JP3648368B2 - 光源装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数のビームを同時に走査するマルチビーム走査装置の光源装置に関し、たとえば、デジタル複写機やレーザプリンタ等に使用される半導体レーザを用いた光源装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のデジタル複写機やレーザプリンタにおいては、感光体上を単数の光ビームで走査し、画像を形成する方式が一般的であったが、感光体上を複数の光ビームで走査して高速に画像を形成するマルチビーム走査装置が実用化されている。この種のマルチビーム走査装置では、副走査方向に複数の半導体レーザを配置し、これらの半導体レーザから出射された光ビームの各々の光軸を近接させるように合成して一方向に出射する光源装置が使用される。
【0003】
半導体レーザを用いた光源装置においては、その光学特性として、光源装置より射出されるレーザビームの方向性(光軸特性)と、光束の平行性(コリメート特性)が要求される。このような理由により、光源装置は、半導体レーザの発光点とコリメータレンズの相対位置を3軸(x,y,z)方向に調整するのが通常であり、その位置精度はミクロン以下が要求されている。したがって、半導体レーザとコリメータレンズとを有する光源装置においては、上記3軸方向の位置調整および調整された位置での固定が可能な構造でなければならない。
【0004】
コリメータレンズを接着剤で固定する場合、硬化時に接着剤の収縮が発生するので、収縮による光学特性への悪影響をなるべく少なくすることが理想である。特に、光源装置では、z軸方向(光軸方向)の要求精度が高いため、その収縮方向がz軸方向に発生しないように構成することが望ましい。そのため、接着層は光軸(z軸)とほぼ平行な方向に設定するのが普通であり、他の軸(x,y軸)方向についても、調整を容易にするために、なるべく収縮方向がx軸又はy軸の1方向となるように構成することが望ましい。
【0005】
さらに、デジタル複写機やレーザプリンタにおいて、印字の高速化や画素密度切り替えの目的で複数行を同時に走査する光源装置では当然のことながら、複数個の半導体レーザやコリメータレンズにより複数本のレーザビームを発生し、その方向性のビームピッチ精度(行方向、又は、y方向の光軸特性ピッチ精度)が要求される。したがって、接着層の収縮がy方向に発生しないように構成することが望ましい。
【0006】
図30は、特開平5−88061号に記載されている従来例で、1本のレーザビームを発生させる光源装置の断面図である。同図において、半導体レーザを保持するベース101には、段付き孔102が形成されており、ここに半導体レーザ103が圧入固定されている。2本のねじ104,104によってベース101に取り付けられたフランジ105には、段付き孔102と相対する位置に嵌合孔106が形成されており、この嵌合孔106の左端部には、嵌合孔106よりも0.1mm程度大径の入口部106aが形成されている。上記嵌合孔106には、嵌合孔106と0.01〜0.03mm程度のクリアランスを有して筒状のレンズホルダ107が嵌入されており、このレンズホルダ7内にレーザビームを平行光束に変換するためのコリメータレンズ108が保持されている。
【0007】
一方、プリント基板109に穿設された位置決め孔110には、上記ベース1の端面から突出されたガイドピン111が嵌入され、このガイドピン111の先端部分を熱溶融して仮想線111′で示すようにつぶすことにより、ベース101とプリント基板109とを固定している。半導体レーザ103のリード線112はプリント基板109に形成されたリード線挿通孔に通され、プリント基板裏面側において配線用の導電パターンに半田付けされる。
【0008】
上記フランジ105は、半導体レーザ103の発光点がコリメータレンズ108の光軸上に一致するようにx,y方向に位置調整した後、ねじ104によってベース101に固定される。
【0009】
ベース101に取り付けられたフランジ105には、入口部106aにつながる切欠部113が形成されており、半導体レーザ103の光源位置がコリメータレンズ108の焦点位置と一致するようにレンズホルダ107をz軸方向に位置調整した後、この切欠部113から接着剤を注入して内部に浸透させることにより、レンズホルダ107をフランジ105に固定している。
【0010】
アパーチャ形成部材114は、コリメータレンズ108を透過した光束中の中央部付近の平行光束を取り出して成形するための遮蔽キャップであって、光束選択用の孔からなるアパーチャとフランジ105に嵌着するための突起114bとを有しており、この突起114bをフランジ105の切欠部113に嵌着することにより、アパーチャ形成部材114をフランジ105に固定している。
【0011】
以上の構成により、半導体レーザ103から射出されたレーザビームは、コリメータレンズ108により平行光束となり、その中央部付近の光束がアパーチャ114aを通過して外部に射出される。外部に射出されたレーザビームは、図示しないポリゴンミラー等の光偏向器とfθレンズ等の光学系を経由して感光体上に走査され、画像を形成することになる。
【0012】
図31は、特開平7−181410号に記載されたレーザビームが複数本(2本)の光源装置の分解斜視図である。同図に示すように、2つのベース201,201には、図30のベース1と同様の段付き孔が設けられ、レーザビームを射出する半導体レーザ203,203が圧入固定される。ベース201は、4本のねじ204によってフランジ205に取り付けられる。フランジ205には、半導体レーザ203,203の各々に相対する位置に嵌合孔206,206が形成されている。これらの嵌合孔206,206には、嵌合孔と0.01〜0.03mm程度のクリアランスを有する筒状のレンズホルダ207,207が嵌入され、このレンズホルダ207内にレーザビームを平行光束に変換するためのコリメータレンズ208,208が保持されている。
【0013】
