JP3567806B2 - 外面塗装印刷性及び内容物保護性に優れた缶用樹脂被覆鋼板 - Google Patents

外面塗装印刷性及び内容物保護性に優れた缶用樹脂被覆鋼板 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、18L缶、ペール缶、ドラム缶などのような飲料缶以外の缶体(一般缶)の缶胴部や蓋部の素材として用いられる、内容物保護性、樹脂密着性及び外面塗装印刷性などの性能に優れた樹脂被覆鋼板(ラミネート鋼板)に関する。
【0002】
【従来の技術】
飲料缶以外の一般缶用途(特に大型缶分野)において、各種のラミネート鋼板を使用した高耐食缶を製造する試みがなされている。大型缶ではレトルト処理などを行なわないため飲料缶のような高い樹脂密着性は要求されない。一方、飲料缶以外の一般缶用途では、充填される内容物が化学薬品、塗料、食品、油など多岐にわたり、内容物の性状も酸性からアルカリ性まで多種多様である。
【0003】
酸からアルカリまでの幅広い内容物に対して耐食性を有する樹脂としては、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂などのオレフィン系樹脂がよく知られている。一般缶用途にこれらオレフィン系樹脂を用いる場合、缶外面側に塗装印刷などを行う際の加熱工程を考慮した場合には耐熱性に優れるポリプロピレン樹脂が望ましく、また、製缶時の衝撃加工による白化などの変色や、熱ラミネート時のフィルム変形による密着性低下を考慮した場合にはポリエチレン樹脂が望ましいと言える。このようなオレフィン系樹脂を用いた缶用材料としては、例えば、特開昭53−141786号公報などにポリエチレン樹脂ラミネート鋼板が、また、特公平2−733589号公報などにポリプロピレン樹脂ラミネート鋼板がそれぞれ開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、本発明者らがこれら従来の一般缶用途のオレフィン系樹脂ラミネート鋼板の特性について詳細に検討した結果、以下のような問題点があることが判明した。
一般に、ラミネート鋼板は通常の塗装鋼板に較べて樹脂被覆に要するコストが価格が高い。しかし、缶外面側の塗装印刷前に大量生産ラインで連続的にラミネート処理を行うことにより、樹脂被覆に要する生産コストを下げることが可能となる。従来、樹脂を被覆するための代表的なラミネート方法としては、以下の方法が知られている。
【0005】
▲1▼ フィルムによるコイルラミネート法:
素材鋼板を接着樹脂層の融点以上に加熱し、鋼板の片面又は両面に樹脂フィルムシートをラミネートし、樹脂フィルムの融点以上の温度域(通常、ポリプロピレン樹脂の場合は融点〜270℃、ポリエチレン樹脂の場合は融点〜250℃)から水などで急冷する方法。
▲2▼ 溶融熱押出しラミネート法:
予熱された素材鋼板の片面又は両面にTダイなどにより樹脂を溶融押出しラミネートした後、接着樹脂層の融点以上の温度範囲(通常、ポリプロピレン樹脂の場合は160〜260℃、ポリエチレン樹脂の場合は130〜250℃)で保持し、しかる後空冷または水で急冷する方法。
【0006】
上記の各方法でラミネートを行う場合、缶外面側への塗装印刷は片面ラミネート鋼板の非ラミネート面又は両面ラミネート鋼板の一方のラミネート面(樹脂被覆面)に対して行われることになる。また、融点が低いポリエチレン樹脂をラミネートした鋼板の外面塗装印刷では、低温処理可能な光硬化型の塗装や100℃以下の低温塗装印刷が施されるが、一般にこれらの塗装は通常行われる高温焼付型溶媒系塗装に較べて鋼板との密着強度が低い。
そして、上記のように缶外面側への塗装印刷を片面ラミネート鋼板の非ラミネート面に対して行う場合、この塗装印刷面となる非ラミネート面は、ラミネート前の鋼板面に較べて塗料やインキとの密着性が低下し、塗装剥離などの問題を生じやすいことが明らかとなった。
【0007】
また、ラミネート鋼板を製缶する場合、缶巻締め部やかしめ部ではラミネート樹脂とシール樹脂との密着性、さらに溶接缶の場合には溶接補修部でのラミネート樹脂と補修樹脂との密着性が要求される。しかし、従来のポリプロピレン樹脂ラミネート鋼板やポリエチレン樹脂ラミネート鋼板は、ラミネート樹脂と補修樹脂やシール樹脂との密着性が低下しやすいという問題があることが判った。
また、従来のポリプロピレン樹脂ラミネート鋼板やポリエチレン樹脂ラミネート鋼板は、溶媒中への低分子量成分の溶出が懸念される。
【0008】
したがって本発明の目的は、18L缶やペール缶などのような大型缶をはじめとする一般缶用途の缶胴部や蓋部の素材として好適な樹脂被覆鋼板であって、酸性からアルカリ性までの用途適性に優れ、且つ内容物保護性(耐食性及び缶内容物中に金属や有機成分などの溶出を生じにくい特性)、外面塗装印刷性、樹脂密着性などの諸特性に優れた樹脂被覆鋼板を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上述した従来技術の課題を解決すべく種々の樹脂皮膜構成を有する樹脂被覆鋼板(ラミネート鋼板)とその特性について調査および検討を行い、その結果、以下のような知見を得た。
