JP3784332B2 - ガリウムの精製方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガリウムの精製方法であって、特に、ガリウムに対し大きな偏析係数を有する不純物を含むガリウムの精製方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ガリウムは貴重な資源であることから資源のリサイクルが重要である。そこで例えば、半導体スクラップ材から回収された粗ガリウムに対しても、従来は、精製電解法、分別結晶法、ゾーンメルト法および単結晶引き上げ法等の精製おこなわれ、ガリウムが精製されてきた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記精製方法を半導体スクラップ材から回収された粗ガリウムに適用する場合、次のような問題点があることが本発明者によって明らかにされた。
すなわち、スクラップ材、特に半導体スクラップ材から回収された粗ガリウムには、インジウム、金、ニッケル、ゲルマニウム、および銅等の不純物が含まれている。
このような不純物を含む粗ガリウムに対し、例えば電解精製法を適用すると、前記粗ガリウム中の不純物の金がコロイド状になってガリウム中に分散してしまうため、ガリウム精製が困難になってしまう。
【0004】
また、分別結晶法、ゾーンメルト法および単結晶引き上げ法は、いずれも偏析現象を利用した精製法だが、前記粗ガリウム中の不純物の金、ゲルマニウム、およびニッケルはいずれもガリウムに対して偏析係数が大きい。このため、粗ガリウム中の不純物に応じて、処理の繰り返し処理回数が増えるため、精製コストが大きくアップしてしまう。
そのため、簡便、且つ低コストな処理で前記粗ガリウム中の不純物を除去できるガリウムの精製方法が望まれていた。
【0005】
本発明は、上述のような背景のもとでなされたものであり、従来の精製法では精製が困難な、金、ゲルマニウム、およびニッケル等を不純物として含む粗ガリウムの新規な精製法の提供を目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上述の課題を解決するために、本発明者が鋭意研究した結果、前記粗ガリウム融解液中へマグネシウムを添加し混合させると、前記不純物との間で金属間化合物を生成することを見出した。
そして、この金属間化合物を、ガリウム融解液より分離することで、前記粗ガリウムの精製が簡便、且つ低コストで実現できることに想到したものである。
【0007】
すなわち、第1の発明は、ガリウムの精製方法であって、
ガリウム融解液にマグネシウムを添加する第1の工程と、
マグネシウムを添加された前記ガリウム融解液を冷却する第2の工程と、
前記第2の工程で冷却されたガリウム融解液より析出してくる固形分をガリウム融解液より分離する第3の工程とを有することを特徴とするガリウムの精製方法である。
【0008】
第2の発明は、第1の発明に記載のガリウムの精製方法であって、
前記第2の工程において、前記マグネシウムを添加されたガリウム融解液の側面または底面より冷却をおこない、
前記第3の工程において、ガリウム融解液の表面に析出してくる固形分をガリウム融解液より分離することを特徴とするガリウムの精製方法である。
【0009】
第3の発明は、第1または第2の発明に記載のガリウムの精製方法であって、
前記第1の工程において、ガリウム融解液へ添加するマグネシウムの重量は、前記ガリウム融解液に含有される不純物重量の等倍〜100倍の重量であることを特徴とするガリウムの精製方法である。
【0010】
第4の発明は、第1ないし第3の発明のいずれかに記載のガリウムの精製方法であって、
前記第1の工程において、ガリウム融解液の温度を60〜200℃に設定することを特徴とするガリウムの精製方法である。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の一実施の形態例にかかるガリウムの精製方法の概略構成を示すフロー図である。
以下、図1を参照しながら、本発明の一実施の形態例にかかるガリウムの精製方法を説明する。
【0012】
本実施の形態例は、以下の工程を有する。
(1)上述した第1の工程である、不純物を含む粗ガリウムにマグネシウムを添加するマグネシウム添加工程。
(2)上述した第2の工程である、マグネシウムが添加されたガリウム融解液を冷却する冷却工程。
(3)上述した第3の工程である、冷却されたガリウム融解液より析出してくる、不純物とマグネシウムとの金属間化合物を含む固形分を、ガリウム融解液から分離する分離工程。
【0013】
次に、上記各工程について詳細に説明する。
(1)マグネシウム添加工程
(a)粗ガリウム融解
原料である粗ガリウム中にマグネシウムを融解させるため、ガリウムを融点(29.7℃)以上に加熱し、ガリウム融解液とする。
この時、ガリウム融解液の温度は高い方が、次工程においてマグネシウムの融解時間が短縮され作業時間の観点より好ましいが、マグネシウムが前記不純物と反応して生成する前記金属間化合物の融点(約600℃)以下であることが必要である。
