本発明は、車両用の自動変速機に好適に適用され、燃料の燃焼によって駆動力を発生するエンジン駆動車両や、電動モータによって走行する電気自動車など、種々の車両用自動変速機に適用され得る。
自動変速機としては、例えば遊星歯車式や平行軸式など、複数のクラッチやブレーキ(摩擦係合装置)の作動状態に応じて複数のギヤ段が成立させられる種々の自動変速機が用いられる。自動変速機の入力軸は、例えばエンジンからトルクコンバータを介して動力が伝達される場合は、そのトルクコンバータのタービン軸である。
自動変速機は、例えば車速およびスロットル弁開度等をパラメータとして予め定められた変速条件(マップなど)に従って自動的にギヤ段が切り換えられるように構成されるが、自動的に変速されるギヤ段の範囲が異なる複数の変速レンジやギヤ段そのものが手動操作で切り換えられることにより、それに伴って変速制御が行われる場合にも、本発明は適用され得る。
摩擦係合装置は、油圧シリンダ等の油圧アクチュエータによって係合させられる単板式或いは多板式のクラッチやブレーキ、ベルト式のブレーキなどで、例えばソレノイド弁等による油圧制御で油圧が所定の変化パターンやタイミングで変化させられる。また、大容量のソレノイド弁(リニアソレノイド弁など)の出力油圧がそのまま供給されて、その出力油圧によって係合させられる直接圧制御が好適に採用されるが、その出力油圧によって調圧制御されるコントロール弁等を介して油圧制御が行われる場合であっても良い。
パワーOFFでの第1変速は、アクセルが操作されていないアクセルOFF状態における変速で、アップシフトでもダウンシフトでも良く、本発明は、パワーOFFアップシフトの第1変速中にアクセル操作(出力要求操作)によりパワーONダウンシフトの第2変速判断が為された場合と、パワーOFFダウンシフトの第1変速中にアクセル操作によりパワーONダウンシフトの第2変速判断が為された場合の2種類の多重変速を含む。何れの場合も、パワーONダウンシフトの第2変速では、一般に解放側の摩擦係合装置の係合状態が不明であるため直ちに解放し、入力軸回転速度が変速後ギヤ段の同期回転速度を上回っている状態で係合側油圧を上昇させることにより、係合側摩擦係合装置の係合で入力軸回転速度を引き下げて変速を進行させる。
入力軸回転速度を引き下げる際に、エンジン等の動力源トルクを低減するトルクダウン制御を併用することが望ましい。その場合に、入力軸回転速度が確実に同期回転速度を上回るように、同期回転速度よりも高い回転速度とすることができる程度のトルクを出力するように、スロットル弁開度等により動力源トルクを制御することが望ましい。
入力軸回転速度が第1判定速度よりも高い場合に油圧指令値が第1勾配で上昇させられるが、必ずしも直ちに第1勾配で上昇させる必要はなく、例えばパワーONダウンシフトの第2変速が出力された時点で入力軸回転速度が第1判定値を越えている場合には、所定のファーストフィル(急速充填)制御に続いて第1勾配で油圧指令値を上昇させるようにしても良い。入力軸回転速度が同期回転速度よりも低い状態から上昇させられる場合は、係合側油圧の油圧指令値を予め所定の定圧待機状態に保持しておき、入力軸回転速度が第1判定速度以上となった段階で直ちに第1勾配で上昇させるようにしても良い。
油圧指令値の第3勾配は、少なくとも第2勾配よりも勾配が大きいが、係合ショックを抑制する上で第1勾配よりも勾配が小さいことが望ましい。但し、係合終了を確実に保証するために、第1勾配と同じかそれよりも大きな勾配の第3勾配を設定することも可能である。第2勾配は、係合ショックを低減する上で勾配が小さいことが望ましく、例えば勾配が略0であっても良い。
第2勾配による油圧指令値の増大を継続する所定時間は、その第2勾配による油圧指令値の増大時間を単独で設定しても良いが、少なくとも第2勾配による油圧指令値の増大が所定時間継続するように、例えば第1勾配および第2勾配による油圧指令値の増大の合計時間で設定するようにしても良い。
第1勾配、第2勾配、第3勾配は、それぞれ予め一定値が定められても良いが、変速の種類(どのギヤ段からどのギヤ段への変速か)や係合側摩擦係合装置の種類、入力トルク、入力軸回転速度、作動油温度等の車両状態、運転状態などをパラメータとして予め定められた演算式やデータマップ等から算出されるようにしても良い。第1判定速度、第2判定速度、第3判定速度についても同様である。また、互いに影響する勾配や判定速度、或いは第2勾配で増大させる前記所定時間を、相互に考慮して設定するようにしても良い。
係合終了判定手段は、摩擦係合装置の係合を確実に判定できるように、例えば入力軸回転速度が同期回転速度の近傍に所定時間以上継続して保持されている場合に係合終了判定を行うように構成される。係合終了判定手段による係合終了判定に伴う油圧制御の終了処理は、例えば係合側摩擦係合装置の油圧を入力トルク等によって定まる最大値(定常値)まで一気に上昇させるように構成されるが、所定の勾配で上昇させるなど他の終了処理を行うことも可能である。