【0010】
(1) 缶外面側の塗料(塗装印刷)密着性
電解クロメート処理を施した鋼板の片面にポリプロピレン系樹脂及びポリエチレン系樹脂をそれぞれラミネートし、非ラミネート面の塗料密着性を調査した。これら片面ラミネート鋼板は、ラミネート工程で所定の温度範囲(ポリプロピレン樹脂ラミネート鋼板:160〜270℃、ポリエチレン樹脂ラミネート鋼板:130〜250℃)で加熱後、水で強制冷却して調製した。
【0011】
この調査の結果によれば、従来用いられているチーグラーナッタ触媒を用いて合成されたポリプロピレン樹脂やポリエチレン樹脂を片面にラミネートした鋼板では、鋼板の非ラミネート面の塗料密着性はラミネート前の電解クロメート処理鋼板の塗料密着性よりも劣る結果となった。鋼板表面の分析を行った結果、上記片面ラミネート鋼板の非ラミネート面からは、ラミネートフィルムと同組成の物質を含む有機成分が検出された。これは、ラミネート工程で加熱した際に、樹脂から溶出又は揮発した低融点の有機成分が非ラミネート面に付着したものと考えられ、この付着物質が非ラミネート面の塗料密着性を劣化させたものと考えられる。また、このような有機成分の付着原因としては、冷却水による媒介、ラミネート後に鋼板を重ねたり、コイル状態に巻取ったりした際の有機成分の転写などが考えられる。
【0012】
そこで、各種製法によるラミネート樹脂について検討した結果、シングルサイト系触媒を用いて合成されたポリプロピレン樹脂又はポリエチレン樹脂をラミネート樹脂として用いることにより、非ラミネート面の塗料密着性が顕著に改善されることが判明した。また、このような特定のラミネート樹脂を用いることにより、ラミネート樹脂と補修樹脂やシール樹脂との密着性も向上することも判った。
【0013】
このような改善効果は、缶内面側となるラミネート樹脂層(樹脂被覆層)全体をシングルサイト系触媒を用いて合成されたポリプロピレン樹脂又はポリエチレン樹脂で構成することにより得られることは当然であるが、缶内面側となるラミネート樹脂層のうち缶内容物と接する樹脂層、より好ましくはラミネート樹脂層の全膜厚の1/2程度以上の厚さの樹脂層をシングルサイト系触媒を用いて合成されたポリプロピレン樹脂又はポリエチレン樹脂で構成した場合でも、ほぼ同様の効果が得られる。
【0014】
(2) ラミネート樹脂層の鋼板との密着性及び耐食性
シングルサイト系触媒を用いて合成されたポリプロピレン樹脂又はポリエチレン樹脂に不飽和カルボン酸又はその誘導体を重合させた熱接着性樹脂を缶内面側の鋼板面と接する樹脂層(接着層)として用いたラミネートした鋼板は、従来使用されているチーグラーナッタ触媒を用いて合成されたポリプロピレン樹脂又はポリエチレン樹脂に同レベルの不飽和カルボン酸又はその誘導体を重合させた熱接着性樹脂に較べて優れた耐食性を示すことが判った。
【0015】
これは、シングルサイト系触媒を用いて合成されたポリプロピレン樹脂又はポリエチレン樹脂に不飽和カルボン酸又はその誘導体を重合させた熱接着性樹脂は、チーグラーナッタ触媒を用いて合成されたポリプロピレン樹脂又はポリエチレン樹脂に不飽和カルボン酸又はその誘導体を重合させた熱接着性樹脂に較べて、ラミネート工程で融点以上に加熱された際の低融点のオレフィン成分の溶出が抑制されることや、密着性を阻害する高分子量成分が低減化されることなどにより、鋼板とラミネート樹脂層界面の結合が強固になったためであると考えられる。しかし、そのような特定の熱接着性樹脂を用いても、鋼板表面に適量の電解クロメート処理層が存在しない場合には、十分な耐食性や密着性が得られないことが判った。
【0016】
(3) 溶媒中への有機成分の溶出性
先に述べたように、従来使用されているチーグラナッタ触媒を用いて合成されたポリプロピレン樹脂やポリエチレン樹脂を缶内面側の缶内容物と接する樹脂層に用いたラミネート鋼板は、溶媒中において有機成分の溶出が懸念される。これに対してシングルサイト系触媒を用いて合成されたポリプロピレン樹脂又はポリエチレン樹脂を缶内面側の缶内容物と接する樹脂層に用いたラミネート鋼板は、樹脂層を構成する樹脂の分子量分布がシャープであるため溶媒中での有機成分の溶出防止に対して有利であることが判った。
【0017】
(4) 加工後耐食性
シングルサイト系触媒を用いて合成されたポリプロピレン樹脂又はポリエチレン樹脂を缶内面側の缶内容物と接する樹脂層に用いたラミネート鋼板と、従来用いられているチーグラーナッタ触媒を用いて合成されたポリプロピレン樹脂又はポリエチレン樹脂を缶内容物と接する樹脂層に用いたラミネート鋼板について、それらの加工後耐食性を比較した。その結果、18L缶やペール缶特有の衝撃加工を受けた後の加工後耐食性は、シングルサイト系触媒を用いて合成されたポリプロピレン樹脂又はポリエチレン樹脂を缶内面側の缶内容物と接する樹脂層に用いたラミネート鋼板が有利であることが判明した。
【0018】
