JP6325869B2 - 熱処理用鋼板の製造方法 - Google Patents
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Description
また、他の方法として、特許文献6には、表面に凹凸をつけたワークロールを用いることによって、熱間圧延された鋼板(以下、「熱延鋼板」と略す。)のスケール密着性を向上させる方法が提案されている。
さらに、他の方法として、鋼板のSi含有量を高めることにより、熱処理時の加熱によるFe3O4からFeOへの変態を抑制する方法が提案されている。
しかしながら、これらの方法で得られる熱延鋼板は、熱処理を行うと様々な問題が生じるため、熱処理用鋼板として使用することができない。例えば、これらの方法で得られる熱延鋼板は、熱処理時の加熱によって表面脱炭が生じたり、酸化スケールが厚くなることによって部分的な剥離が生じたりすることから、押込み疵が発生する。また、酸洗して使用する場合であっても、熱延鋼板自体の酸化スケールの密着性が高いことから、酸洗効率が低下すると共に、酸化スケールの密着性が良いFe3O4が除去されるために熱処理時の酸化スケールの密着性が確保されない。
さらに、特許文献7の方法のように、鋼板のSi含有量を高めると、熱延鋼板の表面に酸化スケールが付着しているため、中〜高炭素鋼板の場合には、熱処理時にスケール中の酸素による表面脱炭が生じる。その結果、焼入れ不足が発生し、必要な熱処理特性が得られないことがある。また、熱処理温度が950℃以上になると、Siによる変態抑制効果が希薄になり、生成スケールがFeOになって剥離することもある。
すなわち、本発明は、C:0.3〜1.2質量%、Si:0.1〜1.8質量%、Mn:0.3〜2.0質量%、Cr:2質量%以下、Ni:2質量%以下、Mo:0.2質量%以下、V:0.2質量%以下、Cu:0.3質量%以下を含み、残部がFe及び不可避不純物からなる組成を有する鋼帯を熱間圧延して酸洗した後、150N/mm2以上の単位張力で冷間圧延し、平均クラック開口幅を1μm以上にすることを特徴とする熱処理用鋼板の製造方法である。
まず、本発明の熱処理用鋼板の製造方法に用いられる鋼帯の組成について説明する。
熱間圧延される鋼帯は、C、Si及びMnを必須成分、Cr、Ni、Mo、V及びCuを任意成分として含み、残部がFe及び不可避不純物からなる組成を有する。
Cは、熱処理製品に強度を付与する合金元素である。Cの含有量は、熱処理製品の強度を確保する観点から、0.3質量%以上、好ましくは0.4質量%以上である。一方、Cの含有量が1.2質量%を超えると、セメンタイトの析出を抑えるために熱処理温度を下げることが必要となる。この場合、熱処理時に酸化スケールの生成が抑えられるので本発明を用いる必要がない。通常、焼入れ焼戻し等の熱処理に使用される材料としては中〜高炭素鋼が一般的であり、そのCの含有量は0.4〜1.0質量%の範囲にある。このような中〜高炭素鋼に対して本発明が顕著な効果を発揮する。
Siは、Mnと共に粒界酸化層を得るのに適した合金元素である。Siの含有量が1.8質量%を超えると、鋼板の表面肌が劣化する。一方、Siの含有量が0.1質量%未満であると、粒界酸化層が十分に形成されない。
Mnは、Siと同様に粒界酸化層を得るのに適した合金元素である。Mnの含有量が2.0質量%を超えると、焼き割れが発生し易くなる。一方、Mnの含有量が0.3質量%未満であると、焼入れ不足が生じ易くなる。
Crは、粒界酸化を促進させて地鉄界面に凹凸を生成し易くする合金元素である。Crを含有させることにより、酸化スケールの密着性が向上し、熱処理時の酸化スケールの剥離を防止する効果が高くなる。Crの含有量が1重量%を超えると、Crによる効果がほぼ飽和する。また、Crの含有量が2質量%を超えると、経済的でない上、靭性が低下してしまう。そのため、Crの含有量は、2質量%以下、好ましくは0質量%超過1質量%である。
Niもまた、地鉄界面に凹凸を生成し易くする合金元素である。Niは、熱間圧延中の二次酸化によって地鉄界面に濃化する傾向を示し、濃化部分が凸状に残り、地鉄界面がミクロ的に凹凸形状になる。そのため、Ni添加量に応じて巻取り温度を低くしても、地鉄界面に凹凸を形成することが可能になる。Niの含有量が2質量%を超えると、経済的でない上、靭性及び延性が低下してしまう。そのため、Niの含有量は、2質量%以下、好ましくは0質量%超過1質量%以下である。
