JP2009270136A - 一般銑を用いた極低炭素鋼の転炉吹錬方法 - Google Patents

一般銑を用いた極低炭素鋼の転炉吹錬方法 Download PDF

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Abstract

【課題】一般銑を用いて[C]=0.010質量%以下で且つ[P]=0.030質量%以下となる高品質な極低炭素鋼を確実に製造する。
【解決手段】[P]=0.06質量%以上の溶銑2を用いて、[C]=0.010質量%以下、且つ、[P]=0.030質量%以下となる極低炭素鋼を製造するに際し、上吹きでは、吹錬開始から40%〜60%の経過区間では、0.21≦L/L0≦0.24を満たすように酸素を吹く。また、その後は、0.26≦L/L0≦0.28を満たすように酸素を吹く。底吹きでは、吹錬開始から85%〜95%の経過区間では、底吹きのガスを0.02〜0.04Nm3/分/ton且つ0.017〜0.030Nm3/分/mm2を満たすようにガスを吹く。さらに、その後は、0.08〜0.11Nm3/分/ton且つ0.060〜0.080Nm3/分/mm2を満たすように吹く。
【選択図】図2

Description

本発明は、一般銑を用いた極低炭素鋼の転炉吹錬方法に関する。
従来より、[C]=0.010質量%以下である極低炭素鋼を製造するには、溶銑を転炉に装入して当該溶銑に対して酸素を吹き付ける吹錬を行っているのが一般的である。
特許文献1の極低炭素鋼の転炉吹錬方法では、上底吹き転炉を用いた精錬方法において、溶鋼の炭素濃度が0.002%〜0.05%以下の領域で、溶鋼重量当りの酸素供給速度F(Nm3/(min・ton))、均一混合時間τ(sec)、溶鋼炭素濃度C(重量%)、鋼浴深さL0 (m)及び上吹きガスによるキャビティー深さL(m)により表される、log[{F/(L/L0 )}/(C1/2 /τ)]なる値を1.5以上3以下に制御している。 また、特許文献1では、上記精錬方法において、上吹き火点面積Aと酸素供給速度Fにより表されるF/Aなる指標を0.20以上0.45以下としている。
特許文献2の極低炭素鋼を溶製する転炉製鋼法では、スラグレス吹錬において、転炉内溶銑のC含有量が0.02%以下となったところで、不活性ガスを溶銑中に0.5〜10m3/tonとなるように吹き込んでいる。
特許文献3の転炉吹錬方法では、極低炭素鋼を溶製するにあたり、上方から溶鋼1トン当たり100Nm3/時以下の供給速度で、上吹きガス噴流最大流速が静止湯面位置において100m/sec以上となるように酸素または酸素を含むガスを吹き付け、下方からは冷却ガスも含めて溶鋼1トン当たり合計10Nm3/時以上のガスを転炉内に吹き込んで溶鋼を攪拌しながら吹錬している。
特許文献1〜特許文献3の技術では、上述したように、極低炭素鋼を製造するに際し、転炉吹錬時における上吹き酸素量などの上吹きの条件を規定をしたり、底吹き酸素量などの下吹きの条件を規定している。
さて、極低炭素鋼以外の鋼種を製造するにあたって、上記に示した技術の他に転炉吹錬時における上吹きの条件や底吹きの条件を規定しているものとして、特許文献4や特許文献5に示すものがある。
特許文献4では、上底吹き転炉による高炭素鋼の溶製に際し、上吹きは、吹錬開始から吹錬全期間の60〜80%まで経過する吹錬期間においては、L/L0が0.6から0.7、吹錬全期間の60〜80%を経過した以降は L/L0が0.3から0.4の範囲になるようにし、底吹きは、吹錬開始から吹錬全期間の60〜80%まで経過する吹錬期間においては底吹き羽口からの攪拌用ガス吹込量を、最大吹込量の50〜70%に相当するガス吹込量範囲にし、吹錬全期間の60〜80%を経過した以降は底吹き羽口からの攪拌用ガス吹込量を、最大吹込量の80〜100%に相当するガス吹込量範囲になるようにしている。
特許文献5では、予備処理によって脱珪、脱りん及び脱硫を行った溶銑を上底吹き転炉に装入し、L/L0が0.40以下となるように、上吹きランス高さと送酸速度を調整して吹錬を行う他、吹錬の前半は上吹き酸素量を溶鋼1トン当たり2.6Nm3/分以上とし、全送酸素量の60〜80%に相当する時間が経過した時点で、上吹き酸素量を溶鋼1トン当たり2.5Nm3/分以下に低下させている。
