JP7006141B2 - 熱延鋼板の酸洗性向上方法 - Google Patents

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Description

本発明は、熱延鋼板の酸洗性向上方法に関する。
鋼板の熱間圧延においては、熱間圧延された鋼板が大気中で酸化されてその表面にスケール(酸化物)が形成することが知られている。このスケールは、一般的に、熱延鋼板を塩酸や硫酸等の酸液に浸漬することによって除去される。一方で、スケールを十分に除去できないと製品の表面性状が悪化することがあるため、このような酸洗処理の際の熱延鋼板の酸洗性を向上させる技術についてこれまで幾つかの提案がなされている。
特許文献1では、熱間圧延後の鋼板を酸洗してスケールを除去する工程において、前記熱間圧延後の鋼板を酸洗する前に、露点20℃以下の雰囲気で加熱もしくは保温して、該鋼板の表層温度を700℃以上にすることにより、前記スケールの組成を改質させることを特徴とする熱延鋼板の酸洗性向上方法が記載されている。
特許文献2では、C:0.04~0.2%(質量%の意味、鋼の化学成分において以下同じ。)、Si:0.1~3.0%、Mn:0.1~3.0%、P:0.02%以下(0%を含まない)およびS:0.004%以下(0%を含まない)を夫々含有し、残部が鉄および不可避的不純物であり、熱間圧延されたSi含有鋼板を、O2を1体積%未満に制御した窒素雰囲気中で、700℃以上に5~60分加熱処理することを特徴とする酸洗性に優れたSi含有熱延鋼板の製造方法が記載されている。
特開2006-224120号公報 特開2012-036483号公報
スケールは、地鉄側から、ウスタイト(FeO)、マグネタイト(Fe34)及びヘマタイト(Fe23)の順で構成された3層構造を有することが一般的に知られている。一方、塩酸等の酸液に対する溶解度は、ウスタイトが最も高く、ヘマタイトが最も低い。したがって、熱延鋼板の酸洗性を向上させるためには、スケールの組成を改質して当該スケール中に含まれるウスタイトの割合を多くするとともに、ヘマタイトの割合を少なくすることが重要である。
特許文献1では、スケールの組成の改質に関連して、鋼板の鋼種に応じて、当該鋼板を加熱もしくは保温する雰囲気を酸化性または非酸化性の雰囲気とすることが記載され、とりわけ、極低炭素鋼などの一般材では加熱雰囲気ガスがN2ガスなどの非酸化性雰囲気でウスタイト(FeO)の生成が顕著であり、酸洗時間が短縮されることが記載されている。しかしながら、特許文献1では、スケールの状態に応じて熱処理の雰囲気、温度及び時間を制御することについては何ら検討がされておらず、それゆえ当該特許文献1に記載の方法では、熱延鋼板の酸洗性向上について依然として改善の余地があった。
特許文献2では、熱間圧延されたSi含有鋼板を、コイル巻取り後に、酸素濃度が抑制された窒素雰囲気で高温加熱すれば、表層スケールを構成する酸素が母材側に拡散し、表層スケールがポーラス(酸素欠乏)な構造になり、酸洗除去されやすくなることなどが記載されている。しかしながら、特許文献2では、スケール中に含まれる鉄酸化物の組成を改質するという観点からは必ずしも十分な検討がなされていない。
そこで、本発明は、スケール中に含まれる鉄酸化物の組成を改質することにより、熱延鋼板の酸洗性を向上させることができる新規の方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成する本発明は下記のとおりである。
(1)熱延鋼板をスケール除去のための酸洗処理前に非酸化性雰囲気中で熱処理することを含み、前記熱処理が、スケール中のFe23厚との関係から予め求められた酸素濃度、熱処理温度、及び保持時間の条件下で実施され、前記熱処理後の熱延鋼板における板幅方向の端部から50mm以内のスケール中のFe23厚を、前記熱処理前のFe23厚よりも小さい所定の厚み以下とすることを特徴とする、熱延鋼板の酸洗性向上方法。
(2)前記熱処理の前に酸化性雰囲気中500℃以上の球状化処理をさらに含み、前記所定の厚みが0.25μmであることを特徴とする、上記(1)に記載の熱延鋼板の酸洗性向上方法。
(3)前記熱延鋼板が、質量%で、C:0.1~0.6%、Si:0.1~0.5%、Mn:0.3~0.9%、P:0.03%以下、S:0.035%以下を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなることを特徴とする、上記(2)に記載の熱延鋼板の酸洗性向上方法。
(4)前記熱処理の前に酸化性雰囲気中500℃以上の球状化処理を含まず、前記所定の厚みが0.05μmであることを特徴とする、上記(1)に記載の熱延鋼板の酸洗性向上方法。
(5)前記熱延鋼板が、質量%で、C:0.001~0.6%、Si:0.001~0.5%、Mn:0.01~0.9%、P:0.03%以下、S:0.035%以下を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなることを特徴とする、上記(4)に記載の熱延鋼板の酸洗性向上方法。
