JP2009288851A - 電流制御装置及び画像形成装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】負荷に供給する電力デューティを、周波数、位相角の変動量の情報に基づき歪量補正を行うことでより高精度な電流制御を行う電流制御装置及びそれを具備した画像形成装置を提供することを目的とする。
【解決手段】負荷に供給される電力を位相制御する位相制御手段12と、前記負荷に流れる電流の経路に設置される電流検出トランス25と、前記電流検出トランスの出力電圧が入力されることにより、前記負荷に流れる電流値を検知する電流検知手段27と、前記電流検知手段で検知した電流値を、前記位相制御手段で制御した位相角に基づき補正する歪量補正手段を有することを特徴とする電流制御装置。
【選択図】図1

Description

本発明は、電流制御装置及び画像形成装置に関する。特に画像の定着に用いる、加熱手段としての定着器に流れる電流を制御する電流制御装置及びそれを具備した画像形成装置に関する。
一般的な電子写真プロセスを用いた画像形成装置(レーザプリンタ)について説明する。
このような画像形成装置の熱定着器は、電子写真プロセス等の画像形成手段により転写紙上に形成された未定着画像(トナー像)を転写紙上に定着させるものである。この熱定着器には、加熱手段としてハロゲンヒータを熱源とする熱ローラ式の熱定着器やセラミック面状発熱体ヒータを熱源とするフィルム加熱式の熱定着器が用いられている、例えば特許文献1,特許文献2に示されている。
熱定着器の温調制御する際に、画像形成装置のエンジンコントローラは、温度検出素子で検出される温度と、予め設定されている目標温度とを比較して、上述した加熱手段としてのヒータに供給する電力デューティを算出する。そして、その電力デューティに相当する位相角或は波数を決定し、その位相条件又は波数条件で、ヒータを駆動しているスイッチング素子をオン/オフ制御する。
ここで商用電源から熱定着器に供給される電流は、熱定着器の定格電流及び、米国UL規格や電気用品安全法によって定められる上限の電流値以下に制御する必要がある。そのため、熱定着器に流れる電流を検知し、通電可能な上限電流値以下に制御する。
また特許文献3では、電流検出トランスで電圧変換した波形を、抵抗を介して電流検出回路に入力することで、半周期ごとの電流実効値を検知する方法が提案されている。
この熱定着器に使用されるヒータは一般的に、トライアック等のスイッチング素子を介して交流電源に接続されており、この交流電源から電力が供給されている。またヒータを熱源とする熱定着器には温度検出素子、例えばサーミスタ感温素子が設けられており、この温度検出素子により検出された温度情報を基にスイッチング素子をオン/オフ制御して、熱定着器の温度が目標の温度になるように制御される。またセラミック面状発熱体ヒータのオン/オフ制御は通常、入力される商用電源の位相制御又は波数制御により行われる。また、トライアック等のスイッチング素子の故障や電力制御の暴走によりヒータが異常発熱した場合には、温度検出素子によりヒータの過昇温を検出して、交流電源からヒータへの電力供給を遮断している。
特開昭63−313182号公報 特開平02−157878号公報 特開2004−226557号公報
しかし、電流検出トランスで電圧変換した二次側出力波形には、素子固有の特性により波形の歪みを生じてしまう。特に電流実効値を検知する場合、波形の歪みによって実効値が変化してしまい、電流検出精度が低下してしまう。電流検出トランス二次側出力に生じる歪量は、一次側入力波形の振幅、位相角、周波数によって異なる。また負荷が急激に変動する場合には、それ以前の波形によって歪み量は異なる。電流検出トランスの歪みによって生じる誤差を補正することは、より正確な電流検知を行うための課題であった。
本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解決することにある。
本発明では、負荷に供給する電力デューティを、周波数、位相角の変動量の情報に基づき歪量補正を行うことでより高精度な電流制御を行う電流制御装置及びそれを具備した画像形成装置を提供することを目的とする。
本発明は、上述の目的を達成するため、以下(1)〜(8)の構成を備えるものである。
(1)負荷に供給される電力を位相制御する位相制御手段と、前記負荷に流れる電流の経路に設置される電流検出トランスと、前記電流検出トランスの出力電圧が入力されることにより、前記負荷に流れる電流値を検知する電流検知手段と、前記電流検知手段で検知した電流値を、前記位相制御手段で制御した位相角に基づき補正する歪量補正手段を有することを特徴とする電流制御装置。
(2)前記負荷に供給される電力の周波数を検出する周波数検出手段を更に有し、前記歪量補正手段が、前記電流検知手段で検知した電流値を、前記周波数検出手段で検出した周波数に基づき補正する、歪量補正手段であることを特徴とする、前記(1)に記載の電流制御装置。
(3)前記位相制御手段で制御した位相角の値を記録する記憶手段を有し、前記歪量補正手段が、前記記憶手段に記憶された位相角情報に基づき、前記電流検知手段で検知した電流値を補正する、歪量補正手段であることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の電流制御装置。
(4)前記電流検知手段で検知した電流値を記憶する記憶手段を更に有し、前記歪量補正手段が、前記記憶手段に記憶された電流検知結果に基づき、前記電流検知手段で検知した電流値を補正する、歪量補正手段であることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の電流制御装置。
(5)前記電流検知手段が、前記負荷に供給される電力の周波数の周期もしくは半周期ごとに検知電圧を出力する回路であって、前記電流検出トランスの出力電圧が入力されることで、該出力電圧の2乗値に概比例した積分値としての検知電圧を出力する回路であることを特徴とする、前記(1)乃至(4)いずれか記載の電流制御装置。
(6)商用電源から負荷に供給する電力を制御して像形成を行う画像形成装置であって、前記負荷が画像を定着させるための定着器に使用される発熱体であり、かつ前記電流制御装置により制御された電力が前記発熱体に供給される、前記(1)乃至(5)いずれかに記載の電流制御装置を有することを特徴とする画像形成装置。
(7)前記発熱体の温度を検出する温度検出手段を更に有し、前記温度検出手段により検出される温度が所定温度範囲になるように前記電流制御装置により制御されることを特徴とする前記(6)に記載の画像形成装置。
(8)前記発熱体の前記温度検出手段により検出される温度が所定温度範囲になるように制御されることに応じて、複数の歪量補正手段を切り替える、若しくは、補正の有無を切り替えることを特徴とする前記(7)に記載の画像形成装置。
以上説明したように、
