JP2016060955A - 熱延鋼板及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の熱延鋼板は、所定の化学成分を有すると共に、鋼板の板幅方向両端からそれぞれ100mmまでの各領域におけるスケール厚さが、鋼板の板幅方向中央部のスケール厚さに対して、3%以上40%以下厚く、鋼板の板幅方向両端からそれぞれ100mmまでの各領域におけるスケールの組成が、Fe:5体積%以上25体積%以下、(Fe,Mn)O:0体積%以上5.0体積%以下、およびFe2O3:0体積%以上5体積%以下を満足する。
【選択図】なし
Description
鋼板両端部のスケール厚さは、特に熱延鋼板全体の良好な表面外観を得るために重要である。本発明では、鋼板両端部のスケール厚さを、鋼板中央部のスケール厚さに対して3%以上40%以下厚くする。このように鋼板両端部のスケール厚さを鋼板中央部のスケール厚さとの関係で規定したのは、所望とする効果を発揮し得る鋼板両端部の好ましいスケール厚さは、鋼板の板厚に大きく依存し、絶対値で規定することが困難なためである。後記する実施例で実証したとおり、鋼板中央部のスケール厚さに対して、鋼板両端部のスケール厚さが3%未満であっても、或いは40%を超えても、いずれの場合であっても、色むらが生じて熱延鋼板全体の表面外観が損なわれ、良好な外観が得られない。鋼板両端部のスケール厚さの好ましい下限は、鋼板中央部のスケール厚さに対して10%以上であり、より好ましくは15%以上である。一方、鋼板両端部のスケール厚さの好ましい上限は、鋼板中央部のスケール厚さに対して35%以下であり、より好ましくは30%以下である。
鋼板両端部のスケール組成は、特に鋼板両端部のスケール剥離を防止して、良好なスケール密着性を確保するために重要である。
上述したとおり、スケール中の金属Feはスケール密着性向上に寄与するため、鋼板両端部のスケール内のFe量も5体積%以上とする。上記Fe量が5体積%未満になると、スケール密着性が低下する。上記Fe量の好ましい下限は8体積%以上であり、より好ましくは10体積%以上である。一方、上記Fe量が多くなり過ぎると、スケール密着性向上に最も有用なマグネタイトの量が低下するため、上記Fe量の上限は、25体積%以下とする。上記Fe量の好ましい上限は24体積%以下であり、より好ましくは23体積%以下である。
上述したとおり、スケール中の(Fe,Mn)Oはスケール密着性を低下させる酸化物であり、その上限を5.0体積%以下とする。上記Fe量の好ましい上限は3体積%以下であり、より好ましくは2体積%以下であり、最も好ましくは0体積%である。
上述したとおり、スケール中のFe2O3はスケール密着性を低下させる酸化物であり、その上限を5体積%以下とする。上記Fe2O3量の好ましい上限は2体積%以下であり、より好ましくは1体積%以下であり、最も好ましくは0体積%である。
Cは、強度を高めるために必要な元素であり、そのためにC量の下限を0.04%以上とする。C量の下限は、好ましくは0.05%以上、より好ましくは0.06%以上である。しかしながら、C量が過剰になると冷間加工性が低下するようになるため、C量の上限を0.5%以下とする。C量の上限は、好ましくは0.4%以下、より好ましくは0.3%以下である。
Mnは、強度および靭性を確保するために重要な元素であり、そのためにMn量の下限を0.1%以上とする。Mn量の下限は、好ましくは0.2%以上、より好ましくは0.3%以上である。しかしながら、Mn量が過剰になると延性を損なうため、Mn量の上限を2%以下とする。Mn量の上限は、好ましくは1.9%以下、より好ましくは1.8%以下である。
Pは不可避的に含まれる元素である。Pは延性の劣化とめっき密着性の悪化を招くため、P量の上限は0.03%以下とする。P量の上限は、好ましくは0.02%以下である。なお、Pは鋼中に不可避的に含まれる不純物であり、その量を0%にすることは工業生産上不可能である。
Sは不可避的に含まれる元素である。SがMnと結合した硫化物系介在物MnSは、鋼材の熱間圧延時に偏析して熱延鋼板を脆化させるため、S量の上限を0.03%以下とする。S量の上限は、好ましくは0.02%以下である。なお、Sは鋼中に不可避的に含まれる不純物であり、その量を0%にすることは工業生産上不可能である。
