JP2009298607A - 水素製造方法および水素製造装置、ならびに燃料電池システム - Google Patents
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Abstract
【課題】 簡便で効率よくかつ安定的に水素の製造を開始できる水素製造方法、特に、水と水素発生材料との反応によって水素を発生させるにあたって、水素発生材料の状態に関わらずに円滑な水素の製造を開始できる水素製造方法および水素製造装置、ならびにこの水素製造装置を有する燃料電池システムを得ること。
【解決手段】 水との発熱反応により水素を発生する水素発生物質を含む水素発生材料に、水を供給して水素を製造する水素製造方法において、前記水素発生材料の活性状態を確認し、前記水素発生材料の活性状態が製造開始レベル以上であると判断された場合に、前記水素発生材料に定常供給速度で水を供給して、定常状態での水素製造を開始する。
【選択図】 図2
【解決手段】 水との発熱反応により水素を発生する水素発生物質を含む水素発生材料に、水を供給して水素を製造する水素製造方法において、前記水素発生材料の活性状態を確認し、前記水素発生材料の活性状態が製造開始レベル以上であると判断された場合に、前記水素発生材料に定常供給速度で水を供給して、定常状態での水素製造を開始する。
【選択図】 図2
Description
本発明は、水素発生材料と水とを反応させて水素を発生させる水素製造方法、および、その製造方法で水素を製造する水素製造装置、さらに、この水素製造装置を含む燃料電池システムに関する。
近年、パーソナルコンピューター、携帯電話などのコードレス機器の普及に伴い、その電源である電池は、ますます小型化、高容量化が要望されている。現在、エネルギー密度が高く、小型軽量化を図り得る二次電池としてリチウムイオン二次電池が実用化されており、ポータブル電源としての需要が増大している。しかし、このリチウムイオン二次電池は出力容量に限界があり、使用されるコードレス機器の種類によっては十分な連続使用時間を保証することができないという問題がある。
このような問題の解決に向けて、例えば固体高分子型燃料電池などの燃料電池の開発が進められている。燃料電池は、燃料および酸素の供給を行えば連続的に使用することが可能である。例えば、高分子電解質膜型燃料電池(PEMFC:Polymer Electrolyte Membrane Fuel Cell)は、電解質に固体高分子電解質、正極活物質に空気中の酸素、負極活物質に燃料(水素、メタノールなど)を用いるものであり、リチウムイオン二次電池よりも高エネルギー密度化が期待できる電池として注目されている。このPEMFCで使用する燃料に関してはいくつかの候補が挙げられているが、現在のところ候補となっている燃料はそれぞれ問題点を有している。
PEMFCの燃料として水素を用いる場合には、水素を高圧タンク或いは水素吸蔵合金タンクに蓄えて供給する方法が一部で実用化されているが、このような水素タンクを設けることは、燃料電池としての体積および重量が大きくなりエネルギー密度が低下するため、ポータブル電源用途には適さない。また、炭化水素系燃料を改質して水素を取り出す方法も提案されているが、改質装置が必要となり改質装置への熱の供給および断熱などの問題があるため、やはりポータブル電源用途には不適である。
一方、PEMFCの燃料としてメタノールを用い、直接電極でメタノールを燃料として反応させる直接メタノール型燃料電池の場合には、小型化が容易であることから将来のポータブル電源として期待されているが、負極のメタノールが固体電解質を透過して正極に達するクロスオーバーが生じ、電圧の低下やエネルギー密度の減少が生じるという問題がある。
このような状況において、固体高分子型燃料電池の燃料源である水素を製造する方法として、水と、例えばアルミニウム、マグネシウム、ケイ素、亜鉛等の水素発生物質とを、100℃以下の低温で化学反応させて水素を発生させる方法が提案されている(特許文献1〜3参照)。
しかしながら、特許文献1に記載された方法によれば、酸化カルシウムをアルミニウムとの総量において15重量%以上添加しなければ、水素を発生させることができないばかりか、反応時間とともに水素発生速度が大きく変動し、水素発生反応の効率や安定性の点で十分ではない。また、特許文献2に記載された方法では、水素発生反応を効率的に進行させるためには多量の添加剤を必要とし、効率的かつ安定的に水素を製造する方法を提供できるものではない。
特許文献3に記載された方法は、水素発生剤を用いて、従来のアルミニウム粉末に比べて水素発生開始までの時間を短くするというものであるが、水素発生剤は空気中に暴露させると即座にその表面に酸化皮膜を形成するため、水素発生開始までの実際の時間は従来のアルミニウム粉末と比べてそれほど早くならないと考えられ、迅速かつ安定的に水素を製造する方法としては不十分である。
そこで本発明者らは、上記した特許文献1〜3に記載の方法が抱える問題点を回避すべく検討を重ね、水との発熱反応により水素を発生する水素発生物質を含んだ水素発生材料を収容した容器の内部に水を供給して、水と水素発生材料とを容器内で反応させることによって水素を発生させる水素製造方法として、水の供給量を制御することにより、容器の内部温度を発熱反応が維持できる温度に保持して、水素発生速度の変動を抑制する技術を開発した(特許文献4参照)。
この方法によれば、一旦水素の発生が開始すれば、その後は一定の供給速度で容器に水を供給し続けることで、水素発生反応を安定的に維持することができ、簡便で効率よくかつ安定的に水素を製造することができる。
特開2004−231466号公報
特表2004−505879号公報
特開2007−76967号公報
特開2007−45646号公報
ところで、コードレス機器等の実際の使用場面を想定すると、ユーザーが当該機器を連続的に使用する場合に限らず、当該機器の動作および停止を繰り返す間欠的な使用を行う場合も考えられる。したがって、PEMFCの燃料として水素を用いる場合の水素を製造する方法としても、一旦水素の製造を開始すれば、その後は安定に水素が発生する状態を維持するように水素を連続的に発生させる方法に加えて、任意のタイミングで水素の発生を停止させ、かつ任意のタイミングで再び水素の発生を開始させ、その後再び安定に水素が発生する状態を維持するというように水素を間欠的に発生させる方法が求められる。
このため、水を水素発生材料と反応させて水素を製造する方法においては、水素発生材料と水との反応状態に関わらず、素早く、効率よくかつ安定的に水素の発生を開始させる必要がある。特に、水素発生反応を安定的に維持している状態で水素発生を停止させた場合、水素発生材料への水の供給を止めても直ちに水素発生反応が停止するわけではないため、水素発生材料の温度もすぐには下がらない。したがって、燃料電池を動作させるために水素を間欠的に発生させる場合には、水素発生材料の温度の高低や、水素の発生が完全に停止しているか否かという水素発生材料の状態に関わらず、素早く、効率よくかつ安定的に水素の発生を開始させる必要がある。そして、従来の水素製造方法は、このような水素製造の開始時点での水素発生材料の状態に関わらず、水素の製造を円滑に開始するというものではなかった。
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、簡便で効率よくかつ安定的に水素の製造を開始できる水素製造方法、特に、水と水素発生材料との反応によって水素を発生させるにあたって、水素発生材料の状態に関わらずに円滑な水素の製造を開始できる水素製造方法および水素製造装置、ならびにこの水素製造装置を有する燃料電池システムを得ることを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の水素製造方法は、水との発熱反応により水素を発生する水素発生物質を含む水素発生材料に、水を供給して水素を製造する水素製造方法において、前記水素発生材料の活性状態を確認し、前記水素発生材料の活性状態が製造開始レベル以上であると判断された場合に、前記水素発生材料に定常供給速度で水を供給して、定常状態での水素製造を開始することを特徴とする。
また、本発明の水素製造装置は、水との発熱反応により水素を発生する水素発生物質を含む水素発生材料を収容可能な容器と、前記容器内の前記水素発生材料に、所定の供給時間、所定の供給速度で水を供給することができる水供給手段と、前記水素発生材料の活性状態を検出する検出手段とを備え、本発明にかかる水素製造方法に用いられることを特徴とする。
さらに、本発明の燃料電池システムは、本発明にかかる水素製造装置と、前記水素製造装置で製造された水素を用いて発電を行う燃料電池とを備えたことを特徴とする。
本発明の水素製造方法によれば、水との発熱反応により水素を発生する水素発生物質を含む水素発生材料に、水を供給して水素を製造する水素製造方法において、水素発生材料の活性状態を確認して水素発生材料の活性状態が所定のレベル以上であると判断された場合に水素の製造を開始するため、短時間で確実に水素の発生を開始させることができる。
また、本発明の水素発生装置は、本発明の水素製造方法を実施するに好適な水素製造装置である。
さらに、本発明の燃料電池システムは、本発明の水素製造装置を有することにより、コードレス機器等の電源としての使用に適した燃料電池システムを提供することができる。
上記のように、本発明にかかる水素製造方法では、水との発熱反応により水素を発生する水素発生物質を含む水素発生材料に、水を供給して水素を製造する水素製造方法において、前記水素発生材料の活性状態を確認し、前記水素発生材料の活性状態が製造開始レベル以上であると判断された場合に、前記水素発生材料に定常供給速度で水を供給して、定常状態での水素製造を開始する。
なお、ここで、定常供給速度とは、水素発生材料との反応によって安定して所定の発生速度での水素発生を行うことができる、単位時間当たりの水の供給量を意味する。したがって、定常供給速度で水を供給するとは、連続的に常に一定の供給速度(供給流量)で水を供給する場合に限られるものではなく、水の供給速度が所定の値を中央値として一定範囲で変化する場合や、水の供給速度がパルス状に変化する場合、すなわち水の供給を断続的に行う場合をも含む概念である。
このようにすることで、水素発生材料の活性状態を把握して、その活性状態が所定のレベル以上であり、水を定常供給速度で供給することで定常状態の水素製造を開始できる場合にのみ水素の製造を開始することができる。このため、水素製造の開始と停止とを交互に行う場合のような、間欠的に水素を発生させる場合でも、水素発生材料の状態に応じて速やかに安定的な水素の製造を開始することができる。
また、前記水素発生材料の活性状態が前記製造開始レベル以上であるか否かの判断を、前記水素発生材料に所定量の水を供給して行われる、1または2以上の判別ステップによって行うことが望ましい。なお、本明細書において水素発生材料に所定量の水を供給するとは、所定量が0である場合、すなわち、水素発生材料に水を供給しない場合も含む概念であり、また、一定量の水を供給した後に水の供給を停止して、一定の時間水の供給を行わない待機時間を設ける場合をも含む概念である。
このようにすることで、水素発生材料に水を供給しながらその活性状態を正確に把握することができる。また、水素発生材料に所定量の水を供給することで、水素発生材料と水との反応を開始させて、水素発生材料の活性状態を把握するのと同時に、水素発生材料の活性状態を所定のレベル以上として、速やかに定常状態の水素製造が可能なようにすることができる。
さらに、前記判別ステップとして、前記水素発生材料に、所定の供給時間、所定の供給速度で水を供給して、前記供給時間内における前記水素発生材料の活性状態を判断する前段の判別ステップと、前記前段の判別ステップでの判断結果に応じて開始され、前記水素発生材料への水の供給を停止して所定の待機時間待機し、前記待機時間内における前記水素発生材料の活性状態を判断する後段の判別ステップとを有することが好ましい。
このようにすることで、水素発生材料に水を供給することにより開始される水素発生の状況を確認しながら、水素発生材料に水を供給しないで待機する待機時間を設けるか否かが判断できる。このため、水素発生材料に必要以上の水を一度に供給してしまい、かえって水素発生材料の温度を下げてしまって、水素の発生開始が遅れるような事態を回避でき、速やかに定常的な水素製造を開始することができる。
