JPH0770666A - アルミニウムスクラップの連続精製方法及び装置 - Google Patents

アルミニウムスクラップの連続精製方法及び装置

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JPH0770666A
JPH0770666A JP21843393A JP21843393A JPH0770666A JP H0770666 A JPH0770666 A JP H0770666A JP 21843393 A JP21843393 A JP 21843393A JP 21843393 A JP21843393 A JP 21843393A JP H0770666 A JPH0770666 A JP H0770666A
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refining
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aluminum
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Tomoo Dobashi
倫男 土橋
Saburo Makino
三朗 牧野
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瑞芳 藤池
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 アルミニウムスクラップから、高い歩留りで
亜共晶Al−Si合金及び過共晶Al−Si合金を連続
的に製造する。 【構成】 アルミニウムスクラップを溶解し、必要に応
じて成分調整した原料溶湯を脱Fe炉10で脱Feす
る。精製炉10(A〜C)で脱Fe溶湯から亜共晶Al
−Si合金が得られ、残湯が後続する精製炉10(B,
C)又は後処理炉30に送られる。後処理炉30では、
Fe分を金属間化合物として分離しながら、過共晶Al
−Si合金を得る。 【効果】 精製炉10(A〜C)では、それぞれのグレ
ードに応じたSi濃度の亜共晶AlSi合金が得られ
る。後処理炉30では、Si濃度が高い過共晶Al−S
i合金が得られる。全システムにおいて、金属間化合物
に随伴して系外に持ち去られるAl分は僅かである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、不純物濃度が高いアル
ミニウムを連続的に精製し、用途に応じた各種アルミニ
ウム合金を連続的に製造する方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】不純物や合金元素を含むアルミニウム溶
湯を冷却するとき、組成の如何に応じα−Al又は金属
間化合物としての不純物が初晶として晶出する。α−A
lが初晶として晶出する系では、母液に比較して純化さ
れたアルミニウムが得られる。金属間化合物が初晶とし
て晶出する系では、残湯中の不純物濃度が低下する。そ
の結果、凝固体或いは溶湯として精製アルミニウム又は
アルミニウム合金が得られる。偏析法でアルミニウムを
精製するとき、精製品の純度は、原料アルミニウムに含
まれる不純物の濃度に依存する。α−Alが初晶として
晶出する系において、アルミニウムが凝固するとき、不
純物元素が固相から排出され、凝固界面の溶湯に濃縮さ
れる。濃縮した不純物は母液に拡散し、一定時間経過後
に凝固界面近傍の不純物濃度が母液と等しくなり、精製
が進行する。しかし、凝固界面近傍にある溶湯の不純物
濃度が母液の不純物濃度と等しくなるまでに長い時間が
必要とされる。その結果、凝固速度を大幅に遅くする必
要があり、生産性の低下を招く。
【0003】晶出反応を円滑に行わせ且つ非金属介在物
の凝固体への混入を避けるため、凝固界面に沈積した非
金属化合物や不純物濃縮液を母液に拡散させることが重
要である。不純物を非金属介在物として晶出させる系で
も、凝固界面の濃度勾配を緩和させることにより晶出反
応が促進される。非金属化合物や不純物濃縮液の拡散等
には、原料溶湯の機械的な撹拌が採用されている。たと
えば、特開昭57−92148号公報では、ルツボに収
容したアルミニウム溶湯を撹拌子で撹拌しながら、溶融
アルミニウムをルツボ底部から冷却する方法が紹介され
ている。精製アルミニウムはルツボ底面から成長し、凝