以下、本発明の実施例を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)車両などの横置き型の車両用駆動装置の骨子図であり、ガソリンエンジン等の内燃機関によって構成されているエンジン10の出力は、トルクコンバータ12、自動変速機14を経て、図示しない差動歯車装置から駆動輪(前輪)へ伝達されるようになっている。上記エンジン10は車両走行用の動力源で、トルクコンバータ12は流体継手である。
自動変速機14は、シングルピニオン型の第1遊星歯車装置20を主体として構成されている第1変速部22と、シングルピニオン型の第2遊星歯車装置26およびダブルピニオン型の第3遊星歯車装置28を主体として構成されている第2変速部30とを同軸線上に有し、入力軸32の回転を変速して出力歯車34から出力する。入力軸32は入力部材に相当するもので、本実施例ではトルクコンバータ12のタービン軸であり、出力歯車34は出力部材に相当するもので、差動歯車装置を介して左右の駆動輪を回転駆動する。なお、自動変速機14は中心線に対して略対称的に構成されており、図1では中心線の下半分が省略されている。
上記第1変速部22を構成している第1遊星歯車装置20は、サンギヤS1、キャリアCA1、およびリングギヤR1の3つの回転要素を備えており、サンギヤS1が入力軸32に連結されて回転駆動されるとともに、リングギヤR1が第3ブレーキB3を介して回転不能にケース36に固定されることにより、キャリアCA1が中間出力部材として入力軸32に対して減速回転させられて出力する。また、第2変速部30を構成している第2遊星歯車装置26および第3遊星歯車装置28は、一部が互いに連結されることによって4つの回転要素RM1〜RM4が構成されており、具体的には、第3遊星歯車装置28のサンギヤS3によって第1回転要素RM1が構成され、第2遊星歯車装置26のリングギヤR2および第3遊星歯車装置28のリングギヤR3が互いに連結されて第2回転要素RM2が構成され、第2遊星歯車装置26のキャリアCA2および第3遊星歯車装置28のキャリアCA3が互いに連結されて第3回転要素RM3が構成され、第2遊星歯車装置26のサンギヤS2によって第4回転要素RM4が構成されている。上記第2遊星歯車装置26および第3遊星歯車装置28は、キャリアCA2およびCA3が共通の部材にて構成されているとともに、リングギヤR2およびR3が共通の部材にて構成されており、且つ第2遊星歯車装置26のピニオンギヤが第3遊星歯車装置28の第2ピニオンギヤを兼ねているラビニヨ型の遊星歯車列とされている。
上記第1回転要素RM1(サンギヤS3)は第1ブレーキB1によって選択的にケース36に連結されて回転停止させられ、第2回転要素RM2(リングギヤR2、R3)は第2ブレーキB2によって選択的にケース36に連結されて回転停止させられ、第4回転要素RM4(サンギヤS2)は第1クラッチC1を介して選択的に前記入力軸32に連結され、第2回転要素RM2(リングギヤR2、R3)は第2クラッチC2を介して選択的に入力軸32に連結され、第1回転要素RM1(サンギヤS3)は中間出力部材である前記第1遊星歯車装置20のキャリアCA1に一体的に連結され、第3回転要素RM3(キャリアCA2、CA3)は前記出力歯車34に一体的に連結されて回転を出力するようになっている。
上記クラッチC1、C2およびブレーキB1、B2、B3(以下、特に区別しない場合は単にクラッチC、ブレーキBという)は、多板式のクラッチやバンドブレーキなど油圧アクチュエータによって係合制御される油圧式摩擦係合装置であり、油圧制御回路98(図3参照)のリニアソレノイド弁SL1〜SL5の励磁、非励磁や図示しないマニュアルバルブによって油圧回路が切り換えられることにより、図2に示すように係合、解放状態が切り換えられ、シフトレバー72(図3参照)の操作位置(ポジション)に応じて前進6段、後進1段の各ギヤ段が成立させられる。図2の「1st」〜「6th」は前進の第1速ギヤ段〜第6速ギヤ段を意味しており、「Rev」は後進ギヤ段であり、それ等の変速比(=入力軸回転速度NIN/出力軸回転速度NOUT )は、前記第1遊星歯車装置20、第2遊星歯車装置26、および第3遊星歯車装置28の各ギヤ比ρ1、ρ2、ρ3によって適宜定められる。図2の「○」は係合、空欄は解放を意味している。
上記シフトレバー72は、例えば図4に示すシフトパターンに従って駐車ポジション「P」、後進走行ポジション「R」、ニュートラルポジション「N」、前進走行ポジション「D」、「4」、「3」、「2」、「L」へ操作されるようになっており、「P」および「N」ポジションでは動力伝達を遮断するニュートラルが成立させられるが、「P」ポジションでは図示しないメカニカルパーキング機構によって機械的に駆動輪の回転が阻止される。
