JP2008081381A - 水素製造装置および燃料電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】 連続的に水素を発生させることができる水素製造装置と、該水素製造装置を水素供給源とする燃料電池を提供する。
【解決手段】 水素発生物質を収容する水素発生物質収容容器と、水を収容する水収容容器とが、本体部に脱着可能に取り付けられてなり、上記水素発生物質収容容器内に、上記水収容容器から連続的または断続的に水を供給し、水素発生物質と水とを反応させて水素を発生させる機構を備えた水素製造装置であって、上記水素発生物質収容容器が複数取り付けられており、上記水収容容器から水を供給する水素発生物質収容容器を、上記複数の水素発生物質収容容器のうちのいずれか1つから他のものに切り換えるための切換手段(A)を備えている水素製造装置と、該水素製造装置を水素供給源とする燃料電池である。
【選択図】 図1
【解決手段】 水素発生物質を収容する水素発生物質収容容器と、水を収容する水収容容器とが、本体部に脱着可能に取り付けられてなり、上記水素発生物質収容容器内に、上記水収容容器から連続的または断続的に水を供給し、水素発生物質と水とを反応させて水素を発生させる機構を備えた水素製造装置であって、上記水素発生物質収容容器が複数取り付けられており、上記水収容容器から水を供給する水素発生物質収容容器を、上記複数の水素発生物質収容容器のうちのいずれか1つから他のものに切り換えるための切換手段(A)を備えている水素製造装置と、該水素製造装置を水素供給源とする燃料電池である。
【選択図】 図1
Description
本発明は、水素発生物質と水とを反応させて水素を製造する水素製造装置、および該水素製造装置を水素供給源とする燃料電池に関するものである。
近年、パソコン、携帯電話などのコードレス機器の普及に伴い、その電源である電池には、ますます小型化、高容量化が要望されている。現在、リチウムイオン二次電池は、エネルギー密度が高く、小型軽量化を図り得る電池として実用化されており、ポータブル電源としての需要が増大している。しかし、このリチウムイオン二次電池は、一部のコードレス機器に対して、十分な連続使用時間を保証することができないという問題がある。
上記問題の解決に向けて、例えば固体高分子型燃料電池(PEFC)などの燃料電池の開発が進められている。燃料電池は、燃料および酸素の供給を行えば、連続的に使用することが可能である。電解質に固体高分子電解質、正極活物質に空気中の酸素、負極活物質に燃料を用いるPEFCは、リチウムイオン二次電池よりもエネルギー密度が高い電池として注目されている。
PEFCに用いる燃料に関しては、水素、メタノールなどが提案され、種々開発が行われているが、高エネルギー密度化が可能な点で、水素を燃料とするPEFCが期待されている。
そして、PEFCのような燃料電池に水素を供給する方法としては、例えば、水素源となる水素発生物質と水とを反応させて水素を生成させ得る水素製造装置によって製造された水素を供給する方法が検討されている。このような水素製造装置では、例えば、水を収容するタンクと、水素発生物質を収容し、該物質と水を反応するための容器とが設けられており、この水を収容する容器から、水素発生物質を収容する容器(反応容器)に水を供給して、かかる容器中で水素発生物質と水を反応させ、生成した水素を、上記容器に備え付けられた水素導出管を通じて燃料電池に供給する、といった機構が採用されている。
例えば、特許文献1には、上記のような機構を有する水素製造装置として、水を収納するためのタンクと、水との化学反応により水素を生成する金属を収納する反応容器から構成され、反応容器が着脱可能な水素発生装置が記載されている。
特許文献1に記載の装置では、水素発生反応が進んで反応容器内部の金属が消費されると、水素発生量が低下するが、その際に、反応容器を金属を収容した別の容器に取り換えることで再び水素を発生させることができる。しかしながら、反応容器の取り換え時には、一時的に水素の発生が停止してしまう。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、連続的に水素を発生させることができる水素製造装置と、該水素製造装置を水素供給源とする燃料電池を提供することにある。
上記目的を達成し得た本発明の水素製造装置は、水素発生物質を収容する水素発生物質収容容器と、水を収容する水収容容器とが、本体部に脱着可能に取り付けられてなり、上記水素発生物質収容容器内に、上記水収容容器から連続的または断続的に水を供給し、水素発生物質と水とを反応させて水素を発生させる機構を備えた装置であって、上記水素発生物質収容容器が複数取り付けられており、上記水収容容器から水を供給する水素発生物質収容容器を、上記複数の水素発生物質収容容器のうちのいずれか1つから他のものに切り換えるための切換手段(A)を備えていることを特徴とするものである。
また、本発明の水素製造装置を水素供給源とする燃料電池も、本発明に含まれる。
本発明によれば、連続的に水素を発生させ得る水素製造装置を提供することができる。すなわち、本発明の水素製造装置は、装置本体部に対して脱着可能な水素発生物質収容容器を複数有しており、まず、これら複数の水素発生物質収容容器のうちのいずれか1つに、水収容容器から連続的または断続的に水を供給して水素を発生させる。そして、水素を発生させている水素発生物質収容容器内の水素発生物質が消費されて水素発生量が低下した場合に、切換手段(A)により、装置本体部に取り付けられている他の水素発生物質収容容器に水を供給するようにして水素を発生させ、その間に、水素発生物質が消費された水素発生物質収容容器を装置本体部から取り外して、水素発生物質を収容した新たな水素発生物質収容容器を装置本体部に取り付けることができる。
このように、本発明の水素製造装置では、切換手段(A)の作用によって、水素の製造を継続的に実施しつつ、水素発生物質が消費された水素発生物質収容容器を新たな水素発生物質収容容器(水素発生物質が収容されている水素発生物質収容容器)に交換できるため、かかる交換作業時における水素製造の一時的な停止を回避して、連続的に水素を製造することができる。
また、本発明の燃料電池は、本発明の水素製造装置を水素供給源としていることから、連続的な発電が可能なものとなる。
以下、本発明の水素製造装置の実施形態を、図面を用いて説明する。