また、第1の判別ステップとして、水を供給しない初期状態での前記水素発生材料の活性状態を確認し、前記水素発生材料の活性状態が前記製造開始レベル以上であると判断された場合に、前記定常状態での水素製造を開始する判別ステップを有することが好ましい。
さらに、第2の判別ステップとして、前記第1の判別ステップにおいて、前記水素発生材料の活性状態が前記製造開始レベル以上であると判断されなかった場合に開始され、前記水素発生材料に、第1の供給時間、第1の供給速度で水を供給して、前記第1の供給時間内における前記水素発生材料の活性状態を確認し、前記水素発生材料の活性状態が前記製造開始レベル以上であると判断された場合に、前記定常状態での水素製造を開始する判別ステップを有することが好ましい。
さらにまた、第3の判別ステップとして、前記第2の判別ステップにおいて、前記水素発生材料の活性状態が前記製造開始レベル以上であると判断されなかった場合に開始され、前記水素発生材料への水の供給を停止した後、第1の待機時間待機を行って、前記第1の待機時間内における前記水素発生材料の活性状態を確認し、前記水素発生材料の活性状態が前記製造開始レベル以上であると判断された場合に、前記定常状態での水素製造を開始する判別ステップを有することが好ましい。
また、第4の判別ステップとして、前記第1の判別ステップまたは前記第3の判別ステップにおいて、前記水素発生材料の活性状態が前記製造開始レベル以上であると判断されなかった場合に開始され、前記水素発生材料に、第2の供給時間、第2の供給速度で水を供給して、前記第2の供給時間内における前記水素発生材料の活性状態を確認し、前記水素発生材料の活性状態が所定のレベル以上であると判断された場合に、第5の判別ステップを開始する判別ステップを有することが好ましい。
そして、前記第5の判別ステップは、前記水素発生材料への水の供給を停止した後、第2の待機時間待機を行い、前記第2の待機時間内に前記水素発生材料の活性状態が前記製造開始レベル以上となった場合に、前記定常状態での水素製造を開始するものであることが好ましい。
このように第1の判別ステップから第5の判別ステップを順次経ることで、水素発生材料の活性状態がどのような状態であっても、より早期の段階で定常状態の水素製造を開始することができるようになる。
さらに、前記第4の判別ステップにおいて、前記水素発生材料の活性状態が前記所定のレベル以上であると判断されなかった場合に、異常を知らせる警告表示を行い前記定常状態での水素製造を開始しないことが、また、前記第5の判別ステップにおいて、前記水素発生材料の活性状態が前記製造開始レベル以上であると判断されなかった場合に、異常を知らせる警告表示を行い前記定常状態での水素製造を開始しないことが好ましい。
また、前記水素発生材料に水を供給する前記第1の供給速度が、前記定常供給速度よりも遅い速度であることが好ましく、前記水素発生材料に水を供給する前記第2の供給速度が、前記定常供給速度よりも早い速度であることが好ましい。
また、前記水素発生材料の温度を検出し、前記水素発生材料の温度が所定の温度以上であるか否かによって、前記水素発生材料の活性状態のレベルを判断することが好ましい。本発明の水素製造方法において、水素は、水素発生材料と水との発熱反応によって生成されるため、水素発生材料の活性状態を把握する指標として、その温度に基づくことが合理的であり、また、水素発生材料の温度は、容易に検出することができるからである。
この場合において、前記水素発生材料の温度が、40℃以上90℃以下である場合に、前記水素発生材料の活性状態が前記製造開始レベルであると判断することができる。
また、前記水素発生材料からの水素発生量を検出して、前記水素発生材料からの水素発生量が所定の量以上であるか否かによって、前記水素発生材料の活性状態のレベルを判断することが好ましい。水素発生量は、最も端的に水素発生材料の活性状態を表すからである。
この場合において、前記水素発生材料からの水素発生量を、水素の濃度によって検出することが好ましい。
また、前記水素発生材料に含まれる前記水素発生物質が、アルミニウム、ケイ素、亜鉛、マグネシウムおよびこれらの元素を主体とする合金からなる群より選択された少なくとも1種以上の金属材料であることが好ましい。
さらに、前記水素発生材料が、前記水素発生物質以外に水と反応して発熱する発熱材料をさらに含んでいることが好ましく、この場合に、前記発熱材料が、アルカリ土類金属の酸化物であることが好ましい。また、前記水素発生材料における前記水素発生物質の含有率が、85重量%以上99重量%以下であることが好ましい。
さらにまた、前記水素発生材料の活性状態の判断を行う前記判別ステップを、前記水素発生材料および水の少なくとも一方を加熱した状態で行うことが好ましい。そして、前記加熱が、抵抗体に通電することによる発熱により行われること、もしくは、前記加熱が、前記発熱材料の化学反応による発熱により行われることが好ましい。
また、本発明にかかる水素製造装置は、水との発熱反応により水素を発生する水素発生物質を含む水素発生材料を収容可能な容器と、前記容器内の前記水素発生材料に、所定の供給時間、所定の供給速度で水を供給することができる水供給手段と、前記水素発生材料の活性状態を検出する検出手段とを備え、上記本発明の水素製造方法に用いられる。
このようにすることで、水素発生材料に所定量の水を供給しながら水素発生材料の活性状態を確認してこの活性状態が一定のレベル以上であると判断された場合に、定常状態の水素製造を開始する本発明の水素製造方法を実施するに好適な水素製造装置を得ることができる。
また、上記構成の水素製造装置において、前記容器の外部に、前記容器を保温する保温材をさらに配置することが好ましい。
さらに、本発明の燃料電池システムは、上記した本発明の水素製造装置と、前記水素製造装置で製造された水素を用いて発電を行う燃料電池とを備える。
このようにすることで、本発明にかかる水素製造方法の特徴を活かして、燃料電池の燃料となる水素の発生と停止とを繰り返すような場合でも、水素の定常的な製造を速やかにかつ安定して開始することができる。このため、燃料電池のオン/オフが任意のタイミングで交互に繰り返される場合でも、速やかに燃料電池システムを起動することができるので、コードレス機器等の電源としての使用に適した燃料電池システムを提供することができる。
また、本発明の燃料電池システムでは、前記水素発生材料からの水素発生量を、前記燃料電池の出力電流または開回路電圧を用いて検出することができる。
以下、本発明にかかる水素製造方法、および水素製造装置、燃料電池システムの実施の形態について、図面を参照して説明する。
(実施形態1)
まず、本発明の水素製造方法を、本発明の実施形態1として説明する。
まず、本発明の水素製造方法を、本発明の実施形態1として説明する。
本発明の水素製造方法は、水との発熱反応により水素を発生する水素発生物質を含む水素発生材料に、水を供給して水素を製造するものである。また、水素の製造を開始してから、水素発生材料と水との反応が安定して生じる定常状態での水素製造に至るまでの時間を短縮し、円滑に定常状態に移行させるものである。そして、本発明の水素製造方法では、水素製造を停止している状態から定常状態に至るまでの水素発生材料の活性状態を、水素発生材料の温度や水素発生材料からの水素発生量を検出することなどによって把握し、これが所定のレベル以上であると判断された場合に定常状態での水素製造を開始する。
本実施形態の水素製造方法は、本発明者らが鋭意検討を重ねた結果得られた、水素の製造を開始するにあたって、水素発生材料の活性状態に応じて供給する水の量や速度を変化させることが、短時間で確実に定常状態での水素製造を開始する上で好適であるとの知見に基づくものである。このような水素製造方法は、特に、コードレス機器等の電源として用いられる燃料電池の燃料として水素の製造を行う場合に有効である。コードレス機器の電源の燃料として水素製造を行う場合には、ユーザーの使用状態によって間欠的な水素製造が求められることが考えられる。この場合には、水素製造を停止していた時間や水素製造装置の環境温度などによって、水素製造開始時点での水素発生材料の活性状態が、様々な異なる状態となっているが、実用上は、このような製造開始時の状態にかかわらずに、常に短時間で安定的な定常状態の水素製造を開始することが求められるからである。
なお、本明細書でいう「定常状態」とは、水素発生速度が最大値に達した後に、水素発生速度がほぼ一定となった状態をいう。この定常状態になれば、水素発生材料に定常供給速度で水を供給し続けることで、水素発生材料と水との反応が制御されて安定した水素製造を行うことができる。また、上記の通り、定常供給速度とは、水素発生材料との反応によって安定して所定の発生速度での水素発生を行うことができる、単位時間当たりの水の供給量を意味する。ここで、本実施形態でのように、水と水素発生材料との発熱反応によって水素を発生させる場合には、その反応速度から考えて、水の供給速度を把握する単位時間を分単位とすることが相当である。特に、水素の発生状態が、定常状態もしくはそれに近い状態となっている場合には、既に一定量の水が供給されて水素発生材料との発熱反応が生じている場合であるから、微視的に見た水の供給速度(供給流量)には一定の裕度がある。したがって、例えば、所定の供給速度Vで水を6秒間供給した後、水の供給を停止し、54秒間待機するといった1分間のサイクルによって水を断続的に供給する場合と、供給速度V/10で連続して水を供給する場合とは、いずれも同じ定常供給速度として把握することができる。この時、いずれの場合においても、同等の水素発生速度で安定した水素製造を行うことができる。
以下、本実施形態の水素製造方法を説明するにあたり、まず、本実施形態における水素発生材料に含まれる水素発生物質と水との発熱反応による水素発生について説明する。
本実施形態の水素製造方法に使用される水素発生物質は、水として反応して水素を発生させる材料であれば特に限定されないが、アルミニウム、ケイ素、亜鉛、マグネシウムおよびこれらの元素を主体とする合金でからなる群から選択される少なくとも1種の金属材料が好適に使用できる。なお、合金の場合には、主体となる元素以外の金属成分は特に限定されない。また、主体とは、合金全体に対して80重量%以上、より好ましくは、90重量%以上含有されている物質をいう。上記した金属材料は、常温では水と反応しにくいが、加熱することにより水との発熱反応が容易となる物質である。なお、ここで「常温」とは、20〜30℃の範囲の温度である。
このような金属材料は、少なくとも常温以上に加温された状態において、水と反応して水素を発生させることができる。しかし、表面に安定な酸化皮膜が形成されるため、低温下、あるいは、板状、ブロック状等のバルクの形状では、水素を発生しないか、または水素を発生し難い物質である。ただし、酸化皮膜の存在により、空気中での取り扱いは容易である。
例えば、上記金属材料の1つであるアルミニウムと水との反応は、下記式(1)〜(3)のいずれかによって進行していると考えられる。下記式(1)による発熱量は、419kJ/molである。
2Al+6H2O→Al2O3・3H2O+3H2 (1)
2Al+4H2O→Al2O3・H2O+3H2 (2)
2Al+3H2O→Al2O3+3H2 (3)
また、前記金属材料は、その平均粒径によって特に限定されないが、その平均粒径が0.1μm以上100μm以下とすることが好ましく、0.1μm以上50μm以下がより好ましい。上記したように前記の金属材料は、一般に、表面に安定な酸化皮膜が形成されている。そのため、板状、ブロック状および粒径1mm以上のバルク状等の金属材料は、加熱しても水との反応が進行せず、実質的に水素を発生させない場合もある。しかし、金属材料の平均粒径を100μm以下とすると、酸化皮膜による水との反応抑制作用が減少し、常温では水と反応しにくいものの、加熱すれば水との反応性が高まり、水素発生反応が持続するようになる。また、金属材料の平均粒径を50μm以下とすると、40℃程度の穏和な条件でも水と反応して水素を発生させることができる。
2Al+4H2O→Al2O3・H2O+3H2 (2)
