JP7060514B2 - 導電性条材 - Google Patents
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Description
このように、特許文献1では、接続用端子の長期にわたる接触信頼性を維持する方法として、Cu-Sn合金中間層を拡散バリア層として用いている。Cu-Sn合金中間層の種類は規定されているが、表面に形成される酸化物膜(Cu2O膜)の規定及びその制御については記載されていない。特許文献1では、Sn層/Cu-Sn層/Ni層の構成及びそれらの厚さを規定しているが、酸化物の内、Cu2O膜が表面近傍に存在しないことを規定している。
(1)CuまたはCu合金からなる導電性基材の上に、NiまたはNi合金からなる層、Cuを主成分とする層、CuおよびSnからなる合金層をこの順に有する導電性条材であって、
前記NiまたはNi合金からなる層の厚さが0.1~2.0μm、前記Cuを主成分とする層の厚さが0.01~0.1μm、前記CuおよびSnからなる合金層の厚さが0.1~2.0μmであって、
表面粗さRaが0.05~1.0μmであり、表面に形成される酸化物膜中にCuの酸化物およびSnの酸化物が含まれ、酸化物膜の厚さが50nm以下であり、Snの酸化物の割合(%)が90%以上であり、かつ、この導電性条材を温度140℃で120時間の条件で大気中において加熱した後の接触抵抗が、Agプローブを介した荷重1Nの条件下で10mΩ以下であることを特徴とする導電性条材。
(2)前記NiまたはNi合金からなる層の厚さが0.2~1.0μm、前記Cuを主成分とする層の厚さが0.01~0.05μm、前記CuおよびSnからなる合金層の厚さが0.4~1.5μmである(1)項に記載の導電性条材。
(3)前記表面に形成される酸化物膜中に銅の酸化物がCuOまたはCu2Oからなり、Snの酸化物がSnOまたはSnO2からなる(1)又は(2)項に記載の導電性条材。
(4)前記導電性条材の表面の動摩擦係数が、0.30以下である(1)~(3)のいずれか1項に記載の導電性条材。
ここで、「ワイピング」とは、接点部が摺動することにより、表面の汚れや酸化物膜が取り除かれ、新生面が生じる現象をいう。
本発明の上記及び他の特徴及び利点は、適宜添付の図面を参照して、下記の記載からより明らかになるであろう。
導電性基材(1)の形状には特に制限は無く、例えば板、条、箔、線などがある。以下では実施形態として板材、条材について説明するが、その形状はこれらに限定されるものではない。CuまたはCu合金の種類は特に限定されるものではなく、使用する用途の強度、導電率等の要求に応じて、適宜選択すれば良い。
導電性基材(1)に用いることができる銅合金の一例として、CDA(Copper Development Association)掲載合金である「C14410(Cu-0.15Sn、古河電気工業(株)製、商品名:EFTEC3)」、「C19400(Cu-Fe系合金材料、Cu-2.3Fe-0.03P-0.15Zn)」、「C18045(Cu-0.3Cr-0.25Sn-0.5Zn、古河電気工業(株)製、商品名:EFTEC64T)」、「C64770(コルソン系合金(Cu-Ni-Si系合金)材料、古河電気工業(株)製、商品名:EFTEC-97)」、「C64775(コルソン系合金材料、古河電気工業(株)製、商品名:EFTEC-820)」等を用いることができる。(なお、前記銅合金の各元素の前の数字の単位は銅合金中の質量%を示す。)また、TPC(タフピッチ銅)やOFC(無酸素銅)、りん青銅、黄銅(例えば、70質量%Cu-30質量%Zn。7/3黄銅と略記する。)等も用いることができる。導電性や放熱性を向上させるという観点からは、導電率が10%IACS以上の銅合金の条材とすることが好ましい。なお、銅合金を導電性基材(1)として取り扱う時での本発明の「基材成分」とは、基金属である銅のことを示すものとする。導電性基材(1)の厚さには特に制限はないが、通常、0.05~2.00mmであり、好ましくは、0.1~1.2mmである。
