JP4686751B1 - 冷間加工応力腐食割れ防止方法 - Google Patents

冷間加工応力腐食割れ防止方法 Download PDF

Info

Publication number
JP4686751B1
JP4686751B1 JP2010004267A JP2010004267A JP4686751B1 JP 4686751 B1 JP4686751 B1 JP 4686751B1 JP 2010004267 A JP2010004267 A JP 2010004267A JP 2010004267 A JP2010004267 A JP 2010004267A JP 4686751 B1 JP4686751 B1 JP 4686751B1
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
steel
laser
inert gas
pulse
less
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2010004267A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2011143417A (ja
Inventor
英介 峰原
Original Assignee
独立行政法人 日本原子力研究開発機構
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by 独立行政法人 日本原子力研究開発機構 filed Critical 独立行政法人 日本原子力研究開発機構
Priority to JP2010004267A priority Critical patent/JP4686751B1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4686751B1 publication Critical patent/JP4686751B1/ja
Publication of JP2011143417A publication Critical patent/JP2011143417A/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Lasers (AREA)
  • Laser Beam Processing (AREA)

Abstract

【課題】水分や塩素成分など腐食性要因の排除、及び加工対象物の耐熱性や耐薬品性などの制限の考慮を要せず、最終製品に求められる強度を損なわずに、冷間加工応力腐食割れを防止することができる方法を提供する。
【解決手段】冷間加工により引張応力が残留している表面硬化層を有する鋼鉄を、開放端部を有する防護壁内に位置づけて、不活性ガスを高速噴射し、鋼鉄の表面に1パルス当たり照射エネルギー面密度が0.5J/cm以下で且つ5ps以下のパルス幅のfs域極短パルスkW級高平均出力レーザーを照射して表面硬化層を油煙状に蒸発させ、不活性ガスにより、表面硬化層からの剥離物質の酸化並びに対流及びレーザー照射野周囲への堆積を防止して、温度上昇を抑制し、表面硬化層が蒸発して現出する新しい表面に圧縮残留応力を発生させず且つ蒸発熱による引っ張り残留応力を発生させない。
【選択図】なし