さらに、他の作業性や装置のコスト等を考慮すると、ガリウム融解液の温度は60〜200℃が好ましい。
【0014】
(b)マグネシウム添加
ガリウム融解液が所望の温度になったら、マグネシウムを添加する。
ここで、マグネシウム以外の添加物としてアルミニウム、ナトリウム等を添加してもマグネシウムと同様に粗ガリウムの精製が可能である。
しかし、アルミニウム、ナトリウム等を添加した場合よりも、マグネシウムを添加してガリウム精製を行った場合のほうが、析出分離される固形分を原料として、ここから再度ガリウムを回収しようとする際、ガリウムの精製が容易となるので、マグネシウムを添加するのが好ましい。
【0015】
マグネシウムの添加量は、前記ガリウム融解液に含有される不純物と金属間化合物を生成するのに必要な当量以上であればよいが、実際の作業においては、前記ガリウム融解液に含有される不純物重量の等倍〜100倍の重量であることが好ましい。マグネシウムの添加量が等倍以上ないと、不純物とマグネシウムが十分に反応せず、マグネシウムと不純物との金属間化合物が生成しづらくなり、ガリウムの精製効果が低下するからである。
さらに、不純物は前記ガリウム融解液中に均等に分散しているとは限らず、偏析している可能性もある。この場合、添加するマグネシウム量が理論上の最小必要量であると、マグネシウムが不純物と接触する可能性が低下することから、理論上の最小必要量より余裕を持って添加することが好ましい。
【0016】
また添加するマグネシウムの形態は、前記、マグネシウムが不純物と接触する可能性を上げるため、粒状でかつ小粒径であると比表面積が大きくなり好ましい。しかし、マグネシウムは大気中において非常に酸化されやすいため、作業性を考えると粒径1mm程度の粒状物の使用が好ましい。
一方、マグネシウムは高価な金属であることから精製コストを不必要に上げないためにも、添加量は不純物重量の100倍以下であることが好ましい。
以上を総合的に勘案すると、実操業においては、マグネシウム添加量を、前記ガリウム融解液に含有される不純物重量の等倍〜100倍の重量と定めておくのが好ましい方法である。さらに、マグネシウム添加量を、前記ガリウム融解液の重量の0.01〜1重量%と定めておくのも好ましい方法である。
【0017】
また、前記粗ガリウムが、例えば半導体スクラップ材から回収された粗ガリウムに限られるのであれば、マグネシウム添加量を前記ガリウム融解液の重量の0.5〜1重量%と定めておくのも好ましい方法である。
ここで、添加するマグネシウムは、純度99.99%以上であることが好ましい。マグネシウムの純度が99.99%以下では、添加により却ってガリウム融解液を汚染してしまう恐れがあるからである。但し、マグネシウム中の不純物が、ガリウム、砒素、金、銀、ニッケル等の、本発明によって除去可能な不純物であるのならこの限りではない。
【0018】
(c)マグネシウム融解
前記ガリウム融解液に前記マグネシウムを添加した後、撹拌器を用いて、10〜500rpmの条件でガリウム融解液を撹拌する。
攪拌条件の詳細は、前記ガリウム融解液の温度、粘度、容量、並びに攪拌槽の形状によって適宜決定される。
一般的には、攪拌力が強いとマグネシウムと不純物との金属間化合物の生成が速まるが、反面、一旦生成した金属間化合物が再度ガリウム融解液中に巻き込まれ、ガリウム中への再融解につながる可能性もある。
そこで、強攪拌の後に弱攪拌をおこなうこととし、攪拌によるガリウム融解液の流れを水平層流的に保つことで、前記、生成した金属間化合物を、ガリウム融解液上に浮遊させ易くすることが好ましい。
【0019】
撹拌時間はマグネシウムを混合してから1〜24時間が好ましい。
何となれば、攪拌は、マグネシウムとガリウム融解液中の不純物とが接触し、両者の金属間化合物を生成する可能性を上げるためにおこなうのであるが、1時間以下では前記金属間化合物が十分に生成されない。また必要時間以上おこなうと、今度はマグネシウムとガリウムとが金属間化合物を生成し始め、精製ガリウムの収率が低下してしまうからである。
最適攪拌時間は、マグネシウム添加量、攪拌時のガリウム融解液の流液状態により判断するのが好ましい。
尚、このマグネシウム融解において、添加されたマグネシウムの一部が未融解であっても、前記ガリウム融解液中の不純物との金属間化合物の生成に必要な当量以上のマグネシウムが、ガリウム融解液へ融解していれば問題はない。この未融解のマグネシウムは後述する冷却工程にて、ガリウム融解液の表面に浮上してくるので、容易に除去することができる。
【0020】
尚、「(1)マグネシウム添加工程」において、工程短縮の観点より、未融解の粗ガリウムと「(b)マグネシウム添加」にて記載した所要量のマグネシウムとを容器にとり、上述した「(a)粗ガリウム融解」と同様の操作により加熱してもよい。この操作により粗ガリウムが融解するので、続けて「(c)マグネシウム融解」の操作をおこなうことが可能である。
【0021】
(2)冷却工程
上述したマグネシウム添加工程の撹拌が完了したら、前記ガリウム融解液をガリウムの融点温度まで冷却する。このとき、前記ガリウム融解液の側面または底面の一方向より、降温速度は約15℃/時間以下で冷却を開始することが好ましい。