図3は、図1のエンジン10や自動変速機14などを制御するために車両に設けられた制御系統を説明するブロック線図で、アクセルペダル50の操作量(アクセル開度)Accがアクセル操作量センサ51により検出されるようになっている。アクセルペダル50は、運転者の出力要求量に応じて大きく踏み込み操作されるもので、アクセル操作部材に相当し、アクセル操作量Accは出力要求量に相当する。また、エンジン10の吸気配管には、スロットルアクチュエータ54によって開度θTHが変化させられる電子スロットル弁56が設けられている。この他、エンジン10の回転速度NEを検出するためのエンジン回転速度センサ58、エンジン10の吸入空気量Qを検出するための吸入空気量センサ60、吸入空気の温度TA を検出するための吸入空気温度センサ62、上記電子スロットル弁56の全閉状態(アイドル状態)およびその開度θTHを検出するためのアイドルスイッチ付スロットルセンサ64、車速Vに対応する出力歯車34の回転速度(出力軸回転速度に相当)NOUT を検出するための車速センサ66、エンジン10の冷却水温TW を検出するための冷却水温センサ68、フットブレーキ操作の有無を検出するためのブレーキスイッチ70、シフトレバー72のレバーポジション(操作位置)PSHを検出するためのレバーポジションセンサ74、タービン回転速度NTを検出するためのタービン回転速度センサ76、油圧制御回路98内の作動油の温度であるAT油温TOIL を検出するためのAT油温センサ78、イグニッションスイッチ82などが設けられており、それらのセンサから、エンジン回転速度NE、吸入空気量Q、吸入空気温度TA 、スロットル弁開度θTH、車速V(出力軸回転速度NOUT )、エンジン冷却水温TW 、ブレーキ操作の有無、シフトレバー72のレバーポジションPSH、タービン回転速度NT、AT油温TOIL 、イグニッションスイッチ82の操作位置などを表す信号が電子制御装置90に供給されるようになっている。上記タービン回転速度NTは、入力部材である入力軸32の回転速度(入力軸回転速度NIN)と同じである。
油圧制御回路98は、自動変速機14の変速制御に関して図5に示す回路を備えている。図5において、オイルポンプ40から圧送された作動油は、リリーフ型の第1調圧弁100により調圧されることによって第1ライン圧PL1とされる。オイルポンプ40は、例えば前記エンジン10によって回転駆動される機械式ポンプである。第1調圧弁100は、タービントルクTT すなわち自動変速機14の入力トルクTIN、或いはその代用値であるスロットル弁開度θTHに応じて第1ライン圧PL1を調圧するもので、その第1ライン圧PL1は、シフトレバー72に連動させられるマニュアルバルブ104に供給される。そして、シフトレバー72が「D」ポジション等の前進走行ポジションへ操作されているときには、このマニュアルバルブ104から第1ライン圧PL1に基づく前進ポジション圧PD がリニアソレノイド弁SL1〜SL5へ供給される。リニアソレノイド弁SL1〜SL5は、それぞれ前記クラッチC1、C2、ブレーキB1〜B3に対応して配設されており、電子制御装置90から出力される駆動信号に従ってそれぞれ励磁状態が制御されることにより、それ等の係合油圧PC1、PC2、PB1、PB2、PB3がそれぞれ独立に制御され、これにより第1速ギヤ段「1st」〜第6速ギヤ段「6th」の何れかを択一的に成立させることができる。リニアソレノイド弁SL1〜SL5は何れも大容量型で、出力油圧がそのままクラッチC1、C2、ブレーキB1〜B3に供給され、それ等の係合油圧PC1、PC2、PB1、PB2、PB3を直接制御する直接圧制御が行われる。
前記電子制御装置90は、CPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、図6(a) に示すようにエンジン制御手段120および変速制御手段130の各機能を実行するようになっており、必要に応じてエンジン制御用と変速制御用とに分けて構成される。
エンジン制御手段120は、エンジン10の出力制御を行うもので、スロットルアクチュエータ54により電子スロットル弁56を開閉制御する他、燃料噴射量制御のために燃料噴射弁92を制御し、点火時期制御のためにイグナイタ等の点火装置94を制御する。電子スロットル弁56の制御は、例えば図7に示す関係から実際のアクセル操作量Accに基づいてスロットルアクチュエータ54を駆動し、アクセル操作量Accが増加するほどスロットル弁開度θTHを増加させる。また、エンジン10の始動時には、スタータ(電動モータ)96によってクランキングする。
変速制御手段130は、自動変速機14の変速制御を行うもので、例えば図8に示す予め記憶された変速線図(変速マップ)から実際のスロットル弁開度θTHおよび車速Vに基づいて自動変速機14の変速すべきギヤ段を決定し、すなわち現在のギヤ段から変速先のギヤ段への変速判断を実行し、その決定されたギヤ段への変速作動を開始させる変速出力を実行するとともに、駆動力変化などの変速ショックが発生したりクラッチCやブレーキBの摩擦材の耐久性が損なわれたりすることがないように、油圧制御回路98のリニアソレノイド弁SL1〜SL5の励磁状態を連続的に変化させる。前記図2から明らかなように、本実施例の自動変速機14は、クラッチCおよびブレーキBの何れか1つを解放するとともに他の1つを係合させるクラッチツークラッチ変速により、連続するギヤ段の変速が行われるようになっている。図8の実線はアップシフト線で、破線はダウンシフト線であり、車速Vが低くなったりスロットル弁開度θTHが大きくなったりするに従って、変速比が大きい低速側のギヤ段に切り換えられるようになっており、図中の「1」〜「6」は第1速ギヤ段「1st」〜第6速ギヤ段「6th」を意味している。
