以下、本発明の実施形態に係る半導体レーザー装置及び、その取付構造について図面を参照して説明する。
[第1の実施形態]
(レーザー走査装置の構成)
先ず、本発明の実施形態に係る半導体レーザー装置が光源装置として適用されたレーザー走査装置について説明する。図1には、本発明の実施形態に係る半導体レーザーが適用されたレーザー走査装置の光学系の構成が示されている。このレーザー走査装置10は、ドラム状の感光体12を画像信号により変調されたレーザー光Bにより走査し、感光体12に静電潜像を形成するためのものであり、電子写真プロセスにより画像形成が行われるレーザープリンター、複写機等の画像形成装置へ適用される。
図1に示されるように、レーザー走査装置10は、レーザー光Bの光源装置として半導体レーザー14を備えており、この半導体レーザー14は、マルチビーム光源として面発光型のレーザーアレイ60(図3参照)を内蔵している。レーザーアレイ60は、その駆動時に略ガウシアン分布を有する複数本のレーザー光B(但し、図1には1本のレーザー光Bのみが示されている。)を発光する。レーザーアレイ60から出射されたレーザー光Bは、ファーフィールドパターン(FFP)が主走査方向及び副走査方向にそれぞれ略均等な拡がり角を持つビーム光となる。レーザー走査装置10には、半導体レーザー14から出射されるレーザー光Bの光路に沿ってコリメータレンズ18、光ビーム整形用のスリット部材20、シリンドリカルレンズ24、ハーフミラー22が半導体レーザー14側から順に配置されている。
ここで、コリメータレンズ18は、レーザー光Bの光軸に沿ったレーザーアレイ60との間隔がコリメータレンズ18の焦点距離と一致するよう配置されており、これにより、コリメータレンズ18を透過した光ビームは略平行光となる。このレーザー光Bは、スリット部材20のスリットを通過することで所定の断面形状に整形され、副走査方向に沿って曲率を有するシリンドリカルレンズ24に入射する。
ハーフミラー22は、シリンドリカルレンズ24を透過したレーザー光Bの全光量うち約30%を透過させ、残りのレーザー光Bを回転多面鏡26へ向って反射する。ハーフミラー22の裏面側は主走査方向に沿って曲率を有するシリンドリカルレンズとして構成されており、シリンドリカルレンズ24及びハーフミラー22を透過したレーザー光Bは、副走査方向及び主走査方向ヘそれぞれ集光されて光量モニター用のフォトダイオード(以下、「MPD」という。)28の受光部に光スポットを形成する。
回転多面鏡26は正多角柱形状に形成されており、その外周側の複数の平面がそれぞれ反射偏向面30とされている。また回転多面鏡26には、同軸的にステッピングモータ等からなる偏向駆動手段(図示省略)が連結されており、この偏向駆動手段からの伝達トルクにより、回転多面鏡26は軸心を中心として一方向へ等各速度で回転する。ハーフミラー22により反射されたレーザー光Bは、シリンドリカルレンズ24のレンズパワーにより反射偏向面30上で副走査方向に沿って収束される。回転多面鏡26は反射偏向面30によりレーザー光Bを反射し、レーザー光Bが主走査方向に沿って等角速度で移動するようにレーザー光Bを偏向する。
レーザー走査装置10には、回転多面鏡26によるレーザー光Bの偏向方向に沿って一対のFθレンズ32,34が配置されている。これらのFθレンズ32,34は、それぞれ主走査方向に沿って細長いロッド状に形成されており、回転多面鏡26により反射されたレーザー光Bを主走査方向に沿って集光すると共に、レーザー光Bの主走査方向に沿った移動を等角速度から等線速度に変換する。Fθレンズ32,34を透過したレーザー光Bは、第1シリンドリカルミラー36及び平面ミラー38によって光路が略コの字状に屈曲され、さらに第2シリンドリカルミラー40により感光体12へ向って反射される。第2シリンドリカルミラー40により反射されたレーザー光Bは、防塵用のウインドガラス42を透過して感光体12の外周面上に達する。
シリンドリカルミラー36,40は、副走査方向に沿ってレーザー光Bを収束させるための光学的なパワーを有する。レーザー走査装置10では、回転多面鏡26の反射偏向面30と感光体12の外周面とが略共役関係にされており、これにより、回転多面鏡26の偏向方向のばらつき(面倒れ)により生じる感光体12上での副走査方向に沿った光スポットの位置ずれが補正されることになる。また、コリメータレンズ18、シリンドリカルレンズ24、シリンドリカルミラー36,40の副走査方向の曲率は、感光体12上での副走査方向に沿ったビーム間隔と感光体12から数ミリ離れた位置でのビームの間隔とが互いに等しいテレセントリックな関係とするように設定されている。
感光体12は軸方向に沿って細長い略円柱状に形成され、その外周面がレーザー光Bに感応する感光面13とされている。また感光体12は、その軸方向がレーザー走査装置10による主走査方向と一致するように支持されている。すなわち、レーザー走査装置10では、半導体レーザー14から出射されたレーザー光Bが感光体12上に光スポットとして収束し、この光スポットが主走査方向に沿って感光体12上を移動して主走査線上に沿って潜像が記録される。また感光体12には副走査駆動手段(図示省略)が連結されており、この副走査駆動手段は、感光体12に対する1回の主走査完了に同期し、感光体12を所定量だけ回転させる。これにより、感光体12における副走査方向(周方向)に沿って画素密度に対応する距離だけ異なる部位が順次、レーザー光Bにより主走査され、感光体12に2次元的な潜像が形成されて行く。
