JP2009263638A - ウコン色素組成物及びその調製方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ウコン色素組成物に関する。より詳細には、溶媒中にウコン色素を高含量になるよう添加した場合でもウコン色素の経時的な凝集や沈殿が効果的に防止され、更には発色がよく尚且つ従来ない明るい色調で濃く、安定な着色が可能となるウコン色素組成物及びその調製方法を提供する。
【解決手段】ウコン色素をガティガム含水溶液に添加した後、当該溶液中でウコン色素を、その平均粒子径が1μm以下になるまで粉砕処理することによってウコン色素組成物を調製する。
【選択図】なし

Description

本発明は、水難溶性のウコン色素について水への分散性を改善したウコン色素組成物およびその調製方法に関する。より詳細には、本発明は水溶液に対する分散性に優れ、水溶液中に高濃度添加した場合でもウコン色素の経時的な凝集や沈殿が効果的に抑制されたウコン色素組成物であって、このため水性の被着色物(着色対象物)を、所望の薄い〜濃い色調に安定的に着色することができるウコン色素組成物およびその調製方法に関する。
また本発明は、着色効果のみならず体内吸収性に優れたウコン色素組成物であって、着色料として有用であるのみならず、健康食品として有用なウコン色素組成物およびその調製方法に関する。
食品の色彩は、食欲をそそる重要な要素の一つである。例えば、食品の色が変色や退色することなく、鮮やかな食品自体の色を呈することにより、まず目で楽しみ、また食品の美を感じることでより一層美味しい食事を楽しむことができることから、食品の色彩は嗜好的な役割を担っているといえる。
食品の色彩が上述のような重要な役割をもつことから、近年、加工食品や保存食品の市場が拡大するにつれ、食品への着色技術が重要視されている。食品に対する着色剤としては、植物の根茎や果実から得られる天然着色料や、タール色素などの合成着色料があるが、近年の消費者の天然志向から自然な色合いを持つ天然着色料が好まれている。
天然着色料として古くから知られているものに、ショウガ科の植物ウコン(Curcuma longa L.)の根茎から得られるクルクミノイドがある。クルクミノイドは、クルクミンとその類縁体であるデメトキシクルクミン及びビスデメトキシクルクミンを含む化合物の総称であり、ポリフェノールの一種でもある。尚、ここでクルクミノイドとは、クルクミン、デメトキシクルクミン、ビスデメトキシクルクミン、ヤクチノンA,ヤクチノンB、テトラヒドロクルクミン、及びジヒドロキシテトラヒドロクルクミン等の直鎖状ジアリルヘプタノイドのほか、これら直鎖状ジアリルヘプタノイドの塩、エステル、並びにその他直鎖状ジアリルヘプタノイドの類縁化合物、たとえばクルクミンの重合物と呼ばれているカシュムニンA、カシュムニンB、及びカシュムニンCなどの総称である。
クルクミノイドは、天然黄色色素の中でも鮮やかな色調を備えており、また耐熱性、耐酸化性及び耐還元性に優れている点、並びに動植物質に対して優れた染着性を有している点で好適な色素である。クルクミノイドの使用例としては、例えば、カレー粉やたくあん漬け、マスタード等を例示することができる。
しかしながら、クルクミノイドは熱水、エタノール、プロピレングリコール、氷酢酸には溶解するものの、水(冷水や常温水)には難溶性であるという問題点を有しており、粉末クルクミノイドを用いて、水性物質を黄色に着色することは困難である。
このため、従来、水性物質にウコン色素を用いて着色するために水性ウコン色素製剤が開発され、これを用いて着色する方法が提案されている(特許文献1)。当該水性ウコン色素製剤は、ウコンの乾燥根茎を粉砕して調製したウコン粉末を含水アルコールで抽出し、固液分離によって残滓(不溶解物)を除去して調製した、所謂アルコール可溶化溶液(含水アルコール抽出溶液)である。かかる抽出溶液は、クルクミノイドがアルコールを含む溶液に高色価で溶解しているという点で優れているが、その調製工程で、引火する可能性のあるアルコールを使用するため作業上危険を伴うこと、また調製工程で不溶物であるウコン残滓(廃棄物)が出ること、さらに得られる抽出溶液が原料のウコン粉末に含まれる苦味や辛味成分に起因して、ウコン特有の味や臭いを有しており、特に食品着色料としての使用に制約が生じるという問題がある。更には、この抽出溶液を水に添加し、アルコール濃度を下げると、時間と共にクルクミノイドが析出し、結果として、クルクミノイドが不溶化し沈殿してしまうという問題点もある。
クルクミノイドを水に可溶な色素製剤として調製する他の方法としては、クルクミンやテトラヒドロクルクミンといった難溶性成分を溶解したアルコール溶液を水に分散することによって、まず難溶性成分を微粒子化し、次いでこの微粒子を乳化剤(グリセリン脂肪酸エステル類、ショ糖脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、プロピレングリコール脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ステアリン酸乳酸カルシウム、レシチン類、シクロデキストリンなど)に結合させることにより、長期間安定で透明な可溶化液を得る方法(特許文献2)、クルクミンを熱水若しくはアルカリ性水溶液に溶解させ、それぞれ不溶解残渣を除去して調製した溶液状のクルクミンを、微細化セルロース性物質に染着させて微細化することによって、ペースト状の水性物質と油性物質との何れにも容易に分散して鮮やかな黄色に着色させることが可能な食用黄色着色料組成物を調製する方法(特許文献3)、pH9以上のアルカリ性の水溶液中で、クルクミンを水溶性で分岐鎖のある又は環状のポリサッカライドおよび水に可溶なまたは水に分散可能なタンパクからなる群から選ばれた基質と接触させ、次いでpHを8以下に酸性化することによって、光安定性及び着色力の改良された透明で水溶性なクルクミン複合体を調製する方法(特許文献4)、最高約15重量%のクルクミンとゼラチンを特定量の水と酢酸を含む溶剤に溶解することにより、人工的乳化剤を使用することなく水に溶解して透明な黄色溶液を呈するクルクミン−ゼラチン複合体(水溶性クルクミン製剤)を調製する方法(特許文献5)が提案されている。
一方で、クルクミノイドは、着色剤や染色剤の他に、利胆薬としても古くから用いられている。また最近では、クルクミノイドの生理作用として、腫瘍形成阻害作用や抗酸化作用、抗炎症作用、コレステロール低下作用、抗アレルギー作用、脳疾患の予防作用など有益な効果が確認され、医薬品や化粧品、栄養補助食品などへの応用が期待されている(特許文献6、非特許文献1〜8)。
しかしながら、クルクミノイドは前述するように水難溶性であるため、経口摂取した際にごく少量しか体内に吸収されない。このため前述する有益な生理効果を十分享受することができないため、上記特許文献6では、クルクミノイドの体内吸収性を改善し、in vivoで優れた薬効を発揮させるために、水難溶性のクルクミノイド類に代えて、水溶性のクルクミノイド配糖体を用いることが提案されている。
以上説明するように、これら特許文献1〜6に開示された技術はいずれもウコン色素を水に可溶化させることを目的としたものである。しかしウコン色素を水に可溶化させた場合、ある濃度以上で必ず飽和状態となり、それ以上のウコン色素を溶解させようとすると凝集や沈殿が生じ、所定濃度以上のウコン色素を含有させることは事実上困難となる。
特開2005−185237号公報、比較製造例1 特開2005−328839号公報 特開昭54−163866号公報 特開平03−97761号公報 特開昭59−125867号公報 特開2005−41817号公報