ベース201,201は、半導体レーザ203,203の各々の発光点が相対するコリメータレンズ208,208の光軸上に一致するようにx,y方向の位置を調整した後、各々2本のねじ204,204によってフランジ205に固定されることとなる。
【0014】
フランジ205の嵌合孔206,206には、切欠部206a,206aが形成されており、半導体レーザ203の発光点がコリメータレンズ208の焦点位置と一致するようにレンズホルダ207,207をおのおのz方向に位置調整した後、この切欠部206aから接着剤を注入して、内部に浸透させることにより、レンズホルダ207,207をフランジ205に固定する。
【0015】
アパーチャ形成部材209は、コリメータレンズ208,208の中央付近の平行光束を取り出して成形するための部材であって、光束選択用の孔からなるアパーチャ209a,209aが設けてあり、各々のコリメータレンズの光軸とアパーチャ209a,209aの中心とが一致するように設定される。アパーチャから出射される平行光束は、プリズムからなるビーム合成用光学素子210によりほぼ同軸上の2本のビーム211,211に合成され、その後に設置されている画像書き込みのための走査光学系へと導かれる。この際、2本のビーム211,211のビームピッチ(y軸方向の距離)は、画像書き込み面上の副走査方向(y軸方向)のピッチが所望の間隔になるように出射光軸の角度が微調整される。この方法は、ベース201のy軸方向の位置調整に相当する。
【0016】
アパーチャ形成部材209及びビーム合成用光学素子210は、ケース212の内部に保持される。ケース212は、フランジ205の位置決め凸部205aとケース212の図示しない位置決め凹部とで位置合わせされ、フランジ205の各角部に形成された4個のねじ孔によりフランジ205に固定される。ここで、フランジ205の材質は、半導体レーザの放熱性と調整されたビームピッチの変動を極力抑えるために金属(特にアルミ)が用いられる。一方ケース212は樹脂成形部品を用いるのが安価な方法である。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来の複数本のレーザビームを出射する光源装置には、次の問題があった。
【0018】
このような光源装置では、副走査方向(y軸方向、または、画像書き込み上の列方向、つまり、2行同時書き込みの場合の行ピッチ方向)のビームピッチ精度は、非常に高精度が要求される。すなわち、光源装置からの2本のレーザビーム211,211の出射位置及び出射角度(これら出射位置と出射角度とで光軸特性となる)が非常に高精度を要求される。加えて、半導体レーザを用いた光源装置の場合、一般的にコリメータレンズを使用した拡大光学系となるため、半導体レーザとコリメータレンズの相対位置の精度はさらに厳しく、その値は、概ねサブミクロンオーダで要求される。
【0019】
これに対し、従来の光源装置では、金属製のフランジ205と樹脂性のケース211とを4本のねじ204で固定するため、光源装置に温度上昇が発生した場合、図32に示すように、材料の線膨張係数の違いによりフランジ205を湾曲状に変形させてしまう。特に、湾曲がビームピッチ方向(y方向)に発生すると、ビームの平行度が狂い、拡大光学系であるから、わずかな狂いが大きく拡大されてしまう。
【0020】
また、上記の変形の原因となる応力は、x方向とy方向とでは、大きさが異なり、これらの合成された力によりフランジが変形するので、フランジ205はより複雑な変形をすることになる。また、フランジの剛性によっても変化量が異なる。その結果、ビームピッチが複雑に変化し、不良画像の原因となるという問題があった。
【0021】
本発明は、このような問題を解決することを目的としたもので、温度変化によりベースに生じる熱変形力に方向性を持たせ、その影響を小さく抑えることでベースの半導体レーザとコリメータレンズの保持部分の変形を小さくすることができる光源装置を提供することを目的としている。
【0022】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために本発明は、複数の半導体レーザと、これらの半導体レーザを固定するベースと、前記複数の半導体レーザからそれぞれ射出されたビームを合成するビーム合成用光学素子を覆うために上記ベースに取り付けられるケースとを少なくとも有する光源装置において、上記ベースを、複数の半導体レーザを取りつける光源部と、これらの両側に設けた固定部とから構成し、これら光源部と固定部との間は狭小部で接続されており、前記狭小部は複数の半導体レーザのピッチ方向に直交する方向に設けられていることを特徴としている。
【0023】
また、前記固定部には上下両側に取り付けねじの孔を有しており、前記狭小部は、前記上下両側の孔の中心線上に設けられている構成とすることが望ましい。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の光源装置を図面にしたがって説明する。
図1は、本発明の光源装置の分解斜視図で、図2はコリメータレンズを接着する場合のレンズ支持部を含むベースの正面図である。これらの図に示すベース1は、そのほぼ中央にy軸方向に並んだ2つの嵌合孔1a,1aを有し、これらの嵌合孔1a,1aの裏面にはレーザビームを射出する2つの半導体レーザ2,2が圧入固定される。また、ベース1には、コリメータレンズ3,3を直接固定するために、嵌合孔1a,1aの前面に位置してコリメータレンズ3,3の外周円よりわずかに径の大きな(たとえば、0.2mm程度)断面円弧状のレンズ支持部1b、1bが半導体レーザ2,2の各々の光軸と同心に一体成形されている。このレンズ支持部1bの光軸(z軸)方向の長さは、コリメータレンズ3との間に接着剤が余分に充填された場合でも他の部分に付着することがないように、コリメータレンズ3,3の光軸(z軸)方向の厚さ(レンズの厚さ)よりも長くなっている。また、正面から見た形状は、各々半円以下の断面円弧状とされている。
【0025】
なお、この正面から見たときの形状は、位置調整と接着作業の容易性から、図2に示すように60゜程度開いた左右対称な形状とするのが望ましい。さらに、レンズ支持部1b、1bの断面円弧の中心線C,Cは、コリメータレンズ3,3による出射された2本のビームの副走査ピッチ方向(y軸方向)に対してほぼ直角に設定されるのが望ましい。