(6)前記予め求められた酸素濃度、熱処理温度、及び保持時間が、計算値、実測値、又はそれらの組み合わせに基づくものであることを特徴とする、上記(1)~(5)のいずれか1項に記載の熱延鋼板の酸洗性向上方法。
(7)前記予め求められた酸素濃度、熱処理温度、及び保持時間が計算値に基づくものであることを特徴とする、上記(6)に記載の熱延鋼板の酸洗性向上方法。
本発明によれば、スケール中に含まれる鉄酸化物の組成を改質することにより、スケール中に含まれるFe23を所定の厚み以下に低減することができる。その結果として、本発明によれば、スケール中において酸液への溶解度が最も低いFe23の割合を十分に低くするとともに、一方で酸液への溶解度が最も高いFeOの割合を高くすることができるので、酸洗速度が増したり、2回以上の酸洗を回避したりすることができ、熱延鋼板の酸洗性を顕著に向上させることが可能である。また、酸洗残りによる外観品位の劣化も抑制することができる。
鋼板上のスケールの成長モードを示す模式図であり、(a)は大気中でのスケールの成長モードを示し、(b)は非酸化性雰囲気中でのスケールの成長モードを示している。 直線則及び放物線則の式に基づいて計算したスケール中のFe23厚と、酸素濃度、熱処理温度、及び保持時間との関係を示し、(a)~(d)は、厚さ10μmのスケール(Fe23厚は0.1μm)を有する熱延鋼板をそれぞれ650℃、700℃、750℃及び800℃の熱処理温度において種々の酸素濃度で保持した場合のFe23厚の経時変化を示している。 計算結果に基づくFe23厚の変化の挙動と実測値との比較を示すものである。 図2の計算結果に基づいてFe23厚を0.02μm以下とするための酸素濃度、熱処理温度、及び保持時間の関係を図示したものである。
<熱延鋼板の酸洗性向上方法>
本発明の熱延鋼板の酸洗性向上方法は、熱延鋼板をスケール除去のための酸洗処理前に非酸化性雰囲気中で熱処理することを含み、前記熱処理が、スケール中のFe23厚との関係から予め求められた酸素濃度、熱処理温度、及び保持時間の条件下で実施され、前記熱処理後の熱延鋼板における板幅方向の端部から50mm以内のスケール中のFe23厚を、前記熱処理前のFe23厚よりも小さい所定の厚み以下とすることを特徴としている。
先に記載したように、熱間圧延された鋼板は大気中で酸化されてその表面にスケール(酸化物)が形成し、このスケールは、地鉄(鋼板)側から、ウスタイト(FeO)、マグネタイト(Fe34)及びヘマタイト(Fe23)の順で構成された3層構造を有することが一般に知られている。これらの酸化鉄は、地鉄側から拡散する鉄(Fe)と大気中の酸素(O2)とが反応することによって生成される。そのため、地鉄側ほど低次の酸化鉄が生成され、大気側ほど高次の酸化鉄が生成される。
図1は、鋼板上のスケールの成長モードを示す模式図であり、図1(a)は大気中でのスケールの成長モードを示し、図1(b)は非酸化性雰囲気中でのスケールの成長モードを示している。図1を参照してより詳しく説明すると、まず、熱間圧延された鋼板では、図1(a)に示すように、高温下で地鉄1側から表層側にFeが拡散し、拡散したFeが鋼板表面において大気中に含まれるO2と結合して酸化鉄を形成する。そして、酸素濃度の低い地鉄1側ほど低次の酸化鉄が生成し、酸素濃度の高い大気側ほど高次の酸化鉄が生成して、すなわち地鉄1側から順にウスタイト2(FeO)、マグネタイト3(Fe34)及びヘマタイト4(Fe23)を有する3層構造のスケールが生成する。
一方で、上記のようにして生成した3層構造のスケールを有する熱延鋼板を高温かつ非酸化性雰囲気下で熱処理した場合には、図1(b)に示すように、地鉄1側から同様にFeが拡散するものの、鋼板表面の雰囲気中にはO2が少ないために新たなスケールはほとんど生成されない。このため、地鉄1側から拡散してきたFeは表層側のFe23と反応し、低次の酸化物すなわちFe34へと変化し、さらにこのFe34はより低次の酸化物すなわちFeOへと変化する。したがって、このような非酸化性雰囲気下で熱延鋼板を長時間保持すると、最終的にはスケール表層のFe34及びFe23は全てFeOへと改質されることになる。
熱延鋼板は、熱間圧延後、一般にコイル状に巻き取られるが、このようなコイルの最外周やエッジ部(鋼板の板幅方向の端部)は大気に曝されているため酸化が進行して、図1(a)に示すようにスケール最表層に厚いFe23層が形成される場合がある。中でも、高炭素鋼板は、一般に、軟質化のためにコイル状のまま大気雰囲気下で長時間加熱保持する球状化処理を施すことが必要とされることから、コイルの最外周やエッジ部にFe23層がより厚く形成されやすいという問題がある。ここで、Fe23はFeOやFe34に比べて塩酸等の酸液に対する溶解度が著しく低いため、その後の酸洗工程において、厚いFe23層が形成された熱延鋼板は酸洗性が極めて悪く、複数回の酸洗処理を要するなど、生産性を大きく阻害する要因となっている。
