JP2009097542A - 車両用自動変速機の適合支援制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】部材交換などによって変速特性が変化した場合にも、適切に制御定数の適合が図られる車両用自動変速機の適合支援制御装置を提供する。
【解決手段】許容範囲移動手段118は、自動変速機10の変速結果に影響する変速構成部品が変更された場合において学習補正値dPGが一方向に偏った場合には、その一方向に前記補正値許容範囲をずらすので、定常的に生じている学習補正値dPGのばらつきの範囲が上記変速構成部品の変更後にずれたとしてもそれに合わせて上記補正値許容範囲がずれ、上記変速構成部品の変更後の変速特性に合わせて学習補正値dPGが適正に決定されることを上記補正値許容範囲が妨げることが抑えられる。
【選択図】図8
【解決手段】許容範囲移動手段118は、自動変速機10の変速結果に影響する変速構成部品が変更された場合において学習補正値dPGが一方向に偏った場合には、その一方向に前記補正値許容範囲をずらすので、定常的に生じている学習補正値dPGのばらつきの範囲が上記変速構成部品の変更後にずれたとしてもそれに合わせて上記補正値許容範囲がずれ、上記変速構成部品の変更後の変速特性に合わせて学習補正値dPGが適正に決定されることを上記補正値許容範囲が妨げることが抑えられる。
【選択図】図8
Description
本発明は、入力軸に伝達された回転を変速して出力軸から伝達する車両用自動変速機の適合支援制御装置に関するものである。
従来から、車両の自動変速機に備えられた油圧式摩擦係合要素を制御する電磁弁の駆動電流を決定するための制御定数を変速結果などに基づき学習補正する車両用自動変速機の適合支援制御装置が知られている。例えば、特許文献1の車両用自動変速機の適合支援制御装置がそれである。ここで、自動変速機に使用される部材(例えば作動油、電磁弁など)が修理などで交換されると、上記制御定数が上記部材交換前には適正であったとしても、変速特性がその部材交換により変更され上記制御定数が適正でなくなる場合がある。このような場合、早い段階で上記制御定数が適正値に近付くようにするため上記適合支援制御装置は、上記部材交換前と比較して上記学習補正を行う頻度を高くし、上記制御定数を学習補正するときの1回の更新量が大きくなることを許容する制御を実施するものであった。
特開2006−242255号公報
特開2004−84890号公報
前記制御定数の学習補正では、その制御定数を補正するための補正値が変速結果などに基づき決定され変更されることにより、上記制御定数の適正化が図られる。例えば、上記学習補正が行われることを許可する所定の条件を満たした変速の変速結果などに基づき上記補正値が変更され、所定の基準値に対して上記補正値を加算又は減算して上記制御定数が求められる。そして、上記学習補正を重ねるに従い上記補正値のばらつきは小さくなり収束していく。この点、前記特許文献1の車両用自動変速機の適合支援制御装置によれば、前記自動変速機に使用される部材が交換されるなどしてその自動変速機の制御信号に対する機械的特性すなわち変速特性が変化した場合において、その部材交換などにより上記補正値がその部材交換前の収束値とは異なる値に収束しようとする場合、早期に収束させる効果はあるものと思われる。しかし、上記制御定数の学習補正では外乱などに起因する異常な補正を排除するため、通常、上記補正値の変動可能な範囲を定めた許容範囲が個々の自動変速機ごとに調整され予め定められている。そして、前記部材交換などによる前記変速特性の変化が大幅なものであり、上記変速特性の大幅な変化により上記許容範囲を外れて上記補正値が収束しようとした場合、前記特許文献1にはこれに対す対策が示されておらず、その適合支援制御装置では、上記許容範囲を外れた補正値の収束が本来行われるべきであるにも関わらず、その補正値の収束を上記許容範囲が妨げる場合があった。その結果、例えば、変速ショックが小さくならない等の課題を生じることがあった。
また、前記部材交換を予め想定して前記許容範囲を広く設定しておくこと、或いは、上記部材交換時に上記許容範囲を広げて設定することなどの対策が考えらるが、そのようにした場合、本来なされるべきでない学習補正すなわち誤学習を許容する幅(範囲)を増やすことにもなり、例えばその結果、一時的に不適切な制御定数に基づく変速制御が行われ、変速ショックが大きくなる等の不都合が考えられた。
本発明は、以上の事情を背景としてなされたものであり、その目的とするところは、前記部材交換などによって前記変速特性が変化した場合にも、適切に前記制御定数の適合が図られる車両用自動変速機の適合支援制御装置を提供することにある。
かかる目的を達成するために、請求項1に係る発明は、(a)車両の自動変速機の変速制御に用いる制御定数を適合させるための車両用自動変速機の適合支援制御装置であって、(b)前記制御定数を補正するための補正値の上限を定める上限許容値及びその補正値の下限を定める下限許容値から構成された補正値許容範囲を記憶し、前記自動変速機の変速結果に基づき且つ前記補正値許容範囲内になるように前記補正値を決定する補正値決定手段と、(c)前記自動変速機の変速結果に影響する変速構成部品が変更された場合において前記補正値が一方向に偏った場合には、その一方向に前記補正値許容範囲をずらす許容範囲移動手段とを、含むことを特徴とする。
請求項2に係る発明では、前記補正値が一方向に偏った場合とは、前記変速構成部品が変更されてから前記補正値決定手段が前記補正値を決定した回数である補正回数が所定の補正回数判定値より少ない場合において、前記補正値が前記変速結果に基づいて決定されるとすれば前記上限許容値を超えて決定されることになる回数又は上記補正値が上記変速結果に基づいて決定されるとすれば前記下限許容値を下回って決定されることになる回数が所定の許容範囲超回数判定値より多くなった場合であることを特徴とする。
請求項3に係る発明では、前記補正値決定手段は、前記変速制御に関係する車両状態が所定の補正実行条件を満たした場合に前記補正値を決定することを特徴とする。
請求項4に係る発明では、前記変速構成部品が変更された場合とは、その変速構成部品が変更された旨の前記車両の外部からの入力があった場合であることを特徴とする。
請求項5に係る発明は、(a)前記自動変速機は油圧式摩擦係合要素を備え、(b)前記車両はその油圧式摩擦係合要素に対する供給圧を制御する電磁弁を備え、(c)前記変速構成部品とは前記油圧式摩擦係合要素、電磁弁、又はそれらの部品であることを特徴とする。
請求項6に係る発明は、前記制御定数は、前記変速制御中に前記電磁弁を駆動するための駆動電流を決定するための定数であることを特徴とする。
請求項1に係る発明によれば、前記許容範囲移動手段は、前記自動変速機の変速結果に影響する変速構成部品が変更された場合において前記補正値が一方向に偏った場合には、その一方向に前記補正値許容範囲をずらすので、定常的に生じている上記補正値のばらつきの範囲が上記変速構成部品の変更後にずれたとしてもそれに合わせて上記補正値許容範囲がずれ、上記変速構成部品の変更後の変速特性に合わせて上記補正値が適正に決定されることを上記補正値許容範囲が妨げることが抑えられる。また、上記補正値許容範囲をずらす、すなわちその補正値許容範囲が広げれれるわけではないので、本来なされるべきでない学習補正すなわち誤学習を許容する幅(範囲)を増やすことにならない。その結果、前記制御定数の適合が適切に図られる。
請求項2に係る発明によれば、前記補正値が一方向に偏った場合とは、前記変速構成部品が変更されてから前記補正値決定手段が前記補正値を決定した回数である補正回数が所定の補正回数判定値より少ない場合において、前記補正値が前記変速結果に基づいて決定されるとすれば前記上限許容値を超えて決定されることになる回数又は上記補正値が上記変速結果に基づいて決定されるとすれば前記下限許容値を下回って決定されることになる回数が所定の許容範囲超回数判定値より多くなった場合であるので、容易に上記補正値が一方向に偏ったこと及びその偏った方向を検出できる。また、上記変速構成部品が変更されたことにより上記補正値が偏ったのであるとすればその変更後直ちに上記補正値はその偏った傾向を示すところ、上記変速構成部品の変更後の補正回数と前記補正回数判定値とが比較されることで、前記補正値が前記変速結果に基づいて決定されるとすれば前記補正許容範囲を外れて決定されることが前記変速構成部品の変更とは無関係にあった場合に、それに基づいて上記補正値が一方向に偏ったと判断されることは回避される。