【0026】
また、本発明のベース1は、ほぼ矩形であり、嵌合孔1a,1a及びレンズ支持部1b,1bを含む全体の構成がベースの中心線Oに対して線対称なっている。これは、次の理由によるものである。
【0027】
コリメータレンズ3,3はベース1から突出したレンズ支持部1bの先端にとりつけられており、ベース1自身が取り付けの際の締め付け力や温度変化で変形した場合、その変形は直接コリメータレンズ3,3の位置変化として表れる。そのため、もし、レンズ支持部1b,1bや嵌合孔1a,1aが非対称位置に配置されていると、ベースの変形によるコリメータレンズ3,3の位置変化も非対称に生じることになる。すると、ベース1の変形前後において、コリメータレンズ3,3の位置関係が不規則に崩れ、これが光学特性の変動に大きく影響し、画像不良の原因となる。これに対し、線対称に配置すれば、両側のコリメータレンズの位置のずれは同等となり、光学特性(特に光軸ピッチ方向)の変動を小さくすることができ、外力に対して安定した高精度の光源装置を提供することができる。
【0028】
アパーチャ形成部材4には、光束選択用の孔からなるアパーチャ4a,4aが設けてある。このアパーチャ形成部材4は、ケース9の内部に保持される。
ビーム合成用光学素子5は、アパーチャ4a,4aから出射された2本のビーム10,10をほぼ同軸のビームに合成する部品であって、プリズムが使用され、これもケース9内にアパーチャ形成部材4と共に保持される。ビーム合成用光学素子5としては、プリズム以外に、ミラーとハーフミラーとを組み合わせた構成としてもよい。
【0029】
コリメータレンズ3は、その組立に際し、図2に示すように、3軸(x,y,z軸)方向に位置調整可能なチャック7で把持され、レンズ支持部1b,1b上に半導体レーザ2,2の各々の光軸と同心に配置される。そして、レンズ支持部1bとコリメータレンズ3の外周面との間に形成される隙間に紫外線硬化型の接着剤を充填して接着層6を形成した後、図示しない検査装置によって光学特性を検査しながらコリメータレンズ3の位置を微調整し、目的の光学特性が得られる位置が決定したら当該チャック7,7を固定し、図2に示すようにコリメータレンズ3,3の上方から接着層6に向けて紫外線照射器8,8より紫外線を照射する。紫外線はコリメータレンズ3を透過して接着層6に達し、接着層6の全体を均等に硬化させる。この接着剤硬化は、2つあるコリメータレンズ3,3に対して各々に実施される。したがって、レンズ支持部1b,1bとコリメータレンズ3,3との間にはその隙間寸法(約0.2mm)からなる厚さ均一で左右対称で厚さ方向が副走査ピッチ方向(y方向)とほぼ直角な接着層6,6が形成され、コリメータレンズ3,3はこの接着層6,6によってレンズ支持部1b,1b上に所定の光学特性を維持した状態で固定される。
【0030】
接着層6,6の光軸方向の長さはレンズ支持部1bの光軸方向の長さより短く、接着層6とベース1の表面とは隙間を保つようにしている。光源装置を使用していて温度が上昇してくると、接着層6が膨張する。このとき、接着層6とベース1の表面とが密着していると、コリメータレンズ3,3は接着層6の膨張により光軸方向に動いてしまう。しかし、接着層とベース1表面との間に隙間があると、接着層6はコリメータレンズの両側に自由に膨張できるので、レンズを動かすことがなく、位置精度を高精度に保つことができることになる。
【0031】
ケース9はベース1の位置決め凸部1cと、ケース9の位置決め凹部(図示せず)で位置合わせされ、ケース9に設けられた4つのねじ孔9aとベース1の4つの孔1dとを重ね合わせ、4本のねじ11を締め付けることによって結合される。
【0032】
本発明の実施例では、ケース9の材料の線膨張係数はベース1の材料の線膨張率とほぼ同一に設定されていることに特徴がある。線膨張率を合わせるのは、まず、両者を同一の素材で形成することが考えられる。また、ベース1をアルミ材料で形成した場合、ケース9の線膨張率をアルミ材料とほぼ同じ2〜2.3×10-5(1/℃)にすることが望ましい。このような線膨張率を有する樹脂材料としては、たとえば、ガラス繊維入りの不飽和ポリエステル樹脂がある。また、ガラス繊維入りの樹脂でガラスの繊維方向が発生する場合には、繊維方向をビームピッチ方向(y方向)にし、ベース1の線膨張係数と同等にすることが考えられる。
【0033】
ケース9より射出されたほぼ同軸の2本のビーム10,10は、その後に設置されている画像書き込みのための走査光学系へと導かれる。この際、2本のビームのピッチは、画像書き込み面上の副走査方向のピッチが所望の間隔になるように出射光軸の角度が微調整される。この方法は、前述したコリメータレンズの位置調整におけるy方向の位置調整に相当する。
【0034】
図3及び図4は、ベースのレンズ支持部を連結した実施例である。図31に示す光源装置では、組立当初に要求される光学特性を満たしたとしても、デジタル複写機やレーザプリンタに搭載すると、取り付けによる内部応力や、機内温度の変化による膨張や収縮力に起因する変形が生じ、図32に示すように、フランジ205を湾曲させてしまう。本発明が対象とする光源装置は、一般に拡大光学系となるため、湾曲などの変形による各部品の位置に変化が生じると、たとえそれが僅かであっても、感光体の書き込み位置に達すると拡大されて大きなずれとなり、光学特性に大きな影響を及ぼす。特に、y方向の湾曲は、ビーム211,211の平行度を損なうので、その影響が大きい。
【0035】
この図3、図4の例は、この問題を解決するもので、光源装置自体を変形しにくい構造にしたものである。実際に光源装置を組み込む本体側の設定を変更すると、他にも数多くの部分に影響を及ぼし、多大なコストが発生するおそれもある。そのため、図3、図4のように変形しにくい構造にすることは、実用上他への影響が少なく、有利である。
【0036】