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本発明は、かかる事情に鑑みて開発されたもので、これまでの技術とは異なる方法で、経時的に生じ得る凝集や沈殿を有意に抑制しながら、高濃度のウコン色素を水含有溶液中に安定して分散させてなるウコン色素液状組成物およびその乾燥物(ウコン色素組成物)であって、水性の被着色物(着色対象物)に対して優れた分散性と分散安定性を発揮し、着色力(発色性)および着色安定性に優れたウコン色素組成物、およびその調製方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、体内吸収性に優れたウコン色素組成物であって、健康食品などとして有用なウコン色素組成物、およびその調製方法を提供することを目的とする。
さらに本発明は、水難溶性のウコン色素を、水含有溶液中に高濃度でしかも安定して分散させる方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記従来技術の問題点に鑑み、鋭意研究を重ねていたところ、ウコン色素を、ガティガム溶液に添加し、ガティガム溶液中で粉砕処理を施すことにより、ウコン色素の結晶を平均粒子径(メジアン径)1μm以下まで微粒子化することができること、斯くして得られたウコン色素組成物はウコン色素が不溶状態で安定に分散しているため、従来の可溶化技術とは異なり飽和による析出がないこと、事実、水含有溶液中にウコン色素を高濃度添加した場合でも経時的に生じ得るウコン色素の凝集や沈殿の発生が効果的に抑制されていることを見出した。また当該ウコン色素組成物は、水溶液などの水性のものに対して優れた分散性と分散安定性を発揮するため発色性がよく、対象物を薄い〜濃い色調まで所望の色調に安定に着色することが可能であることを確認した。
更に本発明者らは、当該ウコン色素組成物は、経口投与した際に体内へのクルクミノイドの吸収性が劇的に向上されていることを見出し、上記方法で調製した本発明のウコン色素組成物は、健康食品として有用であることを確認した。本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
本発明は以下の態様を有するウコン色素組成物及びその製造方法に関する;
(I)ウコン色素組成物
(I-1)ガティガムおよび平均粒子径が1μm以下のウコン色素を含有することを特徴とするウコン色素組成物。
(I-2)ガティガム、平均粒子径が1μm以下のウコン色素、および水を含有することを特徴とする、液状形態を有するウコン色素組成物。
(I-3)(I-1)に記載するウコン色素組成物を乾燥粉末化処理する工程を経て調製される、粉末状、顆粒状または錠剤状のウコン色素組成物。
(II)ウコン色素組成物の調製方法
(II-1)ウコン色素をガティガム含水溶液に添加した後、当該溶液中でウコン色素を、その平均粒子径が1μm以下になるまで粉砕処理する工程を有する、(I-2)に記載する液状形態を有するウコン色素組成物の調製方法。
(II-2)ガティガム含水溶液に添加する前のウコン色素が結晶状態のウコン色素であることを特徴とする、(II-1)に記載する調製方法。
(II-3)(II-1)または(II-2)に記載する調製方法で得られた液状形態を有するウコン色素組成物を、更に乾燥粉末化処理する工程を有する、(I-3)に記載する粉末状、顆粒状または錠剤状のウコン色素組成物の調製方法。
(II-4)経口投与または経口摂取した場合の体内への吸収性が向上したウコン色素組成物の調製方法である、(II-1)乃至(II-3)のいずれかに記載する調製方法。
(III)ウコン色素組成物の応用
(III-1)(I-1)乃至(I-3)のいずれかに記載するウコン色素組成物、または(II-1)乃至(II-4)のいずれかの方法によって調製されるウコン色素組成物を含有する、食品または化粧品。
(IV)水含水溶液へのウコン色素の分散方法
(IV-1)ウコン色素をガティガムの水含有溶液に添加した後、ウコン色素の平均粒子径が1μm以下になるまで粉砕処理することを特徴とする、水含有溶液へのウコン色素の分散方法。
(IV-2)ガティガム溶液に添加する前のウコン色素が結晶状態のウコン色素であることを特徴とする、(IV-1)に記載する方法。
(V)ウコン色素の経口による体内吸収性の向上方法
(V-1) ウコン色素の経口による体内吸収性を向上させる方法であって、平均粒子径が1μm以下の微粒子状態のウコン色素とガティガムとの混合物とすることを特徴とする方法。
(V-2)上記混合物が、ウコン色素をガティガム含水溶液に添加した後、当該溶液中でウコン色素を、その平均粒子径が1μm以下になるまで粉砕処理する工程を経て調製されるものである、(V-1)に記載する方法。
(V-3)ガティガム含水溶液に添加する前のウコン色素が結晶状態のウコン色素であることを特徴とする、(V-2)に記載する方法。
本発明のウコン色素組成物の調製方法によれば、凝集や沈殿が有意に抑制された状態で、ウコン色素を高濃度に安定に水含有溶液中に分散してなるウコン色素組成物を提供することができる。また本発明のウコン色素組成物の調製方法によれば、経口投与(経口摂取)した場合でもウコン色素(クルクミノイド)の体内吸収性に優れたウコン色素組成物を提供することができる。
すなわち斯くして調製される本発明のウコン色素組成物は、水性の製品(水性の食品、飲料、ドリンク、シロップ、化粧水など)に対して、経時的凝集や沈殿を抑制した状態で、所望の薄い〜濃い色調に発色性よく安定的に着色することができる着色料として有効に利用することができる。また本発明のウコン色素組成物は、経口投与した際に体内へのクルクミノイドの吸収性に優れているため、その優れた薬理作用に基づいて有効性の高い健康食品として有効に利用することができる。
実験例2において調製した発明飲料3(向かって左側)と比較飲料7(向かって右側)を常温保存後7日目にウコン色素の分散状態を観察した結果を示す画像である。 実験例3において60℃で3日間静置保存した後の飲料A〜Gについて、(a)ウコン色素の分散状態を横から観察した結果を示す画像(向かって左から順に飲料A〜G)、(b)ウコン色素の沈殿状態を飲料の容器底から観察した結果を示す画像である(下段の向かって左から順に飲料A〜D、上段の向かって左から順に飲料E〜G)。 実験例4において60℃で3日間静置保存した後の、発明飲料7および飲料a〜cについて、(a)ウコン色素の分散状態を横から観察した結果を示す画像(向かって左から順に、発明飲料7、飲料a〜c)、(b)ウコン色素の沈殿状態を飲料の容器底から観察した結果を示す画像である(下段の向かって左から順に、発明飲料7、飲料a〜c)。 実験例5において、発明品7:50mg/kg投与(−◆−)、発明品7:300mg/kg投与(−■−)、ウコン色素(原末)50mg/kg投与(−△−)、ウコン色素(原末)300mg/kg投与(−×−)について、各採血時点(投与前、投与後1、2、4、6および24時間後)の血漿中のクルクミン濃度(ng/mL)を示す。 実験例5において、実施例24のウコン色素組成物:50mg/kg投与(−●−)、ウコン色素(原末)50mg/kg投与(−▲−)について、各採血時点(投与前、投与後1、2、4、6および24時間後)の血漿中のクルクミン濃度(ng/mL)を示す。
(I)ウコン色素組成物およびその製造方法
本発明の液状形態のウコン色素組成物(以下、単に「ウコン色素液状組成物」ともいう。)は、ガティガム、平均粒子径が1μm以下のウコン色素、および水を含有することを特徴とする。当該ウコン色素液状組成物は、上記するように水を含有するものであるが、少なくとも水を含む限り、他の溶媒を水とともに含むものであってもよい。かかる溶媒としては、水と相溶性のあるものを挙げることができ、例えばエタノールなどの低級アルコール:プロピレングリコールやグリセリンなどの多価アルコール:果糖ブドウ糖液、ショ糖液、異性化糖液などの糖液などが挙げられる。
