JP3237438B2 - アルミニウムスクラップの精製方法 - Google Patents

アルミニウムスクラップの精製方法

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JP3237438B2
JP3237438B2 JP3010995A JP3010995A JP3237438B2 JP 3237438 B2 JP3237438 B2 JP 3237438B2 JP 3010995 A JP3010995 A JP 3010995A JP 3010995 A JP3010995 A JP 3010995A JP 3237438 B2 JP3237438 B2 JP 3237438B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、溶解原料に含まれてい
る不純物を晶出分離し、純度の高いα−Al晶を選択的
に晶出成長させることによりアルミニウムスクラップを
精製する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】アルミニウム溶湯に含まれているFe等
の不純物を分離除去するため、Mnを添加し、Mnと不
純物との間で金属間化合物を生成させ、晶出した金属間
化合物を分離する方法が採用されている。たとえば、特
公昭57−2134号公報ではAl−Mn系金属間化合
物を添加し、特公昭59−12731号公報ではMn又
はAl−MnとMg又はAl−Mgとを併用添加してい
る。何れの方法においても、不純物の一部であるFe
は、Al−Fe−Mn系金属間化合物として分離除去さ
れる。Mn系等の添加材を使用した精製方法では、Fe
及びMnの除去ができるだけであり、得られた精製アル
ミニウムのFe濃度も0.5重量%程度が限界である。
しかも、Mnの添加によって不純物を分離除去すると
き、過剰量のMn添加を必要とすることから、精製後の
アルミニウム材料に多量のMnが含まれる。
【0003】また、特開昭57−82437号公報で紹
介されている方法でアルミニウム原料を精製すると、初
晶として金属間化合物が晶出する系では晶出するアルミ
ニウムの結晶強度が弱い。そのため、冷却管の回転速度
が外周速2.5〜8m/秒まで上昇すると、冷却体表面
に晶出したアルミニウムの一部が離脱して溶湯に移行
し、見掛け上の凝固速度が低下する。最悪の場合、凝固
体の成長可能な厚さに上限が加わる事態も生じる。しか
も、初晶として晶出する金属間化合物の晶出温度は、α
−Alの凝固点に比較して通常数十℃高い。そのため、
不純物は、アルミニウムの晶出に先立って、金属間化合
物として冷却体表面に晶出凝固する。この凝固層は、そ
の上に晶出する精製アルミニウムの純度を低下させる原
因になるため、原理的にも実用的にも精製工程に問題を
含む。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明者等は、このよ
うな問題を解消すべく、溶湯から不純物を金属間化合物
として予め晶出分離する工程を組み込むことにより、冷
却体表面に晶出するアルミニウムに不純物が混入するこ
とを回避し、高歩留りで精製アルミニウムを得る方法を
開発し、特願平5−204082号として提案した。提
案した方法では、不純物の一部が金属間化合物の初晶と
して晶出する組成をもつアルミニウム溶湯を精製容器に
収容し、α−Alの凝固点から最高でも10℃高い温度
範囲に溶湯を保持することにより金属間化合物を晶出さ
せ精製容器の底部に沈降させる。その後、溶湯に回転冷
却体を浸漬し、回転冷却体を回転させながら溶湯を冷却
して精製アルミニウムを凝固体として回転冷却体の表面
に成長させる。本発明は、この方法を更に発展させたも
のであり、初晶の沈降分離工程及びα−Al晶の晶出成