固界面にある高濃度不純物溶液は撹拌子によって生じた
撹拌流に乗って凝固界面から母液中に拡散する。そのた
め、純度の高いアルミニウム材料がルツボの底部に凝固
体として生成する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】純化された精製品がア
ルミニウム溶湯から凝固体として得られるのは、比較的
少量の不純物が含まれる溶解原料を使用する場合であ
る。実際のアルミニウムスクラップには各種の不純物が
多量に含まれており、溶湯から初晶として晶出するもの
はFeを含むAl−Si−Fe系等の金属間化合物であ
る。特に、鋳物合金スクラップのようにFe含有量が
0.8%以上の低グレード材料では、多量のAl−Fe
−Si系金属間化合物が晶出する。金属間化合物が初晶
として晶出する系では、精製品は、溶湯として、或いは
晶出した金属間化合物を除去することにより純化された
溶湯から晶出する凝固体として得られる。このとき、す
でに晶出している金属間化合物が精製品に混入すること
があり、得られた精製品の純度が低下する。しかし、金
属間化合物の混入を防止する方法は、生産性に見合った
形で実用化されていない。
【0005】また、精製容器としてルツボを使用する場
合、基本的にバッチ式であるため、生産性に劣る。精製
工程を連続化させる試みも一部で行われているものの、
工業的に完成した段階には至っていない。そのため、ア
ルミ缶やアルミ廃材等の回収が盛んになるに応じて、回
収されたアルミ原料の処理能力が追い付かない状況にあ
る。本発明は、このような問題を解消すべく案出された
ものであり、脱Fe炉,精製炉及び後処理炉を連続的に
配列し、各炉から排出された物質を種類に応じて供給先
を分けることにより、不純物濃度が高いアルミニウムス
クラップの処理を連続化させ、低Fe濃度の亜共晶Al
−Si合金及び過共晶Al−Si合金を生産性良く得る
ことを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の連続精製方法
は、その目的を達成するため、次の工程を経てアルミニ
ウムスクラップを精製する。 [脱Fe工程]金属間化合物が初晶として晶出する組成
を持つアルミニウム溶湯からAl−Si−Fe−Mn系
金属間化合物を晶出分離させる。晶出したAl−Si−
Fe−Mn系金属間化合物は、吸引によってアルミニウ
ム溶湯から除去できる。或いは、脱Fe炉を傾動して脱
Fe溶湯を排出することによっても、アルミニウム溶湯
から分離される。脱Feされる原料溶湯としては、Mn
/Fe比を0.2〜2に調整したアルミニウム溶湯が好
ましい。 [精製工程]脱Feされたアルミニウム溶湯を方向性凝
固し、Fe含有量が少ない亜共晶Al−Si合金を製造
する。精製工程で得られた亜共晶Al−Si合金は、凝
固体として水平横方向に引き抜かれることが好ましい。
この場合にも、晶出したAl−Si−Fe−Mn系金属
間化合物は、吸引によってアルミニウム溶湯から除去で
きる。この精製工程を多段にすることにより、生産性の
向上が図られる。直列多段の配置では、Feが残液に濃
縮する。なお、Si濃度が低く純度の良好なAl合金の
精製に対しては、このプロセスのみを利用することも可
能である。
【0007】[後処理工程]亜共晶Al−Si合金を得
た残湯からAl−Si−Fe−Mn系金属間化合物を晶
出分離し、Fe含有量が少ない過共晶Al−Si合金を
溶融状態で得る。何れの工程においても、偏析分離した
金属間化合物は、系外に排出される。また、連続精製装
置は、アルミニウムスクラップを溶解する溶解炉と、溶
解炉から送り出されたアルミニウム溶湯が流入する脱F
e炉と、脱Fe炉で脱Feされたアルミニウム溶湯が送
り込まれ、偏析凝固によってアルミニウム溶湯を精製す
る精製炉と、精製炉からのアルミニウム溶湯を更に脱F
eする後処理炉とを備えている。精製炉からFe含有量
が低い亜共晶Al−Si合金が得られ、後処理炉からF
e含有量が低い過共晶Al−Si合金が得られる。
【0008】精製炉としては、凝固した亜共晶Al−S
i合金を水平横方向に引き出す開口部をもち、金属間化
合物が沈積した炉底部に臨む吸引管を備えたものが好ま
しい。精製炉の前段に設けた溶解炉で、脱Feされる原
料溶湯のMn/Fe比を0.2〜2に調整することも有
効である。複数の精製炉を多段に配置することもでき
