JP2009244592A - 平版印刷版の製版方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、銀錯塩拡散転写法を利用する平版印刷版の製版方法に関するものであり、特に塗布現像を用いた製版方法に関する。
平版印刷版は、水とインキの両方を版面に供給して、画像部は着色性のインキを、非画像部には水を選択的に受け入れ、該画像上のインキを例えば紙などの被印刷体に転写させることによって印刷がなされている。
銀錯塩拡散転写法(DTR法)を用いた平版印刷版(以降DTR平版印刷版とも称する)、特にハロゲン化銀乳剤層上に物理現像核層を有する平版印刷版は、例えば、米国特許第3,728,114号明細書、同第4,134,769号明細書、同第4,160,670号明細書、同第4,336,321号明細書、同第4,501,811号明細書、同第4,510,228号明細書、同第4,621,041号明細書等に記載されている。
露光されたハロゲン化銀結晶は現像処理により乳剤層中で化学現像を生起して黒化銀となり、親水性の非画像部を形成する。一方、未露光のハロゲン化銀結晶は、現像液中の銀錯塩形成剤により可溶化し表面の物理現像核層まで拡散、さらに物理現像核上に現像主薬の還元作用によっていわゆる溶解物理現像を生じ、インキ受容性の画像銀として析出する。
上記のごとくDTR法は、単一の現像処理中で化学現像と溶解物理現像とが同時に進行する機構になっている。従ってよい印刷物を得るためには、非画像部となる化学現像を生じる領域と画像部となる溶解物理現像を生じる領域との明確な差、コントラストが重要になる。
例えば、化学現像が起こるべき領域で溶解物理現像が混入して銀が生じてしまうと、非画像部にも画像銀が析出してしまうことによって印刷汚れの原因となる。逆に非画像部で生じる溶解物理現像を抑制しようとして、溶解物理現像を抑制する手段を講じると、しばしば、画像部における画像銀の析出が不足して耐刷不良となる。
一方、DTR法における製版処理方法は、露光後に多量の現像液を貯溜した現像槽中を通過させ、通過後版面上に残る現像液をローラ間を通過させて絞り取り、さらに版面のpHを整えるために中和液槽中を通過させ、現像液同様版面上に残る中和液を取り除く方法、いわゆる浸漬現像方式が長く一般的であった。
しかし、上記の様な製版処理方法では、製版処理量の多い使用業者では現像液の廃液量が非常に多くなり、これら廃液の保管、処理等のために環境面においても、経済的側面においても使用業者にとって大きな負担であった。また、多数枚処理による現像液の疲労、例えばpHの低下、スラッジの発生等欠点を有していた。
これらの問題を改良するための製版処理方法として、特開昭48−76603号公報、同昭57−115549号公報、米国特許第5,398,092号明細書等には、平版印刷版の版面に現像液を塗布供給して製版する塗布現像方式、国際公開第95/18400号パンフレットには非常に小型の現像槽に瞬間的に浸漬しながら現像液を塗布する塗布現像方式が開示されている。
これらの塗布現像方式は、浸漬現像方式に比べて、はじめに版面に塗布供給した後には新たな現像液が補給されず、しかも現像液の廃棄量を減少するために、現像液の塗布量を少なくすると、現像液塗布量の僅かなフレによって、化学現像と物理現像のバランスが崩れ易くなり、地汚れや耐刷力の劣った印刷版しか得られないと言う欠点を本質的に内包している。加えて、塗布現像における重大な問題は、現像液の温度管理が極めて困難なことである。そのため平版印刷版を加熱するローラを用いたり、現像部周辺の温度を一定にする手段等が講じられるが、現像液の水が蒸発し、次第に現像液の組成が変動して、上記欠点が益々大きくなるという問題も持っている。
このような問題点は、もちろん、塗布量を増やすことによって改善することは可能であるが、塗布量を増やすと、廃液量も増え、塗布現像方式の最大の利点である廃液量の減少という特徴を損なうことになる。従って、特開平9−244198号公報、特開平10−282674号公報(特許文献1)等に記載があるように、塗布現像方式の利点を生かすためには、平版印刷版の版面に塗布する現像液の量は60ml/m2以下にすることが求められている。
少量の現像液を塗布することによって発生する上記のような欠点を克服するためには、特開平10−282674号公報等に示される様に、現像液の組成を工夫する取り組みが行われており、現在においては、60ml以下の少量の現像液を平版印刷版の版面に塗布供給して現像処理を行う塗布現像方式が実用化されるにいたっている。