特開平7−331315号公報 特開昭58−207310号公報 特開平7−173518号公報 特公昭62−2603号公報 特公昭61−54082号公報
特許文献1では、上底吹き転炉にも関わらず、極低炭素鋼の転炉吹錬においては上吹きの条件のみを規定しているだけである。また、特許文献1では、上吹きの条件を規定する際にも、上吹き酸素に関して約780Nm3/minとあるのみで、吹錬に関する大半の記載がなく、吹錬時期によって酸素量(流量)などを変化させるといった詳細な吹錬条件は全く開示されていないため、この技術を実際に用いて所望の極低炭素鋼を製造することは困難である。
特許文献2では、脱りん処理された低りん溶銑の使用を前提としたスラグレス吹錬であり、脱りん処理しない高りん溶銑を使用した場合は[P]が規定通りに下がらないことがある。また、特許文献2では、底吹きの条件を規定しているものの、その条件は底吹きのガス量のみであり、相対的な弱攪拌又は強攪拌の違いが分かるだけで、絶対的な数値制御としては成り立たない。即ち、特許文献2では、底吹きの羽口の形態が変われば、ガスによる攪拌状態が変わるため、実操業においては、所望の極低炭素鋼を製造することは困難である。
特許文献3では、上吹き及び底吹きの条件を規定しているものの、底吹きの規定にあたっては溶鋼1トン当たりの合計10Nm3/時以上となるのみで、底吹きの設定の示唆にもならない。特に、特許文献3の実施例では、底吹きは4000Nm3/時となっており、実施例の記載から転炉の容量を350tonとして考えると、底吹きのガス量は0.19Nm3/分/tonとなり、攪拌があまりにも大き過ぎ、この技術を実際に用いて所望の極低炭素鋼を製造することは困難である。
特許文献1〜特許文献3の技術では、極低炭素鋼を製造するに際し、上吹きの条件や底吹きのガスの条件を規定しているものの、その条件の詳細が開示されておらず、開示されていたとしても、その技術を用いて所望の極低炭素鋼を製造することは困難であることが実情である。
さて、特許文献4では、L/L0の算出方法が記載されておらず、どのような指標からL/L0を求めて、当該L/L0を上吹きに適用しているか分からないものとなっている。特許文献4において、仮に、L/L0の算出を本発明と同様に考えたとしても、極低炭素鋼を製造するための吹錬としては、L/L0から規定される上吹きの強さが強過ぎるため、このような条件で極低炭素鋼を製造することは困難である。また、特許文献4において、底吹きについて規定しているものの、その条件は底吹きのガス量のみであり、相対的な弱攪拌又は強攪拌の違いが分かるだけで、絶対的な数値制御としては成り立たないし、底吹きを強攪拌に変える時期が早く、このような条件で極低炭素鋼を製造することは困難である。
特許文献5では、転炉吹錬での上吹き及び底吹きの条件が開示されているが、吹錬末期でL/L0=0.18と規定しているが、極低炭素鋼を製造するにあたっては、L/L0=0.18による上吹きの酸素としては弱過ぎ、十分な脱炭処理を行うことができない。また、特許文献5では、底吹きについては、全吹錬時間を通じて底吹きガスの流量が一定量であるために、極低炭素鋼を製造するにあたっての十分な脱りん処理や脱炭処理を行うことができない。
そこで、本発明は、上記問題点に鑑み、一般銑を用いて[C]=0.010質量%以下で且つ[P]=0.030質量%以下となる高品質な極低炭素鋼を確実に製造することができる一般銑を用いた極低炭素鋼の転炉吹錬方法を提供することを目的とする。
前記目的を達成するために、本発明は、次の手段を講じた。
