JP3183153B2 - 耐食性、溶接性及びラミネート密着性に優れた溶接缶用ラミネート鋼板 - Google Patents

耐食性、溶接性及びラミネート密着性に優れた溶接缶用ラミネート鋼板

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JP3183153B2 JP4417596A JP4417596A JP3183153B2 JP 3183153 B2 JP3183153 B2 JP 3183153B2 JP 4417596 A JP4417596 A JP 4417596A JP 4417596 A JP4417596 A JP 4417596A JP 3183153 B2 JP3183153 B2 JP 3183153B2
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    • C23CCOATING METALLIC MATERIAL; COATING MATERIAL WITH METALLIC MATERIAL; SURFACE TREATMENT OF METALLIC MATERIAL BY DIFFUSION INTO THE SURFACE, BY CHEMICAL CONVERSION OR SUBSTITUTION; COATING BY VACUUM EVAPORATION, BY SPUTTERING, BY ION IMPLANTATION OR BY CHEMICAL VAPOUR DEPOSITION, IN GENERAL
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、各種の食品や飲料等の
充填保存に適したラミネート溶接缶の材料として用いら
れるラミネート鋼板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、各種の食品や飲料に使用される缶
は、缶内外面の耐食性と外面の美観を確保する必要から
エポキシフェノール系塗料等の塗装を施し使用されてき
た。しかし、近年塗装工程で排出される有機溶媒による
環境汚染の問題や内容物に対する耐食性向上のニーズ等
から、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のフィ
ルムをラミネートした缶が開発され急速に普及しつつあ
る。ところで、飲料等に使用されるラミネート缶の中で
も、溶接により缶胴部を成形する3ピース溶接缶に用い
られる素材(めっき鋼板)には溶接性やラミネート密着
性等の複数の性能が要求される。また、最近では缶に対
するコストダウンニーズも強く、これらに使用される素
材にも薄ゲージ化及び蓋使用量の低減を目的としたネッ
クイン加工等の強加工への対応が要求されはじめてい
る。
【0003】しかし、薄ゲージ材は溶接時の発熱量の変
動を十分に小さくしないと過剰発熱による溶接欠陥を生
じ易いという難点があり、素材の薄ゲージ化を図るには
素材自体の溶接性を従来に増して向上させる必要があ
る。また、蓋使用量の低減化に必要な強加工を行うため
には、素材加工部においてラミネートフィルムの高い密
着性が要求されるため、素材とラミネートフィルムとの
密着性を向上させる必要がある。しかし、素材に対する
密着性に関しては、ラミネートフィルムは従来から使用
されてきたエポキシフェノール系塗料とは異なる挙動を
示す。これは、ラミネートフィルムは塗装皮膜に較べて
膜厚が厚いために高い内部応力を有し、しかも接着部の
有機樹脂成分も塗料の場合とは全く異なるためである。
したがって、ラミネートに適した素材側の最適皮膜構造
も、従来から使用されてきたエポキシフェノール系塗料
の場合とは異ったものとなる。一般にラミネートフィル
ムの密着性はエポキシフェノール系塗料に比較して劣る
ため、表面処理鋼板には高い密着性が要求される。
【0004】従来、溶接缶用表面処理鋼板として下記の
ような種類のものが知られている。 (a) クロムめっき層とクロム水和酸化物層により鋼板
を被覆した鋼板であって、クロムめっき層の形態を粒状
若しくは不連続状のものとしたり、或いは電気的絶縁層
であるクロム水和酸化物層を薄層化することにより、溶
接時の電気抵抗を減少させて溶接性を改善した表面処理
鋼板(特開昭62−20529号公報、特開昭62−9
9497号公報、特開昭63−35797号公報、特開
昭62−63678号公報、特開昭61−281899
号公報、特開昭61−213399号公報) (b) クロムめっき層とクロム水和酸化物層とからなる
化成処理層の下層側に、溶錫処理を経て形成された、錫
−鉄合金層または錫−鉄−ニッケル合金層とその上層の
連続状(平板状)または不連続状(若しくは島状)の金
属錫層とからなるめっき層を設けることで溶接性を改善
した表面処理鋼板(特公昭61−36595号公報、特
公平1−54437号公報)
【0005】(c) 鋼板面に溶錫処理を行うことなく粒
状の金属錫層を不連続状に設け、その上層にクロムめっ
き層及びクロム水和酸化物層を設けることにより塗装焼
付け時の錫の合金化を抑制し、溶接性を改善した表面処
