JP2009097050A - 電子部品用Snめっき材 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】コネクタや端子等の各種電子部品の要求特性に従って適宜選択された銅又は銅合金の表面に、Ni、Cu、Snをこの順に電気めっきした後、リフロー処理を行い、Ni相、Cu−Sn合金相及びSn相からなる各めっき相をこの順に形成させたSnめっき材であって、Niめっき相中の酸素濃度が0.3〜1.5質量%であるSnめっき材。
【選択図】図1
Description
Sn相を薄くすると、Sn相消失による経時劣化が早期に進行する。すなわち、単にSn相を薄くするだけでは、挿入力が低減する反面、耐熱性が劣化する。したがって、Sn相を薄くする場合には、Snめっき材の耐熱性を改善する技術が必要になる。
Snめっき材の耐熱性を改善する技術として、下地めっきによりSn中へのCu等の拡散を防止する技術が検討されている。例えば、特許文献2では、Cu/Niのニ層下地めっきを施した後にリフローSnめっきを施す技術が開示されている。この技術によればSn/Cu−Sn/Ni/銅合金母材の構造となる。Ni相により母材CuのSn相中への拡散が抑制され、またCu−Sn合金相の存在によりNiのSn相中に拡散が抑制されるため、Sn相の消失が遅れ、耐熱性が向上する。また、特許文献3では母材とめっき層との界面におけるO濃度に着目しており、O濃度が1質量%を超えると、耐熱剥離性が低下するため、O濃度を1質量%以下とすべきことが記載されている。
しかし、自動車エンジン回り等を想定した180℃近傍の高温環境下では、Ni相は母材CuのSn相中への拡散を抑制できず、耐熱性が劣化する。
このように、高温環境下ではCu/Ni二層下地めっきを施す技術でも、まだ充分な耐熱性は得られず、更なる改善が課題である。
なお、特許文献2では、耐熱性改善効果が検証された試験温度は160℃であり、このときの試験時間は1000hである。
そして、良好な耐熱性を得るためには、少なくとも0.3質量%の酸素がNi相中に必要であることを見出した。従来のCu/Ni二層下地めっきリフローSnめっき材に対する耐熱性改善技術は、母材とめっき層との境界面におけるO濃度を可能な限り少なく制御し(1質量%以下)、めっき剥離性を改善する等(特許文献3等)、母材表面の酸化物に着目したものであった。Ni相中のO濃度に着目し、そのO濃度を適度に制御することにより高温環境下における接触抵抗の経時劣化を改善する技術は、本発明者の知る限り未だ存在しない。
(1)銅又は銅合金の表面にNi相、Cu相、Cu−Sn合金相及びSn相の各めっき相がこの順に形成されているSnめっき材であって、Ni相の平均厚みが0.1〜1.0μm、Cu相の平均厚みが0〜0.2μm、Cu−Sn合金相の平均厚みが0.1〜1.5μm、Sn相の平均厚みが0.1〜1.5μmであり、Ni相中の酸素濃度が0.3〜1.5質量%であるSnめっき材。
(2)銅又は銅合金の表面にNi相、Cu相、Cu−Sn合金相及びSn相の各めっき相がこの順に形成されているSnめっき材であって、Ni相の平均厚みが0.1〜1.0μm、Cu相の平均厚みが0〜0.2μm、Cu−Sn合金相の平均厚みが0.1〜1.5μm、Sn相の平均厚みが0.1〜0.8μmであり、Niめっき相中の酸素濃度が0.3〜1.5質量%であるSnめっき材。
(3)Ni相中の酸素濃度が0.5〜1.2質量%である(1)又は(2)のSnめっき材。
(4)Cu相の厚みが0である(1)〜(3)何れかのSnめっき材。
(5)(1)〜(4)何れかのSnめっき材を用いた電子部品。
本発明に使用することのできる銅又は銅合金母材は、特に制限はなく、公知の任意の銅又は銅合金母材を使用することができる。例えば、銅合金としては黄銅、りん青銅、ベリリウム銅、洋白、丹銅、チタン銅及びコルソン合金などが挙げられ、端子やコネクタ等の各種電子部品の要求特性に従い、適宜選択でき、何等制限されない。
銅又は銅合金母材の表面にはNi相からなるめっき層が形成される。本発明においては、「Ni相」にはNi単独相のほか、例えばNi−Pd合金、Ni−P合金、Ni−Co合金、Ni−Sn合金のようなニッケル合金相も含まれる。これらの中でも製造が容易である、コストが低い等の理由から特にNi単独相が好ましい。Ni相のめっき層は例えば電気ニッケルめっきや無電解ニッケルめっきのような湿式めっき、或いはCVDやPDVのような乾式めっきにより得ることができる。コストの観点から電気めっきが好ましい。