本発明は以上のような知見に基づきなされたもので、その特徴とする構成は以下の通りである。
[1] 少なくとも缶内面側となるべき鋼板面にクロム水和酸化物層の付着量が金属クロム換算で40mg/m以下の電解クロメート処理層を有する表面処理鋼板を素材鋼板とする、缶(但し、飲料缶を除く)用樹脂被覆鋼板であって、
缶内面側となるべき鋼板面に、ポリプロピレン樹脂又はポリエチレン樹脂を主成分とする樹脂からなり、膜厚が15〜200μmである複層の樹脂被覆層を有し、
該複層の樹脂被覆層のうちの缶内容物と接する樹脂層が、シングルサイト系触媒を用いて合成したポリプロピレン樹脂又はポリエチレン樹脂を主成分とする樹脂からなり、
且つ缶外面側となるべき鋼板面が樹脂被覆層を有しないことを特徴とする外面塗装印刷性及び内容物保護性に優れた缶用樹脂被覆鋼板。
【0020】
[2] 上記 [1] の缶用樹脂被覆鋼板において、シングルサイト系触媒を用いて合成したポリプロピレン樹脂又はポリエチレン樹脂が、プロピレン又はエチレンと25モル%以下のα−オレフィンとの共重合体であることを特徴とする外面塗装印刷性及び内容物保護性に優れた缶用樹脂被覆鋼板。
【0021】
[3] 上記 [1] 又は [2] の缶用樹脂被覆鋼板において、複層の樹脂被覆層のうちの鋼板面と接する樹脂層が、シングルサイト系触媒を用いて合成したポリプロピレン系熱接着性樹脂又はポリエチレン系熱接着性樹脂を主成分とする樹脂からなることを特徴とする缶用樹脂被覆鋼板。
【0022】
[4] 上記 [3] の缶用樹脂被覆鋼板において、シングルサイト系触媒を用いて合成したポリプロピレン系熱接着性樹脂又はポリエチレン系熱接着性樹脂が、ポリプロピレン又はポリエチレンに無水マイレン酸若しくは無水マイレン酸と他の不飽和カルボン酸及びその誘導体の中から選ばれる1種以上とからなるモノマーを重合させた熱接着性樹脂であることを特徴とする外面塗装印刷性及び内容物保護性に優れた缶用樹脂被覆鋼板。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の詳細と限定理由について説明する。
本発明の樹脂被覆鋼板(ラミネート鋼板)の素材鋼板としては、少なくとも缶内面側となる面に電解クロメート処理層を有する表面処理鋼板を用いる。このような表面処理鋼板を用いることにより、優れた耐食性及びラミネート樹脂層の密着性が得られる。
【0024】
電解クロメート処理層を構成するクロム水和酸化物層の金属クロム換算の付着量は、十分な耐食性を得るために3mg/m以上であることが好ましいが、40mg/mを超えると色調の劣化や付着ムラによる樹脂密着性の劣化が生じるため、その付着量は40mg/m以下とする。
【0025】
また、電解クロメート処理層の下地にはめっき層などの表面処理層を設けることができる。この表面処理層としては、例えば、合金または純金属として錫(一般的な付着量:5.6g/m以下)、ニッケル(一般的な付着量:1.0g/m以下)、鉄、クロム(一般的な付着量:200mg/m以下)などの1種又は2種以上を含む表面処理層が挙げられる。
【0026】
電解クロメート処理層が形成される下地鋼板としては、例えば、ぶりき(例えば、錫めっき量:1.1〜11.2g/m)、薄錫めっきぶりき(例えば、錫めっき量:0.6〜2.0g/m)、ニッケルめっき鋼板(例えば、ニッケルめっき量:0.1〜1.0g/m)、Ni熱拡散処理を施した鋼板(ニッケル付着量:0.01〜10.0g/m)、上記ニッケルめっき鋼板やNi熱拡散処理を施した鋼板の表面に0.9g/m未満の微量の不均一な錫層を設けた表面処理鋼板などが挙げられる。
【0027】
本発明の樹脂被覆鋼板は、上記のような表面処理鋼板の電解クロメート処理層が形成された少なくとも片面(缶内面側となる面)に、ポリプロピレン樹脂又はポリエチレン樹脂を主成分とする樹脂からなる複層の樹脂被覆層を有し、この複層の樹脂被覆層のうちの少なくとも缶内容物と接する樹脂層が、シングルサイト系触媒を用いて合成したポリプロピレン樹脂又はポリエチレン樹脂を主成分とする樹脂からなるものである。
【0028】
したがって、本発明の樹脂被覆鋼板の樹脂被覆層の形態としては、以下のようなものを例示することができる。
(1) 樹脂被覆層が複層の樹脂層からなり、これら複層の樹脂層(缶内容物と接する樹脂層及び鋼板面と接する樹脂層を含む全部の樹脂層)がシングルサイト系触媒を用いて合成したポリプロピレン樹脂又はポリエチレン樹脂を主成分とする樹脂からなる。
【0029】
(2) 樹脂被覆層が3層以上の樹脂層からなり、この複層の樹脂層のうち缶内容物と接する樹脂層及び鋼板面と接する樹脂層(接着層)のみがシングルサイト系触媒を用いて合成したポリプロピレン樹脂又はポリエチレン樹脂を主成分とする樹脂からなる。
(3) 樹脂被覆層が複層の樹脂層からなり、この複層の樹脂層のうち缶内容物と接する樹脂層のみがシングルサイト系触媒を用いて合成したポリプロピレン樹脂又はポリエチレン樹脂を主成分とする樹脂からなる。
【0030】