る。この場合、前段の精製炉で亜共晶Al−Si合金を
得た後の濃縮液を後段の精製炉に送り込むように、各段
の精製炉を溶湯配管で接続する。
【0009】以下、図面を参照しながら、本発明を具体
的に説明する。アルミニウムスクラップは、溶解された
後で脱Fe炉に装入される(図1)。脱Fe炉10は、
図2に示すように、炉殻11を形成する耐火物の内側に
ヒータ12を配置し、給湯樋13を経て装入された原料
溶湯M1 を所定温度に保持する。原料溶湯M1 には、撹
拌子14が浸漬される。撹拌子14で原料溶湯M1 を撹
拌しながら、原料溶湯M1 をα−Alの凝固点より最高
でも10℃高い温度まで冷却する。降温に従って、金属
間化合物C1 が原料溶湯M1 から晶出する。金属間化合
物C1 は、原料溶湯M1 に比較して比重が大きいので、
炉底に沈降する。撹拌子14に代え、脱Fe炉10の周
囲に電磁コイルを配置し、原料溶湯M1 を電磁撹拌する
こともできる。
【0010】炉底の近傍には、吸引管15の下端が開口
している。沈降した金属間化合物C1 は、一部の原料溶
湯M1 と混じりあったスラリー状態で吸引管15によっ
て吸い上げられ、原料溶湯M1 から分離され、系外に排
出される。原料溶湯M1 は、金属間化合物C1 の分離に
従って純化される。純化された原料溶湯M1 は、脱Fe
溶湯M2 として脱Fe炉10から取り出される。脱Fe
溶湯M2 が排出された後、炉底に溜っている金属間化合
物C1 を掻き出し、次の原料溶湯M1 を脱Fe炉10に
装入する。図2の場合には、吸引管16で脱Fe溶湯M
2 を汲み出し、後続する工程に送っている。送給に際
し、吸引管16の内部における脱Fe溶湯M2 の凝固や
降温を防止するため、吸引管16を取り巻くヒータ17
で脱Fe溶湯M2 を加熱保温することが好ましい。吸引
管16に代え、精製炉20よりも高い位置に脱Fe炉1
0を配置し、脱Fe炉10を傾動させて精製炉20に注
湯する方式を採用することも可能である。また、金属間
化合物C1 を除去した後、脱Fe炉10を昇温して脱F
e溶湯M2を温度補償しても良い。
【0011】金属間化合物C1 は、脱Feされる原料溶
湯M1 の種類にもよるが、通常のアルミニウムスクラッ
プを溶解原料とするとき、Al−Si−Fe系,Al−
Si−Fe−Mn系等を主体とする金属間化合物であ
る。冷却による凝固の進行に応じて、原料溶湯M1 中の
Si濃度が上昇する。共晶組成に相当する12重量%前
後までSi濃度が上昇すると、凝固速度が低下すると共
に、操業条件が不安定になり易い。したがって、原料溶
湯M1 中のSi濃度は、生産面からの不利を生じないよ
うに10重量%以下に維持することが好ましい。他方、
Al−Si−Fe−Mn系等の金属間化合物C1 の晶出
により凝固体中のFe,Mn,Si濃度を制御する上
で、溶湯中のSi濃度を2重量%以上に維持することが
好ましい。
【0012】また、Al−Si−Fe−Mn系金属間化
合物の晶出により、原料溶湯M1 中のFe,Mn濃度よ
りも脱Fe溶湯M2 中のFe,Mn濃度が低く維持され
る。初期の原料溶湯M1 中のFe濃度が少なければ金属
間化合物C1 の晶出量が減少し、処理速度が低下する。
また、脱Feは、Al−Si−Fe系よりもAl−Si
−Fe−Mn系の金属間化合物として除去する方が効果
的である。この点、原料溶湯M1 に含まれる不純物のう
ち、MnとFeとのMn/Fe比を0.2〜2の範囲に
維持することが好ましい。Mn/Fe比やSi濃度を所
定範囲に保つため、最低限の範囲で溶湯組成の調整が必
要な場合が生じる。この場合、アルミニウムスクラップ
の溶解原料を収容した溶解炉18に、金属単体や母合金
の状態でSi,Mn等を成分調整材として添加する。成
分調整された原料溶湯M1 は、溶解炉18から脱Fe炉
10に送り込まれる。
【0013】脱Fe溶湯M2 は、脱Fe炉10から精製
炉20に装入される。精製炉20は、図3に示すよう
に、耐火物で構築した炉殻21の一側壁に脱Fe溶湯M
2 が送り込まれる給湯口22を設けている。給湯口22
から装入された脱Fe溶湯M2 は、撹拌子23で撹拌さ
れながら、降温するに従って凝固体Sとなる。凝固体S
は、炉殻21の他側壁に設けた開口24から鋳型31を
経て連続的に引き抜かれ、冷却水Wの噴霧等により冷却
される。得られた凝固体Sは、Si及びFeの濃度が低
