JP2008302395A - 熱延鋼板の酸洗性向上方法 - Google Patents

熱延鋼板の酸洗性向上方法 Download PDF

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Abstract

【課題】熱間圧延後の鋼板を酸に浸漬して鋼板表面のスケールを除去する酸洗工程において、熱延鋼板表層のスケールを改質させることにより酸洗性を向上させる簡便な熱延鋼板の酸洗方法を提供する。
【解決手段】熱間圧延後の鋼板Iを酸洗して鋼板表面のスケールを除去する工程において、熱間圧延後の鋼板Iを酸に浸漬する前に、鋼板表面のスケールの最表層にレーザビームを照射して、スケールの表面温度が1000℃以上かつ母材と該スケールの界面の温度が1500℃以下となるように加熱し、スケール中におけるウスタイトの組成比率を増加させる。また、熱延鋼板Iの板幅方向についてセンター部よりもエッジ部における鋼板表面のスケールの表面温度を高くする。さらに、レーザビームの照射によってスケール表面を加熱する前または後に、スケールに機械的な作用を与える。
【選択図】図1

Description

本発明は、鋼材表層を加熱しスケールを改質することによって、鋼材の酸洗性を向上させるのに好適な技術に関する。
種々の鉄鋼製品を作るプロセスの中で用いられる酸洗は、鋼材表層に付いた鉄の酸化物(以下、スケールと呼称する)を塩酸や硫酸等の酸液に浸すことで除去する工程である。この工程の能力を向上させるために酸洗性を向上させる方法に関しては、従来から種々の提案が為されてきた。
まず、スケールへの微細亀裂の付与やスケールを母材から浮かせるなど、機械的な作用を与えて、スケールと母材の界面への酸液の浸透を速くすることによって酸洗速度を上げる方法である。この代表的なものがテンションレベラーである。これは特許文献1に開示されているように、張力が掛かりながら通板される板に、上下に千鳥状に配置されたロールにより繰り返し曲げ応力を印加して、スケールに亀裂を生じさせる装置である。
機械的作用を与える手段として、レーザを用いる方法も提案されている。特許文献2には、レーザビームの照射によってスケールが加熱される過程で発生する酸素ガスの膨張を利用してスケールに亀裂を与える方法が開示されている。また、特許文献3には、レーザビームの照射による局部加熱に伴って発生する熱膨張・収縮を利用し、スケールを母材から浮かせる方法が開示されている。また特許文献4には、レーザ照射によるミシン目状の亀裂付与とテンションレベラーを組み合わせた亀裂導入方法が開示されている。
また、スケールに機械的作用を与える以外の方法として、板を300℃程度まで加熱した状態で酸液に浸透させることで、核沸騰状態を実現することにより酸洗速度を向上させる方法が特許文献5に開示されている。
さらにまた、新しい方法として、スケールを改質させるアプローチで酸洗能力を向上する方法が特許文献6に開示された。以下この発明の方法について述べる。
熱間圧延された直後の熱延鋼板には、表層よりFe(ヘマタイト)、Fe(マグネタイト)、FeO(ウスタイト)の3層構造となっているが、熱延後の鋼板温度が570℃以下になるとウスタイトは不安定となり4FeO→Fe+Feの共析変態が進み、マグネタイト中に鉄粒子が析出したスケール構造となる。また、ヘマタイト、マグネタイト、ウスタイトを塩酸液中に浸漬した場合の溶解速度は、ウスタイト≫マグネタイト>ヘマタイトの順位であり、スケール組成でウスタイトが占める比率が大きいほど、塩酸による酸洗時間が短くなることが知られている。熱間圧延後の鋼板を酸洗する前に、スケールの温度を700℃以上に加熱すると数秒で上述の共析変態の逆変態が生じ、マグネタイトがウスタイトに変わる。特許文献6に示された方法はこのウスタイトの生成を利用するものであり、加熱・保温する雰囲気の露点を20℃以下とする条件下で、酸洗時間が20%程度短縮されることが示された。
