本発明は、エンジンと有段の自動変速機とを備えた車両において、乗員の快適性を向上させるための車両の駆動力制御装置に関するものである。
エンジンと有段式自動変速機とを備えた車両において、そのエンジンの出力を調整するためのスロットル弁とアクセルペダルとがワイヤ等で機械的に連結されている場合には、そのアクセルペダルの操作量であるアクセル開度と上記スロットル弁の開度(スロットル弁開度)とは一対一の関係にある。この一対一の関係は、上記スロットル弁が上記アクセルペダルと電気的に連動するように制御される電子スロットル弁であっても基本的には同様である。しかし、その電子スロットル弁を有する車両において、予め設定された上記アクセル開度とスロットル弁開度との関係であるスロットル弁基準特性に従わない電子スロットル制御を一時的に実行する車両の駆動力制御装置が知られている。例えば、特許文献1の車両の駆動力制御装置がそれである。この車両の駆動力制御装置では、有段式自動変速機の頻繁な変速を回避するため、所定の変速パターン(変速線図)に従って変速されたとした場合に得られる必要駆動力が、その変速が行われなくても上記スロットル弁開度が調整されることにより出力され得る場合には、上記変速を行わないで上記スロットル弁開度が上記スロットル弁基準特性に関わらず上記必要駆動力が得られるように調整される。
特許第2929396号公報
しかし、前記特許文献1の車両の駆動力制御装置は、有段式自動変速機の頻繁な変速を回避するために、すなわち変速が行われないようにすることを目的として前記スロットル弁開度を調整する制御を行うので、実際に変速制御が実行されるときには通常通り変速制御が行われる。このため、上記特許文献1の車両の駆動力制御装置は、前記自動変速機の変速が実行された場合においては駆動力が階段状に変化することが避けられなかった。
本発明は、以上の事情を背景としてなされたものであり、その目的とするところは、エンジンと有段の自動変速機とを備えた車両において、駆動力が滑らかに変化するようにする車両の駆動力制御装置を提供することにある。
かかる目的を達成するために、請求項1に係る発明は、(a)電気的に開閉制御可能な電子スロットル弁により出力トルクが変化させられるエンジンと予め定められた関係に従って車速及びアクセル開度に基づき変速される有段の自動変速機とを備えた車両の駆動力制御装置であって、(b)アクセル開度の増大中における前記自動変速機のダウンシフト前において、その自動変速機のダウンシフトによる駆動力の変動幅である駆動力差を小さくするように前記エンジンの出力トルクを制御する変速時出力トルク制御を行い、(c)前記ダウンシフトによる前記駆動力差が予め設定された駆動力差判定値以上になると判断された場合には、前記駆動力差を小さくするように前記ダウンシフト後にもその変速時出力トルク制御を行うものであり、(d)前記自動変速機の実際の変速段をn速と表した場合において、n+1速からn速へのダウンシフトがなされたアクセル開度を示すダウンシフト変速点と車速を一定としてn−1速からn速へのアップシフトがなされるアクセル開度を示すアップシフト変速点とを比較し、そのアップシフト変速点が前記ダウンシフト変速点よりも前記アクセル開度の小さい側にある場合には、n速における前記変速時出力トルク制御を前記ダウンシフト変速点から行うことを特徴とする。
請求項2に係る発明は、(a)電気的に開閉制御可能な電子スロットル弁により出力トルクが変化させられるエンジンと予め定められた関係に従って車速及びアクセル開度に基づき変速される有段の自動変速機とを備えた車両の駆動力制御装置であって、(b)アクセル開度の増大中における前記自動変速機のダウンシフト前において、その自動変速機のダウンシフトによる駆動力の変動幅である駆動力差を小さくするように前記エンジンの出力トルクを制御する変速時出力トルク制御を行い、(c)前記ダウンシフトによる前記駆動力差が予め設定された駆動力差判定値以上になると判断された場合には、前記駆動力差を小さくするように前記ダウンシフト後にもその変速時出力トルク制御を行うものであり、(d)前記自動変速機の実際の変速段をn速と表した場合において、n+1速からn速へのダウンシフトがなされたアクセル開度を示すダウンシフト変速点と車速を一定としてn−1速からn速へのアップシフトがなされるアクセル開度を示すアップシフト変速点とを比較し、そのアップシフト変速点が前記ダウンシフト変速点よりも前記アクセル開度の大きい側にある場合には、n速における前記変速時出力トルク制御を前記アップシフト変速点から行うことを特徴とする。
請求項3に係る発明は、(a)電気的に開閉制御可能な電子スロットル弁により出力トルクが変化させられるエンジンと予め定められた関係に従って車速及びアクセル開度に基づき変速される有段の自動変速機とを備えた車両の駆動力制御装置であって、(b)アクセル開度の増大中における前記自動変速機のダウンシフト前において、その自動変速機のダウンシフトによる駆動力の変動幅である駆動力差を小さくするように前記エンジンの出力トルクを制御する変速時出力トルク制御を行い、(c)前記ダウンシフトによる前記駆動力差が予め設定された駆動力差判定値以上になると判断された場合には、前記駆動力差を小さくするように前記ダウンシフト後にもその変速時出力トルク制御を行うものであり、(d)前記自動変速機の実際の変速段をn速と表した場合において、n速からn−2速へのダウンシフトが行われる場合には、前記予め定められた関係から求められたn速からn−1速へのダウンシフトがなされるアクセル開度を示すダウンシフト変速点から前記変速時出力トルク制御を行うことを特徴とする。
請求項4に係る発明は、(a)電気的に開閉制御可能な電子スロットル弁により出力トルクが変化させられるエンジンと予め定められた関係に従って車速及びアクセル開度に基づき変速される有段の自動変速機とを備えた車両の駆動力制御装置であって、(b)アクセル開度の増大中における前記自動変速機のダウンシフト前において、その自動変速機のダウンシフトによる駆動力の変動幅である駆動力差を小さくするように前記エンジンの出力トルクを制御する変速時出力トルク制御を行い、(c)前記ダウンシフトによる前記駆動力差が予め設定された駆動力差判定値以上になると判断された場合には、前記駆動力差を小さくするように前記ダウンシフト後にもその変速時出力トルク制御を行うものであり、(d)前記自動変速機の実際の変速段をn速と表した場合において、前記自動変速機のn+1速からn速へのダウンシフト後にそのダウンシフトによる前記駆動力差を小さくするために行われる前記変速時出力トルク制御では、車速を一定としてn速からn+1速へアップシフトが行われるとした場合のn速における変速時の駆動力をその駆動力の下限値とすることを特徴とする。
請求項5に係る発明は、(a)電気的に開閉制御可能な電子スロットル弁により出力トルクが変化させられるエンジンと予め定められた関係に従って車速及びアクセル開度に基づき変速される有段の自動変速機とを備えた車両の駆動力制御装置であって、(b)アクセル開度の増大中における前記自動変速機のダウンシフト前において、その自動変速機のダウンシフトによる駆動力の変動幅である駆動力差を小さくするように前記エンジンの出力トルクを制御する変速時出力トルク制御を行い、(c)前記ダウンシフトによる前記駆動力差が予め設定された駆動力差判定値以上になると判断された場合には、前記駆動力差を小さくするように前記ダウンシフト後にもその変速時出力トルク制御を行うものであり、(d)アクセルペダルが踏み込まれたときの変化率であるアクセル踏込速度を検出するアクセル踏込速度検出手段を備え、(e)前記自動変速機の実際の変速段をn速と表した場合において、車速を一定としてn速からn−1速へダウンシフトが行われるとした場合のn−1速における変速時の駆動力がn速で発生可能な最大駆動力となるアクセル開度を上限とし、車速を一定としてn−1速からn速へアップシフトが行われるとした場合のアクセル開度とn+1速からn速へダウンシフトが行われたときのアクセル開度との何れか一方のアクセル開度の大きい側を下限とした変速点変化範囲内で、前記アクセル踏込速度が大きいほど前記ダウンシフト変速点を前記アクセル開度の小さい側にずらすことを特徴とする。
請求項1に係る発明の車両の駆動力制御装置によれば、(a)アクセル開度の増大中における前記自動変速機のダウンシフト前において、その自動変速機のダウンシフトによる駆動力の変動幅である駆動力差を小さくするように前記エンジンの出力トルクを制御する変速時出力トルク制御を行い、(b)前記ダウンシフトによる前記駆動力差が予め設定された駆動力差判定値以上になると判断された場合には、前記駆動力差を小さくするように前記ダウンシフト後にもその変速時出力トルク制御を行うものであり、(c)前記自動変速機の実際の変速段をn速と表した場合において、n+1速からn速へのダウンシフトがなされたアクセル開度を示すダウンシフト変速点と車速を一定としてn−1速からn速へのアップシフトがなされるアクセル開度を示すアップシフト変速点とを比較し、そのアップシフト変速点が前記ダウンシフト変速点よりも前記アクセル開度の小さい側にある場合には、n速における前記変速時出力トルク制御を前記ダウンシフト変速点から行う。従って、その変速時出力トルク制御が行われない場合と比較して上記変速に伴う上記駆動力の変化が滑らかになるようにすることが可能であり、乗員の快適性を向上させ得る。また、上記自動変速機の変速前後のいずれか一方のみで上記変速時出力トルク制御が行われる場合と比較して、上記上記駆動力差を一層小さくすることが可能である。また、上記n速における変速時出力トルク制御が上記n−1速からn速へのアップシフトに影響することを回避して、上記シフトダウンに伴う駆動力の変化が滑らかになるようにすることが可能である。
請求項2に係る発明の車両の駆動力制御装置によれば、(a)アクセル開度の増大中における前記自動変速機のダウンシフト前において、その自動変速機のダウンシフトによる駆動力の変動幅である駆動力差を小さくするように前記エンジンの出力トルクを制御する変速時出力トルク制御を行い、(b)前記ダウンシフトによる前記駆動力差が予め設定された駆動力差判定値以上になると判断された場合には、前記駆動力差を小さくするように前記ダウンシフト後にもその変速時出力トルク制御を行うものであり、(c)前記自動変速機の実際の変速段をn速と表した場合において、n+1速からn速へのダウンシフトがなされたアクセル開度を示すダウンシフト変速点と車速を一定としてn−1速からn速へのアップシフトがなされるアクセル開度を示すアップシフト変速点とを比較し、そのアップシフト変速点が前記ダウンシフト変速点よりも前記アクセル開度の大きい側にある場合には、n速における前記変速時出力トルク制御を前記アップシフト変速点から行う。従って、その変速時出力トルク制御が行われない場合と比較して上記変速に伴う上記駆動力の変化が滑らかになるようにすることが可能であり、乗員の快適性を向上させ得る。また、上記自動変速機の変速前後のいずれか一方のみで上記変速時出力トルク制御が行われる場合と比較して、上記上記駆動力差を一層小さくすることが可能である。また、上記n速における変速時出力トルク制御が上記n−1速からn速へのアップシフトに影響することを回避することができる。
請求項3に係る発明の車両の駆動力制御装置によれば、(a)アクセル開度の増大中における前記自動変速機のダウンシフト前において、その自動変速機のダウンシフトによる駆動力の変動幅である駆動力差を小さくするように前記エンジンの出力トルクを制御する変速時出力トルク制御を行い、(b)前記ダウンシフトによる前記駆動力差が予め設定された駆動力差判定値以上になると判断された場合には、前記駆動力差を小さくするように前記ダウンシフト後にもその変速時出力トルク制御を行うものであり、(c)前記自動変速機の実際の変速段をn速と表した場合において、n速からn−2速へのダウンシフトが行われる場合には、前記予め定められた関係から求められたn速からn−1速へのダウンシフトがなされるアクセル開度を示すダウンシフト変速点から前記変速時出力トルク制御を行う。従って、その変速時出力トルク制御が行われない場合と比較して上記変速に伴う上記駆動力の変化が滑らかになるようにすることが可能であり、乗員の快適性を向上させ得る。また、上記自動変速機の変速前後のいずれか一方のみで上記変速時出力トルク制御が行われる場合と比較して、上記上記駆動力差を一層小さくすることが可能である。また、n速からn−2速へのダウンシフトのような多重ダウンシフトの場合にも、上記変速時出力トルク制御の実行によりその多重ダウンシフトに伴う駆動力の変化が滑らかになるようにすることが可能である。
請求項4に係る発明の車両の駆動力制御装置によれば、(a)アクセル開度の増大中における前記自動変速機のダウンシフト前において、その自動変速機のダウンシフトによる駆動力の変動幅である駆動力差を小さくするように前記エンジンの出力トルクを制御する変速時出力トルク制御を行い、(b)前記ダウンシフトによる前記駆動力差が予め設定された駆動力差判定値以上になると判断された場合には、前記駆動力差を小さくするように前記ダウンシフト後にもその変速時出力トルク制御を行うものであり、(c)前記自動変速機の実際の変速段をn速と表した場合において、前記自動変速機のn+1速からn速へのダウンシフト後にそのダウンシフトによる前記駆動力差を小さくするために行われる前記変速時出力トルク制御では、車速を一定としてn速からn+1速へアップシフトが行われるとした場合のn速における変速時の駆動力をその駆動力の下限値とする。従って、その変速時出力トルク制御が行われない場合と比較して上記変速に伴う上記駆動力の変化が滑らかになるようにすることが可能であり、乗員の快適性を向上させ得る。また、上記自動変速機の変速前後のいずれか一方のみで上記変速時出力トルク制御が行われる場合と比較して、上記上記駆動力差を一層小さくすることが可能である。また、上記変速時出力トルク制御中にアクセル開度が減少するなどしても、上記ダウンシフト後にn速において実行される上記変速時出力トルク制御が上記n速からn+1速へのアップシフトに影響することを回避して、運転者の意思に即した上記アップシフトを実現することが可能である。
請求項5に係る発明の車両の駆動力制御装置によれば、(a)アクセル開度の増大中における前記自動変速機のダウンシフト前において、その自動変速機のダウンシフトによる駆動力の変動幅である駆動力差を小さくするように前記エンジンの出力トルクを制御する変速時出力トルク制御を行い、(b)前記ダウンシフトによる前記駆動力差が予め設定された駆動力差判定値以上になると判断された場合には、前記駆動力差を小さくするように前記ダウンシフト後にもその変速時出力トルク制御を行うものであり、(c)アクセルペダルが踏み込まれたときの変化率であるアクセル踏込速度を検出するアクセル踏込速度検出手段を備え、(d)前記自動変速機の実際の変速段をn速と表した場合において、車速を一定としてn速からn−1速へダウンシフトが行われるとした場合のn−1速における変速時の駆動力がn速で発生可能な最大駆動力となるアクセル開度を上限とし、車速を一定としてn−1速からn速へアップシフトが行われるとした場合のアクセル開度とn+1速からn速へダウンシフトが行われたときのアクセル開度との何れか一方のアクセル開度の大きい側を下限とした変速点変化範囲内で、前記アクセル踏込速度が大きいほど前記ダウンシフト変速点を前記アクセル開度の小さい側にずらす。従って、その変速時出力トルク制御が行われない場合と比較して上記変速に伴う上記駆動力の変化が滑らかになるようにすることが可能であり、乗員の快適性を向上させ得る。また、上記自動変速機の変速前後のいずれか一方のみで上記変速時出力トルク制御が行われる場合と比較して、上記上記駆動力差を一層小さくすることが可能である。また、運転者の要求する駆動力を早期に得ることが可能である。また、前記n速からn−1速へのダウンシフト前に実行される変速時出力トルク制御により変速頻度の低減を図ることができ、上記ダウンシフト変速点をずらすことが上記n−1速からn速へのアップシフトに影響することを回避し得る。
ここで好適には、前記変速時出力トルク制御は、手動操作により前記自動変速機の変速段が固定され又は変速可能な高速側変速段が設定されるマニュアルレンジ操作時には行われない。このようにすれば、運転者の意思に即して運転者の操作に対して直接的に駆動力が変動する操作感を与えることが可能である。
また好適には、アクセル開度が大きくなるほど、そのアクセル開度の変化量に対する駆動力の変化量である駆動力変化勾配が同一もしくは小さくなるように前記変速時出力トルク制御が実行される。このようにすれば、上記アクセル開度が大きい場合すなわち前記エンジンの出力トルクが大きい場合にはアクセルペダル操作に対する駆動力の変動が穏やかになり、車両のコントロール性を確保できる。
また好適には、(a)前記エンジンと自動変速機との間に設けられロックアップ機構を有するトルクコンバータと、そのロックアップ機構の係合状態であるロックアップオン状態とそのロックアップ機構の解放状態であるロックアップオフ状態との何れに切り換えるべきかを判定するロックアップ判定手段とを、備え、(b)前記ロックアップオン状態において、前記ロックアップ判定手段がロックアップオフ状態に切り換えるべきと判定した場合には、前記ロックアップ機構のロックアップオン状態からロックアップオフ状態への切換えによる前記駆動力差を小さくするように前記エンジンの出力トルクを制御するロックアップ切換時出力トルク制御が行われる。このようにすれば、そのロックアップ切換時出力トルク制御が行われない場合と比較して上記ロックアップ状態の切換えに伴う上記駆動力の変化が滑らかになるようにすることが可能であり、乗員の快適性を向上させ得る。
