JP2009167526A - 物質精製法及び物質精製装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】溶融物質中に冷却体を浸漬し、その冷却体の表面に前記物質の結晶を晶出、成長させる精製法である。冷却体の周速が700mm/s以上8000mm/s未満となるように冷却体を回転させながら溶融物質中に浸漬させていき、且つ溶融物質に浸漬するときの冷却体の温度を、前記物質の固相線温度×0.7以上とする。
【選択図】図1
Description
図1(a)に示すように、前記回転冷却体3を回転させながら溶湯保持炉1内の溶融金属2に浸漬し、内部に冷却流体を供給しつつ冷却体の回転を持続すると、図1(b)に示すように、冷却体1の周面にアルミニウムの結晶つまり精製アルミニウム5がゆっくり晶出する。
この場合、冷却体3を溶融アルミニウム2中に浸漬するときの冷却体3の外周表面の周速が、700mm/s以上、8000mm/s未満の範囲である必要があり、より好ましくは1500mm/s以上、6000mm/s未満の範囲である。ここでいう周速とは冷却体3の外周表面の移動速度そのものをいい、溶融アルミニウム2の移動速度とは無関係な値である。
即ち、冷却体3に晶出したアルミニウムと溶湯との界面における相対運動が停止してしまうため、冷却体3の冷却のための冷却媒体の供給を停止したとしても、停止前までに晶出した精製アルミニウム5の表面に、冷却体3の回転停止後引き上げが完了するまでに、不純物濃度の高いアルミニウムが晶出してしまう上、この晶出したアルミニウムの表面にさらに不純物濃度の高い溶融アルミニウムが付着したりするため、精製効率が悪化する恐れがある。
上記の組成のアルミニウム溶湯を精製保持炉内に入れ、精製炉ヒーターを調整し、665℃の温度に保持した。その後、温度を470℃(アルミニウムの固相線温度×0.7)に調整した上端部の外径が150mm、下端部の外径が100mm、長さ200mmのテーパー形状の回転冷却体を回転させながら、冷却体の下端部から上170mmの位置まで溶融アルミニウム中に浸漬した。浸漬時の冷却体の浸漬部分の最下端部における外周面の周速は2100mm/sに設定した。
冷却体をそのまま周速2100mm/sで回転させながら、7分間、回転冷却体周面に精製アルミニウムを晶出させた。
その後、冷却体を回転させながら溶融アルミニウムから引き上げた。引き上げたときの冷却体に晶出した精製アルミニウムの最下端部の表面の周速を2100mm/sに設定し、冷却体の下端部が溶融アルミニウムから完全に引き上げられるまで、その回転速度を維持した。なお、回転冷却体内には圧縮エアーを供給して冷却させた。
冷却体の回転を停止して溶融アルミニウム中から引き上げる以外は実施例1と同じ条件で精製を行った。
冷却体に晶出しているアルミニウム精製塊の重量、精製後のFe、Siの濃度及び精製効率
を表1に示す。
溶湯への浸漬時の冷却体の浸漬部分の最下端部における外周面の周速を1000mm/sに設定したこと、及び冷却体の回転を停止して溶融アルミニウムから引き上げたこと以外は実施例1と同じ条件で精製を行った。
冷却体に晶出しているアルミニウム精製塊の重量、精製後のFe、Siの濃度及び精製効率
を表1に示す。
冷却体に晶出した精製アルミニウムの最下端部における溶湯との界面の周速を1000mm/sに設定して、冷却体を溶融アルミニウムから引き上げたこと以外は実施例1と同じ条件で精製を行った。
冷却体に晶出しているアルミニウム精製塊の重量、精製後のFe、Siの濃度及び精製効率を表1に示す。
冷却体の溶融アルミニウムへの浸漬時の温度を530℃(アルミニウムの固相線温度×0.8)に設定した以外は実施例1と同じ条件で精製を行った。
冷却体に晶出しているアルミニウム精製塊の重量、精製後のFe、Siの濃度及び精製効率
を表1に示す。
冷却体の溶融アルミニウムへの浸漬時の温度を600℃(アルミニウムの固相線温度×0.9)に設定した以外は実施例1と同じ条件で精製を行った。
冷却体に晶出しているアルミニウム精製塊の重量、精製後のFe、Siの濃度及び精製効率を表1に示す。
冷却体を回転させることなく溶融アルミニウムに浸漬し、回転を停止して引き上げたこと以外は実施例1と同じ条件で精製を行った。
冷却体に晶出しているアルミニウム精製塊の重量、精製後のFe、Siの濃度及び精製効率
を表1に示す。
溶湯への浸漬時の冷却体の浸漬部分の最下端部における外周面の周速を350mm/sに設定したこと以外は比較例1と同じ条件で精製を行った。
冷却体に晶出しているアルミニウム精製塊の重量、精製後のFe、Siの濃度及び精製効率
を表1に示す。
冷却体に晶出した精製アルミニウムの最下端部における溶湯との界面の周速を350mm/sに設定して、冷却体を溶融アルミニウムから引き上げたこと以外は比較例1と同じ条件で精製を行った。
冷却体に晶出しているアルミニウム精製塊の重量、精製後のFe、Siの濃度及び精製効率
を表1に示す。
冷却体の溶融アルミニウムへの浸漬時の温度を300℃に設定した以外は実施例1と同じ条件で精製を行った。
