで、駆動用トランジスタ32のゲートソース間電圧Vgsである(Vofs−Vss)は、次の閾値補正期間T3で閾値補正動作を行うため、閾値電圧Vthよりも大である(Vofs−Vss>Vth)必要がある。逆に言うと、(Vofs−Vss>Vth)の条件を満たすように、電位VofsおよびVssが設定される。
そして、閾値補正期間T3の最初の時刻t4において、図10に示すように、電源スキャナ105が電源線DSL10の電位を低電位Vssから高電位Vccに切換えると、駆動用トランジスタ32の発光素子34のアノードと接続されている側がソースsとなり、図10において1点鎖線で示されるように電流が流れる。
ここで、発光素子34は等価的にダイオード34Aと寄生容量をCelとする保持容量34Bで表すことができ、発光素子34のリーク電流が駆動用トランジスタ32に流れる電流よりもかなり小さい(Vel≦Vcat+Vthelを満たす)という条件の下では、駆動用トランジスタ32に流れる電流は保持容量33と34Bを充電するために使用される。発光素子34のアノード電位Vel(駆動用トランジスタ32のソース電位Vs)は、図11に示されるように、駆動用トランジスタ32を流れる電流に応じて上昇する。所定時間経過後、駆動用トランジスタ32のゲートソース間電圧VgsがVthという値をとる。また、このときの発光素子34のアノード電位Velは(Vofs−Vth)である。ここで、発光素子34のアノード電位Velは、発光素子34の閾値電圧Vthelとカソード電位Vcatの和以下となっている(Vel=(Vofs−Vth)≦(Vcat+Vthel))。
その後、時刻t5において、図12に示されるように、走査線WSL10の電位が高電位から低電位に切替えられ、サンプリング用トランジスタ31がオフして閾値補正動作(閾値補正期間T3)が完了する。
続く書き込み+移動度補正準備期間T4の時刻t6において、水平セレクタ103によって、映像信号線DTL10の電位が、基準電位Vofsから、階調に応じた信号電位Vsigに切換えられた(図12)後、書き込み+移動度補正期間T5に入り、図13に示されるように、時刻t7において、走査線WSL10の電位が高電位に設定されることでサンプリング用トランジスタ31がオンして、映像信号の書き込みと移動度補正動作が行われる。駆動用トランジスタ32のゲート電位Vgは、サンプリング用トランジスタ31がオンしているため信号電位Vsigとなるが、サンプリング用トランジスタ31には電源線DSL10からの電流が流れるため、駆動用トランジスタ32のソース電位Vsは、時間とともに上昇していく。
駆動用トランジスタ32の閾値補正動作は既に完了している。よって、式(1)の右辺の閾値補正の項、即ち(Vsig−Vofs)2の項の影響はなくなるので、駆動用トランジスタ32が流す電流Idsは移動度μを反映したものとなる。具体的には、図14に示されるように、移動度μが大きい場合には、駆動用トランジスタ32が流す電流Idsは大きくなり、ソース電位Vsの上昇も早い。一方、移動度μが小さい場合には、駆動用トランジスタ32が流す電流Idsは小さくなり、ソース電位Vsの上昇は遅くなる。換言すると、一定時間経過時点では、移動度μが大きい場合には、駆動用トランジスタ32のソース電位Vsの上昇量△Vμ(電位補正値)は大きくなり、移動度μが小さい場合には、駆動用トランジスタ32のソース電位Vsの上昇量△Vμ(電位補正値)は小さくなる。これによって、各画素101の駆動用トランジスタ32のゲートソース間電圧Vgsのバラツキが、移動度μを反映して小さくなり、一定時間経過後の各画素101のゲートソース間電圧Vgsは、移動度μのバラツキを完全に補正した電圧となる。
時刻t8において、走査線WSL10の電位が低電位に設定されることでサンプリング用トランジスタ31がオフして、書き込み+移動度補正期間T5が終了し、発光期間T6となる(図15)。
発光期間T6では、駆動用トランジスタ32のゲートソース間電圧Vgsは一定であるので、駆動用トランジスタ32は一定電流Ids’を発光素子34に供給し、発光素子34のアノード電位Velは、発光素子34に一定電流Ids’という電流が流れる電圧Vxまで上昇し、発光素子34は発光する。駆動用トランジスタ32のソース電位Vsが上昇すると、保持容量33のブートストラップ機能により、駆動用トランジスタ32のゲート電位Vgも連動して上昇する。