また、SnまたはSn合金からなる層(5)が残存する場合、海島状に存在することが好ましい。(図2(a)および2(b)参照。)
NiまたはNi合金は、一般的な方法でめっきすれば良い。めっき浴としては、例えばスルファミン浴やワット浴、硫酸浴等を使用できる。めっき条件は、浴温20~60℃、電流密度1~20A/dm2でめっきすればよい。
CuまたはCu合金は、次のような方法でめっきすれば良い。具体的には、浴温を30~60℃程度、電流密度を6~30A/dm2程度の範囲で制御する。撹拌強度は例えば、撹拌速度を300~1000rpmの範囲に調整すればよい。めっき浴としては、例えば硫酸浴やシアン浴を使用できる。
SnまたはSn合金は、一般的な方法でめっきすれば良い。めっき浴としては、例えば硫酸浴等を使用できる。めっき条件は、浴温10~40℃、電流密度1~30A/dm2でめっきすればよい。
上記3つの層を形成した後のリフロー処理は、一般的な方法で実施できる。例えば400~800℃に設定した炉内に材料を通過させ、5~20秒間加熱した後、冷却すればよい。リフロー処理により、CuまたはCu合金めっきとSnまたはSn合金めっきが反応し、CuおよびSnからなる合金層(4)が形成される。
なお、SnまたはSn合金からなる層(5)が厚い場合は残るが、海島状のようなまだらになる。ただし、SnまたはSn合金からなる層(5)が厚すぎると、摩擦係数が下がらないため、残る場合は上記海島状になる。
まず、導電性条材(10)を、塩化カリウムを含む導電性液体に浸漬し、既定の面積(ここでは1cm2)、一定電流(ここでは10mA)を流すカソード還元法によって表面を還元させ、その時の還元電位および電流値から酸化物膜の厚さを計算にて求める。
また、酸化物組成に関しては、XPS(X線光電子分光法)を用いて、表面の酸化物膜を同定し、Sn酸化物の割合(%)を求める。
さらに、本発明の導電性条材(10)を温度140℃で120時間の条件で大気中において加熱した後の接触抵抗が、Agプローブを介した荷重1Nの条件下で10mΩ以下である。
本実施形態の導電性基材(10)は、特に高温下での耐熱性(電気接続性)に優れ、かつ、挿入力が小さいものである。このため本発明の導電性基材(10)は、小型端子、高圧大電流端子等の車載部品の他、端子、コネクタ、リードフレームなどの電気電子部品に好適である。
このような条件で、後述の表2に示す通り、本発明の範囲に入る例として、層厚構成の異なる発明例1~9の導電性条材(10)を作成した。
また比較例として、本発明の規定から外れている導電性条材も作製した(比較例1~9)。
脱脂液:NaOH 60g/リットル
脱脂条件:2.5A/dm2、温度60℃、脱脂時間60秒
酸洗液:10%硫酸
酸洗条件:30秒、浸漬、室温
JIS H 8501の10に記載された定電流溶解法により、導電性条材の各層の平均層厚を測定した。
導電性条材(10)の表面粗さRaは、JIS B 0601:2001に従って測定し、求めた。
塩化カリウムを含む導電性液体に浸漬し、既定の面積(ここでは1cm2)、一定電流(ここでは10mA)を流すカソード還元法によって表面を還元させ、その時の還元電位および電流値から酸化物膜の厚さを計算にて求めた。また、酸化物組成に関しては、XPS(X線光電子分光法)を用いて、表面の酸化物膜を同定し、Sn酸化物の割合(%)を求めた。
高温下での耐熱性として、140℃、120時間の条件で大気中において加熱後の接触抵抗は、定電流測定法(4端子法)にて測定した抵抗値から算出し、Agプローブを介した荷重1Nの条件下で10mΩ以下であることを優れている(○)と判断とした。一方、この接触抵抗が10mΩよりも大きかった場合を劣る(×)と判断した。
動摩擦係数は、バウデン試験機を用いて、押し付け荷重3N、プローブはSnめっきとし、0.5R張出として測定した。動摩擦係数が0.30以下である試験例を○(良)、動摩擦係数が0.30より大きい場合の試験例を×(劣)と評価した。
