JPH09209187A - 耐食性、溶接性及びラミネート密着性に優れたラミネート溶接缶用表面処理鋼板 - Google Patents

耐食性、溶接性及びラミネート密着性に優れたラミネート溶接缶用表面処理鋼板

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JPH09209187A
JPH09209187A JP4417396A JP4417396A JPH09209187A JP H09209187 A JPH09209187 A JP H09209187A JP 4417396 A JP4417396 A JP 4417396A JP 4417396 A JP4417396 A JP 4417396A JP H09209187 A JPH09209187 A JP H09209187A
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tin
chromium
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JP4417396A
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Mikiyuki Ichiba
幹之 市場
Hiroshi Kubo
啓 久保
Yoshinori Yomura
吉則 余村
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JFE Engineering Corp
Original Assignee
NKK Corp
Nippon Kokan Ltd
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    • C23COATING METALLIC MATERIAL; COATING MATERIAL WITH METALLIC MATERIAL; CHEMICAL SURFACE TREATMENT; DIFFUSION TREATMENT OF METALLIC MATERIAL; COATING BY VACUUM EVAPORATION, BY SPUTTERING, BY ION IMPLANTATION OR BY CHEMICAL VAPOUR DEPOSITION, IN GENERAL; INHIBITING CORROSION OF METALLIC MATERIAL OR INCRUSTATION IN GENERAL
    • C23CCOATING METALLIC MATERIAL; COATING MATERIAL WITH METALLIC MATERIAL; SURFACE TREATMENT OF METALLIC MATERIAL BY DIFFUSION INTO THE SURFACE, BY CHEMICAL CONVERSION OR SUBSTITUTION; COATING BY VACUUM EVAPORATION, BY SPUTTERING, BY ION IMPLANTATION OR BY CHEMICAL VAPOUR DEPOSITION, IN GENERAL
    • C23C28/00Coating for obtaining at least two superposed coatings either by methods not provided for in a single one of groups C23C2/00 - C23C26/00 or by combinations of methods provided for in subclasses C23C and C25C or C25D

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ラミネート密着性、高速溶接性及び耐食性に
優れ且つ比較的安価に製造することができるラミネート
溶接缶用表面処理鋼板を提供する。 【解決手段】 鋼板面に溶錫処理を施すことなく形成さ
れ且つ粒状金属錫部と残部の平坦な金属錫部とが混在し
た金属錫層を有し、その上層に所定付着量の金属Cr層と
Cr水和酸化物層を有する表面処理鋼板であって、前記金
属錫層は、粒状金属錫部のうちの90%以上の個数の各金
属錫部が、最大厚み部の厚さが板厚0.19mm以上の鋼板
では0.2〜0.8μm、板厚0.19mm未満の鋼板では0.3〜
0.8μmであり、且つ板上部から観察したときの粒の面