また好適には、前記ロックアップ切換時出力トルク制御では、前記ロックアップオン状態から前記ロックアップオフ状態への切換時におけるロックアップオフ状態での駆動力に達するように前記ロックアップオン状態での駆動力を上昇させる。このようにすれば、上記ロックアップオン状態からロックアップオフ状態への切換えによって生じる駆動力差を一層小さくできる。
また好適には、(a)アクセルペダルが踏み込まれたときの変化率であるアクセル踏込速度を検出するアクセル踏込速度検出手段を備え、(b)前記アクセル踏込速度に基づいて、前記ロックアップオン状態から前記ロックアップオフ状態への切換えがなされるアクセル開度を示すロックアップオフ点を変更する。このようにすれば、運転者の要求する駆動力を早期に得ることが可能である。
また好適には、前記ロックアップオン状態から前記ロックアップオフ状態への切換えがなされるとした場合のそのロックアップオフ状態における上記切換時の駆動力が上記ロックアップオン状態で発生可能な最大駆動力となるアクセル開度を上限とし、前記ロックアップオフ状態から前記ロックアップオン状態への切換えがなされる予め設定されたアクセル開度を下限としたロックアップオフ点変化範囲内で、前記アクセル踏込速度が大きいほど前記ロックアップオフ点が前記アクセル開度の小さい側にずらされる。このようにすれば、上記ロックアップオン状態から上記ロックアップオフ状態への切換前に実行されるロックアップ切換時出力トルク制御によりロックアップ状態の切換頻度の低減を図ることができ、上記ロックアップオフ点をずらすことが上記ロックアップオフ状態からロックアップオン状態への切換えに影響することを回避し得る。
また好適には、前記ロックアップ切換時出力トルク制御は前記スロットル弁開度を制御することである。このようにすれば、そのロックアップ切換時出力トルク制御において容易に前記エンジンの出力トルクを調整し、前記駆動力を変更できる。
また好適には、前記変速時出力トルク制御は、前記スロットル弁開度を制御することである。このようにすれば、その変速時出力トルク制御において容易に前記エンジンの出力トルクを調整し、前記駆動力を変更できる。
また好適には、前記アクセル開度とスロットル弁開度とが一対一で対応する両者の関係であるスロットル弁基準特性が予め設定されており、前記変速時出力トルク制御は、前記自動変速機の変速によって生じる前記駆動力差を小さくするように上記スロットル弁基準特性に関わらず前記スロットル弁開度を制御することである。詳細に言えば、上記自動変速機のダウンシフトによって生じる上記駆動力差を小さくするためにそのダウンシフト前に行われる変速時出力トルク制御では、同一アクセル開度で比較して上記スロットル弁基準特性に基づき決定されるスロットル弁開度よりも実際のスロットル弁開度が大きくされる。また、上記自動変速機のダウンシフトによって生じる上記駆動力差を小さくするためにそのダウンシフト後に行われる変速時出力トルク制御では、同一アクセル開度で比較して上記スロットル弁基準特性に基づき決定されるスロットル弁開度よりも実際のスロットル弁開度が小さくされる。
また好適には、前記ロックアップ切換時出力トルク制御は、前記ロックアップ機構のロックアップオン状態からロックアップオフ状態への切換えによって生じる前記駆動力差を小さくするように上記スロットル弁基準特性に関わらず前記スロットル弁開度を制御することである。詳細に言えば、上記ロックアップオン状態からロックアップオフ状態への切換前に実行される上記ロックアップ切換時出力トルク制御では、同一アクセル開度で比較して上記スロットル弁基準特性に基づき決定されるスロットル弁開度よりも実際のスロットル弁開度が大きくされる。
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明に係る車両用自動変速機(以下、「自動変速機」と表す)10の構成を説明する骨子図であり、図2は自動変速機10において複数の変速段を成立させる際の油圧式摩擦係合要素(以下、「係合要素」と表す)の作動を説明する作動表である。本発明が好適に適用される車両は図1のようにエンジン30と油圧制御のロックアップクラッチであるロックアップ機構31を有するトルクコンバータ32と有段の自動変速機10とを備えている。そして、エンジン30は、電気的に開閉制御可能な電子スロットル弁56(図4参照)を備えており、その電子スロットル弁56によってエンジン30の出力トルクTE(以下、「エンジントルクTE」と表す)は調整され、電子スロットル弁56の開度θTH(以下、「スロットル弁開度θTH」と表す)が大きくなるほどエンジントルクTEは増大する。
自動変速機10は、車体に取り付けられる非回転部材としてのトランスミッションケース(以下、「ケース」と表す)26内において、ダブルピニオン型の第1遊星歯車装置12を主体として構成されている第1変速部14と、シングルピニオン型の第2遊星歯車装置16およびダブルピニオン型の第3遊星歯車装置18を主体として構成されている第2変速部20とを共通の軸心上に有し、入力軸22の回転を変速して出力軸24から出力する。入力軸22は入力回転部材に相当するものであり、本実施例では走行用の動力源であるエンジン30によって回転駆動されるトルクコンバータ32のタービン軸である。出力軸24は出力回転部材に相当するものであり、例えば図示しない差動歯車装置(終減速機)や一対の車軸等を順次介して左右の駆動輪を回転駆動する。なお、この自動変速機10はその軸心に対して略対称的に構成されており、図1の骨子図においてはその軸心の下半分が省略されている。
上記第1遊星歯車装置12は、サンギヤS1、互いに噛み合う複数対のピニオンギヤP1、そのピニオンギヤP1を自転および公転可能に支持するキャリヤCA1、ピニオンギヤP1を介してサンギヤS1と噛み合うリングギヤR1を備え、サンギヤS1、キャリアCA1、およびリングギヤR1によって3つの回転要素が構成されている。キャリヤCA1は入力軸22に連結されて回転駆動され、サンギヤS1は回転不能にケース26に一体的に固定されている。リングギヤR1は中間出力部材として機能し、入力軸22に対して減速回転させられて、回転を第2変速部20へ伝達する。本実施例では、入力軸22の回転をそのままの速度で第2変速部20へ伝達する経路が、予め定められた一定の変速比(=1.0)で回転を伝達する第1中間出力経路PA1であり、第1中間出力経路PA1には、入力軸22から第1遊星歯車装置12を経ることなく第2変速部20へ回転を伝達する直結経路PA1aと、入力軸22から第1遊星歯車装置12のキャリヤCA1を経て第2変速部20へ回転を伝達する間接経路PA1bとがある。また、入力軸22からキャリヤCA1、そのキャリヤCA1に配設されたピニオンギヤP1、およびリングギヤR1を経て第2変速部20へ伝達する経路が、第1中間出力経路PA1よりも大きい変速比(>1.0)で入力軸22の回転を変速(減速)して伝達する第2中間出力経路PA2である。
前記第2遊星歯車装置16は、サンギヤS2、ピニオンギヤP2、そのピニオンギヤP2を自転および公転可能に支持するキャリヤCA2、ピニオンギヤP2を介してサンギヤS2と噛み合うリングギヤR2を備えている。また、前記第3遊星歯車装置18は、サンギヤS3、互いに噛み合う複数対のピニオンギヤP2およびP3、そのピニオンギヤP2およびP3を自転および公転可能に支持するキャリヤCA3、ピニオンギヤP2およびP3を介してサンギヤS3と噛み合うリングギヤR3を備えている。
上記第2遊星歯車装置16および第3遊星歯車装置18では、一部が互いに連結されることによって4つの回転要素RM1〜RM4が構成されている。具体的には、第2遊星歯車装置16のサンギヤS2によって第1回転要素RM1が構成され、第2遊星歯車装置16のキャリヤCA2および第3遊星歯車装置のキャリヤCA3が互いに一体的に連結されて第2回転要素RM2が構成され、第2遊星歯車装置16のリングギヤR2および第3遊星歯車装置18のリングギヤR3が互いに一体的に連結されて第3回転要素RM3が構成され、第3遊星歯車装置18のサンギヤS3によって第4回転要素RM4が構成されている。この第2遊星歯車装置16および第3遊星歯車装置18は、キャリアCA2およびCA3が共通の部材にて構成されているとともに、リングギヤR2およびR3が共通の部材にて構成されており、且つ第2遊星歯車装置16のピニオンギヤP2が第3遊星歯車装置18の第2ピニオンギヤを兼ねているラビニヨ型の遊星歯車列とされている。
上記第1回転要素RM1(サンギヤS2)は、第1ブレーキB1を介してケース26に選択的に連結されて回転停止され、第3クラッチC3を介して中間出力部材である第1遊星歯車装置12のリングギヤR1(すなわち第2中間出力経路PA2)に選択的に連結され、さらに第4クラッチC4を介して第1遊星歯車装置12のキャリヤCA1(すなわち第1中間出力経路PA1の間接経路PA1b)に選択的に連結されている。第2回転要素RM2(キャリヤCA2およびCA3)は、第2ブレーキB2を介してケース26に選択的に連結されて回転停止させられるとともに、第2クラッチC2を介して入力軸22(すなわち第1中間出力経路PA1の直結経路PA1a)に選択的に連結されている。第3回転要素RM3(リングギヤR2およびR3)は、出力軸24に一体的に連結されて回転を出力するようになっている。第4回転要素RM4(サンギヤS3)は、第1クラッチC1を介してリングギヤR1に連結されている。なお、第2回転要素RM2とケース26との間には、第2回転要素RM2の正回転(入力軸22と同じ回転方向)を許容しつつ逆回転を阻止する一方向クラッチF1が第2ブレーキB2と並列に設けられている。
図3は、上記第1変速部14および第2変速部20の各回転要素の回転速度を直線で表すことができる共線図であり、下の横線が回転速度「0」を示し、上の横線が回転速度「1.0」すなわち入力軸22と同じ回転速度を示している。また、第1変速部14の各縦線は、左側から順番にサンギヤS1、リングギヤR1、キャリヤCA1を表しており、それ等の間隔は第1遊星歯車装置12のギヤ比ρ1(=サンギヤS1の歯数/リングギヤR1の歯数)に応じて定められる。第2変速部20の4本の縦線は、左側から右端へ向かって順番に第1回転要素RM1(サンギヤS2)、第2回転要素RM2(キャリヤCA2およびキャリヤCA3)、第3回転要素RM3(リングギヤR2およびリングギヤR3)、第4回転要素RM4(サンギヤS3)を表しており、それ等の間隔は第2遊星歯車装置16のギヤ比ρ2および第3遊星歯車装置18のギヤ比ρ3に応じて定められる。
そして、この図3に示す共線図から明らかなように、第1クラッチC1および第2ブレーキB2が係合させられて、第4回転要素RM4が第1変速部14を介して入力軸22に対して減速回転させられるとともに、第2回転要素RM2が回転停止させられると、出力軸24に連結された第3回転要素RM3は「1st」で示す回転速度で回転させられ、最も大きい変速比(=入力軸22の回転速度/出力軸24の回転速度)の第1変速段「1st」が成立させられる。
第1クラッチC1および第1ブレーキB1が係合させられて、第4回転要素RM4が第1変速部14を介して入力軸22に対して減速回転させられるとともに、第1回転要素RM1が回転停止させられると、第3回転要素RM3は「2nd」で示す回転速度で回転させられ、第1変速段「1st」よりも変速比が小さい第2変速段「2nd」が成立させられる。
第1クラッチC1および第3クラッチC3が係合させられて、第4回転要素RM4および第1回転要素RM1が第1変速部14を介して入力軸22に対して減速回転させられて第2変速部20が一体回転させられると、第3回転要素RM3は「3rd」で示す回転速度で回転させられ、第2変速段「2nd」よりも変速比が小さい第3変速段「3rd」が成立させられる。
第1クラッチC1および第4クラッチC4が係合させられて、第4回転要素RM4が第1変速部14を介して入力軸22に対して減速回転させられるとともに、第1回転要素RM1が入力軸22と一体回転させられると、第3回転要素RM3は「4th」で示す回転速度で回転させられ、第3変速段「3rd」よりも変速比が小さい第4変速段「4th」が成立させられる。
第1クラッチC1および第2クラッチC2係合させられて、第4回転要素RM4が第1変速部14を介して入力軸22に対して減速回転させられるとともに、第2回転要素RM2が入力軸22と一体回転させられると、第3回転要素RM3は「5th」で示す回転速度で回転させられ、第4変速段「4th」よりも変速比が小さい第5変速段「5th」が成立させられる。
第2クラッチC2および第4クラッチC4が係合させられて、第2変速部20が入力軸22と一体回転させられると、第3回転要素RM3は「6th」で示す回転速度すなわち入力軸22と同じ回転速度で回転させられ、第5変速段「5th」よりも変速比が小さい第6変速段「6th」が成立させられる。この第6変速段「6th」の変速比は1である。
第2クラッチC2および第3クラッチC3が係合させられて、第1回転要素RM1が第1変速部14を介して入力軸22に対して減速回転させられるとともに、第2回転要素RM2が入力軸22と一体回転させられると、第3回転要素RM3は「7th」で示す回転速度で回転させられ、第6変速段「6th」よりも変速比が小さい第7変速段「7th」が成立させられる。
第2クラッチC2および第1ブレーキB1が係合させられて、第2回転要素RM2が入力軸22と一体回転させられるとともに、第1回転要素RM1が回転停止させられると、第3回転要素RM3は「8th」で示す回転速度で回転させられ、第7変速段「7th」よりも変速比が小さい第8変速段「8th」が成立させられる。なお、後述の説明においては、自動変速機10の「第1変速段」乃至「第8変速段」をそれぞれ「第1速」乃至「第8速」と表現する場合がある。
また、第3クラッチC3および第2ブレーキB2が係合させられると、第1回転要素RM1が第1変速部14を介して減速回転させられるとともに、第2回転要素RM2が回転停止させられて、第3回転要素RM3は「Rev1」で示す回転速度で逆回転させられ、逆回転方向で変速比が最も大きい第1後進変速段「Rev1」が成立させられる。第4クラッチC4および第2ブレーキB2が係合させられると、第1回転要素RM1が入力軸22と一体回転させられるとともに、第2回転要素RM2が回転停止させられ、第3回転要素RM3は「Rev2」で示す回転速度で逆回転させられ、第1後進変速段「Rev1」よりも変速比が小さい第2後進変速段「Rev2」が成立させられる。第1後進変速段「Rev1」、第2後進変速段「Rev2」は、それぞれ逆回転方向の第1変速段、第2変速段に相当する。
図2の作動表は、上記各変速段を成立させる際のクラッチC1〜C4、ブレーキB1、B2の作動状態を説明する図表であり、「○」は係合状態を、「(○)」はエンジンブレーキ時のみ係合状態を、空欄は解放状態をそれぞれ表している。第1変速段「1st」を成立させるブレーキB2には並列に一方向クラッチF1が設けられているため、発進時(加速時)には必ずしもブレーキB2を係合させる必要は無い。また、各変速段の変速比は、第1遊星歯車装置12、第2遊星歯車装置16、および第3遊星歯車装置18の各ギヤ比ρ1、ρ2、ρ3によって適宜定められる。
このように本実施例の自動変速機10は、変速比が異なる2つの中間出力経路PA1、PA2を有する第1変速部14および2組の遊星歯車装置16、18を有する第2変速部20により、4つのクラッチC1〜C4および2つのブレーキB1、B2の係合切換えで前進8速の変速ギヤ段が達成されるため、小型に構成され、車両への搭載性が向上する。また、図2の作動表から明らかなように、クラッチC1〜C4およびブレーキB1、B2の何れか2つを掴み替えるだけで各変速段の変速を行うことができる。また、上記クラッチC1〜C4、およびブレーキB1、B2(以下、特に区別しない場合は単に「クラッチC」、「ブレーキB」と表す)は、多板式のクラッチやブレーキなど油圧アクチュエータによって係合制御される係合要素すなわち油圧式摩擦係合要素である。
図4は、図1の自動変速機10などを制御するために車両に設けられた制御系統の要部を説明するブロック線図である。本発明の駆動力制御装置としての機能を有する電子制御装置90は、CPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、エンジン30の出力制御、自動変速機10の変速制御、
ロックアップ機構31の係合・解放制御等を実行するようになっており、必要に応じてエンジン制御用や変速制御用等に分けて構成される。
図4において、アクセルペダル50の操作量であるアクセル開度Accがアクセル開度センサ(アクセル操作量センサ)52により検出されるとともに、そのアクセル開度(アクセル操作量)Accを表す信号が電子制御装置90に供給されるようになっている。アクセルペダル50は、運転者の出力要求量に応じて大きく踏み込み操作されるものであることからアクセル操作部材に相当し、アクセル開度Accは出力要求量に相当する。