(1)本出願に係る第1の発明によれば、
前記電流検出トランスが生じる波形の歪みによる誤差を低減し、前記負荷に供給する電流を精度の良く検知する、電流制御装置を提供することができる。
(2)本出願に係る第2の発明によれば、
前記電流検知手段で検知された電流値を、周波数に基づき歪量補正することにより、前記電流検出トランスが生じる波形の歪みによる誤差を低減し、前記加熱手段に供給する電流を精度の良く検知する、電流制御装置を提供することができる。
(3)本出願に係る第3の発明によれば、
前記電流検知手段で検知された電流値を、予め記憶された位相角情報に基づき歪量補正することにより、
前記電流検出トランスが生じる波形の歪みによる誤差を低減し、前記負荷に供給する電流を精度の良く検知する、電流制御装置を提供することができる。
(4)本出願に係る第4の発明によれば、
前記電流検知手段で検知された電流値を、予め記憶された電流検知結果に基づき歪量補正することにより、
前記電流検出トランスが生じる波形の歪みによる誤差を低減し、前記負荷に供給する電流を精度の良く検知する、電流制御装置を提供することができる。
(5)本出願に係る第5の発明によれば、
前記電流検出回路にあって、制御対象の応答が速く、かつ、応答性の速い制御をおこなうことを特徴とした電流制御装置を提供することができる。
(6)本出願に係る第6の発明によれば、
商用電源から発熱対に供給する電力を制御して像形成を行う画像形成装置であって、
前記電流検知装置で歪量補正することにより、
前記電流検出トランスが生じる波形の歪みによる誤差を低減し、前記加熱手段に供給する電流を精度良く検知する電流制御装置を具備する、画像形成装置を提供することができる。
(7)本出願に係る第7の発明によれば、
前記発熱体の温度を検出する温度検出手段により、検出される温度が所定温度範囲になるように、制御対象の電力を精度よく供給する電流制御装置を具備する、画像形成装置を提供することができる。
(8)本出願に係る第8の発明によれば、
制御対象の電力を精度よく供給する電力制御を行うために、
複数の歪補正手段から、どの歪量補正手段を行うかを判断するような、
最適な補正手段を選択することができる電流制御装置を具備する、画像形成装置を提供することができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態を、実施例により詳しく説明する。
商用電源から電力を供給する電力供給手段を有し、負荷に流れる電流を検知するための電流検出トランスの2次側出力波形に生じる歪みの誤差を低減し、前記負荷に流れる電流を精度良く検知する電流検知装置を有する画像形成装置についての説明である。
以下、添付図面に基づき説明する。
図2は電子写真プロセスを用いた画像形成装置の概略構成図であり、例えばレ−ザプリンタの場合を示している。
<画像形成装置の全体構成>
レーザプリンタ本体101(以下、本体101)は、記録紙Sを収納するカセット102を有する。このカセット102の記録紙Sの有無を検知するカセット有無センサ103、カセット102の記録紙Sのサイズを検知するため復数個のマイクロスイッチで構成されたカセットサイズセンサ104を有する。そして、カセット102から記録紙Sを繰り出す給紙ローラ105等が設けられ、給紙ローラ105の下流には記録紙Sを同期搬送するレジストローラ対106が設けられている。また、レジストローラ対106の下流にはレーザスキャナ部107からのレーザ光に基づいて記録紙S上にトナー像を形成する画像形成部108が設けられている。更に、画像形成部108の下流には記録紙S上に形成されたトナー像を熱定着する定着器109が設けられている。定着器109の下流には排紙部の搬送状態を検知する排紙センサ110、記録紙Sを排紙する排紙ローラ111、記録の完了した記録紙Sを積載する積載トレイ112が設けられている。この記録紙Sの搬送基準は、記録紙Sの画像形成装置の搬送方向に直交する方向の長さ、つまり記録紙Sの幅に対して中央になるように設定されている。
また、前記レーザスキャナ107は、後述する外部装置131から送出される画像信号(画像信号VDO)に基づいて変調されたレーザ光を発光するレーザユニット113がある。このレーザユニット113からのレーザ光を後述する感光ドラム117上に走査するためのポリゴンモータ114、結像レンズ115、折り返しミラー116等により構成されている。
そして、前記画像形成部108は、公知の電子写真プロセスに必要な、感光ドラム117、1次帯電ローラ119、現像器120、転写帯電ローラ121、クリーナ122等から構成されている。
また、定着器109は定着フィルム109a、定着ローラ109b、定着フィルム内部に設けられたセラミックヒータ109c、セラミックヒータの表面温度を検出するサーミスタ109dから構成されている。
また、メインモータ123は、給紙ローラ105には給紙ローラクラッチ124を介して、レジストローラ対106にはレジストローラ125を介して駆動力を与えている。更にメインモータ123は、感光ドラム117を含む画像形成部108の各ユニット、定着器109、排紙ローラ111にも駆動力を与えている。
また、エンジンコントローラ126は、当該発明にかかる歪補正制御シーケンスを実施するのに必要な情報を記憶する記憶手段を有する。また、レーザスキャナ部107、画像形成部108、定着器109による電子写真プロセスの制御、前記本体101内の記録紙の搬送制御なども行なっている。
また、ビデオコントローラ127は、パーソナルコンピュータ等の外部装置131と汎用のインターフェース(セントロニクス、RS232C、USB等)130で接続されている。この汎用インターフェースから送られてくる画像情報をビットデータに展開し、そのビットデータをVDO信号として、エンジンコントローラ126へ送出している。
<セラミックヒータの駆動及び制御回路の構成>
図1には本実施例における定着器109を構成するセラミックヒ−タの駆動及び制御回路を示した図である。交流電源1は、本画像形成装置である本体101に接続される商用電源である。本体101には交流電源1からACフィルタ2,電流検出トランス25,リレー41を介して加熱手段であるセラミックヒ−タ109cを構成する発熱体203,発熱体220へ電力を供給することにより、発熱体203,発熱体220を発熱させる。
商用電源から発熱体203への電力供給手段として、トライアック4の通電、あるいは遮断することによって制御が行われている。抵抗5、6はトライアック4のためのバイアス抵抗である、フォトトライアックカプラ7は、一次(負荷側)と、二次(制御側)間の沿面距離(絶縁距離)を確保するためのデバイスである。フォトトライアックカプラ7の発光ダイオードに通電することによりトライアック4を通電する。抵抗8はフォトトライアックカプラ7の電流を制限するための抵抗であり、トランジスタ9によりフォトトライアックカプラ7を通電、あるいは遮断する。トランジスタ9は抵抗10を介してエンジンコントロ−ラ126からのON1信号にしたがって動作する。