図1は、本発明の水素製造装置の構成の一例を示す一部断面概略図である。図1中、1および1’は水素発生物質収容容器、1aおよび1’aは水素発生物質、1bおよび1’bは水素導出管、1cおよび1’cは水供給管、2および2’は水収容容器、2aおよび2’aは水、2bおよび2’bは水供給管、2cおよび2’cは水回収管、3は装置本体部と容器との脱着機構、4は保温材、5はポンプ、6は冷却部、7は気液分離部、7aは水素導入管、7bは水素排出管、7cは水回収管、8a、8b、8c、8dは切換手段である。なお、図1では、水素発生物質収容容器1、1’、水収容容器2、2’、および保温材4部分のみを断面で示しているが、装置の構造の理解を容易にするため保温材4については、断面であることを示す斜線を付していない。
本発明の水素製造装置は、水素発生物質収容容器1、1’、水収容容器2、2’および本体部により構成されるが、本発明でいう本体部とは、水素発生物質収容容器1、1’および水収容容器2、2’以外の部分(保温材4、ポンプ5、図1中脱着機構3より上の管部分を含む)を意味している。本発明の水素製造装置では、水素発生物質収容容器1または1’に、水収容容器2または2’から水を供給し、容器1または1’内において水素発生物質と水とを反応させて水素を製造する。よって、水素発生物質収容容器1、1’は、水素発生物質と水との反応容器としての役割も担っている。容器1または1’で発生した水素は、水素導出管1bまたは1’bより冷却部6および気液分離部7へ導かれ、水素排出管7bより水素を必要とする機器(燃料電池など)などに供給される。
図1の装置では、水素発生物質収容容器1、1’が、脱着機構3により装置本体部に連結されており、更に、水収容容器2または2’内の水の供給先である水素発生物質収容容器を、容器1から容器1’へ、または容器1’から容器1へ、切り換えるための切換手段(A)8aを備えており、これらの機構によって連続的な水素製造を可能としている。
すなわち、例えば、初めに水収容容器2または2’から水素発生物質収容容器1に水を供給し、水素発生物質と水とを反応させて水素を製造する。この水素発生反応により水素発生物質収容容器1に収容されている水素発生物質は反応生成物に変化し、水収容容器2または2’に収容されている水は消費されて減少していく。容器1内の水素発生物質が反応して消費され、水素発生量が低下した時点で、切換手段(A)により水収容容器2または2’から水素発生物質収容容器1’に水を供給するように切り換える。そして、水素発生物質収容容器1’での水素発生を行っている間に、水素発生物質収容容器1を装置本体部から取り外して、水素発生物質を収容した新たな水素発生物質収容容器を本体部に取り付ける。その後、水素発生物質収容容器1’ 内の水素発生物質が消費されて水素発生量が低下した時点で、切換手段(A)により水収容容器2または2’から水素発生物質収容容器1に水を供給するように切り換える。本発明の装置では、上記の操作を繰り返すことで、水素発生物質収容容器の交換に伴う水素製造の一時的な停止を回避して、連続的に水素を製造することができる。
なお、図1では、水素発生物質収容容器を2つ備えた装置の例を示したが、水素発生物質収容容器は複数(すなわち2つ以上)あればよく、例えば、3つ、4つなど備えていてもよい。
また、本発明の装置では、水収容容器を1つだけ備えていてもよいが、図1に示すように水収容容器も複数(2つ、3つ、4つなど)備えており、水素発生物質収容容器へ水を供給する水収容容器を、これら複数の水収容容器のうちのいずれか1つから他のものに切り換えるための切換手段(B)8bを備えていることが好ましい。
このような構成を備えることにより、1つの水収容容器内の水が消費されても、他の水収容容器から水を供給するように切換手段(B)を作動させ、その間に水が消費された水収容容器を新たな水収容容器に交換することができる。本発明の水素製造装置で採用する水素発生反応では、水収容容器から水素発生物質収容容器への水の供給の停止と同時に水素発生反応が停止する訳ではないため、水収容容器の交換を短時間で行えば、水素製造の一時的な停止を伴うことなく水収容容器を交換することが可能であることから、水収容容器は必ずしも複数必要ではないが、複数の水収容容器と切換手段(B)とを備えることにより、より確実に水素製造の一時的な停止を回避しつつ水収容容器の交換が可能となる。
切換手段(A)8aおよび切換手段(B)8bとしては、公知の切換バルブなどを用いることができる。また、図1の装置ではポンプ5を1つ備えているが、水素発生物質収容容器ごとまたは水収容容器ごとに別のポンプを設けておき、これらのポンプを切換手段(A)または切換手段(B)として、水の供給に必要なポンプのみを駆動させるようにしてもよい。
なお、切換手段(A)は、複数の水素発生物質収容容器のうちの2つ以上に、同時に水を供給できるように切換可能であることが好ましい。本発明の水素製造装置では、水素発生物質に水を供給し始めてから、水素が発生するまでに数十秒を要する。従って、例えば、水素発生物質収容容器1から水素発生物質収容容器1’への切り換えの際に、容器1からの水素発生量が低下してきた時点で、切換手段(A)8aによって容器1および容器1’の両方に水が供給されるようにし、その後容器1’から水素が発生し始めた段階で、切換手段(A)8aによって容器1への水の供給を停止する、といった手順を採ることで、水素発生量の低下をより抑制することができる。
図1では図示していないが、本発明の装置は、水素発生物質収容容器からの水素発生量を測定するための測定手段(A)を有していることが好ましい。この測定手段(A)により測定した水素発生量を表示できるようにしておくことで、水素発生量が規定値以下となった時点で、切換手段(A)により水素を発生させる水素発生物質収容容器を切り換えれば、連続的な水素製造をより確実に実施することができる。
水素発生量を測定するための測定手段(A)としては、例えば、コリオリ式流量計、カルマン式流量計、マスフローメーターなどの流量計を用いることができる。水素発生量を表示するための表示手段には特に制限はなく、公知の表示灯、文字盤などを用いることができる。水素発生量の表示は、具体的な発生量ではなく、規定値以下であることのみを表示するようにしてもよい。