く、亜共晶Al−Si系鋳物用合金として利用できる。
鋳型31は、黒鉛製又はAl製の何れでもよく、電磁鋳
型も使用できる。電磁鋳型を使用すると、表面が滑らか
な凝固体Sが得られる。得られた凝固体Sは、工程稼動
中に適宜の長さに切断される。そのため、連続操業が可
能となる。凝固体Sの成長に伴い、脱Fe溶湯M2 に不
純物が濃縮される。その結果、脱Fe溶湯M2 から金属
間化合物C2 が晶出する。また、成長している樹枝状晶
の間に取り込まれた金属間化合物C2 は、撹拌子23に
よって形成された溶湯撹拌流により洗い出され、凝固体
Sから分離する。凝固体Sの成長及び金属間化合物C2
の晶出を円滑に行うため、ヒータ25によって脱Fe溶
湯M2 を温度制御することが好ましい。
【0014】晶出した金属間化合物C2 は、撹拌子23
による回転作用を受けて、炉底に集合する。そこで、炉
底近傍に下端が開口した吸引管26によって、金属間化
合物C2 を精製炉20から汲み出す。このとき、炉底に
集められた金属間化合物C2は、トラップフィルター2
7によって母液中への分散が防止される。トラップフィ
ルター27としては、たとえばガラスフィルターを張っ
たステンレス鋼製枠体が使用される。金属間化合物C2
は、脱Fe溶湯M2 に宙吊り状態で浸漬される捕捉部材
(図示せず)によっても除去することができる。図3で
は、撹拌子23によって脱Fe溶湯M2 を撹拌している
が、撹拌子23に代え或いは撹拌子23と併用して、炉
殻21を取り巻く電磁コイル29による電磁撹拌を採用
することもできる。脱Fe溶湯M2 から凝固体S及び金
属間化合物C2 を分離した残りの残湯M3は、炉底に設
けた出湯ノズル28を経て次段の精製炉B,C(図1参
照)に送られ、或いは後処理炉30に直接送り込まれ
る。
【0015】複数の精製炉A〜Cを多段に配置したレイ
アウトでは、残湯M3 を次段の精製炉B,Cに順次送
り、同様に精製する。残湯M3 には不純物が濃縮される
ので、前段の精製炉A,Bで得られた精製品A,Bに比
較して不純物濃度、特にSi濃度が高い精製品B,Cが
次段の精製炉B,Cで得られる。しかし、成分調整及び
脱Feを行っていることから、何れの段で得られた精製
品A〜Cも、それぞれの用途に適した合金用材料として
使用できる。複数の精製炉A〜Cは、多段配置に代え、
直列配置することも可能である。この場合には、各精製
炉A〜Cから排出された残湯M3 が後処理炉30に直接
送り込まれる。また、複数段からなる精製炉A〜Cの組
を、脱Fe炉10と後処理炉30との間に並列配置して
も良い。精製炉A〜Cをどのように配置するかは、各炉
の処理能力を考慮して定められる。
【0016】精製炉20又は最終段の精製炉Cから排出
された残湯M3 は、後処理炉30に送り込まれる。後処
理炉30としては、脱Fe炉10と同様な構成を持った
ものが使用され、Fe分が金属間化合物として除去され
る。しかし、残湯M3 のSi濃度が上昇しているので、
金属間化合物を除去した後の濃縮液は、低Fe濃度の鋳
物用過共晶Al−Si合金として使用される。なお、濃
縮液に含まれるFeの含有量が高過ぎる場合、濃縮液を
原料溶解炉に戻し、脱Fe処理を再度施すことが好まし
い。このように前段に脱Fe炉10を配置することによ
り、各工程で得られる亜共晶Al−Si合金(精製品A
〜C)及び後処理炉30から得られた過共晶Al−Si
合金は、何れもFe濃度が低く、各種用途に適したグレ
ードの合金用材料として使用される。また、凝固体Sを
精製炉20の側壁から水平横方向に引き抜く方式を採用
しているので、晶出した金属間化合物C2 との分離が確
実になり、精製効果が向上する。
【0017】
【実施例】原料溶湯の用意 :アルミ製自動車部品,サッシ廃材等を
溶解原料として、バーナーを備えた溶解炉18で溶解し
た。得られた温度750℃の原料溶湯M1 は、Si:8
重量%,Fe:0.8重量%及びMn:0.4重量%の
不純物濃度であった。Mn/Fe比が0.5であること
から、溶解炉18で成分調整をする必要なく、脱Fe炉
10に直接装入した。脱Fe工程 :脱Fe炉10としては、容量200kgの
炉2基を使用し、2基の炉で脱Feされた溶湯M2 が絶
え間なく精製炉20に送り込まれるスケジュールを組ん
だ。溶解炉18で溶解された原料溶湯M1 150kgを
脱Fe炉10に装入した。脱Fe炉10内で原料溶湯M