Description

本発明は、ほぼすべての鋼鉄及び合金鋼鉄(ここでは含有率が少ない不純物元素を含む鋼鉄及び含有率が比較的高い複数の元素からなる合金鋼鉄を「鋼鉄及び合金鋼鉄」と総称する)の冷間加工応力腐食割れを防止する方法に関する。
鋼鉄及び合金鋼鉄を冷間加工する際に発生する割れ感受性と残留引っ張り応力を原因として、腐食性環境下で応力腐食割れが発生することはよく知られている。応力腐食割れは、冷間加工により金属表面に導入された割れ感受性と、冷間加工された金属が置かれる腐食性環境と、腐食性環境下で割れ感受性を有する部分に残留する引っ張り応力と、の作用によって発生する。冷間加工により金属表面は多結晶となり、相変化した結晶粒や結晶の転位や結晶粒界に結晶の変性した金属酸化物その他の混合物が発生する(割れ感受性の導入)。次いで、割れ感受性が導入された金属表面雰囲気が腐食性環境下、たとえば酸性の環境下にあれば金属表面の腐食が進行する(腐食の進行)。このとき転位面、相変化界面、粒界面に存在する結晶の変性した酸化物や混合物などに腐食が不規則に不均等に進行しやすく、表面に狭い割れ目が発生し、この場所に引っ張り応力が残っていればこの割れ目は更に深くなる。引っ張り応力で上記が繰り返されて割れが急速に進展し、深い応力腐食割れが発生する。
冷間加工応力腐食割れは、有史以来多くの鋼鉄及び合金鋼鉄製の多くの道具、機器、車両、構造部品類において、また現代においても多くの原子炉、発電設備、重化学工業生産設備、橋橋梁、建築鋼鉄及び合金鋼鉄構造物、航空機、自動車、鉄道その他あらゆる鋼鉄及び合金鋼鉄製のすべてのものの製造と保守の費用を著しく増大させ、性能機能、使用可能期間を著しく制限し、また、割れ発生時期が予測しがたいために、多くの事故の原因となっている。
冷間加工応力腐食割れを防止するために、腐食の原因となる水分や水中の腐食性成分などの環境的要因を排除する方法が実施されている。この方法は、冷却水や表面に凝集した水等のpHや、塩素成分等の腐食性環境基準を厳しく制御して、進展を遅らせるものである。しかし、腐食環境要因を制限する方法は常に適用できる技術ではなく、装置や製造条件によって適用できない場合が多い。
鋼鉄及び合金鋼鉄の一部或いは全体を昇温させるアニール(熱焼鈍)によって、引っ張り残留応力をほぼ0になるように緩和する方法もある。しかし、熱処理ゆえに、大型のものや複雑な形状物、熱に弱い部品部分を具備するものには適用できない。また、鍛造圧延等により高い引っ張り強度を持たせた鋼材では、アニールにより強度が低下するために、高い剛性や強度が必要な部品や装置に対しては適用できない。
対象物対象箇所或いは全体の各面に概略垂直方向に鋼球或いは鋼片を高速で投射して衝撃を与え、この圧縮力によって水平面上の引っ張り残留応力を圧縮残留応力に変える方法もある。しかし、すべての場合に常に利用できるとは限らず、また効果が比較的短時間しか持続せず、繰り返し処理する必要がある。また、通常は周辺機器の干渉等から利用できない場合も多い。また、衝撃により散乱する鋼球鋼片が機器の健全性を損なうことが多く、これらの破片の回収が困難な状況では利用できない。
水中で、対象物対象箇所或いは全体の各面に、概略垂直方向に高出力レーザー光又は高速水ジェットを投射して、表面で発生する泡の消滅パルス圧による衝撃を与え、この圧縮力によって水平面上の引っ張り残留応力を圧縮残留応力に変える方法もある。しかし、超大型構造物、小型のもの、複雑な形状物では適用が困難、水中に入れられない部品部分があれば適用できず、水使用を嫌う場所での適用が困難である。
対象物対象箇所或いは全体を、研磨部分を中心に冷却しながら発熱を緩和して硬化層を新たに作らないように、ダイヤモンド研磨材等で粗く除去し、さらに残りの残渣硬化層を電界をかけ或いはかけずに酸性溶液に浸して腐食除去する方法、或いはこのうち研磨除去のみ用いる方法、腐食除去のみ用いる方法もある。しかし、超大型構造物、小型のもの、複雑な形状物では適用が困難であり、酸性腐食性薬品に弱い部品部分には適用できず、使用場所での適用が困難である。
本発明者らは、超短パルスレーザー光を用いて、引っ張り応力が残留する表面層部分を蒸発除去し、さらに蒸発により生じた新たな表面層に熱による新たな引っ張り応力が生じない方法により、冷間加工応力腐食割れを防止できることを知見した(特許文献1及び2、非特許文献1〜3)。また、超短パルスレーザー光を発生させるための装置として、自由電子レーザー装置を開発した(特許文献3)。