さらに、従来、DTR平版印刷版の製版は、原稿をカメラによって撮影することが一般的であったが、近年ではコンピュータ及び周辺技術の進歩により、コンピュータのデジタル情報を直接レーザー光源で走査露光を行うComputer−to−plate(CTP)と言われる製版方法が主流となりつつある。これにより、DTR平版印刷版においても高画質化することが容易となったが、同時に、非画像部の印刷汚れや耐刷力と言った印刷版の性能に対しても従来より高い品質が必要であり、現像工程の微少な変動に対してもより緻密に管理することが要求される。
以上のように、DTR平版印刷版においては、環境面、経済面からみて、塗布現像方式が非常に有利ではあるが、より高品位な印刷を容易に行えるようにするためには、さらなる性能の向上と品質の安定化が求められている。
特開平10−282674号公報
従って、本発明の目的は銀錯塩拡散転写法を利用する平版印刷版の製版方法において、塗布量が60ml/m2以下の場合であっても、印刷汚れが少なくかつ高い耐刷力を持つ塗布現像方式の製版方法を提供することである。
銀塩拡散転写法を利用する平版印刷版の版面に1平方メートル当たり60ml以下の現像液を塗布して現像する平版印刷版の製版方法において、該現像液が下記一般式1で表される化合物を含有する事を特徴とする平版印刷版の製版方法によって本発明の課題は達成された。
式中Zは置換基を有してもよい含窒素芳香族6員環を形成するために必要な原子団を表す。
本発明によって、塗布量が60ml/m2以下の場合であっても、印刷汚れが少なくかつ高い耐刷力を有する塗布現像方式の製版方法を提供することができる。
本発明の目的は、言うまでもなく環境面、経済面で優れた製版方法とそれによってできた印刷版の印刷性能の両立である。本発明者らは、環境面、経済面で優れた製版方法として塗布現像方式を選択した。その中でいかに印刷性能を向上させるかが本発明の具体的課題となる。そのために本発明者らは、非画像部となる化学現像を生じる領域と画像部となる溶解物理現像を生じる領域との明確な差、コントラストに着目した。すなわち、画像領域における溶解物理現像を抑制する事なく、いかにして、非画像部領域で発生する不要な溶解物理現像を抑制し、化学現像のみを生じさせることができるかを鋭意検討した結果、塗布現像方式に用いる該現像液が下記一般式1で表される化合物を含有する事を特徴とする平版印刷版の製版方法によって本発明の目的は達成された。
式中Zは置換基を有してもよい含窒素芳香族6員環を形成するために必要な原子団を表す。
一般式1の化合物の化学的作用は銀イオンと結合あるいは配位するアミノ基近傍の化学構造に由来すると考えられるが、必ずしも明白ではない。しかし、ベンゾトリアゾールやフェニルメルカプトテトラゾールなどの当業界で一般的に用いられるいわゆる現像抑制剤とは異なり、化学現像を全く抑制しない。しかも、完全な溶解物理現像領域においてはその現像を全く抑制しないにもかかわらず、露光され化学現像を生じるべき非画像部領域においてのみ、不要な物理現像を抑制する。
このような理由で本発明による製版方法によって、画像部と非画像部のコントラストが明確で、それゆえ、非画像部の印刷汚れが少なくかつ高い耐刷力をもつ平版印刷版を得ることができた。
一般式1の化合物の基本構造は、アミノ基を有する芳香族含窒素6員環である。アミノ基に結合している炭素原子の隣の原子の少なくとも一方は、窒素原子でなければならない。芳香族含窒素6員環は、具体的にはピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピリダジン環、トリアジン環を挙げることができる。
また、一般式1の化合物は芳香族含窒素6員環のアミノ基以外の部分に置換基を有していても良い。置換基の種類、数に特に制約はないが、余り嵩高い置換基は銀イオンとの結合に対して立体障害となるので好ましくはない。それゆえこれら置換基の炭素数は10以下が好ましい。置換基の例としては、クロロ基、ブロモ基等のハロゲン基、メチル基、エチル基等のアルキル基、エテニル基、プロぺニル基等のアルケニル基、メトキシ基、エトキシキ基等のアルコキシ基、カルボキシ基が挙げられる。それら置換のうちアルキル基、アルケニル基はさらにヒドロキシ基、カルボキシ基等の置換基を有していても良い。上記のごとく置換基の例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。
以下に、一般式1の化合物の具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
上記一般式1の化合物は、現像液中に単独または複数含有させても良い。また、現像液が含有する一般式1の化合物の含有量には特に制限はないが、好ましくは1L当たり1ミリモルから100ミリモルの範囲である。