レーザー走査装置10には、平面ミラー38の一端部により感光体12の外側へ反射されたレーザー光Bの光路上に平面ミラー44が配置されており、この平面ミラー44により反射されたレーザー光Bの光路上には、シリンドリカルレンズ46及び同期センサ48が平面ミラー44側から順に配置されている。従って、平面ミラー38の一端部により反射されたレーザー光Bは、さらに平面ミラー44により反射されてシリンドリカルレンズ46へ入射し、シリンドリカルレンズ46により同期センサ48の受光部上に結像する。このレーザー光Bの入射と同時に、同期センサ48はSOS信号を後述するビデオコントローラ52(図2参照)へ出力し、このSOS信号に基づいて、ビデオコントローラ52は、感光体12に対する主走査方向に沿った書出しタイミング及び感光体12の副走査方向への移動(回転)タイミングをそれぞれ決定する。
図2には、本発明の実施形態に係る半導体レーザー装置が適用されたレーザー走査装置における駆動・制御回路の構成が示されている。この駆動・制御回路50には、ビデオコントローラ52、レーザーアレイ制御部54及びレーザーアレイ駆動回路58が設けられている。ビデオコントローラ52には同期センサ48が接続され、レーザーアレイ制御部54にはMPD28が接続されている。またレーザーアレイ駆動回路58はレーザーアレイ60に駆動信号を出力し、レーザーアレイ60によるレーザー光Bの発光を制御する。ここで、レーザーアレイ制御部54及びレーザーアレイ駆動回路58は、後述するプリント配線基板80(図5参照)又はプリント配線基板108(図7参照)上に設けられる。
(半導体レーザの構成)
次に、本発明の実施形態に係る半導体レーザの構成について図面を参照して説明する。図3及び図4には本発明の実施形態に係る半導体レーザー14が示されている。この半導体レーザー14は、レーザー光Bを発光する半導体レーザーチップとして面発光型のレーザーアレイ60、所謂、(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting Laser-Diode)を用いている。レーザーアレイ60はパッケージ部材68上に固定されており、その表面部62には、図3に示されるように32個のレーザー発光部64がマトリックス状に配置されている。これらのレーザー発光部64からはそれぞれレーザー光Bが表面部62に対して垂直に発光される。
図3に示されるように、レーザーアレイ60では、32個のレーザー発光部64は、副走査方向(矢印S方向)に沿って所定ピッチだけ互いにずれるように配置されており、各レーザー発光部64のピッチは、感光体12(図1参照)上での走査線の間隔、すなわち副走査方向に沿った解像度に対応して設定されている。本実施形態では、レーザーアレイ60におけるレーザー発光部64間のピッチが7μmとされ、感光体12上での走査線間隔が10.6μmとなるように結像光学系の倍率を設定され、これにより、感光体12には2400DPIの画像が形成可能になっている。また、レーザー走査装置10では、各レーザー発光部64の主走査方向(矢印M方向)における位置に応じて画像信号の遅延時間を調整することで、感光体12上での主走査方向に沿った書出しタイミングのずれを補正している。
図4に示されるように、半導体レーザー14は、プレート状のレーザーアレイ60及び、このレーザーアレイ60を保持するパッケージ部材68を備えている。レーザーアレイ60は、その厚さ方向に沿った表面部62及び裏面部66がそれぞれ平面状に形成されている。このレーザーアレイ60はVCSELとして構成されていることから、表面部62と裏面部66とが精度良く互いに平行となるように形成され、かつレーザー発光部64から発光されるレーザー光Bの光軸が表面部62に対して精度良く垂直に保たれるという特性を有している。
パッケージ部材68は、レーザー光Bの光軸方向に沿って扁平なブロック状に形成されており、その表面中央部には凹状に窪んだ収納室70が形成されている。収納室70の底面部は、十分に平滑な平面となるように精度良く加工されており、レーザーアレイ60が載置される第1基準面72とされている。レーザーアレイ60は、その裏面部66を第1基準面72に当接させた状態で第1基準面72の中央部上に載置され、固着されている。なお、レーザーアレイ60の裏面部66と第1基準面72との間に接着剤等からなる中間層が介在する場合でも、このような中間層の厚さは十分に薄く、かつ均一厚さになるように形成される。
パッケージ部材68の表面部には、収納室70の外周側に第2基準面74が設けられており、この第2基準面74は、第1基準面72と同様に十分に平滑な平面とされ、かつ第1基準面72と平行になるように精度良く加工されている。これにより、レーザーアレイ60がパッケージ部材68に固定された状態で、レーザーアレイ60の表面部62、パッケージ部材68における第1基準面72及び第2基準面74は互いに精度良く平行になり、これらの基準面72,74に対してレーザー発光部64から発光されるレーザー光Bの光軸は精度良く垂直に保たれる。
ここで、パッケージ部材68は、Al2O3、SiO2、TiO2等のセラミックを素材として、例えば、研削加工により成形されている。パッケージ部材68をAl2O3、SiO2、TiO2等のセラミックにより成形したことにより、レーザー走査装置10の光源装置として使用された場合に、結露に強い、導電率が低く静電ノイズに強い等の良好な特性が得られ、また一般的にセラミックは、その材質の特性からサブミクロンのオーダーで精度を容易に出せるためパッケージ部材68の素材として適している。