2Al+3H2O→Al2O3+3H2 (3)
また、前記金属材料は、その平均粒径によって特に限定されないが、その平均粒径が0.1μm以上100μm以下とすることが好ましく、0.1μm以上50μm以下がより好ましい。上記したように前記の金属材料は、一般に、表面に安定な酸化皮膜が形成されている。そのため、板状、ブロック状および粒径1mm以上のバルク状等の金属材料は、加熱しても水との反応が進行せず、実質的に水素を発生させない場合もある。しかし、金属材料の平均粒径を100μm以下とすると、酸化皮膜による水との反応抑制作用が減少し、常温では水と反応しにくいものの、加熱すれば水との反応性が高まり、水素発生反応が持続するようになる。また、金属材料の平均粒径を50μm以下とすると、40℃程度の穏和な条件でも水と反応して水素を発生させることができる。
金属材料の平均粒径が50μmを超える場合であっても、金属材料が鱗片状であり、かつその厚みが5μm以下である場合には、水との反応性を高めて、より効率よく水素を生じさせることができ、特に金属材料の厚みが3μm以下の場合には、反応効率をより一層向上させることができる。
一方、金属材料の平均粒径を0.1μm未満としたり、鱗片状の金属材料の厚みを0.1μm未満とすると、発火性が高くなって取り扱いが困難となったり、金属材料の充填密度が低下してエネルギー密度が低下しやすくなったりする。このような理由から、金属材料の平均粒径は、0.1μm以上とすることが好ましく、また、金属材料が鱗片状の場合には、その厚みは0.1μm以上であることが好ましいのである。
なお、上記の平均粒径は、体積基準の積算分率50%における粒子直径の値であるD50を意味する。平均粒径の測定方法としては、例えば、レーザー回折・散乱法等を用いることができる。より具体的には、水等の液相に分散させた測定対象物質にレーザー光を照射することによって検出される散乱強度分布を利用した粒子径分布の測定方法である。レーザー回折・散乱法による粒子径分布測定装置としては、例えば、日機装株式会社製の「マイクロトラックHRA(製品名)」等を用いることができる。
また、上記した鱗片状の金属材料の厚みは、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察することができる。
さらに、前記金属材料の形状も特に限定されないが、例えば、略球状(真球状を含む)やラグビーボール状の他、前記の通り、鱗片状のものなどが挙げられる。略球状やラグビーボール状などの場合には上記した平均粒径を満足するものが好ましく、鱗片状の場合には上記した厚みを満足するものが好ましい。また、鱗片状の金属材料の場合には、上記した平均粒径も満足していることがより好ましい。
また、前記した水素発生物質である金属材料に、親水性酸化物、炭素および吸水性高分子からなる群から選ばれる少なくとも1つの物質(以下、添加剤という。)を添加すれば、金属材料と水との反応を促進させることができるので好ましい。このような親水性酸化物としては、アルミナ、シリカ、チタニア、マグネシア、ジルコニア、ゼオライト、酸化亜鉛等が使用できる。
さらに、本実施形態の水素製造方法において、水と水素発生物質との発熱反応を容易に開始させるために、使用される水素発生材料として、前記金属材料などの水素発生物質以外の材料であって水と反応して発熱する発熱材料を含むことが好ましい。
発熱材料としては、水と反応して水酸化物や水和物となる材料、水と発熱して水素を生成する材料等を用いることができる。このような発熱材料のうち、水と反応して水酸化物や水和物となる材料としては、例えば、アルカリ金属の酸化物(例えば、酸化リチウム等。)、アルカリ土類金属の酸化物(例えば、酸化カルシウム、酸化マグネシウム等。)、アルカリ土類金属の塩化物(例えば、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等。)、アルカリ土類金属の硫酸化合物(例えば、硫酸カルシウム等。)等を用いることができる。前記水と反応して水素を生成する物質としては、例えば、アルカリ金属(例えば、リチウム、ナトリウム等。)、アルカリ金属水素化物(例えば、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化リチウム等。)等を用いることができる。これらの物質は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
また、発熱材料が塩基性材料であれば、水素発生反応に用いられる水に溶解して、高濃度のアルカリ水溶液を形成するので、水素発生物質である金属材料の表面に形成された酸化皮膜を溶解させ、水との反応性を大きくすることができるので好ましい。この酸化皮膜を溶解する反応は、金属材料と水との反応の起点となることもある。特に、発熱材料がアルカリ土類金属の酸化物であれば、塩基性材料でありかつ取り扱いが容易であるのでより好ましい。
発熱材料としては、水以外の物質と常温で発熱反応を生じる物質、例えば、鉄粉のように酸素と反応して発熱する物質も知られている。しかし、水素発生材料が、前記酸素と反応する物質と前記水素発生物質である金属材料とを含む場合、反応のために必要とされる酸素は、同時に、金属材料から発生する水素の純度を低下させたり、金属材料を酸化させて水素発生量を低下させたりする等の問題を生じることがある。このため、本実施形態における発熱材料としては、前述のとおり、水と反応して発熱するアルカリ土類金属の酸化物等を用いるのが好ましい。また、同様の理由から、水素発生材料に含まれる発熱材料は、反応時に水素以外の気体を生成しないものが好ましい。
水素発生材料全体中における前記した金属材料等の水素発生物質の含有率は、より多くの水素を発生させる観点から、好ましくは85重量%以上、より好ましくは90重量%以上であり、また、発熱材料の併用による効果をより確実にする観点から、好ましくは99重量%以下、より好ましくは97重量%以下である。また、水素発生材料全体中における発熱材料の含有率は、好ましくは1重量%以上、より好ましくは3重量%以上であって、好ましくは15重量%以下、より好ましくは10重量%以下である。
発熱材料を含有する水素発生材料は、水素発生物質である金属材料等と発熱材料を混合することにより得ることができる。金属材料と発熱材料との混合の際には、金属材料のみが1mm以上の凝集体にならないようにすることが好ましい。例えば、金属材料と発熱材料を撹拌混合することにより、金属材料が凝集するのを抑制しつつ、水素発生材料を作製することができる。また、金属材料の表面に発熱材料をコーティングして複合化し、水素発生材料としてもよい。
次に、本実施形態にかかる水素製造方法における、水素製造の開始から定常状態での安定した水素製造に移行するまでについての手法を詳細に説明する。
上記したように、本実施形態の水素製造方法では、水素製造を停止している状態から定常状態に至るまでの間、水素発生材料の温度または水素発生材料からの水素発生量などを検出することによって水素発生材料の活性状態を確認し、これが所定の製造開始レベル以上であると判断された場合に定常状態での水素製造を開始するものである。そして、この水素発生材料の活性状態が製造開始レベル以上であるか否かの判断を、水素発生材料に所定量の水を供給して行われる、1または2以上の判別ステップによって行うものである。
この判別ステップでの水素発生材料への所定量の水の供給は、水の供給速度と供給時間とを制御して行われるものである。なお、「所定量の水を供給する」との概念には、水を0ml供給する、すなわち水の供給を行わない場合も含まれる。また、水を常に供給し続ける場合のみならず、一定時間水を供給した後に水の供給を停止し、水の供給を行わない待機時間を設ける場合も含まれる。
この待機時間を設ける場合は、まず前段の判別ステップとして、所定の供給時間、所定の供給量で水を供給してその間の水素発生材料の活性状態を確認し、確認された活性状態のレベルに基づいて、水の供給を停止した待機状態で所定の待機時間待機して水素発生材料の活性状態の確認を行うか否かを判断することが好ましい。このように、所定量の水を供給して行う前段の判別ステップの結果に基づいて、後段の判別ステップとして待機時間での水素発生材料の活性状態を確認することによって、水素発生材料の活性状態に対応した水の供給を行うことができ、短時間に確実に定常状態での水素製造を開始することができるからである。
特に、水素の製造を停止してからの経過時間が長い場合や、初めて水素製造を行う水素発生材料を用いる場合には、環境温度にも左右されて水素発生材料の温度が低くなっている場合が考えられる。このように水素発生材料の温度が低い場合には、水素発生材料と水との発熱反応が開始するまでに時間がかかる。このような場合には、連続して水の供給を行って水素発生材料の活性状態を確認するのではなく、一定量の水を供給した後は水の供給を停止して、待機状態での水素発生材料の活性状態を確認するようにすることで、水素発生材料と水との発熱反応の開始を待つことができる。その結果、水素発生材料に一度に多量の水を供給しすぎて水素発生材料の温度を下げてしまい、水素を発生する水素発生材料と水との発熱反応をかえって起きにくくしてしまうことを防止できる。
次に、本実施形態にかかる水素製造方法の一例として、判別ステップによって水素発生材料の活性状態を確認しながら定常状態での水素製造を開始するまでの具体的な流れを、図1から図4に示すフローチャートを参照して説明する。本実施形態は、最大5つの判別ステップを経て定常状態での水素製造を開始するものである。
<第1の判別ステップ(初期状態の確認)>
図1は、本実施形態の水素製造方法での第1の判別ステップを示すフローチャートである。この第1の判別ステップは、水素製造開始の指示が与えられたときに、水を供給しない初期状態での水素発生材料の活性状態を確認する判別ステップである。
図1は、本実施形態の水素製造方法での第1の判別ステップを示すフローチャートである。この第1の判別ステップは、水素製造開始の指示が与えられたときに、水を供給しない初期状態での水素発生材料の活性状態を確認する判別ステップである。
図1に示すように、最初のステップS101で、水素製造方法の開始が指示され、本実施形態での水素製造がスタートする。
続くステップS102で、水素製造の開始が指示された初期状態での水素発生材料の活性状態を確認する。水素発生材料の活性状態を確認するための指標としては、水素発生材料の温度や、水素発生材料から発生する水素量などを用いることができる。以下、本実施の形態の説明では、水素発生材料の活性状態を検出する指標として、水素発生材料の温度を用いたものを主として説明する。なお、水素発生材料から発生する水素量を指標として用いた場合についても適宜言及し、また、図1から図3のフローチャートにおいても、水素発生材料の温度を指標とした場合について記載するとともに、発生する水素量を指標とする場合についても、括弧書きで並記する。
ステップS102では、水素発生材料に水の供給を行わずに、水素発生材料の初期状態の温度T0を検出する。水素発生材料から発生する水素量を指標とする場合は、水素発生材料に水を供給しない初期状態での、水素発生材料からの水素量L0を取得する。
水素発生材料の温度の検出は、水素発生材料が内部に納められ、水素発生材料と水との反応を行わせる容器の温度を、熱電対やサーミスタなどの既知の温度検出手段を用いて行うことができる。この場合、容器が金属などの熱伝導性の高い物質でできている場合には、容器の温度と水素発生材料の温度とが同じであると見なすことができる。しかし、例えば樹脂製の容器の場合など、容器の温度と内蔵されている水素発生材料の温度が異なる場合には、あらかじめ容器の熱伝導度を求めておいて、容器の温度と水素発生材料の温度との相関関係を把握することが必要となる。もちろん、直接水素発生材料の温度が検出できる場合には、このような問題は生じない。また、温度検出手段も上記熱電対やサーミスタに限定されないことは言うまでもない。
水素発生材料の活性状態を確認するための指標として、水素発生材料から発生する水素量を用いる場合、水素発生材料から発生した水素量は、発生した水素を燃料電池などに供給するための水素供給流路に配置した流量計を用いて検出することができる。また、上記した水素発生材料と水との反応を行わせる容器内部の水素濃度を測定するセンサによっても、水素発生材料から発生する水素量を検出することができる。さらには、水素発生装置が燃料電池に接続されて燃料電池システムを構成している場合には、燃料電池の出力である出力電流の大小によって、また、燃料電池の開回路電圧の大小によっても、水素の発生量を検出することができる。