画素101cを採用した画素101においても、発光素子34は、発光時間が長くなると、I−V特性は変化する。そのため、図15に示されるB点の電位も時間とともに変化する。しかしながら、駆動用トランジスタ32のゲートソース間電圧Vgsは一定値に保たれているので、発光素子34に流れる電流は変化しない。したがって、発光素子のI−V特性が経時劣化しても、一定電流Ids’が流れ続けるので、発光素子34の輝度が変化することはない。
以上のように、画素101(101c)を備える図5のELパネル100においては、閾値補正機能および移動度補正機能によって画素101ごとの閾値電圧Vth及び移動度μの相違を補正することができる。また、発光素子34の経時変動(劣化)も補正することができる。
これにより、図5のELパネル100を用いた表示装置では、高品位な画質を得ることが可能である。
しかしながら、図5のELパネル100の構成を、液晶ディスプレイ(LCD)の構成と比較すると、液晶ディスプレイには電源線DSL10に相当する制御線がなく、ELパネル100は制御線の数が多いということが言える。
そこで、より構成を簡素化し、より低コスト化を図ったELパネルとして、図16のELパネル200を示す。
即ち、図16は、本発明を適用したELパネルの一実施の形態の構成例を示すブロック図である。なお、図16において、図1と対応する部分については同一の符号を付してあり、その説明を適宜省略する。
図1のELパネル100では、各行の画素101に対して個別に設けられていた電源線DSL10−1乃至10−Mに代えて、ELパネル200では、全ての画素101に対して共通の電源線DSL212が設けられており、第1電位としての高電位Vccまたは第2電位としての低電位Vssの電源電圧が、電源供給部211から電源線DSL212を介して、全ての画素101に一律に供給される。すなわち、電源供給部211は、画素アレイ部102の全ての画素101に対して同一の電源電圧制御を行う。
ELパネル200の電源供給部211および電源線212以外の構成は、図1のELパネル100と同様である。ただし、画素アレイ部102の各画素101は、図5に示した画素101cの構成を有している。
次に、図17を参照して、ELパネル200で基本となる駆動制御方式(以下、基本駆動制御方式という)について説明する。図17は、電源線DSL212を介して電源供給部211から全ての画素101に電源電圧が供給されるタイミングと、各行の画素101の発光タイミングを示している。
図17において、時刻t21から時刻t34までの期間が1枚の映像を表示するための単位時間(以下、1フィールド期間(1F)という)であり、そのうちの時刻t21から時刻t25までの期間が全画素が共通に制御される期間(以下、全画素共通期間という)である。また、時刻t25から時刻t34までの期間は全画素101に対して線順次に走査を行う線順次走査期間である。
最初に、全画素共通期間の時刻t21において、電源供給部211は、電源線DSL212に供給する電位を高電位Vccから低電位Vssに切換える。なお、時刻t21においては、走査線WSL10−1乃至10−Mの各電位および映像信号線DTL10−1乃至10−Nの各電位は、低電位側に設定されている。
そして、時刻t22において、ライトスキャナ104が、供給する電位を走査線WSL10−1乃至10−Mに対して同時に高電位に切換える。これにより、図9を参照して説明したように、駆動用トランジスタ32のゲート電位VgはVofsとなり、ソース電位VsはVssとなる。その結果、ゲートソース間電圧Vgsが駆動用トランジスタ32の閾値電圧Vthよりも大であるVofs−Vss(>Vth)という値をとることになり、閾値補正を行う前の閾値補正準備動作が行われている。したがって、時刻t22から時刻t23までは閾値補正準備期間である。
閾値補正の準備が完了すると、時刻t23において、電源供給部211が電源線DSL212に供給する電位を低電位Vssから高電位Vccに切換えることにより、全画素101で同時に閾値補正動作が開始される。すなわち、図10を参照して説明したように、発光素子34のアノード電位Vel(駆動用トランジスタ32のソース電位)が、駆動用トランジスタ32を流れる電流に応じて上昇し、所定時間後には(Vofs−Vth)に等しくなる。時刻t24には、走査線WSL10−1乃至10−Mそれぞれに供給する電位が、ライトスキャナ104により、一斉に低電位に切換えられ、閾値補正動作が終了する。