長工程において温度,冷却時間等の操業条件を制御する
ことにより、α−Al晶を効率よく成長させ、高生産性
で精製アルミニウムを得ることを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の精製方法は、そ
の目的を達成するため、不純物の一部としてFe、M
n、Crを含有するAl−Si系のアルミニウム合金ス
クラップを溶解し、その溶湯を保持炉又は精製炉で68
0〜600℃の温度範囲を0.1〜8時間かけて冷却す
ることにより前記Fe、Mn、Crをアルミニウム合金
中のAl及びSiとで金属間化合物を形成させて炉底に
沈降分離させた後、溶湯温度を更に下降させ、溶湯温度
が600〜570℃の範囲で、溶湯に浸漬している回転
冷却体を冷媒で冷却することにより回転冷却体の表面に
α−Al晶を晶出成長させることを特徴とする。α−A
l晶の晶出に際しては、α−Al晶の晶出物から不純物
の濃縮液が分離されるように、また不純物となる金属間
化合物がα−Al晶に取り込まれないように、回転冷却
体の回転数,回転冷却体に供給する冷媒の流量,精製中
の溶湯の冷却速度が制御される。
【0006】本発明に従った精製方法は、たとえば図1
に示す設備構成の装置を使用して実施される。精製容器
10としては、黒鉛製のルツボ或いは黒鉛とSiCとを
混合焼成したルツボが通常使用される。ルツボ本体11
を外容器12に入れ、蓋体13を装着する。蓋体13に
は、温度制御用のバーナ14を取り付けても良い。精製
容器10の外周には、加熱機構20が外容器12を取り
囲んで配置されている。加熱機構20は、内周側にヒー
タ21を取り付けた耐火れんが製のヒータブロック22
〜24を備え、各ヒータブロック22〜24の熱量が独
立して制御されるものが好ましい。精製容器10の底部
にも、ヒータブロック25を配置する。精製されるアル
ミニウムスクラップは、精製容器10に装入した後、ヒ
ータブロック22〜25からの加熱によって溶解され、
α−Alの凝固点より僅かに高い温度に保持される。
【0007】溶融状態に保持された溶湯Mに、回転冷却
体30が浸漬される。回転冷却体30は、軸方向にガス
通路をもつ内管31の先端部近傍に外管32を嵌め合せ
ている。内管31は、蓋体13を貫通して上方に延び、
カップリング33を介しモータ34の出力軸35に接続
されている。モータ33から延びたアーム36は、モー
タ37で回転される送りネジ38に嵌挿されている。こ
れにより、回転冷却体30は、精製容器10の内部で昇
降自在に回転する。外管32は、図示するように底面側
が閉塞されており、内管31の下端との間にギャップ3
9を形成する。内管31から送り込まれた冷却媒体g
は、ギャップ39を経て外管32から放出される。或い
は、内管31及び外管32の二重間構造に代え、所定の
ガス通路を形成した黒鉛ブロックを使用することもでき
る。
【0008】冷却媒体gには、空気,非酸化性ガス,霧
状の水分を含む空気等が使用される。冷却媒体gの流動
により、外管32の管壁を介して溶湯Mが冷却される。
溶湯Mの温度が下がるとき、初晶が金属間化合物の系で
は、先ず回転冷却体30を冷却する前に溶湯の温度を下
げ、たとえばAl−Si−Fe−Mn系金属間化合物を
炉底に沈降させる。金属間化合物の晶出に伴って、残り
の溶湯Mが純化され、温度が更に下がる。そして、回転
冷却体30を冷却すると、α−Al晶の晶出が始まる。
α−Al晶が晶出する際、α−Al晶と溶湯Mとの界面
に排出されるSi,Fe,Cu等の不純物は、回転冷却
体30の回転によってα−Al晶から分離され、溶湯M
に比較して比重が大きな金属間化合物Iとして溶湯M中
を落下する。沈降分離した金属間化合物Iは、回転冷却
体30の回転で生じる溶湯Mの撹拌流により、ルツボ本
体11の底部中央に溜る。
【0009】本発明者等の調査・研究によるとき、α−