特開昭49−58027号公報 特許2627187号公報 特開昭61−95718号公報 特許3406175号公報 特開平09−3673号公報 特開2006−224120号公報
特許文献6に開示された方法は、露点20℃以下の雰囲気が必要である。これは、露点が20℃以上の酸化雰囲気では、加熱もしくは保温時にスケールと母材との境界付近に析出する鋼中成分が分散され密着度が強固となってスケールが剥離しにくくなるからである。しかしながら、この雰囲気制御のために加熱・保温のための設備が大掛かりになるという問題があった。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、従来よりも小型な設備を用いて熱延鋼板の酸洗性を向上させることが可能な技術を提供することをその目的とする。
本発明の熱延鋼板の酸洗性向上方法は、熱間圧延後の鋼板を酸洗して鋼板表面のスケールを除去する工程における熱延鋼板の酸洗性を向上させる熱延鋼板の酸洗性向上方法であって、前記熱間圧延後の鋼板を酸に浸漬する前に、前記スケールの最表層にレーザビームを照射して、該スケールの表面を1000℃以上かつ母材と該スケールの界面の温度が1500℃以下となるように加熱することにより、該スケール中の組成におけるウスタイトの比率を増加させることを特徴とする。
また、上記酸洗性向上方法において、1本または複数本のレーザビームを用いて、レーザビームの空間強度分布が熱延鋼板の板幅方向全体に広がるようにし、該熱延鋼板を通板することによって、該熱延鋼板の全面にレーザビームを照射することを特徴とする。
また、上記酸洗性向上方法において、1本または複数本のレーザビームを熱延鋼板の板幅方向に走査し、該レーザビームの走査領域が鋼板の板幅方向全体に広がるようにし、該熱延鋼板を通板することによって、該熱延鋼板の全面にレーザビームを照射することを特徴とする。
また、上記酸洗性向上方法において、前記レーザビームの照射によってスケール表面を加熱する際に、前記熱延鋼板の板幅方向についてセンター部よりもエッジ部における鋼板表面のスケールの表面温度を高くすることを特徴とする。
さらに、上記酸洗性向上方法において、前記レーザビームの照射によってスケール表面を加熱する前または後に、スケールに機械的な作用を与えることを特徴とする。
本発明によれば、熱間圧延後の鋼板を酸洗する前に鋼板表面のスケールにレーザを照射し、かつスケールの表面温度を特定範囲にすることにより、熱延鋼板表層のスケールを改質させて酸洗性を向上させる効果がある。さらに、酸洗設備での酸洗処理時間が短縮されるため、設備の処理能力が上がる効果がある。また、本発明の方法に用いられる装置は小型にできるため既設設備への追加が可能であり、新規設備を立ち上げることなくして酸洗設備の能力向上が得られる。以上のように、本発明は産業上有用な効果を奏する。
本発明者らは、スケールを改質するための加熱方法を種々検討した結果、加熱時間が短時間であれば、空気などの酸化雰囲気でも上述したスケールと母材の密着性の増強が回避できるとの結論に至った。また、このための加熱源としてパワー密度を高くできるレーザを用いることが有効であること、さらに加熱処理のために適切な温度条件があることを見出した。すなわち本発明は、熱間圧延後の鋼板を酸洗する前に、前記スケールの最表層にレーザビームを照射して、該スケールの表面を1000℃以上かつ母材と該スケールの界面の温度が1500℃以下となるように加熱し、該スケール中の組成におけるウスタイトの比率を増加させることを特徴とする、熱延鋼板の酸洗方法である。
なお、上述の特許文献2〜4に記されている種々のレーザを利用する提案は、スケールの剥離やスケールへの亀裂付与を利用して、スケールと母材界面への酸液の浸透を速くし、酸洗性を向上させるものであり、本発明の主旨であるスケールの改質作用を利用する方法とは技術思想が異なるものであることを付記しておく。特許文献2の方法では、レーザビームを照射することでスケールを母材から瞬時に剥離する。また、特許文献3の方法では、レーザビームの照射による局部加熱によってスケールを母材から浮かせる。このようなスケールと母材の界面を剥離させる方法では、特許文献2の第1図に示されているように、スケール表面と界面の温度を共に、母材の沸点である3000K程度まで高めなければならない。
