JP2009096091A - 容器材料用ラミネート鋼板 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】表面処理鋼板の少なくとも片面に、厚さ15〜200μmのプロピレン−エチレン共重合体を、更にその上層に、1〜5μmのポリプロピレン樹脂層を有する。前記プロピレン−エチレン共重合体は、エチレン成分とプロピレン成分の合計を100mol%とした場合、エチレン成分が3〜30mol%である。また、プロピレン−エチレン共重合体は、ポリプロピレンを母相とし、エチレン−プロピレンラバーをコンパウンドしたものを用いることもできる。さらに、プロピレン−エチレン共重合体の下層に接着層を有することも可能である。
【選択図】なし
Description
ポリプロピレン樹脂は、オレフィン樹脂としては耐熱性に優れているが、曲げ加工が加わる場合、その曲げの頂点近傍でクラックが生じる場合がある。このクラックは、非常に微細なものもあり、加工時点では検知されなくても、内容物を充填後、問題となるケースがある。例えば、長時間界面活性剤等の浸透性の高い内容物に接している場合などであり、微小なクラック部に液が浸透し、下地を腐食してしまうため、長期間の保管に耐えられないという欠点がある。従来、ポリプロピレン樹脂の耐加工クラック性を改善する方法として、樹脂ラミネート後の冷却速度の調整により結晶化度を最適化する方法が提案されている。しかし、本発明者らが検討したところによれば、ポリプロピレン樹脂は結晶化速度が早いため、ラミネート鋼板の外面に塗装印刷を施す用途においては、塗装印刷の加熱により結晶化が進行し、上記方法による十分な効果を得ることは難しいことが判った。
[1]表面処理鋼板の少なくとも片面に、厚さ15〜200μmのプロピレン−エチレン共重合体を、更にその上層に、1〜5μmのポリプロピレン樹脂層を有し、前記プロピレン−エチレン共重合体は、エチレン成分とプロピレン成分の合計を100mol%とした場合、エチレン成分が3〜30mol%であることを特徴とする容器材料用ラミネート鋼板。
[2]前記[1]において、前記プロピレン−エチレン共重合体は、ポリプロピレンを母相とし、エチレン−プロピレンラバーをコンパウンドしたものであることを特徴とする容器材料用ラミネート鋼板。
[3]前記[1]または[2]のいずれかにおいて、前記プロピレン−エチレン共重合体の下層に接着層を有することを特徴とする容器材料用ラミネート鋼板。
そして、本発明のラミネート鋼板は上記のような特性を有するため、18L缶やペール缶等のような大型缶をはじめとする一般缶用途の缶胴部や蓋部に好適である。
電解クロメートを施す鋼板としては、通常この種の表面処理鋼板に用いられる鋼板であれば使用することができ、例えば、板厚0.1〜0.5mmの通常の低炭素冷延鋼板、低炭素Alキルド鋼板等が用いられ、これらの鋼板上に電解クロメート処理により、下から金属クロム層、その上にクロム水和酸化物を形成させる。金属クロム層のクロム付着量は、片面あたり40〜200mg/m2が良い。付着量が40mg/m2未満の場合、衝撃を与えた際に表面処理層による被覆が損なわれ、腐食が進行しやすいため耐食性が低下する場合がある。付着量が200mg/m2を超えても性能上全く問題はないが、経済的観点から好ましくない。より好ましい範囲は80〜150mg/m2である。また、クロム水和酸化物層の付着量は、片面あたり金属クロム換算で3〜25mg/m2が良い。付着量が3mg/m2未満では金属クロム層がクロム酸化物によって均一に覆われず金属クロム層の露出面積が大となり、樹脂層との密着力が損なわれ、樹脂層に疵がついた場合、腐食が進行しやすく耐食性が低下するため好ましくない。また、25mg/m2を超えるとクロム酸化物層が厚すぎることによってTFSの表面色調が劣化するので好ましくない。
本発明の表面処理鋼板の少なくとも片面には、プロピレン−エチレン共重合体、を有する。そして、エチレン成分とプロピレン成分の合計を100mol%とした際に、エチレン成分が3〜30mol%とする。プロピレンとエチレンの共重合体系を選択した理由としては、前述した通り、耐熱性と耐加工後耐食性を両立させるためである。
また、エチレン成分の下限を3mol%以上と定めたのは、エチレン成分がこれより少なくなると、加工後耐食性が悪化するためであり、上限を30mol%以下と定めたのは、エチレン成分がこれ以上増加した場合、耐熱性が劣化するためである。