Al晶の晶出は、溶湯Mが600〜570℃の温度に達
した段階で最も効率よく進行することが判った。そこ
で、600〜570℃まで溶湯Mが降温したとき、溶湯
Mに回転冷却体30を浸漬し、或いはすでに浸漬してい
る回転冷却体30に冷却媒体gを供給する。これによ
り、溶湯Mから晶出したα−Al晶は、外管32の周囲
に凝固体として成長する。溶湯Mの温度及びα−Al晶
の成長速度は、冷却媒体gの流量制御によって最適に維
持される。回転冷却体としては、図2に示すように内管
41に外管42を嵌め合わせた二重管構造を採用するこ
ともできる。内管41及び外管42の下端部には、共に
半径方向に広がったフランジ43,44が取り付けられ
ており、フランジ43には複数のオリフィス45が形成
されている。図2の場合には、内管41及び外管42を
ステンレス鋼製としたが、所定のガス通路を形成した黒
鉛ブロックを使用することもできる。
【0010】フランジ43及び44は、円形状になって
おり、周縁部に円筒状の断熱材46が取り付けられてい
る。また、断熱材46の底面には、フランジ43から一
定の間隔を保った底壁47が取り付けられている。空
気,不活性ガス等の冷却媒体gは、供給口51から外管
42に送り込まれ、内管41と外管42との間に形成さ
れた環状通路52を経て、フランジ44と43との間に
形成された分配室53に導入される。次いで、冷却媒体
gは、オリフィス45,45・・を経て冷却室54に流
入する。このとき、冷却媒体gは、環状通路52から内
容積の大きな分配室53に一旦流入した後で冷却室に送
り込まれるため、半径方向に関する流量分布が均一化さ
れる。冷却室54内の冷却媒体gは、底壁47を介して
溶湯Mを冷却する。冷却媒体gの抜熱能が底壁47の面
内で均一化されているので、冷却された溶湯Mから底壁
47の下面に万遍なくα−Alが晶出する。溶湯Mとの
熱交換によって昇温した冷却媒体gは、冷却室54から
内管41内の排気通路55を経て、排気孔56から系外
に排出される。
【0011】先ず初晶の金属間化合物を炉底に晶出沈降
させた後、回転冷却体30に冷却媒体gを流し、α−A
l晶が回転冷却体30の表面で凝固する際に不純物元素
や晶出する金属間化合物Iを溶湯Mに拡散させる周速で
回転する。過度に大きな回転速度では、回転冷却体30
の回転によって発生する渦が大きくなり、歩留り低下の
原因となるアルミニウムの酸化が進行するばかりでな
く、溶湯Mの飛散によって安全上及び操業上の不都合を
生じる。また、凝固したα−Al層が遠心力によって溶
湯M中に飛散し、凝固効率が悪化する。回転冷却体30
の回転速度は、具体的には外周速0.2〜8m/秒の範
囲で選定とすることが好ましい。また、溶湯Mの表面に
浮遊している酸化皮膜の巻込みを防止する上では回転冷
却体30の一方向回転が好ましいが、回転冷却体30を
周期的に交互回転させることもできる。α−Al晶が設
定厚みまで成長したとき、冷却媒体gの供給及び回転冷
却体30の回転を止め、モータ37を回転させて回転冷
却体30をルツボ本体11から取り出す。その後、直ち
に精製容器10全体を傾動させ、残りの溶湯M及び炉底
に堆積した金属間化合物Iを排出する。次いで、回転冷
却体30の周面(図1)や底壁47(図2)上に晶出し
たα−Al晶を、精製炉の側に配置している精製メタル
回収炉に移し、溶解して回収する。α−Al晶が晶出成
長した凝固体は、機械的な掻取りによっても分離回収さ
れる。
【0012】
【作用】本発明では、不純物の一部が金属間化合物の初
晶として晶出する組成をもつアルミニウム合金を精製す
る際、先ず金属間化合物を晶出分離し、次いでα−Al
晶を回転冷却体上に晶出成長させる。金属間化合物の沈
降分離工程では、保持炉又は精製炉に収容しているアル
ミニウム合金溶湯を680〜600℃の温度範囲を0.