図4に示されるように、パッケージ部材68に固定(実装)されたレーザーアレイ60は、複数本のボンディングワイヤー76によりパッケージ部材68側に設けられたプリント配線(図示省略)等からなる接続回路に結線される。また収納室70の頂面側の開口には透明材料からなる防塵ガラス78が嵌め込まれ、これにより、収納室70内には外部から密閉された空間が形成される。半導体レーザー14は、図5に示されるようにプレート状に形成されたプリント配線基板80における所定の実装部82上に載置され、パッケージ部材68の接続回路の端子部がプリント配線基板80上に形成されたプリント配線の端子部にケーブル、半田等を介して接続される。また、このプリント配線基板80にはレーザーアレイ駆動回路58が実装されるか、或いはプリント配線基板80はレーザーアレイ駆動回路58が実装された回路基板等に接続されており、これにより、プリント配線基板80を介して、半導体レーザー14のレーザーアレイ60とレーザーアレイ駆動回路58とが互いに電気的に接続される。また半導体レーザー14は、複数本のビス(図示省略)によりプリント配線基板80に締結固定されており、これにより、半導体レーザー14は、その裏面部が実装部82に密着した状態でプリント配線基板80に十分な強度で連結固定される。
(半導体レーザーの取付構造)
次に、上記のように構成されたレーザー走査装置10に本実施形態に係る半導体レーザー14を取り付けるための取付構造について図面を参照して説明する。
図5及び図6には、本発明の第1の実施形態に係る半導体レーザーの取付構造が示されている。この取付構造90は、光源装置としての半導体レーザー14をレーザー走査装置10における結像光学系が搭載される光学箱92に取り付けるためのものである。ここで、レーザー走査装置10における結像光学系とは、半導体レーザー14から出射されたレーザー光Bを光スポットとして感光体12上に結像するためのレンズ、ミラー等の光学部品の集合であり、本実施形態では、図1に示されるコリメータレンズ18、スリット部材20、ハーフミラー22、シリンドリカルレンズ24、Fθレンズ32,34等から構成されている。光学箱92は結像光学系を構成する光学部品の収納し、支持すると共に、これらの光学部品への塵埃等の異物付着を防止するための防塵空間を構成している。また光学箱92には、回転多面鏡26、同期センサ48、MPD28等が搭載される。
図5に示されるように、光学箱92には、その外側面に半導体レーザー14を取り付けるための光源取付部93が設けられている。この光源取付部93には、中央部に光学箱92内へレーザー光Bを通過させるためのレーザー導入口94が形成されると共に、レーザー導入口94の周縁部に光学箱92の側面から突出するように支持基台96が設けられている。また光源取付部93には、支持基台96の外周側に複数のねじ穴98が穿設され、これらのねじ穴98は、プリント配線基板80に穿設された複数の挿通穴84にそれぞれ対応するように配置されている。一方、プリント配線基板80における複数の挿通穴84は、面方向に沿って半導体レーザー14が実装される実装部82の外側の部位にそれぞれ穿設され、実装部82までの距離が互いに略等しくなるように配置されている。
光源取付部93の支持基台96は、その先端面が十分に平滑な平面となるように加工されており、この支持基台96の先端面は半導体レーザー14から出射されるレーザー光Bの光軸SB(図6参照)の方向(半導体レーザー14の光軸方向)を決めるための取付基準面97とされている。この取付基準面97は、その光学箱92に搭載された結像光学系の光軸を基準として面方向が決められており、具体的には、結像光学系のレーザー光Bの入射部から延長された光軸SO(図6参照)に対して直交するように精度良く形成されている。ここで、支持基台96は、その取付基準面97の平面性を十分に高くでき、かつ面方向の傾き誤差を十分に小さくできるならば、樹脂等により光学箱92と一体成形しても良いが、このような成形方法では十分な精度が得られない場合には、支持基台96は、例えば、セラミック等の高い加工精度を得られる素材により成形し、光学箱92の側面部に光軸SOに対する傾きを調整しつつ固定することにより設けられる。
一方、本実施形態に係る取付構造90では、プリント配線基板80が撓み方向へ十分な弾性を有するFPC(Flexible Printed Circuit)により構成されており、プリント配線基板80は複数本のビス100により光源取付部93に締結固定される。このとき、ビス100が挿通するプリント配線基板80の挿通穴84は、その内径がビス100のねじ部外径よりも大径で、ビス100の頭部外径よりも小径とされている。
次に、上記のように構成された取付構造90を用いた半導体レーザー14の光学箱92への取付方法について説明する。図5に示される半導体レーザー14を光源取付部93に取り付ける際には、先ず、パッケージ部材68の第2基準面74を支持基台96における取付基準面97に当接させつつ、プリント配線基板80の各挿通穴84にそれぞれビス100を挿通させ、これらのビス100の先端部を光源取付部93のねじ穴98に捻じ込んで行く。複数本のビス100はそれぞれ略均等量ずつねじ穴98へ捻じ込まれ、これらのビス100により光源取付部93に拘束されたプリント配線基板80は、パッケージ部材68の第2基準面74が支持基台96の取付基準面97に当接するように半導体レーザー14を光源取付部93に拘束する。このとき、図6の2点鎖線で示されるように、複数本のビス100は、プリント配線基板80における実装部82の外側部分を僅かに光源取付部93側へ撓み変形するまで、ねじ穴98へそれぞれ均等に捻じ込まれる。これにより、パッケージ部材68は第2基準面74が取付基準面97に当接する状態に保持され、第2基準面74と取付基準面97との間には弱い摩擦力が生じる。