一方、スケールの全体もしくは一部をFeO(ウスタイト)に改質する本発明の方法では、スケール表面の温度を1000℃以上に加熱しさえすれば効果が得られる。この事実からも判るように、本発明はレーザエネルギーを効率的に利用した酸洗性向上方法である。また特許文献4に開示されたレーザ照射方法は、スケール表面にミシン目状に離散的な照射痕を付与することを特徴としており、スケール表面にレーザビームを連続的に照射する本発明の方法とは、照射方法が根本的に異なる。
本発明の本旨とするところをより詳らかとするため、以下、添付の図面に基づき詳細な説明を行なう。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
以下、図1〜図5に基づき本発明の第一の実施形態を説明する。図1に、本発明の第一の実施の形態に係る熱延鋼板の酸洗性向上方法を実施するのに適した酸洗性向上装置Mの配置構成の一例を示す。この酸洗性向上装置Mは、酸洗設備における酸洗槽10の前に、レーザ照射による加熱装置12が付いた構成になっている。なお、鋼板Iは略水平な通板方向X(図1中、左から右に向かう方向)に連続的に通板されるようになっている。このようにして連続的に通板される鋼板Iのスケール表層に、1本または複数本のレーザビームが連続的に照射され、該スケールが加熱されることで改質される。図1に示す場合には、鋼板Iの表裏両面に同時に処理できるように、表裏面両側に加熱装置12のレーザ照射装置15を配している。本発明の方法では、レーザ照射・加熱は空気中で行われる。レーザ照射点において酸化防止の目的で使うシールドガス等も不要であり、設備を簡単にできる。以下では複数本のレーザビームが照射される場合を取り上げて説明する。
レーザ集光光学系20の射出部は水平方向には固定されているが、鉛直方向には移動できるようになっている。この鉛直方向の移動によって、レーザ集光光学系20は、処理される板の厚みに応じて射出部からスケール表面上までの距離(以下、ワークディスタンスと呼称する)を変えることができる。また、板の上下方向の振動によりワークディスタンスが変化しないように、搬送ロール22を用いることが望ましい。なお、スケール表面についた汚れ等が原因となり、スパッタが上がってくることがある。これがレーザ集光光学系20の射出部に付着しないように、エアを横から吹いてやることが望ましい。図1に示す場合には、鋼板Iの表裏面両側に配置したエアノズル23を用いてエアを吹くようにしている。
図2に、レーザ照射装置15の第一の構成例を示す。図示しないレーザ発振装置から出て光ファイバ25を伝送されてきた複数のレーザビームL(図2中、左から順にレーザビームL1、レーザビームL2、レーザビームL3、・・・)が集光光学系20を通って鋼板Iのスケール表面に照射されるようになっている。複数のレーザビームLは、鋼板Iの板幅方向Yに沿って配置されている。また、各々のレーザビームLの空間強度分布の形状はスケール表面において鋼板Iの幅方向Yに長い形状となっている。図2中、鋼板表面のレーザビームLが照射されている領域を通るようにして板幅方向Yに平行な半直線ABが規定されている。この半直線AB上におけるレーザビームLの空間強度分布を図3に示す。図3では、横軸が鋼板Iの板幅方向Yにおける位置を示し、縦軸が各レーザビームLの各位置におけるパワー密度を示している。
図3に示すように、各々のレーザビームL(レーザビームL1、レーザビームL2、レーザビームL3、・・・)の空間強度分布は、鋼板Iの板幅方向Yにおいて端にあたる部分が、隣り合うレーザビームL同士で互いに重なりあうように配置されている。これにより、鋼板Iの板幅方向Yの全域に亘ってレーザビームLが照射されるようになっている。なお、図3に示す例では、複数のレーザビームLを用いて鋼板Iの板幅方向Yの全域を網羅する場合について説明したが、1本のレーザビームLで鋼板Iの板幅方向Yの全域を網羅するようにしてもよい。各々のレーザビームLは連続的に照射されるから、通板される鋼板Iのコイル長手方向(通板方向X)にも連続的に照射されるため、結局、鋼板Iの全面に照射できるようになっている。