1〜8時間かけて冷却することにより、初晶として晶出
する金属間化合物を炉底に沈降分離させる。沈降分離し
た金属間化合物は、精製作業終了後に残湯と共に炉外に
排出される。したがって、この工程は、溶解炉,保持
炉,精製炉の何れを使用することも可能である。一般に
アルミニウムスクラップの溶解温度は、750℃以上で
あり、各合金元素が完全に溶解する。溶解後に、溶湯温
度を徐々に降下させ、680〜600℃に溶湯温度が達
したとき、AlFeMnSi系やAlFeMnCrSi
系等の金属間化合物が初晶として晶出を開始する。本発
明者等の実験によるとき、この温度範囲における処理で
は、Cu,Ti,Zn,Mg等が金属間化合物として沈
降分離される割合は非常に小さく、Fe,Mn及びCr
が主として除去された。また、Si含有量も前記金属間
化合物の生成に伴って減少し、その後の精製効率を上げ
てアルミニウム合金スクラップを再利用し易いものとし
ている。
【0013】たとえば、Si:7.4重量%,Fe:
0.8重量%,Cu:2.5重量%,Mn:0.3重量
%,Mg:0.3重量%及びZn:0.3重量%を含む
Al合金溶湯を徐冷し、示差走査熱量計で熱分析したと
ころ、図3に示すように冷却時間の経過に伴って発生熱
量が変化した。図3では、発生熱量の位置が晶出物の晶
出温度に相当し、平衡状態図及び金属組織の観察によっ
て晶出物を同定した。図3にみられるように、最初に6
24.0℃でAlFeMnSi系金属間化合物が溶湯中
に晶出し、α−Al晶の晶出は595.9℃で始まって
いる。そして、Al−Si共晶が567.4℃で、Al
SiCuMg系金属間化合物が509.4℃で晶出して
いる。
【0014】図3から、α−Al晶の晶出が始まる60
0℃以上の温度でAlFeMnSi系金属間化合物を炉
底に沈降分離させるとき、晶出したα−Al晶に含まれ
るFe,Mn等の不純物が抑制されることが判る。Al
FeMnSi系金属間化合物の沈降分離は、0.1〜8
時間,好ましくは4〜6時間の範囲で行われる。このと
き、溶湯温度を徐々に下げても、或いは680〜600
℃の範囲にある一定温度に維持する何れの方式を採用す
ることもできる。処理時間が0.1時間より短いと、A
lFeMnSi系金属間化合物が十分に分離されず、得
られたα−Al晶に持ち込まれることがある。逆に、8
時間以上の時間をかけても、処理時間の長期化に伴った
効果が得られず、熱消費量の増大を招く。また、Al−
Si共晶の晶出が開始する570℃以上の温度でα−A
lの晶出成長を終了させるとき、得られた精製Alに含
まれるSi,Cu,Mg等の不純物含有量が抑制され
る。α−Al晶の晶出温度は、Si濃度によっても変化
するが、600〜570℃の範囲でα−Al晶の晶出を
開始し終了させるとき、全溶解量に対して約40%の回
収率で精製アルミニウムが得られる。
【0015】α−Al晶の晶出成長に際しては、回転冷
却体30への冷却媒体gの供給を開始し、回転冷却体3
0の周面(図1)又は底壁47(図2)に晶出したα−
Al晶を成長させる。α−Al晶は、回転冷却体30の
回転によって純度が高められる。このとき、α−Al晶
の純度を上げるために、α−Al晶の晶出速度(凝固速
度)が30〜300mm/時の範囲に維持されるよう
に、回転冷却体30の回転数、回転冷却体30への冷却
媒体gの供給量,精製中溶湯Mの冷却速度等を制御する
ことが好ましい。30mm/時より遅い晶出速度では、
純度はよいものの、生産性に劣る。逆に300mm/時
を超える晶出速度では、不純物元素の混入がみられ、得
られる精製アルミニウムの純度が低下する。
【0016】実施例1 内径430mm及び高さ720mmの黒鉛製ルツボを図
1に示す精製装置に装着し、溶湯を精製した。回転冷却
体30としては、外径100mmの黒鉛管を使用した。
α−Alの凝固点が約595℃のアルミニウムスクラッ
プ原料溶湯35kgをルツボに装入し、750℃に加熱
した。溶融が完了した時点で、溶湯Mに回転冷却体30
を湯面下300の位置まで浸漬し、自然放冷により溶湯
Mを徐々に610℃まで冷却した。そして、610℃の
一定温度に保持し、保持時間が成分変動に及ぼす影響を
調査した。なお、この段階では、回転冷却体30に冷却
媒体gを供給しなかった。
【0017】
【表1】
【0018】調査結果を表1に示す。なお、表1には、
精製後の残湯を撹拌して750℃まで昇温し、炉底に沈
降した金属間化合物を溶かし込んだものを分析した結果
も併せ示す。残湯成分を出発原料の成分と比較すると、
Fe及びMn含有量が上がっていることから、610℃
に保持することによりFe及びMnを含む金属間化合物
が溶湯から分離されていることが判る。成分が異なるア
ルミニウムスクラップを使用して同様な実験を繰り返し
たところ、平均してSiは0.1〜0.3重量%,Fe
は0.25重量%,Mnは0.15重量%,Crは0.