積が0.2〜3.0μm2であり、この最大厚み部の厚さと粒
の面積を満足する粒状金属錫部による鋼板面被覆面積率
が10%以上であり、平坦な金属錫部は厚さが0.01〜0.04
μmで且つ鋼板面の被覆面積率が60%以上である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、各種の食品や飲料等の
充填保存に適したラミネート溶接缶の材料として用いら
れる表面処理鋼板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、各種の食品や飲料に使用される缶
は、缶内外面の耐食性と外面の美観を確保する必要から
エポキシフェノール系塗料等の塗装を施し使用されてき
た。しかし、近年塗装工程で排出される有機溶媒による
環境汚染の問題や内容物に対する耐食性向上のニーズ等
から、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のフィ
ルムをラミネートした缶が開発され急速に普及しつつあ
る。ところで、飲料等に使用されるラミネート缶の中で
も、溶接により缶胴部を成形する3ピース溶接缶に用い
られる素材(めっき鋼板)には溶接性やラミネート密着
性等の複数の性能が要求される。また、最近では缶に対
するコストダウンニーズも強く、これらに使用される素
材にも薄ゲージ化及び蓋使用量の低減を目的としたネッ
クイン加工等の強加工への対応が要求されはじめてい
る。
【0003】しかし、薄ゲージ材は溶接時の発熱量の変
動を十分に小さくしないと過剰発熱による溶接欠陥を生
じ易いという難点があり、素材の薄ゲージ化を図るには
素材自体の溶接性を従来に増して向上させる必要があ
る。また、蓋使用量の低減化に必要な強加工を行うため
には、素材加工部においてラミネートフィルムの高い密
着性が要求されるため、素材とラミネートフィルムとの
密着性を向上させる必要がある。しかし、素材に対する
密着性に関しては、ラミネートフィルムは従来から使用
されてきたエポキシフェノール系塗料とは異なる挙動を
示す。これは、ラミネートフィルムは塗装皮膜に較べて
膜厚が厚いために高い内部応力を有し、しかも接着部の
有機樹脂成分も塗料の場合とは全く異なるためである。
したがって、ラミネートに適した素材側の最適皮膜構造
も、従来から使用されてきたエポキシフェノール系塗料
の場合とは異ったものとなる。一般にラミネートフィル
ムの密着性はエポキシフェノール系塗料に比較して劣る
ため、表面処理鋼板には高い密着性が要求される。
【0004】従来、溶接缶用表面処理鋼板として下記の
ような種類のものが知られている。 (a) クロムめっき層とクロム水和酸化物層により鋼板
を被覆した鋼板であって、クロムめっき層の形態を粒状
若しくは不連続状のものとしたり、或いは電気的絶縁層
であるクロム水和酸化物層を薄層化することにより、溶
接時の電気抵抗を減少させて溶接性を改善した表面処理
鋼板(特開昭62−20529号公報、特開昭62−9
9497号公報、特開昭63−35797号公報、特開
昭62−63678号公報、特開昭61−281899
号公報、特開昭61−213399号公報) (b) クロムめっき層とクロム水和酸化物層とからなる
化成処理層の下層側に、溶錫処理を経て形成された、錫
−鉄合金層または錫−鉄−ニッケル合金層とその上層の
連続状(平板状)または不連続状(若しくは島状)の金
属錫層とからなるめっき層を設けることで溶接性を改善
した表面処理鋼板(特公昭61−36595号公報、特
公平1−54437号公報)
【0005】(c) 鋼板面に溶錫処理を行うことなく粒
状の金属錫層を不連続状に設け、その上層にクロムめっ
き層及びクロム水和酸化物層を設けることにより塗装焼
付け時の錫の合金化を抑制し、溶接性を改善した表面処
理鋼板(特開昭60−67677号公報) (d) 鋼板面にニッケルめっき、鉄−ニッケル合金めっ
き、錫−鉄合金めっきのいずれかを施し、その上層に溶
錫処理を行なうことなく粒状の金属錫層を不連続状に設
け、さらにその上層にクロムめっき層及びクロム水和酸
化物層を設けることにより溶接性、潤滑性、塗料密着性
を改善した表面処理鋼板(特開平4−128387号公
報、特開平4−247897号公報、特開平6−293
996号公報)
【0006】しかしながら、上記(a)〜(d)の表面処理鋼
板をラミネート溶接缶に適用した場合、それぞれ以下の
ような問題がある。まず、(a)の表面処理鋼板は、優れ
たラミネート密着性は得られるものの高速溶接性に劣
り、近年の生産性の高い高速製缶には適さない。(b)の