なお、以下に説明する複数の判別ステップにおける水素発生材料の活性状態の確認に用いる指標は、必ずしも全て同じ種類の指標を統一して用いる必要はなく、一連の判別ステップの中で、水素発生材料の温度を指標として用いる場合と、水素発生材料が発生する水素量を指標として用いる場合とを適宜使い分けることも可能である。また、それぞれの判別ステップにおいて、水素発生材料の温度と発生する水素量との双方を指標として用いることも可能である。
次のステップS103で、水素発生材料の活性状態が定常状態での水素製造に移行できる製造開始レベル以上であるか否かの判別を行う。具体的には、初期状態の水素発生材料の温度T0が、第1の所定温度Tth1以上であるか否かを判別する。このとき、温度T0が第1の所定温度Tth1以上である場合(Yesの場合)には、図1中に「2」の段階として示す次の段階に進んで定常状態での水素製造が開始される。なお、この「2」として示す段階での定常状態での水素製造については、そのフローチャートである図4を用いて後述する。
一方、ステップS103において、温度T0が第1の所定温度Tth1以上ではない場合には、水素発生材料の活性状態が製造開始レベル以上ではないと判断され(Noの場合)、図1中に「1」の段階として示す次の段階である、第2の判別ステップが開始される。
ここで、第1の所定温度Tth1は、上記のように水素発生材料の活性状態が定常状態での水素製造を開始することができる、製造開始レベルであるか否かを判別する温度である。水素発生材料に定常供給速度で水を供給し続けたときに、水素発生材料と水との発熱反応が維持できる温度は、通常は40℃以上である。一方で、一旦発熱反応が開始して水素が発生すると、水素発生材料と水との反応を行わせる容器の内圧が上昇して水の沸点が上昇することもあり、容器内の温度は最大で120℃に達することもある。しかし、水素の発生速度を制御して、安定した定常状態での水素製造を行うという観点からは、水素発生材料の温度が100℃を超えてしまうのは好ましくない。これらの観点を踏まえて、第1の所定温度Tth1は、40℃以上90℃以下とすることが好ましい。また、より厳密に水素発生反応の温度管理を行い、安定した水素製造を維持するという観点からは、Tth1を45℃以上70℃以下とすることが好ましい。
なお、水素発生材料の活性状態を、水素発生材料から発生する水素量によって検出する場合では、初期状態で水素発生材料から発生している水素量L0が、第1の所定水素量Lth1以上であるかを判定する。水素量L0が第1の所定水素量Lth1以上である場合には、水素発生材料の活性状態が製造開始レベル以上であると判断されて(Yesの場合)、図1中の「2」の段階として示す定常状態の水素製造へと進む。一方、水素量L0が第1の所定水素量Lth1以上ではない場合には、水素発生材料の活性状態が製造開始レベル以上ではないと判断されて(Noの場合)、図1中の「1」の段階として示す第2の判別ステップに進む。
ここで、第1の所定水素量Lth1を設定するにあたっては、上記第1の所定温度Tth1を定めたと同じ観点から、定常速度での水の供給により安定して水素の製造を行うことができる製造開始レベルであることを示す水素量を定めることになる。但し、温度の場合と異なり、水素量にて活性状態を判断する場合の所定の水素量Lth1は、水素発生材料の量など水素製造の条件に左右されやすいため、温度を指標とした第1の所定温度Tth1と同様な一般的な水準があるわけではなく、水素発生装置の状況に即して個別に定めることが必要である。
<第2の判別ステップ(前段の判別ステップ)>
図2は、本実施形態にかかる水素製造方法における第2の判別ステップと第3の判別ステップを示すフローチャートである。
図2は、本実施形態にかかる水素製造方法における第2の判別ステップと第3の判別ステップを示すフローチャートである。
第2の判別ステップは、上記した第1の判別ステップにおいて、水を供給しない初期状態での水素発生材料の活性状態が、製造開始レベル以上であると判断されなかった場合、すなわちステップS103で「No」の場合に開始される。
図2に示すように、第2の判別ステップでは、まずステップS201で、第1の供給速度V1で水素発生材料に水が供給される。
同時にステップS202として、タイマーが動作を開始する。このタイマーは、水素発生材料への水の供給時間を第1の供給時間t1とするためのものである。
そして、ステップS203において、タイマーが動作している第1の供給時間t1の間の水素発生材料の活性状態が製造開始レベル以上であるか否かを確認する。具体的には、水素発生材料の温度Tを検出して、タイマーが動作しているt1の間に、その温度Tが第2の所定温度Tth2以上となった場合に、水素発生材料の活性状態が製造開始レベル以上であると判断する。このように、ステップS203で、水素発生材料の活性状態が製造開始レベル以上であると判断された場合(Yesの場合)には、図2中に「2」の段階として示す定常状態での水素製造が開始される。
ここで、定常状態での水素製造を早期に開始するという観点から、タイマーが動作しているt1の期間が完了する以前であっても、水素発生材料の温度TがTth2以上となった段階で、「2」の段階として示す定常状態の水素製造に進むことが好ましい。すなわち、ステップS201で開始した水の供給速度V1に代えて、定常状態での水の供給速度である定常供給速度での水の供給を開始することが好ましい。
一方、ステップS203において、タイマーが第1の供給時間t1をカウントする間に、水素発生材料の温度Tが第2の所定温度Tth2以上とならない場合には、水素発生材料の活性状態が製造開始レベル以上ではないと判断され(Noの場合)、時間t1が経過次第直ちに次の判別ステップである第3の判別ステップが開始される。
なお、第2の判別ステップにおける第2の所定温度Tth2の値は、第1の判別ステップにおける第1の所定温度Tth1と同じ温度に設定することができる。この温度は、水素発生材料が製造開始レベルにあると判断できる反応状態を示す温度だからである。
また、水素発生材料の活性状態を示す指標として水素発生量を用いる場合には、ステップS203において、タイマーが動作している第1の供給時間t1の間に、水素発生量Lが第2の所定水素量Lth2以上となった場合に、水素発生材料の活性状態が製造開始レベル以上であると判断し(Yesの場合)、「2」の段階として示す定常状態での水素製造が開始される。
一方、タイマーが第1の供給時間t1をカウントする間に、水素発生材料からの水素発生量Lが第2の所定水素量Lth2以上とならない場合には、水素発生材料の活性状態が製造開始レベル以上ではないと判断され(Noの場合)、時間t1が経過し次第、直ちに次の判別ステップである第3の判別ステップが開始される。
なお、水素発生材料からの水素発生量を指標とした場合も、第2の所定水素量Lth2の値は、第1の判別ステップにおける第1の所定水素量Lth1と同じ値に設定することができる。
<第3の判別ステップ(後段の判別ステップ)>
第3の判別ステップは、上記した第2の判別ステップにおいて、水素発生材料に所定量の水を供給した状態での水素発生材料の活性状態が、製造開始レベル以上であると判断されなかった場合、すなわちステップS203で「No」の場合に開始される。
第3の判別ステップは、上記した第2の判別ステップにおいて、水素発生材料に所定量の水を供給した状態での水素発生材料の活性状態が、製造開始レベル以上であると判断されなかった場合、すなわちステップS203で「No」の場合に開始される。
図2に示すように、第3の判別ステップでは、まずステップS204で、水素発生材料への水の供給が停止される。
同時にステップS205として、タイマーが動作を開始する。このタイマーは、水素発生材料への水の供給を停止して水素発生材料と水との発熱反応が開始するのを待つ、第1の待機時間t2をカウントするためのものである。
そして、ステップS206において、タイマーが動作している第1の待機時間t2の間の水素発生材料の活性状態が、製造開始レベル以上であるか否かを確認する。具体的には、水素発生材料の温度Tを検出して、タイマーが動作しているt2の間に、その温度Tが第3の所定温度Tth3以上となった場合に、水素発生材料の活性状態が製造開始レベル以上であると判断する。このように、ステップS206で、水素発生材料の活性状態が製造開始レベル以上であると判断された場合(Yesの場合)には、図2中の「2」の段階として示す定常状態での水素製造が開始される。
上記第2の判別ステップと同様に、定常状態での水素製造を早期に開始するという観点から、タイマーが動作しているt2の期間が完了する以前であっても、水素発生材料の温度TがTth3以上となった段階で、「2」の段階として示す定常状態での水素製造に進むことが好ましい。すなわち、水の供給を停止している待機時間を終了して、定常状態での水の供給速度である定常供給速度での水の供給を開始することが好ましい。
一方、ステップS206において、タイマーが第1の待機時間t2をカウントする間に、水素発生材料の温度Tが第3の所定温度Tth3以上とならない場合には、水素発生材料の活性状態が製造開始レベル以上ではないと判断され(Noの場合)、時間t2が経過次第図2中に「3」の段階として示す、後述する第4の判別ステップが開始される。
第3の判別ステップにおける第3の所定温度Tth3の値は、上記した第1の判別ステップにおける第1の所定温度Tth1、および、第2の判別ステップにおける第2の所定温度Tth2と同じ温度に設定することができる。第3の所定温度Tth3も、第1の所定温度Tth1や第2の所定温度Tth2と同じく、水素発生材料が製造開始レベルにあると判断できる反応状態を示す温度であるからである。
また、水素発生材料の活性状態を示す指標として発生する水素量を用いる場合には、ステップS206において、タイマーが動作している第1の待機時間t2の間に、水素量Lが第3の所定水素量Lth3以上となった場合に、水素発生材料の活性状態が製造開始レベル以上であると判断し(Yesの場合)、図2中に「2」の段階として示す定常状態での水素製造が開始される。一方、タイマーが第1の待機時間t2をカウントする間に、水素発生材料から発生する水素量Lが第3の所定水素量Lth3以上とならない場合には、水素発生材料の活性状態が製造開始レベル以上ではないと判断され(Noの場合)、時間t2が経過し次第直ちに、図2中に「3」の段階として示す第4の判別ステップが開始される。
なお、水素発生材料からの水素発生量を指標とした場合も、第3の所定水素量Lth3の値は、第1の所定水素量Lth1および第2の所定水素量Lth2と同じ値に設定することができる。
上記したように、第3の判別ステップは、第2の判別ステップにおいて、第1の供給速度で第1の供給時間、水素発生材料に水を供給している間の水素発生材料の活性状態が製造開始レベルでない場合に開始されるステップである。また、この第3の判別ステップでは、水素発生材料への水の供給を停止して第1の待機時間待機を行い、この待機時間内における水素発生材料の状態を判断して、定常状態での水素製造を開始するか、それとも次の第4の判別ステップに移行するかの判断を行うものである。すなわち、第2の判別ステップが、水素発生材料に、所定の供給時間、所定の供給速度で水を供給して、その供給時間内における水素発生材料の活性状態を判断する前段の判別ステップであり、これに対する、前段の判別ステップでの判断結果に応じて開始されて、水素発生材料への水の供給を停止して所定の待機時間待機し、待機時間内における水素発生材料の活性状態を判断する後段の判別ステップが第3の判別ステップである。