本発明の樹脂被覆鋼板において、缶内容物と接する樹脂層をシングルサイト系触媒を用いて合成したポリプロピレン樹脂又はポリエチレン樹脂を主成分とする樹脂で構成することにより、鋼板の非ラミネート面で塗料密着性が向上する、溶媒中での有機成分の溶出が抑制される、加工後耐食性が向上する、という効果が得られる。
【0031】
なお、このような効果を適切に得るためには、缶内容物と接する側において、樹脂被覆層(ラミネート樹脂層)の厚さの1/2程度以上の厚さの樹脂層をシングルサイト系触媒を用いて合成されたポリプロピレン樹脂又はポリエチレン樹脂で構成することが好ましい。
また、鋼板面と接する樹脂層(接着層)をシングルサイト系触媒を用いて合成したポリプロピレン樹脂又はポリエチレン樹脂を主成分とする樹脂で構成した場合には、さらに、ラミネート樹脂の密着性及び樹脂被覆鋼板の耐食性が向上するという効果が得られる。
【0032】
本発明の樹脂被覆鋼板の樹脂被覆層に適用するポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂を合成するための上記シングルサイト系触媒としては、カミンスキー触媒、メタロセン触媒、ブルックハート触媒などが挙げられ、これらのいずれを用いたものでもよい。シングルサイト系触媒の最大の特徴は、活性点が均一であるため分子量分布が狭いポリマーが得られる点にある。
例えば、シングルサイト系触媒の1つであるメタロセン触媒は、一般に、周期律表第IV又はV族遷移金属のメタロセン化合物と、有機アルミニウム化合物および/またはイオン性化合物の組合せが用いられ、その具体例としては、例えば、特開平8−281870号などに記載されたものを挙げることができる。
【0033】
本発明において樹脂被覆層に使用するポリプロピレン樹脂は、好ましくは密度が0.88〜0.96g/cm、メルトフローレート(MFR ASTM D1238)が0.5〜50g/10minである、プロピレンの単独共重合体、プロピレンとα−オレフィンとのブロック又はランダム共重合体である。
また、プロピレン−α−オレフィン共重合体のなかでも、特にプロピレンとα−オレフィンとのランダム共重合体が好ましい。
【0034】
上記α−オレフィンとしては、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテンなどが挙げられ、これらの1種を単独で、または2種以上を混合して使用できるが、特に、プロピレンと25モル%以下のα−オレフィンとのプロピレン−α−オレフィン共重合体が好適である。α−オレフィンが25モル%を超えると融点が著しく低下して樹脂の安定性が悪くなり、樹脂層にピンホールなどを生じやすくなるため好ましくない。
【0035】
また、缶内容物と接する樹脂層に適用するポリプロピレンとしては、α−オレフィンの量が多いと融点が低下し、塗装印刷時の焼付工程で塗装印刷設備との接触によりラミネート面に接触跡が生じやすくなるため、α−オレフィンは9モル%以下であることが望ましい。
また、耐食性の観点からは、ポリプロピレン系樹脂は結晶性の樹脂であることが望ましく、結晶化度として20〜50%の範囲にあるものが特に望ましい。
【0036】
また、本発明において樹脂被覆層に使用するポリプロピレン樹脂には、耐熱安定剤、酸化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、顔料、染料、各種ポリエチレン、低結晶性若しくは非晶性のエチレン又はプロピレンのα−オレフィンランダム共重合体などを本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合してもよい。但し、缶内容物と接する樹脂層については、その樹脂中には低融点で水溶液などへの易溶性を示す配合物や低融点の配合物、例えばフェノール系の酸化防止剤や有機系の滑剤などはできるだけ配合しないことが望ましく、配合する場合でも合計で5wt%以下とすることが好ましい。
【0037】
本発明において樹脂被覆層に使用するポリエチレンは、好ましくは密度が0.88〜0.94g/cm、メルトフローレート(MFR ASTM D1238)が0.5〜50g/10minである、エチレンの単独共重合体、エチレンとα−オレフィンとのブロック又はランダム共重合体である。
また、エチレン−α−オレフィン共重合体のなかでも、特にエチレンとα−オレフィンとのランダム共重合体が好ましい。
【0038】
上記α−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテンなどが挙げられ、これらの1種を単独で、または2種以上を混合して使用できるが、特に、エチレンと25モル%以下のα−オレフィンとのエチレン−α−オレフィン共重合体が好適である。α−オレフィンが25モル%を超えるとポリエチレンとしての樹脂の特性が失われ、加工性や薬品中での安定性が低下するため好ましくない。
【0039】