表面処理鋼板は、化成処理層のクロム付着量が30mg
/m2を超えるような場合に高速溶接性が不十分となる
欠点がある。また、化成処理層のクロム付着量が30m
g/m2未満の場合であっても、化成処理層の下層側が
連続した金属錫層である場合には金属錫層の表層に生成
する錫酸化物がラミネート密着性を阻害するため、ネッ
クイン加工において缶蓋部付近の周長を缶胴周長に対し
て15%以上縮小するような強加工を実施する場合には
十分なラミネート密着性が得られない。また、化成処理
層の下層が不連続状の金属錫層である場合には、金属錫
層以外の部分には溶錫処理により生成した高融点の錫−
鉄合金層または錫−鉄−ニッケル合金層が厚く存在す
る。したがって金属錫層以外の部分では高融点の厚い合
金層の上層に化成処理層が形成された皮膜構造となるた
め、良好なラミネート密着性は得られるものの、化成処
理層のクロム付着量が少ない場合でも高速溶接性は劣っ
たものとなる。一方、高速溶接性を改善するために金属
錫被覆率を高くした場合にはラミネート密着性が劣るこ
とになる。したがって、この被覆構造では高速溶接性と
高いラミネート密着性を両立させることは難しい。
【0007】(c)の表面処理鋼板は、溶錫処理を行うこ
となく形成した粒状の金属錫層を有する点で溶接性及び
ラミネート密着性には有利であると考えられるが、開示
された皮膜構造ではラミネート溶接缶に適用した場合の
優れた高速溶接性及びラミネート密着性を得ることはで
きず、特に素材を薄ゲージ化した場合の高速溶接性及び
強加工時のラミネート密着性に劣っている。さらに、粒
状の金属錫層以外の部分では鋼板面に直に化成処理層を
設けた皮膜構造となるため、板端面等の耐食性に劣ると
いう欠点もある。(d)の表面処理鋼板は、溶錫処理を行
うことなく形成した粒状の金属錫層を有する点でラミネ
ート密着性には有利であると考えられるが、開示された
皮膜構造では強加工時のラミネート密着性が十分ではな
い。また、この表面処理鋼板は鋼板面を合金層で被覆す
るため板端面等の耐錆性には優れていると考えられる
が、溶接搬送時等における粒状金属錫の剥離等の問題に
ついての検討は行われておらず、また、化成処理層のク
ロム付着量が非常に多いため優れた高速溶接性は期待で
きない。また、高価なニッケルをめっきする表面処理鋼
板は、めっき工程が多くなり且つ皮膜コストも高くなる
という欠点がある。
【0008】以上のように現状では缶用素材の薄ゲージ
化及び蓋使用量の低減化を目的とした強加工への対応が
可能な、優れたラミネート密着性、高速溶接性及び耐食
性を兼ね備えたラミネート溶接缶用表面処理鋼板は知ら
れていない。したがって本発明の目的は、上記の諸特性
を兼ね備え、しかも比較的安価に製造することができる
ラミネート溶接缶用表面処理鋼板を提供することにあ
る。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、ラミネー
ト密着性、高速溶接性及び耐食性に優れ、缶用素材の薄
ゲージ化および蓋使用量の低コスト化を目的とした強加
工への対応が可能なラミネート溶接缶用表面処理鋼板の
皮膜構造について検討を行い、その結果、特定の錫めっ
き付着構造及び被覆率とクロメート皮膜との組み合わせ
により、ラミネート溶接缶用素材としての高速溶接性を
確保しつつ、ラミネート密着性と耐食性を著しく改善で
きることを見い出した。本発明はこのような知見に基づ
きなされたもので、その特徴とする構成は以下の通りで
ある。
【0010】[1] 板厚0.19mm以上の鋼板の少な
くとも片面に、溶錫処理を施すことなく形成され、且つ
粒状に突起した金属錫部と残部の平坦な金属錫部とが混
在した金属錫層を有し、その上部に金属クロム層とその
上層のクロム水和酸化物層とからなる化成処理層を有す
る表面処理鋼板であって、前記金属錫層は、前記粒状に
突起した金属錫部のうちの90%以上の個数の各金属錫
部が、最大厚み部の厚さが0.2〜0.8μmで且つ板
上部から観察したときの粒の面積が0.2〜3.0μm
2であり、この最大厚み部の厚さと粒の面積を満足する
粒状に突起した金属錫部による鋼板面の被覆面積率が1
0%以上であり、前記平坦な金属錫部は厚さが0.01
〜0.04μmで且つ鋼板面の被覆面積率が60%以上
であり、前記化成処理層は、前記金属クロム層のクロム
付着量が5mg/m2以上、前記クロム水和酸化物層の
クロム付着量が金属クロム換算で5mg/m2以上15
mg/m2未満、金属クロム層とクロム水和酸化物層の
クロム付着量の合計が金属クロム換算で10〜30mg