そして、シフトレバー72が「D」ポジションへ操作されると、総ての前進ギヤ段「1st」〜「6th」を用いて自動的に変速する最上位のDレンジ(自動変速モード)が成立させられる。また、シフトレバー72が「4」〜「L」ポジションへ操作されると、4、3、2、Lの各変速レンジが成立させられる。4レンジでは第4速ギヤ段「4th」以下の前進ギヤ段で変速制御が行われ、3レンジでは第3速ギヤ段「3rd」以下の前進ギヤ段で変速制御が行われ、2レンジでは第2速ギヤ段「2nd」以下の前進ギヤ段で変速制御が行われ、Lレンジでは第1速ギヤ段「1st」に固定される。したがって、例えばDレンジの第6速ギヤ段「6th」で走行中に、シフトレバー72を「D」ポジションから「4」ポジション、「3」ポジション、「2」ポジションへ操作すると、変速レンジがD→4→3→2へ切り換えられて、第6速ギヤ段「6th」から第4速ギヤ段「4th」、第3速ギヤ段「3rd」、第2速ギヤ段「2nd」へ強制的にダウンシフトさせられ、手動操作でギヤ段を変更することができる。
このような自動または手動による自動変速機14の変速制御は、係合側油圧や解放側油圧を予め定められた変化パターンに従って変化させたり、所定の変化タイミングで変化させたりすることによって行われ、この変化パターンや変化タイミング等の制御態様は、クラッチCおよびブレーキBの耐久性や変速応答性、変速ショック等を総合的に考慮して、運転状態等に応じて定められる。
上記変速制御手段130はまた、パワーOFFでの第1変速中にパワーONダウンシフトの第2変速判断が為されるパワーOFF→ON多重変速に際し、その第2変速を実行するために前記摩擦係合装置(クラッチCおよびブレーキBの何れか)の係合制御でタービン回転速度NTを第2変速後ギヤ段の同期回転速度まで引き下げる第2変速制御を行うようになっている。図11は、第1変速であるパワーOFFの2→4アップシフトの変速途中、すなわち2→4アップシフトで係合させるべき第2クラッチC2が完全に係合させられる前に、アクセルペダル50が踏み込み操作され、第2変速としてパワーONの4→3ダウンシフト判断が為された場合で、その第2変速制御で解放される第2クラッチC2に関する油圧指令値1は、4→3ダウンシフト判断に伴って速やかに低下させられ、直ちに解放される一方、第2変速制御で係合させられる第3ブレーキB3に関する油圧指令値2は、4→3ダウンシフト判断に伴って速やかに油圧PB3を上昇させ、第3ブレーキB3の係合でタービン回転速度NTを引き下げて変速を進行させるようになっている。なお、2→4アップシフトで解放される第1ブレーキB1は、タービン回転速度NTが速やかに下降するように、直ちに解放されるように油圧指令値が制御される。
図11の時間t1 は、第1変速である2→4アップシフト判断が為された時間で、時間t2 はアクセル操作が行われて第2変速である4→3ダウンシフト判断が為された時間である。また、タービン回転速度NTの欄の縦軸の目盛り「2nd」、「3rd」、「4th」は、それ等のギヤ段の同期回転速度で、車速すなわち出力軸回転速度NOUT と各ギヤ段の変速比とを掛け算することによって求められ、タービン回転速度NTがそれ等の同期回転速度と一致する場合は、そのギヤ段が成立していることを意味しており、それ等の同期回転速度の中間に位置している場合は変速途中であることを意味している。また、油圧指令値1は、第2クラッチC2の油圧PC2を制御するリニアソレノイド弁SL2の励磁電流に対応し、油圧指令値2は、第3ブレーキB3の油圧PB3を制御するリニアソレノイド弁SL5の励磁電流に対応し、実際の油圧PC2、PB3は、その油圧指令値1、2よりも遅れて且つなまされた形で変化する。
上記図11では、第2変速後のギヤ段である第3速ギヤ段「3rd」の同期回転速度ntdoki3よりタービン回転速度NTが高い状態でアクセルペダル50が踏み込み操作された場合であるが、図13は、その同期回転速度ntdoki3よりタービン回転速度NTが低い状態でアクセルペダル50が踏み込み操作された場合である。この場合には、タービン回転速度NTが同期回転速度ntdoki3を上回るようにして第3ブレーキB3の係合制御を行う必要があることから、その同期回転速度ntdoki3に基づいて定められた所定の係合制御開始回転速度にタービン回転速度NTが到達した時点で第3ブレーキB3の係合制御が開始されるようになっている。係合制御開始回転速度は、例えば油圧PB3の応答遅れを考慮して同期回転速度ntdoki3よりも所定値だけ低い値とされている。また、この係合制御開始回転速度は、一定値が定められても良いが、変速の種類や第2変速判断時(時間t2 )のタービン回転速度NT、入力トルク(スロットル弁開度θTHなど)、AT油温TOIL 等の車両状態、運転状態などをパラメータとして予め定められた演算式やデータマップ等から算出されるようにしても良い。
