JP2009270196A - 刃物用帯鋼の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 刃物用鋼帯の製造方法において、仕上冷間圧延を行なって厚さを0.15mm以下とした仕上冷間圧延材を条取りスリット加工を行い、その後、スリット加工した刃物用鋼帯を連続焼鈍炉中を通板させて500〜630℃の温度域の非酸化性ガス雰囲気中で歪取り焼鈍を行う刃物用帯鋼の製造方法である。
【選択図】 図1
Description
しかしながら、化学組成の調整のみでは、解決しきれない問題がある。具体的には、実際に剃刀等の刃物とする場合においては、例えば、剃刀形状に打抜き加工を施した場合、刃物用帯鋼に残留する応力によって、打抜き加工を施した半製品の形状が変形するといった問題がある。特に、この問題は厚さが0.15mm以下の薄い刃物用帯鋼で顕著となる。
また、半製品の形状の変形を抑制するには、製品幅にスリットした後の工程であって、製品幅にスリットした後の刃物用帯鋼については、何等対策がなされていないのが現状である。
本発明の目的は、製品幅にスリットした後の刃物用帯鋼に残留する応力を緩和し、加工を施した半製品の形状変形を抑制することができる刃物用帯鋼の製造方法を提供する。
すなわち本発明は、刃物用鋼帯の製造方法において、仕上冷間圧延を行なって厚さを0.15mm以下とした仕上冷間圧延材に対して条取りスリット加工を行い、その後、スリット加工した刃物用鋼帯を連続焼鈍炉中を通板させて500〜700℃の温度域の非酸化性ガス雰囲気中で歪取り焼鈍を行って、ビッカース硬さで280〜340とする刃物用帯鋼の製造方法である。
好ましくは、歪取り焼鈍の温度が550〜650℃であり、歪取り焼鈍後の硬さをビッカース硬さで290〜320とする刃物用帯鋼の製造方法である。
好ましくは、上記の歪取り焼鈍の非酸化性雰囲気は、AXガス、NXガス、Arガス、窒素ガスの何れかである刃物用帯鋼の製造方法である。
更に好ましくは、条取りスリット加工は、円形上刃カッターと円形下刃カッターとの協働により行い、それぞれのカッター径は仕上冷間圧延材の板厚に対して1000倍以上の直径を有する刃物用帯鋼の製造方法である。
更に好ましくは、連続焼鈍炉中を通板する刃物用鋼帯の炉内張力を150N/mm2以下の範囲とする刃物用帯鋼の製造方法である。
中でも特に、製品幅に条取りスリット後の最適な歪取り焼鈍条件が重要となる。以下に詳しく本発明を説明する。
本発明では、仕上冷間圧延を行なって厚さを0.15mm以下とした仕上冷間圧延材を条取りスリット加工を行う。本発明では、製品厚さ、製品幅に調整した刃物用帯鋼の素材を対象とする。これは、半製品の形状変形の最大要因が条取りスリット加工時に発生する残留歪にあるためである。
次に、上記のスリット加工した刃物用鋼帯を、連続焼鈍炉中を通板させて500〜700℃の温度域の非酸化性ガス雰囲気中で歪取り焼鈍を行う。
本発明で、連続焼鈍炉を用いるのは、単に生産性を考慮しただけのものではなく、連続焼鈍炉を用いることで連続焼鈍炉中を通板する刃物用鋼帯に張力を加えられるためである。この張力を例えば炉内張力で150N/mm2以下の範囲とすると、後述する加熱条件との相乗効果により確実に残留歪を除去することができる。
これは、スリットした歪がスリットエッジに集中していることから、エッジ部分とその周辺に残留する歪を除去するのに最適な温度であるからである。歪取り焼鈍温度が500℃未満である場合、スリットしたエッジに残留する歪の除去が不十分となって半製品に加工したときに変形してしまう。そのため、歪取り焼鈍温度の下限を500℃とした。好ましい下限は550℃、より確実な下限は575℃である。
一方で歪取り焼鈍温度が700℃を超えると、刃物用帯鋼の軟化が著しくなる。特にスリットしたエッジ部分は、製品の刃に加工されるため、エッジ部分が過度に加熱されて硬さが低下するのは打抜き加工時にダレが発生し、好ましくない。また、例えば、刃物用帯鋼中に微細分散する炭化物が成長したりして、炭化物の形態が変化する危険性もある。そのため、スリットしたエッジに残留する歪を除去でき、且つ、硬さの低下や炭化物の形態の変化を抑制するための上限温度として、700℃とした。