即ち、本発明における課題解決のための技術的手段は、上底吹きの転炉に[P]=0.06質量%以上の溶銑を装入して、[C]=0.010質量%以下、且つ、[P]=0.030質量%以下となる鋼種を吹錬により製造する一般銑を用いた極低炭素鋼の転炉吹錬方法において、上吹きに関し、吹錬時間の全期間のうち、吹錬開始から40%〜60%の時間が経過する第1上吹き区間では、式(1)を満たすように上吹きの酸素を吹き、前記第1上吹き区間の経過後から吹錬を終了させるまでの第2上吹き区間では、式(2)を満たすように上吹きの酸素を吹き、底吹きに関し、吹錬時間の全期間のうち、吹錬開始から85%〜95%の時間が経過する第1底吹き区間では、0.02〜0.04Nm3/分/ton且つ0.017〜0.030Nm3/分/mm2を満たすように底吹きのガスを吹き、前記第1底吹き区間の経過後から吹錬を終了させるまでの第2底吹き区間では、0.08〜0.11Nm3/分/ton且つ0.060〜0.080Nm3/分/mm2を満たすように底吹きガスを吹く点にある。
Figure 2009270136
発明者は、一般銑を用いて高品質な極低炭素鋼を製造するにあたり、転炉吹錬での様々な条件について検証を行った。発明者は、上底吹き転炉において、上吹きに関して、吹錬時に脱りん処理及び脱炭処理とを両立させる点から、酸素を強く吹く区間と酸素を弱く吹く区間との時間的バランスと、この各区間において酸素の吹きつけの強さバランスとを考慮して、一般銑を用いて高品質な極低炭素鋼を製造するための吹錬条件を実験等により検証を行った。
これに加え、発明者は、上吹きだけでなく底吹きに関して、同様に、脱りん処理及び脱炭処理とを両立させる点から、底吹きガスを強く吹く区間と底吹きガスを弱く吹く区間との時間的バランスと、この各区間において底吹きガスの吹くバランスとを考慮して、一般銑を用いて極低炭素鋼を製造するための吹錬条件を実験等により検証を行った。
その結果、[C]=0.010質量%以下、且つ、[P]=0.030質量%以下の極低炭素鋼を、[P]=0.06質量%以上の溶銑を用いて製造するにあたり、転炉吹錬の上吹きでは、吹錬時間の全期間のうち、吹錬開始から40%〜60%の時間が経過する第1上吹き区間では、式(1)を満たすように上吹きの酸素を吹き、第1上吹き区間の経過後から吹錬を終了させるまでの第2上吹き区間では、式(2)を満たすように酸素を吹くことを見出した。
また、転炉吹錬の底吹きでは、吹錬時間の全期間のうち、吹錬開始から85%〜95%の時間が経過する第1底吹き区間では、底吹きのガスを0.02〜0.04Nm3/分/ton且つ0.017〜0.030Nm3/分/mm2を満たすように吹き、第1底吹き区間の経過後から吹錬を終了させるまでの第2底吹き区間では、底吹きの酸素を0.08〜0.11Nm3/分/ton且つ0.060〜0.080Nm3/分/mm2を満たすように吹くことを見出した。
本発明によれば、一般銑を用いて[C]=0.010質量%以下で且つ[P]=0.030質量%以下となる高品質な極低炭素鋼を確実に製造することができる。
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき説明する。
図1は本発明の一般銑を用いた極低炭素鋼の転炉吹錬方法を行う転炉の全体側面図を示している。なお、説明の便宜上、溶銑や溶鋼を溶湯ということがある。
転炉1は、装入された溶銑2に対して当該溶銑2の上方側から酸素を吹きつけ、且つ、底部3からガスを吹き込むことができる上底吹き転炉である。この上底吹き転炉1には、酸素を吹くための上吹きランス4が炉口5を介して挿入可能に設けられ、底部3から不活性ガスを吹き込む羽口6が設けられている。また、この上底吹き転炉1には、溶鋼を出鋼する出鋼口7が設けられ、上方から副原料等を投入するホッパー8が設けられている。 この転炉1では、当該転炉1内に溶銑2を装入し、転炉1の炉口5へ上吹きランス4を挿入した後に、この上吹きランス4から溶銑2に向けて酸素ガスを吹き付けると共に、底部3の羽口6からガスを吹き込んで溶銑2を攪拌しながら吹錬を行うことができる。
以下、本発明の一般銑を用いた極低炭素鋼の転炉吹錬方法について説明する。