そして、時刻t25から、画素101に対して線順次に映像信号を書き込む線順次走査期間が開始する。
すなわち、時刻t25から時刻t30までの期間、映像信号線DTL10−1乃至10−Nそれぞれの電位が階調に応じた信号電位Vsigに設定され、その間に、ライトスキャナ104は、走査線WSL10−1乃至10−Mに対して順番に(線順次に)、供給する電位をTs時間だけ高電位に切換える。Ts時間だけ高電位に切換えられた行の画素101の発光素子34は発光する。
なお、走査線WSL10の電位が高電位に設定されるあいだは、図13を参照して説明したように、駆動用トランジスタ32のソース電位Vsも上昇していくので、映像信号の書き込みとともに移動度補正も行われている。
M行目の走査線WSL10−Mに対する高電位の電源電圧の供給が終了すると、時刻t30に、映像信号線DTL10−1乃至10−Nそれぞれの電位が一斉に基準電位Vofsに切替えられる。
そして、基準電位Vofsが映像信号線DTL10−1乃至10−Nそれぞれに対して供給されている状態で、時刻t31から、ライトスキャナ104は、走査線WSL10−1乃至10−Mに対して順番に(線順次に)、Ts時間だけ高電位に切替える。Ts時間だけ高電位に切換えられた行の画素101では、駆動用トランジスタ32のゲートgに基準電位Vofsが供給されることとなり、駆動用トランジスタ32のゲートソース間電圧Vgsが閾値電圧Vth以下となって、発光素子34が消光する。ここで、発光素子34を消光させるためには、駆動用トランジスタ32のゲートgに供給する電位は、必ずしも基準電位Vofsである必要はなく、発光素子34のカソード電位Vcatと発光素子34の閾値電圧Vthel、および駆動用トランジスタ32の閾値電圧Vthの和(Vcat+Vthel+Vth)以下であればよいが、閾値補正の基準電位Vofsと同一にすることで、制御を簡単にすることができる。
基本制御方式においては、基準電位Vofsが映像信号線DTL10に供給されている状態でサンプリング用トランジスタ31をオンすることで発光素子34を消光させ、各行の発光期間を制御している。したがって、発光期間は、信号電位Vsigが映像信号線DTL10に供給されている状態におけるサンプリング用トランジスタ31のオフから、基準電位Vofsが映像信号線DTL10に供給されている状態におけるサンプリング用トランジスタ31のオンまでである。なお、発光期間は各行で同一とする必要があるため、最終行のM行目の映像信号の書き込みは、1フィールド期間の終了時から発光期間だけ前に行われる必要がある。
以上のように、電源ラインである電源線DSL212を全画素共通として、全画素共通期間内に、閾値補正準備動作と閾値補正動作を全画素で同時に(一斉に)行うことにより、ELパネル200の回路を簡素化し、電源制御を容易にすることが可能となるので、パネル全体のコストを低減させることが可能となる。
ここで各画素の駆動用トランジスタ32について考える。
図18のAは、駆動用トランジスタ32に正バイアスをかけたときの、そのゲートソース間の電圧Vgsと電流値Idsとの関係を示す図である。図18のBは、駆動用トランジスタ32に負バイアスをかけたときの、そのソースsとドレインd間の電圧Vdsと電流値Idsとの関係を示す図である。図18のA,Bとも、実線は、初期状態の特性を示しており、点線は、経時変化後の特性を示している。
駆動用トランジスタ32は、ゲートgにバイアスをかけることで、その閾値電圧Vthが変動する。この閾値電圧Vthの変動は、図18のA,Bにおいては、実線から点線に水平方向に引かれた矢印として示されている。即ち、図18のAの矢印によって示されるように、閾値電圧Vthは、正バイアスならば正方向に変動する。これに対して、図18のBの矢印によって示されるように、閾値電圧Vthは、負バイアスならば負方向に変動する。特に、駆動用トランジスタ32がアモルファスシリコンで作成されている場合には、時間に対する閾値電圧Vthの変動量が非常に大きい。
本実施の形態では、上述の如く、駆動トランジスタ32の閾値電圧Vthを補正する方式をとっているが、閾値電圧補正動作前に駆動トランジスタ32のゲートソース間電圧Vgsを閾値電圧Vth以上にする必要がある。