理鋼板(特開昭60−67677号公報) (d) 鋼板面にニッケルめっき、鉄−ニッケル合金めっ
き、錫−鉄合金めっきのいずれかを施し、その上層に溶
錫処理を行なうことなく粒状の金属錫層を不連続状に設
け、さらにその上層にクロムめっき層及びクロム水和酸
化物層を設けることにより溶接性、潤滑性、塗料密着性
を改善した表面処理鋼板(特開平4−128387号公
報、特開平4−247897号公報、特開平6−293
996号公報)
【0006】しかしながら、上記(a)〜(d)の表面処理鋼
板をラミネート溶接缶に適用した場合、それぞれ以下の
ような問題がある。まず、(a)の表面処理鋼板は、優れ
たラミネート密着性は得られるものの高速溶接性に劣
り、近年の生産性の高い高速製缶には適さない。(b)の
表面処理鋼板は、化成処理層のクロム付着量が30mg
/m2を超えるような場合に高速溶接性が不十分となる
欠点がある。また、化成処理層のクロム付着量が30m
g/m2未満の場合であっても、化成処理層の下層側が
連続した金属錫層である場合には金属錫層の表層に生成
する錫酸化物がラミネート密着性を阻害するため、ネッ
クイン加工において缶蓋部付近の周長を缶胴周長に対し
て15%以上縮小するような強加工を実施する場合には
十分なラミネート密着性が得られない。また、化成処理
層の下層が不連続状の金属錫層である場合には、金属錫
層以外の部分には溶錫処理により生成した高融点の錫−
鉄合金層または錫−鉄−ニッケル合金層が厚く存在す
る。したがって金属錫層以外の部分では高融点の厚い合
金層の上層に化成処理層が形成された皮膜構造となるた
め、良好なラミネート密着性は得られるものの、化成処
理層のクロム付着量が少ない場合でも高速溶接性は劣っ
たものとなる。一方、高速溶接性を改善するために金属
錫被覆率を高くした場合にはラミネート密着性が劣るこ
とになる。したがって、この被覆構造では高速溶接性と
高いラミネート密着性を両立させることは難しい。
【0007】(c)の表面処理鋼板は、溶錫処理を行うこ
となく形成した粒状の金属錫層を有する点で溶接性及び
ラミネート密着性には有利であると考えられるが、開示
された皮膜構造ではラミネート溶接缶に適用した場合の
優れた高速溶接性及びラミネート密着性を得ることはで
きず、特に素材を薄ゲージ化した場合の高速溶接性及び
強加工時のラミネート密着性に劣っている。さらに、粒
状の金属錫層以外の部分では鋼板面に直に化成処理層を
設けた皮膜構造となるため、板端面等の耐食性に劣ると
いう欠点もある。(d)の表面処理鋼板は、溶錫処理を行
うことなく形成した粒状の金属錫層を有する点でラミネ
ート密着性には有利であると考えられるが、開示された
皮膜構造では強加工時のラミネート密着性が十分ではな
い。また、この表面処理鋼板は鋼板面を合金層で被覆す
るため板端面等の耐錆性には優れていると考えられる
が、溶接搬送時等における粒状金属錫の剥離等の問題に
ついての検討は行われておらず、また、化成処理層のク
ロム付着量が非常に多いため優れた高速溶接性は期待で
きない。また、高価なニッケルをめっきする表面処理鋼
板は、めっき工程が多くなり且つ皮膜コストも高くなる
という欠点がある。
【0008】以上のように現状では缶用素材の薄ゲージ
化及び蓋使用量の低減化を目的とした強加工への対応が
可能な、優れたラミネート密着性、高速溶接性及び耐食
性を兼ね備えた溶接缶用ラミネート鋼板は知られていな
い。したがって本発明の目的は、上記の諸特性を兼ね備
え、しかも比較的安価に製造することができる溶接缶用
ラミネート鋼板を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、ラミネー
ト密着性、高速溶接性及び耐食性に優れ、缶用素材の薄
ゲージ化および蓋使用量の低コスト化を目的とした強加
工への対応が可能な溶接缶用ラミネート鋼板の皮膜構造
について検討を行い、その結果、特定の錫めっき付着構
造及び被覆率とクロメート層及びラミネートフィルム層
との組み合わせにより、溶接缶用素材としての高速溶接
性を確保しつつ、ラミネート密着性と耐食性を著しく改
善できることを見い出した。本発明はこのような知見に
基づきなされたもので、その特徴とする構成は以下の通
りである。
【0010】[1] 鋼板の少なくとも片面に、溶錫処理
を施すことなく形成され且つ鋼板面に分散状に形成され
た粒状錫部を有し、該粒状錫部の上部及び該粒状錫部に
被覆されていない鋼板面に、金属クロム層とその上層の
クロム水和酸化物層とからなる化成処理層を有し、さら
に該化成処理層の上部に該化成処理層の少なくとも一部
を覆うラミネートフィルム層を有するラミネート鋼板で
あって、前記粒状錫部は下層側が錫−鉄合金で且つ上層
側が金属錫で構成され、該粒状錫部のうちの90%以上
の個数の各粒状錫部は、最大厚み部の厚さが0.8μm
以下、上層側を構成する金属錫の最大厚み部の厚さが
0.2〜0.7μmであり、これらの最大厚み部の厚さ
を満足する粒状錫部の50%分離平均粒径が0.3μm
以上1.5μm未満で、且つ前記最大厚み部の厚さを満
足する粒状錫部による鋼板面の被覆面積率が10%以上
