JP6041110B2 - 鉄損特性に優れる方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents

鉄損特性に優れる方向性電磁鋼板の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、方向性電磁鋼板の製造方法に関し、特に、鉄損が低く、かつ、コイル長手方向の鉄損のばらつきが小さい方向性電磁鋼板の製造方法に関するものである。
電磁鋼板は、変圧器やモータの鉄心材料として広く用いられている軟磁性材料であり、中でも方向性電磁鋼板は、結晶方位がGoss方位と呼ばれる{110}<001>方位に高度に集積し、鉄損特性に優れているため、主として大型の変圧器の鉄心等に使用されている。変圧器における無負荷損(エネルギーロス)を低減するためには、鉄損が低いことが必要である。
方向性電磁鋼板において、鉄損を低減する方法としては、Si含有量の増加や、板厚の低減、結晶方位の配向性向上、鋼板表面への張力付与、鋼板表面の平滑化、二次再結晶組織の細粒化などが有効であることが知られている。
これらの方法のうち、二次再結晶粒を細粒化する技術として、脱炭焼鈍時に急速加熱したり、脱炭焼鈍直前に急速加熱する熱処理を施したりすることで、一次再結晶集合組織を改善する方法が提案されている。例えば、特許文献1には、最終板厚まで圧延した冷延板を脱炭焼鈍する際、PH2O/PH2が0.2以下の非酸化性雰囲気中で、100℃/s以上で700℃以上の温度に急速加熱することで、低鉄損の方向性電磁鋼板を得る技術が開示されている。また、特許文献2には、雰囲気中の酸素濃度を500ppm以下とし、かつ、加熱速度100℃/s以上で800〜950℃に急速加熱し、続いて急速加熱後の温度より低い775〜840℃の温度に保定し、さらに、815〜875℃の温度に保定することで、低鉄損の方向性電磁鋼板を得る技術が開示されている。また、特許文献3には、600℃以上の温度域を95℃/s以上の昇温速度で800℃以上に加熱し、この温度域の雰囲気を適正に制御することによって、被膜特性と鉄損特性に優れる電磁鋼板を得る技術が開示されている。さらに、特許文献4には、熱延板中のAlNとしてのN量を25ppm以下に制限し、かつ、脱炭焼鈍時に加熱速度80℃/s以上で700℃以上まで加熱することで、低鉄損の方向性電磁鋼板を得る技術が開示されている。
急速加熱することで一次再結晶集合組織を改善するこれらの技術は、急速加熱する温度範囲を室温から700℃以上とし、昇温速度を一定の速度に規定するものである。この技術思想は、再結晶温度近傍までを短時間で昇温することで、二次再結晶の核となる{110}<001>組織(Goss組織)の発生が促進されて、二次再結晶後の結晶粒(Goss方位粒)が細粒化し、鉄損特性が改善される。
また、一次再結晶集合組織を改善する別の技術として、冷間圧延のパス間で時効処理を施す方法が提案されている。例えば、特許文献5には、圧延途中で、50〜350℃の温度に1分以上保持することで鉄損特性を改善する技術が提案されている。また、特許文献6には、圧延途中で、100℃以上の温度に1分以上保持する熱処理を与え、さらに、脱炭焼鈍の直前に50℃/s以上の加熱速度で700℃以上の温度へ加熱することで、鉄損特性を改善する技術が提案されている。これらの技術は、冷間圧延の途中で時効処理を施し、C,Nなどの侵入型元素でそれまでの冷間圧延で導入された転位を固着し、その後の冷間圧延における変形機構に変化を及ぼすことによって、冷延集合組織と一次再結晶集合組織を改善し、最終的に鉄損特性を向上しようとするものである。
特開平07−062436号公報 特開平10−298653号公報 特開2003−027194号公報 特開平10−130729号公報 特公昭54−013846号公報 特開平07−062437号公報 特開2014−025106号公報
A.H.Cottrell and B.A.Bilby:Proc.Phys.Soc.,62A(1949)49 Y.Hayakawa,J.A.Szpunar;Acta Mater.,vol.45(1997)1285
上記特許文献1〜4に開示の技術を適用し、一次再結晶焼鈍の昇温速度を大きくすることで二次再結晶粒を細粒化することができる。しかしながら、発明者らの知見によれば、一次再結晶焼鈍の昇温速度を大きくすると、二次再結晶粒の方位集積度が低下し易くなり、鉄損改善効果が安定して得られないという問題があることが明らかとなった。
また、冷間圧延の途中で時効処理を施す、特に、圧延の加工発熱を利用して時効処理を施す場合には、鉄損特性の改善効果が十分でない上、コイル長手方向で時効条件が一定とならないため、鉄損特性がコイル長手方向で大きく変動するという問題がある。例えば、リバース圧延のコイル巻き取り時に時効処理を施す場合、コイルの長手方向両端部(コイルの内巻部と外巻部)は鋼板温度が早く低下するため、十分な鉄損改善効果が得られない。また、タンデム圧延の場合、各スタンド間で極短時間の時効処理が施されると見做すことができるが、鋼板温度は圧延速度の影響を強く受けるため、圧延速度が大きいコイルの長手方向中央部は高く、圧延速度が低いコイルの長手方向両端部は低くなるため、やはり、コイル長手方向両端部は十分な鉄損改善効果が得られない。この問題は、冷間圧延の途中で、コイルを別の熱処理ラインに移して時効処理を施す方法を採用すれば解決できるが、製造コストが上昇したり、工程管理が難しくなったりするという問題がある。
本発明は、従来技術が抱える上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、鉄損特性に優れ、かつ、コイル長手方向の鉄損特性の変動が小さい方向性電磁鋼板の製造方法を提案することにある。