また、図14は、第1変速であるパワーOFFの4→3ダウンシフトの変速途中、すなわち4→3ダウンシフトで係合させるべき第3ブレーキB3が完全に係合させられる前に、アクセルペダル50が踏み込み操作され、第2変速としてパワーONの3→2ダウンシフト判断が為された場合で、その第2変速制御で解放される第3ブレーキB3に関する油圧指令値1は、3→2ダウンシフト判断に伴って速やかに低下させられ、直ちに解放される。一方、第2変速制御で係合させられる第1ブレーキB1に関する油圧指令値2は、タービン回転速度NTが第2変速後のギヤ段である第2速ギヤ段「2nd」の同期回転速度ntdoki2を上回るようにして第1ブレーキB1の係合制御を行う必要があることから、その同期回転速度ntdoki2に基づいて定められた所定の係合制御開始回転速度にタービン回転速度NTが到達した時点で第1ブレーキB1の係合制御が開始される。この場合の係合制御開始回転速度も、前記図13における油圧指令値2の場合と同様に定められる。
図6に戻って、前記エンジン制御手段120は、変速時トルクダウン制御手段122を備えており、上記パワーOFF→ON多重変速でパワーONダウンシフト(第2変速)が行われる際に、エンジントルクを一時的に低下させるようになっている。このトルクダウン制御は、タービン回転速度NTが第2変速後ギヤ段の同期回転速度ntdokiを上回るようにして係合制御が行われる際に、エンジン10のスロットル弁開度θTHを、タービン回転速度NTを第2変速後ギヤ段の同期回転速度ntdokiよりも高い回転速度とすることができるトルクを出力する所定の開度thdoki(図11、図13、図14参照)まで閉じ制御するもので、これにより、タービン回転速度NTが第2変速後ギヤ段の同期回転速度ntdokiよりも高い回転速度となることを許容しつつ過度の吹き上がりが防止される。この時の閉じ開度thdokiは、予め一定値が定められても良いが、変速の種類や第2変速判断時(図11、図13、図14の時間t2 )のエンジン回転速度NE、タービン回転速度NT、AT油温TOIL 等の車両状態、運転状態などをパラメータとして定められた演算式やデータマップ等から算出するようにしても良い。また、上記スロットル弁開度θTHの閉じ制御は、例えばタービン回転速度NTが下降傾向となるまで行われ、タービン回転速度NTが下降傾向となったことが検出されると、アクセル操作量Accに対応する開度までスロットル弁開度θTHを所定の勾配で徐々に開いて通常のスロットル制御に復帰する。なお、スロットル弁開度θTHの閉じ制御の代わりに、或いはそれと併用して点火時期の遅角制御などを用いてトルクダウン制御を行うこともできる。
一方、変速制御手段120は、ダウンシフト終了時係合制御手段132を備えている。このダウンシフト終了時係合制御手段132は、ダウンシフト時に係合させられる係合側摩擦係合装置の油圧制御に関するもので、基本的に図9のフローチャートに従って信号処理を行う。図9のステップSS1では、ダウンシフト終了時係合制御を実施するか否か、具体的には変速終了時に係合側摩擦係合装置の油圧制御を行うパワーONダウンシフトか否かを判断し、パワーONダウンシフトの場合にはステップSS2を実行する。ステップSS2では、今回の変速がパワーOFF→ON多重変速におけるパワーONダウンシフト(第2変速)か否か、すなわち前記図11、図13、図14における時間t2 の第2変速判断に伴うパワーONダウンシフトか否かを判断し、そのようなパワーOFF→ON多重変速の場合にはステップSS3を実行するが、単純なパワーONダウンシフトの場合にはステップSS4を実行する。そして、ステップSS4では、タービン回転速度NTが変速後ギヤ段の同期回転速度ntdoki付近に達した時点で、係合側摩擦係合装置の油圧を徐々に増大させて係合させる。すなわち、単純なパワーONダウンシフトにおいては、解放側摩擦係合装置の油圧制御でタービン回転速度NTの上昇をコントロールできるため、係合側摩擦係合装置の油圧制御では、例えば一定のスウィープ率(勾配)で係合側油圧の油圧指令値を上昇させるだけでも良いのである。
これに対し、パワーOFF→ONに伴うパワーONダウンシフト時の終了時係合制御に関するステップSS3では、解放側摩擦係合装置が速やかに解放されることから、係合側摩擦係合装置の油圧制御でタービン回転速度NTの吹き上がりを防止しながら係合させる必要があり、本実施例では図6(b) に示すパワーOFF→ON時終了時スウィープ制御手段138によって、係合側摩擦係合装置の油圧のスウィープ制御が行われるようになっている。ダウンシフト終了時係合制御手段132は、パワーOFF→ON時終了時スウィープ制御手段138による油圧制御に関連して、速度判定手段134および係合終了判定手段136を備えており、係合終了判定手段136は、タービン回転速度NTが次式(1) の係合終了判定条件を所定時間継続して満足した場合に、係合側摩擦係合装置の係合が終了した旨の係合終了判定を行う。(1) 式のntdokiは変速後ギヤ段の同期回転速度で、Fはタービン回転速度センサ76の検出誤差等に基づいて定められた定数であり、(1) 式は実質的にタービン回転速度NTが同期回転速度ntdokiに保持されているか否かを判断するものである。そして、この係合終了判定が為されると、上記パワーOFF→ON時終了時スウィープ制御手段138による油圧制御に優先して係合側摩擦係合装置に対する油圧制御が終了させられ、図11、図13、図14における時間t5 に示すように、係合側油圧に関する油圧指令値2が最大値まで一気に上昇させられ、係合側摩擦係合装置が最大油圧(ライン圧PL1など)で係合させられる。
ntdoki+F≧NT≧ntdoki−F ・・・(1)