なぜならば、ゲートソース間電圧Vgsが閾値電圧Vth以下であると、電流Idsとしてはリーク電流しか流れなくなるため、駆動トランジスタ32のゲートソース間電圧Vgsは、Vofs−Vss(VofsとVssgは例えば図17参照)からほとんど変化しなくなるため、閾値補正動作ができないという問題が発生するからである。
そこで、かかる問題の解決策として、EL素子を消光する際にEL素子に信号電圧に応じた逆バイアスを印加して閾値電圧の変動量を小さくするという手法を採用することができる。具体的には例えば、図19は、かかる手法を、図17の基本駆動制御方式に適用した場合のタイミングチャートを示している。
逆バイアスをかける時間(以下、逆バイアス期間という)は、EL素子を消光してから、電源線DSL212を高電位であるVccから低電位であるVssに切換えるまでの期間となる。このため、図19中では、1行目逆バイアス期間が最も長く、最終行目(=M行目)逆バイアス期間が最も短くなる。このため、各行の各EL素子はたとえ同一の輝度で発光していても、逆バイアス期間が行毎に異なってしまうという問題(以下、逆バイアス行間アンバランス問題という)が発生してしまう。
そこで、本発明人は、逆バイアス行間アンバランス問題を解消すべく、図20に示されるような駆動制御方式(以下、信号書き込み反転方式)をさらに発明した。即ち、図20は、本発明が適用される駆動制御方式の一例である信号書き込み反転方式を説明するタイミングチャートである。
なお、図21は、かかる信号書き込み反転方式を模式的に説明する図である。図21において、四角の形状は1つのフィールドを示しており、各フィールドの左辺近傍の数字は行(ライン)を示している。
図20や図21に示されるように、信号書き込み反転方式とは、駆動制御方式自体は図19の方式を踏襲するが、各行の信号書き込みのタイミングを1フィールド毎に反転させ、同様に、各行の逆バイアス期間の開始タイミングも1フィールド毎に反転させる方式をいう。また、信号書き込み反転方式では、映像信号線DTL10−1乃至10−Nに対して印加する逆バイアス電圧の電位Vini(以下、逆バイアス電位Viniという)は、2フィールド分の信号電圧Vsigを反映した電位とする。具体的には例えば、2フィールド間の変化が、白→白のときが、逆バイアス電位の絶対値|Vini|は最大値となり、黒→黒のときが、逆バイアス電位の絶対値|Vini|は最小値となる。
具体的には例えば、図20に示されるように、2フィールドのうちの最初のフィールドの信号書き込み期間では、映像信号線DTL10−1乃至10−Nそれぞれの電位が階調に応じた信号電位Vsigに設定され、その間に、ライトスキャナ104は、走査線WSL10−1乃至10−Mに対して順番に(線順次に)、供給する電位をTs時間だけ高電位に切換える。Ts時間だけ高電位に切換えられた行の画素101の発光素子34は発光する。
詳細には、最初に、1行目の走査線WSL10−1の電位が時刻t26で高電位に切り替えられTs時間経過後、1行目発光期間が開始する。次に、2行目の走査線WSL10−2の電位が時刻t27で高電位に切り替えられTs時間経過後、2行目発光期間が開始する。その後、各行の発光期間が順次開始され、最終的に、最終行(M行)目の走査線WSL10−Mの電位が時刻t28で高電位に切り替えられTs時間経過後、M行目発光期間が開始する。
その後、時刻t30に、映像信号線DTL10−1乃至10−Nそれぞれの電位が一斉に、基準電位Vofsよりも低い逆バイアス電位Viniに切替えられる。これにより、各行毎に、その発光期間が順次終了していく度に、その順番で逆バイアス期間に順次移行していく(図21の左側のフィールドの矢印参照)。
即ち、逆バイアス電位Viniが映像信号線DTL10−1乃至10−Nそれぞれに対して供給されている状態で、時刻t31から、ライトスキャナ104は、走査線WSL10−1乃至10−Mに対して順番に(線順次に)、Ts時間だけ高電位に切替える。Ts時間だけ高電位に切換えられた行の画素101では、駆動用トランジスタ32のゲートgに逆バイアス電位Viniが供給されることとなり、駆動用トランジスタ32のゲートソース間電圧Vgsが閾値電圧Vth以下となって、発光素子34が消光し、逆バイアス期間に移行する。