特開2006−61966号公報 特開2005−131704号公報 特開2003−17788号公報
「フェムト秒kW自由電子レーザーを用いた冷間加工応力腐食割れ防止技術」(社)日本原子力学会「2004年秋の大会」(2004年9月15日) 「フェムト秒10kW球FELを用いた応力腐食割れ防止技術開発」JAERI−Conf 2004−009 「フェムト秒FELを用いた原子炉材冷間加工応力腐食割れ防止技術」加速器学会年会・リニアック技術研究会プロシーディングス(2004年)
従来の方法と異なり、水分や塩素成分などの加工環境による腐食性要因を排除する必要がなく、加工対象物の耐熱性や耐薬品性などの素材による制限を考慮する必要がなく、最終製品に求められる強度を損なうことなく、冷間加工応力腐食割れを防止することができる方法を提供することを目的とする。
本発明は、fs域極短パルスkW級高平均出力レーザー照射及びレーザー照射野周囲の温度上昇を抑制することにより、冷間加工により発生する鋼鉄又は合金鋼鉄の表面層の引っ張り残留応力を排除する方法を提供する。
具体的には、冷間加工により引っ張り応力が残留している表面硬化層を有する鋼鉄又は合金鋼鉄からなる冷間加工品(以下、単に「鋼鉄」と称す)を、開放端部を有する防護壁内に位置づけて、当該防護壁内の当該鋼鉄に向けて不活性ガスを噴出して当該鋼鉄の表面を不活性ガスリッチ雰囲気とし、当該鋼鉄の表面に1パルス当たり照射エネルギー面密度が0.5J/cm以下で且つ5ps以下のパルス幅のfs域極短パルスkW級高平均出力レーザーを照射して当該表面硬化層を油煙状に蒸発させると共に、当該不活性ガスリッチ雰囲気とすることで当該レーザー照射により当該表面硬化層から剥離された物質の酸化を防止し、且つ当該不活性ガス噴出により当該剥離された物質が対流し当該レーザー照射野周囲へ堆積することを防止して当該表面硬化層の温度上昇を抑制し、当該表面硬化層が蒸発して現出する新しい表面に圧縮残留応力を発生させず且つ蒸発熱による引っ張り残留応力を発生させない、冷間加工応力腐食割れ防止方法が提供される。
前記fs域極短パルスkW級高平均出力レーザーは、超伝導リニアック駆動自由電子レーザー装置により発生させることができる。
レーザーが物質に入射すると光のまま表皮深さ(スキンデプス:δ)まで侵入し、光エネルギーは熱エネルギーに変わる。光のまま侵入する表皮深さは、下記式1で与えられる。
δ=(2/(ω・μ・σ))1/2 式(1)
式中、ω=2π×周波数、μ=4π×10−7、σ=導電率
たとえば、近赤外線の場合には、スキンデプスδは約20〜30nmとなる。
レーザー照射した際に、レーザーで発生した熱が伝わる距離(熱拡散長:L)は、レーザーパルス時間幅(T)と熱拡散係数(D)との積の平方根であり、下記式(2)で与えられる。
L=(D×T)1/2 式(2)
たとえば、ステンレス鋼に対して5psのパルス時間幅のレーザーを照射すると、熱拡散長Lは約10nmとなる。
よって、レーザーを所定時間連続照射することで所望厚み及び所望面積の表面硬化層を除去するために必要なエネルギーを得ることができる。例えば、冷間加工による鋼鉄又は合金鋼鉄に生じる60μmの厚みの表面硬化層を2mm×2mmの面積で除去するためには、0.5J/cm以下で且つ5ps以下のパルス幅のfs域極短パルスkW級高平均出力レーザー(72MHz)をスキャンしながら約10分間連続照射すればよい。レーザー照射野では、鋼鉄の融点より遥かに高温(約2000℃)まで瞬時に加熱するに足りる熱エネルギーが与えられて表面硬化層が油煙状に蒸発する。
しかし、10分間の連続照射の間に、レーザー照射野の周囲の物質が酸化されたり、いったん剥離した物質が再び表面に堆積したりすると、鋼鉄表面が溶融温度まで加熱されて溶融し、次いで凝固することにより固液界面に引張残留応力が発生する。