本発明の転炉吹錬は、[C]=0.010質量%以下の極低炭素鋼を製造するために行う吹錬である。極低炭素鋼の製造では、二次精錬(真空脱ガス、RH)によっても、溶鋼の脱炭処理を行うため、二次精錬の脱炭処理も考慮して、転炉1での吹錬終了時の[C]は、当該鋼種の上限値に0.025質量%を加えた値(鋼種の上限値+0.025)としている。即ち、転炉吹錬においては、二次精錬における脱炭処理の脱炭能力が、0.025〜0.028質量%であるため、この下限値(0.025質量%)を加味している。
また、この転炉吹錬方法では、[P]の上限値が0.030質量%以下の極低炭素鋼を対象としている。
なお、このような極低炭素鋼を製造するにあたり、操業や装置等の様々な問題から二次精錬では脱りん処理を行うことができないのが実情である。そのため、極低炭素鋼の製造における脱りん処理は、転炉1のみで行うこととしている。即ち、転炉吹錬においては、製造する鋼種の[P]の規格上限値以下となるように、脱りん処理を行うものとしている。ただし、[P]の規格上限値が0.010質量%以下のような極低りん鋼は、一般銑を用いては工業的に製造するのが困難であるため、本発明では対象としていない。
転炉1に装入する溶銑2は、[P]が0.06質量%以上のものであって、高炉から出銑した溶銑に対して脱りん処理を行わない溶銑、即ち、一般銑(普通銑とも言う)である。通常、一般銑では、[P]は0.090〜0.120質量%である。なお、実操業においては、混銑車で脱りん処理を行い、その際に余分に余った脱りん銑を一般銑と合わせて転炉1に装入する場合がある。この場合は、通常、溶銑2の[P]は、0.060〜0.090質量%となるため、脱りん銑と一般銑とを合わせて転炉1に装入する溶銑2、即ち、合わせ湯も対象としている。上述した一般銑と合わせ湯をまとめて、以降、一般銑と表現する。
上述したように、本発明の転炉吹錬方法では、[C]=0.010質量%以下、且つ、[P]=0.030質量%以下となる鋼種を吹錬するに際し、まず、上底吹きの転炉1に[P]=0.06質量%以上の一般銑(一般銑又は合わせ湯)を装入する。そして、上吹きランス4から溶銑2に対して酸素(酸素ガス)を吹き付けると共に、底部3の羽口6から不活性ガスを吹き込んで吹錬を行う。
図2に示すように、上吹きランス4から酸素を吹き付ける上吹きでは、吹錬時間の全期間に対して、第1上吹き区間Aと、第2上吹き区間Bとの2つの区間に分けて吹錬を行っている。また、羽口6から不活性ガスを溶銑2に吹き込む底吹きでは、吹錬時間の全期間に対して、第1底吹き区間Cと、第2底吹き区間Dとの2つの区間に分けて吹錬を行っている。
[上吹きについて]
図2に示すように、上吹きにおいては、吹錬時間の全期間(0〜100%)のうち、吹錬開始から40%〜60%の時間が経過する第1上吹き区間Aでは、式(1)を満たすように酸素を吹き、第1上吹き区間Aの経過後から吹錬を終了させるまでの第2上吹き区間Bでは、式(2)を満たすように酸素を吹いている。
なお、図2では、第1上吹き区間Aのうち吹錬開始から40%の時間が経過する第1上吹き区間A1を実線で示し、この第1上吹き区間A1終了後の第2上吹き区間B1を実線で示している。同図破線に示すように、転炉吹錬では、第1上吹き区間Aは、吹錬開始から60%経過するまで延長可能である。
Figure 2009270136
式(1)及び式(2)において、Lは、吹錬時、即ち、上吹きランス4から溶銑2に向けて酸素を吹き込んだ際の溶湯の凹み深さであり、L0は、非吹錬時、即ち、上吹きランス4から溶湯に向けて酸素を吹き込んでない状態での浴深さである。溶湯の凹み深さLと、上吹きランス4から酸素を吹き込んだ際の酸素流量との関係は、式(3)で求められる。この式(3)は、「鉄冶金反応工学」[改訂新版]2版 瀬川清著 日刊工業新聞刊94頁(5.5)に記載されている一般的な式である。
Figure 2009270136
なお、式(3)で示されるノズル係数kは、特許第2736555号公報の図10を用いて上吹きランス4のノズル孔角度と、ノズル孔数との関係から求めた。ただし、5孔のノズル係数kは、特許第2736555号公報の図10の4孔と6孔の線の中間値を採用した。L0は、特公平4−81734等に開示されたマイクロ波レベル計を用いて、空炉での炉底高さ及び溶銑2装入後の湯面高さを測定して、その差で浴深さを求めた。
