JP2009502814A - N置換イソチアゾリノン誘導体の製造 - Google Patents

N置換イソチアゾリノン誘導体の製造 Download PDF

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Abstract

一般式(I)を有するN置換イソチアゾリノン 誘導体の製造方法であって、式(II)のN置換3−メルカプトプロピオンアミドまたは式(III)のN,N’−ビス−置換3,3’−ジチオジプロピオンアミドを、溶媒の不存在下で塩化スルフリルと反応させることを含んでなる方法を提供する。また、一般式(III)を有する化合物の製造方法であって、式(IV)のメチルエステルをメタノールの溶媒中で式(V)のアミンと反応させることを含んでなる方法も提供する。本発明の方法では添加溶媒を使用しないため、製造コストおよび環境への汚染を低減させることができる。

Description

本発明は、イソチアゾリノン誘導体の製造、より具体的には、N置換されたイソチアゾリノン誘導体の製造に関する。
イソチアゾリノン化合物は、従来の防腐剤を凌ぐ高強力、低毒性、長い有効期間および環境に対する無害という長所を備えた、新規な種類の強力かつ広分野の防腐剤である。したがって、イソチアゾリノン化合物は、水処理、化粧品、建設材料、結合剤、ペイント、医療、布、写真および洗剤の分野で広範な用途を有し、とりわけ、海洋防汚塗料中の防汚剤として使用し得る。
これまで、数多くのN置換イソチアゾリノン誘導体の製造方法が報告されており、そのほとんどは、N,N’−ビス−置換ジチオジプロピオンアミドまたはN置換メルカプトプロピオンアミドをハロゲン化剤と有機溶媒中で反応させる工程を含む。
例えば、中国特許出願CN1634889およびCN1629148は、それぞれN−アルコキシプロピルイソチアゾリノンおよびN−アルコキシエトキシルプロピルイソチアゾリノンの製造方法を開示し、これらの方法は、対応するN,N’−ビス−置換ジチオジプロピオンアミドを塩化スルフリルと酢酸エチル中で反応させることを含む。
日本国特許出願JP2003−335763は、2−置換−4−イソチアゾリン−3−オンの製造方法を開示し、この方法は、N置換メルカプトプロピオンアミドまたはN,N’−ビス−置換ジチオジプロピオンアミドをハロゲン化剤と酢酸エチル中で反応させることを含む。
欧州特許出願EP0498347は、2−メチル−イソチアゾリン−3−オンの製造方法を開示し、この方法は、N−メチル−3−メルカプトプロピオンアミドを塩素と、芳香族またはハロゲン化炭化水素、例えばベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、クロロホルムなどの溶媒中で反応させることを含む。
欧州特許出願EP1113012は、2−アルキル−4−イソチアゾリン−3−オンの製造方法を開示し、この方法は、N−アルキルメルカプトプロピオンアミドまたはN,N’−ジアルキルジチオジプロピオンアミドを塩素化剤と、例えばハロゲン化脂肪族炭化水素、ハロゲン化芳香族炭化水素または脂肪族炭化水素などのような、塩化水素が不溶性であるかまたは難溶解性を有する溶媒中で反応させることを含む。
US5,453,507は、N,N’−ジメチルまたはN,N’−ジ−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンの製造方法を開示し、この方法は、N,N’−ビス−置換ジチオジプロピオンアミドを塩化スルフリルと例えばCH、CHX、CXCHおよびCHXCHXなどのハロゲン化有機溶媒中で反応させることを含む。
しかしながら、従来技術の方法において有機溶媒を使用すると、多くの問題が引き起こされる。例えば、第一に、溶媒を使用すると反応器の容積効率が減少し、そのため生産性が低下すること;第二に、溶媒の後処理と回収によって作業費が増加すること;第三に、溶媒は反応系内に不純物を持ち込み、そのため所望生成物の分離および精製を困難にすること;最後に、使用する有機溶媒、とりわけベンゼンおよびハロゲン化炭化水素は、一般に環境への悪影響を有することである。
中国特許出願CN1634889 中国特許出願CN1629148 日本国特許出願JP2003−335763 欧州特許出願EP0498347 欧州特許出願EP1113012 US5,453,507