/m2である、耐食性、溶接性及びラミネート密着性に
優れたラミネート溶接缶用表面処理鋼板。
【0011】[2] 板厚0.19mm未満の鋼板の少な
くとも片面に、溶錫処理を施すことなく形成され、且つ
粒状に突起した金属錫部と残部の平坦な金属錫部とが混
在した金属錫層を有し、その上部に金属クロム層とその
上層のクロム水和酸化物層とからなる化成処理層を有す
る表面処理鋼板であって、前記金属錫層は、前記粒状に
突起した金属錫部のうちの90%以上の個数の各金属錫
部が、最大厚み部の厚さが0.3〜0.8μmで且つ板
上部から観察したときの粒の面積が0.2〜3.0μm
2であり、この最大厚み部の厚さと粒の面積を満足する
粒状に突起した金属錫部による鋼板面の被覆面積率が1
0%以上であり、前記平坦な金属錫部は厚さが0.01
〜0.04μmで且つ鋼板面の被覆面積率が60%以上
であり、前記化成処理層は、前記金属クロム層のクロム
付着量が5mg/m2以上、前記クロム水和酸化物層の
クロム付着量が金属クロム換算で5mg/m2以上15
mg/m2未満、金属クロム層とクロム水和酸化物層の
クロム付着量の合計が金属クロム換算で10〜30mg
/m2である、耐食性、溶接性及びラミネート密着性に
優れたラミネート溶接缶用表面処理鋼板。 [3] 上記[1]または[2]の表面処理鋼板において、金属
クロム層のクロム付着量が10mg/m2以上である、
耐食性、溶接性及びラミネート密着性に優れたラミネー
ト溶接缶用表面処理鋼板。
【0012】
【発明の実施の形態】飲料缶や食缶用途の溶接缶用素材
には高速溶接性が求められる。しかし、溶接速度がワイ
ヤー供給速度で80m/分以上になると単位面積当りの
入熱量が高くなるため、散りと呼ばれる溶融金属の噴出
による溶融欠陥を生じ易くなる。特に、板厚0.19m
m未満の薄ゲージ材の場合には、入熱変動による過剰発
熱に起因した散りや孔あき等の溶接欠陥を生じ易い。こ
のような問題に対して従来では、高速溶接性の確保には
素材と溶接電極との接触抵抗の低減化が重要であること
から、低融点金属である金属錫の存在が有効であるとの
前提の下で、金属錫量により必要な溶接性を確保するよ
うな対応が採られてきた。
【0013】しかし、ラミネート溶接缶の場合には、金
属錫量が多くなると錫の被覆面積が増大するため十分な
ラミネート強度が得られなくなるという問題がある。し
たがって、従来採用されている合金層−金属錫層或いは
鋼板面−金属錫層からなるモザイク構造(粒状若しくは
不連続の金属錫層を有する錫めっき付着構造)の適用だ
けでは、ラミネート溶接缶用表面処理鋼板、とりわけ板
厚が0.19mmを下回るような薄ゲージ材に要求され
る高度の高速溶接性とラミネート密着性を両立させるこ
とはできない。
【0014】このような現状を踏まえ、本発明者らは金
属錫の一部が粒状に突起した金属錫層(以下、粒状に突
起した金属錫を「粒状金属錫」という)を有する錫めっ
き付着構造を前提として、缶蓋部付近の缶周長を缶胴の
周長よりも15%以上縮小するようなネックイン加工
(以下、この縮小率を「加工率」という)に耐え得るラ
ミネート密着性と板厚0.19mm未満を含めた各種板
厚の鋼板の高速溶接性とが両立可能な皮膜構造について
調査、検討を行った。その結果判明した事実を以下に述
べる。
【0015】(a) 溶接性に関しては、飲料缶や食缶用
途のポリエチレンテレフタレート(PET)を主成分と
するラミネートフィルムを接着した場合、接着の際の加
熱により形成される錫−鉄合金層の厚さは約0.05μ
m程度であり、また溶接補修による加熱工程を含めたと
しても製缶工程で形成される錫−鉄合金層の厚さは0.
06〜0.1μm程度であることが判った。一方、粒状
金属錫が形成された錫めっき層を有する表面処理鋼板に
おいて、接触抵抗を低下させることで溶接性を向上させ
るためには、ラミネート焼付け後の粒状金属錫を一定厚
さ以上にすることが必要であること、具体的にはラミネ
ート焼付け後の粒状金属錫の厚さを板厚0.19mm以
上の鋼板の場合で0.1μm以上、また板厚0.19m
m未満の鋼板の場合で0.2μm以上とすることによ
り、電極の加圧により金属錫を押し延ばすことによって
素材と電極との接触抵抗を著しく低下させ得ることが判
った。したがって、上述した製缶工程で形成される錫−
鉄合金層の厚さを考慮した場合、良好な高速溶接性を得
るために必要なラミネート前の粒状金属錫の厚さ(最大
厚み部の厚さ)は、板厚0.19mm以上の鋼板では
0.2μm以上、板厚0.19mm未満の鋼板では0.