ここで好適には、前記補正回数判定値は、前記変速構成部品の変更とは無関係に前記補正値許容範囲がずらされることを回避するための予め定められた判定値である。
また好適には、前記許容範囲超回数判定値は、前記補正値が一方向に偏ったか否かを判定するための予め定められた判定値である。
請求項3に係る発明によれば、前記補正値決定手段は、前記変速制御に関係する車両状態が所定の補正実行条件を満たした場合に前記補正値を決定するので、上記補正値が決定されるのに適した車両状態のもとでの前記自動変速機の変速結果に基づいて適切に上記補正値が決定される。
請求項4に係る発明によれば、前記変速構成部品が変更された場合とは、その変速構成部品が変更された旨の前記車両の外部からの入力があった場合であるので、その変速構成部品が変更されたことを自動的に検出する機能を上記車両が備える必要がない。
請求項5に係る発明によれば、前記自動変速機は油圧式摩擦係合要素を備え、前記車両はその油圧式摩擦係合要素に対する供給圧を制御する電磁弁を備え、前記変速構成部品とは前記油圧式摩擦係合要素、電磁弁、又はそれらの部品であるので、それら油圧式摩擦係合要素等が変更され上記自動変速機の変速特性が変わっても前記制御定数の適合が適切に図られる。
請求項6に係る発明によれば、上記制御定数は、前記変速制御中に前記電磁弁を駆動するための駆動電流を決定するための定数であるので、上記制御定数の適合が図られることにより前記変速制御が適正化される。
ここで好適には、前記許容範囲移動手段が前記補正値許容範囲をずらす回数は所定の許容範囲移動制限値以下に制限される。このようにすれば、前記変速構成部品の変更とは無関係に外乱などに起因して上記補正値許容範囲がずらされてしまうことを抑えることができる。
また好適には、変速時に前記油圧式摩擦係合要素の係合動作を速やかに進行させるために加えられる係合圧であって係合が開始されない程度の所定の係合圧である低圧待機圧が、前記制御定数に基づいて決定される。このようにすれば、上記低圧待機圧によって変化する変速ショックをその制御定数の適合により低減できる。
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明が好適に適用される車両用自動変速機(以下、「自動変速機」と表す)10の構成を説明する骨子図であり、図2は複数の変速段を成立させる際の油圧式摩擦係合要素(以下、「係合要素」と表す)の作動を説明する作動表である。この自動変速機10は、車体に取り付けられる非回転部材としてのトランスミッションケース(以下、「ケース」と表す)26内において、ダブルピニオン型の第1遊星歯車装置12を主体として構成されている第1変速部14と、シングルピニオン型の第2遊星歯車装置16およびダブルピニオン型の第3遊星歯車装置18を主体として構成されている第2変速部20とを共通の軸心上に有し、入力軸22の回転を変速して出力軸24から出力する。入力軸22は入力回転部材に相当するものであり、本実施例では走行用の動力源であるエンジン30によって回転駆動されるトルクコンバータ32のタービン軸である。出力軸24は出力回転部材に相当するものであり、例えば図示しない差動歯車装置(終減速機)や一対の車軸等を順次介して左右の駆動輪を回転駆動する。なお、この自動変速機10はその軸心に対して略対称的に構成されており、図1の骨子図においてはその軸心の下半分が省略されている。
上記第1遊星歯車装置12は、サンギヤS1、互いに噛み合う複数対のピニオンギヤP1、そのピニオンギヤP1を自転および公転可能に支持するキャリヤCA1、ピニオンギヤP1を介してサンギヤS1と噛み合うリングギヤR1を備え、サンギヤS1、キャリアCA1、およびリングギヤR1によって3つの回転要素が構成されている。キャリヤCA1は入力軸22に連結されて回転駆動され、サンギヤS1は回転不能にケース26に一体的に固定されている。リングギヤR1は中間出力部材として機能し、入力軸22に対して減速回転させられて、回転を第2変速部20へ伝達する。本実施例では、入力軸22の回転をそのままの速度で第2変速部20へ伝達する経路が、予め定められた一定の変速比(=1.0)で回転を伝達する第1中間出力経路PA1であり、第1中間出力経路PA1には、入力軸22から第1遊星歯車装置12を経ることなく第2変速部20へ回転を伝達する直結経路PA1aと、入力軸22から第1遊星歯車装置12のキャリヤCA1を経て第2変速部20へ回転を伝達する間接経路PA1bとがある。また、入力軸22からキャリヤCA1、そのキャリヤCA1に配設されたピニオンギヤP1、およびリングギヤR1を経て第2変速部20へ伝達する経路が、第1中間出力経路PA1よりも大きい変速比(>1.0)で入力軸22の回転を変速(減速)して伝達する第2中間出力経路PA2である。
前記第2遊星歯車装置16は、サンギヤS2、ピニオンギヤP2、そのピニオンギヤP2を自転および公転可能に支持するキャリヤCA2、ピニオンギヤP2を介してサンギヤS2と噛み合うリングギヤR2を備えている。また、前記第3遊星歯車装置18は、サンギヤS3、互いに噛み合う複数対のピニオンギヤP2およびP3、そのピニオンギヤP2およびP3を自転および公転可能に支持するキャリヤCA3、ピニオンギヤP2およびP3を介してサンギヤS3と噛み合うリングギヤR3を備えている。
上記第2遊星歯車装置16および第3遊星歯車装置18では、一部が互いに連結されることによって4つの回転要素RM1〜RM4が構成されている。具体的には、第2遊星歯車装置16のサンギヤS2によって第1回転要素RM1が構成され、第2遊星歯車装置16のキャリヤCA2および第3遊星歯車装置のキャリヤCA3が互いに一体的に連結されて第2回転要素RM2が構成され、第2遊星歯車装置16のリングギヤR2および第3遊星歯車装置18のリングギヤR3が互いに一体的に連結されて第3回転要素RM3が構成され、第3遊星歯車装置18のサンギヤS3によって第4回転要素RM4が構成されている。この第2遊星歯車装置16および第3遊星歯車装置18は、キャリアCA2およびCA3が共通の部材にて構成されているとともに、リングギヤR2およびR3が共通の部材にて構成されており、且つ第2遊星歯車装置16のピニオンギヤP2が第3遊星歯車装置18の第2ピニオンギヤを兼ねているラビニヨ型の遊星歯車列とされている。
上記第1回転要素RM1(サンギヤS2)は、第1ブレーキB1を介してケース26に選択的に連結されて回転停止され、第3クラッチC3を介して中間出力部材である第1遊星歯車装置12のリングギヤR1(すなわち第2中間出力経路PA2)に選択的に連結され、さらに第4クラッチC4を介して第1遊星歯車装置12のキャリヤCA1(すなわち第1中間出力経路PA1の間接経路PA1b)に選択的に連結されている。第2回転要素RM2(キャリヤCA2およびCA3)は、第2ブレーキB2を介してケース26に選択的に連結されて回転停止させられるとともに、第2クラッチC2を介して入力軸22(すなわち第1中間出力経路PA1の直結経路PA1a)に選択的に連結されている。第3回転要素RM3(リングギヤR2およびR3)は、出力軸24に一体的に連結されて回転を出力するようになっている。第4回転要素RM4(サンギヤS3)は、第1クラッチC1を介してリングギヤR1に連結されている。なお、第2回転要素RM2とケース26との間には、第2回転要素RM2の正回転(入力軸22と同じ回転方向)を許容しつつ逆回転を阻止する一方向クラッチF1が第2ブレーキB2と並列に設けられている。