本発明に用いられる現像液は、銀錯塩拡散転写(DTR)法で通常使用される構成に一般式1の化合物を添加することで得られる。DTR法で通常用いられる構成には、ハロゲン化銀の還元剤となる現像主薬を現像液に含むデベロッパータイプと、現像される前の印刷版に現像主薬をあらかじめ含有させておき、現像液には現像主薬を実質的に含まないアクチベータタイプがある。本発明の製版方法はいずれの方法を用いても良が、空気酸化の影響の少ないアクチベータタイプの方が好ましい。
塗布現像方式におけるアクチベータタイプの現像液の構成の具体例は、特開平10−22674号公報に示されている。本発明の現像液に用いられる基本的な構成を以下に説明するが本発明はこれに限定されるものではない。
アクチベータタイプの現像液の基本構成は、アルカリ剤、ハロゲン化銀溶解剤、保恒剤からなり、保恒剤には通常亜硫酸塩が用いられる。さらに必要に応じて、現像抑制剤、銀画像親油化剤、界面活性剤などの添加剤を含ませることができる。
本発明に用いられる現像液は、保恒剤として亜硫酸塩を含有することが好ましい。亜硫酸塩は保恒剤の他にハロゲン化銀溶解剤の機能も有する。亜硫酸塩の例としては、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸カリウム、亜硫酸アンモニウム等を挙げることができる。
本発明に用いられる現像液は、上記亜硫酸塩の他に、さらにハロゲン化銀溶解剤を含有することが好ましい。ハロゲン化銀溶解剤の例としては、アミン類、チオエーテル類、チオ硫酸塩、チオサリチル酸、メソイオン化合物、環状イミド化合物等を挙げることができる。これらの化合物は単独あるいは複数を組み合わせて用いることができる。
上記ハロゲン化銀溶解剤の中でも、アミン類もしくはチオエーテル類を1種類以上用いることが好ましい。アミン類の中でも最も一般的に用いられるものはアルカノールアミン類である。アルカノールアミン類の例としては、N−(β−アミノエチル)エタノールアミン、N−(β−アミノエチル)イソプロパノールアミン、N−(β−アミノプロピル)エタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エタノールアミン、4−アミノブタノール、N,N−ジメチルエタノールアミン、3−アミノプロパノール、N,N−エチル−2,2′−イミノジエタノール、2−メチルアミノエタノール等を挙げることができる。アルカノールアミン以外のアミン類の例としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、N−アミノエチルピペラジン等を挙げることができる。また、チオエーテル類の例としては、特開平10−282674号公報に詳細な記述があり参考とすることができる。
本発明に用いられる現像液には、銀画像部のインキ受理性を向上させるために、親油化剤としてメルカプト基またはチオン基を有する化合物を含有させることが好ましい。例えば特公昭48−29723号公報、特開昭58−127928号公報等に記載されている化合物が挙げられる。特に炭素数が3〜12のアルキル基、アリール基、アルケニル基等の親油性基を有する含窒素複素環化合物が好ましい。
上記化合物の具体例としては、2−メルカプト−4−フェニルイミダゾール、2−メルカプト−1−ベンジルイミダゾール、2−メルカプト−1−ブチル−ベンズイミダゾール、1,3−ジベンジル−イミダゾリジン−2−チオン、2−メルカプト−4−フェニルチアゾール、3−ブチル−ベンゾチアゾリン−2−チオン、3−ドデシル−ベンゾチアゾリン−2−チオン、2−メルカプト−4,5−ジフェニルオキサゾール、3−ペンチル−ベンゾオキサゾリン−2−チオン、1−フェニル−3−メチルピラゾリン−5−チオン、3−メルカプト−4−アリル−5−ペンタデシル−1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−5−ノニル−1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−4−アセタミド−5−ヘプチル−1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−4−アミノ−5−ヘプタデシル−1,2,4−トリアゾール、2−メルカプト−5−フェニル−1,3,4−チアジアゾール、2−メルカプト−5−n−ヘプチル−オキサチアゾール、2−メルカプト−5−nヘプチル−オキサジアゾール、2−メルカプト−5