上記パワーOFF→ON時終了時スウィープ制御手段138は、係合側油圧制御手段に相当するもので、第1勾配α1で係合側油圧に関する油圧指令値(油圧指令値2)を増大させる第1スウィープ手段140、第2勾配α2で油圧指令値2を増大させる第2スウィープ手段142、第3勾配α3で油圧指令値2を増大させる第3スウィープ手段144を備えており、図10のフローチャートに従って信号処理を行う。図10のステップS11は第1スウィープ手段140に相当し、ステップS9は第2スウィープ手段142に相当し、ステップS7は第3スウィープ手段144に相当する。また、ステップS1は、前記速度判定手段134に相当する。
図10のステップS1では、パワーOFF→ON時終了時スウィープ制御を開始するか否か、すなわちタービン回転速度NTが変速後ギヤ段の同期回転速度ntdokiよりも所定値Xだけ高い第1判定速度(ntdoki+X)以上か否かを判断する。所定値Xは、タービン回転速度NTを同期回転速度ntdokiよりも高い状態から引き下げて同期させる変速態様か否かを判断するためのもので、例えばどのギヤ段からどのギヤ段への変速であるかを表す変速の種類、或いは係合側摩擦係合装置の種類等に応じて、所定の値が定められている。
そして、NT≧ntdoki+XであればステップS2以下のスウィープ制御を開始し、最初はステップS11が実行されることにより、係合側油圧の油圧指令値2が予め定められた第1勾配α1で増大させられる。第1勾配α1は、アクセルON操作によるエンジン10の出力増に伴って上昇しようとするタービン回転速度NTを係合側摩擦係合装置の係合により素早く引き下げることができるように、例えばどのギヤ段からどのギヤ段への変速であるかを表す変速の種類、或いは係合側摩擦係合装置の種類に応じて、比較的大きな勾配が定められている。入力トルク(スロットル弁開度THなど)やAT油温TOIL 等の他のパラメータを考慮して設定されるようにしても良い。図11の時間t2 、図13、図14の時間t3 は、それぞれステップS1の判断がYES(肯定)となり、係合側油圧に関する油圧指令値2のスウィープ制御が開始された時間であるが、図11の場合は、4→3ダウンシフト判断が為された段階(時間t2 )で既にNT≧ntdoki3+Xであるため、直ちにファーストフィル(急速充填)が行われ、そのファーストフィルに続いて所定のタイミングで第1勾配α1によるスウィープ制御が開始される。また、図13、図14の場合は、ファーストフィル後の定圧待機の状態であるため、ステップS1のYES判断(時間t3 )に伴って直ちに第1勾配α1でスウィープ制御が開始される。
ステップS2では、タービン回転速度NTの最大吹き量ΔNTmax が所定値Aより大きいか否かを判断し、ΔNTmax >Aの場合にはステップS3を実行する。すなわち、最大吹き量ΔNTmax が所定値A以下の場合は、変速後ギヤ段の同期回転速度ntdokiとの差が小さくて係合時のショックが小さいため、ステップS11を実行して前記第1勾配α1によるスウィープ制御を継続するのであり、所定値Aは、例えばどのギヤ段からどのギヤ段への変速であるかを表す変速の種類、或いは係合側摩擦係合装置の種類に応じて、前記所定値Xよりも大きい値が定められている。
ステップS3では、現在のタービン回転速度NTの吹き量ΔNTが最大吹き量ΔNTmax よりも小さいか否か、すなわちタービン回転速度NTが極大を経過して減少傾向となっているか否かを判断し、ΔNT<ΔNTmax の減少傾向であればステップS4を実行するが、ΔNT≧ΔNTmax の場合にはステップS11を実行して前記第1勾配α1によるスウィープ制御を継続する。
ステップS4では、同じく現在のタービン回転速度NTの吹き量ΔNTが所定値Bより小さいか否か、言い換えればタービン回転速度NTが変速後ギヤ段の同期回転速度ntdokiよりも所定値Bだけ高い第2判定速度(ntdoki+B)より低いか否かを判断し、NT<ntdoki+BであればステップS5を実行するが、NT≧ntdoki+Bの場合はステップS11を実行して前記第1勾配α1によるスウィープ制御を継続する。すなわち、係合側摩擦係合装置の係合でタービン回転速度NTが同期回転速度ntdoki付近まで低下したか否かを判断し、同期回転速度ntdoki付近まで低下するまでは、第1勾配α1で係合側油圧の油圧指令値2を増大させるのである。所定値Bは、少なくとも前記所定値Aより小さな値で、例えば前記所定値Xよりも小さく、且つ前記第1勾配α1よりも小さな第2勾配α2でスウィープ制御を実行するステップS9へ移行しても、タービン回転速度NTが同期回転速度ntdokiまで下降するように定められ、例えばどのギヤ段からどのギヤ段への変速であるかを表す変速の種類、或いは係合側摩擦係合装置の種類に応じて設定されている。なお、入力トルク(スロットル弁開度THなど)やAT油温TOIL 等の他のパラメータを考慮して設定されるようにしても良い。