水と併用する場合の溶媒の割合は、両者を混合した最終溶媒中にガティガムは溶解することができるものの、ウコン色素は溶解しないような割合であればよく、この限りにおいて特に制限されるものではない。水は、ウコン色素液状組成物中に、ガティガムと等量以上配合されていることが好ましく、通常、それを満たす範囲で他の溶媒を適宜配合することができる。
本発明のウコン色素液状組成物は、具体的には、ガティガムの水含有溶液中に、平均粒子径が1μm以下のウコン色素が分散してなる組成物である。当該ウコン色素液状組成物は、定法に従って乾燥粉末化することにより、粉末形態のウコン色素粉末組成物を調製することができる。また当該ウコン色素粉末組成物を用いて定法により造粒することにより、顆粒形態または錠剤形態のウコン色素組成物(ウコン色素顆粒組成物、ウコン色素錠剤組成物)を調製することができる。以下の説明において、これらの組成物を総称して単に「ウコン色素組成物」という場合がある。
本発明でいう「ウコン色素」は、ショウガ科ウコン(Curcuma longa LINNE)の根茎から得られた、クルクミンを主成分とするものである。食品添加物として使用されるウコン色素としては、ショウガ科ウコン(Curcuma longa LINNE)の根茎の乾燥物を粉末にしたウコン末、該ウコン末を適当な溶媒(例えば、エタノール、油脂、プロピレングリコール、ヘキサン、アセトンなど)を用いて抽出して得られる粗製クルクミン或いはオレオレジン(ターメリックオレオレジン)、および精製したクルクミンを挙げることができる。
「ウコン色素」として好ましくは、ウコンの根茎の乾燥品(ウコン粉末)から温時エタノールで、熱時油脂若しくはプロピレングリコールで、または室温時〜熱時ヘキサン若しくはアセトンで抽出して調製されるクルクミンである。更に好ましくは、ウコン粉末に由来する苦味や辛み、並びにウコン臭が低減もしくは除去される程度に精製されたクルクミンを用いることが望ましい。本発明で使用する「ウコン色素」として、さらに好ましくは結晶状態のクルクミンである。かかるクルクミンは、ウコン粉末をヘキサン及びアセトンによって抽出し、その抽出溶液を濾過後、乾燥させて溶媒を揮発させることによって調製することができる。
なお、簡便には、商業的に入手できるウコン色素(クルクミンの粉末)を使用することができる。かかるウコン色素(クルクミン粉末)は、三栄源エフ・エフ・アイ(株)等から購入することができる。
本発明で用いるガティガムは、シクンシ科ガティノキ(Anogeissus Latifolia WALL.)の幹の分泌液を乾燥して得られる多糖類を主成分とするものであり、増粘安定剤(食品添加物)として公知のガム質である。本発明で使用するガティガムは商業的に入手可能であり、例えば、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製のガティガムSDを挙げることができる。
ガティガムは予め溶媒に溶解させ、ガティガム溶液とし、次いでこれにウコン色素を添加して混合することが好ましい。ガティガムを溶解させる溶媒としては、食品に用いられる溶媒であってウコン色素が溶解しない溶媒であれば特に限定されないが、好ましくは水、および水と相溶性のある溶媒と水との混合溶媒を挙げることができる。かかる溶媒としては、例えばエタノールなどの低級アルコール:プロピレングリコールやグリセリンなどの多価アルコール:果糖ブドウ糖液、ショ糖液、異性化糖液などの糖液などが挙げられる。本明細書では、これらの溶媒を総称して「水含有溶媒」と称する。またかかる溶媒に溶解したガティガム溶液を「ガティガム溶液」または「ガティガム含水溶液」と称する。
ガティガムは、最終濃度が1〜20質量%、好ましくは1〜15質量%、より好ましくは1〜10質量%となるように、水含有溶媒(好ましくは水)に溶解し、次いで当該ガティガム含水溶液にウコン色素を添加し混合する。このとき、ウコン色素の配合量としては、その後、粉砕処理を行って平均粒子径1μm以下に調製するために好適な濃度、具体的には1〜30質量%、好ましくは5〜20質量%を例示することができる。
なお、この場合、ガティガムは、ウコン色素100質量部に対してガティガムを1〜300質量部となるような割合で含まれていることが好ましく、より好ましくは1〜200質量部、更に好ましくは10〜100質量部の割合で含まれていることが望ましい。
ガティガム溶液とウコン色素との混合方法としては、混合できさえすれば特に限定されるものではなく、慣用の攪拌機を用いて攪拌することによって行うことができる。例えば、調製したガティガム含水溶液にウコン色素を添加し、その後プロペラ等を用いて撹拌混合する方法を挙げることができる。
撹拌混合されたガティガム含水溶液とウコン色素の混合物は、次いで粉砕処理(微粒子化処理)に供せられる。粉砕処理(微粒子化処理)の方法としては、物理的破砕法が好ましい。物理的破砕法としては、ウコン色素を平均粒子径(メジアン径:d50)が1μm以下となるまで微粒子化することができる湿式粉砕機を用いた処理を挙げることができる。かかる湿式粉砕機として、具体的には、ウルトラビスコミルおよびダイノミルを挙げることができる。また、ビーズを入れるなどの工夫により、サンドミルやコボールミル等の湿式粉砕機も用いることができる。
かかる粉砕処理、好ましくは物理的破砕法による粉砕処理を用いてガティガム含水溶液中でウコン色素を粉砕して平均粒子径(メジアン径:d50)が1μm以下となるまで微粒子化することで、ウコン色素を水中に安定して分散させることができ、また長期保存した場合でも凝集や沈殿が有意に抑制された状態でウコン色素を水含有溶媒中に安定に分散させたウコン色素組成物を製造することができる。
なお、ガティガム含水溶液とウコン色素を混合した後に、ガティガム含水溶液中でウコン色素を粉砕処理(微粒子化処理)する本発明の方法は、ウコン色素を粉砕した後にガティガム含水溶液に混合する方法に比して、製造工程が簡便であり、更にはウコン色素をより均一且つ安定的に所望の平均粒子径に微粒子化することができ、その結果、本発明の効果をより有効に発揮できるという点で好ましい方法である。
上記粉砕処理によりウコン色素は出来る限り微粒子化することが好ましく、具体的には前述するように、平均粒子径(メジアン径:d50)が1μm以下、好ましくは0.9μm以下、より好ましくは0.5μm以下である。ウコン色素は、ガティガム含水溶液中でかかる平均粒子径以下になるように調製されることにより、本発明の効果、例えば水溶液中での分散性および分散安定性、経時的な凝集や沈殿の抑制効果、体内吸収性の向上効果がより発揮されやすくなる。
本発明のウコン色素液状組成物中でのウコン色素の平均粒子径(メジアン径)、言い換えるとガティガム溶液中のウコン色素の平均粒子径(メジアン径)は、(湿式)レーザー回折式粒度分布測定装置マイクロトラックMT-3000II(Microtorac INC.製)を用いて測定することができる(条件;屈折率:1.81、測定範囲:0.021〜2000μm、粒度分布:体積基準)。
ガティガム含水溶液中でウコン色素を粉砕処理(微粒子化処理)して調製されたウコン色素液状組成物は、必要に応じて、その後更に、微粒子化したウコン色素などの成分を均一に混合するために均質化処理を行うこともできる。均質化処理の方法としては、微粒子化したウコン色素などの成分を均質に分散する方法であれば特に制限されず、ナノマイザー、マイクロフルイタイザー、ホモジナイザー等の乳化・分散装置、超音波分散機を使用して行うことができる。均質化処理をすることにより、微粒子化されたウコン色素の凝集がほぐれて水への分散性及び分散安定性がより向上する。