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾール、2−ヘプタデシル−5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾール、5−メルカプト−1−フェニル−テトラゾール、3−メルカプト−4−メチル−6−フェニル−ピリダジン、2−メルカプト−5,6−ジフェニル−ピラジン、2−メルカプト−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2−アミノ−4−メルカプト−6−ベンジル−1,3,5−トリアジン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明に用いられる現像液には、アルカリ性物質として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、リン酸3ナトリウム等を用いることができる。現像液のpHは10以上であることが好ましく、さらに好ましくは12以上である。
本発明に用いられる現像液には、塗布を安定化するために、界面活性剤を含有することが好ましい。表面張力を落とす効果があれば界面活性剤の種類や量に特に制約はない。最適な表面張力は塗布方式に依存するが、概ね50dyne/cm以下に調整することが好ましい。
本発明に用いられる現像液は、上記化合物の他に増粘剤、例えばヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等、かぶり防止剤、例えば臭化カリウム、特開昭47−26201号公報記載の化合物等を含有することができる。
本発明における塗布現像方式は、一般的にはDTR平版印刷版の版面(ハロゲン化銀乳剤層が塗布されている側の感光面)に現像液を塗布供給する方法があり、特開昭48−76603号公報等に記載されている。例えば液上げ塗布方式、滴下法ローラ塗布方式、滴下法ナイフ塗布方式、スプレー塗布方式及びブラシ塗布方式等ある。また米国特許第5,398,092号明細書等のようにバーコーター(ETO CHEMICAL APPARATUS Co.製)を用いるローラ塗布方式や国際公開第95/18400号パンフレットに記載の浸漬塗布現像方式も好ましい。
本発明における製版方法においては、現像処理に引き続いて、安定処理を行うことが好ましい。安定処理の主な機能は、現像処理において、アルカリ性になった版面を中和することである。従って、安定液のpHは中性から酸性に調整されていることが好ましい。安定液のpHは7.5以下であることが好ましく、より好ましくは4〜7である。
安定液にはさらに上記pH付近に緩衝性能を付与することが好ましい。緩衝剤としてはリン酸とその塩あるいはトリエタノールアミンのごとくアミン類を使用することが好ましい。りん酸塩を緩衝剤として使用する場合、その含有量は使用液にして0.05モル/L以上、好ましくは0.1〜1.0モル/Lの範囲で添加する。リン酸塩としてはカリウム塩、ナトリウム塩、アンモニウム塩、あるいは前述のトリエタノールアミンのごとくアミン類との塩等を用いることができる。
また、現像液同様、安定液にも銀画像部のインキ受理性を向上させるために、親油化剤としてメルカプト基またはチオン基を有する化合物を含有させることができる。これらの化合物は、安定液においても現像液と同様の化合物を用いることができる。
本発明に用いられる銀錯塩拡散転写法を応用した平版印刷版の好ましい実施態様は、支持体上に少なくとも下塗層、ハロゲン化銀乳剤層及び物理現像核層を順次塗布されてなる平版印刷版である。これら順次塗布された層の総ゼラチン量は1〜4g/m2であることが好ましい。
総ゼラチン量が1g/m2未満では、印刷版として必要な被膜強度が得られない場合がある。また、4g/m2を超えると、塗布現像方式で処理する際にインキ受理性およびインキ脱離が遅く、印刷作業性が低下する場合がある。
本発明のDTR平版印刷版はバインダーとしてゼラチンを含有しており、その含有層は下塗層であり、乳剤層であり、また物理現像核層でもありうる。また、ゼラチンの一部を澱粉、デキストリン、アルブミン、アルギン酸ナトリウム、ヒドロキシルエチルセルロース、アラビアゴム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリルアミド、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリビニルルチルエーテル−無水マレイン酸共重合体等の親水性高分子の一種又は二種以上で置換することもできる。