図3は、上記第1変速部14および第2変速部20の各回転要素の回転速度を直線で表すことができる共線図であり、下の横線が回転速度「0」を示し、上の横線が回転速度「1.0」すなわち入力軸22と同じ回転速度を示している。また、第1変速部14の各縦線は、左側から順番にサンギヤS1、リングギヤR1、キャリヤCA1を表しており、それ等の間隔は第1遊星歯車装置12のギヤ比ρ1(=サンギヤS1の歯数/リングギヤR1の歯数)に応じて定められる。第2変速部20の4本の縦線は、左側から右端へ向かって順番に第1回転要素RM1(サンギヤS2)、第2回転要素RM2(キャリヤCA2およびキャリヤCA3)、第3回転要素RM3(リングギヤR2およびリングギヤR3)、第4回転要素RM4(サンギヤS3)を表しており、それ等の間隔は第2遊星歯車装置16のギヤ比ρ2および第3遊星歯車装置18のギヤ比ρ3に応じて定められる。
そして、この図3に示す共線図から明らかなように、第1クラッチC1および第2ブレーキB2が係合させられて、第4回転要素RM4が第1変速部14を介して入力軸22に対して減速回転させられるとともに、第2回転要素RM2が回転停止させられると、出力軸24に連結された第3回転要素RM3は「1st」で示す回転速度で回転させられ、最も大きい変速比(=入力軸22の回転速度/出力軸24の回転速度)の第1変速段「1st」が成立させられる。
第1クラッチC1および第1ブレーキB1が係合させられて、第4回転要素RM4が第1変速部14を介して入力軸22に対して減速回転させられるとともに、第1回転要素RM1が回転停止させられると、第3回転要素RM3は「2nd」で示す回転速度で回転させられ、第1変速段「1st」よりも変速比が小さい第2変速段「2nd」が成立させられる。
第1クラッチC1および第3クラッチC3が係合させられて、第4回転要素RM4および第1回転要素RM1が第1変速部14を介して入力軸22に対して減速回転させられて第2変速部20が一体回転させられると、第3回転要素RM3は「3rd」で示す回転速度で回転させられ、第2変速段「2nd」よりも変速比が小さい第3変速段「3rd」が成立させられる。
第1クラッチC1および第4クラッチC4が係合させられて、第4回転要素RM4が第1変速部14を介して入力軸22に対して減速回転させられるとともに、第1回転要素RM1が入力軸22と一体回転させられると、第3回転要素RM3は「4th」で示す回転速度で回転させられ、第3変速段「3rd」よりも変速比が小さい第4変速段「4th」が成立させられる。
第1クラッチC1および第2クラッチC2係合させられて、第4回転要素RM4が第1変速部14を介して入力軸22に対して減速回転させられるとともに、第2回転要素RM2が入力軸22と一体回転させられると、第3回転要素RM3は「5th」で示す回転速度で回転させられ、第4変速段「4th」よりも変速比が小さい第5変速段「5th」が成立させられる。
第2クラッチC2および第4クラッチC4が係合させられて、第2変速部20が入力軸22と一体回転させられると、第3回転要素RM3は「6th」で示す回転速度すなわち入力軸22と同じ回転速度で回転させられ、第5変速段「5th」よりも変速比が小さい第6変速段「6th」が成立させられる。この第6変速段「6th」の変速比は1である。
第2クラッチC2および第3クラッチC3が係合させられて、第1回転要素RM1が第1変速部14を介して入力軸22に対して減速回転させられるとともに、第2回転要素RM2が入力軸22と一体回転させられると、第3回転要素RM3は「7th」で示す回転速度で回転させられ、第6変速段「6th」よりも変速比が小さい第7変速段「7th」が成立させられる。
第2クラッチC2および第1ブレーキB1が係合させられて、第2回転要素RM2が入力軸22と一体回転させられるとともに、第1回転要素RM1が回転停止させられると、第3回転要素RM3は「8th」で示す回転速度で回転させられ、第7変速段「7th」よりも変速比が小さい第8変速段「8th」が成立させられる。
また、第3クラッチC3および第2ブレーキB2が係合させられると、第1回転要素RM1が第1変速部14を介して減速回転させられるとともに、第2回転要素RM2が回転停止させられて、第3回転要素RM3は「Rev1」で示す回転速度で逆回転させられ、逆回転方向で変速比が最も大きい第1後進変速段「Rev1」が成立させられる。第4クラッチC4および第2ブレーキB2が係合させられると、第1回転要素RM1が入力軸22と一体回転させられるとともに、第2回転要素RM2が回転停止させられ、第3回転要素RM3は「Rev2」で示す回転速度で逆回転させられ、第1後進変速段「Rev1」よりも変速比が小さい第2後進変速段「Rev2」が成立させられる。第1後進変速段「Rev1」、第2後進変速段「Rev2」は、それぞれ逆回転方向の第1変速段、第2変速段に相当する。
図2の作動表は、上記各変速段を成立させる際のクラッチC1〜C4、ブレーキB1、B2の作動状態を説明する図表であり、「○」は係合状態を、「(○)」はエンジンブレーキ時のみ係合状態を、空欄は解放状態をそれぞれ表している。第1変速段「1st」を成立させるブレーキB2には並列に一方向クラッチF1が設けられているため、発進時(加速時)には必ずしもブレーキB2を係合させる必要は無い。また、各変速段の変速比は、第1遊星歯車装置12、第2遊星歯車装置16、および第3遊星歯車装置18の各ギヤ比ρ1、ρ2、ρ3によって適宜定められる。
このように本実施例の自動変速機10は、変速比が異なる2つの中間出力経路PA1、PA2を有する第1変速部14および2組の遊星歯車装置16、18を有する第2変速部20により、4つのクラッチC1〜C4および2つのブレーキB1、B2の係合切換えで前進8速の変速ギヤ段が達成されるため、小型に構成され、車両への搭載性が向上する。また、図2の作動表から明らかなように、クラッチC1〜C4およびブレーキB1、B2の何れか2つを掴み替えるだけで各変速段の変速を行うことができる。また、上記クラッチC1〜C4、およびブレーキB1、B2(以下、特に区別しない場合は単に「クラッチC」、「ブレーキB」と表す)は、多板式のクラッチやブレーキなど油圧アクチュエータによって係合制御される係合要素すなわち油圧式摩擦係合要素である。
図4は、図1の自動変速機10などを制御するために車両に設けられた制御系統の要部を説明するブロック線図である。本発明の適合支援制御装置に対応する電子制御装置90は、CPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、エンジン30の出力制御や自動変速機10の変速制御等を実行するようになっており、必要に応じてエンジン制御用や変速制御用等に分けて構成される。
図4において、アクセルペダル50の操作量Accがアクセル操作量センサ52により検出されるとともに、そのアクセル操作量Accを表す信号が電子制御装置90に供給されるようになっている。アクセルペダル50は、運転者の出力要求量に応じて大きく踏み込み操作されるものであることからアクセル操作部材に相当し、アクセル操作量Accは出力要求量に相当する。
また、エンジン30の回転速度NEを検出するためのエンジン回転速度センサ58、エンジン30の吸入空気量Qを検出するための吸入空気量センサ60、吸入空気の温度TAを検出するための吸入空気温度センサ62、エンジン30の電子スロットル弁の全閉状態(アイドル状態)およびその開度θTHを検出するためのアイドルスイッチ付スロットル弁開度センサ64、車速V(出力軸24の回転速度NOUTに対応)を検出するための車速センサ66、エンジン30の冷却水温TWを検出するための冷却水温センサ68、常用ブレーキであるフットブレーキの操作の有無を検出するためのブレーキスイッチ70、シフトレバー72のレバーポジション(操作位置)PSHを検出するためのレバーポジションセンサ74、タービン回転速度NT(=入力軸22の回転速度NIN)を検出するためのタービン回転速度センサ76、油圧制御回路98内の作動油の温度であるAT油温TOILを検出するためのAT油温センサ78、車両の加速度(減速度)Gを検出するための加速度センサ80などが設けられており、それらのセンサやスイッチなどから、エンジン回転速度NE、吸入空気量Q、吸入空気温度TA、スロットル弁開度θTH、車速V、エンジン冷却水温TW、ブレーキ操作の有無、シフトレバー72のレバーポジションPSH、タービン回転速度NT、AT油温TOIL、車両の加速度(減速度)Gなどを表す信号が電子制御装置90に供給されるようになっている。