前述したように、第2基準面74はパッケージ部材68に実装されたレーザーアレイ60の光軸SBに対して実質的に直交する平面であり、取付基準面97は光学箱92に搭載された結像光学系の光軸SOに対して実質的に直交する平面である。このことから、第2基準面74が取付基準面97に当接すると、パッケージ部材68に実装されたレーザーアレイ60の光軸SBは取付基準面97にも実質的に直交することになる。すなわち、図6に示されるように、結像光学系を基準とする光軸方向をZ軸、主走査方向をX軸、副走査方向をY軸としてそれぞれ表した場合、レーザーアレイ60はZ−X平面及びX−Y平面に沿って傾きが無い状態に調整(傾き調整)される。
次いで、半導体レーザー14のX軸方向及びY軸方向に沿った、X−Y平面に沿った位置調整と、Z軸を中心とする回転方向への調整(位相調整)とが同時に行われる。X−Y平面に沿った位置調整は、第2基準面74を取付基準面97に当接させつつ、第2基準面74と取付基準面97との摩擦力に抗し、半導体レーザー14をスライド(平行移動)させることにより行われる。これにより、半導体レーザー14は、レーザーアレイ60の光軸SBを結像光学系の光軸SOと一致するようにX−Y平面に沿って位置決めされる。
またZ軸を中心とする位相調整は、第2基準面74を取付基準面97に当接させつつ、Z軸を中心として半導体レーザー14を回転させることにより行われる。これにより、半導体レーザー14は、レーザーアレイ60における複数個のレーザー発光部64がX軸及びY軸に対して所定の方向ヘ配列される。これらのX−Y平面に沿った位置調整の許容量及びZ軸を中心とする位相調整の許容量は、プリント配線基板80における挿通穴84の内径とビス100の外径との差により定まる。このことから、挿通穴84の内径をビス100の外径に対してどの程度、拡大するかが決められる。
X−Y平面に沿った位置調整及びZ軸を中心とする位相調整が完了したならば、複数本のビス100をそれぞれ所定の締結トルクが生じるまでねじ穴98へ捻じ込み、プリント配線基板80の実装部82の外側を撓み量を十分に大きくする。この撓み量の増加に従って、第2基準面74と取付基準面97との間の摩擦力が増大し、この摩擦力を十分に大きくすることにより、半導体レーザー14のX−Y平面に沿った移動及び回転が拘束される。このとき、第2基準面74と取付基準面97との間の摩擦力は、ビス100の締結トルクに対応する大きさになるので、ビス100をねじ穴98へ捻じ込む際の締結トルクを適宜設定することで、第2基準面74と取付基準面97との間の摩擦力を十分な大きさにできる。具体的には、ポリイミド系樹脂を基材として厚さが1.0mm〜2.0mmのプリント配線基板80を用いた場合、各ビス100の締結トルクを0.1N・m〜0.5N・mの範囲内で適宜設定することで、半導体レーザー14を十分な拘束力で光源取付部93へ固定できる。
以上説明したように、図5及び図6に示される取付構造90によれば、半導体レーザー14を結像光学系が搭載される光学箱92における光源取付部93に簡単に取り付けることができ、かつ半導体レーザー14におけるレーザーアレイ60の結像光学系の光軸SOに対する傾き誤差、X−Y平面に沿った位置決め誤差及び、Z軸まわりの位相誤差をそれぞれ十分に小さくできる。また取付構造90では、プリント配線基板80としてFPCを用いていることから、プリント配線基板80が撓み方向へ十分な弾性を有し、かつ任意の方向へ一定の柔軟性を有しているので、何れかのビス100における締結トルクが過剰になり、プリント配線基板80の撓み変形が局部的に大きくなった場合や、複数本のビス100のねじ穴98への捻じ込み量が不均一になり、プリント配線基板80に捻れ変形が生じた場合でも、プリント配線基板80に亀裂、断線等の破損が生じたり、第2基準面74と取付基準面97との間の密着性が低下することを防止できる。
次に、本発明の第1の実施形態に係る取付構造の第1変形例について説明する。図7に示される取付構造104では、半導体レーザー14が実装されるプリント配線基板106としてガラスエポキシ系樹脂を基材とする比較的、硬質のものを用いている。ガラスエポキシ系樹脂を基材するプリント配線基板106は、FPCと比較して殆ど柔軟性を有しておらず、かつ撓み方向へ許容される弾性変形量も小さいものになっている。このため、何れかのビス100における締結トルクが過剰になった場合や、複数本のビス100のねじ穴98への捻じ込み量が不均一になった場合には、プリント配線基板106に亀裂、断線等の破損が生じ易く、また第2基準面74と取付基準面97との間の密着性が低下し易くなる。
上記のような問題が考慮されて、取付構造104には、光源取付部93に円筒状のボス108がねじ穴98に対応して設けられている。ボス108は光源取付部93のねじ穴98の外周側に同軸的に配置され、光源取付部93からプリント配線基板80側へ突出している。ボス108の内径はビス100の外径よりも僅かに長くなっており、また複数本のボス108の光源取付部93表面からの突出長Pは互いに等しくなっている。この突出長Pは、支持基台96の光源取付部93からの突出長とパッケージ部材68の厚さとの和よりも所定長だけ短くなっており、このボス108の支持基台96及びパッケージ部材68に対する短縮量は、半導体レーザー14が光源取付部93に取り付けられた状態で、プリント配線基板106に付与すべき撓み変形量に応じて設定される。