このように、水素発生材料に所定量の水を供給して水素発生材料の活性状態を判断する前段の判別ステップとしての第2の判別ステップでの判別結果に基づいて、水素発生材料への水の供給を停止した待機時間中での水素発生材料の活性状態を確認する後段の判別ステップとしての第3の判別ステップを開始するか否かを決めるようにすれば、水素発生材料に水を供給することによって開始される発熱反応による水素発生の状況を確認しながら、水素発生材料に水を供給しないで待機する待機時間を設けるか否かが判断できる。このため、水素発生材料に必要以上の水を一度に供給してしまって水素発生材料の温度を下げてしまい、水素発生のために必要な発熱反応がかえって阻害されることで、結果として水素の発生開始が遅れるような事態を回避できる。この結果、水素発生材料の活性状態を確認しつつ、速やかに定常的な水素製造を開始することができる製造開始レベルに持って行くことができる。また、水素発生材料の活性状態が不十分なときに大量の水を供給してしまうことによって生じる、水素発生材料と水との過剰な反応を回避することができ、水素発生材料を収容している容器の温度や内部圧力が高くなりすぎる事態や、燃料電池で消費できない過剰量の水素が発生して水素を無駄に浪費してしまうという事態などを防止することができる。
<第4の判別ステップ(前段の判別ステップ)>
図3は、本実施形態にかかる水素製造方法における第4の判別ステップと第5の判別ステップを示すフローチャートである。
図3は、本実施形態にかかる水素製造方法における第4の判別ステップと第5の判別ステップを示すフローチャートである。
上記したように、図2に示した第3の判別ステップにおいて、所定量の水を供給した後第1の待機時間待機した状態での水素発生材料の活性状態が、製造開始レベルであると判断されなかった場合、すなわちステップS206で「No」の場合に、図3に「3」の段階として示した第4の判別ステップが開始される。
図3に示すように、第4の判別ステップでは、まずステップS301で、第2の供給速度V2で水素発生材料に水が供給される。
同時にステップS302として、タイマーが動作を開始する。このタイマーは、水素発生材料への水の供給時間を第2の供給時間t3とするためのものである。
そして、ステップS303において、タイマーが動作している第2の供給時間t3の間の水素発生材料の活性状態が所定のレベル以上であるか否かを確認する。具体的には、水素発生材料の温度Tを検出して、タイマーが動作しているt3の間に、その温度Tが第4の所定温度Tth4以上となった場合に、水素発生材料の活性状態が所定のレベル以上であると判断する。
このように、ステップS203で、水素発生材料の活性状態が所定のレベル以上であると判断された場合(Yesの場合)には、図3に示すように、次のステップS304に進んで、第5の判別ステップが開始される。
ここで、水素の活性状態を確認する判別ステップをなるべく早く終了するという観点からは、タイマーが動作しているt3の期間が完了する以前であっても、水素発生材料の温度TがTth4以上となった段階で、第5の判別ステップに進むことが好ましい。すなわち、ステップS301で再開した水の供給速度を停止して、第2の待機時間に移行することが好ましい。
一方、ステップS303において、タイマーが第2の供給時間t3をカウントする間に、水素発生材料の温度Tが第4の所定温度Tth4以上とならない場合には、水素発生材料が、安定した水素の製造に使用できるレベルの活性状態には至らないもの、すなわち、水素発生材料が、さらなる水素発生のための反応を開始する余地がなくなってしまっていると判断され(Noの場合)、ステップS307で水の供給が停止される。
さらに、水素発生材料が使用できないことをユーザーに知らせるために、ステップS308で、Alertの点灯が行われる。
以上の第4の判別ステップで判断される水素発生材料の所定レベルは、上記した第1から第3の判別ステップにおける水素発生材料の活性状態の判別レベルである製造開始レベルと同じレベルであるか、もしくは製造開始レベルよりは低いレベルである。第4のステップは上記したように、水素発生材料に水を供給した後に所定時間の待機を行ってもその活性状態が製造開始レベルに至らなかった場合に開始されるステップであり、水素発生材料が定常的な水素製造に使用できるか否かの最終的な判断を行うという趣旨を有する判別ステップだからである。
したがって、第4の判別ステップにおける第4の所定温度Tth4の値は、第1の判別ステップにおける第1の所定温度Tth1、第2の判別ステップにおける第2の所定温度Tth2、さらに、第3の判別ステップにおける第3の所定温度Tth3と、同じ温度であるかもしくはこれより低い温度として設定することができる。
また、水素発生材料の活性状態を示す指標として水素発生量を用いる場合には、ステップS303において、タイマーが動作している第2の供給時間t3の間に、水素発生量Lが第4の所定水素量Lth4以上となった場合に、水素発生材料の活性状態が所定のレベル以上であると判断されて(Yesの場合)第5の判別ステップが開始される。また、タイマーが第2の供給時間t3をカウントする間に、水素発生材料からの水素発生量Lが第4の所定水素量Lth4以上とならない場合には、水素発生材料の活性状態が所定のレベル以上ではないと判断され(Noの場合)、時間t3が経過し次第、水の供給が停止されるステップS307に移行する。
なお、水素発生材料からの水素発生量を指標とした場合も、第4の所定水素量Lth4の値は、第1の所定水素量Lth1、第2の所定水素量Lth2、さらに、第3の所定水素量Lth3と同じ値かもしくはこれよりも小さな値に設定することができる。
<第5の判別ステップ(後段の判別ステップ)>
第5の判別ステップは、上記した第4の判別ステップにおいて、水素発生材料に所定量の水を供給した状態での水素発生材料の活性状態が、所定のレベル以上であると判断された場合、すなわちステップS303で「Yes」の場合に開始される。
第5の判別ステップは、上記した第4の判別ステップにおいて、水素発生材料に所定量の水を供給した状態での水素発生材料の活性状態が、所定のレベル以上であると判断された場合、すなわちステップS303で「Yes」の場合に開始される。
図3に示すように、第5の判別ステップでは、まずステップS304で、水素発生材料への水の供給が停止される。
同時にステップS305として、タイマーが動作を開始する。このタイマーは、水素発生材料への水の供給を停止して水素発生材料と水との発熱反応が開始するのを待つ、第2の待機時間t4をカウントするためのものである。
そして、ステップS306において、タイマーが動作している第2の待機時間t4の間の水素発生材料の活性状態が、製造開始レベル以上であるか否かを確認する。具体的には、水素発生材料の温度Tを検出して、タイマーが動作しているt4の間に、その温度Tが第5の所定温度Tth5以上となった場合に、水素発生材料の活性状態が製造開始レベル以上であると判断する。このように、ステップS306で、水素発生材料の活性状態が製造開始レベル以上であると判断された場合(Yesの場合)には、図3中に「2」段階として示す定常状態での水素製造が開始される。
上記第2〜4の各判別ステップと同様に、定常状態での水素製造を早期に開始するという観点から、タイマーが動作しているt4の期間が完了する以前であっても、水素発生材料の温度TがTth5以上となった段階で、「2」の段階として示す定常状態での水素製造に進むことが好ましい。すなわち、水の供給を停止している待機時間を終了して、定常状態での水の供給速度である定常供給速度での水の供給を開始することが好ましい。
一方、ステップS306において、タイマーが第2の待機時間t4をカウントする間に、水素発生材料の温度Tが第5の所定温度Tth5以上とならない場合には、水素発生材料の活性状態が製造開始レベル以上ではないと判断される(Noの場合)。
この場合には、ステップS308に進んで、水素発生材料が使用できないことをユーザーに知らせるための、Alertの点灯が行われる。
この第5の判別ステップは、上記第4の判別ステップと同様、水素発生材料に水を供給しながら活性状態を確認した第2の判別ステップおよび第3の判別ステップにおいて、定常状態での水素製造に移行することができるレベルである製造開始レベルに到達しなかった場合に重ねて行われるステップであり、水素発生材料に水素を製造する余力が残っているか否かの確認をするという要素を帯びた判別ステップである。したがって、第4のステップで所定量の水を供給した後、一定時間の待機時間をとった場合にも水素発生材料の発熱反応が十分なレベルに到達しないと言うことは、水素発生材料に定常状態での反応を続ける余力がないと判断できるからである。
第5の判別ステップにおける第5の所定温度Tth5の値は、上記した第1の判別ステップにおける第1の所定温度Tth1、第2の判別ステップにおける第2の所定温度Tth2、および、第3の判別ステップにおける第3の所定温度Tth3と同じ温度に設定することができる。この第5の判別ステップでも、第1〜第3の判別ステップと同じく、水素発生材料が製造開始レベルにあるか否かを判断するからである。
また、水素発生材料の活性状態を示す指標として水素発生量を用いる場合には、ステップS306において、タイマーが動作している第2の待機時間t4の間に、水素発生量Lが第5の所定水素量Lth5以上となった場合に、水素発生材料の活性状態が製造開始レベル以上であると判断し(Yesの場合)、図3中に「2」の段階として示す定常状態での水素製造が開始される。一方、タイマーが第2の待機時間t4をカウントする間に、水素発生材料からの水素発生量Lが第5の所定水素量Lth5以上とならない場合には、水素発生材料には定常状態での水素発生を行う余力が残っていないと判断され(Noの場合)、時間t4が経過し、ステップS308でのAlert表示が行われる。
なお、水素発生材料からの水素発生量を指標とした場合も、第5の所定水素量Lth5の値は、上記した第1の判別ステップにおける第1の所定水素量Lth1、第2の判別ステップにおける第2の所定水素量Lth2、および、第3の判別ステップにおける第3の所定水素量Lth3と同じ値に設定することができる。
ここで、第5の判別ステップは、第4の判別ステップにおいて、第2の供給速度で第2の供給時間、水素発生材料に水を供給している間の水素発生材料の活性状態が、所定のレベルに達した場合に開始されるステップである。また、この第5の判別ステップでは、水素発生材料への水の供給を停止して第2の待機時間待機を行い、この待機時間内における水素発生材料の状態を判断して、定常状態での水素製造を開始するか、それとも水素発生材料に水素製造能力が残っていないとして水素発生を停止するかの判断を行うものである。したがって、第4の判別ステップは、水素発生材料に、所定の供給時間、所定の供給速度で水を供給して、その供給時間内における水素発生材料の活性状態を判断する前段の判別ステップに相当し、これに対する、前段の判別ステップでの判断結果に応じて開始されて、水素発生材料への水の供給を停止して所定の待機時間待機し、待機時間内における水素発生材料の活性状態を判断する後段の判別ステップに相当するステップが第5の判別ステップである。
このように、第4の判別ステップと第5の判別ステップとの関係は、前段の判断ステップで、水素発生材料に水を供給する所定時間内に水素発生材料の活性状態が所定のレベルに達した場合に後段の判断ステップを開始するという点で、前段の判断ステップで、水素発生材料に水を供給する所定時間内に水素発生材料の活性状態が所定のレベルに達しなかった場合に後段の判断ステップを開始するものである、上記第2の判断ステップと第3の判断ステップとの関係とは逆の関係となる。
しかし、後段の判断ステップである第5の判断ステップの開始を、前段の判断ステップである第4の判断ステップでの判断結果に応じて開始することで、上記第2の判断ステップと第3の判断ステップとの場合と同様に、水素発生材料に水を供給することによって開始される発熱反応による水素発生の状況を確認しながら、水素発生材料に水を供給しないで待機する待機時間を設けるか否かが判断できる。このため、水素発生材料に必要以上の水を一度に供給してしまって水素発生材料の温度を下げてしまい、水素発生のために必要な発熱反応がかえって阻害されることで、結果として水素の発生開始が遅れるような事態を回避できる。また、水素発生材料の活性状態を確認しつつ、速やかに定常的な水素製造を開始することができる製造開始レベルに持って行くことができ、さらに、水素発生材料の活性状態が不十分なときに大量の水を供給してしまうことによって生じる、水素発生材料と水との過剰な反応を回避することができ、水素発生材料を収容している容器の温度や内部圧力が高くなりすぎる事態や、燃料電池で消費できない過剰量の水素が発生して水素を無駄に浪費してしまうという事態などを防止することができる。