Alは、脱酸作用を有すると共に、熱間圧延の加熱の際にオーステナイト結晶粒の粗大化防止に寄与する元素である。このような効果を有効に発揮させるために、Alを0%超、好ましくは0.01%以上とする。しかしながら、Alを過剰に添加しても上記効果が飽和するだけであり、むしろ結晶粒が不安定になるため、Al量の上限を0.1%以下とする。Al量の上限は、好ましくは0.05%以下である。
これらの元素はいずれも、強度向上に有効な元素である。これらの元素は、夫々単独で、または適宜組み合わせて含有させても良い。
Siは、強度を高めつつ、延性や加工性を確保することができる元素である。このような効果を有効に発揮させるため、Si量を、好ましくは0%超、より好ましくは0.01%以上とする。しかしながら、Si量が過剰になると溶接性、延性を損なうため、Si量の上限を、好ましくは1%以下、より好ましくは0.9%以下とする。
Crは、強度向上に寄与する元素であり、そのためにCr量の下限を、好ましくは0%超、より好ましくは0.01%以上とする。しかしながら、Cr量が過剰になると延性が損なわれるため、Cr量の上限を、好ましくは2%以下、より好ましくは1.9%以下とする。
Tiは、強度向上に寄与する元素であり、そのためにTi量の下限を、好ましくは0%超、より好ましくは0.01%以上とする。しかしながら、Tiが過剰になると靭性が低下するため、Ti量の上限を、好ましくは0.1%以下、より好ましくは0.05%以下とする。
Niは、焼き入れ性を向上させる元素であり、成形加工性が高められる。そのためにNi量の下限を、好ましくは0%超、より好ましくは0.1%以上、さらに好ましくは0.2%以上とする。しかしながら、Niは高価な元素であるため、製造コストの観点から、Ni量の上限を、好ましくは2%以下、より好ましくは1.5%以下、更に好ましくは1.0%以下とする。
CuもNiと同様、焼き入れ性を向上させる元素であり、成形加工性が高められる。そのためにCu量の下限を、好ましくは0%超、より好ましくは0.1%以上、さらに好ましくは0.2%以上とする。しかしながら、Cuは高価な元素であるため、製造コストの観点から、Cu量の上限を、好ましくは2%以下、より好ましくは1.5%以下、さらに好ましくは1.0%以下とする。
Moは、めっき性を阻害することなしに固溶強化の向上に寄与する元素である。また、Ni、Cuと同様、焼き入れ性向上元素であり、種々の成形加工性が高められる。そのために、Mo量の下限を、好ましくは0%超、より好ましくは0.1%以上、さらに好ましくは0.2%以上添加する。しかしながら、Moは高価な元素であるため、製造コストの観点から、Mo量の上限を、好ましくは2%以下、より好ましくは1.5%以下、さらに好ましくは1.0%以下とする。
Bは焼き入れ性の向上に寄与する元素である。そのために、B量の下限を、好ましくは0%超、より好ましくは0.0001%以上、さらに好ましくは0.0002%以上とする。しかしながら、Bを過剰添加するとめっき性が劣化するため、B量の上限を、好ましくは0.01%以下、より好ましくは0.005%以下、さらに好ましくは0.001%以下とする
Nbは、微量の添加で微細組織を得ることができ、靭性を損なわずに高強度が得られる元素である。そのため、Nb量の下限は、好ましくは0%超、より好ましくは0.001%以上、さらに好ましくは0.005%以上とする。しかしながら、Nbの過剰添加により炭化物が多量に生成し、マルテンサイトの体積率が減少またはその析出強化により強度と加工性のバランスが劣化する。そのため、Nb量の上限は、好ましくは1%以下、より好ましくは0.5%以下、さらに好ましくは0.1%以下とする。
VもNbと同様、炭化物生成元素であり、強度向上に寄与する。そのため、V量の下限は、好ましくは0%超、より好ましくは0.001%以上、さらに好ましくは0.005%以上とする。しかしながら、Vの過剰添加は、コスト高の原因となるだけでなく、降伏点を上昇させて加工性を低下させるため、V量の上限は、好ましくは1%以下、より好ましくは0.5%以下、さらに好ましくは0.1%以下とする。
Wは、析出物強化、フェライト結晶粒の成長抑制による細粒強化および再結晶の抑制による転移強化により、強度上昇に寄与する。そのために、W量の下限は、好ましくは0%超、より好ましくは0.001%以上、さらに好ましくは0.005%以上とする。しかしながら、Wの過剰添加は炭窒化物の析出を過剰にし、成形性の劣化を招くため、W量の上限を、好ましくは0.3%、より好ましくは0.2%以下、さらに好ましくは0.1%以下とする。