3μm以上となる。
【0016】(b) さらに、上記のような厚さを有する
粒状金属錫の個々の粒の面積(板上部から観察したとき
の粒の面積)と鋼板面でのトータルの被覆面積率が高速
溶接性に大きな影響を与えることが判った。具体的に
は、上記のような厚さを有する粒状金属錫部の個々の粒
の面積が大き過ぎ(3.0μm2超)、また粒状金属錫
部の分散性が不十分であると、粒状金属錫による溶接性
改善効果が十分に得られず、また、上記のような厚さを
有する粒状金属錫部による鋼板面の被覆面積率が10%
未満になると粒状金属錫部以外の部分による溶接性への
悪影響が著しくなり、いずれの場合も高速溶接性は低下
する。
【0017】(c) ラミネート密着性の観点からは、粒
状金属錫部以外の平坦な金属錫部についてはラミネート
焼付け後の段階で全て錫−鉄合金層とする必要があり、
この平坦な金属錫部をラミネート焼付け後に全量合金化
して金属錫を残留させないことが優れたラミネート密着
性を得るために不可欠であることが判った。上述したよ
うにラミネートの際の加熱により生成する錫−鉄合金層
の厚さは約0.05μm程度であり、このような錫−鉄
合金層が生成する際の金属錫層の厚さは約0.04μm
である。したがって、ラミネート前における平坦な金属
錫部の厚さは、ラミネート焼付けによって錫の全量の合
金化が可能な0.04μm以下にする必要がある。
【0018】一方、高速溶接性の観点からは、錫−鉄合
金層は上述のように高速溶接性を悪化させるが、ラミネ
ート焼付けにより生成する錫−鉄合金層は、溶錫処理の
ような高温加熱で生成する高融点の錫−鉄合金層に較べ
て高速溶接性に対する悪影響が相対的に小さく、ラミネ
ート焼付け後における平坦な部分の錫−鉄合金層の厚さ
が0.05μm以下であれば高速溶接性への悪影響はな
いことが判った。また、優れたラミネート密着性を得る
ためには、上記の平坦な金属錫部により形成される錫−
鉄合金層による鋼板の被覆面積率を十分に確保する必要
があり、具体的には上記厚さの平坦な金属錫部による鋼
板の被覆面積率を60%以上とする必要がある。
【0019】(d) 化成処理層のクロム付着量は高速溶
接性に大きな影響を与え、絶縁層であるクロム水和酸化
物層のクロム付着量が金属クロム換算で15mg/m2
以下であって、且つ化成処理層全体のクロム付着量が金
属クロム換算で30mg/m2以下であることが高速溶
接性の確保に不可欠である。 (e) 飲料缶等の溶接では缶内への異物の混入を避ける
必要があるが、粒状金属錫部の厚さ(最大厚み部の厚
さ)が0.8μmを超えると、溶接機直前に配置された
Zバーなどの板搬送系との摩擦による錫層の剥離が著し
くなり、剥離した錫粉が缶内に混入するという問題を生
じ、缶材料としての使用が事実上不可能になる。
【0020】(f) 化成処理層を構成する金属クロム層
は、下層側の金属錫の酸化を抑制するとともに、クロム
水和酸化物層と金属錫層または錫−鉄合金層との密着力
を高めるなどラミネート密着性に大きな影響を与える。
十分なラミネート密着性(現在一般的に使用されている
薄めっきぶりきで得られているのと同程度の密着性)を
確保するには金属クロム層のクロム付着量を5mg/m
2以上とする必要ある。また、加工率が15%以上とな
るようなネックイン加工において十分なラミネート密着
性を確保するには、金属クロム層のクロム付着量は10
mg/m2以上とすることが必要である。 (g) 上述したようにラミネート密着性は、金属錫の表
面に不可避的に生成する錫酸化物により低下する。した
がって粒状金属錫を形成させる方法として、錫酸化物の
生成量の高いリフロー処理等の溶錫処理を実施すること
は避ける必要がある。