発明者らは、上記課題の解決に向けて鋭意検討を重ねた。その結果、一次再結晶焼鈍で急速加熱を行う場合には、最終冷間圧延における時効処理は、却って鉄損特性を劣化させること、したがって、最終冷間圧延の時効処理を低温・短時間で行った上で、一次再結晶焼鈍において急速加熱する必要があることを知見した。また、上記急速加熱を行う場合には、一次再結晶集合組織の<111>//ND方位が低下し、二次再結晶集合組織の{110}<001>方位の集積度が低下するという問題や、脱炭焼鈍で形成されるサブスケールの構造が変化し、鉄損特性が劣化するという問題があるが、上記急速加熱過程の回復が起こる温度域と、初期酸化が起こる温度域とで、適正な条件の保定処理を施すことで、鉄損特性に優れ、しかも、コイル長手方向の鉄損特性の変動が小さい方向性電磁鋼板を安定して製造し得ることを見出し、本発明を開発するに至った。
すなわち、本発明は、C:0.002〜0.10mass%、Si:2.0〜8.0mass%、Mn:0.005〜1.0mass%を含有し、かつ、Al:0.010〜0.050mass%およびN:0.003〜0.020mass%を含有し、あるいは、Al:0.010〜0.050mass%、N:0.003〜0.020mass%、Se:0.003〜0.030mass%および/またはS:0.002〜0.03mass%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼素材を熱間圧延して熱延板とし、熱延板焼鈍を施した後または熱延板焼鈍を施すことなく、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延して最終板厚の冷延板とし、脱炭焼鈍を兼ねた一次再結晶焼鈍を施し、鋼板表面に焼鈍分離剤を塗布した後、仕上焼鈍する一連の工程からなる方向性電磁鋼板の製造方法において、上記冷間圧延の最終冷間圧延における時効温度T(K)および時効時間t(s)が下記(1)式;
Figure 0006041110
(ただし、T:時効温度(K)、t:時効時間(s)、D:Cの拡散係数)
を満たし、かつ、上記一次再結晶焼鈍の加熱過程の200〜700℃の区間を50℃/s以上で急速加熱するとともに、250℃以上500℃未満のいずれかの温度で処理時間が0.5〜10秒の保定処理を1〜4回施し、さらに、500℃以上700℃以下のいずれかの温度で処理時間が0.5〜3秒の保定処理を1回または2回施すことを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法を提案する。
また、本発明は、C:0.002〜0.10mass%、Si:2.0〜8.0mass%、Mn:0.005〜1.0mass%を含有し、かつ、Al:0.015mass%未満、N:0.0050mass%未満、Se:0.0070mass%未満およびS:0.0050mass%未満を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼素材を熱間圧延して熱延板とし、熱延板焼鈍を施した後または熱延板焼鈍を施すことなく、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延して最終板厚の冷延板とし、脱炭焼鈍を兼ねた一次再結晶焼鈍を施し、鋼板表面に焼鈍分離剤を塗布した後、仕上焼鈍する一連の工程からなる方向性電磁鋼板の製造方法において、上記冷間圧延の最終冷間圧延における時効温度T(K)および時効時間t(s)が下記(1)式;
Figure 0006041110
(ただし、T:時効温度(K)、t:時効時間(s)、D:Cの拡散係数)
を満たし、かつ、上記一次再結晶焼鈍の加熱過程の200〜700℃の区間を50℃/s以上で急速加熱するとともに、250℃以上500℃未満のいずれかの温度で処理時間が0.5〜10秒の保定処理を1〜4回施し、さらに、500℃以上700℃以下のいずれかの温度で処理時間が0.5〜3秒の保定処理を1回または2回施すことを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法を提案する。
本発明の方向性電磁鋼板の製造方法に用いる上記鋼素材は、上記成分組成に加えてさらに、Ni:0.010〜1.50mass%、Cr:0.01〜0.50mass%、Cu:0.01〜0.50mass%、P:0.005〜0.50mass%、Sb:0.005〜0.50mass%、Sn;0.005〜0.50mass%、Bi:0.005〜0.50mass%、Mo:0.005〜0.100mass%、B:0.0002〜0.0025mass%、Te:0.0005〜0.0100mass%、Nb:0.0010〜0.0100mass%、V:0.001〜0.010mass%およびTa:0.001〜0.010mass%のうちから選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする。
また、本発明の上記方向性電磁鋼板の製造方法は、冷間圧延後のいずれかの段階で、鋼板表面に圧延方向と交差する方向に溝を形成して磁区細分化処理を施すことを特徴とする。
また、本発明の上記方向性電磁鋼板の製造方法は、絶縁皮膜を被成した鋼板表面に、圧延方向と交差する方向に連続的または断続的に電子ビームあるいはレーザーを照射して磁区細分化処理を施すことを特徴とする。
本発明によれば、最終冷間圧延における時効条件を適正化することに加えて、一次再結晶焼鈍の加熱過程で急速加熱する際、回復が起こる温度域および初期酸化が起こる温度域での保定処理条件を適正化することで、低鉄損でかつコイル長手方向に鉄損特性の変動が小さい方向性電磁鋼板を安定して提供することが可能となる。