であり、前記粒状錫部に被覆されていない鋼板面の面積
率が60%以上であり、前記化成処理層は、前記金属ク
ロム層のクロム付着量が5mg/m2以上、前記クロム
水和酸化物層のクロム付着量が金属クロム換算で5mg
/m2以上15mg/m2未満、金属クロム層とクロム水
和酸化物層のクロム付着量の合計が金属クロム換算で1
0〜30mg/m2である、耐食性、溶接性及びラミネ
ート密着性に優れた溶接缶用ラミネート鋼板。
【0011】[2] 上記[1]のラミネート鋼板において、
粒状錫部の下層側を構成する錫−鉄合金の厚さが0.0
1μm以上である耐食性、溶接性及びラミネート密着性
に優れた溶接缶用ラミネート鋼板。 [3] 上記[1]または[2]のラミネート鋼板において、金
属クロム層のクロム付着量が10mg/m2以上である
耐食性、溶接性及びラミネート密着性に優れた溶接缶用
ラミネート鋼板。 [4] 上記[1]、[2]または[3]のラミネート鋼板におい
て、ラミネートフィルム層が、下層側から接着剤層及び
二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム層を有す
る耐食性、溶接性及びラミネート密着性に優れた溶接缶
用ラミネート鋼板。
【0012】[5] 上記[4]のラミネート鋼板において、
接着剤層を構成する接着剤が熱硬化型エポキシ樹脂系接
着剤である耐食性、溶接性及びラミネート密着性に優れ
た溶接缶用ラミネート鋼板。 [6] 上記[1]、[2]または[3]のラミネート鋼板におい
て、ラミネートフィルム層が、少なくとも鋼板と接着す
る面にイソフタル酸を共重合した1層または2層以上の
二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムからなる
耐食性、溶接性及びラミネート密着性に優れた溶接缶用
ラミネート鋼板。
【0013】
【発明の実施の形態】飲料缶や食缶用途の溶接缶用素材
には高速溶接性が求められる。しかし、溶接速度がワイ
ヤー供給速度で80m/分以上になると単位面積当りの
入熱量が高くなるため、散りと呼ばれる溶融金属の噴出
による溶融欠陥を生じ易くなる。特に、板厚0.19m
m未満の薄ゲージ材の場合には、入熱変動による過剰発
熱に起因した散りや孔あき等の溶接欠陥を生じ易い。こ
のような問題に対して従来では、高速溶接性の確保には
素材と溶接電極との接触抵抗の低減化が重要であること
から、低融点金属である金属錫の存在が有効であるとの
前提の下で、金属錫量により必要な溶接性を確保するよ
うな対応が採られてきた。
【0014】しかし、ラミネート溶接缶の場合には、金
属錫量が多くなると錫の被覆面積が増大するため十分な
ラミネート強度が得られなくなるという問題がある。し
たがって、従来採用されている合金層−金属錫層或いは
鋼板面−金属錫層からなるモザイク構造(粒状若しくは
不連続の金属錫層を有する錫めっき付着構造)の適用だ
けでは、ラミネート溶接缶用表面処理鋼板、とりわけ板
厚が0.19mmを下回るような薄ゲージ材に要求され
る高度の高速溶接性とラミネート密着性を両立させるこ
とはできない。このような現状を踏まえ、本発明者らは
錫の一部が粒状に突起した錫層、若しくは鋼板面に錫が
粒状に分散して付着した錫めっき付着構造を前提とし
て、缶蓋部付近の缶周長を缶胴の周長よりも15%以上
縮小するようなネックイン加工(以下、この縮小率を
「加工率」という)に耐え得るラミネート密着性と板厚
0.19mm未満を含めた各種板厚の鋼板の高速溶接性
とが両立可能な皮膜構造について調査、検討を行った。
その結果判明した事実を以下に述べる。
【0015】(a) 飲料缶や食缶用途のポリエチレンテ
レフタレート(PET)を主成分とするラミネートフィ
ルムを接着した場合、接着の際の加熱により形成される
錫−鉄合金層の厚さは約0.05μm程度であり、また
溶接補修による加熱工程を含めたとしても製缶工程で形
成される錫−鉄合金層の厚さは0.06〜0.1μm程
度であることが判った。一方、鋼板面に粒状金属錫が形
成された錫めっき層を有する表面処理鋼板において、接
触抵抗を低下させることで溶接性を向上させるために
は、ラミネート焼付け後の粒状錫部の金属錫を一定厚さ
以上にすることが必要であること、具体的には板厚0.
19mm未満の鋼板の場合でもラミネート焼付け後の粒
状錫部の金属錫の厚さを0.2μm以上とすることによ
り、電極の加圧により金属錫を押し延ばすことによって
素材と電極との接触抵抗を著しく低下させ得ることが判
った。したがって、上述したラミネート接着工程等で形
成される錫−鉄合金層の厚さを考慮した場合、板厚0.
19mm未満の鋼板において良好な高速溶接性を得るた
めに必要なラミネート鋼板の粒状錫層部の厚さ(最大厚
み部の厚さ)は0.3μm以上となり、これにより上層
側に上記した必要な厚さの金属錫が残留した粒状錫部と
することができる。
【0016】(b) さらに、上記のような厚さを有する
粒状錫部の各粒の50%分離平均粒径と鋼板面のトータ
ルの被覆面積率が高速溶接性に大きな影響を与えること
が判った。具体的には、上記のような厚さを有する各粒
状錫部の50%分離平均粒径が大き過ぎるために(1.