詳細には、最初に、1行目の走査線WSL10−1が高電位に切り替えられた時刻t31で1行目発光期間が終了し、Ts時間経過後に1行目逆バイアス期間に移行する。次に、2行目の走査線WSL10−2が高電位に切り替えられた時刻t32で2行目発光期間が終了し、Ts時間経過後に2行目逆バイアス期間に移行する。その後、発光期間終了から逆バイアス期間移行への動作が各行毎にその順番で順次行われ、最終的に、最終行(M行)の走査線WSL10−Mが高電位に切り替えられた時刻t33でM行目発光期間が終了し、Ts時間経過後にM行目逆バイアス期間に移行する。
その後、時刻t34に、電源供給部211は、電源線DSL212に供給する電位を高電位Vccから低電位Vssに切換える。また、映像信号線DTL10−1乃至10−Nそれぞれの電位が一斉に、逆バイアス電位Viniから基準電位Vofsに切替えられる。これにより、全ての行の逆バイアス期間が終了する。
換言すると、時刻t34とは、次のフィールドについての全画素共通期間の開始時刻でもある。即ち、時刻t34の後、次のフィールドについても、前のフィールドと全く同様に、閾値補正準備動作と閾値補正動作が行われる。その後、次のフィールドの信号書き込み動作が行われる。ただし、次のフィールドの信号書き込み動作は、上述したフィールド(次のフィールドにとっての直前のフィールド)の信号書き込み動作と反転した動作になる。
即ち、映像信号線DTL10−1乃至10−Nそれぞれの電位が階調に応じた信号電位Vsigに設定され、その間に、ライトスキャナ104は、走査線WSL10−1乃至10−Mに対して逆の順番に(線順次とは逆に)、供給する電位をTs時間だけ高電位に切換える。Ts時間だけ高電位に切換えられた行の画素101の発光素子34は発光する。
詳細には、最初に、最終行(M行)目の走査線WSL10−Mの電位が時刻t61で高電位に切り替えられTs時間経過後、M行目発光期間が開始する。次に、図20に図示はしないが、最終行(M行)の1つ上の行(M−1行)目の走査線WSL10−(M−1)の電位が高電位に切り替えられTs時間経過後、(M−1)行目発光期間が開始する。その後、各行の発光期間が、下から上に向かう順番(逆の順番)で順次開始される。そして、2行目の走査線WSL10−2の電位が時刻t62で高電位に切り替えられTs時間経過後、2行目発光期間が開始した後、最終的に、1行目の走査線WSL10−1の電位が時刻t63で高電位に切り替えられTs時間経過後、1行目発光期間が開始する。
その後、時刻t70に、映像信号線DTL10−1乃至10−Nそれぞれの電位が一斉に、基準電位Vofsよりも低い逆バイアス電位Viniに切替えられる。これにより、各行毎に、その発光期間が、下から上に向かう順番(逆の順番)で順次終了していく度に、その逆の順番で逆バイアス期間に順次移行していく(図21の右側のフィールドの矢印参照)。
即ち、逆バイアス電位Viniが映像信号線DTL10−1乃至10−Nそれぞれに対して供給されている状態で、時刻t71から、ライトスキャナ104は、走査線WSL10−1乃至10−Mに対して逆の順番に(線順次とは逆に)、Ts時間だけ高電位に切替える。Ts時間だけ高電位に切換えられた行の画素101では、駆動用トランジスタ32のゲートgに逆バイアス電位Viniが供給されることとなり、駆動用トランジスタ32のゲートソース間電圧Vgsが閾値電圧Vth以下となって、発光素子34が消光し、逆バイアス期間に移行する。
詳細には、最初に、M行目の走査線WSL10−Mが高電位に切り替えられた時刻t71でM行目発光期間が終了し、Ts時間経過後にM行目逆バイアス期間に移行する。次に、図20に図示はしないが、最終行(M行)の1つ上の行(M−1行)目の走査線WSL10−(M−1)の電位が高電位に切り替えられた時刻で(M−1)行目発光期間が終了し、Ts時間経過後に(M−1)行目逆バイアス期間に移行する。その後、発光期間終了から逆バイアス期間移行への動作が各行毎にその逆の順番(下から上に向かう順番)で順次行われる。そして、2行目の走査線WSL10−2が高電位に切り替えられた時刻t72で2行目発光期間が終了し、Ts時間経過後に2行目逆バイアス期間に移行した後、最終的に、1行目の走査線WSL10−1が高電位に切り替えられた時刻t73で1行目発光期間が終了し、Ts時間経過後に1行目逆バイアス期間に移行する。