一方で、上記のように、熱間圧延の際やその後の工程において熱延鋼板の表面に厚いFe23層が形成された場合であっても、図1(b)に示すように、熱延鋼板を非酸化性雰囲気下で熱処理してスケールの組成を改質することで、当該熱延鋼板の酸洗性を向上させることが可能である。より具体的には、スケール中のFe23をFeOに改質して、酸液への溶解度が最も低いFe23の割合を低くし、一方で酸液への溶解度が最も高いFeOの割合を高くすることで熱延鋼板の酸洗性を向上させることが可能である。
ここで、Fe23をFeOに改質するためには、熱処理における非酸化性雰囲気中の酸素濃度、熱処理温度、及び保持時間が重要なパラメータとなる。
一般に、鋼板の高温酸化によって酸化物スケールが成長するときには、地鉄からFeが拡散する現象と、地鉄から拡散してきたFeと雰囲気中のO2が反応する現象とが同時に進行するため、Feの拡散速度とFeとO2の反応速度のうち遅い方の速度を有する現象によって酸化速度が支配されることになる。その結果として、地鉄からのFeの拡散と雰囲気中の酸素濃度とのバランスでスケールの成長モードが変化する。具体的には、図1(a)に示すように、Feの拡散に対して雰囲気中のO2が多い場合には、Feの拡散が律則するため、いわゆる放物線則に従ってスケールは時間の平方根に比例して比較的速く成長することになる。この場合には、雰囲気中にO2が十分にあることから、スケール表層にはFe23が生成した状態でスケールが厚くなる。
一方で、図1(b)に示すように、Feの拡散に対して雰囲気中のO2が少ない場合には、酸素濃度律則となるため、いわゆる直線則に従ってスケールは時間に比例して比較的遅く成長することになる。この場合には、スケール表層でO2が足りていないためにFe23は生成せずにFeOスケールが成長し、また、そのときにスケール表層に存在していたFe23はFeOへと改質されることになる。ここで、地鉄からのFeの拡散速度は温度が高いほど大きくなるため、Fe23をFeOに改質するに際しては、雰囲気中の酸素濃度に加えて温度も重要なパラメータとなる。
しかしながら、雰囲気中のO2が少ない非酸化性雰囲気であっても、長時間にわたって高温下での熱処理を継続すると、スケールの成長が直線則に従った成長から放物線則に従った成長に変化する場合がある。より具体的には、雰囲気中のO2が少ない場合には、上記のとおり直線則に従ってスケールは時間に比例して比較的遅く成長するが、それでもスケール自体は成長するため、時間の経過とともにスケールの厚さが増していくことになる。スケールが厚くなると、それに伴い、地鉄から拡散してスケール表層まで到達するFeの量は少なくなる。このため、ある時点で、Feの拡散に対して相対的に雰囲気中のO2が少ない状態から、Feの拡散に対して相対的に雰囲気中のO2が多い状態へと変化し、すなわちスケールの成長が直線則から放物線則に従った成長へと変化することになる。
したがって、雰囲気中のO2が少ない非酸化性雰囲気では、一旦は、直線則に従ったスケール成長によってFe23は消失するものの、その後も、当該非酸化性雰囲気下で熱処理を継続し続けると、スケールの成長が直線則から放物線則に従った成長に変化することで再びFe23が生成し始めることになる。このような知見は従来知られておらず、今回、本発明者らによって初めて明らかにされたことであり、極めて意外であり、また驚くべきことである。それゆえ、Fe23をFeOに改質するという観点においては、熱処理の際の酸素濃度と熱処理温度だけでなく、当該熱処理の保持時間も極めて重要なパラメータであるということが言える。
今回、本発明者らは、上記の知見に基づいて、スケール中のFe23厚と、熱処理の際の酸素濃度、熱処理温度、及び保持時間との関係を予め求め、その関係に基づいて決定された酸素濃度、熱処理温度、及び保持時間の条件下で、スケールが形成された熱延鋼板の熱処理を実施することで、スケール中のFe23をFeOに改質し、それによってFe23厚を所定の厚み以下に低減できることを見出した。その結果として、本発明によれば、スケール中において酸液への溶解度が最も低いFe23の割合を十分に低くするとともに、一方で酸液への溶解度が最も高いFeOの割合を高くすることができるので、熱延鋼板の酸洗性を顕著に向上させることが可能である。
[スケール中のFe23厚と、酸素濃度、熱処理温度、及び保持時間との関係]
一般に、雰囲気からのO2の供給過程が律則する直線則の場合の酸化速度と、Feの拡散過程が律則する放物線則の場合の酸化速度との競争反応を考慮した以下のモデルが知られている(例えば、「金属材料の高温酸化と高温腐食」、腐食防食協会編、丸善(1982)を参照)。
直線則の場合の酸化増量及び酸化速度の式
w = kl × t ∴ dw/dt = kl ・・・(1)
放物線則の場合の酸化増量及び酸化速度の式
w = √(kp × t) ∴ dw/dt = kp/(2w) ・・・(2)
実際の酸化速度の式
dw/dt = min(kl,kp/(2w)) ・・・(3)
w :スケールの酸化増量(g/cm2
t :時間(s)
l :直線則速度定数(g/cm2・s)
