JP2009214458A - インサート成形用加飾シート - Google Patents
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Abstract
【解決手段】基材シートの上に絵柄層を積層し、絵柄層の上に接着剤層を介してバッカー層をドライラミネーションにより積層してなるインサート成形用加飾シートであって、該基材シートが(メタ)アクリル樹脂中にゴム粒子が分散したアクリル系樹脂組成物からなり、かつ以下の測定方法で測定した該アクリル系樹脂組成物の粘度が3×102〜20×102Pa・sであることを特徴とするインサート成形用加飾シートである。
(粘度の測定方法)
粘弾性測定装置を用いて測定する。測定は、測定部直径25mmφに成形した試料を用い、治具間距離0.12mm、測定温度150℃、及び歪10%とし、周波数を0.1から100Hzまで図1に示すように400秒間で連続的に変化させ、100Hzに達したところで測定する。
【選択図】図2
Description
例えば、特許文献1には、バッカー層を積層した加飾シートを金型内壁面に形成した後、成形用樹脂を射出成形することにより、シートで表面が被覆された成形品を製造する方法、所謂インサート成形により成形品を製造する方法が提案されている。
このインサート成形の射出樹脂としては、一般的には、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等が多く、この為、インサート成形用加飾シートのバッカー層に、これら樹脂との密着性等を考慮してABS樹脂シート等を用いることが多い。また、バッカー層を接着する方法として、熱プレス法とドライラミネーション法とが通常用いられている。
ところで、インサート成形用加飾シートは、射出成形により、屈曲部が白化することがあり、意匠性を低下させるので、種々改良が試みられている。(特許文献2及び3参照)
しかしながら、白化を防止するためアクリル樹脂主体の基材シートを柔軟化すると、アクリル樹脂主体の基材シートの上に絵柄層を積層し、絵柄層の上に接着剤層を介してバッカー層をドライラミネーションにより積層して加飾シートを得る場合には、真空成形後の加飾シートの表面が蛍光灯の反射像を見た際にみかんの皮のような面、即ちゆず肌になることがあった。そして、このゆず肌状の加飾シートを用いて得られた加飾成形品の表面に、同様に反射光線による歪み(ゆらぎ)が発生し、ゆず肌のような痘痕が見え、加飾成形品の意匠性が著しく低下することがあった。
すなわち、本発明は、基材シートの上に絵柄層を積層し、絵柄層の上に接着剤層を介してバッカー層をドライラミネーションにより積層してなるインサート成形用加飾シートであって、該基材シートが(メタ)アクリル樹脂中にゴム粒子が分散したアクリル系樹脂組成物からなり、且つ該アクリル系樹脂組成物の粘度が3×102〜20×102Pa・sであることを特徴とするインサート成形用加飾シートを提供するものである。
本発明のインサート成形用加飾シート10(以下、単に「加飾シート10」ということがある)は、基材シート11の上に絵柄層12を積層し、絵柄層12の上に接着剤層13を介してバッカー層14をドライラミネーションにより積層してなるインサート成形用加飾シートである。そして、所望により、絵柄層12の上に隠蔽層15を積層しても良い。
本発明においては、基材シート11は(メタ)アクリル樹脂中にゴム粒子が分散したアクリル系樹脂組成物からなり、且つこのアクリル系樹脂組成物の粘度が3×102〜20×102Pa・sであることを要する。該アクリル系樹脂組成物の粘度が3×102Pa・sより低いと真空成形により、ゆず肌状になり易くなり、一方、20×102Pa・sより高いと射出成形により、加飾された成形品の屈曲部の表面が白化し易くなるからである。この観点から、上記アクリル系樹脂組成物の粘度が4×102〜15×102Pa・sであることが好ましく、5×102〜10×102Pa・sであることが特に好ましい。
本発明における粘度の測定は、粘弾性測定装置を用いて行う。測定条件としては、測定部直径25mmφに成形した試料を用い、治具間距離0.12mm、測定温度150℃、及び歪10%であり、周波数を0.1から100Hzまで図1に示すように400秒間で連続的に変化させ、100Hzに達したところで測定する。