図4に、レーザ照射装置15の第二の構成例を示す。パルスレーザを用いる点が図2に示すレーザ照射装置15の照射法と異なる。図4においても、図2に示す第1の構成例の場合と同様にして、半直線ABが規定されており、この半直線AB上における複数のレーザビームL(レーザビームL1、レーザビームL2、レーザビームL3、・・・)の空間強度分布は図3と同様に鋼板Iの板幅方向Yの全域に広がっている。このレーザ照射装置15では、レーザビームL1、レーザビームL2、レーザビームL3、・・・のそれぞれについて、パルスレーザスポットを鋼板Iの通板方向Xにほぼ隙間なく重ね合わせられる。このようにしてパルスレーザを用いた場合には、パワー密度が高い分、処理に必要となるレーザの平均パワーを下げることができる。
図5に、レーザ照射装置15の第三の構成例を示す。光ファイバ25を介してファイバ伝送されてきたそれぞれのレーザビームLは、ポリゴンミラー30(ビームスキャン照射装置30とも呼称する)で反射され、レーザ集光光学系20を構成するfθレンズ31を通過して集光され、鋼板Iのスケール表面に照射される。図5に示すように、レーザの走査方向は、鋼板Iの通板方向Xに対してほぼ直交し、鋼板Iの板幅方向Yに平行になっている。複数のレーザビームLを光ファイバ25で導光し、各レーザビームLが照射する領域を組合わせることにより、鋼板Iの板幅方向Yの全域に亘って照射する点は上述(図2に示す第1の構成例による照射装置15を用いた場合)の照射法と同様である。この方法を用いると、ポリゴンミラー30を高速に回転させることによって、レーザビームLを高速に走査することが可能であり、通板速度よりもビーム走査速度を大きくすることができるという利点がある。
図6に、レーザ照射装置15の第四の構成例を示す。図6に示すレーザ照射装置15の場合には、パルスレーザを用いる点が図5に示す第3の構成例によるレーザ照射装置15を用いた場合の照射法と異なる。スキャナには、図5の光学系と同じくポリゴンミラー30を用いている。パルスレーザスポットをほぼ隙間なく重ね合わせる処理である。パワー密度が高い分、処理に必要となるレーザの平均パワーを下げることができる。
本実施の形態では、レーザ照射によるスケール表面の最高到達温度は1000℃以上とする。これは、Fe+Fe→4FeOで示される逆変態を起こさせるためである。従来、この逆変態反応は580℃以上で起こることが知られているが、レーザ照射時のように加熱時間が短い場合はこれより高い温度が必要となる。本発明者らは、スケール表面の温度を瞬間的に1000℃以上に加熱すれば、1秒未満という非常に短い加熱時間でもFeO(ウスタイト)への逆変態が生じ、有意な酸洗速度向上効果が得られることを見出した。
ウスタイトの生成は、加熱量を大きくし、表面温度を上げるほど有利である。ここでスケールを溶融させるとさらに効果的である。これは、溶融によってFe(マグネタイト)とFe(マグネタイト中の鉄粒子)が完全に混じりあうため、逆変態によるFeO(ウスタイト)の生成速度が増加するためである。溶融温度はスケールの組成にも依存するが、1500℃程度である。
しかしながら、加熱量を大きくし過ぎると、母材の表層が溶融・再凝固により変形してしまい、酸洗後の外観不良や後工程において表面疵が発生する原因となる。したがって母材の表層が溶融・再凝固が回避されるように表面温度の上限が決まる。母材の融点は1500℃程度であるから、母材とスケールの界面の温度が1500℃以下となるようにレーザ照射条件を決める。