p :放物線則速度定数(g2/cm4・s)
直線則速度定数klは、以下の式(4)で表され、雰囲気の酸素濃度に比例する。
l = kl0 × O2 ・・・(4)
また、放物線則速度定数kpは、以下の式(5)で表される。放物線則速度定数kpは、Feの拡散速度を表しており、それは温度に強く依存する。
p = kp0 × exp(-E/RT) ・・・(5)
l0:直線則速度定数klの酸素濃度に対する比例係数(g/cm2・s%)
2 :酸素濃度(%)
p0:放物線則速度定数kpの温度依存性に対する比例係数(g2/cm4・s)
E :活性化エネルギー(J/mol・K)
R :気体定数(J/mol)
T :温度(K)
上記のモデルにおいて、kl0、kp0、Eはモデル定数となる。したがって、これらの値は、種々の温度条件や雰囲気条件において予備実験を多数行い、成長後のスケールの厚さを測定することによって決定することができる。本発明によれば、スケール中のFe23厚と、酸素濃度、熱処理温度、及び保持時間との関係は、上で示した式(1)~(5)のスケール成長の直線則及び放物線則の式をもとに、Feの拡散によるFe23の消失速度を考慮に入れることで計算することが可能である。
図2は、直線則及び放物線則の式に基づいて計算したスケール中のFe23厚と、酸素濃度、熱処理温度、及び保持時間との関係を示し、図2(a)~(d)は、厚さ10μmのスケール(Fe23厚は0.1μm)を有する熱延鋼板をそれぞれ650℃、700℃、750℃及び800℃の熱処理温度において種々の酸素濃度で保持した場合のFe23厚の経時変化を示している。
例えば、図2(a)を参照すると、熱処理温度を650℃とした場合、0.3%の酸素濃度においてFe23厚が時間の経過とともに単調に増加していることがわかる。これは、0.3%のような比較的低い酸素濃度でも、熱処理温度が低いためにFeの拡散に対して雰囲気中のO2が多くなり、その結果として放物線則に従ってスケールが成長していることを示唆するものである。一方、酸素濃度をより低い0.2%とした場合には、Fe23厚が約0.05μmまで一旦減少した後、時間の経過とともに単調に増加していることがわかる。これは、当初はFeの拡散に対して雰囲気中のO2が少ないために直線則に従ってスケールが成長していたが、Fe23厚が約0.05μmまで減少した時点で全体のスケール厚が厚くなったことでスケール表層まで拡散するFeの量が少なくなり、その結果としてスケールの成長が直線則から放物線則に従った成長へと変化したことに起因するものと考えられる。
酸素濃度をさらに低い0.1%とした場合には、Fe23が約500秒の保持時間で完全に消失していることがわかる。しかしながら、その後も、熱処理を継続すると、0.2%の酸素濃度の場合と同様に、途中でスケールの成長が直線則から放物線則に従った成長へと変化することで、約2700秒(約45分)の保持時間からFe23が生成し始めていることがわかる。これらの計算結果から、0.1μmのFe23厚を有する熱延鋼板を650℃で熱処理する場合に、例えば、Fe23を完全に消失させるためには、0.1%の酸素濃度を有する雰囲気中で500~2700秒の保持時間の範囲内で熱処理を実施することが好ましいことがわかる。
図2(b)~図2(d)を参照すると、図2(a)でFe23厚が単調に増加していた0.3%の酸素濃度においても、Fe23を減少させ、さらには完全に消失させることができることがわかる。これは、熱処理温度が高いほどFeの拡散速度が大きくなるため、より高い酸素濃度でも直線則に従ったスケール成長を実現できることに起因するものである。また、図2(b)~図2(d)に示す計算結果から、0.1μmのFe23厚を有する熱延鋼板の場合には、熱処理の際の雰囲気中の酸素濃度を0.1%まで減少することができれば、たとえ約3600秒(約1時間)の保持時間にわたって熱処理したとしても、スケールの成長が直線則から放物線則に従った成長に変化することはなく、その結果としてFe23の再生を防ぐことができることがわかる。
図2(a)~(d)に示したスケール中のFe23厚と、酸素濃度、熱処理温度、及び保持時間との関係は、先に述べたとおり、スケール成長の直線則及び放物線則の式をもとに、Feの拡散によるFe23の消失速度を考慮に入れることで計算することが可能である。しかしながら、このような計算を行う際には、スケール全体の厚さに起因して地鉄から拡散してスケール表層まで到達するFeの量が変化すること、それに伴い、スケールの成長が直線則から放物線則に従った成長に変化すること、その結果として一旦消失したFe23が再び生成し始めることの各現象を考慮することが極めて重要である。また、このような計算を行う際には、上記のとおり、スケール全体の厚さに起因して地鉄から拡散してスケール表層まで到達するFeの量が変化することから、Fe23厚だけでなくスケール全体の厚さも考慮する必要がある。しかしながら、熱延鋼板の場合、一般的に、スケール全体に占めるFe23の割合は約1%程度となることが知られており、よってスケール全体及びFe23の厚さのうちいずれか一方の値がわかれば、もう一方の値については推測することが可能である。