そこで、鋼鉄表面に不活性ガスを噴射して鋼鉄表面を不活性ガスリッチ雰囲気として酸化を防止し、不活性ガスの乱流によって鋼鉄表面から剥離した物質を吹き飛ばして堆積を防止する。酸化を防止するために、不活性ガスはアルゴン、窒素、二酸化炭素、ヘリウム、クリプトンなどが好ましく、鋼鉄表面に滞留させて酸化を十分に防止するためには空気よりも重いアルゴンやクリプトンが好ましい。不活性ガスの供給速度は、鋼鉄表面を不活性ガスリッチ雰囲気に維持し且つ剥離した物質を吹き飛ばすことができればよく、約10〜約30m/sが好ましい。このようにして、レーザー照射野周囲の鋼鉄表面の温度を約500℃以下、好ましくは約100℃以下、より好ましくは約50℃以下、最も好ましくは約30〜約40℃に維持することで、熱の影響による新たな引張残留応力の発生なしに、表面硬化層を除去することができる。表面温度が500℃を超えるとステンレス鋼の相変化が生じ、固液界面の異なる相の間で引張残留応力が生じる。
本発明によれば、従来方法で必要とされていた鋼球鋼片、水、酸性腐食溶液、熱源、研磨剤等を要せずに、また対象物の重量、形状、作業場所による制限もなく、鋼鉄や合金鋼鉄の冷間加工品の引っ張り応力が残留している表面硬化層を容易に除去して、新たに現出する表面層に熱に起因する応力を発生させないので、冷間加工応力腐食割れを防止できる。
図1は、本発明の方法により0.5J/cm以下で且つ5ps以下のパルス幅のfs域極短パルスkW級高平均出力レーザーをステンレス鋼に照射した場合のステンレス鋼表面の変化を示す模式図である。 図2は、本発明の方法により0.5J/cm以下で且つ5ps以下のパルス幅のfs域極短パルスkW級高平均出力レーザーをステンレス鋼に照射した場合の蒸発の様子を示す写真である。 図3は、本発明の方法による蒸発跡の電子顕微鏡写真である。 図4は、通常のレーザーアブレーションを行った場合の蒸発跡の電子顕微鏡写真である。 図5は、本発明の方法によるエネルギー面密度と表面温度との関係を示すグラフである。 図6は、本発明の方法によるレーザーパルス時間幅と表面温度との関係を示すグラフである。 図7は、温度上昇と引っ張り残留応力との関係を示すX線回折結果のグラフである。
添付図面を参照しながら本発明を具体的に説明する。
図1は、本発明の方法により0.5J/cm以下で且つ5ps以下のパルス幅のfs域極短パルスkW級高平均出力レーザーをステンレス鋼に照射した場合のステンレス鋼表面の変化を示す模式図である。本発明の方法では実際には非常に高速で連続的にレーザー照射を行うが、図1を用いて本発明の方法により生じていると考えられる表面硬化層の除去を説明する。図1において、冷間加工されたステンレス鋼1は、引っ張り応力2が残留している表面硬化層3を有する。本発明の方法により0.5J/cm以下で且つ5ps以下のパルス幅のfs域極短パルスkW級高平均出力レーザー9を照射すると、表面硬化層3の最表面層5が瞬時に蒸発し、引っ張り応力2の一部が最表面層5の蒸発と共に除去される。このとき、本発明の方法では、ステンレス鋼表面に不活性ガスが高速で噴射されているため、不活性ガスリッチ雰囲気であり、剥離した物質の酸化が防止される。また、高速噴射された不活性ガスにより剥離した物質は同伴除去されて、新たに現出する表面6に堆積することが防止される。この作用が高速で連続して生じることで、順次新たに現出する表面6、7及び8に引っ張り応力が新たに残留することがなく、最終的に現出する表面層4には引っ張り応力が残留しないことになる。
本発明は、0.5J/cm以下で且つ5ps以下のパルス幅のfs域極短パルスkW級高平均出力レーザーを照射すること、及び照射対象物に対してアルゴン(不活性ガス)を高速噴射して照射野を不活性ガスリッチ雰囲気として照射野周囲の温度上昇を抑制することを特徴とする。本発明の条件でステンレス鋼表面を処理した結果を以下に説明する。
図2は、本発明の方法により0.5J/cm以下で且つ5ps以下のパルス幅のfs域極短パルスkW級高平均出力レーザーをステンレス鋼に連続照射している場合の表面硬化層の蒸発の様子を示す写真である。レーザーの照射野の表面硬化層は油煙状に立ち上がって蒸発し、アブレーションのように爆発的にレーザーの入射角の反対側に飛び出していないことが確認できる。
図3は、本発明の方法により直径150μmのレーザーを照射した蒸発跡の電子顕微鏡写真である。写真上部がレーザー照射野であり、写真下部がレーザー照射野周囲である。レーザー照射野では、冷間加工により表面が硬化することにより形成される細かな結晶粒及び結晶粒界の物質が表面の蒸発と一緒に除去されて、大きな結晶粒だけが残っている様子が観察される。レーザー照射野周囲のレーザー強度が低い部分では表面に細かな結晶粒が残っている様子が観察される。このことからも、蒸発後の表面には、アブレーションのように塊状の飛散が起こった後ではなく、緩やかな蒸発が生じていることが確認できる。