図3に示すベース21は、図1のベース1と同様に半導体レーザ2,2を取りつける嵌合孔21aを有しており、ただ、コリメータレンズ3のレンズ支持部1b,1bがつながって連結支持部21bとなっている点が特徴である。連結支持部21bは、図1のレンズ支持部1b,1bと同じレンズ支持部21b1,21b1を直線的な連結部21b2で接続して一体化したものである。この直線形状の連結部21b2は、ビームピッチ方向(y方向)とほぼ平行で、ピッチ方向の厚さを均一にしており、また、レンズ支持部21b1と連結部21b2との間には、光軸方向に延びる溝状の逃げ部21b3を形成している。この逃げ部は、コリメータレンズ3を固定する際に充填される接着剤が連結部21b2に達するのを防止するために形成されたものである。レンズ支持部の形状(接着剤が塗布される面の形状)は、上記逃げ部21b3を境にして同一形状をしている。
【0037】
連結部21b2がy方向に形成されているので、図32で示したようなy軸に沿って湾曲する変形を防ぎ、図1に示す2本のビーム10,10の間隔や角度の狂いを効果的に防止することができる。
【0038】
図4のベース22は、2つのコリメータレンズ3,3の光軸を結ぶ線がy軸に対して傾斜している例である。図3に示す2つのコリメータレンズ3,3がy軸と平行に配置されたベース21と、図4のようなベース22との違いは、詳しい説明は省略するが、これらの光源装置を使用する書き込み光学系の構造の相違によるものである。このようなベース22では、連結支持部22bも傾斜して配置されることになる。そして、この連結支持部22bは、図1のレンズ支持部1bに対応するレンズ支持部22b1,22b1を直線的な連結部22b2で結合して一体化したものとなっている。この実施例では、連結部22b2は若干肉厚が薄く、逃げ部22b3は段差状に形成されている。連結部はy軸と平行に形成するのが最も効果的ではあるが、図4のように若干傾斜しても差し支えない。
【0039】
図5は、ベース1とケース9とを一カ所の固定部で結合した実施例を示す。ほとんどが図1に示した光源装置と共通しており、同一符号を付して説明を省略する。図31に示すフランジ205とケース212とは、フランジ205の四隅に穿設された孔205bにねじを挿通してケース212に固定する。そのため、光源装置の温度が上昇し、フランジ205やケース212が膨張した場合、双方の線膨張率に差があると、フランジ205に図32に示すような湾曲ひずみが発生し、2本の光束211の間隔や平行度(ビームピッチ精度)が狂ってしまう。
【0040】
これに対し、図5の実施例では、ベース1の中央付近に1つだけ孔1dが開けられ、ケース9にはこの孔1dに対応する雌ねじ孔9aを形成した構成となっている。そして、取付部材としてのねじ11が孔1dを挿通してケースの雌ねじにねじ込まれ、結合する構成となっている。
【0041】
このようにベース1とケース9とは一カ所で固定されるので、ベースとケースとの間に線膨張率の相違があっても、両者はそれぞれ自由に膨張・収縮することができ、ベースに湾曲ひずみが発生することがなく、2本のビーム10,10のビームピッチ精度を高精度に維持することができる。また、ケースやベースのそれぞれをどのような材質にしてもよくなるので、安価な樹脂成型品を採用し、製造コストを下げることができる。また、取付部材11の孔1dを、半導体レーザ2,2のy方向の中心線C,Cの中心を通る中央線C′上に配置すれば、ベースを変形させることがなく、かつ、取り付け時にベース側とケース側の相対位置の安定性が向上し、ビームピッチを高精度に保つことができる。
【0042】
図6、図7、図8はレンズ支持部1bから光学素子支持部23を延設し、ベース1と一体的にビーム合成用のビーム合成用光学素子5を取り付けられるようにした実施例である。
【0043】
図31に示す従来の光源装置では、ビーム合成用の光学素子210がケース212に保持された後、フランジ205に取り付けられていた。そのため、ビーム合成用の光学素子210の位置決め誤差がビーム(光束211)のピッチ精度に影響を与えてしまうという問題があった。また、ケース212は、コスト上からは安価な樹脂成形品で構成することが望ましいが、一般的に樹脂成型品は温度変動による変形が大きく、環境温度の変動に伴う膨張・収縮での位置ずれ(特にビームピッチ方向の変動)が特に大きく影響してしまう問題があった。図6の実施例は、このような問題を解決するものである。
【0044】
図6に示すように、この実施例では、両側のレンズ支持部1b、1bを延長して光学素子支持部23をベース1と一体的に形成している。アパーチャ形成部材14は、ビーム合成用光学素子5の後方に取り付けられるので、アパーチャ14aは1つだけである。
【0045】
ビーム合成用光学素子5は光学素子支持部23の突き当て基準面23aで位置決めされ、面23b上に固定される。このときビーム合成用光学素子5は光学素子支持部23の面23b上に接着層24を介して接着される。このようにすることによって、温度変化により接着層24が伸縮しても、y方向(2本のビーム10,10のピッチ方向)に変化を起こさないようにすることができる。接着剤としては、信頼性に優れた光硬化型接着剤が望ましく、製造工程の容易さからはコリメータレンズ3を固定する接着剤と同一のものが望ましい。この後、図2で説明したのと同様にしてコリメータレンズ3,3を位置決めし、接着固定する。
【0046】
この結果、位置精度の要求が高い光学部品である半導体レーザ2,2、コリメータレンズ3,3及びビーム合成用光学素子5は全てベース1により保持されることとなる。したがって、要求される組立精度を達成し易く、かつその精度を維持し易い。また、この光学素子支持部23は、y方向に形成されることとなるので、y方向に沿って生じる湾曲ひずみ(図32参照)を効果的に防止でき、ケースが温度変化による収縮してもビームピッチ精度に影響を受けないようになる。なお、図示の実施例では光学素子支持部23をレンズ支持部1bと一体的に形成したが、別個のものとしてベース1から独立した状態で立設してもよい。
【0047】
図9、図10、図11は、アパーチャ形成部材を弾性部材としてベース1側に取り付けられるようにした実施例である。図9は光源装置の分解斜視図、図10はベース1周辺の組立状態を示す斜視図、図11は図10の正面図である。
【0048】