図2の計算結果に基づくFe23厚の変化の挙動を裏付けるために、純鉄を用いた熱処理試験を実施して計算結果との比較を行った。その結果を図3に示す。図3は、計算結果に基づくFe23厚の変化の挙動と実測値との比較を示すものである。実際の測定においては、大気中で純鉄に約16μmのスケールを生成させた後、それを700℃の熱処理温度にてそれぞれ1%及び0.1%の酸素濃度を有する雰囲気下で300秒(5分)及び600秒(10分)間保持した。試験後、X線回折(XRD)によってスケール組成を測定し、得られたピーク強度比からFe23の割合を算出した。図3中の破線は、1%の酸素濃度で熱処理した場合の計算結果を示し、○が同じ酸素濃度で熱処理した場合の実測データを示す。一方で、図3中の実線は、0.1%の酸素濃度で熱処理した場合の計算結果を示し、△が同じ酸素濃度で熱処理した場合の実測データを示す。図3に示す結果から明らかなように、計算結果と実測値の両方において同様のFe23の変化挙動を得ることができた。具体的には、計算結果と実測値の両方において、1%の酸素濃度ではFe23は消失せずに単調に増加し、一方で0.1%の酸素濃度では熱処理によってFe23が消失し、熱処理を10分間保持してもFe23は再生しなかった。
図4は、図2の計算結果に基づいてFe23厚を0.02μm以下とするための酸素濃度、熱処理温度、及び保持時間の関係を図示したものである。各熱処理温度について、対応する実線と横軸で囲まれた領域内の酸素濃度及び保持時間の条件で熱処理することによってFe23を0.02μm以下にすることが可能である。また、図4の記載から、例えば、650℃の熱処理温度ではFe23を0.02μmまで低減するのに0.1%の酸素濃度で約400秒以上の保持時間にわたって熱処理する必要があるのに対し、800℃の熱処理温度では1.2%の酸素濃度でさえ、約30秒超の保持時間にわたって熱処理することでFe23を0.02μmまで低減できることがわかる。なお、0.02μm以下のFe23厚は、一般的な熱延鋼板に関して、本発明に係る熱処理を行わない場合と比較して、酸洗時間の短縮がより顕著となるFe23厚を示すものである。
一方で、実際の熱処理においては、スケールの状態や鋼種、熱処理方法によって適切な熱処理条件が変化する可能性があり、特にFe23を0.02μm以下とするための境界条件は必ずしも図4に示した条件と完全に一致しない場合もあり得る。したがって、Fe23厚を特定の厚み以下に低減するためのより正確な酸素濃度、熱処理温度、及び保持時間の条件を得るためには、鋼種やスケール厚ごとに予備実験を多数行って図4に則した条件テーブルを作成し、当該条件テーブルに従って熱処理の際の酸素濃度、熱処理温度、及び保持時間の各条件を決定することが好ましい。
しかしながら、このような実測データのみで図4に則した条件テーブルを作成するには、スケール全体の厚さ、Fe23厚、鋼種、酸素濃度、熱処理温度、保持時間、熱処理方法等の各条件ごとに膨大な数の予備実験を行う必要があり、したがって必ずしも現実的ではない。また、たとえ仮にこのような膨大な数の予備実験を実際に行ったとしても、図2に示したような直線則から放物線則へのスケール成長の変化に起因するFe23の再生現象等を十分に認識していなければ、当該予備実験によって得られた実測データを正確に分析することができないと考えられる。この場合には、図2に示したような図を作成することができないため、結果として図4に則した条件テーブルを作成することもできないと考えられる。
したがって、本明細書において、スケール中のFe23厚と、酸素濃度、熱処理温度、及び保持時間との関係を予め求めるために先に示した計算手法は、図3によって裏付けられるように本発明の方法において十分使用することができるだけでなく、上記のような予備実験において不足するデータを補ったり、あるいは予備実験の方向性を決定するための指針としても使用することが可能である。一方で、計算による手法だけでは、上記のとおり、スケールの状態や鋼種、熱処理方法によって適切な熱処理条件が変化する可能性があるため、Fe23を特定の厚み以下とするための境界条件が、計算値と実測値の間で必ずしも一致しない場合があり得る。そこで、計算によって得られた条件テーブルを予備実験によって得られたデータに基づいて適宜補正することで、実際の使用により適した条件テーブルを作成することも可能である。このように、本発明においては、スケール中のFe23厚との関係から予め求められる酸素濃度、熱処理温度、及び保持時間は、先に示した計算手法によって得られた計算値に基づくものであってもよいし、予備実験を行って得られた実測値に基づくものであってもよいし、又はそれらの両方を組み合わせたものであってもよい。
[熱処理]
本発明に係る熱処理は、スケール除去のために熱延鋼板を酸洗処理する前に非酸化性雰囲気中で実施される。ここで、本発明において「非酸化性雰囲気」とは、直線則に従った熱延鋼板のスケール成長を実現することができる雰囲気を言うものであり、一般的には5%未満、例えば2%以下、1%以下、0.9%以下、0.8%以下、又は0.5%以下の酸素濃度を有し、残部が窒素及び/又はアルゴン等の不活性ガスによって構成される雰囲気を言うものである。