比較のために、照射対象物に対してガス噴射無しでスポット径150μmのQスイッチYAGレーザーを用いて、波長1.064μm、エネルギー100mJ、レーザーパルス時間幅100nsec、繰り返し周波数10Hzの条件で、通常のレーザーアブレーションを行った場合の蒸発跡の電子顕微鏡写真を図4に示す。写真中央に、塊状の飛散が起こった跡が観察される。この写真中央のクレータの直径は約150μmで、図3に示す本発明の方法による蒸発跡の横幅は約180μmであり、図3と図4とはほぼ同じ大きさの蒸発跡を示す。よって、本発明の方法が通常のアブレーションとは全く異なる作用効果を示すことが明らかである。
図5及び図6には、レーザー照射野周囲を不活性ガスリッチ雰囲気とした場合の例えば赤外線温度計による温度上昇(単位:℃)とレーザーのエネルギー面密度(単位:J/cm)及びパルス時間幅(単位:ps)との関係を示す。レーザーパルスのエネルギー面密度が0.5J/cmを超えると表面温度が急激に上昇し2000℃に達する。また、レーザーパルス時間幅が5psを超えると表面温度が急激に上昇してやはり2000℃に達する。ステンレス鋼は1500℃以上になると溶融し、もはや結晶が存在し得なくなる。溶融したステンレス鋼表面は凝固後に固体液体界面を形成し、境界面に引っ張り応力が発生する。
図7は、本発明の方法によりレーザー照射したステンレス鋼のX線回折結果を示すグラフである。図7(a)は、本発明により温度上昇を50℃以下に抑制した場合の結果を示し、残留応力がないことが確認できる。図7(b)は、温度上昇を抑制しなかった場合(表面温度2000℃程度)の結果を示し、250MPaの引っ張り残留応力が発生していることが確認できる。なお、X線回折と残留応力値との関係は、X線波長(λ)と結晶格子間隙(d)との関係:2dsinθ=nλから、応力がかかっていない状態での結晶格子間隙をdとすると、引っ張り応力がかかっている場合には結晶格子間隙dはdよりも長くなり、圧縮応力がかかっている場合には結晶格子間隙dはdよりも短くなる。また、ヤング率E=応力/変形量、ポアソン比=力と垂直方向の変形量/力と同方向の変形量であるから、ヤング率とポアソン比から応力を計算できる。
レーザーパルス照射のたびに音がすることから、試験片表面はレーザーによる圧縮応力を受けていることがわかった。しかし、図7より、レーザー照射終了後には圧縮応力が残留していないことが確認された。これは、レーザーによる熱の影響を排除したために、原子層レベルでの相変化が生じなかったことに起因すると考えられる。
図2に示すように、レーザー照射野のみゆっくりと蒸発して、レーザー照射野の周囲には熱が伝導せず、永久変形を引き起こす衝撃波も伝導しないことが確認された。0.5J/cm以下のエネルギー面密度で且つ5ps以下のレーザーパルス時間幅の条件では、数十ナノ秒以上の気中プラズマは発生せず、レーザー照射野は塑性変形するほどの長い時間にわたり変形したり移動したりすることがないので、振動波として通過するだけで降伏限界を超えず、永久的な安定した塑性変形を引き起こすことがなかった。これは、レーザー照射による熱の伝導がパルス時間幅の平方根の逆数に比例する距離以下の範囲に限られることによる。さらに、本発明では、レーザー照射野周囲雰囲気に不活性ガス(アルゴン)を高速噴射して蒸発した物質(フューム)が時間経過と共に沈降して積層することを回避し、フュームの積層による温度上昇を防止しているため、レーザー照射後であってもレーザー照射野周囲への熱伝導は極めて小さかった。
比較のために、エネルギー面密度を1J/cm、1J/cm〜10J/cm、10J/cmに変えて同様の実験を行った。0.5J/cm以下のエネルギー面密度の場合、レーザー照射後の試験片の表面に溶融及び熱ひずみが発生した様子は観察されなかった。1J/cmのエネルギー面密度の場合には、試験片の表面が溶けて熱の影響が周囲に認められた。1J/cmを超えるエネルギー面密度の場合には、試験片の表面に溶融と熱ひずみが発生したことが観察された。10J/cm以上のエネルギー面密度の場合には、試験片の表面に顕著な溶融と熱ひずみが発生したことが観察された。