【0021】(h) 缶用素材では耐食性も重要な性能で
あり、耐食性には化成処理層と金属錫層の被覆状態が大
きく影響する。粒状金属錫部以外の平坦部に錫層または
錫−鉄合金層が全く存在せず、鋼板素地面が直に化成処
理層(例えば、金属クロム換算で30mg/m2程度の
クロム付着量の化成処理層)で覆われているような皮膜
構造では、板貯蔵時の端面部や溶接補修部等の耐食性が
劣る。したがって、粒状金属錫部以外の平坦部分には金
属錫層(ラミネート焼付け後には錫−鉄合金層)を形成
させる必要がある。但し、粒状金属錫部以外の平坦部に
金属錫層を形成させる場合でも、その厚さが0.01μ
m未満では十分な耐食性向上効果が得られない。また、
化成処理層については、そのクロム付着量の合計が金属
クロム換算で10mg/m2未満では十分な耐食性が得
られず、またクロム水和酸化物層のクロム付着量が金属
クロム換算で5mg/m2未満でも十分な耐食性が得ら
れない。
【0022】(i) 素材の表面外観、特に板表面の明る
さはラミネート後の缶外観の色調に影響するため缶素材
として重要な要素であり、粒状金属錫部の個々の粒の面
積(板上部から観察したときの粒の面積)が0.2μm
2未満では、上述したような溶接性確保に必要な粒状金
属錫の厚さ(最大厚み部の厚さ)を確保した場合に光の
吸収現象が生じ、板全体が暗くなるため好ましくない。 (j) 上述した粒状金属錫部の厚さ及び各粒の面積に関
する条件は、形成された粒状金属錫部の大多数が満足す
る必要があり、具体的には全体の90%以上の個数の粒
状金属錫部が、粒状金属錫部の厚さ及び各粒の面積に関
する条件をともに満足する必要がある。
【0023】以上述べた(a)〜(j)の事項に基づく本発明
の限定理由を以下に示す。本発明のラミネート溶接缶用
表面処理鋼板は、鋼板の少なくとも片面に、溶錫処理を
施すことなく形成され、且つ粒状金属錫部と残部の平坦
な金属錫部とが混在した金属錫層、換言すれば粒状金属
錫が平坦な金属錫層に分散して分布した金属錫層を有す
る(図1及び図2を参照)。錫めっきされる鋼板面は、
通常脱脂及び酸洗処理がなされており、金属錫層はこの
ような鋼板素地面に形成される。
【0024】前記金属錫層を構成する粒状金属錫部は、
板厚が0.19mm以上の鋼板では全体の90%以上の
個数の各金属錫部が、最大厚み部の厚さが0.2〜0.
8μmで且つ板上部から観察したときの粒の面積が0.
2〜3.0μm2であり、また、板厚が0.19mm未
満の鋼板では全体の90%以上の個数の各金属錫部が、
最大厚み部の厚さが0.3〜0.8μmで且つ板上部か
ら観察したときの粒の面積が0.2〜3.0μm2であ
る。また、このような最大厚み部の厚さと粒の面積につ
いての条件を満足する粒状金属錫部による鋼板面の被覆
面積率は10%以上である。なお、粒状金属錫部及び平
坦な金属錫部の厚さとは、それぞれの鋼板面から各金属
層部上面までの厚さを指す(図1参照)。
【0025】粒状金属錫部の最大厚み部の厚さが上記の
各下限値(板厚0.19mm以上の鋼板で0.2μm、
板厚0.19mm未満の鋼板で0.3μm)未満では粒
状金属錫部により電極との接触抵抗を十分に低減させる
ことができず、満足できる高速溶接性が得られない。一
方、粒状金属錫部の最大厚み部の厚さが0.8μmを超
えると溶接搬送時等において金属錫の剥離を生じてしま
う。また、粒状金属錫部の粒の面積(板上部から観察し
たときの粒の面積)が0.2μm2未満では缶用素材に
要求される色調が劣り、一方、3.0μm2を超えると
粒状金属錫が平坦化するとともに、粒状金属錫の分散性
も不十分となるため、溶接電極で粒金属錫が押し延ばさ
れることによる接触抵抗の低減効果が期待できなくな