厚さの下限は、製造コストが高くなること、上層のポリプロピレン層の高速変形性の緩和が困難となり、トータルとして、加工後耐食性が劣化することによる。厚さの上限は、これ以上、膜厚を厚くしても、容器材料的特性は上昇しないにも関わらず、製造コストが高くなるためである。
前述したとおり、最表層には、ロール等に皮膜成分が堆積する問題を解決する目的で、ポリプロピレン樹脂層を有することとする。そして、前述した通り、製造コスト、下層のポリプロピレン層の高速変形性の緩和等との関係から、厚さは1〜5μmとする。厚さの上限は加工後耐食性を阻害しない厚みであり、厚さの下限は、工業的に精度良く製膜できる下限厚さである。
本発明では、プロピレン−エチレン共重合体の下層に接着層を有することも可能である。接着層は、仕様用途に応じて適宜選択すればよいが、例えば、接着性ポリプロピレン系樹脂に接着性ポリエチレン系樹脂を適量混合したものが好適に用いられる。具体的には、2〜10μm厚の接着性ポリエチレンと接着性ポリプロピレンの混合物であって、接着性ポリエチレンを8〜20%含むものなどが好適である。
接着性ポリプロピレンのメルトフロレート(MFR JIS K6758)は0.5〜20g/10minであることが好ましい。
接着性ポリプロピレンは、ポリプロピレン樹脂に不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体を導入することで接着性(熱接着性)を付与したものが好ましい。この酸変性に使用する不飽和カルボン酸又はその誘導体としては、マレイン酸、アクリル酸、フマール酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、ナジック酸などの不飽和カルボン酸又はその誘導体、例えば、アミド、イミド、無水物、エステル、酸ハライドなどが挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができるが、無水マレイン酸を用いるのが一般的である。これらの不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体をポリプロピレンに導入する方法は、グラフト重合が一般的である。特に、無水マレイン酸を0.01〜5重量%とするグラフト重合が好ましい。
上記接着性ポリエチレンのメルトフローレート(MFR ASTM D1238)は製膜性の観点から0.5〜50g/10minであることが望ましい。
上記接着性ポリエチレンは、ポリエチレン樹脂に不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体を導入することで接着性(熱接着性)を付与したものが好ましい。この酸変性に使用する不飽和カルボン酸又はその誘導体としては、マレイン酸、アクリル酸、フマール酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、ナジック酸などの不飽和カルボン酸又はその誘導体、例えば、アミド、イミド、無水物、エステル、酸ハライド等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができるが、無水マレイン酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル等を用いるのが一般的である。また、そのなかでも耐食性の観点からは無水マレイン酸を単独で若しくは無水マレイン酸と他の不飽和カルボン酸の1種又は2種以上を混合したものを用いるのが好ましい。
18L缶等、一般缶用途に通常用いられている板厚0.32mmの冷延鋼板を通常の方法で電解脱脂および酸洗した後、公知の方法により電解クロメート処理し、付着量が100mg/m2の金属クロム層と、その上層に金属クロム換算での付着量が8mg/m2のクロム水和酸化物層からなる電解クロメート処理層を形成した。
上記により得られた表面処理鋼板を樹脂フィルムの接着層の融点〜250℃に加熱し、鋼板の片面に樹脂フィルムをラミネートした後、2秒以内に水で急冷することによりラミネート鋼板を製造した。なお、用いた樹脂層および樹脂の詳細を表1に示す。また、上記のラミネート後、上層樹脂の融点以下の温度で缶外面側に相当する面にクリヤ塗装を行った。また、接着層としては、接着性ポリプロピレンと接着性ポリエチレンの混合物を用い、接着性ポリエチレンは、α−オレフィンを5mol%共重合化させたもので、接着性ポリエチレンの混合比率は15mol%、膜厚は5μmのものを用いた。