また、図1では図示していないが、本発明の装置は、水素発生物質収容容器の温度を測定するための測定手段(B)を有していることも好ましい。本発明の装置で採用する水素発生反応は熱の発生を伴うため、水素発生物質が消費されて水素発生反応が停止に向かうと、水素発生物質収容容器の温度が低下する。よって、測定手段(B)により測定した水素発生物質収容容器の温度を表示できるようにしておくことで、上記温度が規定値以下となった時点で、切換手段(A)により水素を発生させる水素発生物質収容容器を切り換えれば、連続的な水素製造をより確実に実施することができる。
更に、水収容容器に収容する水の量を、水素発生物質収容容器に収容する水素発生物質を全て反応させるのに必要な量とほぼ同じに調節している場合には、水素発生物質が消費されて水素発生反応が終了することによる水素発生物質収容容器の温度低下と、水収容容器内の水が無くなるのとがほぼ同時となるため、このような場合には、測定手段(B)により測定される水素発生物質収容容器の温度によって切換手段(B)による水収容容器の切り換え時期を判断することもできる。
温度を測定するための測定手段(B)としては、例えば、熱電対、サーミスタなどが挙げられ、これらの測定手段を容器の外表面に接するように設置することにより温度を測定できる。測定温度を表示するための表示手段には特に制限はなく、公知の表示灯、文字盤などを用いることができる。容器温度の表示は、具体的な温度ではなく、規定温度以下であることのみを表示するようにしてもよい。
また、切換手段(A)には、測定手段(A)により得られる水素発生量が規定値以下となった情報、または測定手段(B)により得られる容器温度が規定値以下となった情報に基づいて、自動的に作動して切換を行うタイプの切換バルブなどを用いることもできる。更に、水収容容器に収容する水の量を、水素発生物質収容容器に収容する水素発生物質を全て反応させるのに必要な量とほぼ同じに調節している場合には、切換手段(B)にも、測定手段(B)により得られる水素発生物質収容容器温度が規定値以下となった情報に基づいて、自動的に作動して切換を行うタイプの切換バルブなどを用いることができる。この他、予め水収容容器に収容した水量が分かっている場合には、ポンプ流量と時間から水収容容器内の水量を算出する手段を設けておき、該手段による情報に基づいて自動的に作動して切換を行うタイプの切換バルブなどを切換手段(B)として使用することもできる。
なお、図1に示すように、水素発生物質収容容器1に設けられた水素導出管1bと水素発生物質収容容器1’に設けられた水素導出管1’bとが連結されている場合には、連結部に切換バルブ8cなどを配置しておき、使用している水素発生物質収容容器で生じた水素が、他の水素発生物質収容容器に流入するのを防止することが好ましい。ただし、例えば、使用する容器を水素発生物質収容容器1から水素発生物質収容容器1’に切り換えた直後は、供給された水が消費されるまでは水素発生物質収容容器1からの水素発生が続くため、水素発生物質収容容器1に備えられている水素導出管1bおよび水素発生物質収容容器1’に備えられている水素導出管1’bの両者から、冷却部6方向へ水素が流れるように切換バルブ8cを作動させることがより好ましい。
水素発生物質収容容器1、1’および水収容容器2、2’を装置本体部に脱着可能に取り付けるための脱着機構3としては、特に制限はないが、例えば、装置本体部側に筒状に成形した部位(管など)を設け、そこへ水素発生物質収容容器1、1’および水収容容器2、2’の各々の管(水素導出管1b、水供給管1cなど)を挿入するようにし、接続部分(管の挿入部分)をOリングなどのパッキングによって密閉し、水素や水の漏れを防止するような構成を採用することができる。
また、水素発生物質収容容器および水収容容器を水素製造装置の脱着機構に取り付けていない状態では管が閉じられており、脱着機構に取り付けると開いた状態になるような弁構造を設けることが好ましい。装置本体部から取り外した状態で、容器から内容物が流出することを防ぐことができるためである。
なお、図1に示すように、水素発生物質収容容器1、1’の外周の少なくとも一部には、保温材4を配置することが好ましい。上記のように保温材4を配置することにより、水素発生物質収容容器1、1’内の熱が容器1、1’の外部へ放出してしまうことを防止できるため、水素発生の安定化を図ることができる。水素製造装置では、水素発生物質が加温されて水と反応することにより水素を発生するが、水素発生物質を加温しても、その熱が水素発生物質収容容器1、1’の外壁を通じて外部に放出されてしまうと、水素発生物質の温度が上昇せずに、水素発生反応効率が低下したり、水素発生反応が停止して、水素発生に至らない場合も生じ得る。しかし、保温材4を上記のように配置することで、水素発生物質収容容器1、1’内の熱の外部への放出が抑制できるからである。
特に水素製造装置において、水素発生物質収容容器1または1’と水収容容器2または2’とが隣接している場合には、少なくとも、水素発生物質収容容器1または1’と水収容容器2または2’とが、保温材4を介して隣接するように、保温材4を配置することがより好ましい。
水素発生物質収容容器と水収容容器とが隣接し、互いに接触している場合には、水素発生物質収容容器内の熱が水収容容器側に移動しやすく、水素発生物質収容容器内の温度低下による上記の問題がより顕著に生じ得る。しかしながら、水素発生物質収容容器と水収容容器とが保温材を介して隣接するように、保温材を配置すれば、これらの問題を回避できる。
なお、保温材は、水素発生物質収容容器の外周全面に配置されていることが特に好ましい。
また、本発明の装置は、水素発生物質収容容器から排出される水素と未反応の水とを分離するための気液分離部と、該気液分離部で分離された水を水収容容器に戻す機構を備えていることが好ましい。
本発明の水素製造装置では、水素発生物質収容容器1、1’内において、水素発生物質と水とを反応させて水素を発生させると、未反応の水が水素と共に噴き出され、水素導出管1b、1’bから、水素との混合物として反応容器である水素発生物質収容容器1、1’の外部へ排出されてしまう。しかし、図1に示す水素製造装置のように気液分離部7を備えることで、水素発生物質収容容器1、1’から排出された水と水素の混合物を、気液分離部7において水と水素に分離し、分離した水を水収容容器2、2’に戻すことができる。そのため、実質的な水の使用量を低減できることから、水収容容器2、2’内に収容しておく水の量を減らすことが可能となり、水素製造装置の体積および重量を低減してコンパクトにすることができる。