図31の従来の光源装置では、アパーチャ形成部材209はケース212に保持された状態でフランジ205に取り付けられるため、アパーチャ209aの位置決め誤差が出射位置誤差につながるという問題があった。また、ベース201に半導体レーザ203を取り付け、フランジ205にコリメータレンズのレンズホルダ207及びコリメータレンズ3を固定し、光学特性を調整した後、アパーチャ形成部材209を取り付けるため、2つのアパーチャ209aのピッチにばらつきがあると、アパーチャ形成部材209を取り付け後、光学特性に誤差が生じることになり、ビームピッチ精度にも影響を与えてしまうという問題もあった。
【0049】
そこで、図9、図10、図11に示す実施例では、上記の問題を解決するために、アパーチャ形成部材25をプラスチックの成型品などで製造し、弾性に富んだ断面がコ字形にし、ベース1の光学素子支持部23に取り付けられたビーム合成用の光学素子5の外側から挟むようにして取り付けるようにしている。アパーチャ形成部材25のアパーチャ25aは、ビームが合成された後の位置に配置されるため、1つだけでよい。また、アパーチャ25aの両側の対向する挟持片には、内側に突出したリブ状の突起25b,25bが形成され、光学素子支持部23にもこの突起が嵌合する溝23cが形成されていて、簡単に外れることがないようにすると同時に、挟持力の増加を図っている。
【0050】
以上の構成とすれば、アパーチャ形成部材25は光学特性を調整した後のベース1に取り付けられるので、取り付け時にセットされた位置を保持でき、出射位置を高精度に保ち、ビームピッチへの影響も生じないようになる。
また、アパーチャ形成部材の位置決めを、部品点数を増加することなく、容易に決めることができ、ケースの温度変化による変形がアパーチャのピッチに影響しないので、ビームピッチ精度も影響を受けず、ケースを安価な樹脂成形品で構成することができ、光源装置を安価に提供することができる。
【0051】
図12、図13、図14はアパーチャ形成部材26をベース1と一体的に形成した実施例である。図12は光源装置の分解斜視図、図13はベース1周辺の組立状態を示す斜視図、図14は図13の正面図である。この実施例では、アパーチャ形成部材26を光学素子支持部23に一体的に形成し、コリメータレンズ3の中央に位置するように2つのアパーチャ26a,26aを開けている。
【0052】
アパーチャ形成部材26は、ベース1に直接立設してもよく、あるいは、板状の素材からアパーチャ26aが穿設されたアパーチャ形成部材26を別個に形成し、接着剤などで光学素子支持部23に接着固定する構成としてもよい。
上記の構成とすれば、アパーチャ形成部材がベースと一体構造であり、アパーチャを通過し整形された光束による光学特性を調整するので、アパーチャの精度誤差及び位置誤差を吸収した状態で光学特性を保証でき、高精度の光源装置を提供できる。
【0053】
また、アパーチャ形成部材を独立した部品から削除できるので部品点数が減少できるとともに、ケース側の精度を必要とせず、安価な樹脂でケースを作ることができ、全体として光源装置を安価に製造することができる。
【0054】
図15は、ビーム合成用の光学素子5の位置を調整できる機構を付加し、ビーム10,10の間隔(ビームピッチ)を微調整できるようにした実施例で、組み立てた光源装置の断面図である。
【0055】
本発明の光源装置は、前述したように、その光学特性として光源装置より射出されるレーザビーム方向性(光軸特性)と光束の平行性(コリメート特性)が要求される。
【0056】
しかしながら、実際に接着固定する場合には、コリメータレンズを所望する位置に持ってくることができたとしても、接着層の硬化収縮やねじの締め付けによる変形等によりレンズの位置が不確定的に変動するため、接着固定後の光学特性は非常に不安定にならざるを得ない。
【0057】
図15の実施例は、このような問題を解決するためのもので、ケース9の右端にはベース1がはめ込まれ、ベース1には、半導体レーザ2,2とコリメータレンズ3,3とが固定され、アパーチャ形成部材27にはアパーチャ27a,27aが穿設されている。アパーチャ形成部材27は、弾性のある素材でできた薄板形状であり、中央に突起27bを有している。
【0058】
前述したようにプリズムを用いたビーム合成用光学素子5は、ケース9内にあって、図の左下を支持座9aに当接し、右側中央はアパーチャ形成部材27の中央に形成された突起27bの先端に弾性支持され、左上はケース9を貫通したねじからなる調整手段28の先端に当接している。このうち、支持座9aは固定された支点であり、回転中心となる。調整手段28は、ビーム合成用光学素子の回転角を微調整する調整手段としての機能があればよく、ねじに限定されない。
【0059】
ここで、ケース9の支持座9aは平面形状となっているため、ビーム合成用光学素子5はここで線接触するとともに、ここを中心としてy−z平面内で(又は、x軸を中心として)回転可能となる。
【0060】
調整手段28を回転すると、調整手段28のケース9内に突出する長さが変化し、ビーム合成用光学素子5が、支持座9aに当接している角部を中心にy−z面内で微小な角度で回転する。この回転によって、ビーム合成用光学素子5の第1反射面5aと第2反射面5b間のy方向の距離が変化するため、2つの光束210,210のy方向の距離(副走査方向のピッチ)が変化する。そこで、調整手段28としてのねじを左右に回転して光束210,210間の距離を所望の値になるように調整することができる。
【0061】
この回転によって変化するのはビームのピッチ方向の間隔(y方向の間隔)だけであり、x方向や光束の平行性(コリメート性)には影響しない。したがって、ビーム合成用光学素子の回転機構により、他の光学特性に影響を与えずにビームピッチのみを調整することができる。以上の調整は、2本のビームの場合のみに限定されるものではなく、3本以上のビームについても同様に調整可能である。
【0062】
また、調整手段28のねじの代わりに弾性部材を設け、突起27bに調整ねじを設ける構成としても同じ目的を達成できる。この場合、アパーチャ形成部材27は弾性変形しにくい構成とすることが望ましい。また、突起27bの位置にある調整ねじを光源装置の外部から回転させるため、たとえば、ベース1に貫通孔を形成し、そこからドライバを差し込んで調整手段28としてのねじを回転できるようにするとよい。