商用電源から発熱体220への電力供給手段として、トライアック13の通電、あるいは遮断することによって制御が行われている。抵抗14、15はトライアック13のためのバイアス抵抗である、フォトトライアックカプラ16は、一次、二次間の沿面距離を確保するためのデバイスである。フォトトライアックカプラ16の発光ダイオードに通電することによりトライアック13を通電する。抵抗17はフォトトライアックカプラ16の電流を制限するための抵抗であり、トランジスタ18によりフォトトライアックカプラ16を通電、あるいは遮断する。トランジスタ18は抵抗19を介してエンジンコントロ−ラ126からのON2信号にしたがって動作する。
<位相角検出回路の構成>
交流電源1の位相角の検出は、ゼロクロス検出回路12によって行われる。ACフィルタ2を介して交流電源1の出力は、ゼロクロス検出回路12のHotとNeutralに入力される。ゼロクロス検出回路12では、入力された商用電源電圧がある閾値以下の電圧になっていることをエンジンコントロ−ラ126に対して位相角を算出するためのパルス信号を報知する。以下、エンジンコントロ−ラ126に送出されるこのパルス信号をZEROX信号と呼ぶ。エンジンコントロ−ラ126では前記ZEROX信号のパルスのエッジを検知し、そのエッジ間隔T1から商用電源である交流電源1の位相角が算出される。そして検出された位相角に基づき位相制御または波数制御を行うことによりトライアック4又は13を通電、あるいは遮断する。また、検出された前記位相角は、エンジンコントローラの記憶手段に位相角情報として記憶される、前記記憶手段に記憶された過去の位相角情報は、検出された位相角と比較されその差に基づく前記電流検出トランスで検出された電流値の歪補正に利用される。
また、ゼロクロス検出回路は商用電源の周波数を検出する周波数検出手段としての機能も有し、前記ゼロクロス検出回路から出力される前記ZEROX信号より、商用電源の周波数もエンジンコントローラ126で算出される。
<セラミックヒータ電流検出回路の構成>
トライアック4及び13に制御されて、発熱体203及び発熱体220に通電されるヒータ電流は、電流の経路に設置された電流検出トランス25によって電圧変換され、電流検出トランスの2次側の出力電圧として電流検出回路27に入力される。
前記電流検出トランスによって電圧変換された2次側出力は商用周波数周期毎のヒータ電流に対応した値であり、電流検出回路27では、電圧変換されたヒータ電流波形を半波整流し、その2乗値に変換し、更に反転増幅した後、コンデンサに充電される。この場合、電流検出トランスの前記コンデンサに充電された電圧I1fはHCRRT信号としてエンジンコントローラ126にA/D入力される。この2乗値とHCRRT信号とは概比例している。
<セラミックヒータ温度検知回路の構成>
図1に示した温度検知素子109dは発熱体203,および発熱体220によって形成されているセラミックヒ−タ109cの温度を検知するための温度検知手段としての温度検知素子である、例えば、サ−ミスタ感温素子などである。セラミックヒータ109c上に発熱体203,および発熱体220に対して絶縁距離を確保できるように絶縁耐圧を有する絶縁物を介して配置されている。この温度検知素子109dによって検出される温度は、抵抗22と、温度検知素子109dとで分圧された電圧として検出され、エンジンコントロ−ラ126にTH信号としてA/D入力される。
前記TH信号は前記エンジンコントロ−ラ126の記憶手段に記憶され、発熱体203、および発熱体220の温調制御する信号として使用される。
<エンジンコントローラの制御方法と過昇温防止回路>
セラミックヒ−タ109cの温度は、TH信号としてエンジンコントロ−ラ126において監視されている。エンジンコントロ−ラ126の内部で予め設定されるセラミックヒ−タ109cの設定温度とTH信号とを比較することによって、セラミックヒ−タ109cを構成する発熱体203,220に供給するべき電力比を算出する。そして、供給する電力比に対応した位相角(位相制御)または波数(波数制御)に換算し、その制御条件によりエンジンコントロ−ラ126がトランジスタ9にON1信号、あるいはトランジスタ18にON2信号を送出する。発熱体203,220に供給する電力比を算出する際に、電流検出回路27から報知されるHCRRT信号(検知電圧)を基に上限の電力比を算出して、その上限の電力比以下の電力が通電されるように制御する。例えば、位相制御の場合、下記の表1のようなデータをエンジンコントローラ126内に有しており、この制御表に基づき制御をおこなう。
Figure 2009288851
さらに、発熱体203,220に電力を供給しており、制御する手段が故障し、発熱体203,220が熱暴走に至った場合、過昇温を防止する手段として、過昇温防止手段223がセラミックヒータ109c上に配されている。過昇温防止手段223は、例えば温度ヒューズやサーモスイッチである。電力供給制御手段の故障により、発熱体203,220が熱暴走に至り過昇温防止手段223が所定の温度以上になると、過昇温防止手段223がOPEN状態になり、発熱体203および220への通電が遮断される保護回路を有している。
また、TH信号として監視されているセラミックヒ−タ109cの温度は、エンジンコントローラ126において、温度制御の設定温度とは別に異常高温検知温度が設定されている。TH信号から検知される温度がその異常高温検知温度以上になった場合には、エンジンコントローラ126からのRLD信号はLowレベルとなる。その結果、トランジスタ42がオフとなり、リレー41の接点回路をオープンとすることにより、発熱体203および220への通電を遮断する。通常、温度制御時には常に、エンジンコントローラ126はRLD信号をHighレベルとして送出し、トランジスタ42をオンにし、リレー41の接点回路をクローズにしている。抵抗43は電流制限抵抗であり、抵抗44ベース・エミッタ間のバイアス抵抗である。ダイオード45はリレー41のオフ時の逆起電力吸収用素子である。
<セラミックヒータ及び熱定着器の概略>
図3(a)(b)は、本実施の形態に係るセラミックヒータ109cの概略を説明する図である。図3(a)は、セラミック面状発熱体ヒータの断面図であり、図3(a)の矢印301で示すのは、発熱体203,220が形成されている表面を示しており、同じく図3(a)の矢印302で示すのは、301が示す表面と相対する裏面を示している。
このセラミック面状発熱体ヒータ109cは、SiC,AlN,Al等のセラミックス系の絶縁基板331が使用されている。また、絶縁基板331面上にはペースト印刷等で形成されている発熱体203,220と、2本の発熱体を保護しているガラス等の保護層334から構成されている。この保護層334上に、セラミック面状発熱体ヒータ109cの温度を検出する温度検出素子109dと過昇温防止手段223が配置されている。図3(b)で示すように、これらは記録紙Sの搬送基準、つまり発熱部203a,220aの長さ方向の中心(a1)に対して左右対称な位置(h)で、かつ通紙可能な最小の記録紙のシート幅よりも内側の位置に配設されている。