その後、時刻t74に、電源供給部211は、電源線DSL212に供給する電位を高電位Vccから低電位Vssに切換える。また、映像信号線DTL10−1乃至10−Nそれぞれの電位が一斉に、逆バイアス電位Viniから基準電位Vofsに切替えられる。これにより、全ての行の逆バイアス期間が終了する。
以上図20や図21を用いて説明したように、信号書き込み反転方式を採用することで、即ち、1フィールド毎にEL素子の消光タイミングを反転させることで、2フィールド単位でみると、EL素子にかかる逆バイアスの時間、即ち、逆バイアス期間を全行で一定とすることができる。また、2フィールド分の信号電圧を反映した逆バイアス電位Viniを印加することができるので、同じ白表示においても、各行毎に信号線電位を変える必要もなくなる。
なお、信号書き込み反転方式を採用するにあたって、2フィールドで駆動トランジスタ32の閾値電圧Vthの正方向と負方向の両変動量を合わせる必要がある。このため、逆バイアス動作を行っても、1フィールド終了時には表示画像の行によって駆動トランジスタ32の閾値電圧Vthの変動量が補正されていない場合もある。しかしながら、この変動は、次のフィールドの最初に行う閾値補正動作によって補正されるため、問題とならない。また、1フィールドで閾値補正動作を行うことで、1フィールドでの閾値電圧Vthの変動量を補正することができる。
さらに、信号書き込み反転方式は、例えば、1行目の発光が最終行の信号書き込み以前に終了する場合についても、映像信号線DTL10−1乃至10−Nの電位を、逆バイアス電位Vini、信号電位Vsigという順で出力することで適用可能である。さらに、1フィールドで閾値補正動作を行い、さらに信号書き込み動作前に再び閾値補正動作を行う方式であっても、映像信号線DTL10−1乃至10−Nの電位を、閾値補正のための基準電位Vofs、逆バイアス電位Vini、信号電位Vsigとすることで、信号書き込み反転方式を適用することができる。
このように、信号書き込み反転方式を採用することで、2フィールドの単位でみると、白表示時でも黒表示時でも、発光期間時における閾値電圧Vthの正方向の変動分だけ非発光時である逆バイアス期間に逆バイアスをかけて、閾値電圧Vthの変動量を補正することができるので、その結果、経時変化後もTFT起因の焼き付き等のない均一な画質を得ることができるようになる。
さらに、本発明人は、逆バイアス行間アンバランス問題を解消すべく、信号書き込み反転方式のみならず、次のような駆動制御方式も発明した。即ち、図22に示されるように、各行のそれぞれについて、信号書き込みによる発光期間の開始タイミングと、非発光期間である逆バイアス期間の開始タイミングの位相を1フィールド毎に一定周期で変化させる方式(以下、信号書き込み位相変化方式という)を、本発明人はさらに発明した。なお、図22において、白色の期間が各行の発光期間を示しており、濃い灰色の期間が各行の逆バイアス期間(非発光期間)を示しており、薄い灰色の期間が各行の閾値補正準備から信号書き込みが行われるまでの動作期間を示している。
また、図示はしないが、信号書き込み位相変化方式では、映像信号線DTL10−1乃至10−Nに印加する逆バイアス電位Viniは、一定周期内の信号電圧全てを反映した電位とする。
具体的には例えば、図23は、4フィールドを一定周期とした場合の信号書き込み位相変化方式の一例を模式的に説明する図である。図23において、四角の形状は1つのフィールドを示しており、各フィールドの左辺近傍の数字は行(ライン)を示している。なお、このことは、図24も同様であるとする。
図23に示されるように、4フィールドのうちの1番目のフィールドでは、1行乃至M行(最終行)の行順番で順次、各行のそれぞれについて、信号書き込みによる発光期間が開始され、それが終了すると、非発光期間である逆バイアス期間が開始される。
次の2番目のフィールドでは、例えば50行乃至M行(最終行)の行順番で順次、各行のそれぞれについて、信号書き込みによる発光期間が開始され、それが終了すると、非発光期間である逆バイアス期間が開始される。その後、さらに、1行乃至49行の行順番で順次、各行のそれぞれについて、信号書き込みによる発光期間が開始され、それが終了すると、非発光期間である逆バイアス期間が開始される。
なお、例えば50行乃至M行(最終行)の行順番と記述したのは、先頭の行を50行とすることは必須でなく、単なる例示に過ぎないからである。