上記シフトレバー72は例えば運転席の近傍に配設され、図5に示すように、5つのレバーポジション「P」、「R」、「N」、「D」、または「S」へ手動操作されるようになっている。「P」ポジションは自動変速機10内の動力伝達経路を解放し且つメカニカルパーキング機構によって機械的に出力軸24の回転を阻止(ロック)するための駐車位置であり、「R」ポジションは自動変速機10の出力軸24の回転方向を逆回転とするための後進走行位置であり、「N」ポジションは自動変速機10内の動力伝達経路を解放するための動力伝達遮断位置であり、「D」ポジションは自動変速機10の第1速乃至第8速の変速を許容する変速範囲(Dレンジ)で自動変速制御を実行させる前進走行位置であり、「S」ポジションは変速可能な高速側の変速段が異なる複数の変速レンジ或いは異なる複数の変速段を切り換えることにより手動変速が可能な前進走行位置である。この「S」ポジションにおいては、シフトレバー72の操作毎に変速範囲或いは変速段をアップ側にシフトさせるための「+」ポジション、シフトレバー72の操作毎に変速範囲或いは変速段をダウン側にシフトさせるための「−」ポジションが備えられている。前記レバーポジションセンサ74はシフトレバー72がどのレバーポジション(操作位置)PSHに位置しているかを検出する。
また、前記油圧制御回路98には、例えば上記シフトレバー72にケーブルやリンクなどを介して連結されたマニュアルバルブが備えられ、シフトレバー72の操作に伴ってそのマニュアルバルブが機械的に作動させられることにより油圧制御回路98内の油圧回路が切り換えられる。例えば、「D」ポジションおよび「S」ポジションでは前進油圧PDが出力されて前進用回路が機械的に成立させられ、前進変速段である第1変速段「1st」〜第8変速段「8th」で変速しながら前進走行することが可能となる。電子制御装置90は、シフトレバー72が「D」ポジションへ操作された場合は、そのことをレバーポジションセンサ74の信号から判断して自動変速モードを成立させ、第1変速段「1st」〜第8変速段「8th」の総ての前進変速段を用いて変速制御を行う。
上記電子制御装置90は、例えば図6に示す車速Vおよびアクセル操作量Accをパラメータとして予め記憶された関係(マップ、変速線図)から実際の車速Vおよびアクセル操作量Accに基づいて変速判断を行い、その判断した変速段が得られるように変速制御を行う変速制御手段110(図8参照)を機能的に備えており、例えば車速Vが低くなったりアクセル操作量Accが大きくなったりするに従って変速比が大きい低速側の変速段が成立させられる。この変速制御においては、その変速判断された変速段が成立させられるように変速用の油圧制御回路98内のリニアソレノイドバルブSL1〜SL6の励磁、非励磁や電流制御が実行されてクラッチCやブレーキBの係合、解放状態が切り換えられるとともに変速過程の過渡油圧などが制御される。すなわち、本発明に電磁弁に対応する前記リニアソレノイドバルブSL1〜SL6の励磁、非励磁をそれぞれ制御することによりクラッチCおよびブレーキBの係合、解放状態を切り換えて第1変速段「1st」〜第8変速段「8th」の何れかの前進変速段を成立させる。なお、スロットル弁開度θTHや吸入空気量Q、路面勾配などに基づいて変速制御を行うなど、種々の態様が可能である。
上記図6の変速線図において、実線はアップシフトが判断されるための変速線(アップシフト線)であり、破線はダウンシフトが判断されるための変速線(ダウンシフト線)である。また、この図6の変速線図における変速線は、実際のアクセル操作量Acc(%)を示す横線上において実際の車速Vが線を横切ったか否かすなわち変速線上の変速を実行すべき値(変速点車速)VSを越えたか否かを判断するためのものであり、上記値VSすなわち変速点車速の連なりとして予め記憶されていることにもなる。なお、図6の変速線図は自動変速機10で変速が実行される第1変速段乃至第8変速段のうちで第1変速段乃至第6変速段における変速線が例示されている。
図7は、油圧制御回路98のうちリニアソレノイドバルブSL1〜SL6に関する部分を示す回路図で、クラッチC1〜C4、およびブレーキB1、B2の各油圧アクチュエータ(油圧シリンダ)34、36、38、40、42、44には、油圧供給装置46から出力されたライン油圧PLがそれぞれリニアソレノイドバルブSL1〜SL6により調圧されて供給されるようになっている。油圧供給装置46は、前記エンジン30によって回転駆動される機械式のオイルポンプ48(図1参照)や、ライン油圧PLを調圧するレギュレータバルブ等を備えており、エンジン負荷等に応じてライン油圧PLを制御するようになっている。リニアソレノイドバルブSL1〜SL6は、基本的には何れも同じ構成で、電子制御装置90(図4参照)により独立に励磁、非励磁され、各油圧アクチュエータ34〜44の油圧が独立に調圧制御されるようになっている。そして、自動変速機10の変速制御においては、例えば変速に関与するクラッチCやブレーキBの解放と係合とが同時に制御される所謂クラッチ・ツウ・クラッチ変速が実行される。例えば、図2の係合作動表に示すように5速→4速のダウンシフトでは、クラッチC2が解放されると共にクラッチC4が係合され、変速ショックを抑制するようにクラッチC2の解放過渡油圧とクラッチC4の係合過渡油圧とが適切に制御される。
ところで、一般に自動変速機10の変速制御では、自動変速機10の変速結果に影響する変速構成部品、例えば係合要素(クラッチC又はブレーキB)、リニアソレノイドバルブ(電磁弁)SL1〜SL6、又はそれらの部品の個々の機械的ばらつき等を吸収し最適な変速制御が実施されるようにするため、上記変速制御に用いる制御定数CSBの適合が行われる。この制御定数CSBは入力軸22の回転速度NIN変化などの自動変速機10の変速結果に基づき学習補正され適合されるが、上記変速結果に影響する変速構成部品が変更乃至は交換された場合、その変更等が行われる前であれば適切であった制御定数CSBが適切とは言えなくなる場合があり、上記変更後の変速構成部品による変速特性に合わせて制御定数CSBの適合が図られる。以下、上記変速構成部品が変更や交換された場合に制御定数CSBが適合される制御作動について説明する。
図8は、上記制御定数CSBを適合させるための適合支援制御装置としても機能する電子制御装置90の制御機能の要部すなわち自動変速機10の修理などにより前記変速構成部品が変更や交換された場合に制御定数CSBが適合される制御作動を説明する機能ブロック線図である。そして制御定数CSBは変速パターン、AT油温TOIL、自動変速機10の入力トルクTINなどに基づき異なって設定され自動変速機10の変速制御中にリニアソレノイドバルブSL1〜SL6を駆動するための駆動電流を決定するための定数であるが、具体的な説明とするため以下では、「3rd」→「2nd」のダウンシフトにおいて、変速時に自動変速機10の係合要素(クラッチC又はブレーキB)の係合動作を速やかに進行させるために加えられる係合圧であって係合が開始されない程度の所定の係合圧である低圧待機圧を決定する係合側指令値(第1ブレーキB1用リニアソレノイドバルブSL5の駆動電流)に対応する制御定数CSBがどのように適合されるかを説明する。
図8において、変速制御手段110は、例えば図6に示す予め記憶された変速線図から実際の車速Vおよびアクセル操作量Accに基づいて変速判断を実行し、判断された変速を実行させるための変速出力を油圧制御回路98に対して行うことにより、自動変速機10のギヤ段を自動的に切り換える。例えば、自動変速機10の変速段が第3変速段とされているときにおいて、実際の車速Vが図6の点aから点bへと低下し変速制御手段110が「3rd」→「2nd」のダウンシフトを実行すべき変速点車速V3−2を越えたと判断した場合には、変速制御手段110は第3クラッチC3を解放開始させ、その係合トルクがある程度維持されているときに第1ブレーキB1の係合を開始させてその係合トルクを発生させ、この状態で第3変速段の変速比γ3から第2変速段の変速比γ2へ移行させつつ、第3クラッチC3の解放と第1ブレーキB1の係合とを完了させる指令を油圧制御回路98に出力する。