これらのゼラチン含有層は、ゼラチン硬膜剤で硬化することができる。ゼラチン硬膜剤としては、例えば、クロム明ばんのような無機化合物、ホルマリン、グリオギザール、マレアルデヒド、グルタルアルデヒドのようなアルデヒド類、尿素やエチレン尿素等のN−メチロール化合物、ムコクロル酸、2,3−ジビドロキシ−1,4−ジオキサンの様なアルデヒド等価体、2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジン塩や、2,4−ジヒドロキシ−6−クロロ−s−トリアジン塩のような活性ハロゲンを有する化合物、ジビニルスルホン、ジビニルケトンやN,N,N−トリアクロイルヘキサヒドロトリアジン、活性な三員環であるエチレンイミノ基やエポキシ基を分子中に二個以上有する化合物類、高分子硬膜剤としてのジアルデヒド澱粉等の種々の化合物の一種もしくは二種以上を用いることができる。
硬膜剤はすべての層に添加することもでき、幾つか又は一層にのみ添加することも可能である。もちろん、拡散性の硬膜剤は二層同時添加の場合、何れか一層にのみ添加することが可能である。添加方法は塗液製造時に添加したり、塗布時にインラインで添加することもできる。
本発明においては、DTR平版印刷版の感光面側の構成層中に平均粒子サイズが0.3〜5.0μmであるマット化剤を用いることが好ましい。本発明に用いるマット化剤は、例えば、シリカ粒子、スチレンなどの有機物粒子等がある。
本発明においては、前記マット化剤は支持体とハロゲン化銀乳剤層の間の下塗層に含まれることが好ましい。マット化剤の添加量は、種々の条件により異なるが、感光面側の構成層中に0.1〜5.0g/m2の範囲で含まれることが好ましく、好ましくは0.3〜3.5g/m2の範囲である。
下塗層にはハレーション防止の目的でカーボンブラック等の顔料、染料等を含ませることができる。さらに現像主薬等の写真用添加物も含むことができる。また下塗層は特開昭48−5503号公報、同昭48−100203号公報、同昭49−16507号公報に記載のような下塗り層であってもよい。
本発明の実施に用いられるDTR平版印刷版のハロゲン化銀乳剤は、塩化銀、臭化銀、塩臭化銀、塩ヨウ化銀、塩臭ヨウ化銀等が使用でき、好ましくは塩化銀が70モル%以上のハロゲン化銀である。これらを含有するハロゲン化銀乳剤は分光増感剤(光源、用途に応じた分光増感色素)、ゼラチン硬化剤、塗布助剤、かぶり防止剤、可塑剤、現像剤、マット剤等を含むことができる。
本発明の平版印刷版に用いられる支持体は、紙、各種フィルム、プラスチック、樹脂様物質で被覆した紙、金属等が使用できる。
物理現像核層に使用される物理現像核は、この種の薬品の例として周知であって、アンチモン、ビスマス、カドミウム、コバルト、パラジウム、ニッケル、銀、鉛、亜鉛等の金属およびこれらの硫化物が使用できる。また、特開平5−265164号公報記載の物理現像核を用いることもできる。物理現像核層にも現像主薬を含んでもよく、バインダーを含んでもよい。
印刷方法あるいは使用する不感脂化液、給湿液等は、一般によく知られている方法によることができる。
以下に本発明を実施例により説明するが、もちろん本発明はこれに限定されるものではない。
塗布方式の現像装置は、三菱製紙株式会社より市販されているSDP−Eco1630IIIRを使用した。この装置は、波長630nmの赤色レーザーを用い、デジタルデータを走査露光方式によりDTR印刷版にデータ画像の潜像を形成させ、引き続いて、塗布現像、安定処理を行い、製版する自動製版装置である。現像液の塗布量は1平方メートル当たり40ml±10mlであり、現像液が塗布されてから安定液に接するまでの時間は12秒である。
DTR平版印刷版は、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートベースの片面に平均粒子サイズ5μmのシリカ粒子を含有するマット化層を設け、反対側の面にカーボンブラックを含み、写真用ゼラチンに対して20質量%の平均粒径7μmのシリカ粉末を含む下塗層(pH4.5に調整)と、ハイポ及び金化合物で化学増感された後に、2−メルカプト安息香酸を加えたハロゲン化銀乳剤層(pH4.5に調整)とを設ける。
ハロゲン化銀乳剤は公知の方法によって赤色に色素増感させた。
下塗層のゼラチンは3.0g/m2、ハロゲン化銀乳剤層のゼラチンは1.0g/m2、硝酸銀に換算したハロゲン化銀は1.0g/m2となるように塗布した。この下塗層と乳剤層は硬化剤としてホルマリンをゼラチン1gに対して5.0mgゼラチンの量で含んでいる。
下塗層のゼラチンはジメトキシフェニドンを0.105g/m2、ハロゲン化銀乳剤層は0.024g/m2、物理現像核層は0.006g/m2含んでいる。