Claims (4)

  1. 冷間加工により引っ張り応力が残留している表面硬化層を有する鋼鉄又は合金鋼鉄を、開放端部を有する防護壁内に位置づけて、当該防護壁内の当該鋼鉄又は合金鋼鉄に向けて不活性ガスを高速噴射し、当該鋼鉄又は合金鋼鉄の少なくとも表面を不活性ガスリッチ雰囲気とし、
    当該鋼鉄又は合金鋼鉄の表面に1パルス当たり照射エネルギー面密度が0.5J/cm以下で且つ5ps以下のパルス幅のfs域極短パルスkW級高平均出力レーザーを照射して、当該表面硬化層を油煙状に蒸発させ、
    高速噴射される当該不活性ガスにより、当該レーザー照射によって当該表面硬化層から剥離された物質の酸化及び当該レーザー照射野周囲への堆積を防止して、当該レーザーの照射野周囲の温度を500℃未満に抑制して、
    当該表面硬化層が蒸発して現出する新しい表面に圧縮残留応力を発生させず且つ蒸発熱による引っ張り残留応力を発生させない、冷間加工応力腐食割れ防止方法。
  2. 前記fs域極短パルスkW級高平均出力レーザーは、超伝導リニアック駆動自由電子レーザー装置により発生させる、請求項1に記載の方法。
  3. 前記不活性ガスは、アルゴン、窒素、二酸化炭素、ヘリウム、クリプトンから選択される、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記不活性ガスは、10〜30m/sの流速で噴射される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
JP2010004267A 2010-01-12 2010-01-12 冷間加工応力腐食割れ防止方法 Expired - Fee Related JP4686751B1 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2010004267A JP4686751B1 (ja) 2010-01-12 2010-01-12 冷間加工応力腐食割れ防止方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2010004267A JP4686751B1 (ja) 2010-01-12 2010-01-12 冷間加工応力腐食割れ防止方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP4686751B1 true JP4686751B1 (ja) 2011-05-25
JP2011143417A JP2011143417A (ja) 2011-07-28