また、熱処理は、熱間圧延後に熱延鋼板がコイル状に巻き取られた状態で実施してもよいし、あるいは熱延鋼板のコイルを巻きほどいた後、焼鈍ラインにおいて実施してもよい。さらに、本発明においては、例えば、熱延鋼板が高炭素鋼板である場合には、鋼板を軟質化するために炭化物等を球状化するいわゆる球状化処理をコイル形状のまま大気中で高温下長時間、例えば650~750℃の温度で10時間以上保持するような場合がある。このような処理によって大気に曝されるコイルの最外周やエッジ部は、酸化が進行してスケールが厚く成長し、同時にFe23も厚くなりやすい。このような場合には、その後の酸洗工程において酸洗の負荷が非常に高くなる。したがって、球状化処理を窒素などの非酸化性雰囲気又は微量の酸素濃度、例えば0.1%以下、0.05%以下、0.03%以下若しくは0.01%以下の酸素濃度を有し、残部が窒素等の不活性ガスからなる非酸化性雰囲気下で実施したり、あるいは大気中での球状化処理後に雰囲気を窒素や非酸化性雰囲気に置換して本発明に係る熱処理を実施したりして、Fe23を薄くすることで熱延鋼板の酸洗性を向上させることもできる。なお、本発明に係る熱処理は、酸素を全く含まない窒素などの非酸化性雰囲気で実施される球状化処理や、0.1%以下、0.05%以下、0.03%以下又は0.01%以下の酸素濃度を有し、残部が窒素等の不活性ガスからなる非酸化性雰囲気下で実施される球状化処理をも包含するものである。
[酸素濃度、熱処理温度、及び保持時間]
本発明によれば、上記の熱処理は、スケール中のFe23厚との関係から予め求められた酸素濃度、熱処理温度、及び保持時間の条件下で実施される。ここで、酸素濃度、熱処理温度、及び保持時間の各パラメータは、例えば、目標とするFe23厚を考慮して、図4に示したような領域の範囲内において適切に決定することができる。図4の記載からも明らかなように、これらのパラメータは相互に関連しているため、互いに独立して決定することはできないが、一般的には、酸素濃度は1%以下、好ましくは0.5%以下、より好ましくは0.3%以下、最も好ましくは0.1%以下の範囲で決定することができ、熱処理温度は、600℃~1000℃、好ましくは700℃~1000℃の間で決定することができ、そして保持時間は10秒~20時間、好ましくは30秒~3時間、より好ましくは30秒~1時間の間で決定することができる。
酸素濃度、熱処理温度、及び保持時間を決定する際の優先順位は、目標とするFe23厚、熱処理において使用することができる設備、及びコスト等を考慮して適切に判断すればよい。例えば、まず、非酸素雰囲気中の酸素濃度を実現可能な最も低い値、例えば0.1%又は0.05%に決定し、次いで熱処理温度及び保持時間を決定するようにしてもよい。このようにすることで比較的低い温度及び短い保持時間でFe23厚を目標値まで低減することが可能となる。あるいはまた、熱処理温度を800℃等の比較的高い温度に設定することで、低酸素濃度を実現する設備の負担を軽減して適度な酸素濃度及び保持時間を選択してFe23厚を目標値まで低減するようにしてもよい。ただし、長時間の熱処理は、図2(a)~(d)で示したように、Fe23の再生が生じる場合があるため、このような現象が生じない範囲で適切に酸素濃度、熱処理温度、及び保持時間を決定することが好ましい。
[Fe23厚]
本発明によれば、熱処理は、当該熱処理後の熱延鋼板における板幅方向の端部から50mm以内のスケール中のFe23厚が、熱処理前のFe23厚よりも小さい所定の厚み以下となるように実施される。一般的な熱延鋼板のエッジ部(熱延鋼板の板幅方向の端部)のスケール表層におけるFe23厚は0.1μm以上であり、一方で、大気中で球状化処理を施した高炭素鋼板のFe23厚は一般に0.5μm以上となる。このように鋼種やプロセスによって一般に酸洗前の熱延鋼板のFe23厚が変化するため、それに応じて酸洗時間が変化し、Fe23が厚いほど酸洗時間が長くなる。したがって、従来技術と比較した場合の酸洗性の向上、すなわち酸洗時間の短縮に要求されるFe23厚は鋼種によって様々な値になり得る。しかしながら、本発明の方法を適用することで熱延鋼板のFe23厚を約50%以下まで薄くすることができれば、確実に酸洗時間の短縮が観測され、さらに約20%以下まで薄くすることができれば、酸洗時間短縮の効果はより顕著なものとなる。
したがって、本発明に係る熱処理の前に、上記のような球状化処理、より具体的には酸化性雰囲気中500℃以上又は600℃以上の球状化処理が実施される場合には、好ましくは、本発明に係る熱処理は、0.5μmのFe23厚の50%以下に相当する0.25μm以下のFe23厚となるように実施され、より好ましくは20%以下に相当する0.1μm以下のFe23厚となるように実施される。