リフロー処理後のNi相の厚みは0.1〜1.0μm、好ましくは0.1〜0.8μmとする。本発明のSnめっき材の場合、0.3〜1.5質量%のOを含んだNi相は母材CuのSn相への拡散を抑制する。しかし、Ni相の厚みが0.1μm未満では、加熱したときの母材成分の拡散を抑制できず、接触抵抗が増大する。一方、リフロー後のNi相の厚みが1.0μmを超えると曲げ加工で割れ発生の原因となる。
リフロー処理後のCu−Sn合金相の厚みは0.1〜1.5μm、好ましくは0.3〜1.2μmとする。Cu−Sn合金相は硬質なため、0.1μm以上の厚さで存在すると、挿入力の低減に寄与する。一方、Cu−Sn合金相の厚さが1.5μmを超えると、曲げ加工で割れ発生の原因となる。
このような厚みのCu−Sn合金相を得るには、リフロー処理前のCu相の厚さを0.1〜0.8μm、好ましくは0.1〜0.6μmとするのがよい。Cu相の厚さが0.1μm未満だと得られるCu−Sn相の厚みが不充分となり、逆にCu相の厚さが0.8μmを超えるとCu−Sn相が厚くなり過ぎてしまうか、リフロー処理後にもCu相が残存しやすくなる。
従って、Cu相としてCu合金相を採用した場合や、後述するようにSn相としてSn合金相を採用した場合には、Cu−Sn相にはCu及びSn以外の元素が含まれることもあり、本発明においては、そのような場合でも「Cu−Sn相」と呼ぶこととする。
リフロー処理後のSn相の厚みは0.1〜1.5μmとする。厚みが0.1μm未満となると高温環境下における半田濡れ性や接触抵抗の劣化が著しく促進され、1.5μmを超えると、挿入力が顕著に増大する。リフロー処理後にSn相の厚みを上記の範囲にするためには、リフロー処理前のSn相の厚さを0.4〜2.0μm、好ましくは0.6〜1.5μmとするのがよい。リフロー処理前のSn相の厚さが0.4μm未満だと、リフロー処理によってSnがCu相へ拡散して消費されるため、リフロー処理後に必要な厚さのSn相が残存しなくなる。また、厚さが2.0μmを超えるとリフロー処理後にも必要以上に厚いSn相が残存することになる。
例えば、Niの電気めっきでは、Niイオンを含む溶液中で、被めっき材を陰極として通電することにより、被めっき材表面にNiを還元析出させる。その際、Ni相中に含まれる酸素濃度は例えば以下のパラメータによって制御可能である。
(1)浴温度
(2)電流密度
(3)界面活性剤の量
(4)攪拌速度
Ni相中のO濃度を高くするためには、めっき浴の温度を高くする、電流密度を小さくする、界面活性剤の量を少なくする若しくは加えない、攪拌速度を下げることが効果的である。めっき浴の温度を高温にすると、Ni電着粒の酸化が進み、Ni相中のO濃度が高くなる。また、電流密度を小さくする、界面活性剤の量を少なくする若しくは加えない、攪拌速度を下げると、Ni電着粒は粗大化する。その結果、Ni相中に占めるピンホールが大きくなり、そこへ酸素が蓄積され、Ni相中のO濃度が高くなる。一方、Ni相中のO濃度を低くするには、上記と逆の操作を行えばよい。
(手順1)アルカリ水溶液中で試料をカソードとして、電解脱脂を行った。
(手順2)10質量%硫酸水溶液を用いて酸洗した。
(手順3)表2及び表5に示した条件でNiめっきを施した。条件を変え、O濃度を変化させた。Ni相厚みは、電着時間により調整した。
(手順4)表3及び表5に示した条件でCuめっきを施した。Cu相厚みは、電着時間により調整した。
(手順5)表4及び表5に示した条件でSnめっきを施した。Sn相厚みは、電着時間により調整した。
(手順6)リフロー処理は500℃で5〜10秒加熱後、60℃の水中に投入した。リフロー後の各相の厚み及びNi相中のO濃度を表5に示す。
なお、手順3、4および5は、容量1000ml、直径110mm×高さ150mmの円柱型のビーカーをめっき浴として用い、そのめっき浴に1000mlのめっき溶液を投入した。攪拌には直径4mm×高さ40mmの円柱型の攪拌子を用いた。
(1)酸素濃度
試料をアセトン中で超音波脱脂した後、表面からのGDS(グロー放電発光分光分析装置)分析により、Ni、Oの深さ方向の濃度プロファイルを求めた。
・装置:JOBIN YBON社製JY5000RF−PSS型
・Current Method Program:CNBinteel−12aa−0
・Mode:設定電力=40W
・気圧:775Pa
・電流値:40mA(700V)
・フラッシュ時間:20s
・予備加熱(Preburn)時間:2s
・測定時間:分析時間=30s、サンプリング時間=0.020s/point
濃度プロファイルデータより、Ni相中のO濃度を求めた。
GDSによる濃度プロファイルデータの代表的なものを図1、2に示す。これらの図は後述する発明例1のデータである。