冷却の進行と伴に、生成した前記金属間化合物が核となってガリウム金属結晶が生成するが、このガリウム金属結晶は比重がガリウム融解液より小さいため、固形分としてガリウム融解液の表面に浮上してくる。
【0022】
(3)分離工程
上述の冷却工程の後、ガリウム融解液の表面に浮上してきた、前記金属間化合物を核とした前記ガリウム金属結晶を含む固形分を掻き取り、または吸引等により除去して精製ガリウムを得ることができる。
または、表面に前記固形分が浮上した前記ガリウム融解液より、ガリウム融解液のみを吸引により回収し精製ガリウムを得ることもできる。
しかし、金属間化合物の生成量が微量のため、浮上した固形分が微量で掻き取り等の操作が困難な場合もある。
そこでこのような場合は、前記ガリウム融解液の温度をガリウムの融点より高い温度(30℃以上)に保ち、前記金属間化合物を核としたガリウム金属結晶を成長させ、固形分を掻き取りやすい大きさとした後、これを除去するのが好ましい。
【0023】
(実施例1)
図2に示す不純物を含有する粗ガリウムを、3つのステンレス容器へ各々500g入れ試料A、B、Cとし、150℃まで加熱して、ガリウム融解液とした。
次に、このガリウム融解液へ、ショット状の純度99.99%のマグネシウムを、試料Aには0.25重量%、試料Bには0.5重量%、試料Cには0.75重量%添加した。
そして、試料A〜Cのガリウム融解液の液温を150℃に保持したまま撹拌融解を実施した。撹拌装置にはステンレス製のインペラーを用い、撹拌条件は撹拌速度300rpmとした。撹拌開始後、約1.5時間で、マグネシウムが混合したので、そこからさらに攪拌を2時間継続した。
攪拌完了後、自然冷却(降温速度10℃/min)を開始し、ガリウム融解液の液温を30℃とした。
【0024】
この時、ガリウム融解液の表面に析出し浮遊している固形分を吸引により除去し、精製ガリウム480gを得た。
得られた試料A〜Cの精製されたガリウム中の不純物量をグロー放電質量分析計により分析した。その結果を図2に示す。なお、単位はppm(wt)である。
【0025】
(実施例2)
実施例1と同様の粗ガリウムを、2つのステンレス容器へ各々500g入れ試料D、Eとし、実施例1と同様の条件で混合し、同様のマグネシウムを各々0.35重量%添加した。
実施例1と同様の撹拌装置を用い、同様の条件で撹拌した後、30℃まで冷却した。このときの降温速度を、試料Dは10℃/hr、試料Eは80℃/hrとした。
実施例1と同様に固形分を除去後、得られた試料D、E2つの精製されたガリウム中の不純物量を分析した(但し、金、ニッケル)。その結果を図3に示す。
尚、精製されたガリウムの収率は95%であった。
【0026】
以上の結果より、いずれの条件においても従来の技術で除去が困難だった、金、ニッケル等の不純物の除去が達成されていることが判明した。
また、精製されたガリウムへ特に高い純度を求めるなら、マグネシウム濃度は0.35重量%以上、降温速度は10℃/hr以下であることが好ましいことも判明した。
【0027】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明は、ガリウムの精製方法であって、
ガリウム融解液にマグネシウムを添加して融解させた後に冷却し、ガリウム融解液の表面に析出してくる固形分を除去することで、従来の精製法では精製が困難な金、ニッケル等を不純物として含むガリウムを、簡便な処理で精製することを可能にした。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態にかかる精製工程を示すフロー図である。
【図2】実施例1におけるガリウム中の不純物量を示す表である。
【図3】実施例2におけるガリウム中の不純物量を示す表である。

Claims (4)

  1. ガリウムの精製方法であって、
    ガリウム融解液にマグネシウムを添加する第1の工程と、
    マグネシウムを添加された前記ガリウム融解液を冷却する第2の工程と、
    前記第2の工程で冷却されたガリウム融解液より析出してくる固形分をガリウム融解液より分離する第3の工程とを有することを特徴とするガリウムの精製方法。
  2. 請求項1に記載のガリウムの精製方法であって、
    前記第2の工程において、前記マグネシウムを添加されたガリウム融解液の側面または底面より冷却をおこない、
    前記第3の工程において、ガリウム融解液の表面に析出してくる固形分をガリウム融解液より分離することを特徴とするガリウムの精製方法。
  3. 請求項1または2に記載のガリウムの精製方法であって、
    前記第1の工程において、ガリウム融解液へ添加するマグネシウムの重量は、前記ガリウム融解液に含有される不純物重量の等倍〜100倍の重量であることを特徴とするガリウムの精製方法。
  4. 請求項1ないし3のいずれかに記載のガリウムの精製方法であって、
    前記第1の工程において、ガリウム融解液の温度を60〜200℃に設定することを特徴とするガリウムの精製方法。
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