一方で、本発明に係る熱処理の前に、酸化性雰囲気中500℃以上又は600℃以上の球状化処理が実施されない場合には、好ましくは、本発明に係る熱処理は、一般的な熱延鋼板のエッジ部における0.1μmのFe23厚の50%以下に相当する0.05μm以下のFe23厚となるように実施され、より好ましくは20%以下に相当する0.02μm以下のFe23厚となるように実施される。
なお、本発明において「酸化性雰囲気」とは、一般的には5%以上、例えば10%以上、又は20%以上の酸素濃度を有する雰囲気を言うものである。
本発明において「Fe23厚」は、EBSP(電子線後方散乱パターン:Electron BackScattering Pattern)法によって決定される。より具体的には、スケール断面のEBSP法による測定結果からFe23の結晶粒を判別し、それによってスケール中のFe23厚を決定することができる。本発明では、熱処理後の熱延鋼板における板幅方向の端部から50mm以内のスケール中から数mm角のサンプルを3つ以上採取し、それらのスケール断面をEBSP分析することによって各サンプルについてFe23厚の最大値を測定し、これらを算術平均したものが本発明に係るFe23厚として決定される。
[熱延鋼板]
本発明の方法は、任意の組成を有する熱延鋼板に適用することができ、特に限定されないが、例えば、球状化処理を要する高炭素鋼板、例えば、C:0.1~0.6%、Si:0.1~0.5%、Mn:0.3~0.9%、P:0.03%以下、S:0.035%以下を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる高炭素鋼板に適用することが好ましい。熱延鋼板が高炭素鋼板である場合には、先に記載したように、鋼板を軟質化するためにコイル形状のまま高温下長時間の球状化処理を行う場合がある。球状化処理によって大気に曝されたコイルの最外周やエッジ部は酸化が進行してスケール中のFe23が厚くなりやすい。このような場合には、その後の酸洗工程において酸洗時間が長くなったり、複数回の酸洗処理を要するなどして酸洗の負荷が高くなってしまう。したがって、球状化処理を要する高炭素鋼板に本発明の方法を適用することで酸洗時間を顕著に短縮することができるので、このような酸洗の負荷を確実に軽減することが可能となる。
本発明の方法は、上記のような球状化処理を要する高炭素鋼板には限定されず、例えば、C:0.001~0.6%、Si:0.001~0.5%、Mn:0.01~0.9%、P:0.03%以下、S:0.035%以下を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる組成を有する幅広い鋼板に適用することが可能である。高炭素鋼板の場合のように球状化処理を要しない鋼板であっても、熱間圧延された場合には、先に記載したようにスケール表層におけるFe23厚は0.1μm以上あり、よって本発明の方法を適用することでFe23厚を0.05μm以下、好ましくは0.02μm以下まで低減することで酸洗性の顕著な向上を達成することが可能である。
なお、これらの鋼板は、上記の元素に加えて、任意選択で、Al、N、Mo、Cr、Ni、Cu、Nb、Ti、V、B、Ca、Mg、及びREM(希土類金属:Rare-Earth Metal)からなる群より選択される1種又は2種以上の添加元素をさらに含んでいてもよい。
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
以下の実施例では、本発明の方法によって熱間圧延された高炭素鋼板及び普通鋼板について熱処理を実施し、それらを酸洗した場合の酸洗時間について調べた。
[実施例1]
質量%で、Cを0.2%、Siを0.26%、Mnを0.5%、Pを0.017%、Sを0.0057%含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼材を4.5mm厚さまで熱間圧延し、コイル状に巻き取った後、下表1に示す熱処理aを実施し、続いて熱処理bを実施した。表中の実施例に係る例A~Eのうち、熱処理bの前に大気中(酸化性雰囲気中)500℃以上の球状化処理(熱処理a)を行った例A~Cについては、Fe23厚が0.25μm以下となるように予め求められた酸素濃度、熱処理温度及び保持時間の条件下で熱処理(熱処理b)を実施した。一方、熱処理bの前に大気中(酸化性雰囲気中)500℃以上の球状化処理(熱処理a)を行っていない例D及びEについては、Fe23厚が0.05μm以下となるように予め求められた酸素濃度、熱処理温度及び保持時間の条件下で熱処理(熱処理b)を実施した。
熱処理a、b後の熱延鋼板における板幅方向の端部から10mm程度の位置において数mm角のサンプルを3つ採取し、それらのスケール断面をEBSP分析することによって各サンプルについてFe23厚の最大値を測定し、これらを算術平均したものをFe23厚として決定した。また、熱処理a、b後の熱延鋼板を酸洗処理してその際の酸洗時間比を調べた。結果を下表1に示す。ここで、酸洗時間比は、同じ例において熱処理aのみの熱延鋼板又は本発明に係る熱処理bを施していない熱延鋼板を酸洗した場合の酸洗時間を1としたときの酸洗時間の変化割合を示し、よって酸洗時間比が1より小さい場合は酸洗性が向上していることを意味する。