発熱体203は、電力が供給されると発熱する部分203aと、コネクタを介して電力が供給される電極部203c,203dと、これら電極部203c,203dと発熱体203とを接続する導電部203bとを有している。また発熱体220は、電力が供給されると発熱する部分220aと、コネクタを介して電力が供給される電極部203c,220dと、電極部203c,220dと接続される導電部220bとを有している。電極部203cは、2本の発熱体203と220に共通に接続されており、発熱体203,220の共通電極となっている。また発熱体203,220が印刷されている絶縁基板331との対向面側に摺動性を向上させるために図3で示すガラス層334が形成される場合もある。
この共通電極203cは、商用電源である交流電源1のHOT側端子から過昇温防止部223を介して接続される。電極部203dは、発熱体203を制御するトライアック4に接続され、交流電源1のNeutral端子に接続される。電極部220dは、発熱体220を制御するトライアック13と電気的に接続され、交流電源1のNeutral端子に接続される。セラミックヒータ109cは、図4(a)(b)に示すように、フィルムガイド62によって支持されている。
図4(a)(b)は、本実施例に係る熱定着器109の概略構成を示す図である。図4(a)は、絶縁基板331に対して、発熱体203,220が定着ニップ部と反対側にある場合を示し、図4(b)は、絶縁基板331に対して、発熱体203,220が定着ニップ部側に位置している場合を示している。
定着フィルム109aは、円筒状の耐熱材製の定着フィルムであり、セラミックヒータ109cを下面側に支持させたフィルムガイド62に外嵌させてある。そして、このフィルムガイド62の下面のセラミックヒータ109cと、加圧部材としての弾性加圧ローラ109bとを、定着フィルム109aを挟ませて弾性加圧ローラ109bの弾性に抗して所定の加圧力をもって圧接させている。こうして加熱部としての所定幅の定着ニップ部を形成している。また過昇温防止手段223、例えば、サーモスタットがセラミックヒータ109cの絶縁基板331面上、或はガラス層334面上に当接されている。このサーモスタット223は、フィルムガイド62に位置を矯正され、サーモスタット223の感熱面がセラミックヒータ109cの面上に当接されている。図示はしていないが、温度検出素子109dも同様に、このセラミックヒータ109cの面上に当接されている。ここで、図4(a)のように、セラミックヒータ109cは発熱体203,220が定着ニップ部と反対側にあっても良く、或は図4(b)のように、発熱体203,220が定着ニップ部側にあってもかまわない。また、定着フィルム109aの摺動性を上げるために、定着フィルム109aとセラミックヒータ109cとの界面に摺動性のグリースを塗布してもかまわない。
<ヒータ電流検出回路>
図5は、本実施例に係る電流検出回路27の構成を説明するための回路図であり、図6は、この電流検出回路27の動作を説明するためのタイミング波形図である。
図6のヒータ電流I1(601)は、発熱体203に流される電流I1の波形で、電流検出トランス25によって、その電流波形が2次側で電圧変換される。この電流検出トランス25の電圧出力をダイオード51a,53aによって整流し、負荷抵抗として抵抗52a,54aを接続している。半波整流後電圧(603)は、このダイオード53aによって半波整流された波形を示す。この電圧波形は、抵抗55aを介して乗算器56aに入力される。この乗算器56aの出力は、半波整流後2乗電圧(604)で示されるように、2乗した電圧波形を出力する。これは電圧波形を2乗することにより、制御対象の変化に対する応答が速く、かつ、高精度で制御をおこなうための電流検知手段となる。この2乗された波形は、抵抗57aを介してオペアンプ59aの−端子に入力される。このオペアンプ59aの+端子には、抵抗58aを介してリファレンス電圧84aが入力されており、帰還抵抗60aにより反転増幅される。尚、このオペアンプ59aは片電源から電源が供給されているものとする。
反転増幅出力(605)は、リファレンス電圧84aを基準に半波整流後2乗電圧(604)を反転増幅した波形を示す。このオペアンプ59aの出力は、オペアンプ72aの+端子に入力される。オペアンプ72aでは、リファレンス電圧84aと、その+端子に入力された波形の電圧差と、抵抗71aで決定される電流がコンデンサ74aに流入されるようにトランジスタ73aを制御している。こうしてコンデンサ74aは、リファレンス電圧84aと、その+端子に入力された波形の電圧差と抵抗71aで決定される電流で充電される。
ダイオード53aによる半波整流区間が終わると、コンデンサ74aへの充電電流がなくなるため、その電圧値がピークホールドされる。そしてHCRRT1信号(606)が示すように、ダイオード51aの半波整流期間にDIS信号(607)によりトランジスタ75aをオンする。これにより、コンデンサ74aの充電電圧が放電される。トランジスタ75aは、エンジンコントローラ126からのDIS信号によりオン/オフされており、DIS信号は図2で示すゼロクロス検出回路から送出されるZEROX信号602を基に、トランジスタ75aのオン/オフ制御を行っている。このDIS信号は、ZEROX信号の立ち上がりエッジから所定の遅延時間Tdly後にHightレベルとなり、ZEROX信号の立下がりエッジと同じタイミング、もしくは直前でLowレベルとなる。これにより、ダイオード53aの半波整流期間であるヒータの通電期間を干渉することなく制御できる。
こうしてコンデンサ74aにピークホールドされた電圧値が、電流検出回路27からHCRRT1信号としてエンジンコントローラ126に送出される。図5に示す回路の特徴として検出した電圧波形を2乗することにより、対象となるヒータ電流の変化に対する応答が速く、高精度で制御をおこなうためには有効な電流検知手段となる。
また、前記HCRRT信号は前記電流検出回路27で検出された電流値として、エンジンコントローラの記憶手段に電流値情報として記憶される。前記記憶手段に記憶された電流値情報は、電流検出トランスで検出された電流値の歪補正シーケンスで利用される。
<電流検出トランスの歪補正方法>
図7は、本実施例に係る電流検出トランス25によって生じる歪みの補正方法を説明するための等価回路図を示している。歪みのない理想的な変圧器に対して、一次インダクタンス、一次巻線漏洩インダクタンスの影響を加味した回路図になっている。本実施の形態1を説明するために行ったシミュレーションでは、一次側及び二次側巻き線抵抗、浮遊容量、鉄損の影響は少ないため、等価回路図から省略している。また、本提案の電流検出トランス歪の補正量を決める手段にあっては、実測値や、他の等価回路を用いたシミュレーション値を用いてもよい。必ずしも本実施の形態1で説明する方法に限定されるものではない。