但し、上限温度の700℃近傍であると、歪取り焼鈍時間が十数秒長くなることで、刃物用帯鋼の軟化が顕著になる。そのため、好ましい上限の温度は650℃が良い。更に好ましい上限は610℃である。
なお、歪取り焼鈍の時間は15秒〜120秒程度で十分である。好ましくは、15〜60秒である。後述の実施例で詳しく述べるが、60秒と120秒の歪取り焼鈍後の硬さ、変形量を対比しても、大きな違いは見られない。そのため、経済性を考慮すると、15〜60秒の時間が好適である。
そのため、歪取り焼鈍後の硬さがビッカース硬さで280〜340とした。好ましくは、290〜320の範囲であり、この範囲であれば、打抜き加工時のダレの発生を、更に確実に抑制できる。
そのため、本発明では、75Vol%水素と25Vol%窒素との混合ガスのAXガスや、窒素を主成分としたNXガス、Arガス、窒素ガスを用いるのが良い。
また、本発明では、上述の条取りスリット加工は、円形上刃カッターと円形下刃カッターとの協働により行い、それぞれのカッター径は仕上冷間圧延材の板厚に対して1000倍以上の直径を有するものを用いるのが良い。
これは、カッター径を大きくするとスリット時の刃物用帯鋼スリットエッジ部への歪を軽減でき、上述した歪取り焼鈍の効果をより確実に発揮できるためである。
以上述べた本発明によれば、スリットエッジに集中した歪を確実に除去できることから、スリットした条の両方のスリット面に刃先を形成する刃物の用途に好適である。
例えば、0.3〜1.5%のC、10〜18%のCr、1%以下のSi、1.5%以下のMnを必須として含有し、必要に応じて3%以下のMoを含有するFe基の合金である。
大気溶解で作成したマルテンサイト系ステンレス鋼の鋼塊を作製し、鍛造、熱間圧延を行い、焼鈍と冷間圧延を繰返して、仕上冷間圧延を行い、厚さ0.1mmの刃物用鋼帯を作製した。化学組成を表1に示す。
次に、スリット加工した刃物用鋼帯を連続焼鈍炉中に通板させて500〜750℃の温度にて、非酸化性ガス雰囲気中(AXガス)で歪取り焼鈍を行った。この時、炉内張力は100N/mm2とし、歪取り焼鈍の時間は15〜120秒とした。
また、700℃で歪取り焼鈍を行なったものは、30秒の歪取り焼鈍でビッカース硬さが280未満に低下したことから、歪取り焼鈍の上限温度は700℃であるものの、処理時間の調整は若干注意が必要であることが分る。
また、本発明の好ましい温度範囲である550〜650℃のものでは、15〜60秒の処理時間でビッカース硬さ及び変形量が安定して抑制されていることが分る。この550〜650℃のものでは、処理時間を120秒としても硬さの変化が殆ど無いか、或いは、硬さが280程度まで低下する結果となったことから、歪取り焼鈍の処理時間は15〜60秒の間が最適であることが分る。
また、歪取り焼鈍前後の硬さの変化も殆どなく、歪取り焼鈍が製品幅にスリットした後の刃物用帯鋼に残留する応力を緩和できていることも分かる。
Claims (5)
- 刃物用鋼帯の製造方法において、仕上冷間圧延を行なって厚さを0.15mm以下とした仕上冷間圧延材に対して条取りスリット加工を行い、その後、スリット加工した刃物用鋼帯を連続焼鈍炉中に通板させて500〜700℃の温度域の非酸化性ガス雰囲気中で歪取り焼鈍を行って、ビッカース硬さで280〜340とすることを特徴とする刃物用帯鋼の製造方法。
- 歪取り焼鈍の温度が550〜650℃であり、歪取り焼鈍後の硬さをビッカース硬さで290〜320とすることを特徴とする請求項1に記載の刃物用帯鋼の製造方法。
- 歪取り焼鈍の非酸化性雰囲気は、AXガス、NXガス、Arガス、窒素ガスの何れかであることを特徴とする請求項1または2に記載の刃物用帯鋼の製造方法。
- 条取りスリット加工は、円形上刃カッターと円形下刃カッターとの協働により行い、それぞれのカッター径は仕上冷間圧延材の板厚に対して1000倍以上の直径を有することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の刃物用帯鋼の製造方法。
- 連続焼鈍炉中を通板する刃物用鋼帯の炉内張力を150N/mm2以下の範囲とすることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の刃物用帯鋼の製造方法。
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