図2に示すように、第1上吹き区間Aにおいては、第2上吹き区間Bに比べ、L/L0が小さいソフトブローにすることによって、スラグSに十分に酸素を供給してスラグSの酸化度を高め、主にスラグSによる脱りん反応を促進している。以降、説明の便宜上、第1上吹き区間Aのことをソフトブロー区間ということがある。
ここで、吹錬開始から40%に達する前にソフトブローを停止するとスラグSに酸素が十分に供給されずにスラグSの酸化度が不十分となる。その結果、スラグSによる脱りん反応が促進されなくなり、所望の[P]を達成することができない。言い換えれば、ソフトブローを吹錬開始から40%に達する前に終了してしまうと、上述したように、スラグSの酸化度の低下を招いて、溶湯の脱りん濃度を低下させることができない。
吹錬開始から60%を超えてソフトブローを継続して当該ソフトブローを長くしてしまうと、スラグSに酸素が供給されるばかりで、溶湯内への酸素の供給が不十分となるため、溶湯中の酸素による脱炭反応が促進されなくなり、所望の[C]を達成することができない。
式(1)によって第1上吹き区間A(ソフトブロー区間)での上吹きの強さを規定している。ソフトブロー区間において、L/L0が0.21未満であって、式(1)を満たさない場合は、上吹きの強さが弱過ぎるため、溶湯の攪拌が不十分であり、且つ、溶湯に酸素が十分に供給されない。その結果、所望の[P]及び[C]を達成することができない。
また、ソフトブロー区間において、L/L0が0.24を超えて、式(1)を満たさない場合は、上吹きの強さが強過ぎるため、溶湯の攪拌が過剰となり、且つ、溶湯に酸素が供給されるばかりでスラグSに酸素が十分に供給されない。その結果、所望の[P]を達成することができない。
したがって、ソフトブロー区間(第1上吹き区間A)において、上吹きの強さは式(1)を満たすようにすることが必要である。上吹きの強さは、溶湯の凹み深さLの調整により制御しており、当該溶湯の凹み深さLの調整は、上吹きランス4の酸素流量の増減、ランス高さの変更で行う。なお、溶湯の凹み深さLの調整にあたっては、上吹きランス4の酸素流量の増減とランス高さの変更との両方を行ってもよいし、いずれか一方で行ってもよい。
図2に示すように、第2上吹き区間Bにおいては、第1上吹き区間Aに比べ、L/L0が大きいハードブローにすることによって、溶湯に十分に酸素を供給することで、主に脱炭反応を促進している。以降、説明の便宜上、第2上吹き区間Bのことをハードブロー区間ということがある。
ここで、吹錬開始から40%に達する前にソフトブローを停止してハードブローを開始してしまうと、脱りん処理が十分に促進されないうちに脱炭処理が開始されることになる。
上吹きにおいて、吹錬開始から60%を超えてソフトブローを長く継続した後に遅いタイミングでハードブローの開始をすると、溶湯への酸素の不十分で脱炭処理が遅れるということになり、結果的に、所望の[C]を達成することができない。
式(2)によって第2上吹き区間B(ハードブロー区間)での上吹きの強さを規定している。ハードブロー区間において、L/L0が0.26未満であって、式(2)を満たさない場合は、上吹きの強さが弱過ぎるため、溶湯の攪拌が不十分であり、且つ、溶湯に酸素が十分に供給されない。その結果、所望の[P]及び[C]を達成することができない。
また、ハードブロー区間において、L/L0が0.28を超えて、式(2)を満たさない場合は、上吹きの強さが強過ぎるため、溶湯の攪拌が過剰となり、且つ、溶湯に酸素が供給されるばかりでスラグSに酸素が十分に供給されない。その結果、所望の[P]を達成することができない。
以上のように、上吹きによる吹錬においては、脱りん処理と脱炭処理とのバランスを考慮すると、ソフトブローは吹錬開始から40%〜60%の範囲であることが必要であり、ハードブローは、ソフトブロー後に引き続いて行うことが必要である。
さらに、ソフトブロー区間(第1上吹き区間A)では式(1)を満たすように、酸素を吹き込み、ハードブロー区間では式(2)を満たすように酸素を吹く必要がある。
[底吹きについて]