電流検出トランスの歪補正方法の具体例として、次の位相角と、周波数による歪補正方法を説明する。
<位相角による歪補正方法>
本実施例で用いる、発熱体203,220の位相制御に用いる位相角に応じて、電流検出トランス25による歪みの影響を補正する方法を説明する。
図8(a)のシミュレーション結果は、日本国内で使用されている商用周波数50Hzと60Hzにおいて、電流検出トランス25によって生じる歪量の位相角による変化を示している。縦軸は理想的な変圧器の出力と、前記等価回路の出力との誤差を、比率で示している。
図8(b)のシミュレーション結果は、電流検出トランス25によって生じる歪量の位相角による変化を表している。縦軸は理想的な変圧器の出力と、前記等価回路の出力との電位差を示している。
図8中のグラフの表示は、商用周波数が50Hzの場合を○、60Hzの場合を●の曲線で示している。
図9は図8(a)及び図8(b)のシミュレーション結果を元に作成した、位相角補正表である。このとき商用周波数は60Hzを規準値とする。図9のような表をエンジンコントローラ126内に有しており、この表に基づき補正をおこなう。この補正表を用いることで、電流検出回路27の出力HCRRT1信号より検出されるAD値を位相角により歪補正することができる。図8(b)から分かるように、位相角が180°に近づくと、理想的な変圧器の出力と、前記等価回路の出力との電位差は小さくなる。位相角120°〜180°では発生する歪が電流検出回路27の出力に与える影響は少ないため、補正量を一定値とした。位相角120°〜180°の状態とは、セラミックヒータ109cの温度が定常状態に達した状態に相当する。
このように、補正表は所望の精度や、制御に求められる条件に応じて、シミュレーション結果や、実測値に基づいて作成すれば良い。
<周波数による歪補正方法>
本実施例で用いる、商用周波数に応じて、電流検出トランス25による歪みを補正する方法を説明する。図9の補正表を用いて算出した補正値は、商用周波数が60Hzの場合でのHCRRT1信号より検出されたAD値の補正量であり、周波数の違いによって適正な補正量は異なる。そのため、周波数検出手段より求めた商用周波数に応じて、更に周波数補正を行う必要がある。
図10のシミュレーション結果は、電流検出トランス25によって生じる歪み量の商用電源の周波数による変化を示している。縦軸は周波数60Hzの出力と、各商用周波数の出力との差分を、比率で示している。
図11は図10のシミュレーション結果を元に作成した、商用周波数ごとの補正表である。図9の位相角補正表で得られた補正値を、更に図10で周波数補正を行うことができる。位相角120°〜180°では入力波形の歪みが電流検出回路27の出力に与える影響は少ないため、周波数の違いによる補正は行っていない。
<定着器の温調制御シーケンス>
次に、エンジンコントローラ126で実施される、本実施の形態1における定着器109のヒータ温調制御シーケンスについて説明する。
図12は、本発明の本実施の形態1に係るエンジンコントローラ126による定着器109のヒータ温調制御シーケンスを、S100〜S114のフローチャートで説明する。
<S100>
ステップS100は、エンジンコントローラ126にて、ヒータ温調制御シーケンスの開始を示す。
<S101>
「ヒータON要求?」
ステップS101は、エンジンコントローラ126にて、セラミックヒータ109cへの電力供給開始の要求が発生するかを判断する工程である。
電力供給開始の要求が発生れば“Yes”でS102へ、“No”で有ればステプS101を繰り返す。
<S102>
「電力デュ―ティの最初の上限値Dlimit(n)=Dlimit(1)を設定」
ステップS102では、想定されている入力電圧範囲やヒータの抵抗値等を考慮して、最大の電力デューティとして予め定めたDlimit(1)として初期値に設定する。例えば、入力電圧が最小値、抵抗値が最大値の場合を想定して、ヒータに通電可能な許容電流を超えない電力デューティを初期値に設定する。
n=1,2,3・・・、等の整数である。
<S103>
「ヒータをDlimit(n)以下の電力DutyでTH信号を基に温度制御」
ステップS103では、Dlimit(n)を上限電力デューティとして、目標の温度情報とTH信号(温度検出素子の信号)との温度差を基に電力デューティD(n)を決定しヒータ温調制御を開始する。エンジンコントローラ126に設定されている所定の温度になるように、TH信号からの情報を基に、例えばPI制御(比率積分制御)により発熱体203,220に供給する電力を制御する。目標の温度情報とTH信号からの温度情報の差分から供給する電力デューティを決定している。但し、算出された電力デューティが上限デューティDlimit(n)を超える場合は、Dlimit(n)を供給する電力デューティとする。つまりステップS102では、上限デューティDlimit(n)以下の電力デューティD(n)でヒータ温調制御を行う。
ここでは電力デューティD(n)に相当する位相角α(n)で、ON1,ON2信号のオンパルスがZEROX信号をトリガにして、エンジンコントローラ126より送出される。これにより発熱体203及び220には、位相角α(n)で電流が供給される。
<S104>
「現在の位相角α(n)を記憶部に保存する。」
ステップS104では、位相角α(n)の値をエンジンコントローラ126の記憶部に記憶させる。
<S105>
「ZEROX周期T(n)を検出」
ステップS105では、ZEROX周期T(n)を検出する。エンジンコントローラ126は、ZEROX信号の立下がりエッジから立下がりエッジまでの時間間隔T(n)を検出することにより、商用周波数F(n)を算出することができる。
<S106>
「商用周波数F(n)を記憶部に保存する」
検知したZEROX信号の立下り時間の間隔T(n)より入力電源の周波数を算出し、記憶部に保存する。
ステップS106では、算出した商用周波数F(n)の値をエンジンコントローラ126の記憶部に記憶される。
<S107>
「HCRRNT1信号から電流値I1f(n)を検知」
ステップS107では,電力デューティD(n)で通電している状態で、電流値I1f(n)に相当する電流検出回路27から送られてくるHCRRT1信号により電圧V1f(n)を取得する。これは前述したようにコンデンサ74aでピークホールドされた電圧値V1f(n)に該当している。即ち、図6に示すHCRRT1信号のピークホールド値である。本実施例では、ZEROX信号をトリガにして、ZEROX信号の立ち上がりエッジからDIS信号を送出するまでの間、Tdlyの期間内にこの値を取得する。この期間Tdlyは、エンジンコントローラ126がピークホールド値V1f(n)を検知するのに十分な時間に設定されている。