初期設定手段112は、前記変速構成部品が変更乃至は交換された場合に制御定数CSBを適合させるための各パラメータを初期化する。具体的には上記変速構成部品が変更乃至は交換された場合すなわち上記変速構成部品の交換履歴が有る場合において、「学習ガード移動許可フラグXGDLRNMVEN=OFF」で且つ「学習ガード移動禁止フラグXGDLRNMVIH=OFF」である場合に初期設定手段112は、「学習ガード移動許可フラグXGDLRNMVEN=ON」、上記変速構成部品交換後の「学習実施回数NLRN=0」、「学習上限超え回数NGDP=0」、「学習下限超え回数NGDM=0」、「学習ガードオフセット量dPGDOFST=0」とする。なお、前記変速構成部品が変更乃至は交換される前においては「学習ガード移動許可フラグXGDLRNMVEN=OFF」、「学習ガード移動禁止フラグXGDLRNMVIH=OFF」と設定されている。また、上記変速構成部品が変更乃至は交換されたことを初期設定手段112がどのような情報に基づき判断するかは特に限定されないが、例えば、初期設定手段112は車両の外部、具体的には修理時に車両に接続されるサービスツールとしての外部接続コンピュータから上記変速構成部品が変更された旨の入力があった場合に上記変速構成部品が変更乃至は交換されたと判断する。
学習条件判定手段114は、自動変速機10の変速結果に基づく制御定数CSBの補正すなわち制御定数CSBの学習補正が実行可能であるとする条件である学習実行条件CLNが成立したか否かを判定する。制御定数CSBは「3rd」→「2nd」のダウンシフトの変速制御に用いる制御定数であるので「3rd」→「2nd」のダウンシフトが行われたことが学習実行条件CLNが成立するためには必要である。その上で例えば、アクセルペダル50の操作量Accの変化が所定量以内であること及び自動変速機10が故障していないこと等の予め定められた補正実行条件を満たした安定したダウンシフトである場合に、学習条件判定手段114は学習実行条件CLNが成立したことを肯定する判定を行う。言い換えれば、学習条件判定手段114は自動変速機10の変速制御に関係する車両状態が上記学習実行条件CLNに対応する補正実行条件を満たした場合に肯定的な判定を行う。
制御定数CSBは制御定数CSBを学習補正するための学習補正値dPGが変更されることにより適合される。具体的に下記式(1)のように制御定数CSBは基準値A1と学習補正値dPGとの和で定義され、それにより、学習補正値dPGが自動変速機10の変速制御に反映される。そして学習補正値dPGは、例えば、図9の自動変速機10の入力トルクTINとAT油温TOILとをパラメータとする学習補正値マップとして電子制御装置90に記憶されており、それぞれパラメータにより異なった値とされることで、制御定数CSBはAT油温TOIL、自動変速機10の入力トルクTINなどに基づき異なって設定される。なお、以下の説明では図9の学習補正値をdPG11,dPG12などと個々に区別して説明する必要がないので添え字を省略し単に「学習補正値dPG」と表現する。
CSB=A1+dPG ・・・(1)
CSB=A1+dPG ・・・(1)
また、本発明の補正値に対応する学習補正値dPGは無制限に変化可能というものではなく学習補正値dPGの変化を規制する補正値許容範囲があり、補正値決定手段116は、学習補正値dPGの上限を定める上限許容値LT1及び学習補正値dPGの下限を定める下限許容値LT2から構成された補正値許容範囲すなわち学習ガード範囲を記憶している。例えば図10のように係合要素にかかる油圧150kPaに対応するECU指示(基準値A1)に対し、工場での調整前では学習補正値dPGが油圧―50kPa〜油圧50kPaに対応する値でばらつき、それを工場で油圧―15kPa〜油圧15kPaに対応する値にまでばらつきが抑えられて出荷されるものとする。そのような場合には、その学習補正値dPGのばらつきに対し少し余裕をとった油圧―20kPa〜油圧20kPaに対応する値の補正値許容範囲(学習ガード範囲)が記憶されている。
更に補正値決定手段116は、学習条件判定手段114が肯定的な判定をした場合すなわち学習実行条件CLNが成立した場合に、自動変速機10の変速結果に基づき且つ前記補正値許容範囲内になるように学習補正値dPGを決定する。詳細に言うと上記の場合に補正値決定手段116は、まず上記補正値許容範囲に関係なく学習補正量暫定値dPtmpを自動変速機10の変速結果に基づき暫定的に決定し、学習補正量暫定値dPtmpが上記補正値許容範囲内であれば学習補正量暫定値dPtmpをそのまま学習補正値dPGとして決定する。また、補正値決定手段116は学習補正量暫定値dPtmpが上限許容値LT1を超えた場合には上限許容値LT1を学習補正値dPGとして決定し、学習補正量暫定値dPtmpが下限許容値LT2を下回った場合には下限許容値LT2を学習補正値dPGとして決定する。なお、上記上限許容値LT1及び下限許容値LT2は後述の許容範囲移動手段118によって変更される場合があり、そのような場合にはその変更後の上限許容値LT1及び下限許容値LT2から構成された補正値許容範囲内になるように補正値決定手段116は学習補正値dPGを決定する。
上述の補正値決定手段116が学習補正量暫定値dPtmpを自動変速機10の変速結果に基づき暫定的に決定する点について図11のタイムチャートを用いて説明する。図11は、自動変速機10が第3変速段「3rd」から第2変速段「2nd」へとダウンシフトされるときに学習補正量暫定値dPtmpがどのように決定されるかを説明するためのタイムチャートである。
図11のt1時点は、自動変速機10を第3変速段「3rd」から第2変速段「2nd」へ変速(ダウンシフト)させるための変速出力が出されたことを示している。これにより、第3クラッチC3が解放され第1ブレーキB1が係合されるクラッチツウクラッチ変速(「3rd」→「2nd」)が行われるが、このとき変速進行に伴いタービン回転速度NT(入力軸22の回転速度NIN)が図11のように上昇する。そして、上昇しているタービン回転速度NTが駆動輪(車速V)に拘束された一定回転速度に変化するところでそのタービン回転速度NTが一時的に上記一定回転速度に対してオーバーシュートする。このオーバーシュートした回転速度であるオーバーシュート量NOVは滑らかな変速実現のため予め適正なオーバーシュート目標値AOVが求められ補正値決定手段116はそのオーバーシュート目標値AOVを記憶しており、自動変速機10の変速結果であるオーバーシュート量NOVとオーバーシュート目標値AOVとの差に基づき学習補正量暫定値dPtmpを決定する。具体的に補正値決定手段116は、制御定数CSBが小さい程つまり前記低圧待機圧が小さい程オーバーシュート量NOVは大きくなるので、オーバーシュート量NOVの方がオーバーシュート目標値AOVよりも大きい場合には次回変速でオーバーシュート量NOVをより小さくする必要があるため、学習補正値更新量ΔPを予め設定された正の値ΔβPとし学習補正値更新量ΔPを学習補正値dPGに下記式(2)のように加えて学習補正量暫定値dPtmpを決定する。すなわち、その決定前の学習補正値dPGよりも大きい値が学習補正量暫定値dPtmpとされる。また、オーバーシュート量NOVの方がオーバーシュート目標値AOVよりも小さい場合には次回変速でオーバーシュート量NOVをより大きくする必要があるので学習補正値更新量ΔPを予め設定された負の値ΔγPとし学習補正値更新量ΔPを学習補正値dPGに下記式(2)のように加えて学習補正量暫定値dPtmpを決定する。すなわち、その決定前の学習補正値dPGよりも小さい値が学習補正量暫定値dPtmpとされる。
dPtmp=dPG+ΔP ・・・(2)
dPtmp=dPG+ΔP ・・・(2)