斯くして調製される本発明のウコン色素液状組成物は、ガティガム含水溶液とウコン色素を併用することにより、電荷的に安定となるが、ウコン色素液状組成物を添加配合する対象製品(例えば、着色する対象の製品(被着色製品))に合わせて適宜pHを調整することもできる。好ましくはpH8以下に調整する。用いるpH調整剤としては、リン酸、硫酸、塩酸等の無機酸類、クエン酸、乳酸、リンゴ酸等の有機酸類を例示することができる。これらは被着色製品の種類や調整するpHに応じて、適宜使用することができる。
上記の方法により調製される本発明のウコン色素液状組成物は、色価(10%)が最大4500、好ましくは最大3000というように高い色価を有することができる。
かかる色価(10%)は、食品添加物公定書に基づく色価算出法で求めることができる。例えば、対象とするウコン色素液状組成物をエタノールで希釈して、当該エタノール溶液の可視部での極大吸収波長(425nm付近)における吸光度を測定し、次いでエタノールの希釈率から、測定した吸光度(425nm付近)を10w/v%溶液の吸光度に換算することによって求めることができる。
本発明が対象とするウコン色素組成物の形態は特に限定されるものではないが、上記方法により得られる液状物が一つの態様として挙げられる。かかる液状物は、飲料や化粧水などの水性の液状組成物に添加し配合した際に、再分散性しやすいという利点がある。
また、必要に応じて、上記方法により得られるウコン色素液状組成物を乾燥粉末化することにより、粉末状のウコン色素組成物(ウコン色素粉末組成物)を調製することも可能である。乾燥粉末化したウコン色素組成物(ウコン色素粉末組成物)は、非常に濃い濃度でウコン色素を含有する製品を調製するのに有用であり、また乾燥状態の食品や錠剤などの製品を乾式方法で製造する際に使用が可能であること、防腐剤の必要がなく保存性が高いことなどの利点がある。乾燥粉末化に用いられる乾燥機については特に制限はなく、スプレードライヤー、スラリードライヤー等の液滴噴霧型乾燥機や凍結乾燥機等を例示することができる。
また、ウコン色素粉末組成物をさらに造粒処理することにより、さらにまた打錠処理することにより、ウコン色素組成物を顆粒状の形態(ウコン色素顆粒組成物)または錠剤の形態(ウコン色素錠剤組成物)に調製することもできる。かかる顆粒または錠剤は、必要に応じて当業界に公知の添加剤(賦形剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤など)を配合して、慣用の製剤技術に従って製造することができる。なかでも顆粒状の形態のウコン色素組成物は、飲料または化粧水などの水性製品に添加する際に溶解性に優れ、速やかに溶解するという利点がある。
なお、本発明の効果を奏する限りにおいて、ウコン色素組成物に対して、例えば、増粘多糖類、香料、色素、酸化防止剤、日持ち向上剤、保存料、糖類等の添加物を併用することができる。これらを併用することによりウコン色素組成物の味質や香り、テクスチャーに変化を与えることができ、より嗜好性の高いウコン色素組成物を調製することができる。
(II)ウコン色素組成物の応用
(1)食品添加物や添加剤としての使用
本発明のウコン色素組成物は、例えば食品添加物や添加剤として、より具体的には着色料または香料として、各種の食品(一般食品(健康食品を含む)のほか、サプリメントなどの健康補助食品も含まれる)、および化粧品に使用することができる。
食品は液状、半固形状又は固形状の何れでもよく、その具体例としては以下のものが挙げられる。
飲料:炭酸飲料、果実飲料(果実飲料、果汁入り清涼飲料、果汁入り炭酸飲料、果肉飲料を含む)、野菜飲料、野菜・果実飲料、低アルコール飲料、コーヒー飲料、粉末飲料、スポーツ飲料、サプリメント飲料、紅茶飲料、緑茶、ブレンド茶等、
デザート類:カスタードプリン、ミルクプリン、果汁入りプリン、ゼリー、ババロア等、
冷菓類:アイスクリーム、ミルクアイスクリーム、果汁入りアイスクリーム、ソフトクリーム、アイスキャンディー、シャーベット等、
ガム類:チューインガム、風船ガム等、
チョコレート類:マーブルチョコレート等のコーティングチョコレート、イチゴチョコレート、ブルーベリーチョコレート、メロンチョコレート類、
キャンディー類:ハードキャンディー(ボンボン、バターボール、マーブル等を含む)、ソフトキャンディー(キャラメル、ヌガー、グミキャンディー、マシュマロ等を含む)、ドロップ、タフィ等、
菓子:ハードビスケット、クッキー、おかき、煎餅等の焼き菓子、
スープ類:コンソメスープ、ポタージュスープ、パンプキンスープ等、
漬物類:浅漬け、醤油漬け、塩漬け、味噌漬け、糠漬け、粕漬け、麹漬け、酢漬け、芥子漬け、もろみ漬け、梅漬け、福神漬け、しば漬け、生姜漬け、梅酢漬け等、
ジャム類:ストロベリージャム、ブルーベリージャム、マーマレード、リンゴジャム、杏ジャム等、
乳製品:乳飲料、乳酸菌飲料、ヨーグルト、チーズ等、
油脂類:バター、マーガリン等、
穀物加工類:パン類、麺類、パスタ類等、
水畜産加工食品:ハム、ソーセージ、かまぼこ、ちくわ等、
調味料:みそ、タレ、ソース、卓上レモン、酢、マヨネーズ、サラダドレッシング、カレールー等、
調理品:卵焼き、オムレツ、カレー、シチュー、ハンバーグ、コロッケ、スープ、お好み焼き、餃子、果物ジャム等。
好ましくは上記中、飲料、ジャム類、漬物類、ソース類に属する液状調味料であり、より好ましくは飲料である。また、サプリメントなどの健康補助食品の場合、好ましくはシロップ剤、液剤、ドリンク剤、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤を挙げることができる。
本発明のウコン色素組成物を食品添加物や添加剤(着色料または着香料)として使用する場合、着色または着香する対象の製品(飲食品、化粧品)は、当該製品の製造の任意の工程で、本発明のウコン色素組成物を、着色料または着香料として配合することを除けば、各種製品の慣用の製造方法に従って製造することができる。
この場合、各種製品に対する上記ウコン色素組成物の添加量は、所望の目的が達成できる量であれば特に制限されない。着色を目的とする場合、具体的には、本発明のウコン色素組成物を最終製品の全質量に対して、0.01質量%を下限値として添加することが挙げられる。本発明の方法で調製されるウコン色素組成物を使用することによって、対象製品に従来のウコン色素(従来型ウコン色素製剤)を用いた場合に得られる着色よりも濃く、安定に着色することができる。
ここで「従来型ウコン色素製剤」としては、既存添加物名簿収載品目リスト(平成8年5月23日衛化第56号厚生省生活衛生局長通知「食品衛生法に基づく添加物の表示などについて」別添1)の基原・製法に従って調製されるウコン色素の粉末から、含水エタノールで抽出して得られる液体状の可溶化ウコン色素製剤を挙げることができる。
(2)機能性成分としての使用
また、クルクミンの生理活性機能を期待する場合、本発明のウコン色素組成物は、それ自体、サプリメントなどの健康補助食品として使用することができる。
この場合、本発明のウコン色素組成物は「経口クルクミン製剤」として、硬カプセル剤、軟カプセル剤、錠剤、顆粒剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、丸剤、トローチ剤、シロップ剤、液剤、ドリンク剤などの経口投与形態に調製することができる。
この場合、本発明のウコン色素組成物(経口クルクミン製剤)の投与量は、使用者の年齢、体重、症状、投与形態、処置期間などによって変わるが、WHOのTechnical Reportによると、クルクミンのADI:0〜3mg/kg体重/日、NOAEL:250〜320mg/kg体重/日とされており(WHO Technical Report Series :