尚、図12のフローチャートの説明では、電流値を検出し、その電流値に基づいて上限電流値及び上限デューティを求めるように説明しているが、前述したように、実際はピークホールドされた電圧値を検出している。そして、この電圧値に対応する電流値を求めて計算を実行している。
<S108>
「電流値I1f(n)の周波数換算値I1(n)を算出」
ステップS108では、電流値I1f(n)の周波数換算値を求める。ここで、HCRRT1信号が報知するI1f(n)値は、前記電流検出回路で説明したように、2乗波形の商用周波数半周期分の積分値である。周波数F(n)Hzにおける電流値I1f(n)に対して、商用周波数を特定の周波数、例えば50Hzを規準の周波数として設定しておくことで周波数の比を求め補正を行う。電流値I1f(n)の50Hz換算値をI1(n)とすると、
I1(n)=I1f(n)×F(n)/50
と表すことができる。
<S109>
「電流値I1(n)のAD値と位相角α(n)を用いて図9位相角補正表から歪補正値I1’(n)を算出する。」
ステップS109では、ステップS108で求めた電流値I1(n)(256bitのAD値)と、エンジンコントローラ126に記憶されている位相角α(n)を用いて、図9の位相角補正表から電流値I1’(n)を算出する。
<S110>
「電流値I1’(n)と周波数F(n)を用いて図11周波数補正表から歪み補正値I1’’(n)を算出する」
ステップS110では、ステップS109で求めたI1’(n)と、エンジンコントローラ126に記憶されている周波数F(n)を用いて、図11の周波数補正表から電流値I1’’(n)を算出する。
<S111>
「位相角α(n)と電流値I1’’(n)より、上限電力デューティDlimt(n+1)を算出する」
ステップS111では、補正値I1’’(n)と、電力デューティD(n)と予め設定されている通電可能な電流値Ilimitから、通電可能な上限の電力デューティの更新値Dlimit(n+1)を次の式より算出する。
Dlimit(n+1)=(Ilimit/I1’’(n))×D(n)
電流値Ilimitは、接続される商用電源の定格電流に対して、ヒータ以外の部分に供給される電流を差し引いたヒータに供給可能な許容電流値を設定する、ここでは周波数50Hzにおける値を設定する。
<S112>
「ヒータ温調制御終了?」
ステップS112で、ヒータ109cの温調制御が終了かを判断する、温調制御終了なら「Yes」で終了、さらに継続するなら「No」へ進み、ステップS113を経て温調制御を繰り返す。
<S113>
「n=n+1」
ステップS113はヒータ温調制御が継続する場合に、n=n+1と更新し、S103へ戻して温調制御のステップを繰り返す。
n=1,2,3・・・、等の整数である。
<S114>
ヒータ温調制御シーケンスの終了となり、ヒータ109への電力供給が停止される。
以上の処理を、ヒータ109cの温調制御が終了するまで、商用電源の周期ごとに繰り返し行う。その結果、エンジンコントローラ126で、発熱体203,220に供給する電力デューティを算出する処理を繰り返し、正確なヒータ温調制御を実施することが可能となる。このように、電流検出回路27の出力を検知した結果に対して、図9の位相角に基づいた補正と、図11の商用周波数に基づいた補正を行うことで、電流検出トランス25による歪みの影響を低減することができる。
位相角と商用周波数に基づき、どのような補正を行うかは、想定する周波数範囲や、位相角の範囲、電流検出トランスの特性などにより最適な方法は異なるため、本出願の補正方法は実施例1の説明にある手段に限られるものではない。
実施例1に記載の画像形成装置であって、本実施例2では定着器109に供給される電力を位相制御する際に、位相角が急激に変わる負荷変動が発生した場合の歪量補正方法を示すものである。
位相角の変動が少ない場合、すなわち定着器が定常状態にある場合には近接する波形の位相角には連続性があるため、実施例1の方法で精度よく補正することができる。しかし位相角が急激に変わる場合には、それ以前の波形の影響を受けて電流検出トランスの2次側電圧に歪みを生じる。そのため、加熱手段に流れる電流に急激な変動がある場合には、電流検知手段で検知した電流値を更に補正する必要がある。実施例2では、実施例1で説明した歪みの補正結果に、更に加熱手段の負荷変動によって生じる歪みの補正を行う方法を説明する。
図13は、位相角が変化した場合に、電流検出トランスの出力に与える影響を説明するための、シミュレーション結果である。
図13(a)は、位相角を180°から90°に減少させた場合の、シミュレーション結果を示す。
図13(b)は、位相角を0°から90°に増加させた場合の、シミュレーション結果を示す。
電流検出トランスが同じ位相角で通電されている定常状態と比べて、一波前の波形より位相角が減少する場合は波形の実効値が減少する。一波前の波形より位相角が増加する場合は波形の実効値が増加する。実施例2では図13のように負荷変動が生じた場合、負荷の変動量に応じて電流検出トランス25による歪みを補正する方法を説明する。
図14(a)のシミュレーション結果は、電流検出トランス25によって生じる歪み量の、負荷の増加量に対する変化を示している。縦軸は負荷変動が無い場合の出力を100%とし、負荷変動が生じた場合の出力との比率を示している。横軸には一波前と現在の波形の、位相角の差分(°)を示している。(制御位相角が減少すると、負荷は増大する)位相制御に用いた位相角の値はエンジンコントローラ126に記憶されており、エンジンコントローラ内部で位相角の差分値を算出する。
図14(b)のシミュレーション結果は、電流検出トランス25によって生じる歪み量の、負荷の減少量に対する変化を示している。縦軸は負荷変動無い場合の出力を規準とし、負荷変動が生じた場合の出力との比率を示している。横軸は一波前の波形と、現在の実効値の差分(V)を示している。この実効値は、エンジンコントローラ126に記憶された、位相角に基づき算出する。(この実効値は位相角0°で実効値1Vの正弦波位相制御波形とする)位相角に応じた実効値を算出するため、エンジンコントローラは角位相角ごとの実効値に相当する値を位相角情報として記憶しており、エンジンコントローラ内部で実効値の差分値を算出する。(例えば実施例1で用いた、表1の電力比〜位相角変換表の電力比は、実効値の値に相当する値である。実効値=電力比/100(V))。
図15は図14のシミュレーション結果を元に作成した、負荷変動に対する補正表である。図15を用いて、実施例1で得られた補正後の電流値を、更に負荷変動による歪みの影響を加味してより精度の高い補正をすることができる。
次に、本実施例2における定着器109の温調制御シーケンスについて説明する。
定着器の急激な負荷変動が発生した場合でも、実施例1で示した定着器109の温調制御シーケンスに基づき電圧デューティが決られる。更に、エンジンコントローラ126に記憶されている電流値情報と比較して、その変化量に対応した歪補正を更に加えることで、より精度の高い電圧デューティを決定するものである。