図8に戻り、許容範囲移動手段118は前記変速構成部品が変更乃至は交換された場合において学習補正値dPGが一方向に偏った場合には、その一方向に前記上限許容値LT1及び下限許容値LT2から構成された補正値許容範囲をずらす。具体的に許容範囲移動手段118は、前記変速構成部品が変更されてから補正値決定手段116が学習補正値dPGを決定した補正回数である学習実施回数NLRNが所定の補正回数判定値である学習ガード変更禁止判定値NGDLRNMVより少ない場合において、学習補正値dPGが前記変速結果に基づいて決定されるとすれば前記上限許容値LT1を超えて決定されることになる学習上限超え回数NGDPが所定の許容範囲超回数判定値である学習ガード変更実施許可判定値NGDMAXより多くなった場合には、学習補正値dPGが一方向つまり正方向に偏ったと判断し、前記補正値許容範囲(学習ガード範囲)を上限側すなわち正方向に所定の設定値Aだけずらす。例えば、設定値Aが7kPaに相当する値であった場合には、図10のように補正値許容範囲(学習ガード範囲)がずらされる。一方、許容範囲移動手段118は、学習実施回数NLRNが学習ガード変更禁止判定値NGDLRNMVより少ない場合において、学習補正値dPGが上記変速結果に基づいて決定されるとすれば前記下限許容値LT2を下回って決定されることになる学習下限超え回数NGDMが所定の許容範囲超回数判定値である学習ガード変更実施許可判定値NGDMAXより多くなった場合には、学習補正値dPGが一方向つまり負方向に偏ったと判断し、前記補正値許容範囲(学習ガード範囲)を下限側すなわち負方向に上記設定値Aだけずらす。このような許容範囲移動手段118の実行内容からすると、前記補正回数判定値である学習ガード変更禁止判定値NGDLRNMVは前記変速構成部品の変更乃至は交換とは無関係に前記補正値許容範囲がずらされることを回避するための予め定められた判定値であると言える。そして、前記許容範囲超回数判定値である学習ガード変更実施許可判定値NGDMAXは前記補正値が一方向に偏ったか否かを判定するための予め定められた判定値であると言える。
ここで、学習補正値dPGが前記変速結果に基づいて決定されるとすれば前記上限許容値LT1を超えて決定されることとは、言い換えれば、前記変速結果に基づいて決定された学習補正量暫定値dPtmpが上限許容値LT1を超えていることであり、初期設定手段112による前記初期化の後に許容範囲移動手段118は学習補正量暫定値dPtmpが上限許容値LT1を超えて決定されるごとに学習上限超え回数NGDPを1ずつ加算しその回数をカウントする。そして、学習補正値dPGが上記変速結果に基づいて決定されるとすれば前記下限許容値LT2を下回って決定されることとは、言い換えれば、前記変速結果に基づいて決定された学習補正量暫定値dPtmpが下限許容値LT2を下回っていることであり、初期設定手段112による前記初期化の後に許容範囲移動手段118は学習補正量暫定値dPtmpが下限許容値LT2を下回って決定されるごとに学習下限超え回数NGDMを1ずつ加算しその回数をカウントする。また、初期設定手段112による前記初期化の後に許容範囲移動手段118は学習補正値dPG又は学習補正量暫定値dPtmpが決定されるごとに学習実施回数NLRNを1ずつ加算しその回数をカウントする。また上述のように許容範囲移動手段118が前記補正値許容範囲をずらすことを具体的に説明すると、上限許容値LT1と下限許容値LT2とがそれぞれ下記式(3),式(4)によって与えられ、初期設定手段112により零に初期化された学習ガードオフセット量dPGDOFSTに許容範囲移動手段118は正の値である設定値Aを設定することで、上限許容値LT1及び下限許容値LT2を正方向にずらす。一方、許容範囲移動手段118は学習ガードオフセット量dPGDOFSTに負の値である設定値(−A)を設定することで、上限許容値LT1及び下限許容値LT2を負方向にずらす。なお、dPGDは前記変速構成部品交換履歴が無いときの前記補正値許容範囲(学習ガード範囲)を構成する学習ガード値すなわち正の定数であり、下記式(3),式(4)からも判るように、上記変速構成部品交換履歴が無いときの上限許容値LT1には学習ガード値dPGDが対応し、上記変速構成部品交換履歴が無いときの下限許容値LT2には学習ガード値(−dPGD)が対応する。
LT1=dPGD+dPGDOFST ・・・(3)
LT2=−dPGD+dPGDOFST ・・・(4)
LT1=dPGD+dPGDOFST ・・・(3)
LT2=−dPGD+dPGDOFST ・・・(4)
許容範囲移動手段118は、前記補正値許容範囲をずらした場合、或いは、学習上限超え回数NGDP又は学習下限超え回数NGDMが学習ガード変更実施許可判定値NGDMAXを超える前に学習実施回数NLRNが学習ガード変更禁止判定値NGDLRNMV以上になった場合には、「学習ガード移動許可フラグXGDLRNMVEN=OFF」、「学習ガード移動禁止フラグXGDLRNMVIH=ON」と設定し、その後、前記補正値許容範囲をずらすことはしない。すなわち、許容範囲移動手段118が前記補正値許容範囲をずらすとしても、そのずらす回数は所定の許容範囲移動制限値以下、具体的には1回以下に制限されている。
図12乃至図15は、電子制御装置90の制御作動の要部すなわち前記変速構成部品が変更や交換された場合に制御定数CSBが適合される制御作動を説明するフローチャートであり、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行される。
先ず、前記変速構成部品が変更乃至は交換される前においては「学習ガード移動許可フラグXGDLRNMVEN=OFF」、「学習ガード移動禁止フラグXGDLRNMVIH=OFF」と設定されている。そして、ステップ(以下、「ステップ」を省略する)SA1においては、(1)上記変速構成部品の交換履歴が有ること、(2)「学習ガード移動許可フラグXGDLRNMVEN=OFF」であること、(3)「学習ガード移動禁止フラグXGDLRNMVIH=OFF」であることの全ての条件(1)〜(3)を満たすか否かが判定される。この判定が肯定的である場合、すなわち、上記全ての条件(1)〜(3)を満たす場合にはSA2に移る。一方、この判定が否定的である場合にはSA3に移る。
SA2においては、「学習ガード移動許可フラグXGDLRNMVEN=ON」、上記変速構成部品交換後の「学習実施回数NLRN=0」、「学習上限超え回数NGDP=0」、「学習下限超え回数NGDM=0」、「学習ガードオフセット量dPGDOFST=0」とされる。なお、SA1及びSA2は初期設定手段112に対応する。
学習条件判定手段114に対応するSA3においては、前記学習実行条件CLNが成立したか否かが判定される。この判定が肯定的である場合、すなわち、上記学習実行条件CLNが成立した場合にはSA4に移る。一方、この判定が否定的である場合には本フローチャートは終了する。
SA4においては、前記式(2)に従い学習補正量暫定値dPtmpが自動変速機10の変速結果に基づき決定される。そしてSA5に移る。
SA5においては、学習実施回数NLRNが1だけ加算される。そしてSA6に移る。
SA6においては、SA4にて決定された学習補正量暫定値dPtmpが前記式(3)によって与えられる上限許容値LT1を超えているか否かが判定される。この判定が肯定的である場合、すなわち、学習補正量暫定値dPtmpが前記式(3)によって与えられる上限許容値LT1を超えている場合にはSA7に移る。一方、この判定が否定的である場合にはSA17へ移る。
SA7においては、学習ガード移動許可フラグXGDLRNMVENがONであるか否かが判定される。この判定が肯定的である場合、すなわち、学習ガード移動許可フラグXGDLRNMVENがONである場合にはSA8に移る。一方、この判定が否定的である場合にはSA16へ移る。
SA8においては、学習実施回数NLRNが学習ガード変更禁止判定値NGDLRNMVより少ないか否かが判定される。この判定が肯定的である場合、すなわち、学習実施回数NLRNが学習ガード変更禁止判定値NGDLRNMVより少ない場合にはSA9に移る。一方、この判定が否定的である場合にはSA12へ移る。
SA9においては、学習上限超え回数NGDPが1だけ加算される。そしてSA10に移る。
SA10においては、学習上限超え回数NGDPが学習ガード変更実施許可判定値NGDMAXより多くなったか否かが判定される。この判定が肯定的である場合、すなわち、学習上限超え回数NGDPが学習ガード変更実施許可判定値NGDMAXより多くなった場合にはSA11に移る。一方、この判定が否定的である場合にはSA13へ移る。
SA11においては、学習ガードオフセット量dPGDOFSTに正の値である設定値Aが設定され、それにより、前記式(3),式(4)から判るように上限許容値LT1及び下限許容値LT2から構成された前記補正値許容範囲が正方向に設定値Aだけずらされる。更に、「学習ガード移動許可フラグXGDLRNMVEN=OFF」、「学習ガード移動禁止フラグXGDLRNMVIH=ON」と設定される。そしてSA13に移る。