取付構造104により半導体レーザー14を光源取付部93に取り付ける際には、半導体レーザー14のX−Y平面に沿った位置調整及び位相調整については、基本的に取付構造90の場合と同一の方法により行われる。これら一連の半導体レーザー14の位置調整及び位相調整が完了した後、取付構造104では、複数本のビス100の頭部がそれぞれプリント配線基板106を介してボス108の先端面に当接し、それ以上の捻じ込みが制限されるまで、ねじ穴98にそれぞれ捻じ込まれる。これにより、プリント配線基板106には、実装部82外側の周辺部に撓み変形が均等に生じ、この撓み変形により生じる復元力により第2基準面74が取付基準面97に十分な圧接力で圧接し、半導体レーザー14のX−Y平面に沿った移動及び回転が拘束される。
以上説明したように、図7に示される取付構造104によっても、取付構造90の場合と同様に、半導体レーザー14を結像光学系が搭載される光学箱92における光源取付部93に簡単に取り付けることができ、かつ半導体レーザー14におけるレーザーアレイ60の結像光学系の光軸SOに対する傾き誤差、X−Y平面に沿った位置決め誤差及び、Z軸まわりの位相誤差をそれぞれ十分に小さくできる。また取付構造104では、プリント配線基板106がガラスエポキシ系樹脂製により形成されていることから、FPCとして構成されたプリント配線基板80と比較し、亀裂、断線等が生じない程度の僅かな撓み変形量を付与すれば、半導体レーザー14に十分な復元力を作用させて半導体レーザー14を確実に光源取付部93の所定位置に拘束可能になる。
なお、プリント配線基板がFPCとして構成されている場合でも、光源取付部93に複数個のボス108を設け、これらのボス108によりビス100の捻じ込み量を一定にすることで、プリント配線基板から半導体レーザー14に作用する復元力を確実に一定の大きさにできるので、ビス100の捻じ込み量の不足等に起因して半導体レーザー14の光源取付部93への取付状態が不安定になることを防止できる。
[第2の実施形態]
図8〜図10には、それぞれ本発明の第2の実施形態に係る半導体レーザの取付構造が示されている。なお、この第2の実施形態に係る半導体レーザの取付構造において、第1の実施形態に係る半導体レーザの取付構造と基本的に構成が共通な部材については同一符合を付して説明を省略する。
図8には、本発明の第2の実施形態に係る半導体レーザの取付構造の一例が示されている。この取付構造110では、光源取付部93とプリント配線基板106との間におけるビス100の外周側に肉厚円筒状のスペーサ部材112が配置されている。このスペーサ部材112はゴム等の弾性材料により形成されており、その軸心部にはビス100のねじ部が挿通可能な貫通穴114が形成されている。スペーサ部材112の軸方向に沿った自由長L(図8(B)参照)(は、支持基台96の光源取付部93からの突出長とパッケージ部材68の厚さとの和よりも所定長だけ長くなっており、このスペーサ部材112の自由長Lは、スペーサ部材112の軸方向に沿った弾性係数と、半導体レーザー14を光源取付部93に固定するためにパッケージ部材68に付与すべき付勢力の大きさ等に応じて設定される。
取付構造110により半導体レーザー14を光源取付部93に取り付ける際には、先ず、ビス100をプリント配線基板106における複数個の挿通穴84にそれぞれ挿通し、このビス100のねじ部の外周側にスペーサ部材112を嵌挿する。この後、パッケージ部材68における第2基準面74が支持基台96の取付基準面97に軽く当接するまで、複数本のビス100をそれぞれ均等にねじ穴98に捻じ込み、この状態で半導体レーザー14の位置調整及び位相調整を行う。この半導体レーザー14のX−Y平面に沿った位置調整及び位相調整の方法については、基本的に第1の実施形態に係る取付構造90,104の場合と同一の方法により行われる。
取付構造110では、半導体レーザー14の位置調整及び位相調整が完了した後、複数本のビス100を更にねじ穴98に捻じ込み、これらのビス100からの加圧力によりスペーサ部材112を所定の圧縮長Pになるように軸方向に沿って弾性変形させる。このとき、プリント配線基板106には、その剛性に応じて実装部82外側の周辺部に僅かな撓み変形が生じる。このとき、半導体レーザー14には、複数個のスペーサ部材112の復元力とプリント配線基板106の復元力との和に対応する付勢力が作用し、この付勢力によりパッケージ部材68における第2基準面74が取付基準面97に十分な圧接力で圧接し、半導体レーザー14のX−Y平面に沿った移動が拘束される。
以上説明したように、図8に示される取付構造110によっても、第1の実施形態に係る取付構造90,104の場合と同様に、半導体レーザー14を結像光学系が搭載される光学箱92における光源取付部93に簡単に取り付けることができ、かつ半導体レーザー14におけるレーザーアレイ60の結像光学系の光軸SOに対する傾き誤差、X−Y平面に沿った位置決め誤差及び、Z軸まわりの位相誤差をそれぞれ十分に小さくできる。また取付構造110では、プリント配線基板106として高剛性のものを用いた場合でも、スペーサ部材112の弾性変形量を十分に大きくし、プリント配線基板116を介してスペーサ部材112から半導体レーザー14へ十分な大きな付勢力を作用させることで、半導体レーザー14を確実に光源取付部93の所定位置に拘束可能になる。また取付構造110では、プリント配線基板106が複数個のスペーサ部材112を介して光源取付部93に弾性的に連結されていることから、光学箱92に外部からの衝撃が作用した場合でも、スペーサ部材112によりプリント配線基板106側へ伝達される衝撃力を緩和できるので、衝撃力によるプリント配線基板106及び半導体レーザー14の損傷を抑制できる。