5μm以上)粒状錫部の分散性が不十分であったり、ま
た、上記のような厚さを有する粒状錫部による鋼板面の
被覆面積率が10%以下になると、粒状錫部以外の部分
による溶接性への悪影響が著しくなり、特に板厚0.1
9mm未満の鋼板の高速溶接性が大きく低下する。ここ
で、粒状錫部の50%分離平均粒径とは、板上部から観
察したときの粒状錫部の径を当該粒状錫部と面積が等し
い円形の直径と定義した場合、粒状錫部の粒径分布をと
り、特定の粒径の粒状錫部による鋼板面の累積被覆面積
が粒状錫部全てによる被覆面積の50%となる際の前記
特定の粒径を指す。各粒状錫部の面積は走査電子顕微鏡
による観察で求め、これと面積が等しい円形の直径を各
粒状錫部の径とする。 (c) 粒状錫部以外の平坦な部分は高速溶接性に寄与し
ないことが判った。但し、この平坦な部分に高融点合金
である錫−鉄合金等の合金層が形成されたり、或いは化
成処理層の構成によっては高速溶接性が大きく阻害され
る。
【0017】一方、粒状錫部以外の平坦な部分の存在は
優れたラミネート密着性を得るために不可欠であり、こ
の部分を鋼板面に直に化成処理層が形成された皮膜構造
とすることにより高度のラミネート密着性が確保され
る。したがって、優れたラミネート密着性を得るために
は、粒状錫部に被覆されていない鋼板面の面積率を十分
に確保する必要があり、具体的にはその面積率を60%
以上とする必要がある。 (d) 化成処理層は、高融点の金属クロム層と絶縁性物
質である上層のクロム水和酸化物層により構成されるた
め、高速溶接性に大きな影響を与える。クロム水和酸化
物層は、ラミネート時の加熱による脱水反応により水和
度は低下するものの、ラミネート後も存在し、金属クロ
ム換算での付着量も変化しない。絶縁層であるクロム水
和酸化物層のクロム付着量が金属クロム換算で15mg
/m2以下であって、且つ化成処理層全体のクロム付着
量が金属クロム換算で30mg/m2以下であることが
高速溶接性の確保に不可欠である。
【0018】(e) 飲料缶等の溶接では缶内への異物の
混入を避ける必要があるが、粒状錫部の厚さ(最大厚み
部の厚さ)が0.8μmを超えたり、或いは粒状錫部の
上層側を構成する金属錫の厚さ(最大厚み部の厚さ)が
0.7μmを超えると、溶接機直前に配置されたZバー
などの板搬送系との摩擦による錫層の剥離が著しくな
り、剥離した錫粉が缶内に混入するという問題を生じ、
缶材料としての使用が事実上不可能になる。また、粒状
錫部の下層側を構成する錫−鉄合金の厚さが0.01μ
m未満でも錫の剥離を生じ易くなる。 (f) 化成処理層を構成する金属クロム層は、下層側の
金属錫の酸化を抑制するとともに、クロム水和酸化物層
と金属錫との密着力を高めるなどラミネート密着性に大
きな影響を与える。十分なラミネート密着性(現在一般
的に使用されている薄めっきぶりきで得られているのと
同程度の密着性)を確保するには金属クロム層のクロム
付着量を5mg/m2以上とする必要ある。また、加工
率が15%以上となるようなネックイン加工において十
分なラミネート密着性を確保するには、金属クロム層の
クロム付着量は10mg/m2以上とすることが必要で
ある。
【0019】(g) 上述したようにラミネート密着性
は、金属錫の表面に不可避的に生成する錫酸化物により
低下する。したがって粒状錫部を形成させる方法とし
て、錫酸化物の生成量の高いリフロー処理等の溶錫処理
を実施することは避ける必要がある。 (h) 缶用素材では耐食性も重要な性能であり、特に粒
状錫部で被覆されていない部分の耐食性が問題であり、
この部分の耐食性は化成処理層の被覆状態が大きく影響
する。この部分に形成される化成処理層のクロム付着量
の合計が金属クロム換算で10mg/m2未満では十分
な耐食性が得られず、また特にクロム水和酸化物層のク
ロム付着量を金属クロム換算で5mg/m2以上確保し
ないと十分な耐食性が得られず、板保管時等において錆
を生じてしまう。
【0020】(i) 素材の表面外観、特に板表面の明る
さはラミネート後の缶外観の色調に影響するため缶素材
として重要な要素であり、各粒状錫部の粒径が50%分
離平均粒径で0.3μm未満では、上述したような溶接
性確保に必要な粒状錫部の厚さ(最大厚み部の厚さ)を
確保した場合に光の吸収現象が生じ、板全体が暗くなる
ため好ましくない。 (j) 上述した粒状錫部の厚さ(粒状錫部の下層側の
「錫−鉄合金の厚さ」も含む)に関する条件は、形成さ
れた粒状錫部の大多数が満足する必要があり、具体的に
は全体の90%以上の個数の粒状錫部が、上記厚さに関
する条件を満足する必要がある。
【0021】(k) ラミネートフィルムは、飲料および
食品用途であることを考慮してポリエチレンテレフタレ
ート(以下、PETという)を主成分とするものが望ま
しく、そのなかでも形状の安定性及び密着性等の観点か
ら、縦方向に3倍、横方向に3倍程度の低配向の二軸延
伸PETを主成分とするフィルムを用いることが好まし
い。また、フィルムをラミネートする場合は接着剤層を
介してラミネートするか、若しくは少なくとも鋼板と接
着する面にイソフタル酸を共重合したフィルムを熱融着
させることが好ましい。また接着剤としては接着温度が
200℃以上で且つ錫の融点である232℃未満の接着
剤、例えば、硬化温度がこのような温度域にある熱硬化
型エポキシ樹脂系接着剤を用いることが好ましい。この
ようにして二軸延伸PETフィルムによるラミネートフ
ィルム層を設けることにより、本発明の粒状錫を有する
皮膜構造との相乗効果(粒状錫部によるアンカー効果)
により特に優れたラミネート密着性、すなわち加工率が
15%以上のネックイン加工においても十分なラミネー
ト密着性が得られる。
【0022】以上述べた(a)〜(k)の事項に基づく本発明
の限定理由を以下に示す。本発明の溶接缶用ラミネート
鋼板は、鋼板の少なくとも片面に、溶錫処理を施すこと
なく形成され且つ鋼板面に分散状に形成(離散状に分布
して形成)された粒状錫部を有し、この粒状錫部の上部
と粒状錫に被覆されていない鋼板面上に金属クロム層と
その上層のクロム水和酸化物層とからなる化成処理層を
有し、さらにこの化成処理層の上部に化成処理層の少な
くとも一部を覆うラミネートフィルム層を有する。前記
粒状錫部は下層側が錫−鉄合金により、また上層側が金
属錫によりそれぞれ構成されている。錫めっきされる鋼
板面は、通常脱脂及び酸洗処理がなされており、粒状錫
部はこのような鋼板素地面に形成される。
【0023】前記粒状錫部は、全体の90%以上の個数
の各粒状錫部の最大厚み部の厚さが0.8μm以下、上
層側を構成する金属錫の最大厚み部の厚さが0.2〜
0.7μmである。また、このような最大厚み部の厚さ
を満足する粒状錫部の粒径は50%分離平均粒径で0.