SA12においては、「学習ガード移動許可フラグXGDLRNMVEN=OFF」、「学習ガード移動禁止フラグXGDLRNMVIH=ON」と設定される。そしてSA13に移る。
SA13においては、SA4にて決定された学習補正量暫定値dPtmpが前記式(3)によって与えられる上限許容値LT1を超えているか否かが判定される。この判定が肯定的である場合、すなわち、学習補正量暫定値dPtmpが前記式(3)によって与えられる上限許容値LT1を超えている場合にはSA14に移る。一方、この判定が否定的である場合にはSA15へ移る。なお、形式的にはSA13はSA6と同じ判定をしているが、初期値が零である学習ガードオフセット量dPGDOFSTがSA11にて設定値Aと設定変更された場合にはSA6の判定結果とSA13の判定結果とが異なる場合がある。
SA14においては、学習補正値dPGが前記式(3)によって与えられる上限許容値LT1と設定される。
SA15においては、学習補正値dPGが学習補正量暫定値dPtmpと設定される。
SA16においては、学習補正値dPGが前記式(3)によって与えられる上限許容値LT1と設定される。
SA17においては、SA4にて決定された学習補正量暫定値dPtmpが前記式(4)によって与えられる下限許容値LT2を下回っているか否かすなわち下限許容値LT2より小さいか否かが判定される。この判定が肯定的である場合、すなわち、学習補正量暫定値dPtmpが前記式(4)によって与えられる下限許容値LT2を下回っている場合にはSA18に移る。一方、この判定が否定的である場合にはSA28へ移る。
SA18においては、学習ガード移動許可フラグXGDLRNMVENがONであるか否かが判定される。この判定が肯定的である場合、すなわち、学習ガード移動許可フラグXGDLRNMVENがONである場合にはSA19に移る。一方、この判定が否定的である場合にはSA27へ移る。
SA19においては、学習実施回数NLRNが学習ガード変更禁止判定値NGDLRNMVより少ないか否かが判定される。この判定が肯定的である場合、すなわち、学習実施回数NLRNが学習ガード変更禁止判定値NGDLRNMVより少ない場合にはSA20に移る。一方、この判定が否定的である場合にはSA23へ移る。
SA20においては、学習下限超え回数NGDMが1だけ加算される。そしてSA21に移る。
SA21においては、学習下限超え回数NGDMが学習ガード変更実施許可判定値NGDMAXより多くなったか否かが判定される。この判定が肯定的である場合、すなわち、学習下限超え回数NGDMが学習ガード変更実施許可判定値NGDMAXより多くなった場合にはSA22に移る。一方、この判定が否定的である場合にはSA24へ移る。
SA22においては、学習ガードオフセット量dPGDOFSTに負の値である設定値(−A)が設定され、それにより、前記式(3),式(4)から判るように上限許容値LT1及び下限許容値LT2から構成された前記補正値許容範囲が負方向に設定値Aだけずらされる。更に、「学習ガード移動許可フラグXGDLRNMVEN=OFF」、「学習ガード移動禁止フラグXGDLRNMVIH=ON」と設定される。そしてSA24に移る。
SA23においては、「学習ガード移動許可フラグXGDLRNMVEN=OFF」、「学習ガード移動禁止フラグXGDLRNMVIH=ON」と設定される。そしてSA24に移る。
SA24においては、SA4にて決定された学習補正量暫定値dPtmpが前記式(4)によって与えられる下限許容値LT2を下回っているか否かすなわち下限許容値LT2より小さいか否かが判定される。この判定が肯定的である場合、すなわち、学習補正量暫定値dPtmpが前記式(4)によって与えられる下限許容値LT2を下回っている場合にはSA25に移る。一方、この判定が否定的である場合にはSA26へ移る。なお、形式的にはSA24はSA17と同じ判定をしているが、初期値が零である学習ガードオフセット量dPGDOFSTがSA22にて設定値(−A)と設定変更された場合にはSA17の判定結果とSA22の判定結果とが異なる場合がある。
SA25においては、学習補正値dPGが前記式(4)によって与えられる下限許容値LT2と設定される。
SA26においては、学習補正値dPGが学習補正量暫定値dPtmpと設定される。
SA27においては、学習補正値dPGが前記式(4)によって与えられる下限許容値LT2と設定される。
SA28においては、学習ガード移動許可フラグXGDLRNMVENがONであるか否かが判定される。この判定が肯定的である場合、すなわち、学習ガード移動許可フラグXGDLRNMVENがONである場合にはSA29に移る。一方、この判定が否定的である場合にはSA31へ移る。
SA29においては、学習実施回数NLRNが学習ガード変更禁止判定値NGDLRNMVより大きいか否かが判定される。この判定が肯定的である場合、すなわち、学習実施回数NLRNが学習ガード変更禁止判定値NGDLRNMVより大きい場合にはSA30に移る。一方、この判定が否定的である場合にはSA31へ移る。
SA30においては、「学習ガード移動許可フラグXGDLRNMVEN=OFF」、「学習ガード移動禁止フラグXGDLRNMVIH=ON」と設定される。そしてSA31に移る。
SA31においては、学習補正値dPGが学習補正量暫定値dPtmpと設定される。なお、前記SA4、SA13乃至SA16、SA24乃至SA27、SA31は補正値決定手段116に対応する。また、SA5乃至SA12、SA17乃至SA23、SA28乃至SA30は許容範囲移動手段118に対応する。
本実施例の電子制御装置90には次のような効果(A1)乃至(A8)がある。(A1)許容範囲移動手段118は、自動変速機10の変速結果に影響する変速構成部品が変更された場合において学習補正値dPGが一方向に偏った場合には、その一方向に前記補正値許容範囲をずらすので、定常的に生じている学習補正値dPGのばらつきの範囲が上記変速構成部品の変更後にずれたとしてもそれに合わせて上記補正値許容範囲がずれ、上記変速構成部品の変更後の変速特性に合わせて学習補正値dPGが適正に決定されることを上記補正値許容範囲が妨げることが抑えられる。また、上記補正値許容範囲をずらす、すなわちその補正値許容範囲が広げれれるわけではないので、本来なされるべきでない学習補正すなわち誤学習を許容する幅(範囲)を増やすことにならない。その結果、制御定数CSBの適合が適切に図られる。
(A2)許容範囲移動手段118は、学習実施回数NLRNが学習ガード変更禁止判定値NGDLRNMVより少ない場合において、学習補正値dPGが前記変速結果に基づいて決定されるとすれば前記上限許容値LT1を超えて決定されることになる学習上限超え回数NGDPが学習ガード変更実施許可判定値NGDMAXより多くなった場合には、学習補正値dPGが一方向つまり正方向に偏ったと判断する。また許容範囲移動手段118は、学習実施回数NLRNが学習ガード変更禁止判定値NGDLRNMVより少ない場合において、学習補正値dPGが上記変速結果に基づいて決定されるとすれば前記下限許容値LT2を下回って決定されることになる学習下限超え回数NGDMが学習ガード変更実施許可判定値NGDMAXより多くなった場合には、学習補正値dPGが一方向つまり負方向に偏ったと判断する。従って、容易に学習補正値dPGが一方向に偏ったこと及びその偏った方向を検出できる。また、上記変速構成部品が変更されたことにより学習補正値dPGが偏ったのであるとすればその変更後直ちに学習補正値dPGはその偏った傾向を示すところ、上記変速構成部品の変更後の学習実施回数NLRNと学習ガード変更禁止判定値NGDLRNMVとが比較されることで、学習補正値dPGが前記変速結果に基づいて決定されるとすれば前記補正許容範囲を外れて決定されることが前記変速構成部品の変更とは無関係にあった場合に、それに基づいて学習補正値dPGが一方向に偏ったと判断されることは回避される。