Cuは、熱処理時の酸化スケールの成長を抑制する合金元素である。また、Cuは、粒界に偏析し易く、クラック生成にも有効である。ただし、Cuは、高価であるため、多量に含有させるとコストアップにつながる。そのため、Cuの含有量は、0.3質量%以下、好ましくは0質量%超過0.3質量%以下である。
Mo及びVは、炭化物による結晶粒径の微粒化、及び特殊鋼には必要不可欠の焼戻し軟化抵抗を得るのに有効な合金元素である。ただし、Mo及びVは、高価であるため、多量に含有させるとコストアップにつながる。そのため、Mo及びVの含有量は、0.2質量%以下、好ましくは0質量%超過0.2質量%以下である。
本発明では、上記の組成を有する鋼帯を熱間圧延して酸洗した後、所定の単位張力で冷間圧延する。
熱間圧延の方法としては、特に限定されず、当該技術分野において公知の方法を用いることができる。
ホットコイルは、酸洗して脱スケールが行われる。酸洗方法としては、特に限定されず、当該技術分野において公知の方法を用いることができる。
上記のように大きな単位張力で冷間圧延を行なうことにより、網目状の粒界から圧延方向に開口したクラックが形成される。そして、このように開口したクラックの存在により、熱処理時の酸化スケールの耐剥離性が向上する。なお、鋼板の硬さ伸び、断面積になどに依存するが、特に200N/mm2以上の単位張力で冷間圧延を行なうことにより、熱処理時の酸化スケールの耐剥離性を安定して高めることができる。一方、一般的な冷間圧延の場合のように、単位張力が150N/mm2未満であると、所望のクラックが形成されず、熱処理時の酸化スケールの耐剥離性が向上しない。
焼鈍及びスキンパス圧延の方法としては、特に限定されず、当該技術分野において公知の方法を用いることができる。
また、冷間圧延を再度行う場合、所望のアンカー効果を得る観点から、上記条件と同様にして行うことが好ましい。
表1に示す組成を有する鋼種A〜Cの鋼帯を幅850mm×板厚3.5mmに熱間圧延した後、550〜600℃の巻取り温度で巻取ってホットコイルとした。次に、ホットコイルから巻出した熱延板を90℃の塩酸に2分間浸漬させて酸洗した後、(1)冷間圧延−焼鈍−スキンパス圧延又は(2)冷間圧延−焼鈍−冷間圧延−焼鈍−スキンパス圧延のいずれかを施して板厚2.4mmの冷延板(熱処理用鋼板)を作製した。
冷間圧延は、トータル圧延率を31.4%とし、表2に示す単位張力で行った。なお、(2)において2つの冷間圧延の条件は同じにした。
焼鈍は、窒素雰囲気中、680℃で20時間加熱することで行った。なお、(2)において2つの焼鈍の条件は同じにした。
スキンパス圧延は、圧延率を1.5として行った。
ここで、平均クラック開口幅は、熱処理用鋼板の表面(250μm×250μm)を電子顕微鏡写真で観察し、圧延方向に開口したクラック(100個以上)の幅を測定し、その平均をとることで算出した。その結果を表2に示す。
熱処理後の鋼板における酸化スケールの剥離性をテープ剥離試験で評価した。テープ剥離試験では、テープとしてニチバン製セロテープ(登録商標)(幅15mm、型番CT405AP−15)を用い、このテープを熱処理後の鋼板に貼り付けた。ここで、テープの貼り付け方向は、熱処理後の鋼板の長さ方向と平行にした。次に、テープを剥がした後、テープ中央部(幅15mm×長さ50mm)において、倍率200倍で画像解析装置を用いて剥離面積を算出した。剥離面積の結果は、3つの試験片における剥離面積の結果を平均して定量化した。
なお、実際の熱処理では、酸化スケールの剥離面積の割合が5%未満であれば、酸化スケールの耐剥離性が良好であると認められるため、4点以上を合格基準とした。
テープ剥離試験の評価結果を表2に示す。
図2に示されるように、テープ剥離試験の評価点を4以上とするためには、平均クラック開口幅を1μm以上にする必要がある。そして、平均クラック開口幅を1μm以上にするためには、冷間圧延時の単位張力が150N/mm2以上に設定する必要がある。
Claims (1)
- C:0.3〜1.2質量%、Si:0.1〜1.8質量%、Mn:0.3〜2.0質量%、Cr:2質量%以下、Ni:2質量%以下、Mo:0.2質量%以下、V:0.2質量%以下、Cu:0.3質量%以下を含み、残部がFe及び不可避不純物からなる組成を有する鋼帯を熱間圧延して酸洗した後、150N/mm2以上の単位張力で冷間圧延し、平均クラック開口幅を1μm以上にすることを特徴とする熱処理用鋼板の製造方法。
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