Family

ID=44193891

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2010004267A Expired - Fee Related JP4686751B1 (ja) 2010-01-12 2010-01-12 冷間加工応力腐食割れ防止方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4686751B1 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN109551123A (zh) * 2018-12-17 2019-04-02 华东师范大学 皮秒激光诱导石英玻璃内部裂纹实现微流控器件制备的方法

Family Cites Families (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH0688120A (ja) * 1992-09-04 1994-03-29 Mitsubishi Heavy Ind Ltd ビーム加熱組織再生方法
JP4457207B2 (ja) * 2000-01-06 2010-04-28 独立行政法人 日本原子力研究開発機構 超伝導リニアック駆動自由電子レーザー装置
JP2003017788A (ja) * 2001-07-03 2003-01-17 Japan Atom Energy Res Inst 自由電子レーザー装置において、電子ビームからレーザー光への高い引出効率とフェムト秒領域極短パルスを実現する方法及び装置
JP4528936B2 (ja) * 2003-10-08 2010-08-25 独立行政法人 日本原子力研究開発機構 超短パルスレーザー光を用いたステンレス鋼表面の応力腐食割れ防止方法
JP2006061966A (ja) * 2004-08-30 2006-03-09 Japan Atom Energy Res Inst fs(フェムト秒)域極短パルスkW級高平均出力レーザーを用いて鋼鉄及びステンレス鋼を含む合金鋼鉄の冷間加工に伴う応力腐食割れを防止する方法
JP4719885B2 (ja) * 2006-05-29 2011-07-06 独立行政法人 日本原子力研究開発機構 放射性同位元素に汚染された表面近傍部位を非熱的レーザー剥離を用いて再溶融無く、再拡散無く、且つ再汚染無く除染する方法とその装置
JP2009012061A (ja) * 2007-07-06 2009-01-22 Enshu Ltd レーザ加工機

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN109551123A (zh) * 2018-12-17 2019-04-02 华东师范大学 皮秒激光诱导石英玻璃内部裂纹实现微流控器件制备的方法
CN109551123B (zh) * 2018-12-17 2021-08-24 华东师范大学 皮秒激光诱导石英玻璃内部裂纹实现微流控器件制备的方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2011143417A (ja) 2011-07-28

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US11819946B2 (en) Laser shock peening apparatuses and methods
CN110434332B (zh) 一种金属增材制造的在线热处理工艺
Zhang et al. Progress in applications of shockwave induced by short pulsed laser on surface processing
Jain et al. Development of underwater laser cutting technique for steel and zircaloy for nuclear applications
EP3313605B1 (en) Method of laser blackening of a surface, wherein the laser has a specific power density and a specific pulse duration
KR100675535B1 (ko) 유리의 절단 방법 및 그 장치
Zhou et al. Experimental study on laser microstructures using long pulse
Dausinger Femtosecond technology for precision manufacturing: Fundamental and technical aspects
US7651576B2 (en) Method of an ultra-short femtosecond pulse and KW class high average-power laser for preventing cold-worked stress corrosion cracking in iron steels and alloyed steels including stainless steels
JPS6324798B2 (ja)
Mustafa et al. Investigation of the ultrashort pulsed laser processing of zinc at 515 nm: Morphology, crystallography and ablation threshold
Xin et al. In-situ nitriding on the textured titanium alloy using femtosecond laser
Izawa et al. Ablation and amorphization of crystalline Si by femtosecond and picosecond laser irradiation
JP4686751B1 (ja) 冷間加工応力腐食割れ防止方法
Charee et al. Experimental investigation and modeling of laser surface melting process for AISI 9254 commercially high silicon spring steel
Sciti et al. Excimer laser-induced microstructural changes of alumina and silicon carbide
Razavi et al. Laser surface treatments of aluminum alloys
Pantsar et al. Laser microvia drilling and ablation of silicon using 355 nm pico and nanosecond pulses
Zhao et al. The effects of pulsed Nd: YAG laser irradiation on surface energy of copper
JP4528936B2 (ja) 超短パルスレーザー光を用いたステンレス鋼表面の応力腐食割れ防止方法
HU et al. Size effect on indentation depth of oxygen-free high purity copper induced by laser shock processing
JP2003328013A (ja) 多層材料の製造方法
Dahotre et al. Laser surface melting of W2 tool steel: effects of prior heat treatment
Koutsomichalis et al. Excimer laser interactions with an aluminum alloy
Peyre et al. Laser shock processing with small impacts

Legal Events

Date Code Title Description
TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140225

Year of fee payment: 3

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

S531 Written request for registration of change of domicile

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees