JP2009245907A - 荷電粒子線装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】
本発明は、スループットの低下要因である温度変化に伴う像ドリフトを抑制しつつ、高い分解能を維持した状態にて、炭化水素系の分子等の除去が可能な荷電粒子線装置の提供を目的とする。
【解決手段】
上記目的を達成するための一態様として、荷電粒子線装置の試料室内に配置されるコールドトラップ板を、試料ステージ及び試料の移動範囲外の空間であり、且つ前記試料表面の移動軌跡に一致する平面と、当該移動軌道に平行であって、対物レンズの試料側端部に接する面との間に形成される空間を除く空間に、配置することを提案する。更に、トラップ板を試料室内壁から離間して配置すること、或いはトラップ板を、試料室内壁の一部に、当該試料室内壁とは、温度的に隔絶されるように配置すること、を併せて提案する。
【選択図】図3

Description

本発明は、荷電粒子線装置において試料を観察する際に問題となるコンタミネーションの抑制技術に係り、特に走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、ウェハやレチクルに構成されたパターンを安定して測長する技術に関するものである。
真空中に配置された試料上に、収束された電子線を照射することで、炭化水素(ハイドロカーボン)分子の重合による非晶質炭素が試料表面に堆積することが知られている。堆積した非晶質炭素はコンタミネーションと呼ばれ、測長SEMにおいてはコンタミネーションの影響によりパターン寸法の測長再現性が低下する問題がある。この原因としては、パターン寸法や二次電子放出量の経時的変化などがある。
また、コンタミネーションは電子線照射領域の外枠の部分に堆積しやすく、電子線照射領域内に蓄積される電荷の移動が阻害される。その結果として帯電が助長され、試料表面電位の不均一によって電子線軌道が偏向される(ビームドリフト)、また帯電の影響により二次電子放出量が変化して試料本来の構造が観察できない、といった障害が発生し、高精度な測長が不可能となる。観察試料がレチクルなどの絶縁物の場合、コンタミネーションによる帯電は特に顕著となるため、コンタミネーションを極力抑制する必要がある。
非特許文献1には、コンタミネーションが発生するプロセスでは、真空引きされた試料室内に存在する比較的大きな質量数(>50amu)の炭化水素系の分子が、電子線照射によって試料上へ吸着する場合や、元来試料を汚染している炭化水素系分子が電子線照射領域へ移動し、そこで固着する場合があると考えられている。
試料室内の炭化水素系分子を低減させる方法として、コールドトラップを用いたコンタミネーション低減法がある。これは、試料室内に配置された金属製の部材を冷却し、その部材に残留ガスを吸着させることによって、試料上へのコンタミネーションの堆積を抑制しようとするものである。
特許文献1や2には、ウェハなどの試料と、電子線を集束する対物レンズとの間に、電子線の通過開口を備えた円盤状のコールドトラップ板を配置し、当該トラップ板を冷却して、残留ガスを吸着させることで、コンタミネーションを低減する手法が説明されている。
また、特許文献3には、冷却部材を、試料雰囲気全体を覆うように配置して、試料室全体を冷却することで、試料汚染を抑制する手法が説明されている。
特開2001−110346号公報 特開平8−273573号公報 特開平10−12173号公報 電子顕微鏡 Vol.16 No.1(1981)
試料が存在する雰囲気の冷却は、炭化水素系分子の除去に関する有効な手段であるが、同時に以下のような問題がある。走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)の高分解能化のためには、試料と対物レンズとの間の距離であるワーキングディスタンス(Working Distance:WD)を小さくする必要がある。すなわち、特許文献1,2に説明されているような円盤状のトラップ板を、対物レンズと試料との間に介在させようとすると、その分だけWDが増加し、高分解能化を阻害する要因となる。
また、冷却手段による冷却時に、対物レンズ等も併せて冷却されることになるが、温度が安定するまでに、冷却による対物レンズの部材収縮が発生すると、軸ずれが起こり、像ドリフトの原因ともなる。対物レンズの温度変化が安定するまで待ってから、観察を行うことも考えられるが、特に高いスループットが求められるSEM(例えば単位時間内に多数のウェハやマスク等のパターン幅を測定する測長走査電子顕微鏡(Critical Dimension-SEM:CD−SEM))には、高いスループットが要求されるため、上記安定時間の確保は困難であるという問題がある。当該問題は、特許文献1,2に説明されているようなトラップ板を対物レンズに近接して配置する技術では勿論のこと、特許文献3に説明されているような試料雰囲気全体を冷却部材で覆う技術でも発生する可能性がある。
更に、外部からSEMの試料室に搬入される試料は、それ以前に室温の雰囲気に存在しているため、試料室内において冷却を開始すると、温度が安定するまでに収縮が起こり、像ドリフトの原因となる可能性もある。
本発明は、スループットの低下要因である温度変化に伴う像ドリフトを抑制しつつ、高い分解能を維持した状態にて、炭化水素系の分子等の除去が可能な荷電粒子線装置の提供を目的とする。
上記目的を達成するための一態様として、荷電粒子線装置の試料室内に配置されるコールドトラップ板を、試料ステージ及び試料の移動範囲外の空間であり、且つ前記試料表面の移動軌跡に一致する平面と、当該移動軌道に平行であって、対物レンズの試料側端部に接する面との間に形成される空間を除く空間に、配置することを提案する。更に、トラップ板を試料室内壁から離間して配置すること、或いはトラップ板を、試料室内壁の一部に、当該試料室内壁とは、温度的に隔絶されるように配置すること、を併せて提案する。
以上のように、対物レンズと試料間に存在する空間外という、試料から離間した位置にトラップ板を配置することで、温度変化の影響を対物レンズや試料に及ぼすことなく、炭素水素系の分子等の除去が可能となる。発明者らは、試料から離れた位置にトラップ板があっても、そこにガス分子が吸着されれば、試料室内の残留ガス分子密度も減少し、結果として試料近傍のガス分圧も低減できるという新たな知見に基づいて、それまでコールドトラップ板の配置位置として知られていた対物レンズと試料との間ではなく、試料から離れた位置であって、試料室内壁とは温度的,空間的に離間した位置に配置した。
更に、試料室とコールドトラップ板を温度的、或いは空間的に離間させることで、コールドトラップ板の温度変化が試料室内壁全体に伝播することがなく、結果として対物レンズや試料の温度変化を抑制することが可能となる。
上記説明に基づく構成によれば、温度変化に伴う像ドリフトを抑制しつつ、高い分解能を維持した状態にて、炭化水素系の分子等の除去が可能な荷電粒子線装置の提供が可能となる。
図1は、試料室内にコールドトラップ機構が設けられたSEMの概要を説明するための図である。なお、以下の説明では、荷電粒子線装置の一例としてSEMを例にとって説明するが、これに限られることはなく、ガス分子の除去が必要な他の荷電粒子線装置(例えば透過電子顕微鏡等)にも適用が可能である。図1は、SEMの試料室11の要部を拡大した図であり、対物レンズ10を除き、SEM鏡筒4内の光学系の構成(荷電粒子源(電子源),走査偏向器,検出器等)は省略されている。図1(a)は試料室11周りの側視図、図1(b)は試料室11の上視図である。
試料室11内には、試料を移動させるための試料ステージ3が配置されている。図1に例示する試料ステージ3は、試料をx−y方向(電子線光軸をz軸としたときに)に移動させる所謂2軸ステージである。試料室11は図示しない真空ポンプが接続され、更に外部(例えばロードロック室)と雰囲気を遮断するための真空バルブ16が設けられている。
試料室11内には、試料から離間した位置に、コールドトラップ機構17が設けられている。後述するように、当該コールドトラップ機構17には、トラップ板が試料室内壁とは空間的に分離して設けられている。なお、図中、一点鎖線は試料2の移動軌跡であり、二点鎖線は試料ステージ3の移動軌跡である。
図1の例では、コールドトラップ機構17のコールドトラップ板は、試料室内にあって、試料ステージ及び試料の移動範囲(一点鎖線と二点鎖線によって包囲される空間)外の空間であり、且つ前記試料表面の移動軌跡に一致する平面と、当該移動軌道に平行であって、対物レンズの試料側端部に接する面との間に形成される空間(空間18)を除く空間に、配置されている。更に、後述するように、コールドトラップ板の板状部は、前記試料室内壁とは離間して配置した。
以上のような構成によれば、温度変化に伴う像ドリフトを抑制しつつ、高い分解能を維持した状態にて、炭化水素系の分子等の除去が可能な荷電粒子線装置の提供が可能となる。
コールドトラップ板を試料と対物レンズとの間へ配置することは、試料への炭化水素系分子の付着を抑制するという点では効率が高いと考えられるが、高分解能SEMにおいては、対物レンズと試料との間の距離であるワーキングディスタンス(WD)を数mm以下にする必要があり、コールドトラップ板を挿入してWDを増加させることはできない。電子線通過用の孔径を大きくしてWDを小さくするといった工夫が必要である。
CD−SEMのように、低エネルギーの電子線を用いる低加速SEMにおいて高分解能を得るためには、試料に数KVの負バイアス電圧を印加して、さらに対物レンズ近傍に数KVの正電位が印加される電子線加速電極を設ける必要がある。このような構造では、WDを数mm以下に保ったまま、試料と対物レンズとの間にコールドトラップ板を挿入した場合、絶縁に必要な距離を保持するのは困難である。さらに現状のSEMを用いたレチクルの測長では、試料表面と対物レンズの間に帯電抑制用の平板電極を配置して表面電位分布を制御することでレチクルの測長を可能にしており、試料と対物レンズ間にコールドトラップを挿入するスペースがない。
また、コールドトラップ板と対物レンズ、試料が近距離に配置されていると、コールドトラップ板の冷却時に温度が安定するまでに対物レンズの温度勾配によって部材収縮による軸ずれが発生し、像ドリフトの原因となる。測長SEMには高い測長再現性,高スループットが要求されるため、像ドリフトや温度勾配が定常状態になるまでの時間を極力低減する必要がある。コールドトラップ板の温度が定常状態となった場合であっても、冷却による対物レンズ部材の収縮や、試料上温度の不均一化によるSEM像への影響が懸念される。試料上温度が均一になるまでの時間を待機するのは、高スループットが求められる測長SEMには不適当である。
コールドトラップを冷却するための冷媒は、液体窒素が用いられることが多いが、定期的な液体窒素供給が必要なため、インラインで連続使用される測長SEMには適さない。液体窒素の循環システムを使用する方法も考えられるが、装置が大掛かりなものとなり、コストも増大する。
また、詳細は後に述べるが、コンタミネーションの原因となる炭化水素系のガス分子は、通常の測長SEMにおける試料室の真空度(10-5Paオーダー)において140K程度にトラップ板を冷却することで吸着される。液体窒素温度は77Kであり、SEMを構成している部材や試料への影響を考慮すると、トラップ板の冷却温度を必要以上に下げ過ぎるのも避けるべきである。コンタミネーションの原因となる50amu以上の炭化水素系分子の吸着効果に関しては、トラップ板を液体窒素温度まで冷却した場合と、140K程度に冷却した場合とでほとんど差異が無いことが分かっている。
液体窒素を用いる代わりに、冷媒供給作業が不要なペルチェ素子を使用してコールドトラップを冷却する方法もある。しかし、先に述べたようにトラップ板は140K程度に冷却する必要がある。通常、ペルチェ素子を2段,3段・・・と積み重ねた(スタック)状態にして使用しても200K程度までしか冷却できず、冷却能力としては不十分である場合がある。また、ペルチェ素子の高熱側の冷却を行う場合、放熱フィンに加え空冷のためのファン(SEMにとってノイズ源となる可能性あり)や場合によっては水冷することなどを考える必要がある。また、ペルチェ素子が大気中で低温になる構造となる場合には、窒素ガスの充填,循環などの結露,氷結対策が必要であり、冷却可能温度に対して割に合わない対策が数多い。
ここで、レチクルを測長するためのレチクル用測長SEMでは、コンタミネーションの抑制はより重要となる。前述したように、試料がレチクルなどの絶縁物の場合、コンタミネーションにより帯電が助長される効果が大きく、試料表面電位の不均一化によるビームドリフトや二次電子放出量の変化によるコントラスト変化といった障害が発生し測長再現性が大きく劣化する。現状、コンタミネーションを抑制する技術としては、UV光を用いた試料洗浄法がある。これは、主に試料に元来付着している炭化水素系分子除去のため、レチクルマスクを試料室に搬送前に、大気中でUV光照射による試料洗浄を行うことでコンタミネーションの低減を行うものである。また、試料室内にオゾンを導入し、炭化水素分子と反応させてコンタミネーションを行っているものもある。
しかし、UV光またはオゾン導入による洗浄が可能なレチクルは、石英基板の上にクロムパターンが構成されたBinaryタイプのレチクルに対してのみであり、AEI(After Etch Inspection),ADI(After Development Inspection)といった表面にレジストが塗布されたレチクル試料に対してはUV光がレジストと反応するために使用することができない。よって、コンタミネーションの除去ができず、その結果帯電も助長され、安定した測長再現性が得られない。したがって、コールドトラップを用いて試料室内の残留ガス密度を低減させコンタミネーションを抑制するのは、レチクルに構成されたパターンを正確に測長する際に有効な手段となる。
以下の説明では、以上のような背景に鑑みてなされたものであり、荷電粒子線装置において試料を観察する際に問題となるコンタミネーションを抑制することを目的としている。特に測長SEMなどを用いて、ウェハやレチクルに構成されたパターンを安定して測長する技術に関するものである。
以下に、コールドトラップを対物レンズ及び試料から離れた場所に配置し、試料に電子線を照射するときの試料室内の炭化水素系分子密度を低減させることによって、コンタミネーションの抑制を行う例について説明する。前述したように、コールドトラップを対物レンズ及び試料から遠方に配置するのは、測長SEMにおいて測長再現性の劣化を避けるためである。
通常、SEMの試料室の真空度は10-5Paのオーダーである。蒸気圧と気体温度との関係は、アントワン式により算出できる。
Figure 2009245907
各定数A,B,Cは物質によって決まる定数である。蒸気圧は質量数,温度により大きく変化するが、質量数が小さいものほど蒸気圧は大きい。質量数毎に分圧を議論するのは困難なため、平均値的にコンタミネーション生成に寄与が大きい質量数50以上のガスを質量数100のヘプタンで代用し、その分圧を1×10-6Pa程度と仮定すると、140K程度にトラップ板を冷やすことで凝縮する。なお、コンタミの主原因となるより大きな質量数の炭化水素についてはこれよりも低い温度で効果が得られる。言い換えれば、コールドトラップに多く用いられている液体窒素の温度(77K)まで冷却する必要は無いということになる。
コンタミネーションの付着量は、試料近傍のガス分圧に依存するが、試料遠方にトラップ板があっても、そこに残留ガス分子が吸着されれば、試料室内の残留ガス分子密度も減少し、結果として試料近傍のガス分圧も低減させることが可能である。また、残留ガス分子の大きさにも依存するが、10-5Pa台の真空中における粒子の平均自由行程は数十cm〜数mであり、試料近傍のガス分子も障害物が無い限りトラップ板に到達する。その点でもコールドトラップ板は対物レンズや試料近傍に配置する必要は無く、対物レンズや試料遠方に配置したほうが測長SEMにおいては有利である。コールドトラップ板を対物レンズや試料から遠方に配置することで、対物レンズ,試料の温度勾配による二次電子像への影響,WD増加による分解能の低下,試料へ印加されるバイアス電圧の絶縁,トラップ板の配置スペースに関する懸念が一挙に解消する。
コールドトラップ板は、残留ガスの吸着効率を高めるために大面積とするのが望ましい。通常、対物レンズ、試料の間に大きなスペースは無く、トラップ板を遠方に置くことによって大面積化が容易となる。また試料遠方にトラップ板を配置することによって、試料室天板にトラップ板を容易に固定できる利点もある。
また、測長SEMは試料ステージ駆動機構を伴うものであり、駆動機構に使用されているグリスやオイル類は主要な炭化水素分子の発生源となる。ステージは試料室内を広範囲に移動し、ステージ駆動により発生するガスを吸着するのにコールドトラップを試料近傍に配置しておく必要は無い。
コールドトラップを冷却する手段として、液体窒素またはペルチェ素子を用いる方法では、前述したように測長SEMに用いるコールドトラップとしては適さない点が多い。本発明では、低振動を実現できる冷却方法として冷媒を圧縮・膨張させる機械的な可動部が無い冷凍機を用いる。これは、振動の影響による測長再現性の低下を避けるためである。このような冷凍機としては、パルスチューブ冷凍機や、ジュール・トムソン効果を用いたものがある。冷媒を循環させる冷却方法を採用することによって、インラインで連続的に稼動する測長SEMに適用可能なコールドトラップが実現できる。
また、コールドトラップ板を対物レンズ、試料から遠方に置く利点として、冷凍機の振動に起因するコールドトラップ板の振動が対物レンズに伝わりにくくなり、安定して二次電子像を取得することが挙げられる。
ただし、冷凍機を機械的な振動のないものとしても、冷媒ガスの循環による振動は皆無ではない。また、真空ポンプの振動がトラップ板を振動させる可能性もあるため、冷凍機にはベローズと緩衝材を組み合わせた除振機構を組み込む。
また、メンテナンス等の理由で試料室をリークする場合、霜の発生を防止するためにトラップ板を常温に戻す必要がある。そのとき、吸着されていたガス分子は試料室内に放出され、試料室やSEM鏡筒を汚染する要因となる。ここでも、トラップ板を対物レンズ遠方に配置しておけば、対物レンズとトラップ板との間に開閉可能な仕切りを設けることにより、対物レンズやSEM鏡筒内部へガス分子を吸着させずにトラップ板を常温に戻すことが可能となる。
上記構成によれば、試料遠方に大面積のトラップ板を配置し、機械的な稼動部の無い冷凍機を冷却方式として採用することで、測長SEMに対応可能な極低振動のコールドトラップが実現でき、その結果、高分解能かつ高い測長再現性、さらには高スループットの測長SEMの実現が可能となる。
<第1の実施形態>
第1の実施形態では、図2に示すようにコールドトラップ板1を対物レンズ10および試料ステージ3にセットされた試料2の遠方に配置する。通常、SEMの試料室11の真空度は10-5Paオーダーである。コンタミネーションの付着量は試料2近傍の残留ガスの分圧に依存するが、本実施例のように試料2の遠方にトラップ板1を配置したとしても、トラップ板1に残留ガス分子が吸着されれば、試料室11内の残留ガス分子の密度が減少し、結果として試料2近傍の残留ガス分圧も低減する。よって、コンタミネーションの抑制が可能となる。
トラップ板1の配置場所としては、試料室11の端面近くに選択的に配置するのが望ましい。これは、試料ステージ3が試料室11内を移動する際に、試料2とトラップ板1との距離を長くして、試料2上の温度勾配を極力低減させるためである。
コールドトラップ板1の形状に関しては、対物レンズ10の遠方に配置しているため自由度が高いが、図3に示すように、長方形の板をL字型に曲げてコールドエンド9の先端に接続すれば、トラップ板の面積を大きくできる上に、試料ステージ3の移動の妨げにもならないため、測長SEMに用いるコールドトラップとして効果が高い。なお、トラップ板1とコールドエンド9との間にはインジウムシート7を挿入し、トラップ板1とコールドエンド9との熱コンタクトを極力完全に近い構造とする。また、トラップ板1と試料室11の内壁は直接接触することのないよう、空間的に離間して設けられている。このような構成によれば、熱の伝播による冷却効果の低下や試料室内壁を経由して冷却効果が対物レンズ等に伝播することによる像ドリフト等を抑制することが可能となる。
トラップ板1の材質としては、熱伝導率の高い金属を用いる。0K近くの極低温で熱伝導の高い物質としては、99.99%以上の高純度無酸素銅がある(熱伝導率:>1×104[W/m・K])。しかし、炭化水素系の残留ガスは140K程度でトラップ板1に吸着し、100〜200Kの領域では銅の種類によらず4〜5×102[W/m・K]と熱伝導率に大差がないため、入手容易なタフピッチ銅を用いても良い。
本実施例では冷却方法として冷媒を圧縮・膨張させる機械的な可動部が無い冷凍機6を用いる。機械的な可動部が無い冷凍機としてはパルスチューブ型や、ジュール・トムソン効果(気体を断熱膨張させたとき系の温度が低下する現象)を用いたものがあるが、本実施例においては、メンテナンスの容易性およびコールドエンド9の振動が小さいという理由により、ジュール・トムソン型の冷凍機を用いる。ガスはコンプレッサからガスチューブ5を通して冷凍機に送り込まれ、コンプレッサに戻る。その過程でガスの断熱膨張により冷凍機の先端であるコールドエンド9が冷却される。コールドエンド9は試料室内に導入され、試料室内に配置されたトラップ板1を冷却する。
冷凍機6は試料室天板8に据え付ける。図2及び図3では、冷凍機6は試料室天板8の上方に搭載されているが、スペースがあれば試料室11の側面または下面に据え付けても問題はない。
<第2の実施形態>
冷凍機6は、冷却部に機械的な振動の無いものを選択しているが、圧縮ガスの循環による振動は皆無ではない。また、図示してはいないが、試料室11の真空排気に用いる真空ポンプの振動がトラップ板1を振動させ、結果として試料室11全体を振動させる可能性もあり、その場合は除振対策を施す必要がある。
除振には、図4に示すように冷凍機6を試料室天板8に伸縮可能なベローズ12で固定し、保持部材として緩衝材13を挿入することで冷凍機6およびトラップ板1の振動を極力低減させる構造とする。
<第3の実施形態>
トラップ板1は面積が大きいほどガス吸着量が大きくなり、コンタミネーションも減少するため、冷凍機の能力を考慮した上で面積を最大とすることが望ましい。しかし、大きな面積の板を冷凍機先端のコールドエンド9に取り付けるだけではトラップ板が振動する。板厚を増やせば振動は減少するものと考えられるが、トラップ板の質量が増えると冷凍機の冷却能力が不足してしまう可能性もある。
よって、トラップ板1は図5に示すように試料室天板8に数箇所、トラップ板固定部材14で固定できる構造にしておく。固定用部品は熱伝導率が小さい(〜0.3W/m・K以下)樹脂材料を用いるのが望ましい。本実施形態は、第1もしくは第2の実施形態のどちらとも組み合わせて用いることができることは言うまでも無い。図5では、第2の実施形態との組み合わせを示してある。
<第4の実施形態>
また、メンテナンス等の理由により試料室をリークする場合、霜の発生を防ぐためにトラップ板1を常温に戻す必要がある。また、長時間の使用によりトラップ板1への吸着物が多くなりすぎた場合、トラップ板自体が汚染源となる可能性もある。この場合も、トラップ板を常温に戻して蓄積されたガスを放出させる必要がある。