図2に示すように、底吹きにおいては、吹錬時間の全期間のうち、吹錬開始から85%〜95%の時間が経過する第1底吹き区間Cでは、0.02〜0.04Nm3/分/ton且つ0.017〜0.030Nm3/分/mm2を満たすように底吹きガスを吹いている。 また、第1底吹き区間Cの経過後から吹錬を終了させるまでの第2底吹き区間Dでは、0.08〜0.11Nm3/分/ton且つ0.060〜0.080Nm3/分/mm2を満たすように底吹きガスを吹いている。本発明では、底吹きのガスの設定にあたっては、上述したように、1分当たりの原単位と、羽口6の開口面積当たりの流量とによって規定している。
なお、図2では、第1底吹き区間Cのうち吹錬開始から85%の時間が経過する第1底吹き区間C1を実線で示し、この第1底吹き区間C1終了後の第2底吹き区間D1を実線で示している。同図破線に示すように、転炉吹錬では、第1底吹き区間Cは、吹錬開始から95%経過するまで延長可能である。本発明では、底吹きのガスの設定にあたっては、上述したように、1分当たりの原単位と、羽口6の開口面積当たりの流量とによって規定している。
図2に示すように、第1底吹き区間Cにおいては、第2底吹き区間Dに比べ、ガス流量が少なくして溶湯の攪拌を弱く(弱攪拌)することによって、スラグSの酸化度の維持して、主にスラグSによる脱りん反応を促進している。以降、説明の便宜上、第1底吹き区間Cのことを弱攪拌区間ということがある。
ここで、吹錬開始から85%に達する前に底吹きを強くして、弱攪拌の期間を吹錬開始から短くしてしまうと、強攪拌によりスラグSの酸化度が低下して、その結果、所望の[P]を達成することができない。
底吹きにおいて、吹錬開始から95%を超えて弱攪拌を長くすると、スラグSの酸化度が高まり過ぎ、溶湯(溶鋼)の出鋼後の再酸化の原因となって非金属介在物の生成を招来してしまい、品質に悪影響を及ぼす。
弱攪拌区間(第1底吹き区間C)において、底吹きのガスは、0.02〜0.04Nm3/分/tonを満たすように吹いている。ここで、0.02Nm3/分/ton未満では、攪拌が弱過ぎるため、脱炭反応が遅くなり、[C]が下がらず、所望の[C]を達成することができない。また、0.04Nm3/分/tonよりも超えると、攪拌が強過ぎるため、スラグSの酸化度が低下し、[P]が下がらず、所望の[P]を達成することができない。
第1底吹き区間Cにおいて、底吹きのガスは、0.017〜0.030Nm3/分/mm2を満たすように吹いている。ここで、0.017Nm3/分/mm2未満では、攪拌が弱過ぎるため、脱炭反応が遅くなり、脱炭反応が遅くなり、[C]が下がらない。0.030Nm3/分/mm2よりも超えると、スラグSの酸化度が低下するため、[P]が下がらない。
第2底吹き区間Dにおいては、第1底吹き区間Cに比べ、ガス流量を多くして溶湯の攪拌を強くすることによって、上吹きによる溶湯への酸素の供給効率を高めると共に、スラグSの酸化度の過大な上昇を防ぎ、主に、溶湯の脱炭反応を促進している。以降、説明の便宜上、第2底吹き区間Dのことを強攪拌区間ということがある。
ここで、底吹きにおいて、吹錬開始から85%に達する前に底吹きを強くし、強攪拌を早く始めてしまうと、スラグSの酸化度が低下して、その結果、所望の[P]を達成することができない。また、底吹きにおいて、吹錬開始から95%を超えて弱攪拌を継続した後に、遅いタイミングで強攪拌の開始をすると、脱炭処理が遅れるということになり、結果的に、所望の[C]を達成することができない。スラグSの酸化度が高まり過ぎ、出鋼後溶鋼の再酸化の原因となって非金属介在物の生成を招来してしまい、品質に悪影響を及ぼす。
強攪拌区間(第2底吹き区間D)において、底吹きのガスは、0.08〜0.11Nm3/分/tonを満たすように吹いている。ここで、0.08Nm3/分/ton未満では、攪拌が弱過ぎるため、脱炭反応が遅くなり、[C]が下がらず、所望の[C]を達成することができない。また、0.11Nm3/分/tonよりも超えると、攪拌が強過ぎるため、スラグSの酸化度が低下し、[P]が下がらず、所望の[P]を達成することができない。