以上の温度条件が満たされる限り、本発明に用いるレーザ照射装置15がパルスか連続波であるか、また、波長、パワー、ビーム形状、ビームの走査速度、ビームの本数等のレーザ照射パラメータ条件は問わない。スケールの表面温度、また母材表面の温度は、スケールの表面におけるレーザ波長に依存するレーザ光の吸収率、スケールの組成、および、スケールの厚みによって異なる。スケールの厚みと吸収率が判れば、簡単な熱伝導計算プログラムを実行することによって、与えられたレーザパラメータの条件下でのスケール表面と母材表面の温度の概算が可能である。
スケール表面の温度は例えば放射温度計やCCDカメラシステムによってモニター可能である。図1に示す場合にはCCDカメラ40を用いたCCDカメラシステム41を付けている。温度測定結果をレーザパワーにフィードバックすれば、鋼種毎に異なる吸収率をリアルタイムで補償して、所定の温度範囲になるようレーザパワーを制御する操業が可能となる。
次に、本発明の第二の実施形態に係る酸洗性向上方法について説明する。本実施形態はエッジに近い部分のパワー密度を上げることに特徴がある。図2に示すレーザ照射装置15を用いた本実施形態の例を図7に示す。図7は、図3と同様に、図2中鋼板表面にある半直線AB上におけるレーザビームLの空間強度分布を示している。図3では、複数のレーザビームLが板幅方向Yに作る空間強度分布は平坦であるのに対し、図7に示す本発明の第二の実施形態では鋼板Iの板幅方向Yにおける両エッジの近くに配置されたレーザビームL1とレーザビームLNのパワー密度を上げている。通常は板端から100mm程度のエッジ部分のスケール厚みが大きく酸洗速度が遅いため、この部分の強度を大きくすることが効果的である。通常、エッジ部分のスケール厚みは他の部分と比較して20−80%程度大きい。このため、パワー密度はエッジ以外の部分と比較して20-80%程度大きくすることが効果的である。
以上の実施形態では、酸洗設備の中において酸洗槽10の前でスケールの表面にレーザビームを照射する例を説明してきたが、レーザ照射による加熱は必ずしも酸洗設備において行なわれる必要はなく、熱延鋼板の巻き取り後、酸洗設備において酸洗層に入るまでのタイミングであればどこで行なわれてもよい。例えば、熱延鋼板の矯正等を行なう精整工程にレーザ照射による加熱装置を取り付け、精整工程でレーザを照射した熱延鋼板を酸洗設備に搬送し酸洗すれば、上述したのと同様の酸洗性向上効果が得られる。
図8に本発明の第三の実施形態における酸洗性向上方法を実施するのに適した酸洗性向上装置Mの構成例を示す概念図を示す。この酸洗性向上装置Mは、酸洗設備における酸洗槽10の前(即ち、鋼板Iの通板方向Xにおける上流)に、レーザ照射装置15を利用した加熱装置12が付けられており、そのさらに前に、スケールへの微細亀裂の付与やスケールを母材から浮かせるなど、鋼板Iに機械的な作用を与える装置45が付けられた構成になっている。加熱装置12のレーザ照射装置15は上述した本発明の実施形態のいずれの構成であってもよい。機械歪を付与するための装置45としては、例えばテンションレベラー、ショットブラスト装置、伸び歪みを付与する圧延機を用いてよい。このように、従来から用いられている機械的な歪みを付与する装置45によって、母材界面との密着性を弱めたり、酸液が浸透しやすいように微細亀裂を導入したりする効果と、レーザビームの照射でウスタイトを増加させる効果を重畳させることで、さらなる酸洗速度の向上が得られる。もちろん、機械歪を付与する装置とレーザ照射による加熱装置の順序を入れ換えて、レーザビームの照射でウスタイトを増加させた後に、機械的な歪みを付与した後、酸に浸漬する方法でもよい。さらにまた、機械歪の付与とレーザの照射は、必ずしも酸洗設備において行なわれる必要はない。これらの一方または両方を、熱延鋼板の巻き取り後にある酸洗工程とは別の工程において行なってもよい。