本発明の一次再結晶焼鈍における加熱パターンの一例を示す図である。 時効条件がコイル長手方向の鉄損変化に及ぼす影響を示すグラフである。
まず、本発明を開発する契機となった実験について説明する。
C:0.032mass%、Si:3.22mass%、Mn:0.07mass%、Al:0.004mass%、N:0.0033mass%、S:0.0018mass%、Sb:0.029mass%、P:0.041mass%およびMo:0.010mass%を含有し、残部が実質的にFeからなる鋼を溶製し、連続鋳造法で鋼スラブとした後、1230℃に再加熱し、熱間圧延して板厚2.4mmの熱延板とし、1025℃×60秒の熱延板焼鈍を施した後、4スタンドのタンデム圧延機で冷間圧延し、最終板厚0.27mmの冷延板とした。
ここで、上記の冷間圧延条件は、以下の2条件とした。
・条件A:圧延速度と冷却水の流量を調整することで、各スタンド間の鋼板温度(時効温度T(K))を常温以上423K以下(常温以上150℃以下)の一定温度とし、かつ、各スタンド間を通過する時間の合計時間(時効時間t(s))を20秒以下とすることで、下記(1)式左辺の値が4.0×10−8以下になるようにして圧延する。
・条件B:圧延速度と冷却水の流量を調整することで、各スタンド間の鋼板温度(時効温度T(K))を423K以上523K以下(250℃以上350℃以下)の一定温度とし、かつ、各スタンド間を通過する時間の合計時間(時効時間t(s))を15秒以上とすることで、下記(1)式左辺の値が2.0×10−7以上になるようにして圧延する。

Figure 0006041110
(ただし、T:時効温度(K)、t:時効時間(s)、D:Cの拡散係数)
なお、上記式中のDはCの拡散係数、DはCの拡散定数(=0.394(mm/sec))、QはCの活性化エネルギー(=80.2(kJ/mol))、Rはガス定数(=8.31(J/mol・K))である。
ここで、上記(1)式の左辺は、温度T、時間tの時効処理を行ったときに転位に到達する溶質原子量に比例するパラメメータであり、時効の進行度合いを表している(非特許文献1参照)。
次いで、上記冷間圧延後の鋼板に、50vol%H−50vol%Nの湿潤雰囲気下での840℃×80秒の脱炭焼鈍を兼ねた一次再結晶焼鈍を施した。なお、上記一次再結晶焼鈍は、840℃までの加熱過程における200〜700℃間の昇温速度を100℃/sとし、さらにその加熱途中の400℃および600℃の温度で、該温度に各2秒間保持する保定処理を施した。ここで、上記100℃/sの昇温速度は、図1に示したように、200℃から700℃まで到達する時間から保定時間tおよびtを除いた時間における平均昇温速度((700℃−200℃)/(t秒+t秒+t秒))である。
その後、MgOを主体とする焼鈍分離剤を鋼板表面に塗布し、乾燥した後、二次再結晶させた後、水素雰囲気下で1200℃×5時間の純化処理を行う仕上焼鈍を施し、製品コイルとした。
斯くして得た製品コイルの長手方向両端部およびその間の3箇所、合計5箇所の各箇所から、板幅方向に幅100mmの試験片を各10枚ずつ採取し、JIS C2556に記載の方法で鉄損W17/50を測定して平均値を求めることで、コイルの長手方向の鉄損特性の変化を調査した。なお、上記試験片を採取した5箇所は、便宜上、採取した順に1(端部)、2、3(中央部)、4および5(端部)とした。この鉄損測定方法によれば、板幅方向に鉄損のばらつきがある場合にも、鉄損の平均値が悪化するので、コイル長手方向だけでなく、板幅方向のばらつきも含めて鉄損特性を評価することができる利点がある。
上記のコイル長手方向の鉄損測定結果を図2に示した。この結果から、一次再結晶焼鈍で急速加熱を行う場合には、冷間圧延時の時効処理を低温・短時間で行ない、(1)式左辺の値を4.0×10−8以下とした条件Aの方が、短時間でも高温で時効処理して(1)式左辺の値を2.0×10−7以上とした条件Bよりも、コイル長手方向で鉄損特性が均一で、かつ、鉄損値自体も低く、良好であることがわかる。
ここで、上記実験において、冷間圧延時の時効処理を低温・短時間で行なった条件Aの方が、高温・短時間の時効条件Bよりコイル長手方向の鉄損特性の変動が小さくなった理由については、冷間圧延での加工発熱を利用して積極的に時効処理を行う場合は、圧延速度が低く、かつ、放熱によって冷却し易いコイル長手方向の両端部(コイル内径部、外径部)は、コイル長手方向中央部より圧延後の鋼板温度が低くなり、その差は、時効温度が高温となるほど大きく、低温ほど小さくなるためであると考えられる。
次に、低温・短時間の時効条件Aの方が、高温・短時間の時効条件Bよりも鉄損特性が良好となる理由について検討する。
一次再結晶焼鈍で急速加熱することは、γファイバー(<111>//ND方位)の発達を抑制し、二次再結晶の核となる{110}<001>組織の発生を促進する効果がある。一般的に、<111>//ND方位には、冷間圧延によって多くの歪が導入されるため、他の方位と比較して蓄積される歪エネルギーが高い状態にある。そのため、通常の昇温速度(20℃/s程度)で加熱する一次再結晶焼鈍では、蓄積された歪エネルギーが高い<111>//ND方位の圧延組織から優先的に再結晶を起こす。再結晶では、<111>//ND方位の圧延組織からは、<111>//ND方位粒が出現するため、一次再結晶後の集合組織は<111>//ND方位が主方位となる。しかし、急速加熱を行うと、一気に高温状態に到達するため、比較的蓄積された歪エネルギーの低い方位でも再結晶が起こるようになり、一次再結晶後の{110}<001>が増加し、<111>//ND方位が減少するため、二次再結晶後も{110}<001>方位粒の数が増加し、鉄損特性が改善される。これが、従来技術が急速加熱を行う理由である。