(A3)学習条件判定手段114は自動変速機10の変速制御に関係する車両状態が前記補正実行条件を満たした場合、すなわち学習実行条件CLNが成立した場合に肯定的な判定を行い、補正値決定手段116は、学習条件判定手段114が肯定的な判定をした場合に、自動変速機10の変速結果に基づき且つ前記補正値許容範囲内になるように学習補正値dPGを決定する。従って、学習補正値dPGが決定されるのに適した車両状態のもとでの自動変速機10の変速結果に基づいて適切に学習補正値dPGが決定される。
(A4)初期設定手段112は例えば、車両の外部、具体的には修理時に車両に接続されるサービスツールとしての外部接続コンピュータから上記変速構成部品が変更された旨の入力があった場合に上記変速構成部品が変更乃至は交換されたと判断するので、その変速構成部品が変更されたことを自動的に検出する機能を車両が備える必要がない。
(A5)前記変速構成部品とは例えば、係合要素(クラッチC又はブレーキB)、リニアソレノイドバルブ(電磁弁)SL1〜SL6、又はそれらの部品であるので、それら係合要素等が変更され自動変速機10の変速特性が変わっても制御定数CSBの適合が適切に図られる。
(A6)制御定数CSBは、自動変速機10の変速制御中にリニアソレノイドバルブSL1〜SL6を駆動するための駆動電流を決定するための定数であるので、制御定数CSBの適合が図られることにより上記変速制御が適正化される。
(A7)許容範囲移動手段118が前記補正値許容範囲をずらすとしても、そのずらす回数は所定の許容範囲移動制限値以下、具体的には1回以下に制限されているので、前記変速構成部品の変更とは無関係に外乱などに起因して上記補正値許容範囲がずらされてしまうことを抑えることができる。
(A8)前記低圧待機圧が制御定数CSBに基づいて決定されるので、上記低圧待機圧によって変化する変速ショックを制御定数CSBの適合により低減できる。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
前述の実施例では、適合される制御定数CSBは前記低圧待機圧を決定する係合側指令値(第1ブレーキB1用リニアソレノイドバルブSL5の駆動電流)に対応する定数として説明されているが、適合される制御定数CSBが他の指令値に対応する定数であってもよい。例えば、図11における上記低圧待機圧を保持する指令時間TL、係合完了に向けて係合圧を上昇させるときの指令値の上昇角度XS、クイックアプライ指令時間TQA、又はクイックアプライ圧を決定する指令値PQAなどに対応する定数であってもよい。また、図11ではダウンシフト時の係合側指令値について説明しているが、解放側のリニアソレノイドバルブSL1〜SL6の駆動電流に対応する制御定数CSBが適合されてもよいし、アップシフト時に用いられる制御定数CSBが適合されてもよい。
また前述の実施例では自動変速機10の変速結果の具体例として図11に示すオーバーシュート量が挙げられているが、例えば、タービン回転速度NTの単位時間当たりの変化幅など他のパラメータであっても差し支えない。
また前述の実施例では、学習補正値dPGが一方向に偏った場合をどのように判断するかの具体例があげられているが、その具体例のみならず例えば、前記変速構成部品変更後に決定された学習補正量暫定値dPtmpのばらつきの中心値を求めて、その中心値に基づき学習補正値dPGが一方向に偏ったか否かを判断してもよい。
また前述の実施例において、学習補正値dPG又は学習補正値dPGを含む制御定数CSBは、イグニッションキーがOFFにされエンジン30が停止してもその記憶を維持する記憶媒体、例えば電池により電源バックアップされたS−RAMなどの不揮発性メモリに記憶されていてもよい。
10:自動変速機(車両用自動変速機)
90:電子制御装置(適合支援制御装置)
116:補正値決定手段
118:許容範囲移動手段
C1〜C4:クラッチ(油圧式摩擦係合要素)
B1、B2:ブレーキ(油圧式摩擦係合要素)
SL1〜SL6:リニアソレノイドバルブ(電磁弁)
CSB:制御定数
dPG:学習補正値
LT1:上限許容値
LT2:下限許容値
NLRN:学習実施回数(補正回数)
NGDLRNMV:学習ガード変更禁止判定値(補正回数判定値)
NGDMAX:学習ガード変更実施許可判定値(許容範囲超回数判定値)
CLN:学習実行条件(補正実行条件)
90:電子制御装置(適合支援制御装置)
116:補正値決定手段
118:許容範囲移動手段
C1〜C4:クラッチ(油圧式摩擦係合要素)
B1、B2:ブレーキ(油圧式摩擦係合要素)
SL1〜SL6:リニアソレノイドバルブ(電磁弁)
CSB:制御定数
dPG:学習補正値
LT1:上限許容値
LT2:下限許容値
NLRN:学習実施回数(補正回数)
NGDLRNMV:学習ガード変更禁止判定値(補正回数判定値)
NGDMAX:学習ガード変更実施許可判定値(許容範囲超回数判定値)
CLN:学習実行条件(補正実行条件)
Claims (6)
- 車両の自動変速機の変速制御に用いる制御定数を適合させるための車両用自動変速機の適合支援制御装置であって、
前記制御定数を補正するための補正値の上限を定める上限許容値及び該補正値の下限を定める下限許容値から構成された補正値許容範囲を記憶し、前記自動変速機の変速結果に基づき且つ前記補正値許容範囲内になるように前記補正値を決定する補正値決定手段と、
前記自動変速機の変速結果に影響する変速構成部品が変更された場合において前記補正値が一方向に偏った場合には、該一方向に前記補正値許容範囲をずらす許容範囲移動手段と
を、含むことを特徴とする車両用自動変速機の適合支援制御装置。 - 前記補正値が一方向に偏った場合とは、前記変速構成部品が変更されてから前記補正値決定手段が前記補正値を決定した回数である補正回数が所定の補正回数判定値より少ない場合において、前記補正値が前記変速結果に基づいて決定されるとすれば前記上限許容値を超えて決定されることになる回数又は該補正値が該変速結果に基づいて決定されるとすれば前記下限許容値を下回って決定されることになる回数が所定の許容範囲超回数判定値より多くなった場合である
ことを特徴とする請求項1の車両用自動変速機の適合支援制御装置。 - 前記補正値決定手段は、前記変速制御に関係する車両状態が所定の補正実行条件を満たした場合に前記補正値を決定する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用自動変速機の適合支援制御装置。 - 前記変速構成部品が変更された場合とは、該変速構成部品が変更された旨の前記車両の外部からの入力があった場合である
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の車両用自動変速機の適合支援制御装置。 - 前記自動変速機は油圧式摩擦係合要素を備え、
前記車両は該油圧式摩擦係合要素に対する供給圧を制御する電磁弁を備え、
前記変速構成部品とは前記油圧式摩擦係合要素、電磁弁、又はそれらの部品である
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の車両用自動変速機の適合支援制御装置。 - 前記制御定数は、前記変速制御中に前記電磁弁を駆動するための駆動電流を決定するための定数である
ことを特徴とする請求項5の車両用自動変速機の適合支援制御装置。
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JP2007267246A JP2009097542A (ja) | 2007-10-12 | 2007-10-12 | 車両用自動変速機の適合支援制御装置 |
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WO2018037815A1 (ja) * | 2016-08-24 | 2018-03-01 | 日立オートモティブシステムズ株式会社 | 車両制御装置 |
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-
2007
- 2007-10-12 JP JP2007267246A patent/JP2009097542A/ja active Pending
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