また、缶内容物と接する樹脂層に適用するポリエチレンとしては、α−オレフィンの量が多いと融点が低下し、塗装印刷時の焼付工程で塗装印刷設備との接触によりラミネート面に接触跡が生じやすくなるため、α−オレフィンは9モル%以下であることが望ましい。
ポリエチレンの種類としては、中低圧法高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、線状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)のいずれもが使用可能であるが、樹脂層の白化の抑制の観点からはLLDPEが特に好ましい。また、樹脂の結晶化度は加工後耐食性の観点から90%以下が好ましい。
【0040】
また、本発明において樹脂被覆層に使用するポリエチレン樹脂には、耐熱安定剤、酸化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、顔料、染料、各種ポリエチレン、低結晶性若しくは非晶性のエチレン又はエチレンのα−オレフィンランダム共重合体などを本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合してもよい。但し、缶内容物と接する樹脂層については、その樹脂中には低融点で水溶液などへの易溶性を示す配合物や低融点の配合物、例えばフェノール系の酸化防止剤や有機系の滑剤などはできるだけ配合しないことが望ましく、配合する場合でも合計で5wt%以下とすることが好ましい。
【0041】
本発明の樹脂被覆鋼板において、鋼板と接する樹脂層(接着層)には、ポリプロピレン樹脂又はポリエチレン樹脂(特に好ましくは、シングルサイト系触媒を使用して合成したポリプロピレン樹脂又はポリエチレン樹脂)に不飽和カルボン酸又はその誘導体を重合させたポリプロピレン系熱接着性樹脂又はポリエチレン系熱接着性樹脂を主成分とする樹脂を用いることが、樹脂被覆層の密着性と樹脂被覆鋼板の耐食性を高める上で好ましい。
【0042】
接着層に使用する不飽和カルボン酸又はその誘導体としては、マレイン酸、アクリル酸、フマール酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、ナジック酸などの不飽和カルボン酸又はそれらの誘導体(例えば、アミド、イミド、無水物、エステル、酸ハライドなど)が挙げられ、それらの1種または2種以上を使用できる。不飽和カルボン酸の誘導体の具体例としては、無水マレイン酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチルなどが例示できる。また、これらのなかでも、耐塗膜下腐食性の観点からは無水マレイン酸を単独で、若しくは無水マレイン酸と他の不飽和カルボン酸及びその誘導体の中から選ばれる1種または2種以上を混合したモノマーが望ましい。また、グリシジルメタクリレート、酢酸ビニル、アクリル酸メチル、アイオノマーをそれぞれ単独で又は2種を混合して用いてもよい。
【0043】
これらの不飽和カルボン酸又はその誘導体をポリプロピレン又はポリエチレンに導入する方法としては、グラフト重合、ランダム重合、ブロック重合を用いることができる。特に、無水マイレン酸を0.01〜2重量%としたグラフト重合が好ましい。
また、特にシングルサイト系触媒を用いて合成したポリプロピレン樹脂又はポリエチレン樹脂をもとに合成された上述の熱接着性樹脂、特に無水マイレン酸変性ポリプロピレン樹脂又は無水マイレン酸変性ポリエチレン樹脂は、同量の無水マレイン酸を重合させた従来のチーグラーナッタ触媒で合成された樹脂に比較して優れた密着性と耐食性を示す。
【0044】
本発明の樹脂被覆鋼板において、ポリプロピレン樹脂又はポリエチレン樹脂からなる樹脂被覆層の全部又は一部の樹脂層についてシングルサイト系触媒を使用して合成したポリプロピレン樹脂又はポリエチレン樹脂を適用する場合、その樹脂としてはシングルサイト系触媒を使用して合成したポリプロピレン樹脂又はポリエチレン樹脂を主成分とするものであればよく、したがって、適量の範囲であれば他の樹脂、すなわちチーグラナッタ触媒で合成されたポリプロピレン樹脂又はポリエチレン樹脂を混合してもよい。但し、チーグラナッタ触媒で合成されたポリプロピレン樹脂又はポリエチレン樹脂(A)の配合量は、シングルサイト系触媒を使用して合成したポリプロピレン樹脂(B)との重量比で(A)/(B)=0.5以下とすることが好ましい。
【0045】
なお、鋼板と接する樹脂層(接着層)については、チーグラナッタ触媒で合成されたポリプロピレン樹脂又はポリエチレン樹脂(A)の配合量が、シングルサイト系触媒を使用して合成したポリプロピレン樹脂(B)との重量比で(A)/(B)=0.5以下の範囲であれば、チーグラナッタ触媒で合成されたポリプロピレン樹脂のみを用いた場合と略同等の効果が得られる。
樹脂被覆層の層数は特に限定しないが、層数が4層を超えるとフィルムコストが著しく高くなるため好ましくない。
【0046】
缶内面側となる鋼板面を被覆するポリプロピレン樹脂層又はポリエチレン樹脂層の全厚さは15〜200μmとする。樹脂層の全厚さが15μm未満では2回塗装材以下の耐食性しか得られない。一方、全厚さが200μmを超えると18L缶などの巻締めが困難となる。