1237259778265_0.pdf
,第33頁)、この範囲で1日に1回乃至複数回に分けて投与することができる。
(III)ウコン色素の水溶液への分散および分散安定化方法
前述するようにウコン色素は水難溶性であり、そのままだと水への分散性も極めて悪い。本発明は、かかるウコン色素の水含有溶液の分散性および分散安定性を向上する方法を提供する。
当該方法は、ガティガム含水溶液中で、ウコン色素をその平均粒子径(メジアン径)が1μm以下になるまで粉砕処理(微粒子化処理)することによって実施することができる。斯くして得られる液状のウコン色素組成物(ウコン色素液状組成物)は、色価(10%)が最大3000、好ましくは最大4500といった高い色価でウコン色素を含む場合であっても、水含有溶液中にウコン色素を安定して分散させておくことができる。
原料として使用するガティガム、ウコン色素、およびウコン色素を粉砕する際に使用する割合、粉砕処理(微粒子化処理)の方法ならびにその条件は、いずれも前述するウコン色素組成物の調製方法における説明を援用することができる。
粉砕処理によりウコン色素は出来る限り微粒子化することが好ましく、具体的には平均粒子径(メジアン径:d50)が1μm以下、好ましくは0.9μm以下、より好ましくは0.5μm以下である。ウコン色素は、ガティガム含水溶液中でかかる平均粒子径以下になるように調製されることにより、水含有溶液中での分散性が向上し、また経時的な凝集や沈殿も抑制されて分散安定性も向上する。また粉砕処理(微粒子化処理)後、必要に応じて、調製されたウコン色素液状組成物をさらに均質化処理を行うこともできる。均質化処理の方法としては、微粒子化したウコン色素などの成分を均質に分散する方法であれば特に制限されず、ナノマイザー、マイクロフルイタイザー、ホモジナイザー等の乳化・分散装置、超音波分散機を使用して行うことができる。
(IV)ウコン色素の経口による体内吸収性を向上する方法
ウコン色素は、経口投与または経口摂取しても体内吸収性が悪いという問題がある。本発明は、ウコン色素の製剤形態を改良することによって、ウコン色素の経口による体内吸収性を向上する方法を提供する。
かかる方法は、製剤形態を、平均粒子径(メジアン径)が1μm以下の微粒子化状態のウコン色素とガティガムとの混合物とすることによって達成することができる。当該混合物は、具体的には、ガティガム含水溶液中で、ウコン色素をその平均粒子径(メジアン径)が1μm以下になるまで粉砕処理(微粒子化処理)することによって調製することができる。
原料として使用するガティガム、ウコン色素、およびウコン色素を粉砕する際に使用する割合、粉砕処理(微粒子化処理)の方法ならびにその条件は、いずれも前述するウコン色素組成物の調製方法における説明を援用することができる。
粉砕処理によりウコン色素は出来る限り微粒子化することが好ましく、具体的には平均粒子径(メジアン径:d50)が1μm以下、好ましくは0.9μm以下、より好ましくは0.5μm以下である。ウコン色素は、ガティガム含水溶液中でかかる平均粒子径以下になるように調製されることにより、経口投与もしくは経口摂取した場合でも体内への吸収性が改善されて、格段に向上する(実験例5)。また粉砕処理(微粒子化処理)後、前述するように、必要に応じて、調製されたウコン色素液状組成物をさらに均質化処理を行うこともできる。
上記混合物は、必要に応じて、上記方法により得られる液状組成物を乾燥粉末化することにより粉末状の混合物(ウコン色素粉末組成物)の形態に調製することもできるし、さらに造粒処理することにより、さらにまた打錠処理することにより、上記混合物を顆粒状の形態(ウコン色素顆粒組成物)または錠剤の形態(ウコン色素錠剤組成物)に調製することもできる。かかる顆粒または錠剤は、必要に応じて当業界に公知の添加剤(賦形剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤など)を配合して、慣用の製剤技術に従って製造することができる。
以下、本発明の内容を以下の実施例、比較例等を用いて具体的に説明する。しかし、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。なお、処方中、特に記載がない限り単位は「質量部」とする。
実験例1:ウコン色素液状組成物の調製
(1)ウコン色素液状組成物の調製
表1に発明品1〜9(実施例1〜9)、および表2に比較品1〜7(比較例1〜7)および対照品の処方を示す。
発明品1〜9および比較品1〜6については、まず、表1及び2に記載する成分のうち、ガティガム(ガティガムSD:三栄源エフ・エフ・アイ(株))、アラビアガム、キサンタンガム、またはカラヤガムを水に加え、各種増粘多糖類の水溶液を調製した。
次いで、その水溶液中に、ウコン色素の粉末(粉末クルクミンNo.3705:三栄源エフ・エフ・アイ(株)、平均粒子径(d50):13.81μm、結晶状)(色価(10%)=15000)を添加し分散混合した後、水で質量調整を行った。なお、ここでウコン色素粉末の色価(10%)とは、食品添加物公定書に記載の色価算出法に基づき、ウコン色素粉末をエタノールに溶解して、エタノールの10w/v%溶液に換算し、当該エタノール溶液の可視部での極大吸収波長(425nm付近)における吸光度を測定した値を意味する。
ウコン色素の粉末を分散させた混合液を湿式摩砕機ダイノミル(WA・BR>A社製ダイノミルKDL)に供して湿式粉砕を行った後、ホモジナイザー(APV GAULIN社製高圧ホモジナイザー15MR-8TA)にて分散均一化処理して、液状のウコン色素組成物(ウコン色素液状組成物)を得た(発明品1〜9,比較品1〜6)。
一方、比較品7は、上記方法で調製したガティガム水溶液中にウコン色素の粉末(上記と同じ)を添加し分散混合して、上記湿式粉砕処理およびホモジナイズ処理をすることなく、調製したウコン色素液状組成物である(粉砕処理およびホモジナイズをしない以外は発明品3と同一の処方からなる)。また対照品は、ガティガム水溶液に代えて水にウコン色素の粉末(上記と同じ)を添加し、分散混合したものに対して、上記湿式摩砕機ダイノミルを用いて湿式粉砕を行った後、ホモジナイザーにて分散均一化処理して調製したウコン色素液状組成物である。
(2)ウコン色素液状組成物の評価
(2-1)ウコン色素の平均粒子径
得られた各ウコン色素液状組成物(発明品1〜9、比較品1〜7、および対照品)を比較するために、ウコン色素液状組成物中に含まれるウコン色素の平均粒子径を、メジアン径(d50)を測定することで評価した。メジアン径(d50)は、レーザー回折式粒度分布測定装置マイクロトラックMT-3000II(Microtorac INC.製)(湿式)(測定条件;屈折率:1.81、測定範囲:0.021-2000μm、粒度分布:体積基準)を用いて測定した。メジアン径(d50)(μm)は、値が小さいものほど粒子が小さいことを示し、粗大な粒子や凝集物を含むことで値が大きくなる。結果を表1および2に併せて示す。
Figure 2009263638
Figure 2009263638
発明品1〜9は、60℃で7日間保存した後でも溶液全体が均一に着色されており、容器の底にも殆ど沈殿が認められず、ウコン色素が安定な状態で良好に分散していることが確認された。なかでも発明品2〜4は、容器の底に全くと言っていいほど沈殿が認められず、分散安定性が極めて良好であることが確認された。
(2-2)凝集の有無
得られた発明品および比較品のうち、発明品7〜9、比較品6〜7および対照品について、顕微鏡(600倍;対物40倍、接眼15倍)によって凝集の有無を観察した。その結果、増粘多糖類を用いないで調製した対照品は、10質量%のウコン色素で凝集が生じることが確認された。また、増粘多糖類としてアラビアガムを用いて調製した比較品6は、15質量%のウコン色素含量で凝集が生じたが、ガティガムを用いて調製した発明品7〜9は、15質量%以上のウコン色素含量でも凝集が生じなかった(表1および2参照)。
以上の結果からわかるように、ガティガム水溶液にウコン色素を添加し、これを溶液中で湿式粉砕処理することにより、ガティガム水溶液中に分散しているウコン色素の平均粒子径(メジアン径)を1μm以下にまで小さくすることができた(発明品1〜9:表1参照)。斯くして得られた発明品1〜9は、経時的安定性に優れており、そのまま(液状の状態で)60℃で7日間保存した後でも、ウコン色素の凝集や沈殿が有意に抑制されており、優れた分散安定性を備えていることが確認された。
一方、ガティガムに代えて、キサンタンガム(比較品1)またはカラヤガム(比較品2)を用いた場合は、増粘多糖類を使用しないで調製した対照品(ウコン色素の平均粒子径(d50):3.01μm)と同様に、ウコン色素の平均粒子径(d50)が1μm以下になるまで十分に粉砕することができなかった(ウコン色素の平均粒子径(d50):2.35〜2.58μm)。特にガティガムに代えて、キタンサンガムを用いた比較品2、カラヤガムを用いた比較品3では、粉砕処理を行うにつれて溶液の粘度が非常に高くなり、粉砕処理が困難となってしまうという問題が生じた。
これに対して、ガティガムに代えてアラビアガムを用いた比較品3〜6は、ガティガムを用いた発明品1〜9と同様に、ウコン色素の平均粒子径(d50)を1μm以下にまで細かくすることは可能であったが、上述したように比較品6では凝集が認められた。凝集はウコン色素の含量を高くすると顕著になる傾向にあった。また比較品6のようにウコン色素の含量を15質量%以上にすると、粉砕処理時におけるアラビアガム水溶液の粘度の上昇が無視できないほどに高くなってしまい、調製時に不都合が生じることが判明した。
実験例2:飲料の調製とその評価
実験例1で調製したウコン色素液状組成物(発明品1〜9、比較品1〜7、対照品)を、200ml容量の飲料用透明ガラス瓶に入れて、これにウコン色素の最終含量が0.3質量%になるように下記の処方に従って清涼飲料を調製し、93℃達温ホットパック充填して加熱殺菌した後、常温(25℃)で静置保存した。
<清涼飲料処方>
果糖ブドウ糖液糖(Brix 75°) 13.30%
クエン酸(無水) 0.20%
クエン酸三ナトリウム 0.10%
ビタミンC 0.02%
ウコン色素組成物
(ウコン色素の最終含量が0.3質量%となるように添加)
イオン交換水にて全量 100.00%。
静置保存から7日後に、表3に記載する評価基準に基づいて、飲料中のウコン色素の分散安定性を調べた。結果を表4に示す。また、図1に、ウコン色素液状組成物(発明品3)で着色した発明飲料3(向かって左側)、およびウコン色素液状組成物(比較品7)で着色した比較飲料7(向かって右側)を、常温保存後7日目に観察した結果(画像)を示す。
Figure 2009263638
Figure 2009263638
ガティガム水溶液にウコン色素を添加し、粉砕処理を施し調製したウコン色素液状組成物(発明品1〜9:実施例1〜9)を用いて調製した飲料(発明飲料1〜9:実施例10〜18)を常温で7日間保存した場合の結果から、本発明のウコン色素液状組成物は、希釈して飲料に着色できる程度のウコン色素濃度に調整した場合でも、ウコン色素が沈殿することなく、飲料などの水性製品を安定して着色できることが分かった。
一方、ガティガム水溶液にウコン色素を添加しただけで粉砕処理を行わずに調製したウコン色素液状組成物(比較品7)を用いて調製した比較飲料7は、調製直後の飲料は、均一に着色し分散性は良好であった。しかし、分散効果が弱いことから、常温で7日間保存すると、ウコン色素は完全に沈殿し、飲料は透明になった。このことから、長期にわたって安定した着色効果を備えたウコン色素液状組成物を調製するには、ガティガム水溶液にウコン色素を添加した後に粉砕処理を行い(さらに好ましくは均質化処理)、ウコン色素を微粒子化することが必要であることが判明した。
また、ガティガムに代えてアラビアガムを用いて調製したウコン色素液状組成物(比較品3〜6)で着色した飲料(比較飲料3〜6)は、まずまずの安定な着色効果を得ることができるが(評価B)、ガティガムを用いて調製したウコン色素液状組成物(発明品1〜9)で着色した飲料(発明飲料1〜9)に比べて保存による分散安定性が十分でなく、常温で7日間保存すると、飲料容器の底にウコン色素の沈殿が確認できた。
実験例3:ウコン色素の平均粒子径と分散性との関係
ウコン色素液状組成物中に含まれるウコン色素の平均粒径(d50)と、当該ウコン色素液状組成物中のウコン色素の分散性との関係を調べた。
(1)被験組成物(ウコン色素液状組成物)の調製
実験例1の発明品7と同一の処方からなるウコン色素液状組成物(ガティガム4質量%、ウコン色素15質量%、水71質量%)50mlを、200ml容量の透明容器に入れたものを7検体準備した(試料1〜7)。各試料A〜Gに対して、直径1mmジルコニアビーズ50ml添加し、1500rpmにて混合し、検体毎に処理時間を変えて適当な時間で撹拌を止めた。次いで、各試料からジルコニアビーズをろ別して、試料A〜Dについては、そのままウコン色素の平均粒子径(メジアン径:d50)を測定し、また試料E〜Gについてはさらに湿式摩砕機ダイノミル(WAB社製ダイノミルKDL-A)に供して粉砕を実施し、粉砕後にウコン色素の平均粒子径(メジアン径:d50)を測定した。平均粒子径(メジアン径:d50)の測定は、実験例1と同様に、レーザー回折式粒度分布測定装置マイクロトラックMT-3000II(Microtorac INC.製)(湿式)(測定条件;屈折率:1.81、測定範囲:0.021-2000μm、粒度分布:体積基準)を用いて行った。
(2)ウコン色素の平均粒子径(メジアン径:d50)と凝集の有無
各試料A〜Gについて、粉砕処理後のウコン色素の平均粒子径(メジアン径:d50)を測定した結果を表5に示す。また、粉砕処理後の各試料の凝集の有無を、顕微鏡(600倍;対物40倍、接眼15倍)を用いて観察した。その結果を表5に併せて示す。
Figure 2009263638
(3)飲料の調製とウコン色素の分散安定性評価
(1)で調製したウコン色素液状組成物(試料A〜G)を、200ml容量の飲料用透明ガラス瓶(図2参照)に入れて、これにウコン色素の最終含量が0.15質量%になるようにイオン交換水をいれて希釈して飲料を調製した(飲料A〜G)。これを93℃達温ホットパック充填して加熱殺菌した後、60℃で3日間静置保存した。
加熱殺菌直後および60℃で3日保存した後に、飲料上層部の濁度(720nm)を測定して分散安定性を評価するとともに、60℃3日保存後に、飲料中のウコン色素の沈殿性を評価した。結果を表6に示す。なお、飲料の濁度は、飲料の波長720nmにおける吸光度を測定して求めた。また必要に応じて、飲料を適当な倍率で希釈した後に、吸光度(波長720nm)を測定し、希釈倍率から換算して求めた。また図2の(a)に、60℃で3日間静置保存した後の飲料A〜Gを横からみた画像を、(b)に同飲料を容器底からみた画像を示す。
Figure 2009263638
この結果から、ウコン色素液状組成物(試料A〜G)に含まれるウコン色素の平均粒子径(メジアン径)が1μmより大きいと、水溶液への再分散性および分散安定性がわるく、経時的に多くのウコン色素が沈殿することが判明した。これに対して、ウコン色素液状組成物中のウコン色素の平均粒子径(メジアン径)を1μm以下にすると、水溶液への再分散性および分散安定性がきわめて良好で、経時的に生じる凝集や沈殿を有意に抑制した状態で、水溶液中に長期にわたってウコン色素を安定して分散させることができることが判明した。