気液分離部7では、水素導入管7aより流入した水素と水の混合物のうち、水は重力により気液分離部7の下方に落下して水素から分離される。分離された水は水回収管7cおよび2c、2’cを通って水収容容器2、2’に回収され、分離された水素は水素排出管7bから装置外部に排出される。水回収管2cおよび2’cも、他の管と同様に脱着機構3によって水素製造装置に対して脱着可能になっている。気液分離部7の構成は図1に示されるものに限定される訳ではなく、例えば従来公知のポリテトラフルオロエチレン製微多孔膜、または、撥水処理を施したポリビニリデンフロリド、ポリエチレン、ポリプロピレンもしくはポリエーテルスルホンの微多孔膜などの気液分離膜を用いて気液分離部を構成することもできる。
なお、水素発生物質収容容器または水収容容器に気液分離機能を持たせることも可能であるが、その場合、水素発生物質収容容器や水収容容器の構造が複雑になり、コンパクトにすることが難しい。よって、本発明の水素製造装置では、気液分離部は、図1に示すように水素発生物質収容容器および水収容容器とは別体とすることが好ましく、この場合には、水素発生物質収容容器および水収容容器の構造をより簡素な構造にすることができ、それらをコンパクトにすることができる。
また、図1に示すように水収容容器を複数有する装置の場合には、気液分離部7の水回収管7cと、水回収管2c、2c’との連結部に切換バルブ8dを配置しておき、気液分離部7で回収した水を、水の供給に用いている側の水収容容器のみに戻すようにしてもよい。
更に、上記水素製造装置では、水素発生物質収容容器1、1’から排出された水と水素の混合物を冷却するための冷却部6を有していることが好ましい。本発明の装置では、水素発生物質収容容器の内部が水の沸点に近い温度になり得るため、水素との混合物として排出される水は、部分的に水蒸気となる。そこで、冷却器6を設けることにより、上記混合物中の水蒸気を冷却して液体の水にして、気液分離部7での水の回収率を高めることができる。そのため、冷却部6は水素発生物質収容容器1、1’と気液分離部7との間に設置されることが好ましい。冷却部6としては、例えば、金属製冷却フィンが管に接するように配置された構造の冷却手段を用いることができる。さらには空冷ファンを用いることもできる。
図1では、水素発生物質収容容器と水収容容器とが別体の例を示しているが、水素発生物質収容容器と水収容容器を一体化することもできる。これらが一体化されていると、容器の交換がより容易になる。
なお、上記の一体容器においても、水素発生物質収容容器と水収容容器との間に、保温材を配置することが好ましく、この場合にも、水素発生物質収容容器と水収容容器とが隣接している場合に生じ得る上記の問題を回避することが可能となる。
本発明の水素製造装置で使用できる水素発生物質としては、水と反応して水素を発生させる物質であれば特に限定されないが、アルミニウム、ケイ素、亜鉛、マグネシウムといった金属や、アルミニウム、ケイ素、亜鉛、およびマグネシウムの中の1種以上の金属元素を主体とする合金が好適に使用できる。上記合金の場合には、主体となる上記の各金属元素以外の元素については特に限定されない。ここで、「主体」とは、合金全体に対して80質量%以上、より好ましくは90質量%以上含有されていることを意味する。上記例示の金属や合金の1種のみを水素発生物質として使用してもよく、2種以上を併用しても構わない。これらの水素発生物質は、常温では水と反応しにくいが、加熱することにより水との発熱反応が容易となる物質である。なお、本明細書において常温とは、20〜30℃の範囲の温度である。
ちなみに、例えば、アルミニウムと水との反応は、下記式(1)〜(3)のいずれかによって進行していると考えられる。下記式(1)による発熱量は、419kJ/molである。
2Al+6H2O → Al2O3・3H2O+3H2 (1)
2Al+4H2O → Al2O3・H2O+3H2 (2)
2Al+3H2O → Al2O3+3H2 (3)
2Al+4H2O → Al2O3・H2O+3H2 (2)
2Al+3H2O → Al2O3+3H2 (3)
上記水素発生物質のサイズは特に限定されないが、例えば、その平均粒径が、0.1μm以上であって、100μm以下、より好ましくは50μm以下であることが望ましい。上記水素発生物質は、一般に、表面に安定な酸化皮膜が形成されている。そのため、板状、ブロック状および粒径が1mm以上のバルク状などの形態の場合、加熱しても水との反応が進行せず、実質的に水素を発生させない場合もある。しかし、上記水素発生物質の平均粒径を100μm以下とすると、酸化皮膜による水との反応抑制作用が減少し、常温では水と反応しにくいものの、加熱すれば水との反応性が高まり、水素発生反応が持続するようになる。また、上記水素発生物質の平均粒径を50μm以下とすると、40℃程度の穏和な条件でも水と反応して水素を発生させることができる。一方、上記水素発生物質の平均粒径を0.1μm未満とすると、発火性が高くなって取り扱いが困難になったり、水素発生物質の充填密度が低下してエネルギー密度が低下しやすくなったりする。このため、上記水素発生物質の平均粒径は、上記範囲内とすることが望ましい。
なお、本明細書でいう平均粒径は、体積基準の積算分率50%における粒子直径の値を意味する。平均粒径の測定方法としては、例えば、レーザー回折・散乱法などを用いることができる。具体的には、水などの液相に分散させた測定対象物質にレーザー光を照射することによって検出される散乱強度分布を利用した粒子径分布の測定方法である。レーザー回折・散乱法による粒子径分布測定装置としては、例えば、日機装株式会社製の「マイクロトラックHRA」などを用いることができる。
また、上記水素発生物質の形状も特に限定されないが、例えば、平均粒径が上記範囲内の粒子状またはフレーク状とすることができる。
水と水素発生物質との反応を容易に開始させるために、水素発生物質と水の少なくとも一方を加熱することが好ましいが、上述の通り、例えば、水収容容器内において水を加熱すると、水温の上昇に伴って水の密度が低下し、ポンプによって供給される水の重量が減少して、水素発生速度の低下を引き起こすこともあり得るため、水素発生物質のみを加熱するか、水を加熱する場合には、ポンプを通過した後の段階で加熱することがより好ましい。その加熱温度は、40℃以上、より好ましくは60℃以上であって、100℃以下であることが望ましい。上記の水素発生物質と水との発熱反応を維持できる温度は、通常は40℃以上であり、一旦発熱反応が開始して水素が発生すると、水素発生物質収容容器の内圧が上昇して水の沸点が上昇することもあり、容器内温度が120℃に達することもあるが、水素発生速度の制御の点から100℃以下とすることが好ましい。