また、エンジン30の回転速度NEを検出するためのエンジン回転速度センサ58、エンジン30の吸入空気量Qを検出するための吸入空気量センサ60、吸入空気の温度TAを検出するための吸入空気温度センサ62、スロットルアクチュエータ54の制御により電気的に開閉制御可能なエンジン30の電子スロットル弁56の全閉状態(アイドル状態)およびその開度θTHを検出するためのアイドルスイッチ付スロットル弁開度センサ64、車速V(出力軸24の回転速度NOUTに対応)を検出するための車速センサ66、エンジン30の冷却水温TWを検出するための冷却水温センサ68、常用ブレーキであるフットブレーキの操作の有無を検出するためのブレーキスイッチ70、シフトレバー72のレバーポジション(操作位置)PSHを検出するためのレバーポジションセンサ74、タービン回転速度NT(=入力軸22の回転速度NIN)を検出するためのタービン回転速度センサ76、油圧制御回路98内の作動油の温度であるAT油温TOILを検出するためのAT油温センサ78、車両の加速度(減速度)Gを検出するための加速度センサ80などが設けられており、それらのセンサやスイッチなどから、エンジン回転速度NE、吸入空気量Q、吸入空気温度TA、スロットル弁開度θTH、車速V、エンジン冷却水温TW、ブレーキ操作の有無、シフトレバー72のレバーポジションPSH、タービン回転速度NT、AT油温TOIL、車両の加速度(減速度)Gなどを表す信号が電子制御装置90に供給されるようになっている。
上記シフトレバー72は例えば運転席の近傍に配設され、図5に示すように、5つのレバーポジション「P」、「R」、「N」、「D」、または「S」へ手動操作されるようになっている。「P」ポジションは自動変速機10内の動力伝達経路を解放し且つメカニカルパーキング機構によって機械的に出力軸24の回転を阻止(ロック)するための駐車位置であり、「R」ポジションは自動変速機10の出力軸24の回転方向を逆回転とするための後進走行位置であり、「N」ポジションは自動変速機10内の動力伝達経路を解放するための動力伝達遮断位置であり、「D」ポジションは自動変速機10の第1速乃至第8速の変速を許容する変速範囲(Dレンジ)で自動変速制御を実行させる前進走行位置であり、「S」ポジションは変速可能な高速側の変速段が異なる複数の変速レンジ或いは異なる複数の変速段を切り換えることにより手動変速が可能な前進走行位置である。この「S」ポジションにおいては、シフトレバー72の操作毎に変速範囲或いは変速段をアップ側にシフトさせるための「+」ポジション、シフトレバー72の操作毎に変速範囲或いは変速段をダウン側にシフトさせるための「−」ポジションが備えられている。前記レバーポジションセンサ74はシフトレバー72がどのレバーポジション(操作位置)PSHに位置しているかを検出する。
また、前記油圧制御回路98には、例えば上記シフトレバー72にケーブルやリンクなどを介して連結されたマニュアルバルブが備えられ、シフトレバー72の操作に伴ってそのマニュアルバルブが機械的に作動させられることにより油圧制御回路98内の油圧回路が切り換えられる。例えば、「D」ポジションおよび「S」ポジションでは前進油圧PDが出力されて前進用回路が機械的に成立させられ、前進変速段である第1変速段「1st」〜第8変速段「8th」で変速しながら前進走行することが可能となる。電子制御装置90は、シフトレバー72が「D」ポジションへ操作された場合は、そのことをレバーポジションセンサ74の信号から判断して自動変速モードを成立させ、第1変速段「1st」〜第8変速段「8th」の総ての前進変速段を用いて変速制御を行う。
上記電子制御装置90は、例えば図6に示す車速Vおよびアクセル開度Accをパラメータとして予め記憶された関係(マップ、変速線図)から実際の車速Vおよびアクセル開度Accに基づいて変速判断を行い、その判断した変速段が得られるように変速制御を行う変速制御手段110(図8参照)を機能的に備えており、例えば車速Vが低くなったりアクセル開度Accが大きくなったりするに従って変速比が大きい低速側の変速段が成立させられる。この変速制御においては、その変速判断された変速段が成立させられるように変速用の油圧制御回路98内のリニアソレノイドバルブSL1〜SL6の励磁、非励磁や電流制御が実行されてクラッチCやブレーキBの係合、解放状態が切り換えられるとともに変速過程の過渡油圧などが制御される。すなわち、電磁弁である前記リニアソレノイドバルブSL1〜SL6の励磁、非励磁をそれぞれ制御することによりクラッチCおよびブレーキBの係合、解放状態を切り換えて第1変速段「1st」〜第8変速段「8th」の何れかの前進変速段を成立させる。なお、スロットル弁開度θTHや吸入空気量Q、路面勾配などに基づいて変速制御を行うなど、種々の態様が可能である。
上記図6の変速線図において、実線はアップシフトが判断されるための変速線(アップシフト線)であり、破線はダウンシフトが判断されるための変速線(ダウンシフト線)である。また、この図6の変速線図における変速線は、実際のアクセル開度Acc(%)を示す横線上において実際の車速Vが線を横切ったか否かすなわち変速線上の変速を実行すべき値(変速点車速)VSを越えたか否かを判断するためのものであり、上記値VSすなわち変速点車速の連なりとして予め記憶されていることにもなる。なお、図6の変速線図は自動変速機10で変速が実行される第1変速段乃至第8変速段のうちで第1変速段乃至第6変速段における変速線が例示されている。
図7は、油圧制御回路98のうちリニアソレノイドバルブSL1〜SL6に関する部分を示す回路図で、クラッチC1〜C4、およびブレーキB1、B2の各油圧アクチュエータ(油圧シリンダ)34、36、38、40、42、44には、油圧供給装置46から出力されたライン油圧PLがそれぞれリニアソレノイドバルブSL1〜SL6により調圧されて供給されるようになっている。油圧供給装置46は、前記エンジン30によって回転駆動される機械式のオイルポンプ48(図1参照)や、ライン油圧PLを調圧するレギュレータバルブ等を備えており、エンジン負荷等に応じてライン油圧PLを制御するようになっている。リニアソレノイドバルブSL1〜SL6は、基本的には何れも同じ構成で、電子制御装置90(図4参照)からの指令値に基づき独立に励磁、非励磁され、各油圧アクチュエータ34〜44の油圧が独立に調圧制御されるようになっている。そして、自動変速機10の変速制御においては、例えば変速に関与するクラッチCやブレーキBの解放と係合とが同時に制御される所謂クラッチ・ツウ・クラッチ変速が実行される。例えば、図2の係合作動表に示すように5速→4速のダウンシフトでは、クラッチC2が解放されると共にクラッチC4が係合され、変速ショックを抑制するようにクラッチC2の解放過渡油圧とクラッチC4の係合過渡油圧とが適切に制御される。なお、以下の説明ではリニアソレノイドバルブSL1〜SL6を個々に区別して説明する必要がない場合には単に「リニアソレノイドバルブSL」と表現する。
ところで、アクセルペダル50が踏込み操作されると車両の推進力である駆動力FDRを上昇させるため自動変速機10ではアクセル開度Accに応じて図6の変速線図に従いダウンシフトが発生するが、通常、そのダウンシフト時には駆動力FDRが段階的に変化する。しかし、アクセルペダル踏込時の駆動力FDR変化は滑らかな方が運転者の意思に即するので、本実施例では、ダウンシフト時の駆動力FDR変化をより滑らかなもの(連続的なもの)に近付ける制御作動が実行される。以下、その制御作動について図8を用いて説明する。なお、駆動輪の直径は一定であるので、上記駆動力FDRは上記駆動輪を回転させるトルクである駆動トルクTDRと一対一の比例関係にある。
図8は、電子制御装置90の制御機能の要部すなわち上記ダウンシフト時の駆動力FDR変化を滑らかなものに近付ける制御作動を説明する機能ブロック線図である。
図9は、一対一で対応するように予め設定されているアクセル開度Accとスロットル弁開度θTHとの関係であるスロットル弁基準特性LASを示す図である。本実施例のスロットル弁は電気的に開閉制御可能な電子スロットル弁56であるので上記スロットル弁基準特性LASに従わずにスロットル弁開度θTHを増大もしくは減少させることが可能である。例えば、図9において矢印ARUP側に上記アクセル開度Accとスロットル弁開度θTHとの関係がずらされれば、スロットル弁基準特性LASに対応したエンジントルクTEより実際のエンジントルクTEを増大させる後述のトルクアップ制御が実行されることとなる。逆に、矢印ARDN側に上記アクセル開度Accとスロットル弁開度θTHとの関係がずらされれば、スロットル弁基準特性LASに対応したエンジントルクTEより実際のエンジントルクTEを減少させる後述のトルクダウン制御が実行されることとなる。
図10は、アクセル開度Accに対してスロットル弁基準特性LAS(図9)に従いスロットル弁開度θTHが変化した場合のアクセル開度Accと駆動力FDRとの関係であるベース駆動力特性を例示する図であり、このベース駆動力特性は自動変速機10の変速段ごとに異なり自動変速機10の変速段が低いほど駆動力FDRが大きくなる。駆動力FDRは、スロットル弁開度θTH(アクセル開度Acc)及び自動変速機10の変速段が変化しなくても、エンジン回転速度NE又は車速Vとトルクコンバータ32の入出力軸の回転速度比から算出できるトルク比とをパラメータとして変化する。なお、図10のベース駆動力特性図は自動変速機10で変速が実行される第1変速段(第1速)乃至第8変速段(第8速)のうちで第5変速段(第5速)乃至第8変速段(第8速)におけるベース駆動力特性が例示されている。
図8において、変速制御手段110は、例えば図6に示す予め記憶された変速線図から実際の車速Vおよびアクセル開度Accに基づいて変速判断を実行し、判断された変速を実行させるための変速出力を油圧制御回路98に対して行うことにより、自動変速機10のギヤ段を自動的に切り換える。例えば、自動変速機10の変速段が第3変速段とされているときにおいて、実際の車速Vが図6の点aから点bへと低下し変速制御手段110が「3rd」→「2nd」のダウンシフトを実行すべき変速点車速V3−2を越えたと判断した場合には、そのダウンシフトの変速制御において変速制御手段110は第3クラッチC3を解放開始させ、その係合トルクがある程度維持されているときに第1ブレーキB1の係合を開始させてその係合トルクを発生させ、この状態で第3変速段の変速比γ3から第2変速段の変速比γ2へ移行させつつ、第3クラッチC3の解放と第1ブレーキB1の係合とを完了させる指令を油圧制御回路98に出力する。
記憶手段112は、前記図6の変速線図及び図9のスロットル弁基準特性LASを記憶している。更に、車速V及びトルクコンバータ32の回転速度比などのベース駆動力特性(図10)に影響する各パラメータを段階的に変化させた複数の車両駆動状態において、それぞれ図10のような各変速段ごとの上記ベース駆動力特性から構成されたベース駆動力特性図が予め求められており、記憶手段112はその複数のベース駆動力特性図も記憶している。
アクセル踏込速度検出手段114は、アクセルペダル50が踏み込まれたときの変化率、すなわち、アクセル開度センサ52により検出されるアクセル開度Accの変化率であるアクセル踏込速度VACを検出する。なお、アクセル踏込速度VACはアクセルペダル50の踏込方向すなわちアクセル開度Accの増大方向が正方向である。
アクセル開度判定手段116は、アクセル踏込速度検出手段114によって検出されたアクセル踏込速度VACからアクセル開度Accが増大方向に変化しているか否かを判定する。
変速実行判定手段117は、自動変速機10の変速について判定する。例えば、後述する図11の説明において変速制御手段110によりダウンシフトが行われた場合にはダウンシフトが実行された旨の判定を行う。
ここで、アクセル開度Accが増大方向に変化していくと図6の変速線図に従い自動変速機10のダウンシフトが実行される。そして、図11のアクセル開度Accと駆動力FDRとの関係を示す図から判るように、アクセル開度Accの増大に伴い駆動力FDRが前記ベース駆動力特性に沿って変化した場合には、ダウンシフト時に駆動力FDRが例えば図11の矢印FNのように段階的に変化する。そこで、変速時出力トルク制御手段118は、自動変速機10のダウンシフトによる駆動力FDRの変動幅である駆動力差DFF(図11に例示)を小さくするようにエンジントルクTEを制御する変速時出力トルク制御を行う。自動変速機10のアップシフトでも上記変速時出力トルク制御が行われてもよいが、本実施例ではアップシフトでは上記変速時出力トルク制御が行われず、アクセル開度Accが減少している場合や車速Vが上昇している場合など図6の変速線図において車速Vとアクセル開度Accとの関係がアップシフトに向けて変化している場合には、図11に示す各変速段のベース駆動力特性に沿って破線(図11)のように駆動力FDRが変化しアップシフト時は破線の矢印(図11)のように段階的に変化する。なお図11のn+2速、n+1速、n速、n−1速はそれぞれ自動変速機10の各変速段を一般化して表現したものであり、例えばn速が第6変速段(第6速)に対応するとすればn+1速は第7変速段(第7速)に対応することになる。以下の説明や他の図でも同様である。
上記変速時出力トルク制御について図11を用いて具体的に説明する。n+2速からn+1速へ自動変速機10がダウンシフトされると自動変速機10の現在の変速段(実際の変速段)はn+1速になる。まずこの場合を例として説明する。変速時出力トルク制御手段118は、自動変速機10の変速前に上記変速時出力トルク制御を行う変速前出力トルク制御手段120と自動変速機10の変速後に上記変速時出力トルク制御を行う変速後出力トルク制御手段122とを備えている。アクセル開度判定手段116によってアクセル開度Accが増大方向に変化していると判定された場合には、次のダウンシフトに向けて上記変速時出力トルク制御を行うため変速前出力トルク制御手段120は現在の変速段(実際の変速段)であるn+1速の前記ベース駆動力特性と1速低いn速の上記ベース駆動力特性とを求める。このとき車速V等のパラメータに基づき逐一アクセル開度Accに対する駆動力FDRが求められてもよいが、例えば、現在の車速V及びトルクコンバータ32のトルク比などが一定に推移するとみなして変速前出力トルク制御手段120は、記憶手段112に記憶された前記複数のベース駆動力特性図の中から現在の車両駆動状態に対応するベース駆動力特性図を選択し前記n+1速(現在の変速段)とn速のベース駆動力特性を求める。
次に変速前出力トルク制御手段120は、n+2速からn+1速(現在の変速段)へのダウンシフトがなされるアクセル開度Accを示すダウンシフト変速点PDNとn速からn+1速(現在の変速段)へのアップシフトがなされるアクセル開度Accを示すアップシフト変速点PUPとを比較し、そのアップシフト変速点PUPが上記ダウンシフト変速点PDNよりもアクセル開度Accの小さい側にある場合には、n+1速(現在の変速段)における前記変速時出力トルク制御を上記ダウンシフト変速点PDNから開始する。このとき変速前出力トルク制御手段120は、例えば、直前の自動変速機10の変速がn+2速からn+1速へのダウンシフトであるので、上記ダウンシフト変速点PDNとしては実際のn+2速からn+1速へのダウンシフト変速点PDNを採用し、上記アップシフト変速点PUPとしては図6の変速線図に基づき現在の車速Vが一定であると仮定して予測したn速からn+1速へのアップシフト変速点PUPを採用する。
図11を用いて説明すると、変速前出力トルク制御手段120が上記変速点の比較をするときに用いる上記アップシフト変速点PUPは図11のP11であり、上記ダウンシフト変速点PDNは図11のP12であり、両者を比較すると図11においてアップシフト変速点PUP(P11)がダウンシフト変速点PDN(P12)よりもアクセル開度Acc(図11の横軸)の小さい側にある。従って、変速前出力トルク制御手段120は図11のダウンシフト変速点PDN(P12)から前記変速時出力トルク制御を開始し、その変速時出力トルク制御において図11のAR11のように、n+1速(現在の変速段)のベース駆動力特性に対してアクセル開度Accが増大するほど駆動力FDRを増大させる。このように駆動力FDRを増大させるため具体的には、上記変速時出力トルク制御において変速前出力トルク制御手段120は、図6の変速線図に基づいて例えば現在の車速Vが一定と仮定してn+1速(現在の変速段)からn速へのダウンシフト変速点PDN(図11のn速ベース駆動力特性上のP13)を予測し、開始点であるP12と終了点であるP13とを決定しその間を駆動力FDRが滑らかに増大(図11では直線的に増大)するようにスロットル弁開度θTHを図9のスロットル弁基準特性LASに関わらず大きくし、スロットル弁基準特性LASに対応したエンジントルクTEより実際のエンジントルクTEを増大させるトルクアップ制御を実行する。このトルクアップ制御をアクセル開度Accと駆動力FDRとの関係を模式的に示した図12を用いて説明すると、上記トルクアップ制御の開始点(図11のP12)に相当するトルクアップもとのポイント(図12)と上記トルクアップ制御の終了点(図11のP13)に相当するトルクアップ先のポイント(図12)が決定され所定の変化曲線たとえば直線でつながれて図9のスロットル弁基準特性LASに関わらず駆動力FDRが上昇させられる。このような図9のスロットル弁基準特性LASに関わらずエンジントルクTEを増大させる上記トルクアップ制御により実現される前記変速時出力トルク制御が、アクセル開度Accの増大に伴い実行される自動変速機10のダウンシフトごとに行われると、例えば図13に示すように、そのダウンシフト時ごとにエンジントルクTEが階段状に低下し、そのダウンシフト時に駆動力差DFFが無くなるか或いは小さくなり駆動力FDRが滑らかに変化する。なお、上記トルクアップ制御におけるエンジントルクTEには図9のスロットル弁基準特性LASに関わらず増大させたとしても上限があるので、そのエンジントルクTEの上限に対応するn+1速(現在の変速段)の最大駆動力が上記トルクアップ制御の終了点(図11のP13)によって示される駆動力FDRの上限値とされる。また、アクセルペダル50が踏込まれて前記トルクアップ制御後にシフトダウンが行われスロットル弁開度θTHが図9のスロットル弁基準特性LASに従うようになった場合に、アクセルペダル50が踏込まれているにも関わらず駆動力FDRが低下することが無いようにするため、前記トルクアップ制御では、そのトルクアップ制御中の駆動力FDRがシフトダウン後の実際の駆動力FDRを超えてしまうことが無いようにそのトルクアップ制御における駆動力FDRの誤差を考慮してエンジントルクTEが制御される。