しかし、<111>//ND方位、非特許文献2に開示されているように、特に{111}<112>方位は、{110}<001>方位と高エネルギー粒界を形成する関係であるため、二次再結晶方位の先鋭化に必要な方位であり、急速加熱で<111>//ND方位が低下することによって、二次再結晶集合組織の{110}<001>方位の集積度が低下するというデメリットがある。そこで、冷間圧延中に時効処理した後、一次再結晶焼鈍の急速加熱途中の400℃の温度で保定処理を施した鋼板の一次再結晶集合組織を調査したところ、二次再結晶方位の先鋭化に必要な{111}<112>方位はそれほど減少せず、それ以外の<111>//ND方位が減少していることがわかった。
この詳細なメカニズムは明らかでないが、冷間圧延時の時効処理を極力抑制することで、<111>//ND方位の集積度が高まり、さらに、一次再結晶焼鈍の急速加熱過程途中の専ら回復が進行する400℃の温度で保定処理を施したことによって、{111}<112>以外の<111>//ND方位の歪エネルギーが低下して再結晶の駆動力を失い、{111}<112>方位が増加したためと考えられる。このことは、一次再結晶焼鈍で急速加熱しても、回復が起こる温度域で保定処理を施すことによって、鉄損特性の劣化を抑制することができることを示している。つまり、回復が起こり、再結晶が生じるまでの250℃以上500℃未満の温度域で1回以上保定処理を施すことが重要である。
そして、この鉄損特性改善効果は、時効条件および保定処理条件を適切に組み合わせたときに初めて得られ、単独では得られないものである。
また、脱炭焼鈍を兼ねた一次再結晶焼鈍の加熱過程を急速加熱することの他のデメリットとして、加熱中に初期酸化に費やされる時間が短くなるため、サブスケール構造が変化し、仕上焼鈍で被膜不良が発生し、その影響で二次再結晶不良が生じて鉄損特性が劣化することがある。しかしながら、上記実験においては、加熱途中の600℃でも保定処理を施していることから、急速加熱を行っても初期酸化が進行して被膜不良が抑止され、鉄損特性の劣化が抑制されたものと考えられる。すなわち、初期酸化が生じる500℃以上700℃以下の温度域で保定処理を施すことが良好な被膜を形成する上で重要である。
上記した推定メカニズムからは、一次再結晶焼鈍の加熱過程を急速加熱する場合には、上記加熱途中において、少なくとも2つの温度域、すなわち、回復が起こる250℃以上500℃未満の温度域と、初期酸化が活発になる500℃以上700℃以下の温度域で保定処理を施すことが、磁気特性と被膜特性を両立させる上で必要であると考えられる。
本発明は、上記実験で得られた新規な知見に基き、開発したものである。
なお、一次再結晶焼鈍の加熱過程を急速加熱するときに保定処理を1回のみ施す技術が特許文献7に開示されている。この方法によれば、製品コイル板幅方向の鉄損のばらつきは小さくなり、板幅方向全体の鉄損特性は改善されるが、製品コイル長手方向の鉄損のばらつきまでをも改善できるものではない。この点、本発明は、製品コイル長手方向の鉄損のばらつき改善にも効果があり、特許文献7に開示された技術より優れた技術である。
次に、本発明の方向性電磁鋼板の素材に用いる鋼素材(スラブ)の成分組成について説明する。
C:0.002〜0.10mass%
Cは、0.002mass%に満たないと、Cによる粒界強化効果が失われ、スラブに割れが生じるなどして、製造に支障を来たすようになる。一方、0.10mass%を超えると、脱炭焼鈍で、Cを鉄損時効の起こらない0.005mass%以下に低減することが困難となる。よって、Cは0.002〜0.10mass%の範囲とする。好ましくは0.010〜0.080mass%の範囲である。
Si:2.0〜8.0mass%
Siは、鋼の比抵抗を高め、鉄損を低減するのに必要な元素である。上記効果は、2.0mass%未満では十分ではなく、一方、8.0mass%を超えると、加工性が低下し、圧延して製造することが困難となる。よって、Siは2.0〜8.0mass%の範囲とする。好ましくは2.5〜4.5mass%の範囲である。
Mn:0.005〜1.0mass%
Mnは、鋼の熱間加工性を改善するために必要な元素である。上記効果は、0.005mass%未満では十分ではなく、一方、1.0mass%を超えると、製品板の磁束密度が低下するようになる。よって、Mnは0.005〜1.0mass%の範囲とする。好ましくは0.02〜0.20mass%の範囲である。
上記C,SiおよびMn以外の成分については、二次再結晶を生じさせるために、インヒビターを利用する場合と、しない場合とに分けられる。
まず、二次再結晶を生じさせるためにインヒビターを利用する場合で、例えば、AlN系インヒビターを利用するときには、AlおよびNを、それぞれAl:0.010〜0.050mass%、N:0.003〜0.020mass%の範囲で含有させるのが好ましい。また、MnS・MnSe系インヒビターを利用するときには、前述した量のMnと、S:0.002〜0.030mass%および/またはSe:0.003〜0.030mass%を含有させることが好ましい。それぞれ添加量が、上記下限値より少ないと、インヒビター効果が十分に得られず、一方、上限値を超えると、インヒビター成分がスラブ加熱時に未固溶で残存し、インヒビター効果が低減し、十分な鉄損特性が得られなくなる。なお、AlN系とMnS・MnSe系のインヒビターを併用してもよいことは勿論であり、この場合は、Al:0.010〜0.050mass%、N:0.003〜0.020mass%、Se:0.003〜0.030mass%および/またはS:0.002〜0.03mass%を含有させるのが好ましい。