上記の加熱は、上記発熱反応の開始時にのみ行えばよい。一旦、水と水素発生物質との発熱反応が開始されると、その発熱反応の熱によりその後の反応を継続できるからである。なお、上記の加熱と、水素発生物質収容容器内への水の供給とを同時に行ってもよい。
上記加熱の方法は特に限定されないが、抵抗体に通電することによる発熱を利用して加熱することができる。例えば、この抵抗体を水素発生物質収容容器や水収容容器(好ましくは、水素発生物質収容容器のみ)の外部に取り付けて発熱させ、これらの容器を外部から加熱することにより、水素発生物質と水の少なくとも一方を加熱することができる。上記抵抗体の種類については特に限定されず、例えば、ニクロム線、白金線などの金属発熱体、炭化ケイ素、PTCサーミスタなどが使用できる。
また、上記加熱は、発熱物質の化学反応による発熱により行うこともできる。この発熱物質には、水と発熱反応して水酸化物や水和物となる物質、水と発熱反応して水素を生成する物質などを用いることができる。上記の、水と発熱反応して水酸化物や水和物となる物質としては、例えば、アルカリ金属の酸化物(酸化リチウムなど)、アルカリ土類金属の酸化物(酸化カルシウム、酸化マグネシウムなど)、アルカリ土類金属の塩化物(塩化カルシウム、塩化マグネシウムなど)、アルカリ土類金属の硫酸化合物(硫酸カルシウムなど)などを用いることができる。上記の、水と発熱反応して水素を生成する物質としては、例えば、アルカリ金属(リチウム、ナトリウムなど)、アルカリ金属水素化物(水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化リチウムなど)などを用いることができる。これらの物質は、1種単独で用いることもでき、2種以上を併用することもできる。
水素発生物質収容容器内に、水素発生物質と共に上記発熱物質を配置し、これらに水を加えることにより水と発熱物質とを発熱反応させて、該容器の内部で水素発生物質と水を直接加熱することができる。また、水素発生物質収容容器や水収容容器(好ましくは、水素発生物質収容容器のみ)の外部に、上記の発熱物質を配置して発熱させ、これらの容器を外部から加熱することにより、水素発生物質と水の少なくとも一方を加熱することが可能である。
なお、上記発熱物質としては、水以外の物質と発熱反応する物質、例えば、鉄粉のように酸素と発熱反応する物質も知られている。このような物質は、発熱反応のために酸素を導入する必要があることから、水素発生物質収容容器に入れるのではなく、容器の外部に配置して使用することが好ましい。
上記発熱物質を水素発生物質と共に水素発生物質収容容器に収容し、これに水を供給して加熱する場合には、発熱物質は水素発生物質と均一または不均一に分散・混合させた混合物として用いてもよいが、発熱物質を水素発生物質収容容器内で、発熱物質を偏在させて配置することがより好ましく、水素発生物質収容容器内部の水供給管(図1中、1c、1’c)の管口部近傍に発熱物質を部分的に偏在させることが特に好ましい。水素発生物質収容容器内部において、発熱物質をこのように偏在させることにより、水を供給し始めてから水素発生物質が加温されるまでの時間をより短くして、迅速な水素製造を可能とすることができる。
水素発生物質収容容器は、水と発熱反応して水素を発生させる水素発生物質を収納可能であり、装置本体部に対して脱着可能であれば、その材質や形状は特に限定されないが、水素導出管および水供給管から水や水素が漏れない材質や形状を採用することが好ましい。具体的な容器の材質としては、水および水素を透過しにくく、かつ100℃程度に加熱しても容器が破損しない材質が好ましく、例えば、アルミニウム、鉄などの金属、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などの樹脂を用いることができる。また、容器の形状としては、角柱状、円柱状などが採用できる。
なお、水素発生物質が水と反応することで生じる反応生成物は、通常、水素発生物質よりも体積が大きいそのため、水素発生物質収容容器は、こうした反応生成物の生成に伴う体積膨張が生じた場合に破損してしまわないように、水素発生物質と水との反応に応じて変形可能であることが好ましい。このような観点から、水素発生物質収容容器の材質は、上記例示の材質の中でもPEやPPなどの樹脂がより好ましい。
水素発生物質収容容器には、水素を導出するための水素導出手段が設けられる。水素導出手段としては特に限定されず、例えば、図1に示すように水素導出管1bであってもよく、また、水素導出口などであっても構わない。さらに、水素導出管、水素導出口などには、容器内の水素発生物質が外部に出ないように、フィルターを設置することが好ましい。このフィルターとしては、気体を通すが液体および固体を通しにくい特性を有するものであれば特に限定されず、例えば、PP製の不織布を用いることができる。
水収容容器については、装置本体部に対して脱着可能であれば特に制限はなく、例えば、従来の水素製造装置と同様の水を収容するタンクなどが採用できる。なお、水素発生物質収容容器が、水素発生物質と水との反応による反応生成物の生成に伴う体積膨張によって変形可能である場合には、水収容容器も水素発生物質と水との反応に応じて変形可能であることが好ましく、特に、水素発生物質収容容器と水収容容器とが隣接している場合や、これらが一体化している場合には、水素発生物質収容容器の変形に伴って水収容容器も変形できるため、水収容容器の破損を防止できる。よって、この場合、水収容容器は、例えば、PEやPPなどの樹脂のように、変形可能な材質で構成することが好ましい。
水素発生物質収容容器の外周に配置する保温材の材質としては、例えば、発泡スチロール、ポリウレタンフォームなどの多孔性断熱材、または真空断熱構造を有する断熱材などが好ましい。
水素製造装置には、圧力逃がし弁を設けることが好ましい。例えば水素発生速度が増大して、装置の内圧が上昇した場合でも、圧力逃がし弁から水素を装置外に排出することにより、破裂などによる装置の破損を防止することができる。圧力逃がし弁の設置箇所は、水素発生物質収容容器内で発生した水素が排出できる箇所であれば特に限定されない。例えば、水素導出管1b、1’bから、気液分離部7までの間のいずれの箇所に圧力逃がし弁を設けても構わない。
本発明の水素製造装置に用いる水素発生物質は、水素を発生するときに100℃程度の高温になり、水素発生物質収容容器の外表面も高温になる。そのため、水素発生中および水素発生停止直後の水素発生物質収容容器を取り外そうとすると、高温の容器外表面により火傷をする虞がある。