これらの元素は脱酸に用いられる元素であり、夫々単独でまたは適宜組み合わせて含有させても良い。このような効果を発揮させるために、Ca量、Mg量、およびREM量の下限は、夫々、好ましくは0%超、より好ましくは0.002%以上、さらに好ましくは0.003%以上とする。しかしながら、上記元素の過剰添加は、成形性を劣化させる。そのために、Ca量、Mg量、およびREM量の上限は、夫々、好ましくは0.03%以下、より好ましくは0.02%以下、さらに好ましくは0.01%以下とする。
・鋼板中央部の巻取温度:610℃以下
・鋼板両端部の巻取温度:420℃以上610℃以下、且つ、下式(1)を満足する。式(1)中、Tは鋼板両端部の巻取温度(℃)、[Mn]は熱延鋼板のMn量(質量%)である。
各熱延鋼板の両端部および中央部に生成するスケール厚さを測定するため、それぞれの位置から、サイズが20mm角の試料を切り出して断面を研摩した。この研摩面を、走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)の反射電子像を用いて観察し、スケール厚さを画像解析して求めた。
鋼板両端部のスケール中のFe2O3量、および(Fe,Mn)O量は、鋼板両端部のスケール厚さを測定するために用いた上記試料を用い、X線回折(XRD:X‐ray diffraction)法により測定した各酸化物のピーク強度比から定量分析して求めた。また、鋼板両端部のスケール中のFe量は、鋼板両端部のスケール厚さを測定するために用いた上記試料を用いて得られた上記SEMの反射電子像を画像解析して求めた。
各熱延鋼板全体の外観を目視で観察し、下記基準で評価した。
○:色むら無
×:色むら有
熱延鋼板の板厚1/4部位からJIS Z2201に規定の14号試験片(平行部径は10mm)を用い、JIS Z2241で規定の「金属材料引張試験方法」に基づいて引張強度TS(Tension Strength)、降伏点YP(Yield Point)、伸びEl(Elongation)を測定した。引張試験時の試験速度は0.5mm/秒とした。そして、鋼クラスに応じた機械的特性を満足した場合を○、鋼クラスに応じた機械的特性を満足しなかった場合を×とした。
スケール密着性は、各熱延鋼板の両端部のうち一方の端部から、曲げ試験片(幅70mm、長さ200mm)を切り出し、曲げ内側の半径20mmで、90°曲げを行うことにより、曲げ加工を行い、その後テープ剥離試験を実施した。テープ剥離試験は、曲げ加工外周部にセロハンテープを貼り付けた後、テープをはがし、鋼板から剥離したスケールの剥離面積率を算出して下記基準でスケール密着性を評価した。ここで「スケール剥離面積率」とは、曲げ試験片のテープを貼り付けた部分に相当する鋼板の全表面積に対する、剥離したスケールの面積を意味する。本発明では、不合格以外の可・良・優を合格とした。
不合格:スケール剥離面積率80%以上
可:スケール剥離面積率50%以上80%未満
良:スケール剥離面積率20%以上50%未満
優:スケール剥離面積率20%未満
Claims (4)
- 質量%で、
C :0.04%以上0.5%以下、
Mn:0.1%以上2%以下、
P :0%超0.03%以下、
S :0%超0.03%以下、および
Al:0%超0.1%以下を含有し、
残部が鉄および不可避的不純物である熱延鋼板であって、
前記鋼板の板幅方向両端からそれぞれ100mmまでの各領域におけるスケール厚さが、前記鋼板の板幅方向中央部のスケール厚さに対して、3%以上40%以下厚く、
前記鋼板の板幅方向両端からそれぞれ100mmまでの各領域におけるスケールの組成が、
Fe:5体積%以上25体積%以下、
(Fe,Mn)O:0体積%以上5.0体積%以下、および
Fe2O3:0体積%以上5体積%以下
を満足することを特徴とする熱延鋼板。 - 更に、質量%で、
Si:0%超1%以下、Cr:0%超2%以下、Ti:0%超0.1%以下、Ni:0%超2%以下、Cu:0%超2%以下、Mo:0%超2%以下、B:0%超0.01%以下、Nb:0%超1%以下、V:0%超1%以下、およびW:0%超0.3%以下よりなる群から選択される少なくとも1種を含むものである請求項1に記載の熱延鋼板。 - 更に、質量%で、
Ca:0%超0.03%以下、Mg:0%超0.03%以下、およびREM:0%超0.03%以下よりなる群から選択される少なくとも1種を含むものである請求項1または2に記載の熱延鋼板。
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