図9には、本発明の第2の実施形態に係る半導体レーザの取付構造の第1変形例が示されている。この取付構造120では、光源取付部93における支持基台96の外側に複数個(例えば、4個)の板ばね部材122が片持ち状態で取り付けられている。複数個の板ばね部材122は、それぞれ金属を素材として細長い薄板状に形成されており、支持基台96を中心として外側へ延出するように配置されている。板ばね部材122は、支持基台96側に配置された基端部がビス124により光源取付部93の外側面に固着され、基端部から先端側へ向って光源取付部93の外側面から徐々に離間するように湾曲されている。これにより、板ばね部材122はZ軸方向に沿って撓み変形可能となっている。また板ばね部材122の先端部には、プリント配線基板106の挿通穴84に対応する連結用のねじ穴126が穿設されている。
ここで、図9(A)に示されるように、板ばね部材122が変形していない自由状態では、光源取付部93の外側面から板ばね部材122の先端部までのZ軸方向に沿った間隔Tが支持基台96の光源取付部93からの突出長とパッケージ部材68の厚さとの和よりも所定長だけ短くなっている。この板ばね部材122の光源取付部93からの間隔Tは、板ばね部材122の撓み方向(Z軸方向)に沿った弾性係数と、半導体レーザー14を光源取付部93に固定するためにパッケージ部材68に付与すべき付勢力の大きさ等に応じて設定される。
取付構造120により半導体レーザー14を光源取付部93に取り付ける際には、先ず、ビス100をプリント配線基板106の複数個の挿通穴84にそれぞれ挿通し、これらのビス100のねじ先端部をそれぞれ板ばね部材122のねじ穴126に捻じ込み、板ばね部材122をプリント配線基板106側へ撓み変形させる。このとき、パッケージ部材68における第2基準面74が支持基台96の取付基準面97に軽く当接するまで、複数本のビス100をそれぞれ均等にねじ穴126に捻じ込み、この状態で、半導体レーザー14の位置調整及び位相調整を行う。この半導体レーザー14のX−Y平面に沿った位置調整及び位相調整については、基本的に第1の実施形態に係る取付構造90,104の場合と同一の方法により行われる。
取付構造120では、半導体レーザー14の位置調整及び位相調整が完了した後、図9(B)に示されるように、複数本のビス100を更に板ばね部材122のねじ穴126に捻じ込み、板ばね部材122の撓み変形を増大させることで、板ばね部材122の先端部をプリント配線基板80に当接させる。これにより、板ばね部材122によりビス100のねじ穴126への捻じ込みが制限され、プリント配線基板106には、その剛性に応じて実装部82外側の周辺部に僅かな撓み変形が生じる。また半導体レーザー14には、複数個の板ばね部材122の復元力とプリント配線基板106の復元力との和に対応する付勢力が作用し、この付勢力によりパッケージ部材68における第2基準面74が取付基準面97に十分な圧接力で圧接し、半導体レーザー14のX−Y平面に沿った移動が拘束される。
図9に示される取付構造120によっても、図8に示される取付構造110の場合と同様の作用効果が得られると共に、半導体レーザー14を光源取付部93側へ付勢する弾性部材として金属製の板ばね部材122を用いているので、ゴム製のスペーサ部材112を用いた場合と比較して、化学変化等による機械的な特性変化が少なく、半導体レーザー14に対する付勢力の経時的な変化を抑制できる。
図10には、本発明の第2の実施形態に係る半導体レーザの取付構造の第2変形例が示されている。この取付構造130で用いられるビス134には、頭部135と先端側のねじ部136との間に頭部135よりも小径で、かつねじ部136よりも大径とされた円柱状のスペーサ部137が設けられている。また取付構造130は、半導体レーザー14を光源取付部93側へ付勢する弾性部材として波形ワッシャ132を備えており、この波形ワッシャ132は、ビス100の頭部135とプリント配線基板106との間であってビス100のねじ部の外周側にリング状の波形ワッシャ132が介装されている。波形ワッシャ132は、図10(B)に示されるように、周方向に沿って波形に湾曲した薄い金属板により形成されており、その厚さ方向に沿って弾性変形可能とされている。
取付構造130により半導体レーザー14を光源取付部93に取り付ける際には、先ず、ビス134のスペーサ部137の外周側に波形ワッシャ132を嵌めた後、ビス134をプリント配線基板106の複数個の挿通穴84にそれぞれ挿通させ、これらのビス134のねじ部136をそれぞれ各波形ワッシャ132が僅かに弾性変形するまで、均等にねじ穴98に捻じ込む。この状態で、半導体レーザー14のX−Y平面に沿った位置調整及び位相調整が行われる。この半導体レーザー14の位置調整及び位相調整については、基本的に第1の実施形態に係る取付構造90,104の場合と同一の方法により行われることから説明を省略する。