第2底吹き区間Dにおいて、底吹きのガスは、0.060〜0.080Nm3/分/mm2を満たすように吹いている。ここで、0.060Nm3/分/mm2未満では、攪拌が弱過ぎるため、脱炭反応が遅くなり、[C]が下がらない。0.080Nm3/分/mm2よりも超えると、スラグSの酸化度が低下するため、[P]が下がらない。
以上のように、底吹きによる吹錬においては、脱りん処理と脱炭処理とのバランスを考慮すると、弱攪拌区間(第1底吹き区間C)は吹錬開始から85%〜95%の範囲であることが必要であり、強攪拌区間(第2底吹き区間D)は、弱攪拌後に引き続いて行うことが必要である。
また、第1底吹き区間Cでは、0.02〜0.04Nm3/分/ton且つ0.017〜0.030Nm3/分/mm2を満たすように底吹きガスを吹く必要がある。第2底吹き区間Dでは、0.08〜0.11Nm3/分/ton且つ0.060〜0.080Nm3/分/mm2を満たすように底吹きガスを吹く必要がある。
表1は、転炉1にて吹錬を行った後、二次精錬及び連続鋳造装置の下工程にて極低炭素鋼を製造した実施条件を示している。表2は、表1の実施条件に基づき、本発明の一般銑を用いた極低炭素鋼の転炉吹錬方法によって吹錬を行った実施例をまとめたものである。また、表3〜表7は、表1の実施条件に基づき、本発明の一般銑を用いた極低炭素鋼の転炉吹錬方法とは異なる吹錬を行った比較例をまとめたものである。
Figure 2009270136
実施条件について詳しく説明する。
表1に示すように、転炉吹錬は、250tonクラスの転炉1にて行った。上吹きにおいては、孔数及び直径が異なるノズルaとノズルbとの2種類のノズルを用いた。底吹きにおいては、羽口6はガスを吹き込む吹き込み口(開口部分)がリング状となる一層環状管とした。また、羽口6は、その開口面積が異なるものを2種類を用いた。転炉1に装入した溶銑2は、[P]の規格範囲が異なる溶銑(一般銑のみ)と溶銑(合わせ湯)との2種類を用いた。製造する鋼種は、鋼種a、鋼種b、鋼種cの3種類とした。なお、表2〜表7において、鋼種a〜鋼種cの[C]の上限は、表1の規格上限に0.025質量%を加算した値を示している。[P]の規格上限値については、0.020質量%、0.025質量%、0.030質量%の3種類とした。転炉1における上底吹き吹錬以外であって、副原料制御、スタティック制御及びダイナミック制御は、当業者常法の方法に基づいて行った。
また、転炉1の出鋼後の溶鋼処理(二次精錬処理)も、極低炭素鋼に対応する方法で通常通りRH処理(真空脱ガス処理)を行った。二次精錬後は、極低炭素鋼に対応する方法で通常通り連続鋳造装置にて鋳造を実施した。
Figure 2009270136
Figure 2009270136
Figure 2009270136
表2〜表4の実施条件の欄は、表1に示したノズルの種類、羽口6の種類、溶銑2の種類、鋼種の種類及び開口面積等を記号や数値により各実験番号毎に示したものである。
表2〜表4の実施例及び比較例では、転炉吹錬終了後における[C]、[P]の実績値が予め定めた上限値以下であるか評価すると共に、スラグS内の(T.Fe)について吹錬終了後に採取したサンプルを分析して、(T.Fe)が極低炭素鋼の品質上の制約から上限値以下になっているか否かを評価した。
極低炭素鋼において、例えば、特開平2−30711号公報に示すように、品質上の制約から二次精錬後のスラグS内の(T.Fe)は5質量%以下にする必要があるのが一般的である。通常、二次精錬では、(T.Fe)の低減量は10〜15質量%であるため、転炉吹錬後のスラグS内のT.Feは、二次精錬の下限値(10質量%)を加味して、15質量%以下にする必要がある。このため、実験の評価では、転炉吹錬後のスラグS内の(T.Fe)が15質量%以下のものを良好「○」とした。
表2に示すように、実施例の実験番号1〜実験番号18では、本発明の転炉吹錬時の全ての条件を満たしていれば、[C]の上限値、[P]の規格上限値の両方を満たすことができる(表2、[C]及び[P]の評価「○」)と共に、(T.Fe)を15質量%以下にすることができた(表2、T.Feの評価「○」)。