そこで、本発明の水素製造装置は、水素発生物質収容容器および/または水収容容器の温度を測定するための測定手段(B)により水素発生物質収容容器の温度を測定して、水素発生物質収容容器の温度が規定温度よりも高い場合に、それを表示する手段を有していることが好ましい。表示手段としては、上記の通り、公知の表示灯、文字盤などを用いることができる。容器温度の表示は、具体的な温度ではなく、規定温度よりも高いことのみを表示するようにしてもよい。
また、水素製造装置は、測定手段(B)により水素発生物質収容容器が規定温度より高い温度であると測定された場合に、上記水素発生物質収容容器の装置本体部からの取り外しをできなくする機構を備えていることがより好ましい。このような機構を設けることで、水素発生物質収容容器の交換時の火傷などの発生を確実に防止でき、より安全性の高い装置とすることができる。
測定手段(B)により水素発生物質収容容器が規定温度より高い温度であると測定された場合に、上記水素発生物質収容容器の装置本体部からの取り外しをできなくする機構としては、例えば、水素発生物質収容容器へ人体が直接接触できなくする機構が挙げられる。図2および図3に、水素発生物質収容容器へ人体が直接接触できなくする機構を備えた本発明の装置の要部の一例を示す。水素発生物質収容容器へ人体が直接接触できなくする機構としては、図2に示すように、水素発生物質収容容器1、1’を覆うカバー10を設置し、上記水素発生物質収容容器1または1’が規定温度より高い温度のときにはカバー10のロックがかかって、このカバー10により上記高温となっている容器へ直接接触できないようにし、上記高温となっている容器が規定温度以下となった時点で上記ロックが解除されて、図3に示すようにカバー10を開いて容器1および容器1’に接触できる(容器1を取り外すことができる)機構などが挙げられる。
また、測定手段(B)により水素発生物質収容容器が規定温度より高い温度であると測定された場合に、上記水素発生物質収容容器の装置本体部からの取り外しをできなくする機構には、上記の水素発生物質収容容器へ人体が直接接触できなくする機構以外にも、図3に示すように、水素発生物質収容容器1、1’の取り外しを不可能とするストッパー11を設け、上記水素発生物質収容容器1または1’が規定温度より高い温度である場合にはストッパー11が作動して上記高温となっている容器の取り外しを不可能とし、上記高温となっている容器が規定温度以下となった時点でストッパー11を解除する機構などが挙げられる。
水素発生物質収容容器の交換時の火傷を防止するための基準となる規定温度としては、直接触れて火傷をしない温度であればよく、例えば、水素発生物質収容容器の外表面が50℃以下、より好ましくは40℃以下であることが望ましい。よって、水素発生物質収容容器の外表面が50℃を超えている場合(より好ましくは40℃を超えている場合)に、上記の表示を行ったり、水素発生物質収容容器の装置本体部からの取り外しをできなくする機構を作動させることが望ましい。
なお、水収容容器も、冷却部での冷却が不十分であり、水収容容器の放熱性が悪いなどの場合に、水素発生物質収容容器と同様に高温になる可能性がある。その場合は、水収容容器についても、水素発生物質収容容器と同様に、測定手段(B)によりその温度を測定して、規定温度より高い場合にそれを表示する表示手段や、水収容容器の装置本体部からの取り外しをできなくする機構を設けることが好ましい。
また、上記の通り、本発明の水素製造装置では、水素発生物質収容容器への水の供給を停止しても、瞬時には水素発生が停止せず、水素発生物質収容容器内部に供給された水が無くなるまで水素発生が継続する。よって、水素発生物質収容容器から水素が大量に発生している状態で水素製造装置から容器を取り外すと、水素が吹き出して危険である。
そこで、本発明の水素製造装置は、水素発生物質収容容器からの水素発生量を測定するための測定手段(A)により水素発生量を測定して、その量が規定値を超えている場合に、それを表示する手段を有していることが好ましい。表示手段としては、上記の通り、公知の表示灯、文字盤などを用いることができる。容器温度の表示は、具体的な水素発生量ではなく、規定量を超えていることのみを表示するようにしてもよい。
また、水素製造装置は、測定手段(A)により水素発生量が規定値を超えていると測定された場合に、上記水素発生物質収容容器の装置本体部からの取り外しをできなくする機構を備えていることがより好ましい。このような機構を設けることで、水素発生物質収容容器の交換時における水素の噴き出しを確実に防止でき、より安全性の高い装置とすることができる。
測定手段(A)により水素発生量が規定値を超えていると測定された場合に、水素発生物質収容容器の装置本体部からの取り外しをできなくする機構としては、例えば、水素発生物質収容容器へ人体が直接接触できなくする機構が挙げられる。水素発生物質収容容器へ人体が直接接触できなくする機構としては、図2に示すように、水素発生物質収容容器1、1’を覆うカバー10を設置し、上記水素発生物質収容容器1または1’からの水素発生量が規定値を超えているときにはカバー10のロックがかかって、このカバー10により上記規定値を超えた容器へ直接接触できないようにし、上記規定値を超えた容器からの水素発生量が規定値以下となった時点で上記ロックが解除されて、図3に示すようにカバー10を開いて容器1および容器1’に接触できる(容器1および容器1’を取り外すことができる)機構などが挙げられる。
また、測定手段(A)により水素発生量が規定値を超えていると測定された場合に、水素発生物質収容容器の装置本体部からの取り外しをできなくする機構には、上記の水素発生物質収容容器へ人体が直接接触できなくする機構以外にも、図3に示すように、水素発生物質収容容器1、1’の取り外しを不可能とするストッパー11を設け、上記水素発生物質収容容器1または1’からの水素発生量が規定値を超えている場合にはストッパー11が作動して上記規定値を超えた容器の取り外しを不可能とし、上記規定値を超えた容器からの水素発生量が規定値以下となった時点でストッパー11を解除する機構などが挙げられる。