半導体レーザー14の位置調整及び位相調整が完了した後、複数本のビス100を更に光源取付部93のねじ穴98に捻じ込み、各ビス134におけるスペーサ部137の先端面をそれぞれ支持基台96へ圧接させる。これにより、波形ワッシャ132の厚さ方向に沿った弾性変形量が十分に増大すると共に、プリント配線基板106には実装部82外側の周辺部に僅かな撓み変形が生じる。このとき、半導体レーザー14には、複数個の波形ワッシャ132の復元力とプリント配線基板106の復元力との和に対応する付勢力が作用し、この付勢力によりパッケージ部材68における第2基準面74が取付基準面97に十分な圧接力で圧接し、半導体レーザー14のX−Y平面に沿った移動が拘束される。
図10に示される取付構造130によっても、本実施形態に係る他の取付構造110,120の場合と同様の作用効果が得られると共に、半導体レーザー14を光源取付部93側へ付勢する弾性部材として市販品である波形ワッシャ132を用いているので、ゴム製のスペーサ部材112や板ばね部材122を用いた場合と比較して、弾性部材を設けたことによるコスト上昇を抑制できる。
[第3の実施形態]
図13及び図14には本発明の第3の実施形態に係る半導体レーザーの取付構造が示されている。この半導体レーザーの取付構造(以下、単に「取付構造」という。)200には、図14に示されるように、光源装置であるレーザーパッケージ202が実装されると共に、レーザー駆動回路(図示省略)が配設されたプレート状のレーザー駆動基板204が設けられている。レーザーパッケージ202は、レーザー光源として面発光型のレーザーアレイ206及び、このレーザーアレイ206を収納するセラミック製のパッケージ部材208を備えている。このパッケージ部材208は、レーザー駆動基板204とは反対側の表面部が光源側基準面210とされており、この光源側基準面210は高い平滑度を有する平面に加工されている。
取付構造200は、光走査装置の筐体212に一体的に設けられた光源取付部214を備えている。この光源取付部214は、筐体212の側板部を貫通する窓部216及び、この窓部216の外周側に筐体212の側板部から外側へ突出するように設けられた略円筒状の筒部218を備えている。ここで、筒部218には、その外周部にリブ状とされた複数個(本実施形態では3個)の当接片219が一体的に形成されており、これら3個の当接片219は、筒部218の外周面に沿って互いに等間隔(120°間隔)となるように配置されている。当接片219の先端面は取付基準面220とされており、この取付基準面220も、光源側基準面210と同様に、高い平滑度を有する平面に加工されている。また光源取付部214には、筒部218の外周側に一対のネジ穴222が筐体212の側板部を貫通するように設けられている。
取付構造200には、レーザー駆動基板204と光源取付部214との間に弾性連結部材224が設けられている。この弾性連結部材224は、弾性を有する樹脂等を素材として、例えば、図中に示される座標軸のX方向を長手方向とするプレート状に形成されており、その長手方向に沿った両端部には、レーザー駆動基板204側へ突出する円柱状のボス部226がそれぞれ一体的に形成されている。このボス部226の中心部には、板厚方向に沿って弾性連結部材224を貫通するネジ穴228が穿設されている。レーザー駆動基板204には、弾性連結部材224の一対のネジ穴228に対応する一対の挿通穴232が穿設されている。これら一対の挿通穴232の内径は、レーザー駆動基板204を弾性連結部材224に連結し、締結固定するためのネジ240の外径よりも若干大きくされており、これらの径の差だけレーザー駆動基板204がX軸及びY軸方向に沿って位置調整可能になる。
また弾性連結部材224には、その長手方向に沿った中央部に光源取付部214の筒部218に対応する矩形の開口部230が穿設されると共に、この開口部230の上下にそれぞれ光源取付部214の一対のネジ穴222にそれぞれ対応する一対の挿通穴234が穿設されている。なお、本実施形態では、弾性連結部材224を樹脂により形成したが、弾性限度内で使用可能な素材であるならば金属材料等の他の素材により形成するようにしても良い。
次に、図15に基づいて弾性連結部材224の構成を詳細に説明する。弾性連結部材224は、図15(A)に示されるように、光軸方向と一致するZ軸方向へ薄いプレート状に形成されている。これにより、弾性連結部材224は光軸方向に沿った変形(撓み変形)が可能になっている。これに対し、弾性連結部材224は、X軸及びY軸方向へは十分な剛性を有する形状とされている。従って、弾性連結部材224は、光軸方向に沿った復元力を発生しやすい形状ではあるが、光源取付部214への固定後にX軸及びY軸方向に沿った外力が加わっても変形が生じ難くなっている。このため、弾性連結部材224によれば、光軸方向に沿ってレーザー駆動基板204を光源取付部214へ確実に押圧し、かつ光源取付部214への固定後にX軸及びY軸方向への位置ずれを生じ難くできる。
弾性連結部材224は、図15(B)に示されるように、レーザーアレイ206から出射されたレーザー光Bの光軸SBの通過点PBを中心として、一対のネジ穴228がX軸方向に沿って互いに等距離となるように配置され、かつ一対の挿通穴232がY軸方向に沿って互いに等距離となるように配置されている。これにより、周辺環境の温度変化により弾性連結部材224に膨張又は収縮が発生した際にも、X軸方向に沿った熱応力及びY軸方向に沿った熱応力が互いに相殺されることから、熱応力の影響によるX軸方向及びY軸方向に沿った弾性連結部材224の位置変化が効果的に防止される。この結果、弾性連結部材224の周辺環境に温度変化があった場合でも、レーザー光Bの位置ずれを防止できる。