表3に示すように、比較例の実験番号19〜実験番号23では、上吹きにおいて、ソフトブロー区間とハーブローの区間とのいずれも本発明の区間(時間割合)を満たしていないと共に、上吹きの酸素の条件(L/L0)も本発明の数値を満たしていない。
これに加え、比較例の実験番号19〜実験番号23では、底吹きも、弱攪拌区間と強攪拌区間とのいずれも本発明の区間(時間割合)を満たしていないと共に、底吹きガスの条件も本発明の数値を満たしていない。その結果、転炉吹錬終了後における[C]の上限値、(T.Fe)の上限値を満たすことができないと共に、比較例の実験番号19を除いて[P]の規格上限値を満たすことはできなかった(表3、各種表等の欄「×」)。
比較例の実験番号24〜実験番号27では、上吹きにおける条件は本発明の数値を満たしているものの、底吹きにおいては、弱攪拌区間と強攪拌区間とのいずれも本発明の数値を満たしていない。その結果、[C]の上限値、[P]の規格上限値、(T.Fe)の上限値の少なくともいずれか1つが外れるという結果となった表3、各種表等の欄「×」)。
比較例の実験番号28〜実験番号31では、底吹きにおける条件は本発明の数値を満たしているものの、上吹きにおいては、ソフトブロー区間とハードブロー区間とのいずれも本発明の数値を満たしていない。その結果、[C]の上限値、[P]の規格上限値、(T.Fe)の上限値の少なくともいずれか1つが外れるという結果となった。
表4に示すように、比較例の実験番号32〜実験番号51では、上吹きにおける条件は本発明の数値を満たしているものの、底吹きにおいては、弱攪拌区間の時間割合、強攪拌区間の時間割合、弱攪拌区間の流量原単位、強攪拌区間の流量原単位、弱攪拌区間の開口面積当たりの流量、強攪拌区間の開口面積当たりの流量の少なくともいずれか1つが本発明の数値を満たしていない。その結果、[C]の上限値、[P]の規格上限値、(T.Fe)の上限値の少なくともいずれか1つが外れるという結果となった(表4、各種表等の欄「×」)。
比較例の実験番号52〜実験番号63では、底吹きにおける条件は本発明の数値を満たしているものの、上吹きにおいては、ソフトブローの時間割合、ハードブローの時間割合、ソフトブローのL/L0、ハードブローのL/L0少なくともいずれか1つが本発明の数値を満たしていない。その結果、[C]の上限値、[P]の規格上限値、(T.Fe)の上限値の少なくともいずれか1つが外れるという結果となった(表4、各種表等の欄「×」)。
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
転炉の全体側面図である。 吹錬の状況を示した図である。
符号の説明
1 転炉
A 第1上吹き区間
B 第2上吹き区間
C 第1底吹き区間
D 第2底吹き区間

Claims (1)

  1. 上底吹きの転炉に[P]=0.06質量%以上の溶銑を装入して、[C]=0.010質量%以下、且つ、[P]=0.030質量%以下となる鋼種を吹錬により製造する一般銑を用いた極低炭素鋼の転炉吹錬方法において、
    上吹きに関し、吹錬時間の全期間のうち、吹錬開始から40%〜60%の時間が経過する第1上吹き区間では、式(1)を満たすように上吹きの酸素を吹き、前記第1上吹き区間の経過後から吹錬を終了させるまでの第2上吹き区間では、式(2)を満たすように上吹きの酸素を吹き、
    底吹きに関し、吹錬時間の全期間のうち、吹錬開始から85%〜95%の時間が経過する第1底吹き区間では、0.02〜0.04Nm3/分/ton且つ0.017〜0.030Nm3/分/mm2を満たすように底吹きのガスを吹き、前記第1底吹き区間の経過後から吹錬を終了させるまでの第2底吹き区間では、0.08〜0.11Nm3/分/ton且つ0.060〜0.080Nm3/分/mm2を満たすように底吹きガスを吹くことを特徴とする一般銑を用いた極低炭素鋼の転炉吹錬方法。
    Figure 2009270136
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