水素発生物質収容容器の交換時における水素の噴き出しを防止するための基準となる水素発生量は、水素製造装置の設置状況により異なるため一概には規定できないが、例えば、30ml/min以下、より好ましくは10ml/min以下であることが望ましい。よって、水素発生物質収容容器からの水素発生量が30ml/minを超えている場合(より好ましくは10ml/minを超えている場合)に、上記の表示を行ったり、水素発生物質収容容器の取り外しをできなくする機構を作動させることが望ましい。
水素発生物質収容容器および水収容容器を装置本体部から取り外し可能とするか否かを判断する手段として、水素発生物質収容容器または水収容容器の温度を用いる手段、および水素発生物質からの水素発生量を用いる手段について上で述べたが、別の手段として、水素発生物質収容容器への水の供給を止めてからの時間を用いることもできる。
水素発生物質収容容器を装置本体部から取り外し可能とするか否かの判断に、水素発生物質収容容器への水の供給を止めてからの時間を用いる場合には、例えば、以下の方法を採用することができる。水素発生物質収容容器への水の供給を止めてからの、水素発生物質収容容器の温度の低下、および水素発生物質収容容器からの水素発生量の低下を予め測定しておき、規定温度および規定水素発生量になるまでの時間を計測しておく。そして、実際の水素製造の際に、上記の時間内は、水素発生物質収容容器の装置本体部からの取り外しをできなくする上記例示の機構が作動するようにすればよい。
なお、上記の通り、本発明の水素製造装置の構成を、図1〜図3を用いて説明したが、図1〜図3は本発明の水素製造装置の一例を示すものに過ぎず、本発明の水素製造装置は、図1〜図3に示される構成のものに限定される訳ではない。例えば、上記のように、水収容容器を1つのみ有していてもよく、3つ以上有していてもよい。また、水素発生物質収容容器を3つ以上有していても構わない。
以上に説明した本発明の水素製造装置によれば、条件により変化するものの、例えば、水素発生物質が全て反応したと仮定したときの理論水素発生量(アルミニウムの場合は、1gあたりの理論水素発生量は、25℃換算で約1360mlとなる)に対し、実際に得られる水素発生量は、およそ50%以上、より好ましくは70%以上となり、効率的に水素を発生させることが可能となる。
次に本発明の燃料電池であるが、本発明の燃料電池は、本発明の水素製造装置を水素供給源として備えていればよく、その他の構成については特に制限はなく、従来公知の燃料電池で採用されている各種構成が採用できる。
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は本発明を制限するものではなく、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施をすることは、全て本発明の技術的範囲に包含される。
実施例1
図1に示す構成の水素製造装置を用いて、以下の通り水素を製造した。水素発生物質収容容器1、1’には、内容積65cm3でPP製の角柱状容器を用いた。水素導出管1b、1’bおよび水供給管1c、1’cには、内径2mm、外径3mmのアルミニウム製の管を用いた。水収容容器2、2’も水素発生物質収容容器1、1’と同じ構造および構成にし、水供給管2b、2’bおよび水回収管2c、2’cにも、水供給管1cなどと同じアルミニウム製の管を用いた。脱着機構3は、水素製造装置側の内径3.5mmの筒状に成形された部位に水素発生物質収容容器1、1’および水収容容器2、2’の各々の管が挿入される構造とした。それぞれの筒状部位にはOリングを配置して、脱着機構3から水素および水の漏れを抑制するようにした。保温材には水素発生物質収容容器1、1’の外周を包むように厚み5mmの発泡スチロール保温材4を設置した。
図1に示す構成の水素製造装置を用いて、以下の通り水素を製造した。水素発生物質収容容器1、1’には、内容積65cm3でPP製の角柱状容器を用いた。水素導出管1b、1’bおよび水供給管1c、1’cには、内径2mm、外径3mmのアルミニウム製の管を用いた。水収容容器2、2’も水素発生物質収容容器1、1’と同じ構造および構成にし、水供給管2b、2’bおよび水回収管2c、2’cにも、水供給管1cなどと同じアルミニウム製の管を用いた。脱着機構3は、水素製造装置側の内径3.5mmの筒状に成形された部位に水素発生物質収容容器1、1’および水収容容器2、2’の各々の管が挿入される構造とした。それぞれの筒状部位にはOリングを配置して、脱着機構3から水素および水の漏れを抑制するようにした。保温材には水素発生物質収容容器1、1’の外周を包むように厚み5mmの発泡スチロール保温材4を設置した。
まず、水素発生物質収容容器1、1’に、水素発生物質として平均粒径6μmのアルミニウム粉末21gと、発熱物質として酸化カルシウム3.5gを入れた後、容器1を水素導出管1bおよび水供給管1cの付いた蓋で密閉し、また、容器1’を水素導出管1’bおよび水供給管1’cの付いた蓋で密閉した。水収容容器2、2’には水を50g注入して、図1に示すように水素発生物質収容容器1、1’および水収容容器2、2’を脱着機構3に接続した。
水素発生物質収容容器1、1’の外周部に設置された保温材4の更に外側には、図2および図3に示すような樹脂製のカバーを設置した。これは、水素発生物質収容容器1、1’の温度が40℃以下にならないと開かない構造になっており、水素発生物質収容容器1、1’に触れることができないようになっている。更に、水素発生物質収容容器1、1’の温度が規定温度(40℃)を超えていることを表示するための表示手段としてLEDランプを設置し、視認できるようにした。
また、水素発生物質収容容器1、1’の底面側には、図3に示すような、ストッパーとして可動式の樹脂の突起が設置されている。この突起は水素発生物質収容容器1、1’からの水素発生量が20ml/minを超えているときには容器1、1’を外せないように突出し、それ以下では容器がはずれるように格納される。更に、水素発生物質収容容器1、1’からの水素発生量が規定値(20ml/min)を超えていることを表示するための表示手段としてLEDランプを設置し、視認できるようにした。
次に、ポンプ5を用いて1.1g/minの水量で水収容容器2から水素発生物質収容容器1へ水を供給し続けた。