ここで、この動摩擦係数が0.30以下であるとは、挿入力が低いことを意味する。
ここで表2中、「リフロー後の層厚(μm)」と記載した欄には、各層の層厚(μm)を示した。この内、「Ni」と記載した欄はNiまたはNi合金からなる層(2)の厚さを示し、「Cu」と記載した欄はCuを主成分とする層(3)の厚さを示し、「CuSn」と記載した欄はCuおよびSnからなる合金層(4)の厚さを示し、「Sn」と記載した欄は表面に海島状に残存したSnまたはSn合金からなる層(5)の厚さを、それぞれ示す。
実施例8~9は、SnまたはSn合金からなる層が海島状に存在しており、その存在比が、全表面に対する面積比で25%未満であった。一方、比較例6~7は、これを満たさずに大きかった。
これに対し、比較例1は、Sn酸化物の割合が低すぎたため、高温下での耐熱性が劣った。比較例2では、Cu系酸化物の割合が多く、高温下での耐熱性が劣るとともに、接触抵抗が悪化してしまった。比較例4では、Cu下地が残存せずめっき密着性が劣る結果(上記表には示していない。)となった。比較例5では、Cu下地が厚すぎ、Cu系酸化物の割合が大きく、接触抵抗が悪化してしまった。比較例6では残存するSn層が厚く、高温下での耐熱性が劣るとともに、動摩擦係数が高くなりすぎた。比較例7ではSn層が厚いとともにCu下地が残存せず、動摩擦係数が高くなるとともに密着性が悪化(上記表には示していない。)した。比較例8では表面粗さ(Ra、μm)が粗く、高温下での耐熱性が劣るとともに、形成される銅系酸化物の割合が高くなって接触抵抗が悪化してしまった。比較例9は、Ni皮膜が存在せず、また、酸化物膜厚が厚かったため、高温下での耐熱性と動摩擦係数が両方とも劣った。
以上から、本発明の条件を満たす導電性条材が優れた特性を示すことが確認された。
2 NiまたはNi合金からなる層
3 Cuを主成分とする層
4 CuおよびSnからなる合金層
5 SnまたはSn合金からなる層(表面層)
10 導電性条材
11 表面の酸化物膜
Claims (4)
- CuまたはCu合金からなる導電性基材の上に、NiまたはNi合金からなる層、Cuを主成分とする層、CuおよびSnからなる合金層をこの順に有する導電性条材であって、
前記導電性条材の表面が前記CuおよびSnからなる合金層を海部とし、SnまたはSn合金からなる層を島部とする海島状であり、前記表面の面積に占める前記島部の面積の割合が25%未満であり、
前記Cuを主成分とする層は75質量%以上がCuで構成され、前記CuおよびSnからなる合金層は50質量%以上がCu3SnおよびCu6Sn5で構成され、
前記NiまたはNi合金からなる層の厚さが0.1~2.0μm、前記Cuを主成分とする層の厚さが0.01~0.1μm、前記CuおよびSnからなる合金層の厚さが0.1~2.0μm、前記SnまたはSn合金からなる層の厚さが0μmを超え0.05μm未満であり、
前記導電性条材は、表面粗さRaが0.05~1.0μmであり、表面に形成される酸化物膜中にCuの酸化物およびSnの酸化物が含まれ、酸化物膜の厚さが50nm以下であり、Snの酸化物の割合(%)が94~96%であり、かつ、この導電性条材を温度140℃で120時間の条件で大気中において加熱した後の接触抵抗が、Agプローブを介した荷重1Nの条件下で10mΩ以下であり、前記導電性条材の表面の動摩擦係数が0.30以下であることを特徴とする導電性条材。 - 前記NiまたはNi合金からなる層の厚さが0.2~1.0μm、前記Cuを主成分とする層の厚さが0.01~0.05μm、前記CuおよびSnからなる合金層の厚さが0.4~1.5μmである請求項1に記載の導電性条材。
- 前記表面に形成される酸化物膜中に銅の酸化物がCuOまたはCu2Oからなり、Snの酸化物がSnOまたはSnO2からなる請求項1または2に記載の導電性条材。
- 前記酸化物膜の厚さが4~6.5nmである、請求項1~3のいずれか1項に記載の導電性条材。
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