以下、本発明の実施例について説明する。図8に示すように、酸洗設備における酸洗性向上装置Mのテンションレベラー45と酸洗槽10の間に、レーザ照射装置15を利用した加熱装置12を付けた。レーザ照射装置15は、図2に概略を示す装置を用いた。レーザ光としては、半導体レーザ(波長:808nm)を用いた。集光形状は0.5mm(通板方向)×100mm(板幅方向)とし、1000mm幅の鋼板Iに対し表面、裏面それぞれ10台ずつのレーザ照射装置15を配置し、鋼板Iの板幅方向Yの全域をカバーした。レーザ照射装置15の1台あたりのパワーは0〜10kWの範囲で変化させ、レーザビームは連続的に発振させた。以上のような条件下で、280MPa級の熱延鋼板(厚み6mm)を酸洗した結果が以下に示す第一の実施例、第二の実施例及び第三の実施例である。
<第一の実施例>
まず、第一の実施例として、テンションレベラー45において歪を与えることなく、熱延鋼板Iの板幅方向Yに対して、図3に示すようにレーザビームの強度を均一とした条件下でレーザを照射し酸洗した結果を図9に示す。レーザパワーを変化させることで、スケール表面の最高温度を変えた。図9の横軸であるスケールの最高温度は、CCDカメラシステムで測定した温度を示す。それぞれの温度に対して、酸洗ラインにおける鋼板Iの通板速度を変えながら、板幅方向Yの全体が酸洗されるまでに要する最短の浸漬時間(以下、酸洗時間と呼称する)を測定した。図9には、測定した最高温度と対応する酸洗時間の関係が分かるように菱形の記号をプロットした。また、オフラインにおいて同種の鋼板に同様のレーザ処理を行い、各温度に対して処理後スケール中のFeO(ウスタイト)の比率をX線回折法により求めた。なお、未処理材ではFeO(ウスタイト)の比率は0%であった。図9には、測定した最高温度と対応する処理後スケール中のFeO(ウスタイト)の比率の関係が分かるように四角形の記号を用いてプロットした。
図9に示すように、鋼板Iの表面の最高温度が500℃以下の場合は酸洗時間の短縮は見られないが、700℃以上とした場合はFeOが生成するとともに酸洗時間が短縮されている。ただし、700℃では酸洗時間の短縮割合は1〜2%程度と非常に小さい。有意な効果が見られるのは、スケール表面の最高温度を1000℃以上とした条件においてである。また、1500℃以上とする条件で急激に効果がアップしている。これはスケールが溶融することで、逆変態反応によるウスタイトの生成が促進されるからである。本実施例では、レーザ光として連続発振の半導体レーザ(波長:808nm)を用いたが、レーザ照射装置15の種類や、波長、パワー、ビーム形状、ビームの走査速度、ビームの本数等のレーザ照射パラメータを変えても、スケール表面の最高温度が1000℃以上となる条件であれば、FeO(ウスタイト)が生成されて酸洗時間を短縮する効果が得られる。
スケール表面の最高温度を2300℃とした場合は酸洗時間の短縮割合は67%となったものの、母材の表層が溶融・再凝固により変形してしまい、酸洗後に外観不良が発生してしまった。本実施例についてスケールと母材の界面の最高温度を熱伝導計算プログラムにより推定すると、鋼板Iのスケール表面の最高温度が1700℃の場合は1200℃、表面の最高温度が2300℃の場合は1600℃となる。表面の最高温度が2300℃の場合に母材の表層が溶融・再凝固したのは界面の最高温度が1500℃を超えたためである。
<第二の実施例>
上記第一の実施例において、酸洗完了までの時間が最も遅いのはエッジ部であった。そこで、第二の実施例として、本発明の第二の実施形態を適用し、図7に示すように、両側のエッジを含む100mm幅(板幅方向の両端と表裏面の計4箇所)の部分(以下、エッジ部と呼称する)に照射されるレーザビームのパワーをエッジ部以外に照射されるレーザのパワーに比べて40%高めた処理を実施した。スケールの表面温度はエッジ部以外では1500℃、エッジ部では1700℃であった。このとき、酸洗時間は50秒となった。第一の実施例において板幅方向Yにわたり全ての部分で表面温度が1500℃であった場合の酸洗時間は70秒であったから、エッジ部のみパワーを引き上げることで30%という大きな短縮効果が得られた。
<第三の実施例>