ゴム粒子のアクリル系樹脂組成物中の配合量は、ゴム粒子の材料や粒径にもよるが、一般には、(メタ)アクリル樹脂/ゴム粒子の質量比として、(90/10)〜(60/40)が好ましく、(85/15)〜(63/37)が更に好ましい。
基材シート11に用いられる(メタ)アクリル樹脂のガラス転移点Tg(℃)は、通常85〜115℃であり、(メタ)アクリル樹脂の折り曲げ性を向上して射出成形後の成形品の屈曲部の白化を防止するためには85〜110℃であることが好ましい。
基材シート11の厚みは、特に限定されないが、一般的には70〜150μm程度である。
絵柄層12の厚みは、絵柄模様に応じて適宜選択すればよい。
また、必要に応じて、副成分の樹脂として、例えば、熱可塑性ポリエステル樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等の塩素化ポリオレフィン等の樹脂を混合しても良い。この様な隠蔽層は、通常は印刷インキ或いは塗料でグラビア印刷等の公知の印刷又はグラビア塗工等の塗工法により形成すれば良い。隠蔽層15の厚みは1〜10μm程度であり、通常2μm 程度である。
着色剤としては、カーボンブラック(墨)、鉄黒、チタン白(二酸化チタン)、アンチモン白(三酸化アンチモン)、亜鉛華、酸化鉄イエロー、黄鉛、チタン黄、アンチモン黄、カドミウムイエロー、弁柄、カドミウム赤、硫化水銀、クロムバーミリオン、アンバー、ローアンバー、バーントアンバー、イエローオーカー、ヴァンダイクブラウン、シェンナ、ローシェンナ、バーントシェンナ、群青、コバルトブルー等の無機顔料、キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー等の有機顔料又は染料、アルミニウム、真鍮等の鱗片状箔片からなる金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料等が用いられる。
バッカー層14がABS樹脂又はポリオレフィン樹脂の場合は、接着剤層13としてブロックイソシアネートを硬化剤とする2液硬化型ウレタン樹脂、塩素化ポリプロピレン等の塩素化ポリオレフィン等が好ましい。
まず、固定枠に固定した加飾シート10が軟化する所定の温度になるまでヒーターで加熱し、加熱され軟化した加飾シート10に真空成形金型を押し付け、同時に真空成形金型から真空ポンプ等で空気を吸引し加飾シート10を真空成形金型にしっかりと密着させる。
加飾シート10が真空成形金型に密着した後、加飾シート10を冷却し、成形した加飾シート10から真空成形金型をはずし、固定枠から成形された加飾シート10をはずす。真空成形は通常160〜180℃程度で行われる。詳細については、例えば、特開2004−322501号公報に記載される。
なお、樹脂の粘度、加飾シート及び成形品のゆず肌の有無、成形品の屈曲部の白化の有無及びゴム粒子の平均粒径は、下記の方法に従って測定した。
1.樹脂の粘度(Pa・s)
粘弾性測定装置としては、アントンパール社製「Physica−MCR300」を用い、測定治具としては、パラレルプレートを用いた。具体的な測定は、以下の手順で行った。
(1)測定部を150℃に加熱する。
(2)測定部が150℃になったことを確認した後に、25mmφに成形した試料を測定部にセットする。
(3)治具間距離を0.12mmに調整する。
(4)温度が安定した後、測定温度150℃、歪10%、及び周波数0.1〜100Hzの条件で動的粘弾性を測定する。
(5)動的粘弾性から粘度を計算する。
ゆず肌は真空成形により現れ、射出成形時の射出圧により低減する傾向にあり、圧力が高い程ゆず肌は低減する。従って、真空成形後の加飾シートと射出成形後の成形品の双方について、各加飾シート表面及び一定条件で射出した各成形品表面の蛍光灯の反射像を見た際にみかん又はゆずの皮のような面、即ち、ゆず肌の有無及び有る場合の程度を目視にて観察し、以下の基準で判断した。
◎:真空成形後の加飾シートにゆず肌が認められなかった場合、あるいは真空成形後の加飾シートにゆず肌が認められたが、射出成形後の成形品ではゆず肌が認められなかったか、又はゆず肌がわずかに認められたが実用上全く問題なかった場合のいずれかである。
○:真空成形後の加飾シートのみならず、射出成形後の成形品でもゆず肌が認められたが、実用上問題なかった。
×:射出成形後の成形品でゆず肌が激しく、成形品の商品価値が低下した。