【0063】
図16から図19に示すのは、ベースの形状を工夫することで、温度変化によるベースの変形を小さく抑えることができる実施例である。
図31に示す従来の光源装置では、金属製のフランジ205と樹脂性のケース211とを4本のねじ204で固定するため、光源装置に温度上昇が発生した場合、図32に示すように、材料の線膨張係数の違いによりフランジ205を湾曲状に変形させてしまう。特に、湾曲がビームピッチ方向(y方向)に発生すると、ビームの平行度が狂い、拡大光学系であるから、わずかな狂いが大きく拡大されてしまう。
【0064】
また、上記の変形の原因となる応力は、x方向とy方向とでは、大きさが異なり、これらの合成された力によりフランジが変形するので、フランジ205はより複雑な変形をすることになる。また、フランジの剛性によっても変化量が異なる。その結果、ビームピッチが複雑に変化し、不良画像の原因となるという問題があった。
【0065】
図16から図19に示すのは、この問題を解決するための実施例である。図16は、光源装置の分解斜視図、図17はベースの拡大斜視図、18はベースの正面図、図19は図17の一部破断した下面図である。
これらの図に示すベース30は、両側の固定部30a,30aと、中央の半導体レーザ2,2とコリメータレンズ3,3を固定した光源部30bとを剛性の低い狭小部30c,30cで接続した構成となっているが、換言すれば、図1のベース1に狭小部30cを形成した構成で、他の構成は図1のベースと同じである。また、光源装置のベース30以外の部分も図1の実施例と変わりはない。
【0066】
狭小部30cは、固定部30aの上下両側に穿設された取り付けねじの孔30d,30dの中心であり、x軸方向と一致している。狭小部30cの厚さは固定部30aや光源部30bと同じ厚さになっているが、薄くしてもよい。固定部30aが、図示の実施例では上下対称な形状であるが、非対称形状の場合も、狭小部30cは、上下両側の孔30d,30dの中心に形成するとよい。
【0067】
ベース30よりもケース9の線膨張係数の方が大きい場合、周囲の温度が上昇すると、図18に示すようにベース30の表面側からx,y方向にベース30を伸ばす力f1,f2が作用するが、中央の光源部30bには、狭小部30cを介してf3の引っ張り力が作用するのみである。
【0068】
したがって、この場合には従来のように複雑な反りは発生せず、狭小部30cが局部的に変形するだけで、光源部30bの反りはx,yいずれの方向ともに防止できるか、著しく低減できることになる。特に、y方向の変形は、ビームピッチに与える影響が大きいが、この実施例によればy方向の変形はほとんど無くなるので、ビームピッチを高精度に保つことができる。
【0069】
上記の実施例では狭小部30cは左右に1カ所づつであったが、装置の制約や必要性などを考慮して左右いずれか1方のみとしたり、左右合わせて3カ所以上にするなど、種々の変更が可能である。
【0070】
図20は、ベース1の裏側にバックプレートを設け、このバックプレートとケースの線膨張率を等しくした実施例である。
上述したように、ベース1はアルミ材料で形成され、ケース9は合成樹脂の成型品を使用するので、線膨張率が異なる。また、ベース1とケース9は、四隅をねじ11で固定している。そのため、雰囲気温度が上昇すると、図32で説明したのと同様にベース1が湾曲することになり、ビームピッチが狂って画像不良の原因となる。
【0071】
これに対し図20の実施例は、ベース1のケース9と反対側にバックプレート31を設けている。バックプレート31は、ケース9とほぼ同じ線膨張率を有する素材、たとえば、同一の素材から形成されたもので、ベース1と同じ大きさの四角な板状で、四隅にはねじ11の挿通される孔31aが穿設され、中央には半導体レーザ2,2を避けるための2つの孔31bが穿設されている。
【0072】
ベース1は、x、y方向の大きさがほぼ等しいケース9とバックプレート31とにサンドイッチ状に挟まれ、四隅をねじ11で締め付け結合される。光源装置の周囲の温度が上昇した場合、樹脂製のケース9とアルミ系の金属製のベース1とではケースの方が膨張し易いので、従来はベース1が湾曲してしまった。ところが、図20の実施例では、ベース1は線膨張率が同じケース9とバックプレート31とに挟まれているので、ベース1の両側のケース9とバックプレート31とは同一の膨張をすることとなり、ベース1の両側の変形がベース1の変形を相殺してベース1は湾曲することがなくなる。したがって、ビームピッチが狂うことが無くなり、ビームピッチを高精度に保つことが可能となる。
【0073】
なお、ケース9とバックプレート31との曲げ剛性が大きく相違すると、ベース1に湾曲歪みが生じる場合もあり得る。そのような場合を考慮して、バックプレートの曲げ剛性をケースの曲げ剛性とほぼ同程度にしておくことが望ましい。
【0074】
図21はベースに半導体レーザを圧入する際に、ビームピッチ方向(y方向)のずれが生じにくい圧入構造を示す実施例で、ベース1を裏側(半導体レーザを挿入する側)から見た図である。
【0075】
ベース1の中央には、2つの嵌合孔1a,1aが穿設されているが、この嵌合孔の裏面には、半導体レーザ2の金属製の鍔部が嵌入するための円筒状のリブ1eが形成されている。本発明の実施例は、このリブ1eのビームピッチ方向中心線Y上に割り溝1fを円筒の高さ方向に形成したものである。図示の実施例では、1つのリブ1eに対し、中心線Y上(y方向)に2つの割り溝1fを形成している。
【0076】
円筒状のリブ1eの内径を半導体レーザ2の外形より若干小さめにし、割り溝1fが広がることで半導体レーザと嵌合するようになる。そして、嵌合された後は、割り溝1fが元に戻ろうとするので、半導体レーザはより強い力で把持され、取付位置を高精度に保持できるようになる。
【0077】