一方、二次再結晶を生じさせるためにインヒビターを利用しない場合には、上述したインヒビター形成成分であるAl,N,SおよびSeの含有量を極力低減し、Al:0.015mass%未満、N:0.0050mass%未満、Se:0.0070mass%未満およびS:0.0050mass%未満に低減した鋼素材を用いるのが好ましい。
本発明の方向性電磁鋼板に用いる鋼素材は、上記成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物である。
ただし、鉄損特性の改善を目的として、Ni:0.010〜1.50mass%、Cr:0.01〜0.50mass%、Cu:0.01〜0.50mass%、P:0.005〜0.50mass%、Sb:0.005〜0.50mass%、Sn:0.005〜0.50mass%、Bi:0.005〜0.50mass%、Mo:0.005〜0.10mass%、B:0.0002〜0.0025mass%、Te:0.0005〜0.010mass%、Nb:0.0010〜0.010mass%、V:0.001〜0.010mass%およびTa:0.001〜0.010mass%のうちから選ばれる1種または2種以上を適宜含有してもよい。
次に、本発明の方向性電磁鋼板の製造方法について説明する。
前述した本発明に適合する成分組成を有する鋼を常法の精錬プロセスで溶製した後、常法の造塊−分塊圧延法または連続鋳造法で鋼素材(スラブ)を製造してもよいし、あるいは、直接鋳造法で100mm以下の厚さの薄鋳片を製造してもよい。上記スラブは、常法に従い、例えば、インヒビター成分を含有する場合には、1400℃程度の温度に再加熱し、一方、インヒビター成分を含まない場合には、1250℃以下の温度に再加熱した後、熱間圧延に供する。なお、インヒビター成分を含有しない場合は、鋳造後、スラブを再加熱することなく直ちに熱間圧延に供してもよい。また、薄鋳片の場合は、熱間圧延を省略してそのまま以後の工程に進めてもよい。
次いで、上記熱間圧延して得た熱延板は、必要に応じて熱延板焼鈍を施す。この熱延板焼鈍の温度は、良好な鉄損特性を得るためには、800〜1150℃の範囲とするのが好ましい。800℃未満では、熱間圧延で形成されたバンド組織が残留し、整粒の一次再結晶組織を得ることが難しくなり、二次再結晶粒の成長が阻害されるおそれがある。一方、1150℃を超えると、熱延板焼鈍後の粒径が粗大化し過ぎて、やはり、整粒の一次再結晶組織を得ることが難しくなるからである。
熱間圧延後あるいは熱延板焼鈍後の鋼板は、1回の冷間圧延または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延により最終板厚の冷延板とする。上記中間焼鈍の焼鈍温度は、900〜1200℃の範囲とするのが好ましい。900℃未満では、中間焼鈍後の再結晶粒が細かくなり、さらに、一次再結晶組織におけるGoss核が減少して製品板の鉄損特定が低下するおそれがある。一方、1200℃を超えると、熱延板焼鈍と同様、結晶粒が粗大化し過ぎて、整粒の一次再結晶組織を得ることが難しくなるからである。
また、上記冷間圧延における最終板厚とする最終冷間圧延は、前述した理由から、各パス間での時効処理における時効温度T(K)および時効時間t(s)を、下記(1)式を満たすように調整して圧延する必要がある。

Figure 0006041110
(ただし、T:時効温度(K)、t:時効時間(s)、D:Cの拡散係数)
なお、上記式中のDはCの拡散係数、DはCの拡散定数(=0.394(mm/sec))、QはCの活性化エネルギー(=80.2(kJ/mol))、Rはガス定数(=8.31(J/mol・K))である。
冷間圧延中に必然的に起こる時効現象を、上記(1)式を満たすよう制御することによって、C,N等の侵入型元素による転位の固着が起こり難くなり、一次再結晶集合組織の<111>//ND方位が増加する。ただし、<111>//ND方位の増加は、鉄損特性にとって好ましいことではないので、後述する一次再結晶焼鈍における急速加熱とその途中の保定処理を組合せなければ、鉄損特性の改善効果は得られない。
(1)式の左辺の値は、2.0×10−7を超えると、一次再結晶集合組織の<111>//ND方位が低下し、二次再結晶後の{110}<001>への方位集積度が低下するため、2.0×10−7以下とする必要がある。<111>//ND方位をさらに増加させる観点からは、上記(1)式左辺の値は、5.0×10−8以下に制御するのが好ましい。上記値への制御は、リバース圧延機、タンデム圧延機のいずれでも、圧延速度やクーラント量を調整することにより、容易に行うことができる。なお、コイル長手方向で安定した鉄損特性を得るためには、コイル全長にわたって上記条件を満たすことが好ましい。
また、生産性を確保する観点からは、冷間圧延中の時効温度Tは50〜400℃、時効時間tは0.1〜3600秒の範囲とすることが好ましい。上記時効条件の範囲であれば、時効時間を短時間化することができるので、生産性を阻害したり、製造コストが上昇したりするのを抑制することができる。
ここで、上記(1)式左辺の値を求めるに当たっては、リバース圧延機で冷間圧延するときは、時効温度Tとして、圧延後のコイル巻き取り直後の鋼板温度を用いることができる。これは、実際には、巻き取り後のコイル温度は低下し、特にコイル端部での温度低下は大きいが、本発明は、時効を積極的に利用するものではないため、問題にならないからである。また、時効時間tは、次パスまでの待機時間を用いることができる。なお、上記計算を簡便化するため、巻き取り温度を一定として1パスの(1)式左辺の値を求め、これにパス間回数(パス回数−1)を掛けて、全パスの(1)式左辺の値を求めてもよい。