前記アップシフト変速点PUPがダウンシフト変速点PDNよりもアクセル開度Acc(図11の横軸)の小さい側にある場合について説明したが、逆の場合もあり得る。例えば、図11においてn+1速からn速へとダウンシフトされ自動変速機10の現在の変速段(実際の変速段)がn速になった場合である。次にこの場合を例として説明する。
図11において、前述のn+1速の場合と同様にn速(現在の変速段)でも、アクセル開度判定手段116によってアクセル開度Accが増大方向に変化していると判定された場合には、次のダウンシフトに向けて上記変速時出力トルク制御を行うため変速前出力トルク制御手段120は現在の変速段(実際の変速段)であるn速の前記ベース駆動力特性と1速低いn−1速の前記ベース駆動力特性とを求める。次に変速前出力トルク制御手段120は、n+1速からn速(現在の変速段)へのダウンシフトがなされるアクセル開度Accを示すダウンシフト変速点PDNとn−1速からn速(現在の変速段)へのアップシフトがなされるアクセル開度Accを示すアップシフト変速点PUPとを比較する。図11のn速(現在の変速段)ではそのアップシフト変速点PUP(図11のP14)が上記ダウンシフト変速点PDN(図11のP13)よりもアクセル開度Accの大きい側にあるので、その場合には、変速前出力トルク制御手段120はn速(現在の変速段)における前記変速時出力トルク制御を上記アップシフト変速点PUPから開始する。従って、変速前出力トルク制御手段120は図11のアップシフト変速点PUP(P14)から前記トルクアップ制御の実行により変速時出力トルク制御を開始し、その変速時出力トルク制御において図11のAR12のように、n速(現在の変速段)のベース駆動力特性に対してアクセル開度Accが増大するほど駆動力FDRを増大させる。ここで、n−1速のベース駆動力特性上のダウンシフト変速点PDN(図11のP15)に対応する駆動力FDRはn速(現在の変速段)の最大駆動力より大きいので、n速(現在の変速段)ではP15にまで駆動力FDRを上昇させることができず、上記トルクアップ制御の終了点はその最大駆動力に対応する図11のP16とされている。
変速前出力トルク制御手段120は、変速実行判定手段117によってダウンシフトが実行された旨の判定がなされた場合、すなわち自動変速機10のダウンシフトが行われた場合には、上述したダウンシフトによる駆動力差DFFを小さくためにそのダウンシフト前に行われる前記トルクアップ制御、すなわち変速前に行われる前記変速時出力トルク制御である変速前出力トルク制御を終了する。従って、上記ダウンシフトを境にそのダウンシフト後は上記トルクアップ制御は行われなくなる。
上記ダウンシフト前に実行されるトルクアップ制御について説明してきたが、そのダウンシフト後にも、アクセル開度Accが増大方向に変化している場合には前記変速時出力トルク制御が行われることがある。
アクセル開度判定手段116によってアクセル開度Accが増大方向に変化していると判定され、変速実行判定手段117によってダウンシフトが実行されたと判定された場合に変速後出力トルク制御手段122は、自動変速機10の変速であるダウンシフトによる駆動力差DFFが予め設定された駆動力差判定値XDF以上になるか否かを判断する。そして、変速後出力トルク制御手段122は、上記駆動力差DFFが駆動力差判定値XDF以上になると判断した場合には、上記駆動力差DFFを小さくするように上記ダウンシフト後にも上記変速時出力トルク制御を行う。詳細に言うと、変速後出力トルク制御手段122は、スロットル弁開度θTHを図9のスロットル弁基準特性LASに関わらず小さくしスロットル弁基準特性LASに対応したエンジントルクTEより小さいエンジントルクTEから、アクセル開度Accが大きくなるほど実際のエンジントルクTEを増大させスロットル弁基準特性LASに対応したエンジントルクTEに近付けるトルクダウン制御を実行することにより、上記ダウンシフトによって生じる駆動力差DFFを小さくためにそのダウンシフト後に行われる上記変速時出力トルク制御である変速後出力トルク制御を実現する。上記変速後出力トルク制御について図11で見ると、P15とP16との間の縦軸方向の差がn速からn−1速へのダウンシフトによる駆動力差DFFであり、変速後出力トルク制御手段122はこの駆動力差DFFが駆動力差判定値XDF以上になると判断したので、そのダウンシフト後の変速段であるn−1速にてn−1速(現在の変速段)のベース駆動力特性とシフトダウン前に実行されたトルクアップ制御の終了点P16との間で予め設定された条件により決定される上記変速後出力トルク制御(トルクダウン制御)の開始点P17を決定し、その開始点P17から図11のAR13のようにアクセル開度Accが大きくなるほど駆動力FDRを上昇させてn−1速(現在の変速段)のベース駆動力特性に近づける。この変速後出力トルク制御(トルクダウン制御)における駆動力FDRの上昇方法は、アクセル開度Accに対し所定の勾配で駆動力FDRを上昇させてもよいし、変速後出力トルク制御の終了点をn−1速(現在の変速段)のベース駆動力特性上に設定して上記開始点と終了点との間を直線で結ぶように駆動力FDRを上昇させてもよい。なお、変速後出力トルク制御手段122は上記トルクダウン制御を実行するにあたり、変速前出力トルク制御手段120が求めたベース駆動力特性を流用してもよい。
そして変速後出力トルク制御手段122は、上記変速後出力トルク制御(トルクダウン制御)が開始されると駆動力FDRがn−1速(現在の変速段)のベース駆動力特性に達したか否かを判断し、駆動力FDRがn−1速(現在の変速段)のベース駆動力特性に達した場合には上記変速後出力トルク制御(トルクダウン制御)を終了する。トルクダウン制御中は図9のスロットル弁基準特性LASよりもスロットル弁開度θTHの小さい側(矢印ARDN側)にアクセル開度Accとスロットル弁開度θTHとの関係がずらされているが、この関係がスロットル弁基準特性LASに沿うようになれば、変速後出力トルク制御手段122は駆動力FDRがn−1速(現在の変速段)のベース駆動力特性に達したと判断する。
通常はアクセルペダル50が踏込まれるとアクセル開度Accの増大に伴い自動変速機10は1速ずつダウンシフトされるが、アクセルペダル50の踏込速度が大きい場合には2段以上のダウンシフトが実行される多重ダウンシフトが生じる場合がある。その多重ダウンシフトにおいても、1速ずつダウンシフトが実行される場合と同様に変速時出力トルク制御手段118は前記変速時出力トルク制御を行う。そのように実際の変速段であるn速から2段低いn−2速へ多重ダウンシフトが行われる場合、変速前出力トルク制御手段120は、図6の変速線図から求められn速からn-1速へのダウンシフトがなされるアクセル開度Accを示すダウンシフト変速点PDNから、駆動力FDRを変速後のn−2速のベース駆動力特性に近付けるように上昇させる前記変速前出力トルク制御を開始する。
前記変速時出力トルク制御をアクセル開度Accとスロットル弁開度θTHとの関係に着目して見れば、上記変速時出力トルク制御は、自動変速機10の変速によって生じる前記駆動力差DFFを小さくするように図9のスロットル弁基準特性LASに関わらずスロットル弁開度θTHを制御することである。詳細に言えば、前記変速前出力トルク制御(トルクアップ制御)では、同一アクセル開度Accで比較して図9のスロットル弁基準特性LASに基づき決定されるスロットル弁開度θTHよりも実際のスロットル弁開度θTHが大きくされる。また、前記変速後出力トルク制御(トルクダウン制御)では、同一アクセル開度Accで比較して図9のスロットル弁基準特性LASに基づき決定されるスロットル弁開度θTHよりも実際のスロットル弁開度θTHが小さくされる。このように、上記トルクアップ制御とトルクダウン制御とでは、図9のスロットル弁基準特性LASを境としてアクセル開度Accとスロットル弁開度θTHとの関係を示す点が逆方向(矢印ARUP方向又は矢印ARDN方向)にずれるので、上記トルクアップ制御とトルクダウン制御とが並行して実行されることはない。
図14及び図15は、電子制御装置90の制御作動の要部すなわち自動変速機10のダウンシフト時の駆動力FDR変化を滑らかなものに近付ける制御作動を説明するフローチャートであり、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行される。なお、本フローチャートではアクセルペダル50が踏込まれアクセル開度Accの増大に伴い、順次連続的に自動変速機10のダウンシフトが実行される場面を想定している。
先ず、アクセル踏込速度検出手段114及びアクセル開度判定手段116に対応するステップ(以下、「ステップ」を省略する)SA1においては、アクセル踏込速度VACが検出され、そのアクセル踏込速度VACに基づきアクセル開度Accが増大方向に変化しているか否かが判定される。このSA1の判定が肯定的である場合、すなわち、アクセル開度Accが増大方向に変化している場合にはSA2に移る。一方、このSA1の判定が否定的である場合には本フローチャートは終了する。
SA2においては、前記トルクダウン制御、すなわち前記変速後出力トルク制御が実行されているか否かが判定される。この判定がなされるのは、以下のSA3乃至SA8は前記トルクアップ制御を実行するためのステップであり、上記トルクアップ制御とトルクダウン制御とが並行して実行されることは無いからである。このSA2の判定が肯定的である場合、すなわち、上記トルクダウン制御が実行中である場合にはSA11に移る。一方、このSA2の判定が否定的である場合にはSA3に移る。
SA3においては、現在の変速段(実際の変速段)をn速と表した場合において、n+1速からn速(現在の変速段)へのダウンシフトがなされるアクセル開度Accを示すダウンシフト変速点PDNとn−1速からn速(現在の変速段)へのアップシフトがなされるアクセル開度Accを示すアップシフト変速点PUPとが比較される。そして、そのアップシフト変速点PUPが上記ダウンシフト変速点PDNよりもアクセル開度Accの小さい側にあるか否かが判定される。このSA3の判定が肯定的である場合、すなわち、上記アップシフト変速点PUPが上記ダウンシフト変速点PDNよりもアクセル開度Accの小さい側にある場合にはSA4に移る。一方、このSA3の判定が否定的である場合にはSA5に移る。
SA4においては、前記トルクアップ制御によってn速(現在の変速段)からのダウンシフト前に行われる前記変速時出力トルク制御、すなわち前記変速前出力トルク制御が開始される。ここで、上記変速前出力トルク制御の開始点は特に限定されないが、本実施例では、上記変速前出力トルク制御は上記ダウンシフト変速点PDNから開始される。例えば、図11で現在の自動変速機10の現在の変速段(実際の変速段)がn+1速である場合において説明すると、上記ダウンシフト変速点PDNは図11のP12であるので、P12が上記開始点とされAR11のように上記変速前出力トルク制御(トルクアップ制御)が行われる。なお、上記変速前出力トルク制御の終了点は図11ではP13とされ上記ダウンシフト時の駆動力差DFFが零に近付けられているが、上記ダウンシフト時の終了点はn+1速(現在の変速段)のベース駆動力特性より高駆動力側であればP13より低駆動力側であってもよい。
またSA4では、既に上記変速前出力トルク制御が実行中である場合にはそのまま継続される。
SA5においては、増大中である実際のアクセル開度Accが上記アップシフト変速点PUPが示すアクセル開度Accに達したか否かが判定される。このSA5の判定が肯定的である場合、すなわち、実際のアクセル開度Accが上記アップシフト変速点PUPが示すアクセル開度Accに達した場合にはSA6に移る。一方、このSA5の判定が否定的である場合には本フローチャートは終了する。
SA6においては、前記トルクアップ制御によってn速(現在の変速段)からのダウンシフト前に行われる前記変速時出力トルク制御、すなわち前記変速前出力トルク制御が開始される。ここで、上記変速前出力トルク制御の開始点は特に限定されないが、本実施例では、実際のアクセル開度Accが上記アップシフト変速点PUPが示すアクセル開度Accに達したら直ちに、すなわち、上記変速前出力トルク制御は上記アップシフト変速点PUPから開始される。例えば、図11で現在の自動変速機10の現在の変速段(実際の変速段)がn速である場合において説明すると、上記アップシフト変速点PUPは図11のP14であるので、P14が上記開始点とされAR12のように上記変速前出力トルク制御(トルクアップ制御)が行われる。なお、SA5及びSA6はSA3で否定的な判定がなされた場合に実行されるステップであるので、現在の変速段(実際の変速段)をn速と表した場合において、n+1速からn速(現在の変速段)へのダウンシフト変速点PDNよりもn−1速からn速(現在の変速段)へのアップシフト変速点PUPがアクセル開度Accの大きい側にある場合に、SA5及びSA6は実行されると言える。
またSA6では、既に上記変速前出力トルク制御が実行中である場合にはそのまま継続される。
SA4又はSA6の次はSA7が実行される。変速実行判定手段117に対応するSA7においては、自動変速機10のダウンシフトが実行されたか否かが判定される。このSA7の判定が肯定的である場合、すなわち、自動変速機10のダウンシフトが実行された場合にはSA8に移る。一方、このSA7の判定が否定的である場合には本フローチャートは終了する。
SA8においては、前記SA4又はSA6にて開始された変速前出力トルク制御(トルクアップ制御)が終了させられる。SA8の次はSA9へ移る。なお、前記SA2乃至SA6、SA8は変速前出力トルク制御手段120に対応する。
SA9においては、SA7で判定対象となった自動変速機10のダウンシフトによる駆動力差DFFが予め設定された駆動力差判定値XDF以上になるか否かが判断される。例えば図11においてP15とP16との間の縦軸方向の差がn速からn−1速へのダウンシフトによる上記駆動力差DFFであり、これが駆動力差判定値XDFと比較される。このSA9の判断が肯定的である場合、すなわち、上記駆動力差DFFが駆動力差判定値XDF以上になった場合にはSA10に移る。一方、このSA9の判断が否定的である場合には本フローチャートは終了する。
SA10においては、前記トルクダウン制御によって上記ダウンシフト後に行われる前記変速時出力トルク制御、すなわち前記変速後出力トルク制御が開始される。例えば、図11で現在の自動変速機10の現在の変速段(実際の変速段)すなわち上記ダウンシフト後の変速段がn−1速である場合において説明すると、P17が上記変速後出力トルク制御(トルクダウン制御)の開始点とされAR13のように上記変速後出力トルク制御(トルクダウン制御)が行われる。
またSA10では、既に上記変速後出力トルク制御が実行中である場合にはそのまま継続される。
SA11では、前記SA7で判定対象となったダウンシフト後にSA10にて開始された上記変速後出力トルク制御において駆動力FDRが現在の変速段のベース駆動力特性に達したか否かが判断される。図9のスロットル弁基準特性LASよりもスロットル弁開度θTHの小さい側(矢印ARDN側)にトルクダウン制御によってアクセル開度Accとスロットル弁開度θTHとの関係がずらされているが、この関係がスロットル弁基準特性LASに沿うようになれば、駆動力FDRが現在の変速段のベース駆動力特性に達したと判断できる。このSA11の判断が肯定的である場合、すなわち、上記駆動力FDRが現在の変速段のベース駆動力特性に達した場合にはSA12に移る。一方、このSA11の判断が否定的である場合には本フローチャートは終了する。
SA12においては、前記SA10にて開始された変速後出力トルク制御(トルクダウン制御)が終了させられる。なお、前記SA9乃至SA12は変速後出力トルク制御手段122に対応する。
本実施例の電子制御装置90には次のような効果(A1)乃至(A7)がある。(A1)変速時出力トルク制御手段118は、自動変速機10のダウンシフトによる駆動力FDRの変動幅である駆動力差DFF(図11に例示)を小さくするようにエンジントルクTEを制御する前記変速時出力トルク制御を行う。従って、その変速時出力トルク制御が行われない場合と比較して上記ダウンシフトに伴う駆動力FDRの変化が滑らかになるようにすることが可能であり、乗員の快適性や運転操作に対するコントロール性を向上させ得る。
(A2)例えば図11でn速からn−1速へと自動変速機10がダウンシフトされた場合のように、(a)自動変速機10の変速(ダウンシフト)前において前記変速時出力トルク制御が行われ、(b)上記変速(ダウンシフト)による前記駆動力差DFFが予め設定された駆動力差判定値XDF以上になると判断された場合には、上記駆動力差DFFを小さくするように上記変速(ダウンシフト)後にも上記変速時出力トルク制御が行われる。従って、自動変速機10の変速(ダウンシフト)前後のいずれか一方のみで上記変速時出力トルク制御が行われる場合と比較して、上記駆動力差DFFを一層小さくすることが可能である。