ところで、リブ1eの内径が半導体レーザ2の外形より若干小さい場合、半導体レーザ2がリブ1e内に進入したとき、前述したとおり割り溝1fが広がることで半導体レーザ2との嵌合が行われる。このとき割り溝1fの広がりが左右均等に行われれば問題無いが、この広がり量が溝の左右で等しいとは限らず、等しくなければ、割り溝1fの幅の中心位置がずれ、直接半導体レーザの位置がずれることになる。また、このずれ量は個々のケースで異なり、予め予測することができない性格のものである。もし、このずれがy方向に生じると、ビームピッチの誤差となり、画像不良に結びつく。しかし、このずれがx方向に生じた場合は、読みとりや書き込み等のタイミングを修正すればよいので、画像不良の問題は生じない。したがって、このずれがx方向に生じるようにしたい。
【0078】
そこで、割り溝1fが1つのリブ1eの対向する位置に2つ形成される場合は、図21のようにビームピッチ方向中心線Y(y方向)上に配置した。このようにすると、ずれはx方向に生じ、y方向、すなわち、ビームピッチへの影響を排除できることになる。
【0079】
図22(a),(b)のように、割り溝1fがリブ1e1つに1カ所の場合は、割り溝1fが広がると、リブ1eの変形は、主として、図の矢印のように、割り溝1fと反対方向で、割り溝1fの幅方向と直交する方向に発生する。このような場合は、図22(a)のようにリブ1eのビームピッチ方向中心線Yの一方側((a)では上方)に揃えて形成するとよい。(a)とは逆に下方に揃えてもよい。このようにすれば、y方向のずれが上下のリブで同じ方向に発生するので、相殺され、ビームピッチ(y方向)のずれは小さくなるからである。
しかし、図22(b)のように、一方の割り溝1fはリブ1eの上に、他方は下にというように形成すると、y方向のずれが逆方向に生じ、ずれが加算されて大きくなり、ビームピッチに影響を与えることになる。
【0080】
図23は、円弧状の接触面を有するレンズ支持部1bの中心をコリメータレンズ3,3の中心から外側に若干量(δ)ずらした実施例である。図24は図23のA−A断面図、図25(a)は接着層の拡大図、(b)は膨張量の分解図、(c)はコリメータレンズのビームピッチ方向の膨張による移動を説明する図である。
【0081】
図2で説明したように、レンズ支持部1bとコリメータレンズ3とは、紫外線硬化型の接着層6により接着されている。ところが、硬化後の接着層6の線膨張係数はベース1の線膨張係数よりかなり大きい。
【0082】
一方、図24及び図25により説明すると、ベース1の温度が上昇した場合、ベース1は膨張し、コリメータレンズ3,3間の距離Lがベース1の外側方向に片側でΔL/2膨張する。これに対し、図25(a)に示すように、接着層6も仮想線6′に示すように膨張するが、接着層6はレンズ支持部1bによって外側への膨張を制限されるので、コリメータレンズ3の中心に向かって膨張する。言い換えると、接着層6の厚さがΔSだけ内側に厚くなる。このとき、接着層6の中心がコリメータレンズ3の中心から図示のようにδだけ外側にずれていると、接着層6の膨張による厚さの増加ΔSは、図25(b)に示すように、ベース1の中心に向かう成分ΔS′を持つことになる。すなわち、接着層6はビームピッチ方向の内側に向かって膨張する。
【0083】
図24及び図25(c)で示すように、コリメータレンズ3,3間の距離LがΔL(片側ではΔL/2)伸びる方向と、接着層6の膨張によりレンズをy方向にΔS′移動させる方向とは、逆向き、つまり相殺する方向となる。
【0084】
言い換えると、接着層6の中心をベースの外側に適当な量(例えば、δ)ずらすことで、温度変化によるコリメータレンズ3,3間の距離の変化は本来の伸び(ΔL/2)から接着層6の伸びのy方向成分ΔS′を引いたものとなり、温度上昇による膨張を補償してビームピッチ精度が要求される範囲内に保ったり、あるいは、全く変化しないようにしたりすることも可能となる。
【0085】
図26及び図27は、ケースにスリットを形成してケースの剛性を下げ、膨張の際にベースを湾曲させるのを防止できるようにした実施例である。
図32で説明したように、ベース1がアルミ系の金属製で、ケース9が樹脂成型品の場合、線膨張率の相違から、光源装置が高温下に置かれると、ケース9が大きく膨張し、ベース1を湾曲させ、これによって、ビームピッチが狂い、画像不良になるという問題があった。
【0086】
この実施例は、ケース33の両側にスリット33aを形成したものである。このような構成によって、ケース33の曲げ剛性は低下し、図27に示すようにケース33が膨張しても、ケース33の変形はベース1を湾曲させるまでには至らず、ベース1は真っ直ぐな状態を保つことができる。特に、スリット33aをケース33のビームピッチ方向(y方向)に延びる両辺に形成すれば、y方向の湾曲を効果的に防ぐことができる。したがって、ビームピッチが狂うこともなく、画像不良を起こさないようにすることができる。
【0087】
図28はベース1とケース9との結合部に逃げを持たせてケース9が膨張する際の熱応力がベース1に伝わらないようにした実施例である。
図30の従来例で説明したように、フランジ205とケース212とは、四隅をねじで締め付け固定されている。そのため、ケース212の熱応力がフランジ205に伝達されてフランジ205が湾曲するという問題があった。
【0088】
これに対し、図28(a)の実施例は、ベース1に穿設されるねじ11用の孔1dの4つのうち3つを長孔からなる長径孔1fとし、この長径孔1fに挿通されるねじ11とベース1との間に、ゴムなどの弾性材32を挟持させ、光軸方向のガタツキを抑えている。
【0089】
このような構成にすると、ケース9とベース1とは、一点のみで固定され、他のねじ11とはx−y平面内で長径孔1fとの隙間の範囲内で、移動が自由にできる状態となる。したがって、ケースとベースとの素材が相違して熱膨張率の異なり、光源装置の温度が上昇して、一方(ケース9)が膨張しても、長径孔とねじとの隙間がある間は、ベース1の湾曲を防止することができる。実施例の長径孔1fを、1dより大きな丸孔とすることも可能である。
【0090】
なお、前述したように、ビームピッチの精度はy方向には非常に厳しいが、x方向はそれほど厳しくない。そこで、図28(b)のように、x方向に並んだ2組の孔の一方の組の2つの孔を上側に示すように従来どおりの孔1dとし、x方向に並んだ他方の2つの孔を下側に示す長径孔1fとしてもよい。