本発明は、費用効率がより高く環境への害がより少ない、N置換イソチアゾリノン誘導体の改善された製造方法を提供することを課題とする。
本発明のある局面によれば、次の一般式(I):
Figure 2009502814
〔式中、
は、アルキル、シクロアルキルおよびアリールからなる群から選択され、場合によりアルキル、アリール、アルコキシおよびアリールオキシからなる群から選択される置換基によって置換されていてよく;および
およびRは、それぞれ独立して、水素または塩素を表す〕
を有する化合物の製造方法であって、次の一般式(II):
Figure 2009502814
〔式中、Rは上記定義のとおりである〕
を有する化合物、または次の一般式(III):
Figure 2009502814
〔式中、Rは上記定義のとおりである〕
を有する化合物を、溶媒の不存在下で塩化スルフリルと反応させることを含んでなる方法が提供される。
本発明の好適な実施形態によると、Rは、C〜Cアルキル、C〜CシクロアルキルおよびC〜C10アリールからなる群から選択され、場合によりC〜Cアルキル、C〜C10アリール、C〜CアルコキシおよびC〜C10アリールオキシからなる群から選択される置換基によって置換されていてよい。より好ましくは、Rは、場合によりC〜C10アリールまたはC〜Cアルコキシによって置換されていてよい、C〜Cアルキルを表す。
本発明の別の好適な実施形態によれば、RおよびRは、いずれも水素または塩素を表す。
好ましくは、約−10℃〜約75℃の間、より好ましくは室温と約45℃の間の温度で、反応を行う。
本発明の方法によれば、溶媒の不存在下でN置換イソチアゾリノン誘導体を製造することができ、したがって、従来技術において有機溶媒を使用することによって引き起こされていた問題を回避することができ、製造コストおよび環境に対する汚染を大きく低減させることができる。
本発明の別の局面によれば、下記一般式(III)を有する化合物の製造方法であって、式(IV):
Figure 2009502814
の化合物を、式(V):
Figure 2009502814
〔式中、Rは上記定義のとおりである〕
を有する化合物と、メタノールの溶媒中で反応させることを含む方法が提供される。
本発明のこの方法の好適な実施形態によると、式(IV)の化合物と式(V)の化合物のモル比は約1:2.0と1:2.6の間である。反応の温度は、好ましくは約−15℃と約65℃の間である。
本発明の方法によると、式(III)の化合物を製造する間には何らのさらなる不純物も反応系内へ生じることがなく、従来技術における方法と比較して、その分離および精製を非常に簡略化することができる。
上記のとおり、本発明のある局面では、次の一般式(I):
Figure 2009502814
〔式中、
は、アルキル、シクロアルキルおよびアリールからなる群から選択され、場合によりアルキル、アリール、アルコキシおよびアリールオキシからなる群から選択される置換基によって置換されていてよく;および
およびRは、それぞれ独立して、水素または塩素を表す〕
を有するN置換イソチアゾリノン誘導体の製造方法であって、次の一般式(II):
Figure 2009502814
〔式中、Rは上記定義のとおりである〕
を有するN置換3−メルカプトプロピオンアミド、または次の一般式(III):
Figure 2009502814
〔式中、Rは上記定義のとおりである〕
を有するN,N’−ビス−置換3,3’−ジチオジプロピオンアミドを、溶媒の不存在下で塩化スルフリルと反応させることを含んでなる方法が提供される。
ここで用いる用語「アルキル」は、一般に、直鎖または分枝の飽和脂肪族炭化水素基、好ましくはC〜C10アルキル、より好ましくはC〜Cアルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチルなどを指す。
ここで用いる用語「シクロアルキル」は、一般に、飽和脂環式炭化水素基、好ましくはC〜C10シクロアルキル、より好ましくはC〜Cシクロアルキル、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルなどを指す。