3μm以上1.5μm未満であり、且つ上記最大厚み部
の厚さを満足する粒状錫部による鋼板面の被覆面積率は
10%以上である。なお、粒状錫部の厚さとは、鋼板面
から各粒状錫部の上面までの厚さを指す(図1、図2参
照)。粒状錫部の上層側を構成する金属錫の最大厚み部
の厚さが0.2μm未満では電極との接触抵抗を十分に
低減させることができず、満足できる高速溶接性が得ら
れない。一方、粒状錫部の最大厚み部の厚さが0.8μ
mを超え或いは粒状錫部の上層側を構成する金属錫の最
大厚み部の厚さが0.7μmを超えると溶接搬送時等に
おいて粒状錫の剥離を生じてしまう。
【0024】また、粒状錫部の下層側を構成する錫−鉄
合金の厚さが0.01μm未満でも錫剥離性が劣る傾向
があり、このためこの錫−鉄合金の厚さは0.01μm
以上とすることが好ましい。また、上記最大厚み部の厚
さを満足する粒状錫部の50%分離平均粒径が0.3μ
m未満では缶用素材に要求される色調が劣り、一方、
1.5μm以上では粒状錫部が平坦化して粒状錫部の分
散性が不十分となるため、溶接電極で粒状錫部の上層を
構成する金属錫が押し延ばされることによる接触抵抗の
低減効果が期待できなくなり、高速溶接性が劣る。
【0025】また、粒状錫部の厚さ(粒状錫部の下層側
を構成する「錫−鉄合金の厚さ」も含む)に関する上記
条件は、形成された粒状錫部のうちの90%以上の個数
の粒状錫部が満足する必要があり、上記条件を満足する
粒状錫部の個数が全体の90%を下回ると、優れた高速
溶接性が得られなくなる。また、溶接搬送時等における
粒状錫の剥離性の観点からは、全体の99%以上の個数
の粒状錫部が厚さに関する上記条件を満足することが望
ましい。さらに、最大厚み部分の厚さに関する上記条件
を満足する粒状錫部による鋼板面の被覆面積率が10%
未満では、粒状錫部を利用した高速溶接性の向上効果が
十分に得られない。一方、粒状錫部で被覆されていない
鋼板面の面積率が60%未満では十分なラミネート密着
性が得られない。上記粒状錫部は、ラミネート密着性を
阻害する錫酸化物の生成を抑制するという観点から、溶
錫処理を施すことなく形成させる必要がある。
【0026】前記粒状錫部の上部とこの粒状錫部で被覆
されていない鋼板面上には、金属クロム層とその上層の
クロム水和酸化物層とからなる化成処理層が形成され
る。前記金属クロム層のクロム付着量が5mg/m2
満では、粒状錫部の酸化を抑制する効果及びクロム水和
酸化物層と金属錫との密着力を向上させる効果が十分に
得られず、良好なラミネート密着性が得られない。この
ため金属クロム層のクロム付着量は5mg/m2以上と
する。また、加工率が15%を超えるようなネックイン
加工において十分なラミネート密着性を確保するには、
金属クロム層のクロム付着量は10mg/m2以上とす
ることが好ましい。なお、金属クロム層のクロム付着量
の上限値は、化成処理層全体のクロム付着量(金属クロ
ム換算)の上限値とクロム水和酸化物層のクロム付着量
(金属クロム換算)の下限値とから実質的に25mg/
2となる。
【0027】また、クロム水和酸化物層のクロム付着量
が金属クロム換算で5mg/m2未満では十分な耐食性
が得られず、一方、15mg/m2以上では高速溶接性
が劣化する。このためクロム水和酸化物層のクロム付着
量は金属クロム換算で5mg/m2以上15mg/m2
満とする。前記金属クロム層とクロム水和酸化物層のク
ロム付着量の合計が金属クロム換算で10mg/m2
満では十分な耐食性が得られず、一方、30mg/m2
を超えると高速溶接性が劣化する。このため金属クロム
層とクロム水和酸化物層のクロム付着量の合計は金属ク
ロム換算で10〜30mg/m2とする。
【0028】ラミネートフィルム層は、通常、缶胴ブラ
ンクの溶接継ぎ目部となる部分を除き、化成処理層の上
部に形成される。ラミネートフィルム層を構成するフィ
ルムとしてはPETを主成分とするフィルムが好まし
く、そのなかでも二軸延伸PETフィルムが形状安定性
に優れ、しかも本発明のめっき皮膜構造と組み合わせた
場合に、粒状錫とのアンカー効果による特に優れたラミ
ネート密着性、すなわちネックイン加工において15%
以上の加工率の強加工に耐え得る優れたラミネート密着
性が得られるため好ましい。
【0029】二軸延伸PETフィルムをラミネートする
場合は、PETフィルムを接着剤層を介してラミネート
するか、若しくは少なくとも鋼板と接着する面にイソフ
タル酸を10〜25モル%程度共重合したPETフィル
ムを熱融着することが好ましい。前者の場合にはラミネ
ートフィルム層は下層側から接着剤層とPETフィルム
層を有する構造となる。また後者の場合には、少なくと
も鋼板と接着する面にイソフタル酸を共重合したPET
フィルムを化成処理層上に1層または2層以上熱融着さ
せた構造となる。通常、PETフィルムの一方の面には
印刷が施される。
【0030】また、上記接着剤層を構成する接着剤とし
ては、接着温度が錫層の合金化が進行する200℃以上
で且つ錫の融点である232℃未満の接着剤、例えば硬
化温度がこの範囲にある熱硬化型エポキシ樹脂系接着剤
を用いることが好ましい。硬化温度が200〜232℃
の範囲から外れると錫層の適度な合金化(粒状錫部の上