上記フィルム熱圧着法の本発明例と同様の板厚0.32mmの冷延鋼板を通常の方法で電解脱脂および酸洗した後、公知の方法により電解クロメート処理し、付着量が100mg/m2の金属クロム層と、その上層に金属クロム換算での付着量が8mg/m2のクロム水和酸化物層からなる電解クロメート処理層を形成した。次いで、140℃程度に予熱し、Tダイ押し出し法(エクストリューダー法)により溶融樹脂を塗布した後、2秒以内に水で急冷することによりラミネート鋼板を製造した。なお、用いた樹脂層および樹脂の詳細を表1に示す。また、上記のラミネート後、上層樹脂の融点以下の温度で缶外面側に相当する面にクリヤ塗装を行った。また、接着層としては、接着性ポリプロピレンと接着性ポリエチレンの混合物を用い、接着性ポリエチレンは、α−オレフィンを5mol%共重合化させたもので、接着性ポリエチレンの混合比率は15mol%、膜厚は5μmのものを用いた。
比較例では、表面処理鋼板の上層に有する樹脂層および樹脂を本発明の請求範囲を外れる組成の樹脂を用いた以外は、上記本発明例と同様に行った。なお、用いた樹脂層および樹脂の詳細を表2に示す。
樹脂被覆鋼板のラミネート面に、直径50mm重さ200gの円筒状の筒を静地した。この状態で、150℃×30分保持した後、冷却し、筒状体の接触跡の有無を調べ、接触跡がついた場合は×、つかなかった場合は○とした。
ラミネート鋼板を48mmφに打ち抜き、このサンプルに肩半径1.7mmR、直径25mmのポンチとダイスのセットで、高さ2mmの高さになるように軽度の絞り加工を施した。作製したサンプルは、ポンチに沿った筒状部と、残余の平板部からなる帽子のような形状のサンプルとなる。この帽子形状外面側(凸側)のサンプルの筒状部の肩部は、略曲げ加工となる。このサンプルを中性洗剤(商品名:ライポンF)中に38℃で2日間浸漬し、取り出した後に、水洗、乾燥した。次に、シャーレに電解液(1%NaCl+界面活性剤)を適量注ぎ、これにサンプルを、下が凸側になるように置き、サンプルの肩部と上面のみが浸漬される状態にした。この状態で、サンプルの下地鋼板と電解液の間に、6.2Vの電圧をかけ(サンプルが陰極)、電圧負荷後4sec.後の電流値を測定した。電流値が10mA未満であれば○、10mA以上であれば×とした。
各鋼板を10000m連続で作製し、通板ロールに堆積する樹脂の状態を検査した。堆積物が認められない場合○、認められる場合を×とした。
一方、比較例1は、上層樹脂のプロピレン層が厚すぎるため、下層のポリプロピレン層の高速変形緩和効果が十分に効かず、加工後耐食性が得られなかった。比較例2は、ポリプロピレン系層のエチレン成分の比率が低すぎる為、加工後耐食性が不充分であった。
比較例3はエチレン比率が高すぎるため、耐熱性に劣る結果となった。比較例4、5はポリプロピレン層が、ランダム共重合タイプ、あるいは、EPRコンパウンドタイプであり、エチレン成分の比率が低すぎる為、加工後耐食性が不充分であった。比較例6は押し出し法でラミネートした比較例であり、エチレン成分の比率が低すぎる為、加工後耐食性が不充分であった。比較例7はポリプロピレン系層の膜厚が薄すぎたため、加工後耐食性が劣る結果であった。比較例8、9は、ポリプロピレン系層が、エチレン−プロピレン共重合で無い場合の例であり、ポリプロピレン単層の場合は加工後耐食性が劣り、ポリエチレン単層の場合は耐熱性が劣る結果となった。比較例10〜12は、上層のポリプロピレン層が無い場合の比較例であり、堆積物評価が劣っていた。
Claims (3)
- 表面処理鋼板の少なくとも片面に、厚さ15〜200μmのプロピレン−エチレン共重合体を、更にその上層に、1〜5μmのポリプロピレン樹脂層を有し、前記プロピレン−エチレン共重合体は、エチレン成分とプロピレン成分の合計を100mol%とした場合、エチレン成分が3〜30mol%であることを特徴とする容器材料用ラミネート鋼板。
- 前記プロピレン−エチレン共重合体は、ポリプロピレンを母相とし、エチレン−プロピレンラバーをコンパウンドしたものであることを特徴とする請求項1記載の容器材料用ラミネート鋼板。
- 前記プロピレン−エチレン共重合体の下層に接着層を有することを特徴とする請求項1または2にいずれかに記載の容器材料用ラミネート鋼板。
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