なお、上記の第4の判別ステップおよび第5の判別ステップにおいて、ステップS308でのAlert表示は、例えば、LEDランプを設置しこれを点灯するより、ユーザーへの警告とすることができる。水素発生材料中の水素発生物質が、水と反応して水素を発生する能力は有限である。水素発生物質のうちの既に水と反応して水素を発生した部分の割合を「反応率」と称することとした場合に、水の供給速度や環境温度などにも左右されるが、例えば反応率が60%を超えた場合には、水素発生材料に水を供給しても、もはや安定した定常状態での水素発生が困難となることがある。このような場合に、Alertを表示することによって、その旨をユーザーに確実に報知することができ、水素発生材料を追加又は交換するなどのユーザーが適切な対応を行うように促すことができる。
但し、このステップS308でのAlert表示は、本実施形態の水素製造方法において、必須のものではない。
<定常状態の水素製造>
以上説明してきたように、本実施形態にかかる水素製造方法では、第1の判別ステップから必要に応じて第5の判別ステップまでを経て、水素発生材料が定常状態での水素製造に移行できる製造開始レベルであるか否かを確認する。そして、水素発生材料の活性状態が、定常状態での水素の製造を開始できる製造開始レベル以上である場合には、定常状態での水素製造が開始される。
以上説明してきたように、本実施形態にかかる水素製造方法では、第1の判別ステップから必要に応じて第5の判別ステップまでを経て、水素発生材料が定常状態での水素製造に移行できる製造開始レベルであるか否かを確認する。そして、水素発生材料の活性状態が、定常状態での水素の製造を開始できる製造開始レベル以上である場合には、定常状態での水素製造が開始される。
図4は、定常状態での水素製造を示すフローチャートである。図4に示すように、上記第1の判別ステップから第5の判別ステップまでにおいて、水素発生材料の活性状態が製造開始レベル以上と判断されて、各図中の「2」の段階に進んだ場合には、直ちに次のステップS401で、水素発生材料に所定の定常供給速度で水が供給される。この場合には、水素発生材料が製造開始レベル以上の活性状態となっているため、水素発生材料の温度は所定の温度以上となっており、また、水素発生材料から所定量の水素が発生している状態である。
このため、定常供給速度で水を供給することで、水素発生材料と水との発熱反応を過不足なく生じさせることができ、水素発生材料を水との反応で水素を発生するのに好適な温度に保ちながら、一定の速度で安定して水素を発生し続ける定常状態(ステップS402)を開始することができる。この定常状態の水素製造は、水素製造を停止する指示が入力され、水素発生材料への水の供給が停止されるまで継続される。
この定常状態の水素製造における水の供給速度である定常供給速度は、例えば、水素発生材料に含まれる水素発生物質1g当たり、5μl/分以上とするのが好ましく、10μl/分以上とするのがより好ましく、20μl/分以上とするのが特に好ましい。また、水の供給速度の上限としては、例えば200μl/分以下とするのが好ましく、100μl/分以下とするのがより好ましく、50μl/分以下とするのが特に好ましい。
なお、上記したように、第2の判別ステップにおける水の供給速度である第1の供給速度V1は、定常供給速度よりも遅くすることが好ましい。第1の供給速度V1が速すぎる場合には、供給された水によって反応温度が低下し、反応速度が低下するに伴ってある時間が経過した後に水素発生物質が過剰に反応し、水素発生材料と水とを反応させる容器内の温度が急激に上昇して、水素発生反応をコントロールできなくなる場合があるからである。特に、水素発生物質が全く新しいものでまだ水と反応していない場合、すなわち、前述の反応率が0%である場合に、上述した現象が起こる可能性が大きくなる。しかし、第1の供給速度V1を定常供給速度よりも遅くするよう制御することにより、水素発生反応をコントロールしやすくなり、水素発生反応の安定化を高めると共に、水と水素発生物質との発熱反応をより素早く行うことができる。
この、第1の供給速度V1は、例えば水素発生材料1gあたり、1μl/分以上とするのが好ましく、3μl/分以上とするのがより好ましく、5μl/分以上とするのが特に好ましい。また、上限としては、50μl/分以下とするのが好ましく、25μl/分以下とするのがより好ましく、15μl/分以下とするのが特に好ましい。
一方、上記したように、第4の判別ステップにおける水の供給速度である第2の供給速度V2は、定常供給速度よりも早い速度とすることが好ましい。特に、水素発生物質の一部が既に水と反応している場合、すなわち、上記した反応率が数十%程度以上である場合には、一旦水素が発生した後水素の発生を停止したことで、水素発生材料に含有される水素発生物質の表面酸化が進みやすく、供給された水が水素発生物質まで浸透するのに時間がかかるようになる。このため、第2の供給速度V2を定常供給速度よりも早い速度となるよう制御することにより、水と水素発生物質との発熱反応をより素早く開始させることができる。
この、第2の供給速度V2は、例えば水素発生材料1gあたり、10μl/分以上とするのが好ましく、30μl/分以上とするのがより好ましい。
また、定常供給速度について上記したように、本実施形態における水素発生材料への水の供給速度を把握する上では、単位時間として分単位程度とすることが相当である。したがって、上記第1の供給速度V1、および、第2の供給速度V2も、常に一定の供給速度(供給流量)でなければならないというものではなく、ともに一定の分速として把握できる範囲での変動は許される。しかし、これら第1の供給速度V1、および、第2の供給速度V2は、水素発生材料と水との反応が未だ不安定な状態での水の供給速度であるため、定常供給速度と比較して、微視的に見た場合の極端な供給速度の変化に対する裕度は小さくなる。このため、定常供給速度の例として示したような、水を断続的に供給することは避けた方が好ましく、所定範囲での供給速度(供給流量)の変化の中で連続して水を供給することが好ましい。
また、上記第2の判別ステップから第5の判別ステップを、水素発生材料もしくは水の少なくともいずれか一方を加熱した状態で行うことが好ましい。このようにすることで、水素発生材料と水との発熱反応を容易に開始させることができるようになり、定常状態での水素製造を、より早期に開始できるようになる。
水素発生材料と水の少なくとも一方を加熱する温度としては、例えば、40℃以上90℃未満であって、かつ、それぞれの判別ステップが水素発生材料の活性化状態の検出をその温度で行っている場合には、それぞれの判別ステップでの判断基準となる所定温度、すなわち第2から第5の所定温度(Tth2〜Tth5)よりも低い値とすることが好ましい。
この水素発生材料や水を加熱する方法としては、例えば抵抗体に通電することによる発熱を利用する方法を採用することができる。より具体的には、水素発生材料と水とを反応させる容器の外部に抵抗対を取り付けて通電して発熱させ、容器を外部から加熱することにより、容器内部の水素発生材料や水を加熱することができる。抵抗体の種類については特に限定されず、例えば、ニクロム線、白金線等の金属発熱体、炭化ケイ素、PTCサーミスタ等が使用できる。
また、この加熱は、水素発生材料に含ませることもできる、前記した水と反応して水酸化物や水和物となる材料、水と発熱して水素を生成する材料等を用いて行うこともできる。具体的には、これらの発熱物質を水素発生材料と水とを反応させる容器の外部に配置して発熱させ、その熱で容器全体を加熱することなどが考えられる。
さらに、加熱を行う手段としては、水以外の物質と発熱反応する材料、例えば、鉄粉のように酸素と発熱反応を生じる材料を用いることができる。この場合には、発熱反応のために酸素を導入しなければならいため、上述のように容器の外部に配置して使用されることとなる。
以上、本発明の水素製造方法の実施の形態として、定常状態での水素製造を開始するまでの水素発生材料の活性状態を確認する手法について説明した。本実施形態では、水素発生材料に水を供給しない初期状態での活性状況を確認する第1の判別ステップに始まり、水素発生材料に徐々に水を供給して水素発生反応を生じさせながら水素発生材料の活性状態の確認を行う、第2の判別ステップから第5の判別ステップを順次経て行う場合について説明した。しかし、本発明の水素製造方法は、これに限られるものではない。
例えば、本実施形態で示した初期状態を確認する第1の判別ステップは、必ずしも行う必要はない。水素発生材料の活性状態が、初期状態で既に一定のレベル以上である場合であっても、水素発生材料に所定量の水を供給する第2の判別ステップでの水の供給速度である第1の供給速度V1が小さい場合には、水素発生材料に過剰な水が供給される前に、水素発生材料の活性状態が製造開始レベル以上と判断されることになり、直ちに定常状態での水素製造が開始されることになるからである。
また、水素発生材料の上記した反応率が比較的高い場合には、第2の判別ステップおよび第3の判別ステップを経ることなく、第4の判別ステップに移行することが好ましい場合もある。上記したように、第4の判別ステップは、定常速度と同じかむしろ速い速度で、水素発生材料に多めに水を供給して水素発生材料との水との反応を確認するものであるため、水素発生材料のある程度以上の部分が既に水と反応していて、全体的に見て水との反応が起きにくくなっているような反応率の高い場合により好適であるからである。
さらに、このような観点からは、水素発生材料の反応率が0%かもしくは低いことが分かっている場合には、第2の判別ステップにおける水の供給速度である第1の供給速度を小さくすることがより好ましいと考えられる。水素発生材料の中で、水と反応している部分が少ない「反応率」が低い場合には、水素発生材料の表面が、水との反応により酸化されている可能性が少なく、少ない量の水で、水素発生反応が開始されると期待できるからである。
(実施形態2)
次に、本発明の水素製造装置、および、この水素製造装置と、水素製造装置で製造された水素を燃料とする燃料電池とを備えた燃料電池システムについて、本発明の実施形態2として説明する。なお、本発明の水素製造装置は、上記実施形態1として説明した本発明の水素製造方法に用いられるものである。このため、以下の説明において、水素製造方法に関する説明部分で、実施形態1で既に説明下内容と重複する内容については、適宜説明を省略する場合がある。
次に、本発明の水素製造装置、および、この水素製造装置と、水素製造装置で製造された水素を燃料とする燃料電池とを備えた燃料電池システムについて、本発明の実施形態2として説明する。なお、本発明の水素製造装置は、上記実施形態1として説明した本発明の水素製造方法に用いられるものである。このため、以下の説明において、水素製造方法に関する説明部分で、実施形態1で既に説明下内容と重複する内容については、適宜説明を省略する場合がある。
図5は、本実施形態としての水素製造装置および燃料電池システムの一例を示す概略構成図である。
本実施形態の水素製造装置100は、水との発熱反応により水素を発生する水素発生物質を含む水素発生材料2を収納可能な容器1と、容器1内に収容された水素発生材料2との発熱反応によって水素を発生させる水4を収容する水収容容器3,水収容容器3から容器1への水4の供給を行うポンプ10,さらに容器1に収容された水素発生材料2の活性状態を検出する検出手段としての温度センサ12,温度センサ12の出力から水素発生材料2の活性状態を検出・判別してポンプ10を制御し、水4の供給量を調整する制御部13を備えている。そして水収容容器3、ポンプ10,および、制御部13が、容器1内の水素発生材料2に、所定の供給時間所定の供給速度で水を供給する水供給手段を構成している。なお、図5において、容器1と水収容容器3とは、その内部構造を示すために断面図としている。