層側に金属錫が残留する程度の合金化)が達成されな
い。また、PETフィルムを熱融着させる場合にも20
0〜232℃の範囲で熱融着処理を行なうことが好まし
い。また、良好な色調を得るためにPETフィルムおよ
び/または接着剤に白色顔料等の顔料を添加することが
できる。ただし、50wt%を超えるような過剰の顔料
の添加はラミネート密着性を損なうため好ましくない。
【0031】図1及び図2は本発明の溶接缶用ラミネー
ト鋼板の皮膜構造を模式的に示したもので、1は鋼板、
2は粒状錫部のうち上層側の金属錫、3は同じく下層側
の錫−鉄合金、4は化成処理層を構成する金属クロム
層、5は同じくクロム水和酸化物層である。また、図1
において6はラミネートフィルム層を構成するフィルム
層、7は接着剤層であり、図2において8はフィルムを
熱融着して形成されたラミネートフィルム層である。ま
た、図3は本発明の溶接缶用ラミネート鋼板の粒状錫層
の断面(ラミネートフィルムを除去した状態での断面)
を観察した電子顕微鏡拡大写真である。これら図面及び
写真に示されるように、本発明の溶接缶用ラミネート鋼
板は鋼板面に粒状錫部が分散(離散)して分布した皮膜
構造を有し、また、粒状錫部は溶錫処理を施すことなく
形成されたものであるため、殆どの粒状錫部は上面が比
較的平らで且つ周縁が比較的切り立った形状を有してい
る。
【0032】本発明のラミネート鋼板は、例えばフェノ
ールスルホン酸:10〜40g/l(硫酸換算)、2価
錫イオン濃度15〜40g/l残部が水および不可避的
不純物からなるめっき浴中において、鋼板を10〜50
A/dm2電流密度でカソード電解処理することにより
錫めっきを行い、次いで溶錫処理を施すことなく、化成
処理及びラミネートを順次施すことにより得ることがで
きる。化成処理は、例えば浴組成をCrO3:15〜4
0g/l、H2SO4:0.01〜0.5g/l、電流密
度を20〜40A/dm2とし、クロメート付着量に応
じて電解時間及び電解パターンを調整して行われる。
【0033】
【実施例】冷延鋼板を電解アルカリ脱脂、水洗、電解酸
洗、水洗後、下記(A)に示す条件[1]〜[5]のいずれか
で電気錫めっきを施し、次いで下記の(B)に示す条件
で化成処理を施した後、通常の塗油を施して試験に供し
た。なお、錫めっきの前処理は通常の缶用鋼板の電気錫
めっきラインの処理条件に準じて行ない、また、錫めっ
き浴はいずれも流速2m/sec、浴温45℃とした。
【0034】(A) 電気錫めっき条件 条件[1] ・めっき浴組成;フェノールスルホン酸:15g/l
(硫酸換算)、2価錫イオン濃度:30g/l ・電流密度:15〜30A/dm2 ・電解時間は錫めっきの付着形態に応じて調整した。 条件[2] ・めっき浴組成;メタンスルホン酸:30g/l(硫酸
換算)、2価錫イオン濃度:200g/l ・電流密度:30〜60A/dm2 ・電解時間は錫めっきの付着形態に応じて調整した。
【0035】条件[3] ・めっき浴組成;フェノールスルホン酸:30g/l
(硫酸換算)、2価錫イオン濃度:35g/l、エトキ
シ化ナフトールスルホン酸:5g/l ・電流密度:15〜30A/dm2 ・電解時間はめっき付着量に応じて調整した。 ・金属錫が均一になるように錫めっき層を調製した。 条件[4] ・錫めっき前にNiめっき等の不活性処理を実施した。 ・めっき浴組成;フェノールスルホン酸:30g/l
(硫酸換算)、2価錫イオン濃度:35g/l、エトキ
シ化ナフトールスルホン酸:5g/l ・電流密度:15〜30A/dm2 ・電解時間はめっき付着量に応じて調整した。 ・電解後に溶錫処理を行い、島状の錫層と錫−鉄合金層
が混在しためっき表面となるように錫めっき層を調製し
た。
【0036】(B) 化成処理条件 ・浴温:45℃ ・浴組成:CrO3:20g/l、H2SO4:0.20
g/l ・電流密度:10〜30A/dm2、 ・電解時間はクロメート付着量に応じて調整した。
【0037】製造された表面処理鋼板を切断後、所定形
状にスリット加工して缶胴用ブランクを作成し、下記
(C)に示す条件[1]〜[4]でラミネートまたは塗装を施
した。この後、所定のブランキングを行い、高速溶接、
溶接部補修およびネックイン加工、さらにフランジ加工
を実施した。 (C) 有機被覆(ラミネートまたは塗装)条件 条件[1] 厚さ12μmの二軸延伸PETフィルムの片面に2〜4
g/m2の熱硬化型エポキシ樹脂系の接着剤を塗布し、
140℃以下の温度で加熱乾燥した。前記フィルムを2
10℃に予熱された表面処理鋼板に接着剤層を介して貼
り合わせ、加圧ロールを通して熱圧着した。その際、缶
胴ブランクの溶接継ぎ目部に該当する部分にラミネート
避け部を設けた。
【0038】条件[2] 厚さ25μmで鋼板と接着される面にイソフタル酸を1
0〜25モル%共重合してある二軸延伸PETフィルム
(鋼板に接着される面がイソフタル酸を10〜25モル
%共重合してあるPETフィルムによって構成された2
層フィルム)を、230℃に予熱された表面処理鋼板に
貼り合わせ、加圧ロールを通して熱圧着し、水冷した。
その際、缶胴ブランクの溶接継ぎ目部に該当する部分に