次の3番目のフィールドでは、49行乃至1行の逆の行順番で順次、各行のそれぞれについて、信号書き込みによる発光期間が開始され、それが終了すると、非発光期間である逆バイアス期間が開始される。その後、さらに、M行(最終行)乃至50行の行順番で順次、各行のそれぞれについて、信号書き込みによる発光期間が開始され、それが終了すると、非発光期間である逆バイアス期間が開始される。
最後の4番目のフィールドでは、M行(最終行)乃至1行の逆の行順番で順次、各行のそれぞれについて、信号書き込みによる発光期間が開始され、それが終了すると、非発光期間である逆バイアス期間が開始される。
ここで、例えば49行目の視点から上述した内容を換言すると、1番目のフィールドでは、49番目のタイミング(位相)で、信号書き込みによる発光期間が開始され、それが終了すると、非発光期間である逆バイアス期間が開始される。次の2番目のフィールドでは、今度は、M番目のタイミング(位相)で、信号書き込みによる発光期間が開始され、それが終了すると、非発光期間である逆バイアス期間が開始される。次の3番目のフィールドでは、今度は、1番目のタイミング(位相)で、信号書き込みによる発光期間が開始され、それが終了すると、非発光期間である逆バイアス期間が開始される。そして、最後の4番目のフィールドでは、今度は、M−49番目のタイミング(位相)で、信号書き込みによる発光期間が開始され、それが終了すると、非発光期間である逆バイアス期間が開始される。
以上図22や図23を用いて説明したように、信号書き込み位相変化方式を採用することで、即ち、1フィールド毎にEL素子の消光タイミングの位相を一定周期内で変化させていくことで、一定周期単位でみると、EL素子にかかる逆バイアスの時間、即ち、逆バイアス期間を全行で一定とすることができる。また、一定周期内の信号電圧を全て反映した逆バイアス電位Viniを印加することができるので、同じ白表示においても、各行毎に信号線電位を変える必要もなくなる。
換言すると、1フィールド毎のEL素子の消光タイミングの位相の変化の仕方は、一定周期単位でみて、EL素子にかかる逆バイアスの時間、即ち、逆バイアス期間を全行で一定とすることができる変化の仕方であれば足り、特に限定されない。具体的には例えば、図23の代わりに、図24に示されるように位相を変化させるようにしても構わない。
このように、信号書き込み位相変化方式を採用することで、一定周期単位でみると、白表示時でも黒表示時でも、発光期間時における閾値電圧Vthの正方向の変動分だけ非発光時である逆バイアス期間に逆バイアスをかけて、閾値電圧Vthの変動量を補正することができるので、その結果、経時変化後もTFT起因の焼き付き等のない均一な画質を得ることができるようになる。また、一定周期内で発生する閾値電圧Vthの変動量は閾値補正動作で補正することができるようになる。
以上、図19の駆動制御方式で発生する逆バイアス行間アンバランス問題を解消できる駆動制御方式として、信号書き込み反転方式と、信号書き込み位相変化方式とについて説明した。しかしながら、これらの方式に限定されず、結局、次のような方式であれば、図19の駆動制御方式で発生する逆バイアス行間アンバランス問題を解消できる。即ち、次の方式とは、本発明が適用される駆動制御方式であって、信号書き込み反転方式と、信号書き込み位相変化方式とは、かかる駆動制御方式の例示にしか過ぎない。
即ち、書き込み動作が終了した行の駆動用トランジスタ32に対して逆バイアスをかける逆バイアス動作を行単位で行い、フィールド周期の整数倍である一定周期内での逆バイアス動作の総期間を各行で一致させる逆バイアス制御を含むような駆動制御方式であれば、逆バイアス行間アンバランス問題を解消できる。
また、上述した例では、最初の閾値補正をELパネル200の全画素(すべての行)に対して行う例について説明したが、2行以上の単位で順次閾値補正を行うようにしてもよい。この場合、電源供給部211と電源線DSL212は、最初の閾値補正を行う単位である複数行単位で制御を可能とするように構成される。
本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
31 サンプリング用トランジスタ, 32 駆動用トランジスタ, 33 キャパシタ, 34 発光素子, 101 画素(画素回路), 103 水平セレクタ, 104 ライトスキャナ, 200 ELパネル, 211 電源供給部, 212 電源線