また、ステップS11に続いて実行するステップS12では、摩擦係合装置の耐久性を保証したりするためにバックアップとして定められた所定の変速終了時判定が成立したか否かを判断し、変速終了時判定が成立した場合にはステップS13を実行するが、そうでなければステップS2以下を実行し、ステップS11が繰り返されることにより係合側油圧の油圧指令値2が第1勾配α1で増大させられる。上記変速終了時判定は、例えば変速開始(時間t2 )からの経過時間が所定時間以上で、且つタービン回転速度NTが同期回転速度ntdoki付近(例えばntdoki−所定値β)よりも高く、強制的な係合により負トルクを発生しないように定められており、何らかの異常でステップS12の判断がYESとなった場合には、ステップS13で、係合側摩擦係合装置の油圧指令値2を最大値まで一気に上昇させるとともに、前記エンジン10のトルクダウン制御等を終了させるなどの変速終了処理を実施する。ステップS8、ステップS10も、上記ステップS12と同じ処理を行う。
前記ステップS2、S3、およびS4の判断が何れもYES(肯定)の場合に実行するステップS5では、第2スウィープ制御開始からの時間が所定時間timeCを経過したか否かを判断するが、最初の実行時には第2スウィープ制御時間は0であるためステップS9を実行し、前記第1勾配α1よりも小さな第2勾配α2で係合側油圧の油圧指令値2を増大させるようにスウィープ制御の勾配を切り換える。図11の時間t3 、図13、図14の時間t4 は、ステップS2〜S4の判断が何れもYES(肯定)となり、係合側油圧に関する油圧指令値2の勾配が第2勾配α2に切り換えられた時間である。
上記ステップS9は、次のステップS10の判断がNO(否定)でステップS5以下が繰り返されることにより、第2勾配α2によるスウィープ制御時間が所定時間timeCに達してステップS5の判断がYESとなるまで継続され、これにより係合側油圧の油圧指令値2が第2勾配α2で増大させられる。所定時間timeCは、第2勾配α2による油圧指令値2の増大過程でタービン回転速度NTが同期回転速度ntdokiまで下降して係合が終了するように、油圧応答性や第2勾配α2等を考慮して、例えばどのギヤ段からどのギヤ段への変速であるかを表す変速の種類、或いは係合側摩擦係合装置の種類に応じて設定されている。また、第2勾配α2は、このように第2勾配α2による油圧指令値2の増大過程で係合が終了した時に大きな係合ショックが発生しないように、言い換えればタービン回転速度NTの変化が係合直前に緩やかになるように、例えばどのギヤ段からどのギヤ段への変速であるかを表す変速の種類、或いは係合側摩擦係合装置の種類に応じて、第1勾配α1よりも小さな値が定められている。なお、所定時間timeCおよび第2勾配α2が、入力トルク(スロットル弁開度THなど)やAT油温TOIL 等の他のパラメータを考慮して設定されるようにしても良い。
図11、図13、図14の時間t5 は、何れも係合側油圧の油圧指令値2が第2勾配α2で増大させられている過程でタービン回転速度NTが同期回転速度ntdoki3またはntdoki2まで下降し、前記係合終了判定手段136により正常に係合終了判定が為された時間である。これにより、油圧指令値2は最大値まで一気に増大させられ、変速時の油圧制御すなわち係合側摩擦係合装置に対する係合制御が終了させられる。
図10のステップS5〜S7は、何等かの異常や制御の誤差、ばらつきなどで係合側油圧の油圧指令値2が第2勾配α2で増大させられている過程で係合終了判定が為されなかった場合に、ステップS10の判断がYESになってステップS13が実行され、大きな係合ショックが発生することを防止するために設けられたものである。すなわち、第2勾配α2によるスウィープ制御が前記所定時間timeCを経過してステップS5の判断がYESになると、ステップS6を実行し、タービン回転速度NTが変速後ギヤ段の同期回転速度ntdokiよりも所定値Dだけ高い第3判定速度(ntdoki+D)より低いか否かを判断する。所定値Dは、係合側摩擦係合装置を素早く係合してもそれ程大きな係合ショックを発生しないように、例えばどのギヤ段からどのギヤ段への変速であるかを表す変速の種類、或いは係合側摩擦係合装置の種類等に応じて、前記所定値Bよりも小さな値が定められており、第3判定速度(ntdoki+D)は、同期回転速度ntdokiと第2判定速度(ntdoki+B)との間の値となる。
そして、第2勾配α2によるスウィープ制御が前記所定時間timeCを経過してステップS5の判断がYESになり、且つNT<(ntdoki+D)が成立してステップS6の判断がYESになった場合には、ステップS7を実行し、前記第2勾配α2よりも大きな第3勾配α3で係合側油圧の油圧指令値2を増大させるようにスウィープ制御の勾配を切り換える。この第3勾配α3は、例えばどのギヤ段からどのギヤ段への変速であるかを表す変速の種類、或いは係合側摩擦係合装置の種類に応じて、例えば第1勾配α1よりも小さく且つ第2勾配α2よりも大きい範囲で定められる。入力トルク(スロットル弁開度THなど)や油温TOIL 等の他のパラメータを考慮して設定されるようにしても良い。なお、前記所定時間timeCは、バックアップとして行われる前記変速終了時判定が為される前にステップS7の第3スウィープ制御が実施されるように、変速終了時判定の設定時間よりも十分に短い時間が設定される。
このように油圧指令値2の勾配が第2勾配α2よりも大きくされることにより、係合側摩擦係合装置が係合し易くなって変速が促進されるとともに、依然として第1勾配α1よりも小さく且つ同期回転速度ntdokiとの差も所定値D以下であるため、係合ショックを抑制しつつより確実に係合側摩擦係合装置が係合させられるようになる。