ラミネート避け部を設けた。 条件[3] 厚さ25μmで鋼板と接着される面にイソフタル酸を3
モル%共重合してある二軸延伸PETフィルムを、23
0℃に予熱された表面処理鋼板に貼り合わせ、加圧ロー
ルを通して熱圧着し、水冷した。その際、缶胴ブランク
の溶接継ぎ目部に該当する部分にラミネート避け部を設
けた。 条件[4] 通常の缶塗装に使用されるエポキシフェノール系の塗料
を表面処理鋼板に塗装し、208℃×10分間の焼付処
理を施し、焼付け後の膜厚が5μmの塗膜を形成させ
た。
【0039】高速溶接はスードロニック社製のワイヤシ
ーム溶接機FBB5600を使用し、ワイヤー供給速度
80m/minの条件で行った。得られた供試材につい
て以下の特性を評価した。その結果を各鋼板の皮膜構成
とともに表1〜表9に示す。 (1) 高速溶接性 溶接電流の設定値を変えて溶接を行い、十分な溶接強度
が得られる最小電流設定値と散りや孔あき等の溶接欠陥
が目立ちはじめる最大電流値との間の適正電流設定範囲
を調べ、実用性及び操業の可否を評価した。その評価基
準は以下の通りである。 ○:実用可能(合格) △:適正電流設定範囲がわずかであり実用不能(不合
格) ×:適正電流設定範囲が存在しない(不合格)
【0040】(2) ラミネート密着性及び塗料密着性 ネックイン加工を施した加工部に対して、1.5%食塩
水、130℃、30分間のレトルト処理を行い、レトル
ト後の加工部のフィルムまたは塗膜の剥離の有無を観察
した。その評価基準は以下の通りである。 ○:剥離無し(合格) ×:剥離あり(不合格) (3) 耐錫剥離性 溶接機で100缶連続製缶した後、Zバーへの金属粉の
付着の有無および缶への金属粉の付着の有無を評価し
た。その評価基準は以下の通りである。 ○:Zバー及び缶ともに金属粉の付着は軽微(合格) ×:缶への金属粉の付着あり(不合格)
【0041】(4) 耐食性 ラミネートまたは塗装後溶接前の表面処理鋼板のラミネ
ート避け部または塗装避け部に補修塗装を行った後、カ
ッターで下地に達する傷を入れ、38℃、3.5%食塩
水への浸漬、水洗処理を行った後、30℃相対湿度90
%で1週間暴露し、錆の発生状況を評価した。その評価
基準は以下の通りである。 ○:錆発生無し(合格) ×:錆発生あり(不合格) (5) 色調 既存の薄めっきぶりきに20μm厚さの白色顔料入りフ
ィルムをラミネートした鋼板表面の明度(L値)と比較
して、ラミネートまたは塗装後のL値の低下が20%以
内に納まるか否かで評価した。その評価基準は以下の通
りである。 ○:20%未満(合格) ×:20%以上(不合格)
【0042】なお、本実施例では粒状錫部の厚さは皮膜
断面方向からの透過電子顕微鏡による観察により測定し
た。この際、断面試料の作成用の装置としては Dupont-
Sorvall MT6000 型ウルトラミクロトームを使用し、樹
脂包埋した供試材を同装置に固定した Diatome 社製ダ
イヤモンドナイフで供試材断面方向に超薄切化して観察
用試料とした。試料断面の観察用の透過電子顕微鏡とし
ては日本電子(株)製 200CX を用い、観察時の加速電圧
は200kVとした。粒状錫部の上層側の金属錫と下層
側の錫−鉄合金との識別には電子回折を用いた。また、
粒状錫部の面積と粒状錫部による被覆面積率及び粒状錫
部で被覆されていない鋼板面の面積率は走査型電子顕微
鏡による観察により測定した。観察用の走査型電子顕微
鏡としては日本電子(株)製 JSM-840Fを用い、観察時の
加速電圧は15kVとした。
【0043】表1〜表9において比較例1〜12は粒状
錫部または化成処理層に関するいずれかの条件が本発明
範囲から外れているため、高速溶接性、ラミネート密着
性、耐錫剥離性、耐食性または色調のうちのいずれかの
特性が劣っている。また、比較例14は粒状錫部を溶錫
処理を施すことなく形成したものであるが、その錫層は
均一な厚さでのものあるためラミネート密着性が劣って
いる。また、比較例15は粒状錫層を溶錫処理により形
成したものであるためラミネート密着性が劣っている。
比較例16〜19は島状(若しくは不連続状)の金属錫
層を有する既存の代表的な溶接缶ラミネート鋼板であ
る。これら比較例のうち、比較例18と比較例19は錫
層及び化成処理層の構成を同一とした上で、前者にはP
ETフィルムをラミネートし、後者には従来使用されて
いるエポキシフェノール系塗料による塗膜を形成したも
のであるが、両者を比較するとラミネートと塗膜とは密
着性に関して異なる挙動を示すことが判る。
【0044】本発明例5〜7に示すように、ラミネート
フィルムが共重合PETフィルムの場合には熱融着によ
る接着でも良好なラミネート密着性を示す。これに対
し、実施例1〜4に示すようにホモPETまたは低重合
度のPETフィルムをラミネートする場合は接着剤を介
して接着することが必要である。また、比較例13に示
すように本発明条件を満足する粒状錫部及び化成処理層
を有する場合でも、熱融着によりラミネートされるPE
Tフィルムが低重合度のフィルムであると十分なラミネ
ート密着性は得られない。また、比較例16、比較例1
7に示す従来のラミネート鋼板では、共重合PETフィ
ルムを熱融着した場合や接着剤を介して接着した場合