一方、タンデム圧延機で冷間圧延するときは、時効温度Tとして、各スタンド間の鋼板温度を、時効時間tとして、各スタンド間を鋼板が通過する時間を用いることができる。したがって、この計算を簡便化するためには、各スタンド間の鋼板温度を一定温度に制御して、この温度を時効温度Tとし、タンデム圧延機通過時間を時効時間tとして、(1)式左辺の値を求めてもよい。
なお、リバース圧延、タンデム圧延のいずれの場合も、最終パスは、圧延後の鋼板形状を矯正するため低圧下率で圧延することから、圧延後の鋼板温度は常温付近の温度となることが多い。このような場合には、最終パス後の時効は無いものとして、(1)式左辺の値を計算してもよい。
なお、最終冷間圧延における冷延圧下率は、<111>//ND方位を十分発達させる観点から、80〜95%の範囲とすることが好ましい。
最終板厚とした冷延板は、鋼板表層下にサブスケール層を形成するため、湿潤雰囲気下で、800〜900℃の温度範囲とするのが好ましい。
ここで、本発明において重要なことは、上記一次再結晶焼鈍の加熱過程の200〜700℃の区間を50℃/s以上で急速加熱するとともに、250℃以上500℃未満のいずれかの温度で処理時間が0.5〜10秒の保定処理を1〜4回施し、さらに、500℃以上700℃以下のいずれかの温度で処理時間が0.5〜3秒の保定処理を1回または2回施すことである。
ここで、上記200〜700℃の区間における昇温速度(50℃/s以上)は、前述したように、保定する時間を除いた時間における昇温速度である。また、好ましい昇温速度は100〜400℃/sの範囲である。なお、本発明は一次再結晶焼鈍を50℃/s以上で急速加熱することが前提であり、昇温速度が50℃/s未満の場合は対象外とする。
また、上記回復が起こる温度域(250℃以上500℃未満)における保定処理時間は、回復に必要な0.5秒以上とすることが必要である。しかし、回復が進行し過ぎると、その後、さらに昇温しても再結晶しなくなるおそれがあるため、10秒以下に抑える必要がある。好ましくは0.5〜3秒の範囲である。また、この温度域での保定処理は、複数回行ってもよいが、回数が多くなるほど合計の保定処理時間が長くなるので、4回以内に収めるのが好ましい。また、合計保定処理時間は10秒以内とするのが好ましい。
また、初期酸化が起こる温度域(500℃以上700℃以下)における保定処理時間は、初期酸化に必要な0.5秒以上とすることが必要である。しかし、この温度域は再結晶が起こる温度域であり、ここでの再結晶は極力回避する必要があることから、3秒以内とすることが必要である。好ましくは0.5〜1秒の範囲である。なお、この温度域での保定処理は、複数回行ってもよいが、上記と同じ理由から、2回以内に抑えることが好ましい。また、合計保定処理時間は2秒以内とするのが好ましい。
なお、上記保定処理における保定温度は、必ずしも一定でなくてもよく、±10℃/s以下の低速の温度変動であれば、一定温度と見做すことができる。
上記の一次再結晶焼鈍を施した鋼板は、その後、MgOを主体とする焼鈍分離剤を鋼板表面に塗布、乾燥した後、仕上焼鈍を施し、Goss方位に高度に集積させた二次再結晶組織を発達させるとともに、フォルステライト被膜を形成させる。仕上焼鈍の焼鈍温度は、二次再結晶を発現させるためには800℃以上で行うことが、また、二次再結晶を完了させるためには800℃以上の温度で20時間以上保持することが好ましい。さらに、フォルステライト被膜を形成し、純化処理するためには、1200℃程度の温度まで加熱し、水素雰囲気下で1時間以上保持することが好ましい。
仕上焼鈍後の鋼板は、その後、水洗やブラッシング、酸洗等で、鋼板表面に付着した未反応の焼鈍分離剤を除去した後、平坦化焼鈍を施して形状矯正するのが、鉄損の低減には有効である。これは、仕上焼鈍は、通常、コイル状態で行うため、コイルの巻き癖が付き、これが原因で、鉄損測定時に特性が劣化することがあるためである。
さらに、鋼板を積層して使用する場合には、上記平坦化焼鈍において、あるいは、その前後で、鋼板表面に絶縁被膜を被成することが有効である。特に、鉄損の低減を図るためには、絶縁被膜として、鋼板表面に張力を付与する張力付与被膜を適用するのが好まく、例えば、従来公知の、リン酸塩を主体とする絶縁被膜を適用することが好ましい。なお、その他、バインダーを介して張力被膜を塗布する方法や、物理蒸着法や化学蒸着法により無機物を鋼板表層に蒸着させる方法を採用すると、被膜密着性に優れかつ著しく鉄損低減効果が大きい絶縁被膜を形成することができるので、より好ましい。
さらに、本発明においては、鉄損をより低減するために、磁区細分化処理を施すことが好ましい。磁区細分化処理の方法としては、最終製品板に電子ビームやレーザー、プラズマ等を照射することによって連続的または断続的な線状の熱歪領域を導入する方法、ケガキやローラー等で連続的または断続的な線状の塑性歪領域を導入する方法、エッチングで連続的または断続的な線状の溝を形成する方法、ならびに、最終板厚に冷間圧延した鋼板に、その後の工程で鋼板表面にエッチングで連続的または断続的な線状の溝を形成する方法等の一般的に行われている方法を用いることができる。
C:0.062mass%、Si:3.40mass%、Mn:0.12mass%、Al:0.023mass%、Se:0.025mass%およびN:0.008mass%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼スラブを連続鋳造法で製造し、1.420℃の温度に再加熱した後、熱間圧延して板厚2.2mmの熱延板とし、1020℃×30秒の熱延板焼鈍を施し、一次冷間圧延して1.5mmの中間板厚とし、1100℃×30秒の中間焼鈍を施し、最終冷間圧延して板厚0.23mmの冷延板に仕上げた。