容器1は、容器本体1aと蓋1bとを有している。蓋1bを貫通して、容器本体1a内に水収容容器3に収容されている水4を供給するための水供給管5と、生成された水素を導出するための水素導出管8が設けられている。水収容容器3からポンプ10により送られてきた水4は、水供給管5の水供給口6から容器1内の水素発生材料2に供給され、水素発生材料2と水4との反応により生成された水素は、水素導出口7から水素導出管8を経て水素供給流路16に導かれる。
水供給管5と水素導出管8には、着脱機構15が設けられていて、この着脱機構15によって、容器1を水素供給流路16やその先に接続される燃料電池11,また、水収容容器3から分離することができるようになっている。容器1内において、水素発生材料2と水4とを反応させて水素を発生させると、容器1に収容されている水素発生材料2は反応生成物に変化し、水素を生成する能力を失う。このため、水と反応して反応生成物となった水素発生材料の割合、すなわち上記実施形態1で説明した反応率が高くなっていくと、さらなる水素発生が困難となる。実施形態1でAlertが表示される場合として説明したこのような場合に、着脱機構15によって容器1を内部の反応率の高くなった水素発生材料2ごと切り離し、新しい水素発生材料2が収容された容器1と交換することで、引き続き連続して水素の製造を行うことができるようになる。
なお、図5では、着脱機構15を水供給管5にも取り付けて、容器1を水供給管5からも切り離せるようにした例を示したがこれに限られるものではない。水素発生材料2と反応させることで、水収容容器3に収容されている水4も消費され減少していく。このため、容器1を着脱機構15によって取り外して、新しい水素発生材料が収容された容器1と取り替えると同時に、水供給容器3も取り外して新しく必要量の水4が入った水収容容器3と取り替えるようにしてもよい。
また、上記実施形態1で説明したAlertを表示するLEDランプについては、図5では図示を省略している。
容器1は、水4と発熱反応して水素を発生させる水素発生材料2を収納可能なものであれば、その材質や形状は特に限定されない。しかし、水供給口6や水素導出口7以外から水4や水素が漏れない材質や形状が好ましい。具体的な容器の材質としては、水および水素を透過しにくく、かつ100℃程度に加熱しても容器が破損しない材質が好ましく、例えば、アルミニウム、鉄、ステンレス等の金属、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等の樹脂を用いることができる。また、容器の形状としては、角柱状、円柱状等が採用できる。
なお、水素発生材料2が水4と反応することで生じる反応生成物は、通常、水素発生材料2よりも体積が大きい。そのため、容器1は、こうした反応性生物の生成に伴う内蔵物の体積膨張が生じた場合に破損してしまわないように、水素発生材料2と水4との反応に応じて変形可能であることが好ましい。このような観点からは、容器1の材料として、前記例示の材質の中でもPEやPP等の樹脂がより好ましい。
また、容器1の蓋1bに設けられた水素導出管8、水素導出口7には、容器1内の水4や水素発生材料2が外部に流出しないように、フィルターを設置することが好ましい。このフィルターとしては、気体を通すが液体および固体を通しにくい特性を有するものが好ましく、例えば、多孔性のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製の気液分離膜、ポリプロピレン(PP)製の不織布等を用いることができる。
図5に示す本実施形態の水素製造装置では、水供給管5に備えられたポンプ10が、制御部13からの制御信号によって、所定の供給時間の間、所定の供給速度で、水収容容器3内の水を、容器1内に供給する。このポンプ10としては、例えば、チューブポンプ、ダイヤフラムポンプあるいはシリンジポンプなどのマイクロポンプを使用することができるが、これに限られるものではない。制御部13からの制御信号にしたがって、容器1への水の供給速度と時間をコントロールできる、いわば水供給量が調整可能な手段であれば、その具体的構成の制限はない。
なお、本実施形態の水素製造装置に用いられるポンプとしては、水の供給速度が広範囲に設定できるものであることがより好ましい。実施形態1で説明したように、例えば第4の判別ステップにおける水の供給速度である第2の供給速度V2は、定常状態での水素製造が行われる場合の水の供給速度である定常供給速度よりもより早い速度に設定することで、第4の判別ステップおよび第5の判別ステップに要する時間が短くなり、より早期に定常状態での水素製造を開始することができるからである。
なお、ポンプ10に、実際に水収容容器3から容器1に供給された水の量を検出する機能を備えておき、この検出情報を制御部13にフィードバックさせることもできる。
容器1内で水素発生材料2と水4との反応により生成された水素は、容器1に設けられた水素導出口7から水素導出管8により導出される。導出された水素は、本実施形態の水素製造装置で生成された水素を使用する機器、例えば図5の場合は燃料電池11へと送られる。本実施形態では、水素導出管8の着脱機構15から先が、燃料電池11への水素供給流路16となっている。
容器1には、水素発生材料2の活性状態を検出するための検出手段である温度センサ12が設けられている。上記、実施形態1で説明したように、水素発生材料2の活性状態を温度によって検出する場合の温度センサ12としては、熱電対やサーミスタなどの既知の温度検出手段を用いることができる。さらに、白金測温抵抗体、IC化温度センサなどの接触式センサや、熱を検知する放射温度計などの非接触式センサなどを用いることができる。
温度センサの取り付け位置としては、水素発生材料2の温度を計測することができれば特に制限はない。しかし、容器1の温度を計測することで、内蔵された水素発生材料2の温度を計測する必要があるため、外部温度に影響されずに容器1の温度をより正確に計測できる場所として、容器外底部、あるいは底部近傍の外表面などが比較的好ましい。
また、図5に示す例では、温度センサ12を容器1の外部に設けた例を示したが、上記実施形態1でも説明したとおり、温度センサを容器1の内部に設けて、水素発生材料2の温度を直接検出できるようにしてもよい。
なお、水素発生材料2の活性状態を検出する検出手段としては、水素発生材料2の温度を検出する温度センサ12に限らず、水素発生材料2から発生する水素量を検出するものを用いることができる。この場合、上記実施形態1でも説明したとおり、容器1内に、容器1内の水素の濃度を検出するセンサを設けることや、水素導出管8に導出される水素の流量を測定できる流量計を配置することが考えられる。また、図5に示すように、本実施形態の水素製造装置100を、水素を燃料とする燃料電池11の燃料生成に用いる場合には、燃料電池11内に、流入される水素の流量を検出する流量計を設けて、水素発生材料から発生する水素量を検出することができる。
さらに、燃料電池11の出力である電流値を検出して、これらの値から水素発生材料から発生する水素量を検出することや、燃料電池11の開回路電圧の大小によって、水素発生材料2から発生する水素量を検出することができ、これらの各手段のいずれか、又は、複数を用いて水素発生材料2の活性状態の検出手段とすることができる。
制御部13は、本実施形態の水素製造装置において、温度センサ12などの検出手段からの検出信号に基づいて、容器1内の水素発生材料2の活性状態を判断し、その結果に基づいてポンプ10を制御し、水素発生材料2への水4の供給速度と供給時間を調整することで、上記実施形態1で説明した、第1の判別ステップから第5の判別ステップを適宜実施する。そして、これらの各判別ステップでの判断結果に基づいて、より速やかに定常状態の水素製造を開始し、定常状態での水素製造を維持する。また、水素発生材料の反応率が高く、もはや定常状態での水素製造が困難と判断される場合には、Alertを表示してユーザーにこれを伝える。
このような機能を有するため、制御部13はマイコン等のプログラミング可能な制御装置を用いることが好ましい。また、図5に示すように、制御部13と、検出手段である温度センサ12、または、燃料電池11,さらに、水の供給を調整するポンプ10とは、接続されていて、検出された情報についての検出信号や制御信号のやりとりが行われる。
また、図5に示すように、容器本体1aの外面を保温材9で覆うことによって、容器1内部での水素発生材料2と水4との発熱反応により発生した熱が、容器本体1aの外壁から放熱されてしまうことを防止することができ、水素発生材料2に水4が供給されることにより開始される水素生成の発熱反応を維持できる温度を保持しやすくなり、また、外気温の影響も受けにくくなる。その結果、より速やかに定常状態での水素製造を開始することができる。保温材9の材質は、断熱性が高い材質であれば特に限定されず、例えば、発泡スチロール、ポリウレタンフォーム等の多孔性断熱材、或いは真空断熱構造を有する断熱材等を用いることができる。
さらに、容器本体1aと保温材9との間に、加熱手段としての抵抗体14を設けることもできる。この抵抗体14に通電することで発熱させた状態で、上記実施形態1で説明したように、第2の判別ステップから第5の判別ステップを行うことで、水素発生物質2と水4との発熱反応を容易に開始させることができるようになり、より早期に定常状態での水素製造を開始することができる。なお、容器1を加熱する加熱手段としての抵抗体14として、ニクロム線、白金線等の金属発熱体、炭化ケイ素、PTCサーミスタ等が使用できること、また、容器1の加熱手段は、発熱体に限られるものではなく、水と反応して水酸化物や水和物となる材料、水と発熱して水素を生成する材料、さらには、水以外の物質と発熱反応する材料、例えば、鉄粉のように酸素と発熱反応を生じる材料を用いることができることも、上記実施形態1で説明したとおりである。
また、上記実施形態1で説明したように、水素発生材料2に発熱材料を含有させることができる。このような発熱材料を含有する水素発生材料2を容器本体1aに収容し、これに水4を供給して加熱する場合には、発熱材料は水素発生物質と均一または不均一に分散・混合させた混合物として用いることができる。しかし、容器本体1a内において、水素発生材料2全体中における発熱材料の平均含有率よりも発熱材料の含有率が高い偏在部を設けることがより好ましく、容器本体1a内部の水供給管5の水供給口6の近傍に上記の偏在部を配置することが特に好ましい。容器本体1aの内部において、発熱材料をこのように偏在させることにより、水4を供給し始めてから水素発生物質が加温されるまでの時間をより短くして、より迅速な水素発生を可能とすることができる。
このように、容器本体1a内部の水供給口6の近傍に上記の偏在部を配置するには、水供給口6の近傍に発熱材料だけを配置する方法の他、予め発熱材料の含有率の異なる2種以上の、水素発生物質と発熱材料との単位組成物を調製しておき、水供給口6の近傍には発熱材料の含有率の最も高い単位組成物を配置し、その他の部分には発熱材料の含有率の低い単位組成物を配置することもできる。
なお、図5では図示していないが、本実施形態の水素製造装置として、水素導出管8に、容器1から導出される水素と未反応の水を分離するための気液分離部と、さらに、気液分離部で分離された水を水収容容器3に戻す手段とを備えていることが好ましい。容器1内で、水素発生材料2と水4とが反応したときに、未反応の水が水素との混合物として、水素導出管8から容器1の外部へ吹き出してしまう場合がある。このような場合に、気液分離部を備えることで、容器1から排出された水と水素の混合物を、水(液体)と水素(気体)とに分離し、さらには分離した水を水収容容器3に戻すことができる。このようにすることで、実質的な水の供給量を低減でき、水収容容器3内に収容しておく水4の量を減らすことが可能となる。その結果、水素製造装置100全体の体積および重量を低減してコンパクトにすることができる。なお、水素発生材料2の活性状態を発生する水素量で検出する場合には、水素量を検出する検出手段である流量計と容器1との間に気液分離部を設けることで、正確な水素の流量を測定することができる。