(A3)図11で現在の変速段がn+1速である場合において、変速前出力トルク制御手段120は、n+2速からn+1速(現在の変速段)へのダウンシフトがなされるアクセル開度Accを示すダウンシフト変速点PDNとn速からn+1速(現在の変速段)へのアップシフトがなされるアクセル開度Accを示すアップシフト変速点PUPとを比較し、図11のn+1速(現在の変速段)ではそのアップシフト変速点PUPが上記ダウンシフト変速点PDNよりもアクセル開度Accの小さい側にあるので、その場合に変速前出力トルク制御手段120は、n+1速(現在の変速段)における前記変速時出力トルク制御を上記ダウンシフト変速点PDNから開始する。従って、図11で見ると上記変速時出力トルク制御による駆動力FDR上昇(図11のAR11)が上記アップシフト変速点PUPであるP11にも上記ダウンシフト変速点PDNであるP12にも影響せず開始されており、n+1速(現在の変速段)における上記変速時出力トルク制御がn速からn+1速へのアップシフトに影響することを回避することができ、運転者の意思に即した上記アップシフトを実現することを可能である。また、上記ダウンシフト変速点PDN(P12)から駆動力FDR上昇(図11のAR11)が開始されることでその上昇勾配が極力緩やかなものとされ、上記シフトダウンに伴う駆動力FDRの変化が滑らかになるようにすることが可能である。
(A4)図11で現在の変速段がn速である場合において、変速前出力トルク制御手段120は、n+1速からn速(現在の変速段)へのダウンシフトがなされるアクセル開度Accを示すダウンシフト変速点PDNとn−1速からn速(現在の変速段)へのアップシフトがなされるアクセル開度Accを示すアップシフト変速点PUPとを比較する。そして、図11のn速(現在の変速段)ではそのアップシフト変速点PUP(図11のP14)が上記ダウンシフト変速点PDN(図11のP13)よりもアクセル開度Accの大きい側にあるので、その場合には、変速前出力トルク制御手段120はn速(現在の変速段)における前記変速時出力トルク制御を上記アップシフト変速点PUP(P14)から開始する。従って、図11で見ると上記変速時出力トルク制御による駆動力FDR上昇(図11のAR12)が上記アップシフト変速点PUP(P14)にも上記ダウンシフト変速点PDN(P13)にも影響せず開始されており、n速(現在の変速段)における上記変速時出力トルク制御がn−1速からn速へのアップシフトに影響することを回避することができ、運転者の意思に即した上記アップシフトを実現することを可能である。また、上記アップシフト変速点PUP(P14)から駆動力FDR上昇(図11のAR12)が開始されることでその上昇勾配が極力緩やかなものとされ、上記シフトダウンに伴う駆動力FDRの変化が滑らかになるようにすることが可能である。
(A5)自動変速機10の実際の変速段をn速と表した場合において、n速(実際の変速段)から2段低いn−2速へ多重ダウンシフトが行われる場合、変速前出力トルク制御手段120は、図6の変速線図から求められn速(実際の変速段)からn-1速へのダウンシフトがなされるアクセル開度Accを示すダウンシフト変速点PDNから、駆動力FDRを変速後のn−2速のベース駆動力特性に近付けるように上昇させる前記変速前出力トルク制御を開始する。従って、n速からn−2速へのダウンシフトのような多重ダウンシフトの場合にも、上記変速前出力トルク制御の実行によりその多重ダウンシフトに伴う駆動力の変化が滑らかになるようにすることが可能である。
(A6)前記変速時出力トルク制御はスロットル弁開度θTHを制御することである。つまり、アクセル開度Accとスロットル弁開度θTHとが一対一で対応する両者の関係である図9のスロットル弁基準特性LASが予め設定されており、前記変速時出力トルク制御は、自動変速機10の変速によって生じる前記駆動力差DFFを小さくするように図9のスロットル弁基準特性LASに関わらずスロットル弁開度θTHを制御することである。詳細に言えば、前記変速前出力トルク制御(トルクアップ制御)では、同一アクセル開度Accで比較して図9のスロットル弁基準特性LASに基づき決定されるスロットル弁開度θTHよりも実際のスロットル弁開度θTHが大きくされる。また、前記変速後出力トルク制御(トルクダウン制御)では、同一アクセル開度Accで比較して図9のスロットル弁基準特性LASに基づき決定されるスロットル弁開度θTHよりも実際のスロットル弁開度θTHが小さくされる。従って上記変速時出力トルク制御において、電子スロットル弁56の制御により容易にエンジントルクTEを調整し駆動力FDRを変化させることができる。
(A7)運転者は駆動力FDRを増大させたい場合にアクセルペダル50を踏込み、それによりダウンシフトがなされるのであるが、前記変速前出力トルク制御(トルクアップ制御)では、図11のAR11,AR12のように自動変速機10のダウンシフト後の駆動力FDRに近付けるようにそのダウンシフト前に駆動力FDRが増大させられる。ここで、上記変速前出力トルク制御による駆動力FDRの増大によりシフトダウン前に所望の駆動力FDRが得られた場合にはアクセルペダル50の踏込操作が停止され、結局ダウンシフトは発生しないことになる。従って、自動変速機10の変速頻度が低下し、操作性の向上を図り得る。
次に、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の説明において実施例相互に共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
第2実施例は第1実施例の電子制御装置90を電子制御装置220に置き換えたものであり、図8の機能ブロック線図は共通である。そして、第2実施例は第1実施例に係るアクセル開度判定手段116と変速後出力トルク制御手段122とをそれぞれ、アクセル開度判定手段221と変速後出力トルク制御手段222とに置き換えたものである。以下、その相違点について主に説明する。
図8の変速後出力トルク制御手段222は、第1実施例の変速後出力トルク制御手段122と同様に、自動変速機10のダウンシフト後にそのダウンシフトによる駆動力差DFFを小さくするために行われる前記変速時出力トルク制御、すなわち前記変速後出力トルク制御(トルクダウン制御)を行う。そして、変速後出力トルク制御手段222は、第1実施例の変速後出力トルク制御手段122が上記変速後出力トルク制御の開始点(図11ではP17)を決定する条件に加え、更に次のような条件で上記開始点を決定する。
変速後出力トルク制御手段222は、自動変速機10の現在の変速段(実際の変速段)をn−1速と表した場合において、前記変速後出力トルク制御(トルクダウン制御)では、n−1速(現在の変速段)からn速へアップシフトが行われるとした場合のn−1速(現在の変速段)における変速時の駆動力FDRを駆動力FDRの下限値LFDRとする。すなわち、変速後出力トルク制御手段222はその駆動力FDRの下限値LFDRを上記変速後出力トルク制御の開始点によって示される駆動力FDRが下回らないようにその開始点を決定する。
第1実施例の図11に相当する本実施例の図16で現在の変速段(実際の変速段)がn−1速であり、n速からn−1速(現在の変速段)へのダウンシフト後に行われる上記変速後出力トルク制御について具体的に説明する。先ず変速後出力トルク制御手段222は、例えば図6の変速線図に基づき現在の車速Vが一定であると仮定してn−1速(現在の変速段)からn速へのアップシフトが発生するアクセル開度Acc1(図16)を予測し、そのアクセル開度Acc1に対応するn−1速(現在の変速段)のベース駆動力特性上の駆動力FDR(アップシフト前駆動力)を上記下限値LFDRと設定する。次に変速後出力トルク制御手段222は、その下限値LFDRに対応するP22を前記変速後出力トルク制御(トルクダウン制御)の開始点と決定する。但し、アクセル開度Accが増大しているにも関わらず駆動力FDRが減少してしまうと言うことを回避するため、前記変速前出力トルク制御(トルクアップ制御)の終了点が上記下限値LFDRよりも高駆動力側にある場合には上記終了点が上記変速後出力トルク制御の開始点とされる。
そして変速後出力トルク制御手段222は、第1実施例の変速後出力トルク制御手段122と同様、上記開始点P22から図16のAR21のように上記変速後出力トルク制御(トルクダウン制御)を開始する。
上記変速後出力トルク制御中(トルクダウン制御中)に増大していたアクセル開度Accが減少転じる場合がある。そのような場合に前述の第1実施例では特に制限を設けていなかったが、本実施例の変速後出力トルク制御手段222は一定の制限を設けて駆動力FDRを変化させる。以下、それについて説明する。
自動変速機10のダウンシフト後にそのダウンシフトによる駆動力差DFFを小さくするために行われる前記変速時出力トルク制御、すなわち上記変速後出力トルク制御(トルクダウン制御)の実行中においてアクセル開度Accが減少する方向にアクセルペダル50が戻された場合には、変速後出力トルク制御手段222は、アクセルペダル50が戻された時の駆動力FDRをその駆動力FDRの上限値UFDRとする。
これを図16のAR21で示される上記変速後出力トルク制御中(トルクダウン制御中)に、図16のP23でアクセルペダル50が戻され、それまで増大していたアクセル開度Accが減少方向に転じた場合について具体的に説明する。
アクセル開度判定手段221は、第1実施例のアクセル開度判定手段116と同様にアクセル踏込速度VACからアクセル開度Accが増大方向に変化しているか否かを判定する。更にアクセル開度判定手段221は、アクセル開度Accが減少方向に変化しているか否かを判定する。
変速後出力トルク制御手段222は、(1)上記変速後出力トルク制御(トルクダウン制御)を実行していること、(2)アクセル開度判定手段221によりアクセル開度Accが減少方向に変化していると判定されたこと、という2つの条件を両方とも満たす場合には、アクセル開度Accが減少方向に転じた点P23が示す駆動力FDRすなわちアクセルペダル50が戻された時の駆動力FDRをその駆動力FDRの上限値UFDRとする。そして、アクセル開度Accの減少に従い、変速後出力トルク制御手段222は、駆動力FDRをその上限値UFDR以下に制限しつつ図16のAR22のように、現在の変速段であるn−1速のベース駆動力特性にまでアクセル開度Accと駆動力FDRとの関係を戻す。駆動力FDRを上限値UFDR以下に制限する方法としては、例えば、図9において、図16のP23に対応する図9のP23からスロットル弁開度θTHが上昇しないようにアクセル開度Accとスロットル弁開度θTHとの関係をスロットル弁基準特性LASまでAR2(図9)のように変化させる。
本実施例の電子制御装置220の制御作動の要部を示すフローチャートについて説明する。第1実施例のフローチャートである図14及び図15は、本実施例の電子制御装置220でも共通であるが、以下に説明するように一部が図17に入れ替えられる。
図15のSA10において前記変速後出力トルク制御が開始される場合には、SA10が図17のSB1乃至SB3に入れ替えられる。なお、既に上記変速後出力トルク制御が実行中である場合にはそのまま継続される。以下、図16で現在の変速段(実際の変速段)がn−1速である場合を例として説明する。
SB1においては、例えば図6の変速線図に基づき現在の車速Vが一定であると仮定してn−1速(現在の変速段)からn速へのアップシフトが発生するアクセル開度Acc1(図16)が予測され、そのアクセル開度Acc1に対応するn−1速(現在の変速段)のベース駆動力特性上の駆動力FDR(アップシフト前駆動力)が駆動力FDRの下限値LFDRとして設定される。
SB1に続くSB2においては、上記下限値LFDRに対応するP22が前記変速後出力トルク制御(トルクダウン制御)の開始点と決定される。但し、前記変速前出力トルク制御(トルクアップ制御)の終了点が上記下限値LFDRよりも高駆動力側にある場合には上記終了点が上記変速後出力トルク制御の開始点とされる。
SB2に続くSB3においては、上記開始点P22から図16のAR21のように上記変速後出力トルク制御(トルクダウン制御)が開始される。なお、SB1乃至SB3は変速後出力トルク制御手段222に対応する。
図18は、電子制御装置220の制御作動の要部すなわち前記変速後出力トルク制御中にアクセルペダル50が戻された場合の制御作動を説明するフローチャートであり、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行される。なお、図18のフローチャートは図14のSA1で否定的な判定がなされた場合にだけ実行されてもよい。以下、図16で現在の変速段(実際の変速段)がn−1速である場合を例として説明する。
SB11においては、前記変速後出力トルク制御(トルクダウン制御)が実行しているか否かが判定される。このSB11の判定が肯定的である場合、すなわち、前記変速後出力トルク制御が実行中である場合にはSB12に移る。一方、このSB11の判定が否定的である場合には本フローチャートは終了する。
アクセル踏込速度検出手段114及びアクセル開度判定手段221に対応するSB12においては、アクセル踏込速度VACが検出され、そのアクセル踏込速度VACに基づきアクセル開度Accが減少方向に変化しているか否かが判定される。このSB12の判定が肯定的である場合、すなわち、アクセル開度Accが減少方向に変化している場合にはSB13に移る。一方、このSB12の判定が否定的である場合には本フローチャートは終了する。
SB13では、図16において、アクセル開度Accが減少方向に転じた点P23が示す駆動力FDRすなわちアクセルペダル50が戻された時の駆動力FDRがその駆動力FDRの上限値UFDRと設定される。そして、アクセル開度Accの減少に従い、駆動力FDRがその上限値UFDR以下に制限されつつ図16のAR22のように、現在の変速段であるn−1速のベース駆動力特性にまでアクセル開度Accと駆動力FDRとの関係が戻される。なお、SB11及びSB13は変速後出力トルク制御手段222に対応する。
本実施例の電子制御装置220には、第1実施例の効果(A1)乃至(A7)に加え、次のような効果(B1)乃至(B2)がある。(B1)変速後出力トルク制御手段222は、自動変速機10の現在の変速段(実際の変速段)をn−1速と表した場合において、前記変速後出力トルク制御(トルクダウン制御)では、n−1速(現在の変速段)からn速へアップシフトが行われるとした場合のn−1速(現在の変速段)における変速時の駆動力FDRを駆動力FDRの下限値LFDRとする。すなわち、変速後出力トルク制御手段222はその駆動力FDRの下限値LFDRを上記変速後出力トルク制御の開始点によって示される駆動力FDRが下回らないようにその開始点を決定する。従って、増大していたアクセル開度Accがその開始点において減少に転じた場合であっても、アクセル開度Accが減少しているにも関わらず駆動力FDRが増大するという事態が発生すること無く、上記変速後時出力トルク制御が上記n−1速(現在の変速段)からn速へのアップシフトに影響することを回避して、運転者の意思に即した上記アップシフトを実現することが可能である。
(B2)前記変速後出力トルク制御(トルクダウン制御)の実行中においてアクセル開度Accが減少する方向にアクセルペダル50が戻された場合には、変速後出力トルク制御手段222は、アクセルペダル50が戻された時の駆動力FDRをその駆動力FDRの上限値UFDRとする。そして、アクセル開度Accの減少に従い、変速後出力トルク制御手段222は、駆動力FDRをその上限値UFDR以下に制限しつつ図16のAR22のように、現在の変速段(図16ではn−1速)のベース駆動力特性にまでアクセル開度Accと駆動力FDRとの関係を戻す。従って、アクセルペダル50が戻されているにも関わらず駆動力FDRが上昇するという運転者の意思に反した駆動力変化を生じることが回避され得る。
なお、本実施例で示された制御作動は1速ずつダウンシフトが実行される場合のみならず、前記多重ダウンシフトが生じる場合にも適用可能である。
第3実施例は第1実施例の電子制御装置90を電子制御装置230に置き換えたものであり、図19は電子制御装置230の制御機能の要部を説明する機能ブロック線図であって、変速制御手段110が変速制御手段232に置き換えられている点及びアクセル踏込速度検出手段114からの矢印が変速制御手段232に向かっている点で、図19は第1実施例の機能ブロック線図である図8に対し異なるがその他は図8と同じである。以下、その相違点について主に説明する。
図19の変速制御手段232は、第1実施例の変速制御手段110と同様に、自動変速機10の変速制御を実行する。更に、変速制御手段232はアクセル踏込速度検出手段114から前記アクセル踏込速度VACを取得する。そして変速制御手段232は、そのアクセル踏込速度VACに基づいて、自動変速機10のダウンシフトがなされるアクセル開度Accを示すダウンシフト変速点PDNを変更する。これを第1実施例の図11に相当する図20を用い、図20で自動変速機10の現在の変速段(実際の変速段)がn+1速である場合を例として具体的に説明する。