図12は、図11における第2変速(パワーON4→3ダウンシフト)の終了時付近の拡大図で、実線は油圧指令値2が第2勾配α2で増大させられている過程で正常に係合が終了させられた場合であるが、一点鎖線で示すグラフは、タービン回転速度NTの低下が緩やか過ぎてステップS5およびS6の判断が共にYESになり、ステップS7が実行された場合である。図12の時間t6 は、ステップS6、S7の判断が共にYESとなり、係合側油圧に関する油圧指令値2の勾配が第3勾配α3に切り換えられた時間であり、時間t7 は、係合側油圧の油圧指令値2が第3勾配α3で増大させられている過程でタービン回転速度NTが同期回転速度ntdoki3まで下降し、前記係合終了判定手段136により係合終了判定が為されて油圧指令値2が最大値まで一気に増大させられ、一連の係合制御が終了させられた時間である。図13、図14の実施例においても、何等かの異常や誤差、ばらつきなどにより係合側油圧の油圧指令値2が第2勾配α2で増大させられている過程で係合終了判定手段136による係合終了判定が為されなかった場合には、ステップS5、S6に続いてステップS7が実行されることにより、同様の処理が行われる。
なお、図12において破線で示すグラフは、通常のパワーONダウンシフトの際の終了時スウィープ制御(ステップSS4)と同様に、一定の勾配(ここでは第1勾配α1)で係合側油圧の油圧指令値2をスウィープ制御した場合で、タービン回転速度NTは速やかに同期回転速度ntdoki3まで下降させられるものの、係合時におけるタービン回転速度NTの変化傾向の急な変化で大きな係合ショックが発生することが避けられない。
このように、本実施例の自動変速機の油圧制御装置においては、パワーOFF→ONダウンシフトで係合側摩擦係合装置を係合させる際に、その油圧指令値2を第1勾配α1で徐々に増大させることにより、係合側摩擦係合装置の係合でタービン回転速度NTを引き下げるとともに、そのタービン回転速度NTが同期回転速度ntdokiに近い第2判定速度(ntdoki+B)まで低下したら、その油圧指令値2の勾配を第1勾配α1よりも小さい第2勾配α2に切り換える。そして、通常はその第2勾配α2による油圧指令値2の増大過程でタービン回転速度NTが同期回転速度ntdokiまで引き下げられ、係合終了判定手段136により係合終了判定が為されて油圧制御が終了させられるが、その係合終了時の油圧指令値2の勾配は小さな第2勾配α2であるため、タービン回転速度NTの変化が緩やかになって係合ショックが緩和される。したがって、比較的大きな勾配の第1勾配α1による油圧指令値2の増大により、タービン回転速度NTを素早く引き下げて変速を速やかに進行させつつ、係合終了の直前に小さな勾配の第2勾配α2に切り換えられることにより、係合時のタービン回転速度NTの変化による係合ショックが抑制される。
一方、上記第2勾配α2による油圧指令値2の増大を所定時間timeCだけ継続しても、係合終了判定手段136により係合終了判定が為されない場合には、パワーOFF→ON時終了時スウィープ制御手段138による油圧制御が続行され、第2勾配α2よりも大きい第3勾配α3で油圧指令値2が増大させられるため、何等かの異常や制御の誤差、ばらつきなどで第2勾配α2による油圧指令値2の増大過程で変速が終了しなかった場合でも、大きな勾配の第3勾配α3による油圧指令値2の増大過程で摩擦係合装置がより確実に係合させられるようになり、タービン回転速度NTが同期回転速度ntdokiまで引き下げられて変速が終了させられる。これにより、緩やかな第2勾配α2のままで油圧制御が行われることにより、何時まで経っても係合が終了せずに、耐久性の確保等を目的として設けられた例えばステップS10等で係合終了時判定が成立し、ステップS13で係合側油圧の油圧指令値2が最大値まで一気に上昇させられることにより急係合で大きな係合ショックが発生する、という問題を回避できる。
また、本実施例では第2勾配α2による油圧指令値2の増大が所定時間timeCに亘って行われ、且つタービン回転速度NTが第2判定速度(ntdoki+B)よりも低い第3判定速度(ntdoki+D)を下回ったと判定されたときに、油圧指令値2の勾配を第2勾配α2から第3勾配α3に切り換えるため、係合ショックをより好適に抑制しつつ係合終了を保証できる。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
14:自動変速機 32:入力軸 90:電子制御装置 134:速度判定手段 136:係合終了判定手段 138:パワーOFF→ON時終了時スウィープ制御手段(係合側油圧制御手段) C1、C2:クラッチ(摩擦係合装置) B1〜B3:ブレーキ(摩擦係合装置) NT:タービン回転速度(入力軸回転速度) α1:第1勾配 α2:第2勾配 α3:第3勾配 ntdoki2、ntdoki3:変速後ギヤ段の同期回転速度 ntdoki2+X、ntdoki3+X:第1判定速度 ntdoki2+B、ntdoki3+B:第2判定速度 ntdoki3+D:第3判定速度 timeC:所定時間