図1では約2.2〜約2.6μmの深さにおいて、Ni濃度がピーク値の50質量%以上であることがわかる。図2より、この深さの範囲においては、深さ2.4μmのところにO濃度のピークが認められ、ピークにおけるO濃度は1.1質量%であった。従って、Ni相中の酸素濃度は1.1質量%とした。
なお、O濃度は試料のエッジから10mmを除いた任意の1点から測定したものである。
Sn相、Cu−Sn合金相、Ni相の各層の厚みを求めた。Cu−Sn合金相の断面形状はドーム状であるため、Sn相およびCu−Sn合金相の厚みを断面観察により求めると、測定箇所によって、その値が大きく異なる。そのため、Sn相およびCu−Sn合金相の厚みは電解式膜厚計(電測社製、CT−1)により求めた。測定値は試料のエッジから10mmを除いた部分から、任意の5点を測定し、それらの平均値である。
一方、Ni相の厚みは、適当な電解溶液がなかったため、断面からのSEM観察により求めた。試料のエッジから10mmを除いた部分から幅10mm×長さ20mmに切り出し、そのめっき断面を機械研磨により、鏡面に仕上げ、PHILIPS社製SEM(XL30)により20000倍で観察した。観察面よりNi相の厚みを測定した。測定値は観察面中の任意の5点を測定し、それらの平均値である。なお、断面観察から、Cu相はほとんど消失し、残存しても0.1μm以下の厚さで島状に点在している程度だった。
耐熱性の評価にとして、加熱後の接触抵抗とめっき剥離性を評価した。接触抵抗は、180℃で1000h加熱した試料に対し、山崎精機研究所製電気接点シミュレータCRS−113−Au型を用い、四端子法により、電圧200mV、電流10mA、摺動荷重0.49Nで測定した。
めっき剥離性は、幅10mmの短冊試験片を採取し、180℃で、大気中1000hまで加熱した。その間、50h毎に試料を加熱炉から取り出し、圧延平行方向に曲げ半径/板厚が1となるように90°曲げた後、曲げ戻し、曲げ内周部にテープ(住友3M社製、メッキ用マスキングテープ、#851A)を貼り付けた後、引き剥がし、光学顕微鏡(倍率50倍)でめっき剥離の有無を観察した。
銅合金の種類によらず、発明例8および9を除く発明例のNiめっき中の酸素濃度は、0.5〜1.2%の範囲を満たし、それらは加熱後の接触抵抗は小さく、1000h加熱してもめっき剥離は発生しなかった。つまり、良好な耐熱性が得られた。発明例8は電流密度が低かったため、発明例9は電流密度が高かったため、Ni相中のO濃度はわずかに0.5%〜1.2%の範囲から外れた。しかし、両者ともNi相中のO濃度は、0.3〜1.5%の範囲を満たしており、発明例8のめっき剥離は非常に軽微で、発明例9の接触抵抗は他の発明例よりわずかに高い程度であり、実用上問題はなく、良好な耐熱性が得られた。一方、比較例1はめっき浴の液温が低く、電流密度が高かったため、比較例2は界面活性剤の量が多く、攪拌速度が速かったため、Ni相中の酸素濃度が0.3%未満となり、接触抵抗が高かった。反対に、比較例3はめっき浴の液温が高く、電流密度が小さく、攪拌速度が遅かったため、Ni相中の酸素濃度が1.5%を超え、顕著なめっき剥離が早期に発生した。
次に、めっき各相の厚みが特性に及ぼす影響を説明する。比較例4はリフロー前のSn相の厚さが薄かったため、リフロー後のSn相の厚みが0.1μm未満となり、比較例5はリフロー前のCu相の厚みが厚かったため、Cu−Sn合金相の厚みが1.5μmを超え、比較例6はリフロー前のNi相の厚みが薄かったため、Ni相の厚みが0.1μm未満となり何れも接触抵抗が高くなった。
Claims (5)
- 銅又は銅合金の表面にNi相、Cu相、Cu−Sn合金相及びSn相の各めっき相がこの順に形成されているSnめっき材であって、Ni相の平均厚みが0.1〜1.0μm、Cu相の平均厚みが0〜0.2μm、Cu−Sn合金相の平均厚みが0.1〜1.5μm、Sn相の平均厚みが0.1〜1.5μmであり、Niめっき相中の酸素濃度が0.3〜1.5質量%であるSnめっき材。
- 銅又は銅合金の表面にNi相、Cu相、Cu−Sn合金相及びSn相の各めっき相がこの順に形成されているSnめっき材であって、Ni相の平均厚みが0.1〜1.0μm、Cu相の平均厚みが0〜0.2μm、Cu−Sn合金相の平均厚みが0.1〜1.5μm、Sn相の平均厚みが0.1〜0.8μmであり、Niめっき相中の酸素濃度が0.3〜1.5質量%であるSnめっき材。
- Niめっき相中の酸素濃度が0.5〜1.2質量%である請求項1又は2記載のSnめっき材。
- Cu相の厚みが0である請求項1〜3何れか一項記載のSnめっき材。
- 請求項1〜4何れか一項記載のSnめっき材を用いた電子部品。
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