冷却体に晶出しているアルミニウム精製塊の重量、精製後のFe、Siの濃度及び精製効率を表1に示す。
以上の実施例1〜6、比較例1〜4のそれぞれについて、溶湯から引き上げた冷却体に晶出している精製アルミニウム(アルミニウム精製塊)の重量、精製後のFe、Siの濃度及び精製効率を調べた。その結果を表1に示す。
表1に示されるように、本発明の実施品は比較品に較べて、精製アルミニウムの不純物濃度が低く、精製効率が良いことがわかる。
実施例1の条件において、5回の精製実験を行った結果、精製塊重量は平均で6.08kgであった。また、精製中に発生した剥離回数を精製開始からの時間経過とともに調査したところ、表2のとおりであり、精製開始から全精製時間×0.1以降に2回の剥離が発生し、実施例8、9よりも精製塊重量が低くなった。
実施例1の条件において、精製開始から全精製時間×0.05まで、冷却体の浸漬部分の最上端部における外周面の周速を3500mm/s、それ以降の周速を3000mm/sに設定して、5回の精製実験を行った結果、精製塊重量は平均で6.12kgであった。また、精製中に発生した剥離回数を精製開始からの時間経過とともに調査したところ、表3のとおりであり、ほとんどのものは精製開始から全精製時間×0.1以内での剥離のみであったが、5回の試験中1回(実験番号4)は精製開始から全精製時間×0.1〜全精製時間×0.15で剥離が発生した。
実施例1の条件において、精製開始から全精製時間×0.1まで、冷却体の浸漬部分の最上端部における外周面の周速を3500mm/s、それ以降周速を3000mm/sに設定して、表4のように、5回の精製実験を行った結果、精製塊重量は平均で6.14kgであった。また、精製中に発生した剥離回数を精製開始からの時間経過とともに調査したところ、精製開始から全精製時間×0.1以降の剥離は発生しなかったため、精製塊重量は実施例7、8の場合に比べて増大した。
2 溶融アルミニウム(溶湯)
3 冷却体
5 精製アルミニウム
6 加熱装置
Claims (17)
- 溶融物質中に冷却体を浸漬し、その冷却体の表面に前記物質の結晶を晶出、成長させる精製法において、
前記冷却体の周速が700mm/s以上8000mm/s未満となるように冷却体を回転させながら溶融物質中に浸漬させていき、且つ溶融物質に浸漬するときの冷却体の温度を、前記物質の固相線温度×0.7以上とすることを特徴とする物質精製法。 - 冷却体の周速を1500mm/s以上6000mm/s未満とする請求項1に記載の物質精製法。
- 前記冷却体の表面に前記物質の結晶を晶出、成長させた後に冷却体を溶融物質から引き上げるときに、冷却体に晶出した結晶部分の溶融物質との界面における周速が700mm/s以上、8000mm/s未満となるように冷却体を回転させながら引き上げを行う請求項1または2に記載の物質精製法。
- 冷却体に晶出した結晶部分の溶融物質との界面における周速が1500mm/s以上、7000mm/s未満となるように冷却体を回転させる請求項3に記載の物質精製法。
- 溶融物質に浸漬するときの冷却体の温度を、前記物質の固相線温度×0.8以上とする請求項1〜4の何れかに記載の物質精製法。
- 溶融物質に浸漬するときの冷却体の温度を、前記物質の固相線温度×0.9以上とする請求項1〜4の何れかに記載の物質精製法。
- 冷却体浸漬後の精製初期の冷却体の最大周速がその後の平均周速より高速である請求項1〜6の何れかに記載の物質精製法。
- 冷却体浸漬後の精製初期の冷却体の最大周速がその後の平均周速×1.1以上である請求項7に記載の物質精製法。
- 精製初期とは精製開始から全精製時間×0.1まで(但し、10秒以上120秒以下)である請求項7または8に記載の物質精製法。
- 前記物質が金属である請求項1〜9のいずれかに記載の物質精製法。
- 前記金属がアルミニウムである請求項10に記載の物質精製法。
- 精製すべき物質を溶融状態で収容する炉体と、前記炉体に収容された溶融物質中に浸漬される回転可能な冷却体とを備えた精製装置において、
前記冷却体の周速が700mm/s以上8000mm/s未満に設定され、かつ冷却体の温度が前記物質の固相線温度×0.7以上に設定された状態で、冷却体が前記溶融物質中に浸漬されるものとなされていることを特徴とする物質精製装置。 - 冷却体の温度が前記物質の固相線温度×0.8以上に設定される請求項12に記載の物質精製装置。
- 冷却体の温度が前記物質の固相線温度×0.9以上に設定される請求項12に記載の物質精製装置。
- 精製初期の冷却体の最大周速がそれ以降の平均周速よりも大きくなるように、冷却体の回転速度を制御する制御手段を備えている請求項12に記載の物質精製装置。
- 前記制御手段は、精製初期の冷却体の最大周速がそれ以降の平均周速×1.1以上となるように冷却体の回転速度を制御する請求項15に記載の物質精製装置。
- 前記精製初期が、精製開始から全精製時間×0.1までである請求項15または16に記載の物質精製装置。
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