1 の温度を徐々に下げ、600℃に保持した。このと
き、撹拌子14を外周速2m/秒で回転させ、原料溶湯
1 を撹拌した。その結果、Al−Si−Fe−Mn系
の金属間化合物C1 が炉底に沈降した。
【0018】金属間化合物C1 の沈降を30分継続した
後、脱Fe炉10を傾動し、金属間化合物C1 が除去さ
れた脱Fe溶湯M2 を排出した。脱Fe溶湯M2 は、除
滓フィルターを経て精製炉20に送り込まれた。脱Fe
炉10から精製炉20に脱Fe溶湯M2 を送る過程で、
固化しないように脱Fe溶湯M2 を十分加熱した。精製
炉20に送り込まれた脱Fe溶湯M2 は、不純物濃度が
Si:8重量%,Fe:0.6重量%及びMn:0.2
5重量%であり、輸送中の溶湯温度は640℃であっ
た。脱Fe溶湯M2 を排出した後で、脱Fe炉10の炉
底に溜っている金属間化合物C1 を掻き出し、脱Fe炉
10を次のチャージに備えさせた。
【0019】精製工程:精製炉20としては、図1に示
すように3基の炉A〜Cを直列に配置した。各炉A〜C
としては、同じ構造(図3参照)をもち、メタル保持量
150kgのものを使用した。また、開口24に、直径
200mmの鋳型口径をもつ通常の横引き鋳型を取り付
けた。精製炉20に装入された脱Fe溶湯M2 に黒鉛製
の撹拌子23を浸漬し、撹拌羽根の外周速1m/秒で撹
拌子23を回転させた。また、脱Fe溶湯M2 から晶出
した金属間化合物C2 を集めるため、トラップフィルタ
ー27を炉底に配置した。30分ごとに撹拌子23と一
体的にトラップフィルター27を脱Fe溶湯M2 から引
き上げ、炉底に沈降している金属間化合物C2 を除去し
た。
【0020】ヒータ25により脱Fe溶湯M2 を温度6
50℃に保持し、鋳型を介した冷却により凝固体Sを成
長させた。このとき、凝固条件としては、50mm/時
(約4kg−Al/時)及び150mm/時(約12k
g−Al/時)の2種の凝固速度(=鋳造速度)を採用
した。各炉A〜Cで得られた精製品A〜Cの組成を、表
1に示す。表1から明らかなように、精製品A〜Cの何
れも、Si,Fe及びMn濃度が低下しており、亜共晶
Al−Si系鋳造用合金として使用可能であった。特
に、Si及びFe濃度が大幅に低くなっていることに、
本発明の有意性がみられる。精製品A〜Cの間でみる
と、Si濃度は、A→B→Cの順に増加している。これ
は、後段側の精製炉B,Cになるほど、残湯M3 にSi
が濃縮されていることを示す。したがって、格段の精製
炉A〜Cから、グレードに応じた製品が得られる。精製
品のSi濃度は、凝固速度によっても異なっている。特
に、Siが濃縮した残湯B,Cから得られた精製品B,
Cでは、凝固速度が大きいほど高いSi濃度が示されて
いる。このことから、製品に要求されるグレードに応じ
て凝固速度(鋳造速度)を選定すれば良いことが判る。
【0021】
【表1】
【0022】各精製炉A〜Cで分離された金属間化合物
2 は、何れの炉においてもAl−Si−Fe−Mn系
であった。また、各精製炉A〜Cから次の精製炉B,C
又は後処理炉30に移動する残湯M3 は、凝固速度を5
0mm/時に設定したものでは、表2に示す組成をもっ
ていた。
【0023】
【表2】
【0024】後処理工程:後処理炉30としては、脱F
e炉10と同じ構造を持つ2基の炉を使用し、精製炉C
から送り込まれる残湯M3 が常に何れかの炉に装入され
るように配置した。後処理炉30では、脱Feと同じ条
件で残湯M3 を撹拌しながら冷却し、Feを含むAl−
Si−Fe−Mn系金属間化合物を晶出物として除去し
た。これにより、不純物濃度が低下された濃縮液が後処
理炉30から排出された。得られた濃縮液は、Si:1
2.0重量%,Fe:0.5重量%及びMn:0.3重
量%の不純物濃度を持っており、過共晶Al−Si系鋳
物用合金として十分に再利用することができた。以上の
設備構成で、凝固速度が50mm/時の条件下で単位時
間当りの平均処理量を測定した。各工程の処理量を表3
に示す。表3は、スクラップを溶解した原料溶湯M1
うち4.7重量%の金属間化合物を除去するだけの極め
て高い歩留りで、亜共晶Al−Si合金及び過共晶Al
−Si合金が得られたことを示している。したがって、
Fe濃度が高いアルミニウムスクラップを溶解原料とす
る場合においても、脱Fe前処理,精製及び脱Fe後処