さらに、第三の実施例として、本発明の第三の実施形態を適用し、図8中に示すテンションレベラー45により0.2%の曲げ加工を与え、その後レーザ照射する方法を用いた。レーザ照射条件は上記第二の実施例と同じとした。酸洗時間は40秒となり、機械歪の付与との組み合わせでさらに20%の短縮効果が得られた。
本発明は、鋼材の酸洗性を向上させる際に特に有用である。
本発明の第一の実施形態に係る、熱延鋼板の酸洗性向上方法を実施するのに適した酸洗性向上装置Mの配置構成例を示す概念図である。 本発明の実施形態に係る酸洗性向上装置Mが備えるレーザ照射装置15の第一の配置構成例を示す概念図である。 図2に示すレーザ照射装置15が照射する複数のレーザビームLの板幅方向Yにおける空間強度分布を示す図である。 本発明の実施形態に係る酸洗性向上装置Mが備えるレーザ照射装置15の第二の配置構成例を示す概念図である。 本発明の実施形態に係る酸洗性向上装置Mが備えるレーザ照射装置15の第三の配置構成例を示す概念図である。 本発明の実施形態に係る酸洗性向上装置Mが備えるレーザ照射装置15の第四の配置構成例を示す概念図である。 本発明の第二の実施形態に係る熱延鋼板の酸洗性向上方法を実施した場合に、レーザ照射装置15が照射する複数のレーザビームLの板幅方向Yにおける空間強度分布を示す図である。 本発明の第三の実施形態に係る、熱延鋼板の酸洗性向上方法を実施するのに適した酸洗性向上装置Mの配置構成例を示す概念図である。 本発明の実施例における、酸洗時間のスケール表面温度依存性とスケール中のFeO(ウスタイト)の比率のスケール表面温度依存性とを各々示すグラフである。
符号の説明
10 酸洗槽
12 加熱装置
15 レーザ照射装置
20 レーザ集光光学系
22 搬送ロール
23 エアノズル
25 光ファイバ
30 ポリゴンミラー(ビームスキャン照射装置)
31 fθレンズ
40 CCDカメラ
41 CCDカメラシステム
45 テンションレベラー(鋼板に機械的な作用を与える装置)
AB 半直線
I 鋼板
L、L1、L2、L3・・・LN レーザビーム
M 酸洗性向上装置
X 鋼板の通板方向
Y 鋼板の板幅方向

Claims (5)

  1. 熱間圧延後の鋼板を酸洗して鋼板表面のスケールを除去する工程における熱延鋼板の酸洗性を向上させる熱延鋼板の酸洗性向上方法であって、
    前記熱間圧延後の鋼板を酸に浸漬する前に、前記スケールの最表層にレーザビームを照射して、該スケールの表面を1000℃以上かつ母材と該スケールの界面の温度が1500℃以下となるように加熱することにより、該スケール中の組成におけるウスタイトの比率を増加させることを特徴とする熱延鋼板の酸洗性向上方法。
  2. 1本または複数本のレーザビームを用いて、レーザビームの空間強度分布が熱延鋼板の板幅方向全体に広がるようにし、該熱延鋼板を通板することによって、該熱延鋼板の全面にレーザビームを照射することを特徴とする請求項1に記載の熱延鋼板の酸洗性向上方法。
  3. 1本または複数本のレーザビームを熱延鋼板の板幅方向に走査し、該レーザビームの走査領域が鋼板の板幅方向全体に広がるようにし、該熱延鋼板を通板することによって、該熱延鋼板の全面にレーザビームを照射することを特徴とする請求項1に記載の熱延鋼板の酸洗性向上方法。
  4. 前記レーザビームの照射によってスケール表面を加熱する際に、前記熱延鋼板の板幅方向についてセンター部よりもエッジ部におけるスケールの表面温度を高くすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱延鋼板の酸洗性向上方法。
  5. 前記レーザビームの照射によってスケール表面を加熱する前または後に、スケールに機械的な作用を与えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱延鋼板の酸洗性向上方法。
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