に、ネックイン加工の加工率が6%程度では良好なラミ
ネート密着性が得られるが、加工率が15%を超えるよ
うな厳しいネックイン加工では十分なラミネート密着性
が得られない。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
【表3】
【0048】
【表4】
【0049】
【表5】
【0050】
【表6】
【0051】
【表7】
【0052】
【表8】
【0053】
【表9】
【0054】
【発明の効果】以上述べた本発明の溶接缶用ラミネート
鋼板によれば、鋼板の板厚に拘りなく優れた高速溶接性
が得られるととももに、加工率15%以上のネックイン
加工にも十分に耐えるラミネート密着性を有し、しかも
良好な耐食性、耐錫剥離性及び色調を有し、また特別な
工程を経ることなく安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の溶接缶用ラミネート鋼板の皮膜断面の
一例を模式的に示す説明図
【図2】本発明の溶接缶用ラミネート鋼板の皮膜断面の
他の例を模式的に示す説明図
【図3】本発明の溶接缶用ラミネート鋼板の粒状錫部の
粒構造の断面を示す電子顕微鏡拡大写真
【符号の説明】
1…鋼板、2…粒状錫部の上層側を構成する金属錫、3
…粒状錫部の下層側を構成する錫−鉄合金、4…金属ク
ロム層、5…クロム水和酸化物層、6…フィルム層、7
…接着剤層、8…ラミネートフィルム層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 奥出 進也 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (72)発明者 野呂 寿人 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C23C 28/00 C25D 5/26 B32B 15/08

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鋼板の少なくとも片面に、溶錫処理を施
    すことなく形成され且つ鋼板面に分散状に形成された粒
    状錫部を有し、該粒状錫部の上部及び該粒状錫部に被覆
    されていない鋼板面に、金属クロム層とその上層のクロ
    ム水和酸化物層とからなる化成処理層を有し、さらに該
    化成処理層の上部に該化成処理層の少なくとも一部を覆
    うラミネートフィルム層を有するラミネート鋼板であっ
    て、前記粒状錫部は下層側が錫−鉄合金で且つ上層側が
    金属錫で構成され、該粒状錫部のうちの90%以上の個
    数の各粒状錫部は、最大厚み部の厚さが0.8μm以
    下、上層側を構成する金属錫の最大厚み部の厚さが0.
    2〜0.7μmであり、これらの最大厚み部の厚さを満
    足する粒状錫部の50%分離平均粒径が0.3μm以上
    1.5μm未満で、且つ前記最大厚み部の厚さを満足す
    る粒状錫部による鋼板面の被覆面積率が10%以上であ
    り、前記粒状錫部に被覆されていない鋼板面の面積率が
    60%以上であり、前記化成処理層は、前記金属クロム
    層のクロム付着量が5mg/m2以上、前記クロム水和
    酸化物層のクロム付着量が金属クロム換算で5mg/m
    2以上15mg/m2未満、金属クロム層とクロム水和酸
    化物層のクロム付着量の合計が金属クロム換算で10〜
    30mg/m2である、耐食性、溶接性及びラミネート
    密着性に優れた溶接缶用ラミネート鋼板。
  2. 【請求項2】 粒状錫部の下層側を構成する錫−鉄合金
    の厚さが0.01μm以上である請求項1に記載の耐食
    性、溶接性及びラミネート密着性に優れた溶接缶用ラミ
    ネート鋼板。
  3. 【請求項3】 金属クロム層のクロム付着量が10mg
    /m2以上である、請求項1または2に記載の耐食性、
    溶接性及びラミネート密着性に優れた溶接缶用ラミネー
    ト鋼板。
  4. 【請求項4】 ラミネートフィルム層が、下層側から接
    着剤層及び二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィル
    ム層を有する請求項1、2または3に記載の耐食性、溶
    接性及びラミネート密着性に優れた溶接缶用ラミネート
    鋼板。
  5. 【請求項5】 接着剤層を構成する接着剤が熱硬化型エ
    ポキシ樹脂系接着剤である請求項4に記載の耐食性、溶
    接性及びラミネート密着性に優れた溶接缶用ラミネート
    鋼板。
  6. 【請求項6】 ラミネートフィルム層が、少なくとも鋼
    板と接着する面にイソフタル酸を共重合した1層または
    2層以上の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィル
    ムからなる請求項1、2または3に記載の耐食性、溶接
    性及びラミネート密着性に優れた溶接缶用ラミネート鋼
    板。
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