02〜0.03重量%程度低下した。他方、Ti,Z
n,Mgは、610℃保持によっても濃度がほとんど変
化しなかった。また、同様な条件の下で、溶湯を600
℃に保持したときの保持時間が濃度変動に与えた影響を
表2に示す。この場合にも、表1と同様にFe,Cr、
Mn及びSiの含有量が低下した。なお、表2中には、
表1と同様に精製後の残湯を撹拌して750℃まで昇温
し、炉底に沈降した金属間化合物を溶かし込んだものを
分析した結果を併せて示した。また、参考として、回転
冷却体表面に晶出させた精製品の組成をも併せて示し
た。
【0019】
【0020】AlFeMnSi系の金属間化合物を61
0℃×5時間の保持によって沈降分離した後、冷却媒体
gとして空気を1,000リットル/分の流量で回転冷
却体30に供給しながら、回転冷却体を200rpmの
速度で回転し、600〜570℃の間を25時間かけて
冷却速度57℃/時で冷却した。この冷却によって、回
転冷却体30の周面にα−Al晶が30mmの厚みで成
長した。得られたα−Al晶を成分分析したところ、S
i:3.85重量%,Fe:0.20重量%,Cu:
1.58重量%,Ti:0.04重量%,Mn:0.0
8重量%,Cr:0.01重量%,Zn:0.42重量
%,Mg:0.21重量%であった。実施例2 また、α−Al晶の晶出成長過程における操作条件のう
ち、回転冷却体30の回転速度が精製アルミニウムの成
分に及ぼす影響を、図1に示す装置を使用し調査した。
使用したアルミニウムスクラップは、760℃で溶解し
た段階では表3に示す組成をもっていた。この溶湯を6
10℃で5時間保持したところ、表3に示すようにS
i,Fe,Cu及びMnの濃度が低下していた。
【0021】
【表3】
【0022】次いで、アルミニウム合金溶湯を、種々の
回転数で外径100mmの回転冷却体を回転させなが
ら、600〜570℃の範囲を0.2〜3時かけて冷却
した。なお、冷却媒体である空気の流量は、1,000
リットル/分の一定値に維持した。得られた精製アルミ
ニウムは、回転冷却体の回転数に応じて表4に示すよう
に合金成分の濃度が異なっていた。なお、表4の最終行
に記載の「610℃×5時間処理後の分析値」は、溶湯
を600℃以下に下げて回転冷却体にアルミニウムを精
製付着させる前のアルミニウム合金溶湯組成を示すもの
である。表4から、回転数が大きくなるほどFe,C
u,Mg等の不純物濃度は低下する傾向であることがわ
かった。他方、Mn,Cr,Zn等が回転数による影響
をあまり受けず、Tiは逆に濃縮されている。このよう
に大きな回転数がFe,Cu,Mg等の濃度低下に有効
なことは、凝固界面に濃縮される不純物が金属間化合物
となって溶湯中に拡散されることによるものと推察され
る。実施例3 また、α−Al晶の晶出成長過程における操作条件のう
ち、冷却媒体の流量等の冷却条件が精製アルミニウムの
成分に及ぼす影響を、同じく図1に示す装置を使用し調
査した。使用したアルミニウムスクラップは、実施例2
で使用したものと同じもので、表3に示す組成をもつも
のである。回転冷却体30に送り込む空気(冷却媒体
g)の供給量を変え、空気の流量が精製結果に及ぼす影
響を調査した。調査結果を表5に示す。なお、表5の最
終行に記載の「610℃×5時間処理後の分析値」は、
前記表4と同じく、回転冷却体にアルミニウムを精製付
着させる前のアルミニウム合金溶湯組成を示すものであ
る。
【0023】実施例4 更に、精製時間を40分に設定し、回転冷却体30の回
転数及び空気の供給量が処理結果や精製品の濃度に及ぼ
す影響を、同じく図1に示す装置を使用し調査した。使
用したアルミニウムスクラップは、実施例2で使用した
ものと同じもので、表3に示す組成をもつものである。
調査結果を表6に示す。なお、表6の最終行に記載の
「610℃×5時間処理後の分析値」は、前記表4と同
じく、回転冷却体にアルミニウムを精製付着させる前の
アルミニウム合金溶湯組成を示すものである。表6か
ら、冷却速度の上昇に伴って精製重量が増加し、精製さ
れたアルミニウムの純度は回転冷却体30の回転数に依