実験例4:先行文献(特開平3-97761号公報)との対比
特開平3-97761号公報(先行文献)には、クルクミンをpH9以上のアルカリ性の水溶液中でガティガム(ガッチゴム)等のポリサッカライドと接触させ、次いでpHを8以下に低下させて酸性化することによって形成したクルクミンとガティガム等のポリサッカライドとの複合体が、光安定性と着色力が改良された水溶性の着色料として有用であることが記載されている。
そこで、ポリサッカライドとして、ゼラチン、アラビアガム、およびガティガムを用いて、当該公報の実施例2と3に準じてクルクミンとポリサッカライドとの複合体を調製し、これを飲料に適用した場合の分散安定性を評価し、本願発明のウコン色素液状組成物と比較した。
(1)クルクミンとポリサッカライドとの複合体の調製
ウコン色素の粉末(粉末クルクミンNo.3705:三栄源エフ・エフ・アイ(株)、平均粒子径(d50):22.75μm、結晶状)(色価(10%)=15000)7.5gを水92.5gに撹拌下添加し、10%KOH水にてpH12に調整し、ウコン色素を溶解した。この液をろ過しウコン色素の不溶物を取り除き、ウコン色素の7.5%KOH水溶液を取得した。
次いで、ゼラチン2%水溶液(先行文献の実施例2参照)、アラビアガム10%水溶液(先行文献の実施例3参照)、またはガティガム10%水溶液(先行文献の実施例3参照)を調製し、これに10%KOHを添加してpHを12に調整した。この各溶液92.5gに、上記で調製したウコン色素の7.5%KOH水溶液を、7.5g添加し10分間混合した。
次いで、撹拌しながら、10%リン酸水溶液を添加し混合液のpHを4.5に調整した。
Figure 2009263638
(2)ウコン色素の平均粒子径(メジアン径:d50)と凝集の有無
各試料a〜cについて、ウコン色素の平均粒子径(メジアン径:d50)をレーザー回折式粒度分布測定装置マイクロトラックMT-3000II(Microtorac INC.製)(湿式)(測定条件;屈折率:1.81、測定範囲:0.021-2000μm、粒度分布:体積基準)を用いて測定した。結果を表8に示す。また、各試料の凝集の有無を、顕微鏡(600倍;対物40倍、接眼15倍)を用いて観察した。その結果を表8に併せて示す。
Figure 2009263638
(3)飲料の調製とウコン色素の分散安定性評価
(1)で調製した試料a〜cを、200ml容量の飲料用透明ガラス瓶(図3参照)に入れて、これにウコン色素の最終濃度が0.15質量%になるようにイオン交換水をいれて希釈して飲料を調製した(飲料a〜c)。これを93℃達温ホットパック充填して加熱殺菌した後、60℃で3日間静置保存した。また比較のため、実験例1で調製した発明品7を、上記と同様に透明容器に入れて、これにウコン色素の最終濃度が0.15質量%になるようにイオン交換水をいれて希釈して飲料を調製した(発明飲料7)。これを93℃達温ホットパック充填して加熱殺菌した後、60℃で3日間静置保存した。
加熱殺菌直後および60℃で3日保存した後に、飲料上層部の濁度(720nm)を測定し、分散安定性を評価するとともに、60℃3日保存後に、飲料中のウコン色素の沈殿性を評価した。結果を表9に示す。なお、飲料の濁度は、飲料の波長720nmにおける吸光度を測定して求めた。また必要に応じて、飲料を適当な倍率で希釈した後に、吸光度(波長720nm)を測定し、希釈倍率から換算して求めた。また図3(a)に、60℃で3日間静置保存した後の飲料a〜cおよび発明飲料7を横からみた画像を、図3(b)に同飲料を底からみた画像を示す。
Figure 2009263638
この結果からわかるように、特開平3-97761号公報(先行文献)の方法に従って調製したクルクミンとポリサッカライド(ゼラチン、アラビアガム、ガティガム)の複合体は、飲料の着色に使用した場合、本願発明のウコン色素液状組成物(実験例1参照)と比較して、明らかに分散安定性に劣ることが判明した。
実施例19:かき氷シロップ液
実験例1で調製したウコン色素液状組成物(発明品3)を用いて下記処方のかき氷シロップ液(本発明シロップ液)を調製した。
<かき氷シロップ液の処方>
液糖 65.0 g
砂糖 3.0 g
クエン酸 0.25g
食塩 0.15g
ウコン色素液状組成物(発明品3) 0.05g
水 31.55g
合計 100.00g。
上記により、得られた本発明のシロップ液は鮮やかな黄色を呈しており、更にシロップ液中でウコン色素が沈殿することなく安定なシロップ液を調製することができた。
実施例20:パイナップルシャーベット
実験例1で調製したウコン色素液状組成物(発明品3)を用いて下記処方のパイナップルシャーベット(本発明シャーベット)を調製した。
<パイナップルシャーベットの処方>
液糖 15.00g
粉末水飴 7.50g
硬化ヤシ油 1.00g
脱脂粉乳 1.00g
1/5濃縮パイナップル果汁 4.00g
パイナップルフレーバー 0.10g
ウコン色素液状組成物(発明品3) 0.05g
水 71.35g
合計 100.00g。
上記により得られた本発明のシャーベットは、外観を肉眼で観察したところ、鮮やかな黄色を呈しており、ウコン色素が均一にシャーベットを着色していた。
実施例21:レモン飲料
実験例1で調製したウコン色素液状組成物(発明品3)を用いて下記処方のレモン飲料(本発明飲料)を調製した。
<レモン飲料の処方>
果糖ブドウ糖液糖 30.00g
砂糖 10.00g
クエン酸 0.40g
1/5レモン果汁 4.40g
レモンフレーバー 0.20g
ウコン色素液状組成物(発明品3) 0.05g
水 54.95g
合計 100.00g。
上記により得られた本発明のレモン飲料は、明るい色調かつ鮮やかでレモンを想像しやすい黄色を呈しており、ウコン色素の経時的な凝集・沈殿を生じない、発色性にすぐれた飲料を調製することができた。
実施例22:レモンガム
実験例1で調製したウコン色素液状組成物(発明品3)を用いて下記処方のレモンガムを調製した。具体的には、まず下記処方に示すウコン色素組成物(発明品3)以外の材料を加熱しながら混合し、これにウコン色素組成物(発明品3)を添加して、圧延ローラーで板状に成形し、切断してレモンガム(本発明ガム)を作った。
<レモンガムの処方>
ガムベース 100.00g
精製ブドウ糖 72.00g
粉砂糖 100.00g
クエン酸 0.50g
レモンフレーバー 0.15g
ウコン色素液状組成物(発明品3) 0.05g。
上記により得られた本発明のレモンガムは明るい色調かつ鮮やかな黄色を呈しており、本ウコン色素組成物がガム全体中に均一に混ざっており、なおかつ均一に着色していた。
実施例23:ハードキャンディ
実験例1で調製したウコン色素液状組成物(発明品3)を用いてハードキャンディを調製した。具体的には、水20g、砂糖60g、及び水飴40gの混合物を150gまで加熱溶解し、煮詰めて100gにした後、120℃まで冷却し、次いでウコン色素組成物(発明品3)0.05g、クエン酸0.5g及びレモンフレーバー0.15gを添加し、成型後、室温まで冷却してハードキャンディ(本発明のキャンディ)を作った。
上記により得られた本発明のレモンキャンディは、明るい色調かつ鮮明な黄色を呈していた。更に、本発明のウコン色素液状組成物は短時間で材料に均一に混合し、発色のよいキャンディを調製することができた。
実施例24:粉末状のウコン色素組成物の調製