【0091】
図29はねじ11の代わりに樹脂製の弾性突起34を使用した例である。弾性突起34は、ケース9の雌ねじが形成された位置にケースと一体的に成形され、ケース9の端面から垂直に、かつ、環状に配置された複数(図では4個)の柱部34aと、これら柱部の各先端に形成された係止部34bと、係止部34bの先端に形成された案内斜面34cとからなっている。他方のベース1には(a)と同様の長径孔1fが開けられている。また、複数の柱部34aで形成する弾性突起34の胴部の径は長径孔1fの長径より小さいが、係止部34bの外径は長径孔1fの短径より大きくしている。
【0092】
ベース1をケース9に取り付けるには、ベース1をケース9に重ね合わせて各長径孔1fに各弾性突起34の先端を挿入し、ベース1をケース9に押しつけると、弾性突起34の案内斜面34cにより複数の柱部34aが一斉に内側に撓み、弾性突起34は長径孔1fを通過し、頭部の係止部34bがベース1を貫通して反対側に突き出す。これと同時に、柱部34aは内側に撓んだ状態から真っ直ぐな状態に復帰する。係止部34bの径が長径孔1fの径より大きいので、ベース1はケース9から外れることはない。また、係止部34a自身の弾性によりベース1はケース9にばね付勢された状態で光軸方向に押しつけられる。
【0093】
ベースとケースは4カ所全てでこの弾性突起34により係止することとしてもよく、一本ないし2本はねじ11で止めてもよい。ただし、2本の場合は、x方向に並んだ2本とすることが望ましい。
【0094】
【発明の効果】
以上に説明したように本発明によれば、ベースを半導体レーザを取りつける光源部と、これらの両側に設けた固定部とから構成し、これら光源部と固定部とを狭小部で接続したので、温度変化などによりベースに発生した変形は、剛性の低い狭小部に1方向の変形として局部的に生じるだけなので、半導体レーザやコリメータレンズの相対的な位置への影響をほとんど無くすことができる。
【0095】
さらに、上記狭小部が、複数の半導体レーザのピッチ方向と直交する方向に設けられた構成とすれば、狭小部に生じる変形がビームピッチ方向には生じなくなり、ビームピッチ方向の湾曲がなくなるので、高精度のビームピッチを維持できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光源装置の構成を示す分解斜視図である。
【図2】ベースにコリメータレンズを固定する方法を説明する正面図である。
【図3】レンズ支持部が結合したベースの図で(a)は斜視図、(b)は正面図である。
【図4】レンズ支持部がy軸に対して傾斜しているベースの正面図である。
【図5】光源装置のベースとケースとを1箇所の取付部で結合する実施例の分解斜視図である。
【図6】レンズ支持部にビーム合成用のビーム合成用光学素子を固定する保持部を形成した実施例の分解斜視図である。
【図7】図6の実施例のベース部分の斜視図である。
【図8】図7の正面図である。
【図9】アパーチャ形成部材を弾性部材とし、ビーム合成用光学素子に取り付ける実施例の分解斜視図である。
【図10】図9のベース部分の斜視図である。
【図11】図10の正面図である。
【図12】アパーチャ形成部材を、ベースと一体に形成した実施例の分解斜視図である。
【図13】図12のベース部分の斜視図である。
【図14】図13の正面図である。
【図15】ビーム合成用光学素子の回転調整装置を設けた光学装置の縦断面図である。
【図16】ベースに狭小部を形成した実施例の分解斜視図である。
【図17】図16のベースの斜視図である。
【図18】図17のベースの正面図である。
【図19】図17の一部破断した下面図である。
【図20】ベースにバックプレートを張り合わせる実施例の分解斜視図である。
【図21】半導体レーザを圧入するリブに溝を形成したベースの裏面から見た斜視図である。
【図22】溝の配置を説明する図である。
【図23】コリメータレンズの接着部の中心をビームピッチ方向の外側にずらしたベースの正面図である。
【図24】図23のA−A断面図である。
【図25】(a)は接着層の拡大正面図、(b)は接着層の膨張の方向を説明する図、(c)は、熱膨張によるベースと接着層の膨張が相殺されてコリメータレンズ間の距離に表れることを説明する図である。
【図26】スリットを設けたケースの斜視図である。
【図27】図26のケースを使用した光源装置において、温度が上昇した場合のベースの横断面図である。
【図28】ベースのねじを挿通する孔を長径孔にした実施例を示す図で、(a)は光源装置の断面図、(b)ベースの正面図である。
【図29】ベースとケースの固定に樹脂製の弾性突起を使用した例を示す要部断面図である。
【図30】半導体レーザが1つの従来の光源装置の断面図である。
【図31】半導体レーザが2つの従来の光源装置の分解斜視図である。
【図32】熱膨張によりベースが湾曲した状態を示すベースの側面図である。
【符号の説明】
2 半導体レーザ
3 コリメータレンズ
5 ビーム合成用光学素子
9 ケース
10 ビーム
30 ベース
30a 固定部
30b 光源部
30c 狭小部

Claims (2)

  1. 複数の半導体レーザと、
    これらの半導体レーザを固定するベースと、
    前記複数の半導体レーザからそれぞれ射出されたビームを合成するビーム合成用光学素子を覆うために上記ベースに取り付けられるケースとを少なくとも有する光源装置において、
    上記ベースを、複数の半導体レーザを取りつける光源部と、これらの両側に設けた固定部とから構成し、これら光源部と固定部との間は狭小部で接続されており、
    前記狭小部は複数の半導体レーザのピッチ方向に直交する方向に設けられていることを特徴とする光源装置。
  2. 前記固定部には上下両側に取り付けねじの孔を有しており、
    前記狭小部は、前記上下両側の孔の中心線上に設けられていることを特徴とする請求項1記載の光源装置。
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