すなわち、例えば、固定点である一対のネジ穴228から通過点PBまでの距離DAがそれぞれ異なる場合には、周辺環境の温度変化により弾性連結部材224にX軸方向に沿って膨張又は収縮が発生した際に、弾性連結部材224における通過点PBから一方のネジ穴228までの部分に生じる熱応力と通過点PBから他方のネジ穴228までの部分に生じる熱応力とが不均一なものになり、この熱応力の差により弾性連結部材224がX軸方向に沿って位置変化する現象が生じ易くなる。また固定点である一対の挿通穴232から通過点PBまでの距離DBがそれぞれ異なる場合にも、周辺環境の温度変化により弾性連結部材224にY軸方向に沿って膨張又は収縮が発生した際に、弾性連結部材224における通過点PBを中心として生じる熱応力が不均一なものになり、この熱応力の差により弾性連結部材224がY軸方向に沿って位置変化する現象が生じ易くなる。
弾性連結部材224には、図15(C)に示されるように、開口部230と一対のネジ穴228との中間部にそれぞれ弾性連結部材224の短手方向(Y軸方向)へ直線的に延在するスリット溝236が形成されている。これら一対のスリット溝236も、通過点PBからの距離が互いに等しくなるように配置されている。弾性連結部材224は、その撓み方向に沿った剛性がスリット溝236に沿った局部的に低下していることから、光軸方向に沿った外力が加えられた場合には、一対のスリット溝236に沿った部分が他の部分よりも優先的に撓み変形する。またスリット溝236の深さを適宜調整することにより、弾性連結部材224全体の形状や形成素材のヤング率にかかわらず、撓み方向に沿って所望の弾性力を得られるように弾性連結部材224の設計を行う事が可能となっている。またスリット溝236の幅を適宜調整することで、弾性連結部材224が撓み変形した状態でも、弾性連結部材224の一部分に過大な応力を生じさせることなく、光源側基準面210を光源取付部214の取付基準面220と平行にすることが可能になる。
本実施形態の取付構造200では、レーザーパッケージ202を光源取付部214に取り付ける際には、先ず、図14(B)に示されるように、一対のネジ238を弾性連結部材224における一対の挿通穴234にそれぞれ挿通させ、これらのネジ238の先端部を光源取付部214における一対のネジ穴222にそれぞれ捻じ込むことにより、弾性連結部材224を光源取付部214に締結固定する。このとき、光源取付部214の筒部218は、弾性連結部材224の開口部230内を通ってレーザー駆動基板204側へ突出する。
次いで、位置調整治具(図示省略)によりレーザーパッケージ202の光源側基準面210が光源取付部214の取付基準面220に当接するように、レーザー駆動基板204を保持する。この状態で、レーザーパッケージ202が位置調整治具によりレーザー駆動基板204と共に、レーザーパッケージ202から出射されるレーザー光Bの光軸SBと直交する方向(X軸及びY軸方向)へ位置調整される。この位置調整時には、図14(B)に示されるように、弾性連結部材224のボス部176とレーザー駆動基板204との間には、光軸方向に沿って狭い隙間Gが形成される。
取付構造200では、レーザーパッケージ202のX軸及びY軸方向への位置調整完了後に、一対のネジ240をレーザー駆動基板204における一対の挿通穴232内をそれぞれ挿通させ、これら一対のネジ240の先端部を弾性連結部材224における一対のネジ穴228内へ捻じ込むことで、レーザー駆動基板204を弾性連結部材224に連結する。このとき、一対のネジ240を一対のネジ穴228内へそれぞれ均等に捻じ込んで行くことにより、図14(C)に示されるように、弾性連結部材224における一対のスリット溝236に沿った部分がそれぞれ優先的にレーザー駆動基板204側へ撓み変形し、一対のボス部176の先端面がそれぞれレーザー駆動基板204の表面部へ圧接する。更に、一対のネジ240を所定の締め付けトルクが生じるまで捻じ込むことにより、弾性連結部材224がレーザー駆動基板204の表面部にならうように密着固定されると共に、弾性連結部材224の弾性的な復元力に対応する圧力で光源側基準面210が取付基準面220へ圧接する。
すなわち、取付構造200では、一対のネジ240を所定の締め付けトルクが生じるまで捻じ込みレーザーパッケージ202を、弾性連結部材224を介して光源取付部214へ固定することにより、光源側基準面210及び取付基準面220に寸法誤差や光軸SBに対する部分的な傾きがある場合でも、この寸法誤差や傾きが、弾性連結部材224が弾性変形することで吸収されるので、光源側基準面210及び取付基準面220の寸法誤差の影響によりレーザーパッケージ202の位置調整後における姿勢変化の発生を防止できる。
なお、本実施形態の取付構造200では、コリメートレンズなどの光学部品を備えていない光源装置であるレーザーパッケージ202を筐体212に設けられた光源取付部214に取り付けていたが、レーザーパッケージ202と共にコリメートレンズなどの光学部品を備えて光源装置を、弾性連結部材224を介して筐体212に設けられた光源取付部214に取り付けるようにしても良い。このような場合にも、光学部品を備えた光源装置に光源側基準面210を設けることより、本実施形態の取付構造200と同様の効果を得ることができる。