理を連続的に組み合わせることにより、工業生産ベース
に見合って亜共晶Al−Si合金及び過共晶Al−Si
合金が製造される。
【0025】
【表3】
【0026】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明において
は、アルミニウムスクラップを溶解して用意した原料溶
湯を脱Fe処理した後、偏析凝固によって亜共晶Al−
Si合金を得た後、不純物濃度が上昇した残液からFe
分を除去しながら過共晶Al−Si合金を得ている。こ
れにより、金属間化合物に随伴して系外に持ち去られる
Al分を低く抑え、高い歩留りでアルミニウム合金の製
造が可能になる。また、水平横引き方式で亜共晶Al−
Si合金を凝固体として製造するとき、金属間化合物と
して晶出した不純物の混入がなく、純度の高い製品が得
られる。各工程で得られたアルミニウム合金は、用途に
対応したそれぞれのグレードの合金材料として使用され
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明にしたがって配置した脱Fe炉,精製
炉及び後処理炉
【図2】 脱Fe炉の内部構造
【図3】 精製炉の内部構造
【符号の説明】
1 :原料溶湯 M2 :脱Fe溶湯 M3 :残湯
1 ,C2 :金属間化合物 S:凝固体(亜共晶A
l−Si合金) 10:脱Fe炉 11:炉殻 12,17:ヒータ
13:給湯樋 14:撹拌子 15,16:吸
引管 18:調整炉 20:精製炉 21:炉殻 22:給湯口 2
3:撹拌子 24:開口 25:ヒータ 26:吸引管 27:トラップフィ
ルター 28:出湯ノズル 29:電磁コイル
31:鋳型
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 藤池 瑞芳 静岡県庵原郡蒲原町蒲原1丁目34番1号 株式会社日軽技研内

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金属間化合物が初晶として晶出する組成
    を持つアルミニウム溶湯からAl−Si−Fe−Mn系
    金属間化合物を晶出分離させる脱Fe工程、 脱Feされたアルミニウム溶湯を方向性凝固し、Fe含
    有量が少ない亜共晶Al−Si合金を製造する精製工
    程、及び前記亜共晶Al−Si合金を得た残湯からAl
    −Si−Fe−Mn系金属間化合物を晶出分離し、Fe
    含有量が少ない過共晶Al−Si合金を製造する後処理
    工程を経るアルミニウムスクラップの連続精製方法。
  2. 【請求項2】 脱Fe工程で晶出したAl−Si−Fe
    −Mn系金属間化合物は、アルミニウム溶湯から吸引除
    去される請求項1記載の連続精製方法。
  3. 【請求項3】 精製工程で製造された亜共晶Al−Si
    合金は、凝固体として水平横方向に引き抜かれる請求項
    1記載の連続精製方法。
  4. 【請求項4】 Mn/Fe比が0.2〜2に調整された
    アルミニウム溶湯を精製原料とする請求項1〜3の何れ
    かに記載の連続精製方法。
  5. 【請求項5】 アルミニウムスクラップを溶解する溶解
    炉と、該溶解炉から送り出されたアルミニウム溶湯が流
    入する脱Fe炉と、該脱Fe炉で脱Feされたアルミニ
    ウム溶湯が送り込まれ、偏析凝固によってアルミニウム
    溶湯を精製する精製炉と、該精製炉からのアルミニウム
    溶湯を更に脱Feする後処理炉とを備え、前記精製炉か
    らFe含有量が低い亜共晶Al−Si合金が得られ、前
    記後処理炉からFe含有量が低い過共晶Al−Si合金
    が得られるアルミニウムスクラップの連続精製装置。
  6. 【請求項6】 請求項5の精製炉は、凝固した亜共晶A
    l−Si合金を水平横方向に引き出す開口部をもち、金
    属間化合物が沈積した炉底部に臨む吸引管を備えている
    連続精製装置。
  7. 【請求項7】 複数の精製炉を多段に配置し、前段の精
    製炉で亜共晶Al−Si合金を得た後の残湯を後段の精
    製炉に送り込む溶湯配管で各段の精製炉を接続した請求
    項5〜7の何れかに記載の連続精製装置。
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