<定着器の温調制御シーケンス>
図16は、本発明の本実施例2に係るエンジンコントローラ126による定着器109の温調制御シーケンスを説明するフローチャートである。
前記温調制御シーケンスのステップS200からS210までのフローは、本発明の実施例1で説明した図12の温調制御シーケンスのステップS100からS110までの内容と同一の処理である。重複するステップS200からS210につてはステップS100からS110を参照し、説明を省略する。
ステップS211より説明する。
<S211>
「電流値I1’’(n)、位相角α(n),α(n−1)を用いて、図15の位相角補正表から補正値I1’’’(n)を算出する。」
ステップS211では、位相角α(n),α(n−1),電流値I1’’(n)をもちいて、図15(a)の位相角補正表から補正値I1’’’(n)を算出する。
α(n)<α(n−1)の場合は図15(A)の補正表を用いる。位相角の差分値は、α(n−1)−α(n)で求めることができる。位相角の初期値α(0)は電流が通電されていない状態なので、α(0)=180°とする。
α(n)>α(n−1)の場合は図15(b)の補正表を用いる。実効値の差分値は、(D(n−1) −D(n))/100で求めることができる。電力デューティD(n)は実施例1の表1の電力比〜位相角変換表と位相角α(n)より求めることができる。
<S212>
「位相角α(n)と電流値I1’’’(n)より、上限電力デューティDlimt(n+1)を算出する」
ステップS212では、補正値I1’’’(n)と、電力デューティD(n)と予め設定されている通電可能な電流値Ilimitから、通電可能な上限の電力デューティの更新値Dlimit(n+1)を次の式より算出する。
Dlimit(n+1)=(Ilimit/I1’’’(n))×D(n)
電流値Ilimitは、接続される商用電源の定格電流に対して、ヒータ以外の部分に供給される電流を差し引いたヒータに供給可能な許容電流値を設定する、ここでは周波数50Hzにおける値を設定する。
<S213>
「ヒータ温調制御終了?」
ステップS213で、ヒータ109cの温調制御が終了かを判断する、温調制御終了なら「Yes」で終了、さらに継続するなら「No」へ進み、ステップS214を経て温調制御を繰り返す。
<S214>
「n=n+1を設定する」
ステップS214はヒータ温調制御が継続する場合に、n=n+1と更新し、S203へ戻して温調制御のステップを繰り返す。
n=1,2,3・・・、等の整数である。
<S215>
ヒータ温調制御シーケンスの終了となり、ヒータ109への電力供給が停止される。
実施例2で説明した方法は、一波前の波形と現在の波形の位相角及び、位相角から推定する電流実効値に基づき、補正を行っている。つまり実施例2による温調制御シーケンスでは、実施例1で説明した電流値の歪補正の精度を更に高めた温調制御が可能となる。
位相角に基づき補正を行う方法以外にも、例えば、一波前の波形と現在の波形の電流検知結果に基づき、同様に表を作成して補正を行ってもよい。より精度の高い補正を行うためには、2波以前の波形の影響についても、同様に表を作成して補正を行ってもよい。実施例2で説明した方法では、表を用いて補正をしているが、例えば図13の表に基づき近似式を作成して補正を行ってもよい。
どのような補正を行うかは、精度を向上させる目的や、想定する周波数範囲、位相角の範囲、電流検出トランスの特性などにより最適な方法は異なるため、本出願の補正方法は実施形2の説明にある手段に限られるものではない。
本実施例3では定着器109に供給する電力を位相制御する際に、位相角が急激に変わる負荷変動が発生した場合と、位相角の変動が少ない定常状態の場合とにおける、歪量補正方法を切り替える手段について説明する。これは定着器109への電力供給をより効率的に実施するための温調制御シーケンスを提供するものである。
例えば、定着器109の立ち上げ時には発熱体203,209へ流れる電流に大きな変動が生じるが、立ち上げ後の定常時では発熱体へ流れる電流の変動が少なくなる場合について説明する。このような場合では、電流変動が大きい立ち上げ時のみ、前記電流変動によって生じる歪みの歪量補正を行えば、電流検知結果を精度良く、かつ効率的に補正することができる。しかし定常時まで発熱体へ流れる電流の変動補正を行うと、エンジンコントローラ126の負荷が大きくなってしまうため、温調制御シーケンスを更に効率的に補正する必要がある。そのため、前記発熱体の温調制御シーケンスに応じて、歪量補正手段を切り替えることは有用な方法である。
<定着器の温調制御シーケンス3>
図17は、本実施例3に係るエンジンコントローラ126による定着器109の温調制御シーケンスを説明するフローチャートである。
前記温調制御シーケンスのステップS300〜S310までのフローは、本発明の実施例1にかかる図12の温調制御シーケンスのステップS100〜S110と内容が重複するため、ステップS100〜S110を参照し説明を省略する。
ステップS311から説明する。
<S311>
「定着器立ち上げ中?」
ステップS311では、エンジンコントローラ126内部に有している、負荷変動補正を行うかを判断する判断部によって定着器109の制御シーケンスが、立ち上げ中か定常時かを判断する。
立ち上げ中の場合にはS312に進み、負荷変動に応じた歪量補正を行う。定常時の場合にはS314に進む。
<S312>
「電流値I1’’(n)、位相角α(n),α(n−1)を用いて、図15の位相角補正表から補正値I1’’’(n)を算出する。」
ステップS312では、位相角α(n),α(n−1),電流値I1’’(n)をもちいて、図15(a)の位相角補正表から補正値I1’’’(n)を算出する。
α(n)<α(n−1)の場合は図15(a)の補正表を用いる。位相角の差分値は、α(n−1)−α(n)で求めることができる。位相角の初期値α(0)は電流が通電されていない状態なので、α(0)=180°とする。
α(n)>α(n−1)の場合は図15(b)の補正表を用いる。実効値の差分値は、(D(n−1)−D(n))/100で求めることができる。電力デューティD(n)は実施例1の表1の電力比〜位相角変換表と位相角α(n)より求めることができる。
<S313>
「位相角α(n)と電流値I1’’’(n)より、上限電力デューティDlimt(n+1)を算出する」
ステップS313では、補正値I1’’’(n)と、電力デューティD(n)と予め設定されている通電可能な電流値Ilimitから、通電可能な上限の電力デューティの更新値Dlimit(n+1)を次の式より算出する。
Dlimit(n+1)=(Ilimit/I1’’’(n))×D(n)
電流値Ilimitは、接続される商用電源の定格電流に対して、ヒータ以外の部分に供給される電流を差し引いたヒータに供給可能な許容電流値を設定する、ここでは周波数50Hzにおける値を設定する。