実施例1の水素製造装置では、水を供給した直後から水素が発生して、急激に水素発生速度および容器1の表面温度が上昇した。約10分後には、水素発生速度および容器1の表面温度は一定となり、約150ml/minの水素発生速度で一定に発生した。100分経過後徐々に水素生成速度が低下して120分後には100ml/min以下になったので、水供給管1cおよび1’cへの水供給を切り換える切換バルブ8aにより、水が水素発生物質収容容器1’へ供給されるように変更した。この時、水素導出管1bおよび1’bの切換バルブ8cは、水素発生物質収容容器1および1’の両方から発生した水素が冷却部6に流れるように切り換えた。その結果、水素発生物質収容容器1’より水素発生が始まり、水素発生物質収容容器1の水素発生挙動と同様の挙動を示し、切り換えてから10分後には約150ml/minの水素発生速度で一定に発生した。
水素発生物質収容容器1への水の供給を停止してから25分後には水素発生物質収容容器1の表面温度が40℃以下になり、水素発生物質収容容器1を覆っていたカバーが開閉できるようになった。さらに5分後には水素発生量が20ml/min以下になり、水素発生物質収容容器1のストッパーが収納されて容器1が装置本体部から取り外し可能な状態になった。水素発生物質収容容器1を取り外し、新たな水素発生物質収容容器を取り付けた。水収容容器2の水がなくなったため、切換バルブ8bを作動させ水収容容器2’から水が供給されるように切り換えた。これらの手順を繰り返すことにより、連続的に水素を発生させることができることを確認した。
実施例2
実施例1と同様の水素製造装置を用い、発生した水素を燃料電池に供給して発電を行った。用いた燃料電池は固体高分子形燃料電池であり、1セルの電極面積22cm2のセルを6セル直列に接続した。放電は3.9V定電圧で放電した。その結果約14Wという高い出力が得られ、小型、可搬型燃料電池の燃料源として有効であることが分かった。
実施例1と同様の水素製造装置を用い、発生した水素を燃料電池に供給して発電を行った。用いた燃料電池は固体高分子形燃料電池であり、1セルの電極面積22cm2のセルを6セル直列に接続した。放電は3.9V定電圧で放電した。その結果約14Wという高い出力が得られ、小型、可搬型燃料電池の燃料源として有効であることが分かった。
1、1’ 水素発生物質収容容器
1b、1’b 水素導出管
1c、1’c 水供給管
2、2’ 水収容容器
2b、2’b 水供給管
3 脱着機構
4 保温材
5 ポンプ
8a、8b、8c、8d 切換手段(切換バルブ)
1b、1’b 水素導出管
1c、1’c 水供給管
2、2’ 水収容容器
2b、2’b 水供給管
3 脱着機構
4 保温材
5 ポンプ
8a、8b、8c、8d 切換手段(切換バルブ)
Claims (18)
- 水素発生物質を収容する水素発生物質収容容器と、水を収容する水収容容器とが、本体部に脱着可能に取り付けられてなり、上記水素発生物質収容容器内に、上記水収容容器から連続的または断続的に水を供給し、水素発生物質と水とを反応させて水素を発生させる機構を備えた水素製造装置であって、
上記水素発生物質収容容器が複数取り付けられており、
上記水収容容器から水を供給する水素発生物質収容容器を、上記複数の水素発生物質収容容器のうちのいずれか1つから他のものに切り換えるための切換手段(A)を備えていることを特徴とする水素製造装置。 - 切換手段(A)が、複数の水素発生物質収容容器のうちの2つ以上に同時に水を供給できるように切換可能である請求項1に記載の水素製造装置。
- 水収容容器が複数取り付けられており、水素発生物質収容容器へ水を供給する水収容容器を、上記複数の水収容容器のうちのいずれか1つから他のものに切り換えるための切換手段(B)を備えている請求項1または2に記載の水素製造装置。
- 水素発生物質収容容器からの水素発生量を測定するための測定手段(A)を備えている請求項1〜3のいずれかに記載の水素製造装置。
- 水素発生物質収容容器および/または水収容容器の温度を測定するための測定手段(B)を備えている請求項1〜4のいずれかに記載の水素製造装置。
- 水素発生量を測定するための測定手段(A)により、水素発生量が規定値以下と測定されるか、または、水素発生物質収容容器および/または水収容容器の温度を測定するための測定手段(B)により、水素発生物質収容容器および/または水収容容器の温度が規定温度以下と測定された場合に、切換手段(A)が作動する請求項1〜5のいずれかに記載の水素製造装置。
- 水素発生量を測定するための測定手段(A)により水素発生物質収容容器からの水素発生量が規定値より多いと測定されるか、または温度を測定するための測定手段(B)により水素発生物質収容容器および/または水収容容器が規定温度より高い温度と測定された場合に、水素発生物質収容容器および/または水収容容器の本体部からの取り外しをできなくする機構を備えている請求項4〜6のいずれかに記載の水素製造装置。
- 水素発生物質収容容器および/または水収容容器の本体部からの取り外しをできなくする機構が、水素発生物質収容容器および/または水収容容器へ人体が直接接触できなくする機構である請求項7に記載の水素製造装置。
- 水素発生物質収容容器から排出される水素と未反応の水とを分離するための気液分離部と、該気液分離部で分離された水を水収容容器に戻す機構を備えている請求項1〜8のいずれかに記載の水素製造装置。
- 水素発生物質収容容器の外周の少なくとも一部に保温材が配されている請求項1〜9のいずれかに記載の水素製造装置。
- 水素発生物質収容容器と水収容容器とが、保温材を介して隣接している請求項1〜10のいずれかに記載の水素製造装置。
- 水素発生物質収容容器と水収容容器とが一体化されている請求項1〜11のいずれかに記載の水素製造装置。
- 水素発生物質収容容器および水収容容器が、水素発生物質と水との反応に応じて変形可能である請求項1〜12のいずれかに記載の水素製造装置。
- 水素発生物質が、アルミニウム、ケイ素、亜鉛、マグネシウム、およびこれらの1種以上の金属元素を主体とする合金よりなる群から選択される少なくとも1種の金属である請求項1〜13のいずれかに記載の水素製造装置。
- 水素発生物質が、常温において水と発熱反応する発熱物質と共に水素発生物質収容容器に収容されている請求項1〜14のいずれかに記載の水素製造装置。
- 水素発生物質収容容器内で、発熱物質を偏在させて配置する請求項15に記載の水素製造装置。
- 発熱物質の偏在部を、水収容容器から水素発生物質収容容器へ水を供給するための水供給管の管口部近傍とする請求項16に記載の水素製造装置。
- 請求項1〜17のいずれかに記載の水素製造装置を水素供給源とすることを特徴とする燃料電池。
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