【0047】
鋼板に樹脂被覆を施す方法に特別な制限はなく、予め製造された樹脂フィルムを鋼板に連続的にラミネートする方法(フィルムコイルラミネート法)、溶融した樹脂をTダイ等で鋼板面に直接熱押出しする方法(溶融熱押出しラミネート法)、予め製造された樹脂フィルムを切り板毎にラミネートをする方法(フィルムシートラミネート法)など、任意の方法で樹脂被覆を施すことができる。
【0048】
【実施例】
一般缶用途に通常用いられている板厚0.32mmの冷延鋼板を通常の方法で電解脱脂及び酸洗した後、公知の方法で各種の表面処理を行った。この表面処理鋼板に以下の方法で樹脂を被覆し、樹脂被覆鋼板を製造した。
(1) フィルムコイルラミネート法
表面処理鋼板を樹脂フィルムの接着層の融点〜250℃に加熱し、鋼板の片面または両面に樹脂フィルムをラミネートした後、上記加熱温度域から2秒以内に水で急冷した。
【0049】
(2) フィルムシートラミネート法
表面処理鋼板の片面に樹脂フィルムを樹脂の融点以下の温度で圧着した後、樹脂フィルムの接着層の融点以上の温度範囲(ポリプロピレンの場合には160〜250℃、ポリエチレンの場合には130〜250℃)に保持し、しかる後、空冷した。
(3) 溶融熱押出しラミネート法
予熱された表面処理鋼板の片面または両面にTダイにより樹脂を溶融熱押出しラミネートした後、接着層の融点以上の温度範囲(ポリプロピレンの場合には160〜250℃、ポリエチレンの場合には130〜250℃)に保持し、しかる後、水冷した。
【0050】
本実施例において、シングルサイト系触媒を用いて合成した樹脂として用いたのは、メタロセン触媒で合成されたポリエチレン系樹脂、メタロセン触媒で合成されたポリプロピレン系樹脂である。
缶胴部に相当する鋼板については、必要に応じて鋼板の両エッジに約10mm幅のラミネート避け部を設けた。
また、片面のみのラミネートを行った鋼板は、ラミネート後、ラミネート樹脂の融点以下の温度で缶外面側に相当する面にクリヤ塗装を行った。また、一部の樹脂被覆鋼板については、鋼板両面にラミネートを行った。
【0051】
得られた樹脂被覆鋼板の性能評価を以下の方法で行った。
(1) 片面ラミネート材の非ラミネート面の塗料密着性
片面ポリプロピレンラミネート鋼板については、非ラミネート面に対してエポキシフェノール系塗料を塗布し、焼き付けした後、ナイロンテープを介して塗装面を熱圧着して張合せることにより試験片を調製し、この試験片に対してTピール試験を行って塗料の密着強度を調べた。ラミネート前の表面処理鋼板面での塗料の密着強度に比較し、塗料の密着強度が低下しないものを“○”、低下したものを“×”とした。
また、片面ポリエチレンラミネート鋼板については、非ラミネート面に対して光硬化型塗料を塗布し、焼き付けした後、碁盤目テープ剥離試験を行って塗料の密着強度を調べた。ラミネート前の表面処理鋼板面での塗料の密着強度に比較し、塗料の密着強度が低下しないもの又は塗膜の剥離のないものを“○”、塗料の密着強度が低下したものを“×”とした。
【0052】
(2) 加工後耐食性
樹脂被覆鋼板をデュポン衝撃加工した後、中性洗剤(商品名:ライポンF)中に38℃で3か月間浸漬し、フィルム抵抗の低下の有無を下記の基準により評価した。
○:フィルム抵抗の変化なし
×:フィルム抵抗の低下あり
(3) 塗膜下腐食性
樹脂被覆鋼板に対して平板のままクロスカットを行い、20g/LのNaOH溶液中で38℃、10日間の浸漬試験を行い、試験後のカット部の腐食幅で評価した。
【0053】
(4) 水溶液中への有機成分の溶出性
95℃の純水中に樹脂ラミネート面を20分間にわたり浸漬し、得られた試験後溶液にジエチルエーテルを加えた。この混合溶液を撹拌した後、ジエチルエーテルを分離、濃縮してガスクロマトグラフィーによる分析を行ない、得られた結果についてジエチルエーテルブランクの結果との比較を行った。結果に違いが認められたものを“×”、結果に違いが認められないものを“○”とした。
(5) 表面色調
K値(%/1000nm)は波長480nm〜700nm間を10nm間隔で反射率・波長の勾配を求め、得られた平均値をさらに1000nm当たりの反射率差に補正した数値である。−20以下でメタリックな良好な色調となる。−20以下のものを“○”、−20超のものを“×”とした。
【0054】
[実施例1]
表1は、各種表面処理鋼板にポリプロピレン樹脂フィルム(外層:ホモポリプロピレン、接着層:無水マイレン酸変性ポリプロピレン)をコイルラミネート法でラミネートした樹脂被覆鋼板について、それらの加工後耐食性と表面色調を評価した結果を示している。
【0055】
これによれば、本発明例であるNo.1〜No.8ではいずれも良好な加工後耐食性と表面色調が得られている。但し、鋼板のクロム水和酸化物層の付着量が3mg/未満であるNo.8は加工時に樹脂層の一部に剥離を生じている。