上記最終冷間圧延は、リバース圧延機またはタンデム圧延機を用いて行い、圧延途中において必然的に起こる時効の程度を示す、先述した(1)式左辺の値を計算し、その結果を表1に示した。なお、上記(1)式左辺の値の計算においては、リバース圧延の場合は、圧延後の巻取り温度を圧延速度および/またはクーラント量を調整して一定温度として、その温度を時効温度Tとし、次パスまでの待機時間を時効時間tとし、パス回数が6回のときは、1パスの(1)式左辺の値を求め、それにパス間回数5を掛けた値とした。また、タンデム圧延の場合は、各スタンド間の板温をクーラント量を調整して一定温度として、その温度を時効温度Tとし、各スタンド間の通過時間の合計を時効時間tとして計算した。なお、リバース圧延、タンデム圧延のいずれの場合も、形状矯正のため、最終パスを軽圧下で圧延し、圧延後の鋼板温度が常温程度であったときには、時効は無いものと見做した。
次いで、55vol%H−45vol%Nの湿潤雰囲気下での830℃×90秒の脱炭焼鈍を兼ねた一次再結晶焼鈍を施した。なお、上記一次再結晶焼鈍は、830℃までの昇温過程における200〜700℃間の昇温速度を100℃/sとし、その加熱途中の350℃および550℃の各温度で0.8秒間該温度に保持する保定処理を各1回ずつ施した。
次いで、MgOを主体とする焼鈍分離剤を鋼板表面に塗布、乾燥した後、さらに、二次再結晶させた後、1200℃×5時間の純化処理を行う仕上焼鈍を施し、製品コイルとした。なお、仕上焼鈍の雰囲気は、純化処理する1200℃保定時はH、昇温時および降温時はNとした。
上記のようにして得た仕上焼鈍後の製品コイルから、鋼板幅方向に幅100mmの試験片を各条件で10枚ずつ採取し、JIS C2556に記載の方法で鉄損W17/50を測定して平均値を求めた。なお、上記試験片は、製品コイルの長手方向両端部と中央部の3箇所から採取し、最も高い鉄損値をそのコイルの代表値として採用した。その結果を表1に併記した。同表から、本発明を適用することで鉄損の低い方向性電磁鋼板が得られることがわかる。
Figure 0006041110
C:0.025mass%、Si:3.15mass%、Mn:0.10mass%、Al:0.004mass%、N:0.0033mass%、S:0.0018mass%、Sb:0.029mass%、P:0.041mass%およびMo:0.010mass%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼を溶製し、連続鋳造法で鋼スラブとした後、1230℃に再加熱し、熱間圧延して板厚2.0mmの熱延板とし、1025℃×30秒の熱延板焼鈍を施した後、冷間圧延して最終板厚0.23mmの冷延板とした。
なお、上記冷間圧延は、4スタンドのタンデム圧延機を用いて行い、各スタンド間の鋼板温度(時効温度)を200℃以下、かつ、各スタンド間の合計時間(時効時間)が10秒以下になるように調整して、実施例1と同様にして求めた(1)式左辺の値が2.0×10−7以下になるようにした。
次いで、上記冷延板の表面に、エッチング加工で。板幅方向に幅:100μm×深さ20μmの線状溝を、圧延方向に3mm間隔で形成する磁区細分化処理を施した。
次いで、55vol%H−45vol%Nの湿潤雰囲気下での860℃×90秒の脱炭焼鈍を兼ねた一次再結晶焼鈍を施した。なお、上記一次再結晶焼鈍は、860℃までの加熱過程における200〜700℃間の昇温速度を150℃/sとし、さらに、その加熱途中の表2に示した温度・時間で、0〜4回の保定処理を施した。
次いで、MgOを主体とする焼鈍分離剤を鋼板表面に塗布、乾燥した後、さらに、二次再結晶させた後、1200℃×5時間の純化処理を行う仕上焼鈍を施し、製品コイルとした。なお、仕上焼鈍の雰囲気は、純化処理する1200℃保定時はH、昇温時および降温時はNとした。
上記のようにして得た仕上焼鈍後の製品コイルから、鋼板幅方向に幅100mmの試験片を各条件で10枚ずつ採取し、JIS C2556に記載の方法で鉄損W17/50を測定して平均値を求めた。なお、上記試験片は、製品コイルの長手方向両端部と中央部の3箇所から採取し、最も高い鉄損値をそのコイルの代表値として採用した。その結果を表2に併記した。同表から、本発明を適用することで鉄損の低い方向性電磁鋼板が得られることがわかる。また、本発明に適合する発明例は、加熱途中において1回のみの保定処理を施したNo.2の例よりも鉄損が低く、優れていることもわかる。
Figure 0006041110
表3に記載の成分組成を有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼スラブを連続鋳造法で製造し、1400℃の温度に再加熱した後、熱間圧延して板厚2.2mmの熱延板とし、1000℃×30秒の熱延板焼鈍を施した後、リバース圧延機で冷間圧延して最終板厚0.22mmの冷延板に仕上げた。
上記リバース圧延機での冷間圧延は、5パスで行い、各パスの巻き取り温度(時効温度T)が100℃以下、次パスまでの待機時間(時効時間t)が10分以下になるように調整して、各パスにおける(1)式左辺の値が5.0×10−8以下、4パス間合計で2.0×10−7以下になるようにした。
その後、50vol%H−50vol%Nの湿潤雰囲気下での840℃×60秒の脱炭焼鈍を兼ねた一次再結晶焼鈍を施した。この際、840℃までの加熱過程における200〜700℃間の昇温速度を300℃/sとし、さらにその加熱途中の450℃および525℃の各温度で該温度に0.5秒間保持する保定処理を施した。