存していることが読み取れる。しかし、回転数の上昇
は、精製重量を減少させる方向に作用している。これ
は、高速回転するほど、回転冷却体30の周面に晶出成
長したα−Al晶が遠心力で溶湯M中に飛散するためで
あると推察される。この場合、冷却媒体gの供給量を多
くすることにより、回転冷却体30の周面にα−Al晶
を積極的に固着させる必要がある。
【0024】
【表4】
【0025】
【表5】
【0026】
【表6】
【0027】表5〜6から明らかなように、600〜5
70℃でアルミニウム合金溶湯を精製するとき、単位時
間当りの生産量が最も大きい操業条件がある。そこで、
目標とする純度が定まると、その目標純度に応じて回転
冷却体30の回転数,冷却媒体gの流量,精製中の溶湯
の冷却速度等を相関的に制御することにより、必要とす
る純度をもった精製アルミニウムが高生産性で得られる
ことが判る。
【0028】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明において
は、初晶が金属間化合物である組成をもつアルミニウム
スクラップの溶湯を偏析凝固させアルミニウムを精製す
るとき、680〜600℃の温度範囲を0.1〜8時間
かけて冷却することによりSi,Fe,Mn,Cr等の
不純物を金属間化合物として溶湯から沈降分離した後、
600〜570℃の温度範囲でα−Al晶を回転冷却体
の表面に晶出成長させている。そして、溶湯温度が57
0℃を下回る状態になったとき、回転冷却体の表面に付
着しているα−Al層をCu,Mg等の不純物を含む残
湯から分離し、精製アルミニウムを得ている。このよう
にして本発明によるとき、アルミニウム溶湯の冷却過程
で晶出する金属間化合物の影響を受けることなく、純度
の高い精製アルミニウムが安定操業条件の下で得られ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に従った精製方法を実施する精製装置
の一例
【図2】 本発明に従った精製方法を実施する精製装置
の他の例
【図3】 冷却時間の経過に従って異なる晶出物が溶湯
から晶出することを示したグラフ
【符号の説明】
M:溶湯 α−Al:精製された晶出物 I:金属
間化合物 g:冷却媒体 10:精製容器 20:加熱機構 30:回転冷却
フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭63−105940(JP,A) 特開 昭64−73027(JP,A) 特開 昭60−190531(JP,A) 特開 昭63−162823(JP,A) 特開 平5−295465(JP,A) 特開 平6−299265(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22B 1/00 - 61/00 C22C 1/02

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 不純物の一部としてFe、Mn、Crを
    含有するAl−Si系のアルミニウム合金スクラップ
    溶解し、その溶湯を保持炉又は精製炉で680〜600
    ℃の温度範囲を0.1〜8時間かけて冷却することによ
    前記Fe、Mn、Crをアルミニウム合金中のAl及
    びSiとで金属間化合物を形成させて炉底に沈降分離さ
    せた後、溶湯温度を更に下降させ、溶湯温度が600〜
    570℃の範囲で、溶湯に浸漬している回転冷却体を冷
    媒で冷却することにより回転冷却体の表面にα−Al晶
    を晶出成長させることを特徴とするアルミニウムスクラ
    ップの精製方法。
  2. 【請求項2】 請求項1記載のα−Al晶を晶出させる
    とき、不純物濃縮液がα−Al晶の晶出物から溶湯中に
    拡散されるように回転冷却体の回転数,回転冷却体に供
    給する冷媒の流量,精製中の溶湯の冷却速度を制御する
    アルミニウムスクラップの精製方法。
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