射出成形後の各成形品の屈曲部の表面の白化の有無を目視にて観察し、以下の基準で判断した。
◎:白化が認められなかった。
○:白化がわずかに認められたが、実用上問題なかった。
△:白化が多少認められ、用途によっては適用が困難なレベルあった。
×:白化が認められた。
ゴム粒子が分散したアクリル系樹脂組成物からなる基材シートを適当な大きさに切り出し、切片を0.5%の四酸化ルテニウム水溶液に室温で15時間浸漬して、ゴム粒子部分を染色した。更に、ミクロトームを用いて約80nmの厚さにサンプルを切断した後、透過型電子顕微鏡で写真撮影を行った。この写真から無作為に500個の染色されたゴム粒子部を選択し、その各々の粒子径を算出した後、その平均値を平均粒径(μm)とした。
(メタ)アクリル樹脂として、メタクリル酸メチル97.8%及びアクリル酸メチル2.2%のモノマー組成からバルク重合法により得られた樹脂のペレットを用いた。またゴム粒子としては、特公昭55−27576号公報の実施例3に準じて製造され、最内層がメタクリル酸メチルに少量のメタクリル酸アリルを用いて重合された架橋重合体、中間層がアクリル酸ブチルを主成分としてさらにスチレン及び少量のメタクリル酸アリルを用いて重合された軟質の弾性共重合体、最外層がメタクリル酸メチルに少量のアクリル酸エチルを用いて重合された硬質重合体からなる球形3層構造であり、弾性共重合体層の平均粒子径が0.20μmのものを用いた。なお、(メタ)アクリル樹脂/ゴム粒子の質量比は、基材シートAでは55/45、基材シートBでは65/35、基材シートCでは72/28、基材シートDでは80/20、基材シートEでは91/9、基材シートFでは97/3とした。
表1に示す6種類の基材シート上に、夫々ポリブチルメタクリレート/塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体(質量比:2/1)からなる絵柄層(厚さ1μm)、ポリメチルメタクリレート及びポリブチルメタクリレートの混合物及び無機顔料からなる隠蔽層(厚さ2μm)及び2液硬化型ウレタン樹脂系接着剤からなる接着剤層(厚さ10μm)を順次積層した後、ABS樹脂からなるバッカー層(厚さ350μm)をドライラミネーションにより積層し、6種類のインサート成形用加飾シートを得た。
次に、これら6種類の加飾シートを固定枠に固定し、加飾シートの温度が約160℃になるまで約300℃のヒーターで加熱した。加熱され軟化した加飾シートを、上述のように、真空成形工程、トリミング工程及び温度約240℃でABS樹脂を射出樹脂とする射出成形工程を経て6種類の加飾成型品を得た。
これら6種類の真空成形後の加飾シート及び射出成形後の成形品のゆず肌の有無、並びに射出成形後の成形品の屈曲部の白化の有無を評価した。結果を表1に示す。
一方、比較例1の加飾シートは、射出成形後の成形品において、屈曲部の白化は認められなかったが、表面にゆず肌状歪みが激しかった。また、比較例2の加飾シートは、射出成形後の成形品において、表面にゆず肌状歪みが認められなかったが、屈曲部に白化が認められた。
11 基材シート
12 絵柄層
13 接着剤層
14 バッカー層
15 隠蔽層
Claims (3)
- 基材シートの上に絵柄層を積層し、絵柄層の上に接着剤層を介してバッカー層をドライラミネーションにより積層してなるインサート成形用加飾シートであって、該基材シートが(メタ)アクリル樹脂中にゴム粒子が分散したアクリル系樹脂組成物からなり、かつ以下の測定方法で測定した該アクリル系樹脂組成物の粘度が3×102〜20×102Pa・sであることを特徴とするインサート成形用加飾シート。
(粘度の測定方法)
粘弾性測定装置を用いて測定する。測定は、測定部直径25mmφに成形した試料を用い、治具間距離0.12mm、測定温度150℃、及び歪10%とし、周波数を0.1から100Hzまで図1に示すように400秒間で連続的に変化させ、100Hzに達したところで測定する。 - 前記ゴム粒子の平均粒径が、0.05〜0.5μmである請求項1に記載のインサート成形用加飾シート。
- 前記ゴム粒子が、(メタ)アクリル酸エステル系ゴム状重合体である請求項1に記載のインサート成形用加飾シート。
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