下塗り層とハロゲン化銀乳剤層を塗布した後、50℃で2日間加温し、ハロゲン化銀乳剤層の上に特開昭57−86835号公報の実施例1にある核塗液を塗布した。このようにして設けた物理現像核層は0.001g/m2の硫化パラジウムを含んでいる。
このようにして得たDTR平版印刷版を幅414mm、長さ10mのロール状にし、上記SDP−Eco1630IIIRに装填することで、露光および製版処理を行った。
上記製版処理において、下記現像液AからJをそれぞれ使用した。
<現像液A>
水酸化ナトリウム 10g
水酸化カリウム 15g
無水亜硫酸ナトリウム 40g
N−(β−アミノエチル)エタノールアミン 10g
3,6−ジチア−1,8−オクタンジオール 5g
2−メルカプト−5−n−ヘプチル
オキサジアゾール 0.2g
水で1Lとする。
<現像液A>
水酸化ナトリウム 10g
水酸化カリウム 15g
無水亜硫酸ナトリウム 40g
N−(β−アミノエチル)エタノールアミン 10g
3,6−ジチア−1,8−オクタンジオール 5g
2−メルカプト−5−n−ヘプチル
オキサジアゾール 0.2g
水で1Lとする。
<現像液B>
<現像液A>1Lに対してにA−1の化合物を10ミリモル/L添加した。
<現像液A>1Lに対してにA−1の化合物を10ミリモル/L添加した。
<現像液C>
<現像液A>1Lに対してにA−2の化合物を10ミリモル/L添加した。
<現像液A>1Lに対してにA−2の化合物を10ミリモル/L添加した。
<現像液D>
<現像液A>1Lに対してにA−3の化合物を10ミリモル/L添加した。
<現像液E>
<現像液A>1Lに対してにA−4の化合物を10ミリモル/L添加した。
<現像液A>1Lに対してにA−4の化合物を10ミリモル/L添加した。
<現像液F>
<現像液A>1Lに対してにA−5の化合物を10ミリモル/L添加した。
<現像液A>1Lに対してにA−5の化合物を10ミリモル/L添加した。
<現像液G>
<現像液A>1Lに対してにベンゾトリアゾールを10ミリモル/L添加した。
<現像液A>1Lに対してにベンゾトリアゾールを10ミリモル/L添加した。
<現像液H>
<現像液A>1Lに対してに3−アミノピリジンを10ミリモル/L添加した。
<現像液A>1Lに対してに3−アミノピリジンを10ミリモル/L添加した。
<現像液I>
<現像液A>1Lに対してに3−アミノ−1H−1,2,4−トリアゾールを10ミリモル/L添加した。
<現像液A>1Lに対してに3−アミノ−1H−1,2,4−トリアゾールを10ミリモル/L添加した。
<現像液J>
<現像液A>1Lに対してピラジンを10ミリモル/L添加した。
<現像液A>1Lに対してピラジンを10ミリモル/L添加した。
安定液には、下記に示すものを使用した。
<安定液>
第一リン酸カリウム 20g
トリエタノールアミン 5g
リン酸でpHを6に調整し、水で1lとする。
<安定液>
第一リン酸カリウム 20g
トリエタノールアミン 5g
リン酸でpHを6に調整し、水で1lとする。
上記記載の方法で製版された平版印刷版を印刷機QM46(ハイデルベルグ社製オフセット印刷機の商標)、インキ(大日本インキ化学工業(株)社製F−Gross墨H及びF−Gross紫S)及び給湿液(フジグラフィックスシステム社製エコリティ2を0.5質量%で使用)を使用して印刷を行った。F−Gross墨Hインキを用いた印刷では2万枚の耐刷力のテストを行い、F−Gross紫Sインキを用いた試験では、非画像部の印刷汚れに対する試験を行った。
耐刷力の試験では、2400dpiで出力した175線5%の網点面積の変化率で評価した。印刷開始を100%とし、2万枚印刷時に80%以上の面積を維持しているものを○、50から80%の間のものを△、50%以下に減少したものを×とした。また、印刷汚れの試験では、印刷物の非画像部にインキ汚れが発生する枚数で評価した。なお1万枚印刷後でも汚れの発生がなかったものは、1万以上と表記する。結果を下記表1に示す。
表1から明らかなように、本発明の製版方法により、塗布量が60ml/m2以下の場合であっても、印刷汚れが少なくかつ高い耐刷力を有する塗布現像方式の製版方法を提供することができる。
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JP2013210413A (ja) * | 2012-03-30 | 2013-10-10 | Mitsubishi Paper Mills Ltd | 平版印刷版の製版方法 |
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