ここで用いる用語「アリール」は、一般に、芳香族炭化水素基、好ましくはC〜C20アリール、より好ましくはC〜C10アリール、例えばフェニルおよびナフチル、および最も好ましくはフェニルを指す。
ここで用いる用語「溶媒の不存在下で」は、反応物質それ自体以外には、反応物質、中間体または生成物を溶解させるために反応系へ他の物質を添加しないことを意味する。
本発明によるイソチアゾリノン誘導体の製造中に、反応系中の塩化スルフリルは反応物質および反応初期での溶媒の両者として働き、並びに塩化スルフリルを使い果たした後には、得られたイソチアゾリノン誘導体が溶媒として働き、そのため添加溶媒を必要としない。
本発明の特定の実施形態では、何ら限定されるものではないが、再結晶化および溶媒抽出を含む周知の手法を用いて、所望の生成物を分離することができる。
本発明の好適な実施形態では、Rは、場合によりC〜C10アリールまたはC〜Cアルコキシによって置換されていてよいC〜Cアルキルを表す。より好ましくは、Rは、C〜Cアルキル、とりわけn−オクチルを表す。
本発明の別の好適な実施形態では、RおよびRは、いずれも水素または塩素を表す。
ある好適な実施形態では、本発明の方法は、式(II)の化合物を塩化スルフリルと反応させることを含んでなる。より好ましくは、式(II)の化合物と塩化スルフリルのモル比は、約1:1と1:11の間である。
本発明の他の実施形態では、塩化スルフリルに加えて塩素を、塩素化剤として用いることができる。
好適な実施形態では、本発明の方法は、式(III)の化合物を塩化スルフリルと、場合により塩素の存在下で、反応させることを含んでなる。より好ましくは、式(III)の化合物、塩化スルフリルおよび塩素のモル比は、約1:1〜11:0〜11、更により好ましくは約1:1〜3:5〜7である。
特に好適な実施形態では、本発明の方法は、更に、式(IV):
Figure 2009502814
に示されるジメチル3,3’−ジチオジプロピオネートを、一般式(V):
Figure 2009502814
〔式中、Rは上記定義のとおりである〕
を有するアミンとメタノールの溶媒中で反応させることを含む、式(III)の化合物を調製する工程を含んでなる。
より好ましくは、式(IV)の化合物および式(V)の化合物のモル比は約1:2.0と1:2.6の間である。式(IV)の化合物および式(V)の化合物の間の反応の温度は、好ましくは約−15℃と約65℃の間、より好ましくは約5℃と室温の間である。反応時間は、約3時間〜5日間である。
本発明の別の局面では、式(IV):
Figure 2009502814
に示されるジメチル3,3’−ジチオジプロピオネートを、一般式(V):
Figure 2009502814
〔式中、Rは上記定義のとおりである〕
を有するアミンとメタノールの溶媒中で反応させることを含んでなる、式(III)の化合物の製造方法が提供される。
好ましくは、Rは、場合によりC〜C10アリールまたはC〜Cアルコキシによって置換されていてよいC〜Cアルキルを表す。より好ましくは、Rは、C〜Cアルキル、とりわけn−オクチルを表す。
また、好ましくは、式(IV)の化合物および式(V)の化合物のモル比は、約1:2.0と1:2.6の間である。反応温度は、好ましくは約−15℃と約65℃の間、より好ましくは約5℃と室温の間である。反応時間は、約3時間〜5日間である。
メタノールは式(IV)の化合物および式(V)の化合物の間の反応の生成物であるため、本発明の方法においてメタノールを溶媒として使用すると、いかなる望ましくない不純物も反応系へ導入しない。そのため、所望生成物の分離および精製が、極めて簡易となり得る。より具体的には、水を溶媒として使用する方法と比較して、本発明の方法によって得られた生成物はより大きな粒度を有し、したがって、これを容易に母液から分離することができる。また、本発明の方法によると、残った母液を再利用することができ、そしてメタノールを蒸発によって回収することができる。その結果、廃液の放出が極めて低減される。
以下に、下記実施例を参照して本発明の好適な実施形態を詳細に説明するが、これらは単に説明目的であって、何ら限定的なものと解すべきではない。
実施例1
N,N’−ジ−n−オクチル−3,3’−ジチオジプロピオンアミドの製造