これに対して、No.9の比較例は鋼板に電解クロメート処理層を有していないため加工後耐食性が劣っている。また、No.10の比較例は電解クロメート処理層のクロム水和酸化物層の付着量が40mg/mを超えているため加工後耐食性や表面色調が劣っている。
【0056】
表2は、電解クロメート処理鋼板(金属クロム層のクロム付着量:100mg/m、クロム水和酸化物層の金属クロム換算の付着量:10mg/m)に、外層がプロピレンのα−オレフィンランダム共重合体、接着層が無水マイレン酸変性ポリプロピレンで構成されたポリプロピレン樹脂フィルムをコイルラミネート法でラミネート(但し、No.9についてはフィルムシートラミネート法により、また、No.10については溶融熱押し出しラミネート法により、それぞれラミネート)した樹脂被覆鋼板について、それらの非ラミネート面での塗料密着性を評価した結果を示している。
【0057】
これによれば、本発明例であるNo.1〜No.10ではいずれも良好な非ラミネート面での塗料密着性が得られている。これに対して、比較例であるNo.11、No.13ではポリプロピレン樹脂層(フィルム)がチーグラーナッタ系触媒を用いて合成した樹脂で構成されているため、非ラミネート面での塗料密着性が劣っている。また、比較例であるNo.12はポリプロピレン樹脂層の膜厚が200μmを超えているため良好な巻締めが難しい。
【0058】
表3は、電解クロメート処理鋼板(金属クロム層のクロム付着量:100mg/m、クロム水和酸化物層の金属クロム換算の付着量:10mg/m)に、外層がプロピレンのα−オレフィンランダム共重合体、接着層が無水マイレン酸変性ポリプロピレンで構成されたポリプロピレン樹脂フィルムをコイルラミネート法でラミネート(但し、No.3についてはフィルムシートラミネート法により、また、No.4については溶融熱押し出しラミネート法により、それぞれラミネート)した樹脂被覆鋼板について、それらの加工後耐食性と耐塗膜下腐食性を評価した結果を示している。
【0059】
これによれば、本発明例であるNo.1〜No.5ではいずれも良好な加工後耐食性と耐塗膜下腐食性が得られている。これに対して、比較例であるNo.6、No.7ではポリプロピレン樹脂フィルムがチーグラーナッタ系触媒を用いて合成した樹脂で構成されているため、加工後耐食性と耐塗膜下腐食性が劣っている。
【0060】
表4は、電解クロメート処理鋼板(金属クロム層のクロム付着量:100mg/m、クロム水和酸化物層の金属クロム換算の付着量:10mg/m)に、外層がプロピレンのα−オレフィンランダム共重合体、接着層が無水マイレン酸変性ポリプロピレンで構成されたポリプロピレン樹脂フィルムをコイルラミネート法でラミネート(但し、No.3についてはフィルムシートラミネート法により、また、No.4については溶融熱押し出しラミネート法により、それぞれラミネート)した樹脂被覆鋼板について、水溶液中への有機成分の溶出性を評価した結果を示している。
【0061】
これによれば、本発明例であるNo.1〜No.4ではいずれも水溶液中への有機成分の溶出を生じない良好な特性が得られている。これに対して、比較例であるNo.5、No.6ではポリプロピレン樹脂フィルムがチーグラーナッタ系触媒を用いて合成した樹脂で構成されているため、水溶液中への有機成分の溶出が生じている。
【0062】
【表1】
Figure 0003567806
【0063】
【表2】
Figure 0003567806
【0064】
【表3】
Figure 0003567806
【0065】
【表4】
Figure 0003567806
【0066】
[実施例2]
表5は、各種表面処理鋼板にポリエチレン樹脂フィルム(外層:LLDPE、接着層:無水マイレン酸変性ポリエチレン)をコイルラミネート法でラミネートした樹脂被覆鋼板について、それらの加工後耐食性と表面色調を評価した結果を示している。
【0067】
これによれば、本発明例であるNo.1〜No.8ではいずれも良好な加工後耐食性と表面色調が得られている。但し、鋼板のクロム水和酸化物層の付着量が3mg/未満であるNo.8は加工時に樹脂層の一部に剥離を生じている。
これに対して、No.9の比較例は鋼板に電解クロメート処理層を有していないため加工後耐食性が劣っている。また、No.10の比較例は電解クロメート処理層のクロム水和酸化物層の付着量が40mg/mを超えているため加工後耐食性や表面色調が劣っている。
【0068】
表6は、電解クロメート処理鋼板(金属クロム層のクロム付着量:100mg/m、クロム水和酸化物層の金属クロム換算の付着量:10mg/m)に、外層がLLDPE又はHDPE、接着層が無水マイレン酸変性ポリエチレンで構成されたポリエチレン樹脂フィルムをコイルラミネート法でラミネート(但し、No.9についてはフィルムシートラミネート法により、また、No.10については溶融熱押し出しラミネート法により、それぞれラミネート)した樹脂被覆鋼板について、それらの非ラミネート面での塗料密着性を評価した結果を示している。
【0069】