先ず変速制御手段232は、上記ダウンシフト変速点PDNの変更可能範囲である変速点変化範囲RPDNを決定する。この変速点変化範囲RPDNについて説明すると、変速制御手段232は、n+1速(現在の変速段)からn速へダウンシフトが行われるとした場合のn速における変速(ダウンシフト)時の駆動力FDRがn+1速(現在の変速段)で発生可能な最大駆動力FMAX1となるアクセル開度Acc4、言い換えれば、図20のn速のベース駆動力特性と上記最大駆動力FMAX1を示すL31との交点であるP31が示すアクセル開度Acc4を変速点変化範囲RPDNの上限とする。また変速制御手段232は、n速からn+1速(現在の変速段)へアップシフトが行われるとした場合のアクセル開度Acc1とn+2速からn+1速(現在の変速段)へダウンシフトが行われたときのアクセル開度Acc2との何れか一方のアクセル開度Accの大きい側(図20ではアクセル開度Acc2)を変速点変化範囲RPDNの下限とする。
変速制御手段232は上記変速点変化範囲RPDNを決定すると、変速点変化範囲RPDN内でアクセル踏込速度VACが大きいほどダウンシフト変速点PDNをアクセル開度Accの小さい側にずらす。ダウンシフト変速点PDNをずらす場合、変速制御手段232はアクセル踏込速度VACの変化に伴い連続的にダウンシフト変速点PDNをずらしてもよいし、段階的にずらしてもよい。また、アクセル踏込速度VACが所定値よりも小さい緩やかなアクセルペダル50の踏込操作である場合にはダウンシフト変速点PDNをアクセル開度Accの大きい側にずらすが、そうでない場合すなわちアクセル踏込速度VACが上記所定値以上のアクセルペダル50の早い踏込操作である場合には図6の変速線図に従って、すなわち基準であるその変速線図に対してダウンシフト変速点PDNをずらさずに通常通りダウンシフトを実行してもよい。
変速前出力トルク制御手段120は第1実施例と共通であるが、上述のようにダウンシフト変速点PDNがずらされた場合にはそれに応じて、前記変速前出力トルク制御の終了点を変化させる。図20において、ダウンシフト変速点PDNがずらされず図6の変速線図に従ってダウンシフトが発生した場合には、例えばアクセル開度Acc3でダウンシフトが発生し図20のP32が上記変速前出力トルク制御の終了点とされたが、ダウンシフト変速点PDNが図20のP31にずらされた場合には、変速前出力トルク制御手段120は上記終了点をP31とし、AR31のように駆動力FDRを上昇させる。なお、アクセル踏込速度VACに基づかずにダウンシフト変速点PDNがずらされた場合、例えば他の制御によってダウンシフト変速点PDNがずらされた場合にも、変速前出力トルク制御手段120はダウンシフト変速点PDNに上記変速前出力トルク制御の終了点を追従させる。また、アクセル踏込速度VACが所定値以上のアクセルペダル50の早い踏込操作である場合には、応答性が高い駆動力FDRの早期上昇を実現するため、変速後出力トルク制御手段122は敢えて前記変速後出力トルク制御(トルクダウン制御)を行わないようにしてもよい。
また、変速制御手段232がアクセル踏込速度VACに基づいて自動変速機10のダウンシフト変速点PDNを変更することは、1速ずつダウンシフトが実行される場合と同様に前記多重ダウンシフトにおいても行われるが、その多重ダウンシフトの場合には、変速前出力トルク制御手段120及び変速後出力トルク制御手段122は、敢えて前記変速前出力トルク制御(トルクアップ制御)と前記変速後出力トルク制御(トルクダウン制御)とを行わないようにしてもよい。
本実施例の電子制御装置230の制御作動の要部を示すフローチャートについて説明する。第1実施例のフローチャートである図14及び図15は、本実施例の電子制御装置230でも共通であるが、本実施例では図14のSA2とSA3との間に図21のSC1乃至SC3が挿入される。なお、以下のフローチャートの説明は、図20を用い、図20で自動変速機10の現在の変速段(実際の変速段)がn+1速である場合を例として行う。
図14のSA2で否定的な判定がなされた場合には図21のSC1に移る。SC1においてはアクセル踏込速度VACが取得される。SC1の次はSC2へ移る。
SC2においては、変速点変化範囲RPDNが決定される。その場合、n+1速(現在の変速段)からn速へダウンシフトが行われるとした場合のn速における変速(ダウンシフト)時の駆動力FDRがn+1速(現在の変速段)で発生可能な最大駆動力FMAX1となるアクセル開度Acc4、言い換えれば、図20のn速のベース駆動力特性と上記最大駆動力FMAX1を示すL31との交点であるP31が示すアクセル開度Acc4が変速点変化範囲RPDNの上限とされる。また、n速からn+1速(現在の変速段)へアップシフトが行われるとした場合のアクセル開度Acc1とn+2速からn+1速(現在の変速段)へダウンシフトが行われたときのアクセル開度Acc2との何れか一方のアクセル開度Accの大きい側(図20ではアクセル開度Acc2)が変速点変化範囲RPDNの下限とされる。SC2の次はSC3へ移る。
SC3においては、変速点変化範囲RPDN内でアクセル踏込速度VACが大きいほどダウンシフト変速点PDNはアクセル開度Accの小さい側にずらされて、ダウンシフト変速点PDNが決定される。SC3の次は図14のSA3に移る。なお、SC1乃至SC3は変速制御手段232に対応する。
図14のSA4又はSA6にて前記変速前出力トルク制御(トルクアップ制御)が開始されることは第1実施例と同様であるが、ダウンシフト変速点PDNがずらされた場合にはそれに応じて前記変速前出力トルク制御の終了点が変化させられる。図20において、ダウンシフト変速点PDNがずらされず図6の変速線図に従ってダウンシフトが発生した場合には、例えばアクセル開度Acc3でダウンシフトが発生し図20のP32が上記変速前出力トルク制御の終了点とされたが、ダウンシフト変速点PDNが図20のP31にずらされた場合には上記終了点はP31とされ、AR31のように駆動力FDRを上昇させる上記変速前出力トルク制御(トルクアップ制御)が開始される。
本実施例の電子制御装置230には、第1実施例の効果(A1)乃至(A7)に加え、次のような効果(C1)乃至(C3)がある。(C1)変速制御手段232は、アクセル踏込速度VACに基づいて、自動変速機10のダウンシフトがなされるアクセル開度Accを示すダウンシフト変速点PDNを変更するので、運転者の要求する駆動力FDRを早期に得ることが可能である。
(C2)自動変速機10の現在の変速段(実際の変速段)をn+1速と表した場合において、変速制御手段232は、上記ダウンシフト変速点PDNの変更可能範囲である変速点変化範囲RPDNを決定する。詳細には変速制御手段232は、図20においてn+1速(現在の変速段)からn速へダウンシフトが行われるとした場合のn速における変速(ダウンシフト)時の駆動力FDRがn+1速(現在の変速段)で発生可能な最大駆動力FMAX1となるアクセル開度Acc4、言い換えれば、図20のn速のベース駆動力特性と上記最大駆動力FMAX1を示すL31との交点であるP31が示すアクセル開度Acc4を変速点変化範囲RPDNの上限とする。また変速制御手段232は、n速からn+1速(現在の変速段)へアップシフトが行われるとした場合のアクセル開度Acc1とn+2速からn+1速(現在の変速段)へダウンシフトが行われたときのアクセル開度Acc2との何れか一方のアクセル開度Accの大きい側(図20ではアクセル開度Acc2)を変速点変化範囲RPDNの下限とする。そして、変速制御手段232は上記変速点変化範囲RPDNを決定すると、変速点変化範囲RPDN内でアクセル踏込速度VACが大きいほどダウンシフト変速点PDNをアクセル開度Accの小さい側にずらす。つまり、アクセル踏込速度VACが大きいほどより積極的にダウンシフトが発生して駆動力FDRがより早く上昇し、逆に、アクセル踏込速度VACが小さいほどより深くアクセルペダル50を踏込まなければダウンシフトが発生しないようになる。従って、n+1速(現在の変速段)からn速へのダウンシフト前に実行される前記変速前出力トルク制御(トルクアップ制御)により変速頻度の低減を図ることができる。また、変速点変化範囲RPDNの下限にまでダウンシフト変速点PDNがずらされたとしても、そのダウンシフト変速点PDNがn速からn+1速(現在の変速段)へのアップシフトに影響することを回避し得る。
(C3)前記多重ダウンシフトの場合には、変速前出力トルク制御手段120及び変速後出力トルク制御手段122は、前記変速前出力トルク制御(トルクアップ制御)と前記変速後出力トルク制御(トルクダウン制御)とを行わないようにしてもよく、そのようにした場合には、アクセルペダル50の操作に対して駆動力FDRが応答性良く変化しているように運転者に感じさせることができる。
第4実施例は第1実施例の電子制御装置90を電子制御装置240に置き換えたものであり、図22は電子制御装置240の制御機能の要部を説明する機能ブロック線図であって、第1実施例の機能ブロック線図である図8に対して変速時出力トルク制御規制手段242が付加された図である。その他は図8と同じである。以下、その相違点について主に説明する。
図22の変速時出力トルク制御規制手段242は、レバーポジションセンサ74からの信号PSHに基づき、手動操作により自動変速機10の変速段が固定され又は変速可能な高速側変速段が設定されるマニュアルレンジ操作中であるか否かを判断する。例えば、図5においてシフトレバー72が「S」ポジションにある場合、すなわち自動変速機10の変速レンジがSレンジである場合は上記マニュアルレンジ操作中である。それ以外に図5には示されていないが自動変速機10の変速段が固定されるMレンジ、又は、ハンドル付近に設けられたパドルスイッチ操作により上記Sレンジと同様に自動変速機10の変速レンジが決定されるDレンジパドルに操作された場合も上記マニュアルレンジ操作中である。
更に変速時出力トルク制御規制手段242は、上記マニュアルレンジ操作中であると判断した場合には前記変速時出力トルク制御の実行を禁止する。従って、上記変速時出力トルク制御の実行が禁止されると、変速前出力トルク制御手段120と変速後出力トルク制御手段122とを含む変速時出力トルク制御手段118は上記変速時出力トルク制御を行わない。なお、上記マニュアルレンジ操作中は全面的に上記変速時出力トルク制御の実行が禁止されるのではなく、例えば、上記Sレンジ、Mレンジ、Dレンジパドルの各指定レンジによって上記変速時出力トルク制御における前記トルクアップ制御又はトルクダウン制御の実行の可能もしくは不可能が異なるようにされてもよい。
本実施例の電子制御装置240の制御作動の要部を示すフローチャートについて説明する。第1実施例のフローチャートである図14及び図15は本実施例の電子制御装置240でも実行されるが、本実施例ではそれ以外に図23のフローチャートが実行される。この図23は前記変速時出力トルク制御の実行を禁止するか否かを決定するため、すなわち、上記図14及び図15のフローチャートの実行を禁止するか否かを決定するためのフローチャートである。以下、第1実施例との相違点である図23について、主として説明する。
SD1においては、レバーポジションセンサ74からの信号PSHに基づき前記マニュアルレンジ操作中であるか否かが判断される。このSD1の判断が肯定的である場合、すなわち、上記マニュアルレンジ操作中である場合にはSD2に移る。一方、このSD1の判断が否定的である場合には本フローチャートは終了する。
SD2においては、前記変速時出力トルク制御(トルクアップ制御、トルクダウン制御)の実行が禁止される。従って、SD2の実行により上記図14及び図15のフローチャートの実行が禁止される。なお、SD1及びSD2は変速時出力トルク制御規制手段242に対応する。
本実施例の電子制御装置240には、第1実施例の効果(A1)乃至(A7)に加え、次のような効果(D1)がある。(D1)変速時出力トルク制御規制手段242は前記マニュアルレンジ操作中であると判断した場合には前記変速時出力トルク制御の実行を禁止する。従って、上記変速時出力トルク制御は上記マニュアルレンジ操作時には行われないので、運転者の意思に即して運転者の操作に対して直接的に駆動力が変動する操作感を与えることが可能である。
第5実施例は第1実施例の電子制御装置90を電子制御装置250に置き換えたものであり、図24は電子制御装置250の制御機能の要部を説明する機能ブロック線図であって、第1実施例の機能ブロック線図である図8の変速時出力トルク制御手段118を、駆動力変化制限手段254を備えた変速時出力トルク制御手段252に置き換えた図である。その他は図8と同じである。以下、その相違点について主に説明する。
図24の変速時出力トルク制御手段252は、変速時出力トルク制御手段118(図8)と同様に変速前出力トルク制御手段120と変速後出力トルク制御手段122とを備え、更に駆動力変化制限手段254を備えている。変速時出力トルク制御手段252は前記変速時出力トルク制御を行うにあたり、アクセル開度Accが大きくなるほど、アクセル開度Accの変化量に対する駆動力FDRの変化量である駆動力変化勾配SLFが同一もしくは小さくなるように上記変速時出力トルク制御を行う。具体的には以下の通りである。
駆動力変化制限手段254は、前記変速前出力トルク制御(トルクアップ制御)の開始前及び前記変速後出力トルク制御(トルクダウン制御)の開始前に、その都度、実際の駆動力FDR及びアクセル開度Accの変化から直前の上記駆動力変化勾配SLFを検出し、その駆動力変化勾配SLF又はそれよりも所定量小さい勾配値を、上記変速前出力トルク制御又は上記変速後出力トルク制御における駆動力変化勾配SLFの上限値である変化量ガードLMTSLとして設定する。なお、上記変速前出力トルク制御又は変速後出力トルク制御の開始の度に上記変化量ガードLMTSLは設定されるので、各変速前出力トルク制御又は変速後出力トルク制御ごとに上記変化量ガードLMTSLは異なる値となる。
変速前出力トルク制御手段120は、第1実施例と同様に上記変速前出力トルク制御を実行するが、その実行に際し、変速前出力トルク制御手段120は、上記変速前出力トルク制御を開始する場合、駆動力変化勾配SLFを上記変化量ガードLMTSL以下になるように決定し、その上で上記変速前出力トルク制御を開始する。すなわち、変速前出力トルク制御手段120は、変化量ガードLMTSLを考慮せずに決定された駆動力変化勾配SLFが上記変化量ガードLMTSL以下である場合には、その駆動力変化勾配SLFで第1実施例と同様に上記変速前出力トルク制御を開始する。一方、変速前出力トルク制御手段120は、変化量ガードLMTSLを考慮せずに決定された駆動力変化勾配SLFが上記変化量ガードLMTSLを超えている場合には、変化量ガードLMTSLを駆動力変化勾配SLFとして決定し、その変化量ガードLMTSLに修正した駆動力変化勾配SLFで上記変速前出力トルク制御を開始する。このとき、駆動力変化勾配SLFの修正方法について特に制限は無いが、本実施例の変速前出力トルク制御では、その変速前出力トルク制御の開始点は変更せず、その変速前出力トルク制御の終了点を変更することにより駆動力変化勾配SLFが修正される。
上述の変速前出力トルク制御における駆動力変化勾配SLFの決定について、現在の変速段がn速である場合を例として、第1実施例の図11に相当する図25を用い具体的に説明する。この場合の上記変速前出力トルク制御(トルクアップ制御)の開始点は図25のP51である。駆動力変化制限手段254はこのP51での上記変速前出力トルク制御開始直前の駆動力変化勾配SLFを検出し、例えばそれを変化量ガードLMTSLとして設定する。そして、その変化量ガードLMTSLが考慮されなければ図25のAR51の駆動力変化勾配SLFで変速前出力トルク制御手段120は上記変速前出力トルク制御を開始するところ、AR51の駆動力変化勾配SLFは変化量ガードLMTSL(P51の駆動力変化勾配SLF)を超えているので、上記変速前出力トルク制御の終了点を図25のP52からP53へと修正して、その変化量ガードLMTSLに修正した駆動力変化勾配SLFで上記変速前出力トルク制御を開始する。
変速後出力トルク制御手段122は、第1実施例と同様に前記変速後出力トルク制御を実行するが、その実行に際し、変速後出力トルク制御手段122は、上記変速後出力トルク制御を開始する場合、上述の変速前出力トルク制御の場合と同様に駆動力変化勾配SLFを前記変化量ガードLMTSL以下になるように決定し、その上で上記変速後出力トルク制御を開始する。すなわち、変速後出力トルク制御手段122は、変化量ガードLMTSLを考慮せずに決定された駆動力変化勾配SLFが上記変化量ガードLMTSL以下である場合には、その駆動力変化勾配SLFで第1実施例と同様に上記変速後出力トルク制御を開始する。一方、変速後出力トルク制御手段122は、変化量ガードLMTSLを考慮せずに決定された駆動力変化勾配SLFが上記変化量ガードLMTSLを超えている場合には、変化量ガードLMTSLを駆動力変化勾配SLFとして決定し、その変化量ガードLMTSLに修正した駆動力変化勾配SLFで上記変速後出力トルク制御を開始する。このとき、駆動力変化勾配SLFの修正方法について特に制限は無いが、本実施例の変速後出力トルク制御では、その変速後出力トルク制御の終了点は変更せず、その変速後出力トルク制御の開始点を変更することにより駆動力変化勾配SLFが修正される。