デキストリンNSD-C(株式会社ニッシ製)81g水119gを60℃に加熱し均一に溶解した。そこに実験例1で調製したウコン色素液状組成物(発明品7)を100g添加しホモジナイザーにて均質化した。これをスプレードライヤー(東京理科機器株式会社)にて乾燥粉末化した。得られた粉末(ウコン色素粉末組成物)は、色価(10%)=2250であり、水に溶解(分散)させた後の平均粒子径(粒度分布(d50))は0.18μmであった。このことから、本発明のウコン色素液状組成物を乾燥して調製した固形組成物(ウコン色素粉末組成物)も水への再分散性に優れていることが確認された。 実施例25:レモンタブレット
実施例24で調製したウコン色素粉末組成物を用いて、下記の処方に従ってレモンタブレットを調製した。具体的には、下記成分を全て粉体混合して、得られた粉体混合物を打錠機にて定法に従って打錠し、明るい黄色を呈したレモンタブレットを調製した。
<レモンタブレットの処方>
ソルビット 95.0g
粉末クルクミン製剤 0.5g
ステアリン酸カルシウム(太平化学産業(株)) 1.5g
クエン酸(無水) 1.0g
ビタミンC 1.0g
レモン粉末香料 1.0g。
実験例5:吸収性試験
(1)ウコン色素液状組成物を使用したウコン色素の吸収性評価
実験例1で調製したウコン色素液状組成物(発明品7)を、1.5%アラビアガム水溶液で希釈し、SDラット(雄、8週齢、自由給餌および自由給水で飼育)に、1kg体重あたり、クルクミンの投与量に換算して50mgまたは300mgを強制経口投与した(各3匹)。対照試験として、ウコン色素の粉末(粉末クルクミンNo.3705:三栄源エフ・エフ・アイ(株)、平均粒子径(d50):22.75μm、結晶状)を1.5%アラビアガム水溶液に分散し、同様に投与を行った(クルクミンの投与量に換算して50mg/Kgまたは300mg/Kg)。
投与前、投与後1時間、2時間、4時間、6時間および24時間に、尾静脈から採血を行い、採血した血液を4℃にて3500rpmで10分間の遠心分離処理を行い、血漿を得た。得られた血漿は抽出処理時まで遮光下で−20℃保存した。
測定時、血漿を室温に戻し、そのうち100μLを共栓試験管遠沈管に取った。そこへβ−グルクロニダーゼ(Wako)100μL、0.1M酢酸緩衝液(pH5.0)10μLを取り、37℃の恒温槽で1時間反応させた。その後、内部標準物質であるメプロニル(標準品、Wako)(0.5μg/mLメタノール溶液)10μLを添加し、さらにクロロホルム0.5mLを添加してボルテックスミキサーで混合した(1分)。超音波処理を15分間行い、再びボルテックスミキサーで混合し(1分)、遠心分離処理(3000rpm、5分間、4℃)を行った後、クロロホルム層を採取した。その際に得られた残渣にクロロホルムの添加以降の操作をもう一度繰り返した。1回目および2回目のクロロホルム層を合一し、乾固用のサンプルチューブに移し、窒素ガスを吹き付けることで溶媒留去を行った。
この残渣を水:アセトニトリル=1:1溶液にて溶解し、LC/MS/MS分析装置にてクルクミノイドの中で代表的な化合物であるクルクミンの濃度を分析した。分析条件は、カラム:Atlantis T3(Waters社製 2.1×150mm 3μ)、カラム温度:40℃、移動相は0.005%ギ酸水溶液と0.005%ギ酸/アセトニトリル溶液でグラジェント分析し、イオン化モード:エレクトロスプレーイオン化法 (ESI)ポジティブモード、測定モード:MRM法にて検出し測定した。 各採血時点の血漿中のクルクミン濃度を図4に示す。図から求めた最高血漿中濃度:Cmax、最高血漿中濃度到達時間:Tmax、および血漿中濃度−時間曲線下面積:AUCを表10に示す。
Figure 2009263638
この結果から、本発明のウコン色素組成物は、経口投与した場合の体内吸収性が極めて向上していることが判明した。ウコン色素には、多くの優れた薬理作用があることが分かってきつつあるから、本発明のウコン色素組成物は、着色料としてだけでなく、それ自体経口用の組成物として、具体的には食品(サプリメントなどの機能性食品)として有効に利用することができる。
(2)粉末状のウコン色素組成物を使用したウコン色素の吸収性評価
実施例24で調製した粉末状のウコン色素組成物を、1.5%アラビアガム水溶液で希釈し、SDラット(雄、8週齢、自由給餌および自由給水で飼育)に、1kg体重あたり、クルクミンの投与量に換算して50mgを強制経口投与した(各3匹)。対照試験として、ウコン色素の粉末(粉末クルクミンNo.3705:三栄源エフ・エフ・アイ(株)、平均粒子径(d50):22.75μm、結晶状)を1.5%アラビアガム水溶液に分散し、同様に投与を行った(クルクミンの投与量に換算して50mg/kg)。
以下、粉末状のウコン色素組成物を使用したウコン色素の吸収性評価について、ウコン色素液状組成物である発明品7を使用した実験例5(1)の方法に従って採血・測定・算出した。
各採血時点の血漿中のクルクミン濃度を図5に示す。図から求めた最高血漿中濃度:Cmax、最高血漿中濃度到達時間:Tmax、および血漿中濃度−時間曲線下面積:AUCを表11に示す。
Figure 2009263638
この結果から、本発明のウコン色素組成物は、粉末状に加工したとしても液状組成物と同様に、経口投与した場合の体内吸収性が極めて向上していることが判明した。本発明のウコン色素組成物は、経口用の粉末状、顆粒状または錠剤状の組成物としても、具体的には食品(サプリメントなどの機能性食品)として有効に利用することができる。
本発明により、溶媒中にウコン色素を高含量になるよう添加した場合でもウコン色素の経時的な凝集や沈殿が効果的に防止され、更には発色がよく尚且つ従来ない明るい色調で濃く、安定な着色が可能となるウコン色素組成物及びその調製方法を提供することができる。また、本発明によるクルクミノイド組成物は、経口投与した際に従来のクルクミノイドに比べて吸収性が大幅に改善される。

Claims (10)

  1. ガティガムおよび平均粒子径が1μm以下のウコン色素を含有することを特徴とするウコン色素組成物。
  2. ガティガム、平均粒子径が1μm以下のウコン色素、および水を含有することを特徴とする、液状形態を有するウコン色素組成物。
  3. 請求項2に記載するウコン色素組成物を乾燥粉末化処理する工程を経て調製される、粉末状、顆粒状または錠剤状のウコン色素組成物。
  4. ウコン色素をガティガム含水溶液に添加した後、当該溶液中でウコン色素を、その平均粒子径が1μm以下になるまで粉砕処理する工程を有する、請求項2に記載する液状形態を有するウコン色素組成物の調製方法。
  5. ガティガム含水溶液に添加する前のウコン色素が結晶状態のウコン色素であることを特徴とする、請求項4に記載する調製方法。
  6. 請求項4または5に記載する調製方法で得られた液状形態を有するウコン色素組成物を、更に乾燥粉末化処理する工程を有する、請求項3に記載する粉末状、顆粒状または錠剤状のウコン色素組成物の調製方法。
  7. 経口投与または経口摂取した場合の体内への吸収性が向上したウコン色素組成物の調製方法である、請求項4乃至6のいずれかに記載する調製方法。
  8. 請求項1乃至3のいずれかに記載するウコン色素組成物、または請求項4乃至7のいずれかの方法によって調製されるウコン色素組成物を含有する、食品または化粧品。
  9. ウコン色素をガティガムの水含有溶液に添加した後、ウコン色素の平均粒子径が1μm以下になるまで粉砕処理することを特徴とする、水含有溶液へのウコン色素の分散方法。
  10. ウコン色素の経口による体内吸収性を向上させる方法であって、平均粒子径が1μm以下の微粒子状態のウコン色素とガティガムとの混合物とすることを特徴とする方法。
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