これによれば、本発明例であるNo.1〜No.10ではいずれも良好な非ラミネート面での塗料密着性が得られている。これに対して、比較例であるNo.11、No.13ではポリエチレン樹脂層(フィルム)がチーグラーナッタ系触媒を用いて合成した樹脂で構成されているため、非ラミネート面での塗料密着性が劣っている。また、比較例であるNo.12はポリエチレン樹脂層の膜厚が200μmを超えているため良好な巻締めが難しい。
【0070】
表7は、電解クロメート処理鋼板(金属クロム層のクロム付着量:100mg/m、クロム水和酸化物層の金属クロム換算の付着量:10mg/m)に、外層がLLDPE、接着層が無水マイレン酸変性ポリエチレンで構成されたポリエチレン樹脂フィルムをコイルラミネート法でラミネート(但し、No.3についてはフィルムシートラミネート法により、また、No.4については溶融熱押し出しラミネート法により、それぞれラミネート)した樹脂被覆鋼板について、それらの加工後耐食性と耐塗膜下腐食性を評価した結果を示している。
【0071】
これによれば、本発明例であるNo.1〜No.5ではいずれも良好な加工後耐食性と耐塗膜下腐食性が得られている。これに対して、比較例であるNo.6、No.7ではポリエチレン樹脂フィルムがチーグラーナッタ系触媒を用いて合成した樹脂で構成されているため、加工後耐食性と耐塗膜下腐食性が劣っている。
【0072】
表8は、電解クロメート処理鋼板(金属クロム層のクロム付着量:100mg/m、クロム水和酸化物層の金属クロム換算の付着量:10mg/m)に、外層がLLDPE、接着層が無水マイレン酸変性ポリエチレンで構成されたポリエチレン樹脂フィルムをコイルラミネート法でラミネート(但し、No.3についてはフィルムシートラミネート法により、また、No.4については溶融熱押し出しラミネート法により、それぞれラミネート)した樹脂被覆鋼板について、水溶液中への有機成分の溶出性を評価した結果を示している。
【0073】
これによれば、本発明例であるNo.1〜No.4ではいずれも水溶液中への有機成分の溶出を生じない良好な特性が得られている。これに対して、比較例であるNo.5、No.6ではポリエチレン樹脂フィルムがチーグラーナッタ系触媒を用いて合成した樹脂で構成されているため、水溶液中への有機成分の溶出が生じている。
【0074】
【表5】
Figure 0003567806
【0075】
【表6】
Figure 0003567806
【0076】
【表7】
Figure 0003567806
【0077】
【表8】
Figure 0003567806
【0078】
【発明の効果】
以上述べたように本発明のラミネート鋼板は、18L缶やペール缶などのような大型缶をはじめとする一般缶用途の缶胴部などに使用された場合に、酸性からアルカリ性までの用途適性に優れ、且つ内容物保護性(耐食性、缶内容物中に金属や有機成分の溶出を生じにくい特性)、外面塗装印刷性、樹脂密着性などの諸特性にも優れている。

Claims (4)

  1. 少なくとも缶内面側となるべき鋼板面にクロム水和酸化物層の付着量が金属クロム換算で40mg/m以下の電解クロメート処理層を有する表面処理鋼板を素材鋼板とする、缶(但し、飲料缶を除く)用樹脂被覆鋼板であって、
    缶内面側となるべき鋼板面に、ポリプロピレン樹脂又はポリエチレン樹脂を主成分とする樹脂からなり、膜厚が15〜200μmである複層の樹脂被覆層を有し、
    該複層の樹脂被覆層のうちの缶内容物と接する樹脂層が、シングルサイト系触媒を用いて合成したポリプロピレン樹脂又はポリエチレン樹脂を主成分とする樹脂からなり、
    且つ缶外面側となるべき鋼板面が樹脂被覆層を有しないことを特徴とする外面塗装印刷性及び内容物保護性に優れた缶用樹脂被覆鋼板。
  2. シングルサイト系触媒を用いて合成したポリプロピレン樹脂又はポリエチレン樹脂が、プロピレン又はエチレンと25モル%以下のα−オレフィンとの共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の外面塗装印刷性及び内容物保護性に優れた缶用樹脂被覆鋼板。
  3. 複層の樹脂被覆層のうちの鋼板面と接する樹脂層が、シングルサイト系触媒を用いて合成したポリプロピレン系熱接着性樹脂又はポリエチレン系熱接着性樹脂を主成分とする樹脂からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の外面塗装印刷性及び内容物保護性に優れた缶用樹脂被覆鋼板。
  4. シングルサイト系触媒を用いて合成したポリプロピレン系熱接着性樹脂又はポリエチレン系熱接着性樹脂が、ポリプロピレン又はポリエチレンに無水マレイン酸若しくは無水マレイン酸と他の不飽和カルボン酸及びその誘導体の中から選ばれる1種以上とからなるモノマーを重合させた熱接着性樹脂であることを特徴とする請求項3に記載の外面塗装印刷性及び内容物保護性に優れた缶用樹脂被覆鋼板。
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