上述の変速後出力トルク制御における駆動力変化勾配SLFの決定について図25を用い、現在の変速段がn−1速である場合を例として具体的に説明する。駆動力変化制限手段254はn速からn−1速(現在の変速段)へのダウンシフト直前のP53での駆動力変化勾配SLFを検出し、例えばそれを変化量ガードLMTSLとして設定する。そして、その変化量ガードLMTSLが考慮されなければ図25のAR52の駆動力変化勾配SLFで変速後出力トルク制御手段122は上記変速後出力トルク制御を開始するところ、AR52の駆動力変化勾配SLFは変化量ガードLMTSL(P53の駆動力変化勾配SLF)を超えているので、上記変速後出力トルク制御の開始点を図25のP54からP55へと修正して、その変化量ガードLMTSLに修正した駆動力変化勾配SLFで上記変速後出力トルク制御を開始する。
本実施例の電子制御装置250の制御作動の要部を示すフローチャートについて説明する。第1実施例のフローチャートである図14及び図15は、本実施例の電子制御装置250でも共通であるが、以下に説明するように一部が図26と図27とに入れ替えられる。
図14のSA4及びSA6において前記変速前出力トルク制御が開始される場合には、SA4及びSA6がそれぞれ図26のSE1乃至SE3に入れ替えられる。また、図15のSA10において前記変速後出力トルク制御が開始される場合には、SA10が図27のSE11乃至SE13に入れ替えられる。なお、既に上記変速前出力トルク制御又は変速後出力トルク制御が実行中である場合にはそのまま継続される。
図26のSE1においては前記変化量ガードLMTSLが設定される。具体的には、実際の駆動力FDR及びアクセル開度Accの変化から直前の上記駆動力変化勾配SLFが検出され、その駆動力変化勾配SLF又はそれよりも所定量小さい勾配値が上記変化量ガードLMTSLとして設定される。なお、SE1は駆動力変化制限手段254に対応する。
SE1に続くSE2においては、上記変速前出力トルク制御の駆動力変化勾配SLFが上記変化量ガードLMTSL以下になるように決定される。このとき、変化量ガードLMTSLに関わらず上記変速前出力トルク制御の開始点は変更されず、その変速前出力トルク制御の終了点を変更することにより駆動力変化勾配SLFが上記変化量ガードLMTSL以下になるように修正される。
SE2に続くSE3においては、上記決定後の駆動力変化勾配SLFで上記変速前出力トルク制御(トルクアップ制御)が開始される。なお、SE2及びSE3は変速前出力トルク制御手段120に対応する。
図27のSE11においては、前記SE1と同様に前記変化量ガードLMTSLが設定される。なお、SE11は駆動力変化制限手段254に対応する。
SE11に続くSE12においては、前記変速後出力トルク制御の駆動力変化勾配SLFが上記変化量ガードLMTSL以下になるように決定される。このとき、変化量ガードLMTSLに関わらず上記変速後出力トルク制御の終了点は変更されず、その変速後出力トルク制御の開始点を変更することにより駆動力変化勾配SLFが上記変化量ガードLMTSL以下になるように修正される。
SE12に続くSE13においては、上記決定後の駆動力変化勾配SLFで上記変速後出力トルク制御(トルクダウン制御)が開始される。なお、SE12及びSE13は変速後出力トルク制御手段122に対応する。
本実施例の電子制御装置250には、第1実施例の効果(A1)乃至(A7)に加え、次のような効果(E1)乃至(E3)がある。(E1)変速時出力トルク制御手段252は前記変速時出力トルク制御を行うにあたり、アクセル開度Accが大きくなるほど、アクセル開度Accの変化量に対する駆動力FDRの変化量である駆動力変化勾配SLFが同一もしくは小さくなるように上記変速時出力トルク制御を行う。従って、アクセル開度Accが大きい場合すなわちエンジントルクTEが大きい場合にはアクセルペダル50の操作に対する駆動力FDRの変動が穏やかになり、車両のコントロール性を確保できる。
(E2)前記変速前出力トルク制御(トルクアップ制御)の駆動力変化勾配SLFが変化量ガードLMTSL以下に制限される場合には、上記変速前出力トルク制御の開始点は変更されず、その変速前出力トルク制御の終了点が変更されることにより上記駆動力変化勾配SLFが制限される。従って、変化量ガードLMTSL以下の駆動力変化勾配SLFで極力高く駆動力FDRを上昇させ、ダウンシフト時の駆動力差DFFを小さくできる。
(E3)前記変速後出力トルク制御(トルクダウン制御)の駆動力変化勾配SLFが変化量ガードLMTSL以下に制限される場合には、上記変速後出力トルク制御の終了点は変更されず、その変速後出力トルク制御の開始点が変更されることにより上記駆動力変化勾配SLFが制限される。従って、上記変速後出力トルク制御(トルクダウン制御)により前記ベース駆動力特性に対して駆動力FDRが低下させられているアクセル開度Accの変化範囲が拡張することなく、応答性の低下が抑制される。
第6実施例は第1実施例の電子制御装置90を電子制御装置260に置き換えたものであり、図28は電子制御装置260の制御機能の要部を説明する機能ブロック線図であって、第1実施例の図8に相当し、図28のアクセル踏込速度検出手段114とアクセル開度判定手段116とは図8のそれと同じであるが、その他は図8と相違する。以下、その相違点について主に説明する。
図29は、車速Vとアクセル開度Accとをパラメータとする予め定められたロックアップマップであり、例えば図29のロックアップマップに従ってロックアップ機構31が係合又は解放されて、ロックアップ機構31はその係合状態であるロックアップオン状態又はその解放状態であるロックアップオフ状態の何れかに切り換えられる。ロックアップ機構31はロックアップオン状態であるときにアクセルペダル50が踏込操作されアクセル開度Accが増大すると、図29のロックアップマップに従ってロックアップオフ状態に切り換えられる。そして、ロックアップ機構31がロックアップオン状態からロックアップオフ状態に切り換えられると、トルクコンバータ32の入出力軸間に回転速度差が生じトルクコンバータ32の入力トルクであるエンジントルクTEが増大されて駆動輪へ伝達され、そのロックアップ状態の切換えにより駆動力FDRが段階的に増大する。このようなとアクセル開度Accと駆動力FDRとの関係からすると、ロックアップ機構31のロックアップオン状態からロックアップオフ状態への切換えは自動変速機10のダウンシフトに相当するものがあり、前述した第1実施例の変速時出力トルク制御と同様のエンジントルク制御(後述のロックアップ切換時出力トルク制御)がロックアップオン状態からロックアップオフ状態への切換えにも適用できる。以下、その制御作動について説明する。
図29のロックアップ判定手段262は、車速Vとアクセル開度Accとから図29のロックアップマップに従って、ロックアップ機構31をロックアップオン状態とロックアップオフ状態との何れに切り換えるべきかを判定する。
ロックアップ制御手段264は、ロックアップ判定手段262の判定に従ってロックアップ機構31のロックアップ状態を切り換える。具体的には、ロックアップオン状態においてロックアップ判定手段262がロックアップオフ状態に切り換えるべきと判定した場合には、ロックアップ制御手段264は、ロックアップ機構31の係合又は解放を切り換える電磁弁を備えた油圧制御回路98に対して、ロックアップオン状態をロックアップオフ状態に切り換える旨の出力を行い上記ロックアップ状態をロックアップオフ状態に切り換える。一方、ロックアップオフ状態においてロックアップ判定手段262がロックアップオン状態に切り換えるべきと判定した場合には、ロックアップ制御手段264は、油圧制御回路98に対して、ロックアップオフ状態をロックアップオン状態に切り換える旨の出力を行い上記ロックアップ状態をロックアップオン状態に切り換える。なお、ロックアップ制御手段264は、後述のロックアップ切換時出力トルク制御手段270に後述のロックアップ切換時出力トルク制御を行う猶予を与えるため、例えば、ロックアップ判定手段262の判定時から所定時間遅れて上記ロックアップ状態の切換えを実行する。
更に、ロックアップ制御手段264はアクセル踏込速度検出手段114から前記アクセル踏込速度VACを取得する。そしてロックアップ制御手段264は、そのアクセル踏込速度VACに基づいて、ロックアップ機構31のロックアップオン状態からロックアップオフ状態への切換えがなされるアクセル開度Accを示すロックアップオフ点POFFを変更する。これを第3実施例の図20に相当する図30を用い、図30で現在のロックアップ機構31がロックアップオン状態である場合を例として具体的に説明する。
図30は、ロックアップオン状態及びロックアップオフ状態でのアクセル開度Accと駆動力FDRとの関係を示す図であり、それぞれの状態のベース駆動力特性は、第1実施例と同様にアクセル開度Accに対してスロットル弁基準特性LAS(図9)に従いスロットル弁開度θTHが変化した場合のアクセル開度Accと駆動力FDRとの関係を示している。そして図30では、アクセルペダル50が踏込まれアクセル開度Accの増大に伴いロックアップ機構31がロックアップオン状態からロックアップオフ状態に切り換えられる場合のアクセル開度Accに対する駆動力FDRの変化は太い実線の矢印で示され、アクセルペダル50が踏み戻されアクセル開度Accの減少に伴いロックアップ機構31がロックアップオフ状態からロックアップオン状態に切り換えられる場合のアクセル開度Accに対する駆動力FDRの変化は太い破線の矢印で示されている。
先ずロックアップ制御手段264は、上記ロックアップオフ点POFFの変更可能範囲であるロックアップオフ点変化範囲RPOFFを決定する。このロックアップオフ点変化範囲RPOFFについて説明すると、ロックアップ制御手段264は、前記ロックアップオン状態からロックアップオフ状態への切換えがなされるとした場合のそのロックアップオフ状態における切換時の駆動力FDRがロックアップオン状態で発生可能な最大駆動力FMAXONとなるアクセル開度Acc4、言い換えれば、図30のロックアップオフ状態のベース駆動力特性と上記最大駆動力FMAXONを示すL61との交点であるP61が示すアクセル開度Acc4をロックアップオフ点変化範囲RPOFFの上限とする。またロックアップ制御手段264は、上記ロックアップオフ状態からロックアップオン状態への切換えがなされる予め設定されたアクセル開度Acc1をロックアップオフ点変化範囲RPOFFの下限とする。
ロックアップ制御手段264は上記ロックアップオフ点変化範囲RPOFFを決定すると、ロックアップオフ点変化範囲RPOFF内でアクセル踏込速度VACが大きいほどロックアップオフ点POFFをアクセル開度Accの小さい側にずらす。ロックアップオフ点POFFをずらす場合、ロックアップ制御手段264はアクセル踏込速度VACの変化に伴い連続的にロックアップオフ点POFFをずらしてもよいし、段階的にずらしてもよい。また、アクセル踏込速度VACが所定値よりも小さい緩やかなアクセルペダル50の踏込操作である場合にはロックアップオフ点POFFをアクセル開度Accの大きい側にずらすが、そうでない場合すなわちアクセル踏込速度VACが上記所定値以上のアクセルペダル50の早い踏込操作である場合にはロックアップオフ点POFFを例えば図30のP62とし、P62の示すアクセル開度Acc3よりアクセル開度Accの小さい側にはずらさないようにしてもよい。
記憶手段266は図9のスロットル弁基準特性LASを記憶している。更に、車速V及び自動変速機10の変速比γなどのベース駆動力特性(図30)に影響する各パラメータを段階的に変化させた複数の車両駆動状態において、それぞれ図30のようなロックアップオン状態とロックアップオフ状態とのそれぞれの上記ベース駆動力特性から構成されたベース駆動力特性図が予め求められており、記憶手段266はその複数のベース駆動力特性図も記憶している。
ロックアップ切換実行判定手段268は、ロックアップ制御手段264によってロックアップ機構31のロックアップ状態がロックアップオン状態からロックアップオフ状態へ切り換えられたか否かを判定する。例えば、後述する図30の説明において上記ロックアップ状態がロックアップオン状態からロックアップオフ状態へ切り換えられた場合には肯定的な判定を行う。
ロックアップ機構31がロックアップオン状態であり、アクセル開度判定手段116によってアクセル開度Accが増大方向に変化していると判定された場合において、ロックアップ切換時出力トルク制御手段270は、ロックアップ判定手段262がロックアップオフ状態に切り換えるべきと判定した場合には、ロックアップ機構31のロックアップオン状態からロックアップオフ状態への切換えによる駆動力差DFFを小さくするようにエンジントルクTEを制御するロックアップ切換時出力トルク制御を行う。
上記ロックアップ切換時出力トルク制御について図30を用いて具体的に説明する。ロックアップ切換時出力トルク制御を実行するに当たり、ロックアップ切換時出力トルク制御手段270は、図30に示すロックアップオン状態とロックアップオフ状態とのベース駆動力特性を求める。例えば、記憶手段266に記憶された前記複数のベース駆動力特性図の中から現在の車両駆動状態に対応するベース駆動力特性図を選択して上記それぞれのベース駆動力特性を求める。
次にロックアップ切換時出力トルク制御手段270は、第1実施例の変速前出力トルク制御手段120と同様に前記トルクアップ制御の開始点と終了点とを決定し、その間を駆動力FDRが滑らかに増大(図30では直線的に増大)するように上記トルクアップ制御である前記ロックアップ切換時出力トルク制御を実行する。例えば、上記開始点がP63(図30)と、上記終了点がP62(図30)と決定された場合には、アクセル開度Accの増大に伴いAR61(図30)のように駆動力FDRが増大させられる。このとき、ロックアップ切換時出力トルク制御手段270は、上記ロックアップ切換時出力トルク制御(トルクアップ制御)において、前記ロックアップオン状態からロックアップオフ状態への切換時におけるロックアップオフ状態での駆動力FDRに達するように上記ロックアップオン状態での駆動力FDRを上昇させる。言い換えると、ロックアップ切換時出力トルク制御手段270は、上記ロックアップオン状態からロックアップオフ状態への切換直前の駆動力FDRがロックアップオフ状態での駆動力FDR、すなわちロックアップオフ状態のベース駆動力特性(図30)上の駆動力FDRに達するように駆動力FDRを上昇させる。そのためにロックアップ切換時出力トルク制御手段270は、ロックアップ制御手段264が上記ロックアップオフ点POFFをずらした場合にはそれに追従して上記トルクアップ制御の終了点を決定する。例えばロックアップ制御手段264が、アクセル開度Acc4にまで上記ロックアップオフ点POFFをずらしアクセル開度Acc4でロックアップオフ状態への切換えが実行される場合には、ロックアップ切換時出力トルク制御手段270は、P61(図30)を上記トルクアップ制御の終了点とする。或いは、ロックアップ制御手段264がアクセル開度Acc2にまで上記ロックアップオフ点POFFをずらしアクセル開度Acc2でロックアップオフ状態への切換えが実行される場合には、ロックアップ切換時出力トルク制御手段270は、P64(図30)を上記トルクアップ制御の終了点とする。なお、ロックアップ切換時出力トルク制御手段270は、ロックアップ機構31のロックアップオフ状態からロックアップオン状態への切換えがなされるアクセル開度Acc1(図30)よりもアクセル開度Accの小さい側にならないように、上記トルクアップ制御の開始点を決定する。
また、アクセルペダル50が踏込まれて前記トルクアップ制御後にロックアップオフ状態へ切り換えられスロットル弁開度θTHが図9のスロットル弁基準特性LASに従うようになった場合に、アクセルペダル50が踏込まれているにも関わらず駆動力FDRが低下することが無いようにするため、前記トルクアップ制御では、そのトルクアップ制御中の駆動力FDRがロックアップオフ状態への切換後の実際の駆動力FDRを超えてしまうことが無いようにそのトルクアップ制御における駆動力FDRの誤差を考慮してエンジントルクTEが制御される。
ロックアップ切換時出力トルク制御手段270は、ロックアップ切換実行判定手段268が肯定的な判定を行った場合、すなわちロックアップ機構31がロックアップオン状態からロックアップオフ状態へ切り換えられた場合には、前記ロックアップ切換時出力トルク制御(トルクアップ制御)を終了する。
上記ロックアップ切換時出力トルク制御(トルクアップ制御)をアクセル開度Accとスロットル弁開度θTHとの関係に着目して見れば、上記ロックアップ切換時出力トルク制御は、ロックアップ機構31のロックアップオン状態からロックアップオフ状態への切換えによって生じる前記駆動力差DFFを小さくするように図9のスロットル弁基準特性LASに関わらずスロットル弁開度θTHを制御することである。詳細に言えば、上記ロックアップ切換時出力トルク制御(トルクアップ制御)では、同一アクセル開度Accで比較して図9のスロットル弁基準特性LASに基づき決定されるスロットル弁開度θTHよりも実際のスロットル弁開度θTHが大きくされる。
図31は、前述の第1実施例の図14及び図15に相当する本実施例のフローチャートであって、電子制御装置260の制御作動の要部すなわちロックアップ機構31がロックアップオン状態からロックアップオフ状態へ切り換えられるときの駆動力差DFFを小さくする制御作動を説明するフローチャートであり、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行される。なお、本フローチャートは例えばロックアップ機構31がロックアップオン状態である場合にだけ実行されてもよい。