また、本実施形態の水素製造装置100では、水素導出管8に上記の気液分離部を設けることに加えて、気液分離部と容器1との間に、図示しない冷却部を設けていることが好ましい。容器1内は、水素発生材料2と水4との発熱反応により水の沸点近くの温度まで上昇する。このため、容器1内の未反応の水4が、水蒸気となって水素とともに水素導出管8内に混じり込むことが考えられる。そこで、冷却部を設けることにより、水素導出管8内に流れ込んだ水蒸気を冷却して液体の水に戻すことで、気液分離部での水の回収率を高めることができるからである。冷却部としては、例えば、金属製冷却フィンが水素導出管8に接するように配置された構造の冷却手段を用いることができる。また、空冷ファンを用いたり、水冷パイプを水素導出管8に近接させたりすることもできる。
次に、本実施形態にかかる水素製造装置を、より小型化する場合に好適な例として、容器1をカートリッジ化したものについて説明する。
図6は、本実施形態にかかる水素製造装置100において、製造された水素を小型燃料電池や携帯電子機器に適用するような場合に好適なように、容器1を小型の燃料カートリッジとした構成を示す模式的断面図である。なお、図6では、各構成要素の理解を容易にするために、断面部分のハッチングを省略している。また、図5に示した水素製造装置と同じ機能を有して共通の作用を行う部分については、図5と同じ符号を付している。
図6に示すように、燃料カートリッジとした容器1は、内部に水素発生材料2を封入したものであり、水素発生材料2に水を供給するための水供給管5と、容器1内で発生した水素を外部に取り出すための水素導出管8とを備えている。燃料カートリッジとした容器1は、燃料電池や携帯電子機器に装着された後に、図示しないマイクロポンプ等によって水供給管5の水供給口6を通じて容器1内に水が供給される。なお、容器1内への水の供給方法としては、水を充填した図示しない水収容容器を燃料カートリッジ化された容器1の一部に予め付帯させておき、燃料電池や携帯電子機器に燃料カートリッジが装着された後に、水収容容器内の水が容器1内に供給されるようにすることもできる。
図6に示すように、燃料カートリッジ化された容器1内では、水素発生材料2の上下に吸水材17が配置されていて、水供給管5の先端の水供給口6は、水素発生材料2の下方に配置された吸水材17内にその開口部を有するように配置されている。このようにすることで、水供給管5の水供給口6から容器内部に供給された水の一部は、吸水材17により保持され、残部は水素発生材料2と反応して水素発生の発熱反応が開始される。発生した水素は、水素導出口7から水素導出管8を通じて水素製造装置外に導出され、例えば燃料電池の負極に供給される。この吸水材17は必ずしも必要なものではないが、水素発生の発熱反応による水の消費に応じて、吸水材17により保持された水も水素発生材料2に供給されるため、水素発生速度の時間変動を抑制する上で効果的である。
なお、吸水材17は、水を吸って保持することのできる材質のものであれば特に限定されるものではなく、一般には脱脂綿や不織布等を用いることができる。
本実施形態の燃料電池システム200は、図5に示したように、本実施形態の水素製造装置100と、この水素製造装置100の水素導出管8と接続された水素供給流路16から水素を流入させ、この水素を燃料として発電する燃料電池11を有している。なお、燃料電池11は、水素を燃料として酸素と反応させる、周知の高分子電解質膜型燃料電池(PEMFC:Polymer Electrolyte Membrane Fuel Cell)などであり、電解質に固体高分子電解質、正極活物質に空気中の酸素、負極活物質に水素燃料を用いるものである。この燃料電池の構成は、一般的なものであるため、図示および詳細な説明は省略する。
以上、本発明の実施形態2として、本発明の水素製造装置と、この水素製造装置と水素製造装置で製造された水素を燃料として用いる燃料電池とを備えた燃料電池システムについて説明したが、本発明の水素製造装置は、燃料電池の燃料としての水素を製造するものに限定されるものではなく、水素貯蔵容器に水素を供給するための水素製造装置等として、一般的に利用できるものである。
以上のように本発明の水素製造方法および水素製造装置は、特に、100℃以下の低温において、簡便で効率よくかつ安定的に水素を製造できるものとして、産業上幅広く利用可能である。また、この水素製造装置と、水素を燃料とする燃料電池を備えた燃料電池システムは、特に小型携帯機器用の電源として幅広く利用可能である。
1 容器
2 水素発生材料
3 水収容容器
4 水
10 ポンプ
11 燃料電池
12 温度センサ
13 制御部
2 水素発生材料
3 水収容容器
4 水
10 ポンプ
11 燃料電池
12 温度センサ
13 制御部
Claims (27)
- 水との発熱反応により水素を発生する水素発生物質を含む水素発生材料に、水を供給して水素を製造する水素製造方法において、
前記水素発生材料の活性状態を確認し、前記水素発生材料の活性状態が製造開始レベル以上であると判断された場合に、
前記水素発生材料に定常供給速度で水を供給して、定常状態での水素製造を開始することを特徴とする水素製造方法。 - 前記水素発生材料の活性状態が前記製造開始レベル以上であるか否かの判断を、前記水素発生材料に所定量の水を供給して行われる、1または2以上の判別ステップによって行う請求項1に記載の水素製造方法。
- 前記判別ステップとして、
前記水素発生材料に、所定の供給時間、所定の供給速度で水を供給して、前記供給時間内における前記水素発生材料の活性状態を判断する前段の判別ステップと、
前記前段の判別ステップでの判断結果に応じて開始され、前記水素発生材料への水の供給を停止して所定の待機時間待機し、前記待機時間内における前記水素発生材料の活性状態を判断する後段の判別ステップとを有する請求項2に記載の水素製造方法。 - 第1の判別ステップとして、
水を供給しない初期状態での前記水素発生材料の活性状態を確認し、前記水素発生材料の活性状態が前記製造開始レベル以上であると判断された場合に、前記定常状態での水素製造を開始する判別ステップを有する請求項2に記載の水素製造方法。 - 第2の判別ステップとして、
前記第1の判別ステップにおいて、前記水素発生材料の活性状態が前記製造開始レベル以上であると判断されなかった場合に開始され、
前記水素発生材料に、第1の供給時間、第1の供給速度で水を供給して、前記第1の供給時間内における前記水素発生材料の活性状態を確認し、前記水素発生材料の活性状態が前記製造開始レベル以上であると判断された場合に、前記定常状態での水素製造を開始する判別ステップを有する請求項4に記載の水素製造方法。 - 第3の判別ステップとして、
前記第2の判別ステップにおいて、前記水素発生材料の活性状態が前記製造開始レベル以上であると判断されなかった場合に開始され、
前記水素発生材料への水の供給を停止した後、第1の待機時間待機を行って、前記第1の待機時間内における前記水素発生材料の活性状態を確認し、前記水素発生材料の活性状態が前記製造開始レベル以上であると判断された場合に、前記定常状態での水素製造を開始する判別ステップを有する請求項5に記載の水素製造方法。 - 第4の判別ステップとして、
前記第1の判別ステップまたは前記第3の判別ステップにおいて、前記水素発生材料の活性状態が前記製造開始レベル以上であると判断されなかった場合に開始され、
前記水素発生材料に、第2の供給時間、第2の供給速度で水を供給して、前記第2の供給時間内における前記水素発生材料の活性状態を確認し、前記水素発生材料の活性状態が所定のレベル以上であると判断された場合に、第5の判別ステップを開始する判別ステップを有する請求項4または6に記載の水素製造方法。 - 前記第5の判別ステップは、前記水素発生材料への水の供給を停止した後、第2の待機時間待機を行い、前記第2の待機時間内に前記水素発生材料の活性状態が前記製造開始レベル以上となった場合に、前記定常状態での水素製造を開始するものである請求項7に記載の水素製造方法。
- 前記第4の判別ステップにおいて、前記水素発生材料の活性状態が前記所定のレベル以上であると判断されなかった場合に、異常を知らせる警告表示を行い前記定常状態での水素製造を開始しない請求項7に記載の水素製造方法。
- 前記第5の判別ステップにおいて、前記水素発生材料の活性状態が前記製造開始レベル以上であると判断されなかった場合に、異常を知らせる警告表示を行い前記定常状態での水素製造を開始しない請求項8に記載の水素製造方法。
- 前記水素発生材料に水を供給する前記第1の供給速度が、前記定常供給速度よりも遅い速度である請求項5に記載の水素製造方法。
- 前記水素発生材料に水を供給する前記第2の供給速度が、前記定常供給速度よりも早い速度である請求項7に記載の水素製造方法。
- 前記水素発生材料の温度を検出し、前記水素発生材料の温度が所定の温度以上であるか否かによって、前記水素発生材料の活性状態のレベルを判断する請求項1から12のいずれか1項に記載の水素製造方法。
- 前記水素発生材料の温度が、40℃以上90℃以下である場合に、前記水素発生材料の活性状態が前記製造開始レベルであると判断する請求項13に記載の水素製造方法。
- 前記水素発生材料からの水素発生量を検出して、前記水素発生材料からの水素発生量が所定の量以上であるか否かによって、前記水素発生材料の活性状態のレベルを判断する請求項1から12のいずれか1項に記載の水素製造方法。
- 前記水素発生材料からの水素発生量を、水素の濃度によって検出する請求項15に記載の水素製造方法。
- 前記水素発生材料に含まれる前記水素発生物質が、アルミニウム、ケイ素、亜鉛、マグネシウムおよびこれらの元素を主体とする合金からなる群より選択された少なくとも1種以上の金属材料である請求項1から16のいずれか1項に記載の水素製造方法。
- 前記水素発生材料が、前記水素発生物質以外に水と反応して発熱する発熱材料をさらに含んでいる請求項1から17のいずれか1項に記載の水素製造方法。
- 前記発熱材料が、アルカリ土類金属の酸化物である請求項18に記載の水素製造方法。
- 前記水素発生材料における前記水素発生物質の含有率が、85重量%以上99重量%以下である請求項18に記載の水素製造方法。
- 前記水素発生材料の活性状態の判断を行う前記判別ステップを、前記水素発生材料および水の少なくとも一方を加熱した状態で行う請求項4から20のいずれか1項に記載の水素製造方法。
- 前記加熱が、抵抗体に通電することによる発熱により行われる請求項21に記載の水素製造方法。
- 前記加熱が、前記発熱材料の化学反応による発熱により行われる請求項21に記載の水素製造方法。
- 水との発熱反応により水素を発生する水素発生物質を含む水素発生材料を収容可能な容器と、
前記容器内の前記水素発生材料に、所定の供給時間、所定の供給速度で水を供給することができる水供給手段と、
前記水素発生材料の活性状態を検出する検出手段とを備え、
請求項1から23のいずれか1項に記載の水素製造方法に用いられることを特徴とする水素製造装置。 - 前記容器の外部に、前記容器を保温する保温材をさらに配置した請求項24に記載の水素製造装置。
- 請求項24または25に記載の水素製造装置と、
前記水素製造装置で製造された水素を用いて発電を行う燃料電池とを備えたことを特徴とする燃料電池システム。 - 前記水素発生材料からの水素発生量を、前記燃料電池の出力電流または開回路電圧を用いて検出する請求項26に記載の燃料電池システム。
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JP2008151997A JP2009298607A (ja) | 2008-06-10 | 2008-06-10 | 水素製造方法および水素製造装置、ならびに燃料電池システム |
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JP2013533597A (ja) * | 2010-07-23 | 2013-08-22 | シュパウント プライベート ソシエテ ア レスポンサビリテ リミテ | 燃料電池を動作させるための水素添加ポリシランによる水素生成 |
WO2014158091A1 (en) * | 2013-03-25 | 2014-10-02 | Horizon Fuel Cell Technologies Pte. Ltd. | Method and generator for hydrogen production |
-
2008
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