反応スキームは以下のとおりである。
Figure 2009502814

238g(1モル)のジメチル3,3’−ジチオジプロピオンアミドおよび280g(2.17モル)のn−オクチルアミンを、1,000ml反応フラスコ内のメタノール300ml中へ添加し、反応物質を5℃で5日間(所望により、窒素雰囲気下で)撹拌した。次いで、反応混合物を−10℃に冷却し、遠心分離してN,N’−ジ−n−オクチル−3,3’−ジチオジプロピオンアミド(純度>95%、収率76%)の固体329gを得た。蒸発によってメタノールを回収した後、母液を再利用した。
実施例2
N−n−オクチルイソチアゾリノン(N−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン(OIT)およびN−n−オクチル−4,5−ジクロロ−4−イソチアゾリン−3−オン(DCOIT)を含む)の製造

反応スキームは以下のとおりである。
Figure 2009502814

200ml(330g,2.44モル)の塩化スルフリルを1,000mlの反応フラスコ中へ添加し、次いで、そこへ、撹拌下で648g(1.5モル)のN,N’−ジ−n−オクチル−3,3’−ジチオジプロピオンアミドを6.5時間(1時間あたり約100g)にわたり添加した。反応3時間後、反応混合物中へ、1時間あたり約50gで13時間(全部で約650g,9.15モル)にわたって塩素を通気させた。反応混合物の温度が40℃に達したら、混合物を塩水で冷却し、40〜45℃の温度に維持した。塩素の通気を終えた後、同じ温度で2時間にわたって反応混合物を撹拌した。
別の1,000mlの反応フラスコ内で、反応混合物を50℃の温水で弱酸性になるまで洗浄し、所望により、重炭酸ナトリウムを用いて過剰の酸を中和した。沈殿物をメタノール中で再結晶化させて、190gのDCOIT(純度>95%)を得た。次いで、再結晶化母液を引き続き石油エーテルとメタノールで抽出して、61gのOIT(純度>93%,収率19%)と49gのDCOIT(純度>95%)を得た。DCOITの全収率は56.5%である。
本発明を好適な実施形態および実施例によって具体的に開示したが、本発明の精神から逸脱することなく、当業者によってこれに変更および修正を施すことができ、かかる変更および修正は本発明の範囲内に入るものであると理解すべきである。

Claims (13)

  1. 次の一般式(I):
    Figure 2009502814
    〔式中、
    は、C〜Cアルキル、C〜CシクロアルキルおよびC〜C10アリールからなる群から選択され、場合によりC〜Cアルキル、C〜C10アリール、C〜CアルコキシおよびC〜C10アリールオキシからなる群から選択される置換基によって置換されていてよく;および
    およびRは、それぞれ独立して、水素または塩素を表す〕
    を有する化合物の製造方法であって、次の一般式(II):
    Figure 2009502814
    〔式中、Rは上記定義のとおりである〕
    を有する化合物、または次の一般式(III):
    Figure 2009502814
    〔式中、Rは上記定義のとおりである〕
    を有する化合物を、溶媒の不存在下で塩化スルフリルと反応させることを含んでなる、方法。
  2. は、場合によりC〜C10アリールまたはC〜Cアルコキシによって置換されていてよい、C〜Cアルキルを表す、請求項1に記載の方法。
  3. はC〜Cアルキルを表す、請求項2に記載の方法。
  4. およびRは、いずれも水素または塩素を表す、請求項3に記載の方法。
  5. 反応を約−10℃〜約75℃の間の温度で行う、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
  6. 式(II)の化合物を塩化スルフリルと反応させることを含んでなり、ここで式(II)の化合物と塩化スルフリルのモル比は約1:1と1:11の間である、請求項5に記載の方法。
  7. 式(III)の化合物を塩化スルフリルと場合により塩素の存在下で反応させることを含んでなり、ここで式(III)の化合物、塩化スルフリルおよび塩素の間のモル比は約1:1〜11:0〜11である、請求項5に記載の方法。
  8. さらに式(III)の化合物を調製する工程を含んでなり、該工程は、メタノールの溶媒中で、式(IV):
    Figure 2009502814
    の化合物を、一般式(V):
    Figure 2009502814
    〔式中、Rは上記定義のとおりである〕
    を有する化合物と反応させることを含む、請求項7に記載の方法。
  9. 式(IV)の化合物と式(V)の化合物のモル比は約1:2.0と1:2.6の間である、請求項8に記載の方法。
  10. 式(IV)の化合物と式(V)の化合物の間の反応を約−15℃と約65℃の間の温度で行う、請求項9に記載の方法。
  11. 一般式(III):
    Figure 2009502814
    〔式中、
    は、C〜Cアルキル、C〜CシクロアルキルおよびC〜C10アリールからなる群から選択され、場合によりC〜Cアルキル、C〜C10アリール、C〜CアルコキシおよびC〜C10アリールオキシからなる群から選択される置換基によって置換されていてよい〕
    を有する化合物の製造方法であって、メタノールの溶媒中で、式(IV):
    Figure 2009502814
    の化合物を、式(V):
    Figure 2009502814
    〔式中、Rは上記定義のとおりである〕
    を有する化合物と反応させることを含む、方法。
  12. 式(IV)の化合物と式(V)の化合物のモル比は約1:2.0と1:2.6の間である、請求項11に記載の方法。
  13. 式(IV)の化合物と式(V)の化合物の間の反応を約−15℃と約65℃の間の温度で行う、請求項11または12に記載の方法。
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