次いで、MgOを主体とする焼鈍分離剤を鋼板表面に塗布、乾燥した後、二次再結晶させた後、1220℃×4時間の純化処理を行う仕上焼鈍を施した。なお、仕上焼鈍の雰囲気は、純化処理する1220℃保定時はH、昇温時および降温時はArとした。
その後、上記仕上焼鈍後の鋼板表面に、鋼板の圧延方向に2.5mm間隔で、鋼板の幅方向に電子ビームを照射し、磁区細分化処理を施した。
上記のようにして得た磁区細分化処理後の製品コイルから、鋼板幅方向に幅100mmの試験片を各条件で10枚ずつ採取し、JIS C2556に記載の方法で鉄損W17/50を測定して平均値を求めた。なお、上記試験片は、製品コイルの長手方向両端部と中央部の3箇所から採取し、最も高い鉄損値をそのコイルの代表値として採用した。その結果を表3に併記した。同表から、本発明を適用することで鉄損の低い方向性電磁鋼板が得られることがわかる。
Figure 0006041110

Claims (5)

  1. C:0.002〜0.10mass%、Si:2.0〜8.0mass%、Mn:0.005〜1.0mass%を含有し、かつ、Al:0.010〜0.050mass%およびN:0.003〜0.020mass%を含有し、あるいは、Al:0.010〜0.050mass%、N:0.003〜0.020mass%、Se:0.003〜0.030mass%および/またはS:0.002〜0.03mass%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼素材を熱間圧延して熱延板とし、熱延板焼鈍を施した後または熱延板焼鈍を施すことなく、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延して最終板厚の冷延板とし、脱炭焼鈍を兼ねた一次再結晶焼鈍を施し、鋼板表面に焼鈍分離剤を塗布した後、仕上焼鈍する一連の工程からなる方向性電磁鋼板の製造方法において、
    上記冷間圧延の最終冷間圧延における時効温度T(K)および時効時間t(s)が下記(1)式を満たし、かつ、
    上記一次再結晶焼鈍の加熱過程の200〜700℃の区間を50℃/s以上で急速加熱するとともに、
    250℃以上500℃未満のいずれかの温度で処理時間が0.5〜10秒の保定処理を1〜4回施し、500℃以上700℃以下のいずれかの温度で処理時間が0.5〜3秒の保定処理を1回または2回施すことを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。

    Figure 0006041110
    (ただし、T:時効温度(K)、t:時効時間(s)、D:Cの拡散係数)
  2. C:0.002〜0.10mass%、Si:2.0〜8.0mass%、Mn:0.005〜1.0mass%を含有し、かつ、Al:0.015mass%未満、N:0.0050mass%未満、Se:0.0070mass%未満およびS:0.0050mass%未満を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼素材を熱間圧延して熱延板とし、熱延板焼鈍を施した後または熱延板焼鈍を施すことなく、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延して最終板厚の冷延板とし、脱炭焼鈍を兼ねた一次再結晶焼鈍を施し、鋼板表面に焼鈍分離剤を塗布した後、仕上焼鈍する一連の工程からなる方向性電磁鋼板の製造方法において、
    上記冷間圧延の最終冷間圧延における時効温度T(K)および時効時間t(s)が下記(1)式を満たし、かつ、
    上記一次再結晶焼鈍の加熱過程の200〜700℃の区間を50℃/s以上で急速加熱するとともに、
    250℃以上500℃未満のいずれかの温度で処理時間が0.5〜10秒の保定処理を1〜4回施し、500℃以上700℃以下のいずれかの温度で処理時間が0.5〜3秒の保定処理を1回または2回施すことを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。

    Figure 0006041110
    (ただし、T:時効温度(K)、t:時効時間(s)、D:Cの拡散係数)
  3. 上記鋼素材は、上記成分組成に加えてさらに、Ni:0.010〜1.50mass%、Cr:0.01〜0.50mass%、Cu:0.01〜0.50mass%、P:0.005〜0.50mass%、Sb:0.005〜0.50mass%、Sn;0.005〜0.50mass%、Bi:0.005〜0.50mass%、Mo:0.005〜0.100mass%、B:0.0002〜0.0025mass%、Te:0.0005〜0.0100mass%、Nb:0.0010〜0.0100mass%、V:0.001〜0.010mass%およびTa:0.001〜0.010mass%のうちから選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
  4. 冷間圧延後のいずれかの段階で、鋼板表面に圧延方向と交差する方向に溝を形成して磁区細分化処理を施すことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
  5. 絶縁皮膜を被成した鋼板表面に、圧延方向と交差する方向に連続的または断続的に電子ビームあるいはレーザーを照射して磁区細分化処理を施すことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
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