Figure 0007006141000001
例A~Cでは、大気中700℃で14時間にわたり球状化処理を施した後、それぞれ酸素濃度が0.1%、0.2%及び0.05%の非酸化性雰囲気(残部N2)に切り替えて熱処理を実施した。結果としてFe23は0.25μm又はそれよりも薄くなり、酸洗速度が増して酸洗性が大きく向上した。例D及びEでは、熱間圧延されコイル状に巻き取られた熱延コイルをすぐにそれぞれ酸素濃度が0.01%及び0.001%の非酸化性雰囲気(残部N2)下で保持して熱処理(球状化処理)を施した。これらの例では、酸素濃度を非常に小さくすることでFe23厚を検出されないほどに薄くすることができ、大幅な酸洗性の向上を達成することができた。このように、例A~Eは本発明に係る熱処理bを施すことによって熱処理bを施す前と比較してFe23が薄くなり、酸洗性が向上した。
例Fは、大気中での球状化処理のみを行い、本発明に係る熱処理を適用していない例を示している。一方、例Gでは、窒素中の酸素濃度が1%と比較的高いためにFe23が厚くなり、結果として酸洗性が悪化した。例Hでは、酸素濃度は比較的低いものの保持時間が長いためにFe23が再生し、結果として酸洗性が悪化したものと考えられる。例Iでは、酸素濃度は比較的低いものの、温度が低く、さらに保持時間も長いために、結果として酸洗性が大幅に悪化した。
[実施例2]
質量%で、Cを0.002%、Siを0.019%、Mnを0.08%、Pを0.017%、Sを0.01%含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼材を3.5mm厚さまで熱間圧延し、コイル状に巻き取った後、下表2に示す熱処理条件で熱処理を実施した。表中の実施例に係る例J~Lは、Fe23厚が0.05μm以下となるように予め求められた酸素濃度、熱処理温度及び保持時間の条件下で熱処理を実施した。熱処理後の熱延鋼板について、実施例1の場合と同様にしてFe23厚を測定し、酸洗時間比を調べた。結果を下表2に示す。
Figure 0007006141000002
例J~Lでは、Fe23が0.05μm又はそれ以下と本発明に係る熱処理を施す前よりも薄くなり、酸洗速度が増して酸洗性が大きく向上した。例Mは、本発明に係る熱処理を適用していない例を示している。一方、例Nでは、熱処理の際の酸素濃度が1%と比較的高いためにFe23が厚くなり、結果として酸洗性が悪化した。さらに、例Oでは、酸素濃度は比較的低いものの、保持時間が長いためにFe23が再生し、結果として酸洗性が悪化したものと考えられる。
1 地鉄
2 ウスタイト
3 マグネタイト
4 ヘマタイト

Claims (7)

  1. 熱延鋼板をスケール除去のための酸洗処理前に非酸化性雰囲気中で熱処理することを含み、前記熱処理が、スケール中のFe23厚との関係から予め求められた酸素濃度、熱処理温度、及び保持時間の条件下で実施され、前記熱処理後の熱延鋼板における板幅方向の端部から50mm以内のスケール中のFe23厚を、前記熱処理前のFe23厚よりも小さい所定の厚み以下とすることを特徴とする、熱延鋼板の酸洗性向上方法。
  2. 前記熱処理の前に酸化性雰囲気中500℃以上の球状化処理をさらに含み、前記所定の厚みが0.25μmであることを特徴とする、請求項1に記載の熱延鋼板の酸洗性向上方法。
  3. 前記熱延鋼板が、質量%で、C:0.1~0.6%、Si:0.1~0.5%、Mn:0.3~0.9%、P:0.03%以下、S:0.035%以下を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなることを特徴とする、請求項2に記載の熱延鋼板の酸洗性向上方法。
  4. 前記熱処理の前に酸化性雰囲気中500℃以上の球状化処理を含まず、前記所定の厚みが0.05μmであることを特徴とする、請求項1に記載の熱延鋼板の酸洗性向上方法。
  5. 前記熱延鋼板が、質量%で、C:0.001~0.6%、Si:0.001~0.5%、Mn:0.01~0.9%、P:0.03%以下、S:0.035%以下を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなることを特徴とする、請求項4に記載の熱延鋼板の酸洗性向上方法。
  6. 前記予め求められた酸素濃度、熱処理温度、及び保持時間が、計算値、実測値、又はそれらの組み合わせに基づくものであることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の熱延鋼板の酸洗性向上方法。
  7. 前記予め求められた酸素濃度、熱処理温度、及び保持時間が計算値に基づくものであることを特徴とする、請求項6に記載の熱延鋼板の酸洗性向上方法。
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