<S314>
「位相角α(n)と電流値I1’’(n)より、上限電力デューティDlimt(n+1)を算出する」
ステップS314では負荷変動に応じた歪量補正は行わずに、通電可能な上限の電力デューティの更新値Dlimit(n+1)を算出する。
<S315>
「ヒータ温調制御終了?」
ステップS215で、ヒータ109cの温調制御が終了かを判断する、温調制御終了なら「Yes」で終了、さらに継続するなら「No」へ進み、ステップS316を経て温調制御を繰り返す。
<S316>
「n=n+1を設定する」
ステップS316はヒータ温調制御が継続する場合に、n=n+1と更新し、S303へ戻して温調制御のステップを繰り返す。
n=1,2,3・・・、等の整数である。
<S317>
ヒータ温調制御シーケンスの終了となり、ヒータ109への電力供給が停止される。
実施例3で説明した方法では定着器109の発熱体の温調制御シーケンスに応じて、歪補正の有無を切り換えへる手段を特徴とするもので、定着器109の発熱体の温調制御でヒータ電流の検知結果を精度良く、かつ効率的に補正する方法を示した例である。また、複数の歪量補正手段から最適な方法を選択する方法もある。複数の方法から歪量補正手段を選択する以外にも、例えば、通常時は補正を行わず、精度が必要な制御シーケンスのみ、電流検知結果に歪量補正するなど、歪量補正の有無を切り替えても良い。
どのような補正を行うかは、精度を向上させる目的や、想定する周波数範囲、位相角の範囲、電流検出トランスの特性などにより最適な方法は異なるため、本出願の補正方法は実施例3の説明にある手段に限られるものではない。
本発明における定着器の制御及び駆動回路を示した図 本発明における画像形成装置を示した図 本発明における加熱手段であるセラミックヒータの概略を示した図 本発明における定着装置の概略構成を示した図 本発明における電流検出回路の構成を説明するブロック図 本発明における電流検出回路の動作を説明するための波形図 本発明における電流検出トランスのシミュレーションに用いた等価回路図 本発明における位相角ごとの歪み量のシミュレーション結果 本発明における位相角ごとに歪みの影響を補正するための補正表 本発明における商用周波数ごとの歪み量のシミュレーション結果 本発明における商用周波数ごとに歪みの影響を補正するための補正表 本発明における本実施例1のエンジンコントローラによる定着器の温調制御シーケンス 本発明における負荷変動によって電流検出トランスで生じる歪みを説明するための、シミュレーション波形図 本発明における負荷変動量ごとの歪み量のシミュレーション結果 本発明における負荷変動量ごとに歪みの影響を補正するための補正表 本発明における本実施例2のエンジンコントローラによる定着器の温調制御シーケンス 本発明における本実施例3のエンジンコントローラによる定着器の温調制御シーケンス
符号の説明
1 交流電源(商用電源に対応)
2 ACフィルタ
4及び13 トライアック
12 ゼロクロス検出回路(位相制御手段に対応)
25 電流検出トランス
27 電流検出回路(電流検知手段に対応)
41 リレー
62 フィルムガイド
101 画像形成装置
109 熱定着器
109a 定着フィルム
109b 弾性加圧ローラ
109c セラミックヒータ
109d 温調制御用の温度検知素子
126 エンジンコントローラ
127 ビデオコントローラ
130 汎用インターフェース
131 外部装置
203及び220 発熱体
223 過昇温防止手段
301 セラミックヒータ表面
302 セラミックヒータ裏面
334 保護層
V 電源電圧(位相制御波形)
Vin 電流検出トランスの入力電圧
LI1 1次巻線漏洩インダクタンス
LP 1次インダクタンス
Rh 発熱体抵抗
n2ZL 電流検出トランス巻線比の二乗値×二次側負荷抵抗

Claims (8)

  1. 負荷に供給される電力を位相制御する位相制御手段と、
    前記負荷に流れる電流の経路に設置される電流検出トランスと、
    前記電流検出トランスの出力電圧が入力されることにより、前記負荷に流れる電流値を検知する電流検知手段と、
    前記電流検知手段で検知した電流値を、前記位相制御手段で制御した位相角に基づき補正する歪量補正手段を有することを特徴とする電流制御装置。
  2. 前記負荷に供給される電力の周波数を検出する周波数検出手段を更に有し、
    前記歪量補正手段が、前記電流検知手段で検知した電流値を、
    前記周波数検出手段で検出した周波数に基づき補正する、歪量補正手段であることを特徴とする、請求項1に記載の電流制御装置。
  3. 前記位相制御手段で制御した位相角の値を記録する記憶手段を有し、
    前記歪量補正手段が、前記記憶手段に記憶された位相角情報に基づき、
    前記電流検知手段で検知した電流値を補正する、歪量補正手段であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電流制御装置。
  4. 前記電流検知手段で検知した電流値を記憶する記憶手段を更に有し、
    前記歪量補正手段が、前記記憶手段に記憶された電流検知結果に基づき、前記電流検知手段で検知した電流値を補正する、歪量補正手段であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電流制御装置。
  5. 前記電流検知手段が、前記負荷に供給される電力の周波数の周期もしくは半周期ごとに検知電圧を出力する回路であって、
    前記電流検出トランスの出力電圧が入力されることで、該出力電圧の2乗値に概比例した積分値としての検知電圧を出力する回路であることを特徴とする、請求項1乃至4いずれか記載の電流制御装置。
  6. 商用電源から負荷に供給する電力を制御して像形成を行う画像形成装置であって、
    前記負荷が画像を定着させるための定着器に使用される発熱体であり、かつ前記電流制御装置により制御された電力が前記発熱体に供給される、
    請求項1乃至5いずれかに記載の電流制御装置を有することを特徴とする画像形成装置。
  7. 前記発熱体の温度を検出する温度検出手段を更に有し、
    前記温度検出手段により検出される温度が所定温度範囲になるように前記電流制御装置により制御されることを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
  8. 前記発熱体の前記温度検出手段により検出される温度が所定温度範囲になるように制御されることに応じて、
    複数の歪量補正手段を切り替える、若しくは、補正の有無を切り替えることを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。
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