短時間でトラップ板1を室温に戻すために、コールドエンド付近にヒーターを備えた構造とする。しかし、このときの放出ガスにより、SEM鏡筒内が汚染される。よって、試料室に仕切り弁15を設置しておき、コールドトラップを常温に戻すときは仕切り弁15を閉じ、コールドトラップ板1と対物レンズ10部を隔離した状態にする。そのときのシーケンスは図7のようになる。
図7に示した制御シーケンスによって、対物レンズ10やSEM筐体4,試料室天板8をトラップ板1からの放出ガスによって汚染することなくリークすることが可能となる。これも、コールドトラップ板1を対物レンズ10の遠方に配置したことによって可能となる手段である。コールドトラップが対物レンズ10近傍に配置されている場合、リークする毎にSEM筐体4内部を汚染することになり、コンタミネーションが付着しやすい真空状態となり、測長SEMにおいては測長再現性の低下に繋がる。
以上のように、試料2の遠方に大面積のトラップ板1を配置し、機械的な稼動部の無い冷凍機6を冷却方式として採用し、さらに除振機構を講じることで、高い炭化水素ガス吸着能力を持つ低振動のコールドトラップの実現が可能となる。本発明の効果により、測長再現性の高い高分解能測長SEMの実現が可能となる。特にUV光照射によるコンタミネーション除去ができないレジスト付きのレチクルに構成されたパターンを安定して測長するのに効果がある。
コールドトラップ機構が設けられたSEMの概要を説明する図である。 第1の実施形態における、コールドトラップの配置構造の例を示す図である。 コールドトラップの形状の一例を示す図である。 第2の実施形態における、コールドトラップの配置構造の例を示す図である。 コールドトラップ板の固定方法に関する説明図である。 コールドトラップからの放出ガスにより鏡筒内が汚染されないように設置された仕切り弁を説明するための図である。 コールドトラップを常温に戻す際の制御シーケンスを示した図である。
符号の説明
1 トラップ板
2 試料
3 試料ステージ
4 SEM鏡筒
5 ガスチューブ
6 冷凍機
7 インジウムシート
8 試料室天板
9 コールドエンド
10 対物レンズ
11 試料室
12 ベローズ
13 緩衝材
14 トラップ板固定部材
15 仕切り弁
16 真空バルブ
17 コールドトラップ機構
18 空間

Claims (4)

  1. 荷電粒子線源と、
    当該荷電粒子線源から放出される荷電粒子線を集束する対物レンズと、
    前記荷電粒子線が照射される試料を真空領域内に保持する試料室と、
    当該試料室内において、前記試料を移動させる試料ステージと、
    当該試料室内に配置されると共に、冷却によって当該試料室内の分子を吸着するコールドトラップ板を備えた荷電粒子線装置において、
    前記コールドトラップ板は、前記試料室内にあって、前記試料ステージ及び試料の移動範囲外の空間であり、且つ前記試料表面の移動軌跡に一致する平面と、当該移動軌道に平行であって、対物レンズの試料側端部に接する面との間に形成される空間を除く空間に、配置されると共に、前記コールドトラップ板の板状部は、前記試料室内壁とは離間して配置されることを特徴とする荷電粒子線装置。
  2. 請求項1において、
    前記コールドトラップ板の板状部は、前記試料室の内壁に沿って、L字型に形成されていることを特徴とする荷電粒子線装置。
  3. 請求項1において、
    前記試料室内の前記コールドトラップ板が存在する空間と、前記試料ステージが存在する空間との間を遮断するシャッターを備えたことを特徴とする荷電粒子線装置。
  4. 請求項3において、
    前記コールドトラップ板が存在する空間には、当該コールドトラップ板を加熱するためのヒーターが設けられていることを特徴とする荷電粒子線装置。
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