ロックアップ判定手段262に対応するSF1では、ロックアップ機構31のロックアップオン状態において、車速Vとアクセル開度Accとから図29のロックアップマップに従って、ロックアップ機構31をロックアップオン状態からロックアップオフ状態へ切り換えるべきか否かが判定される。このSF1の判定が肯定的である場合、すなわち、ロックアップ機構31をロックアップオン状態からロックアップオフ状態へ切り換えるべき場合にはSF2に移る。一方、このSF1の判定が否定的である場合には本フローチャートは終了する。
アクセル踏込速度検出手段114及びアクセル開度判定手段116に対応するSF2においては、アクセル踏込速度VACが検出され、そのアクセル踏込速度VACに基づきアクセル開度Accが増大方向に変化しているか否かが判定される。このSF2の判定が肯定的である場合、すなわち、アクセル開度Accが増大方向に変化している場合にはSF3に移る。一方、このSF2の判定が否定的である場合には本フローチャートは終了する。
SF3においては、前記ロックアップ切換時出力トルク制御(トルクアップ制御)が既に開始されているか否か、すなわちロックアップ切換時出力トルク制御(トルクアップ制御)が継続中であるか否かが判定される。このSF3の判定が肯定的である場合、すなわち、ロックアップ切換時出力トルク制御が継続中である場合にはSF8に移る。一方、このSF3の判定が否定的である場合にはSF4に移る。以下のSF4乃至SF7は前記ロックアップ切換時出力トルク制御(トルクアップ制御)を開始するためのステップだからである。
SF4においてはアクセル踏込速度VACが取得される。SF4の次はSF5へ移る。
SF5においては、前記ロックアップオフ点POFFの変更可能範囲であるロックアップオフ点変化範囲RPOFFが決定される。その場合、ロックアップ機構31のロックアップオン状態からロックアップオフ状態への切換えがなされるとした場合のそのロックアップオフ状態における切換時の駆動力FDRがロックアップオン状態で発生可能な最大駆動力FMAXONとなるアクセル開度Acc4、言い換えれば、図30のロックアップオフ状態のベース駆動力特性と上記最大駆動力FMAXONを示すL61との交点であるP61が示すアクセル開度Acc4がロックアップオフ点変化範囲RPOFFの上限とされる。また、上記ロックアップオフ状態からロックアップオン状態への切換えがなされる予め設定されたアクセル開度Acc1がロックアップオフ点変化範囲RPOFFの下限とされる。SF5の次はSF6へ移る。
SF6においては、ロックアップオフ点変化範囲RPOFF内でアクセル踏込速度VACが大きいほどロックアップオフ点POFFはアクセル開度Accの小さい側にずらされて、ロックアップオフ点POFFが決定される。SF6の次はSF7へ移る。なお、SF4乃至SF6はロックアップ制御手段264に対応する。
SF7においては、前記トルクアップ制御の開始点と終了点とが決定され、その間を駆動力FDRが滑らかに増大するように上記トルクアップ制御である前記ロックアップ切換時出力トルク制御が開始される。なお上記ロックアップオフ点POFFがずれれば、それに追従して上記トルクアップ制御の終了点が決定される。SF7の次はSF8へ移る。
ロックアップ切換実行判定手段268に対応するSF8においては、ロックアップ機構31がロックアップオン状態からロックアップオフ状態へと切り換えられたか否かが判定される。このSF8の判定が肯定的である場合、すなわち、ロックアップ機構31がロックアップオン状態からロックアップオフ状態へと切り換えられた場合にはSF9に移る。一方、このSF8の判定が否定的である場合には本フローチャートは終了する。
SF9においては、SF7で開始された上記ロックアップ切換時出力トルク制御(トルクアップ制御)が終了させられる。なお、SF3、SF7、SF9はロックアップ切換時出力トルク制御手段270に対応する。
本実施例の電子制御装置260には次のような効果(F1)乃至(F7)がある。(F1)ロックアップ機構31がロックアップオン状態であり、アクセル開度判定手段116によってアクセル開度Accが増大方向に変化していると判定された場合において、ロックアップ切換時出力トルク制御手段270は、ロックアップ判定手段262がロックアップオフ状態に切り換えるべきと判定した場合には、ロックアップ機構31のロックアップオン状態からロックアップオフ状態への切換えによる駆動力差DFFを小さくするようにエンジントルクTEを制御するロックアップ切換時出力トルク制御を行う。従って、そのロックアップ切換時出力トルク制御が行われない場合と比較してロックアップ機構31のロックアップ状態の切換えに伴う駆動力FDRの変化が滑らかになるようにすることが可能であり、乗員の快適性を向上させ得る。
(F2)ロックアップ切換時出力トルク制御手段270は、上記ロックアップ切換時出力トルク制御(トルクアップ制御)において、前記ロックアップオン状態からロックアップオフ状態への切換時におけるロックアップオフ状態での駆動力FDRに達するように上記ロックアップオン状態での駆動力FDRを上昇させる。従って、上記ロックアップオン状態からロックアップオフ状態への切換えによって生じる駆動力差DFFを一層小さくできる。
(F3)ロックアップ制御手段264は、そのアクセル踏込速度VACに基づいて、ロックアップ機構31のロックアップオン状態からロックアップオフ状態への切換えがなされるアクセル開度Accを示すロックアップオフ点POFFを変更するので、運転者の要求する駆動力FDRを早期に得ることが可能である。
(F4)ロックアップ制御手段264は、前記ロックアップオフ点POFFの変更可能範囲であるロックアップオフ点変化範囲RPOFFを決定する。詳細には、ロックアップ制御手段264は、前記ロックアップオン状態からロックアップオフ状態への切換えがなされるとした場合のそのロックアップオフ状態における切換時の駆動力FDRがロックアップオン状態で発生可能な最大駆動力FMAXONとなるアクセル開度Acc4、言い換えれば、図30のロックアップオフ状態のベース駆動力特性と上記最大駆動力FMAXONを示すL61との交点であるP61が示すアクセル開度Acc4をロックアップオフ点変化範囲RPOFFの上限とする。またロックアップ制御手段264は、上記ロックアップオフ状態からロックアップオン状態への切換えがなされる予め設定されたアクセル開度Acc1をロックアップオフ点変化範囲RPOFFの下限とする。そして、ロックアップ制御手段264は上記ロックアップオフ点変化範囲RPOFFを決定すると、ロックアップオフ点変化範囲RPOFF内でアクセル踏込速度VACが大きいほどロックアップオフ点POFFをアクセル開度Accの小さい側にずらす。従って、上記ロックアップオン状態からロックアップオフ状態への切換前に実行されるロックアップ切換時出力トルク制御によりロックアップ状態の切換頻度の低減を図ることができ、ロックアップオフ点POFFをずらすことが上記ロックアップオフ状態からロックアップオン状態への切換えに影響することを回避し得る。
(F5)前記ロックアップ切換時出力トルク制御はスロットル弁開度θTHを制御することである。つまり、アクセル開度Accとスロットル弁開度θTHとが一対一で対応する両者の関係である図9のスロットル弁基準特性LASが予め設定されており、上記ロックアップ切換時出力トルク制御は、ロックアップ機構31のロックアップオン状態からロックアップオフ状態への切換えによって生じる前記駆動力差DFFを小さくするように図9のスロットル弁基準特性LASに関わらずスロットル弁開度θTHを制御することである。詳細に言えば、上記ロックアップ切換時出力トルク制御(トルクアップ制御)では、同一アクセル開度Accで比較して図9のスロットル弁基準特性LASに基づき決定されるスロットル弁開度θTHよりも実際のスロットル弁開度θTHが大きくされる。従って上記ロックアップ切換時出力トルク制御において、電子スロットル弁56の制御により容易にエンジントルクTEを調整し駆動力FDRを変化させることができる。
(F6)図30において、ロックアップ切換時出力トルク制御手段270は、ロックアップ機構31のロックアップオフ状態からロックアップオン状態への切換えがなされるアクセル開度Acc1(図30)よりもアクセル開度Accの小さい側にならないように、上記トルクアップ制御の開始点を決定する。従って、前記ロックアップ切換時出力トルク制御による駆動力FDRの上昇がロックアップ機構31のロックアップオフ状態からロックアップオン状態への切換えに影響することを回避できる。
(F7)本実施例と前述の第1実施例とは相互に組み合わせて実施することができる。そのようにした場合には、第1実施例の効果(A1)乃至(A7)も得ることができる。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
例えば、前述の第1実施例乃至第6実施例では、アクセル開度Acc等からエンジントルクTE及び自動変速機の変速段(変速比γ)が決定され、その結果として駆動力FDRが出力されるが、アクセル開度Acc等から目標駆動力が決定され、それに基づき目標とされるエンジントルクTE及び自動変速機の変速段(変速比γ)が決定される構成であっても差し支えない。
また前述の第1実施例乃至第5実施例においては、自動変速機10のダウンシフト前には前記変速前出力トルク制御(トルクアップ制御)が実行され、そのダウンシフト後には前記変速後出力トルク制御(トルクダウン制御)が実行されるが、何れか一方が実行されない前記変速時出力トルク制御であってもよい。なお、自動変速機10のダウンシフトがなされる場合に上記変速時出力トルク制御が実行されるが、それが実行されない場合と比較して、上記ダウンシフトによって生じる駆動力差DFF(図11に例示)が小さくなればよく零になる必要は無い。
また前述の第1実施例乃至第5実施例においては、上記変速時出力トルク制御(トルクアップ制御,トルクダウン制御)は自動変速機10のダウンシフト時に実行されるが、アップシフト時に実行されてもよい。アップシフト時に上記変速時出力トルク制御が実行される場合には、アップシフト前には前記トルクダウン制御が実行され、アップシフト後には前記トルクアップ制御が実行されることになる。
また前述の第6実施例においては、ロックアップ機構31のロックアップオン状態からロックアップオフ状態への切換前に前記トルクアップ制御により前記ロックアップ切換時出力トルク制御が行われるが、その切換後に前記トルクダウン制御により前記ロックアップ切換時出力トルク制御が行われてもよい。なお、上記ロックアップ機構31の切換えがなされる場合に上記ロックアップ切換時出力トルク制御が実行されるが、それが実行されない場合と比較して、上記切換えによって生じる駆動力差DFFが小さくなればよく零になる必要は無い。
また前述の第6実施例においては、ロックアップ機構31がロックアップオン状態からロックアップオフ状態へ切り換えられる場合に上記ロックアップ切換時出力トルク制御が行われるが、逆に、ロックアップ機構31がロックアップオフ状態からロックアップオン状態へ切り換えられる場合にそのときの駆動力差DFFを小さくするように上記ロックアップ切換時出力トルク制御が行われてもよい。
また前述の第1実施例乃至第6実施例は、例えば優先順位を設けるなどして、相互に組み合わせて実施することができる。
本発明が好適に適用される車両用自動変速機を説明する骨子図である。
図1の車両用自動変速機において複数の変速段を成立させる際の油圧式摩擦係合要素の作動を説明する作動表である。
図1の車両用自動変速機において、変速段毎に各回転要素の回転速度を直線で表すことができる共線図である。
図1の車両用自動変速機を制御するために車両に設けられた制御系統の要部を説明するブロック線図である。
図4のシフトレバーの操作位置を説明する図である。
図4の電子制御装置の変速制御において用いられる変速線図の一例を示す図である。
図4の油圧制御回路の要部を示す回路図である。
第1実施例において、図4の電子制御装置の制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。
図1の車両用自動変速機において、一対一で対応するように予め設定されているアクセル開度とスロットル弁開度との関係であるスロットル弁基準特性を示す図である。
図1の車両用自動変速機において、アクセル開度に対して図9のスロットル弁基準特性に従いスロットル弁開度が変化した場合のアクセル開度と駆動力との関係であるベース駆動力特性を例示する図である。
第1実施例において図1の車両用自動変速機の変速が実行された場合に、アクセル開度の変化に対する駆動力の変化を説明するための図であって、変速時出力トルク制御が実行された場合の駆動力の変化を説明するための図である。
図11で説明される変速時出力トルク制御で実行されるトルクアップ制御でのアクセル開度と駆動力との関係を模式的に示した図である。
図12のトルクアップ制御が実行された場合において、アクセル開度の変化に対する駆動力とエンジントルクとの変化を例示する図である。
第1実施例において図4の電子制御装置の制御作動の要部すなわち自動変速機のダウンシフト時の駆動力変化を滑らかなものに近付ける制御作動を説明するフローチャートであって、2つのセット図面のうちの第1の図である。
第1実施例において図4の電子制御装置の制御作動の要部すなわち自動変速機のダウンシフト時の駆動力変化を滑らかなものに近付ける制御作動を説明するフローチャートであって、2つのセット図面のうちの第2の図である。
本発明の他の実施例である第2実施例において図1の車両用自動変速機の変速が実行された場合に、アクセル開度の変化に対する駆動力の変化を説明するための図であり、変速時出力トルク制御が実行された場合の駆動力の変化を説明するための図であって、図11に相当する図である。
本発明の他の実施例である第2実施例において図4の電子制御装置の制御作動の要部を説明するフローチャートであって、図15の一部を置換するフローチャートである。
本発明の他の実施例である第2実施例において図4の電子制御装置の制御作動の要部すなわち変速後出力トルク制御中にアクセルペダルが戻された場合の制御作動を説明するフローチャートであって、図17とは別のフローチャートである。
本発明の他の実施例である第3実施例において、図4の電子制御装置の制御機能の要部を説明する機能ブロック線図であって、図8に相当する機能ブロック線図である。
本発明の他の実施例である第3実施例において図1の車両用自動変速機の変速が実行された場合に、アクセル開度の変化に対する駆動力の変化を説明するための図であり、変速時出力トルク制御が実行された場合の駆動力の変化を説明するための図であって、図11に相当する図である。
本発明の他の実施例である第3実施例において図4の電子制御装置の制御作動の要部を説明するフローチャートであって、図14の一部に挿入されるフローチャートである。
本発明の他の実施例である第4実施例において、図4の電子制御装置の制御機能の要部を説明する機能ブロック線図であって、図8に相当する機能ブロック線図である。
本発明の他の実施例である第4実施例において図4の電子制御装置の制御作動の要部すなわち図14及び図15のフローチャートの実行を禁止するか否かを決定する制御作動を説明するフローチャートである。
本発明の他の実施例である第5実施例において、図4の電子制御装置の制御機能の要部を説明する機能ブロック線図であって、図8に相当する機能ブロック線図である。
本発明の他の実施例である第5実施例において図1の車両用自動変速機の変速が実行された場合に、アクセル開度の変化に対する駆動力の変化を説明するための図であり、変速時出力トルク制御が実行された場合の駆動力の変化を説明するための図であって、図11に相当する図である。
本発明の他の実施例である第5実施例において図4の電子制御装置の制御作動の要部を説明するフローチャートであって、図14の一部を置換するフローチャートである。
本発明の他の実施例である第5実施例において図4の電子制御装置の制御作動の要部を説明するフローチャートであって、図15の一部を置換するフローチャートである。
本発明の他の実施例である第6実施例において、図4の電子制御装置の制御機能の要部を説明する機能ブロック線図であって、図8に相当する機能ブロック線図である。
図1の車両用自動変速機において、車速とアクセル開度とをパラメータとする予め定められたロックアップマップを示す図である。
本発明の他の実施例である第6実施例において図1の車両用自動変速機のロックアップ機構のロックアップ状態が切り換えられた場合に、アクセル開度の変化に対する駆動力の変化を説明するための図であり、ロックアップ切換時出力トルク制御が実行された場合の駆動力の変化を説明するための図であって、図11に相当する図である。
本発明の他の実施例である第6実施例において、図4の電子制御装置の制御作動の要部すなわちロックアップ機構がロックアップオン状態からロックアップオフ状態へ切り換えられるときの駆動力差を小さくする制御作動を説明するフローチャートであって、図14及び図15に相当するフローチャートである。
符号の説明
10:車両用自動変速機(自動変速機)
30:エンジン
31:ロックアップ機構
32:トルクコンバータ
50:アクセルペダル
56:電子スロットル弁
90,220,230,240,250,260:電子制御装置(駆動力制御装置)
114:アクセル踏込速度検出手段
262:ロックアップ判定手段
Acc:アクセル開度
FDR:駆動力
DFF:駆動力差
RPDN:変速点変化範囲
RPOFF:ロックアップオフ点変化範囲
θTH:スロットル弁開度