り、高速溶接性が劣る。
【0026】また、粒状金属錫部の厚さと各粒の面積に
関する上記条件は、形成された粒状金属錫部のうちの9
0%以上の個数の粒状金属錫部が両条件をともに満足す
る必要があり、両条件を満足する粒状金属錫部の個数が
全体の90%を下回ると、優れた高速溶接性が得られな
くなる。また、溶接搬送時等における粒状金属錫の剥離
性の観点からは、全体の99%以上の個数の粒状金属錫
部が粒状金属錫の厚さに関する上記条件を満足すること
が望ましい。さらに、粒状金属錫部の厚さと各粒の面積
に関する上記の両条件を満足する粒状金属錫部による鋼
板面の被覆面積率が10%未満では、粒状金属錫を利用
した高速溶接性の向上効果が十分に得られない。
【0027】また、金属錫層を構成する粒状金属錫部以
外の平坦な金属錫部は、厚さが0.01〜0.04μm
で且つ鋼板面の被覆面積率が60%以上である。平坦な
金属錫部の厚さが0.01μm未満では、ラミネート焼
付け後の錫−鉄合金層による十分な耐食性が得られず、
一方、0.04μmを超えるとラミネート焼付け後にお
いても金属錫が残存し、ラミネート密着性が劣る。ま
た、このような金属錫の厚さを有する平坦な金属錫部に
よる鋼板面の被覆面積率が60%未満でも十分なラミネ
ート密着性が得られない。粒状金属錫部と残部の平坦な
金属錫部とが混在した金属錫層は、ラミネート密着性を
阻害する錫酸化物の生成を抑制するという観点から、溶
錫処理を施すことなく形成させる必要がある。
【0028】前記金属錫層の上部には、金属クロム層と
その上層のクロム水和酸化物層とからなる化成処理層が
形成される。前記金属クロム層のクロム付着量が5mg
/m2未満では、金属錫の酸化を抑制する効果及びクロ
ム水和酸化物層と金属錫層または錫−鉄合金層との密着
力を向上させる効果が十分に得られず、良好なラミネー
ト密着性が得られない。このため金属クロム層のクロム
付着量は5mg/m2以上とする。また、加工率が15
%を超えるようなネックイン加工において十分なラミネ
ート密着性を確保するには、金属クロム層のクロム付着
量は10mg/m2以上とすることが好ましい。なお、
金属クロム層のクロム付着量の上限値は、化成処理層全
体のクロム付着量(金属クロム換算)の上限値とクロム
水和酸化物層のクロム付着量(金属クロム換算)の下限
値とから実質的に25mg/m2となる。
【0029】また、クロム水和酸化物層のクロム付着量
が金属クロム換算で5mg/m2未満では十分な耐食性
が得られず、一方、15mg/m2以上では高速溶接性
が劣化する。このためクロム水和酸化物層のクロム付着
量は金属クロム換算で5mg/m2以上15mg/m2
満とする。前記金属クロム層とクロム水和酸化物層のク
ロム付着量の合計が金属クロム換算で10mg/m2
満では十分な耐食性が得られず、一方、30mg/m2
を超えると高速溶接性が劣化する。このため金属クロム
層とクロム水和酸化物層のクロム付着量の合計は金属ク
ロム換算で10〜30mg/m2とする。
【0030】図1は本発明のラミネート溶接缶用表面処
理鋼板の皮膜構造を模式的に示したもので、1は鋼板、
2は金属錫層を構成する粒状金属錫部、3は粒状金属錫
部以外の平坦な金属錫部、4は化成処理層を構成する金
属クロム層、5は同じくクロム水和酸化物層である。ま
た、図2は本発明のラミネート溶接缶用表面処理鋼板の
製造過程において鋼板面に形成された粒状金属錫の断面
を観察した電子顕微鏡拡大写真である。これら図面及び
写真に示されるように、本発明のラミネート溶接缶用表
面処理鋼板の金属錫層は平坦な金属錫層に粒状に突起し
た金属錫が分散して分布した皮膜構造を有し、また、金
属錫層は溶錫処理を施すことなく形成されたものである
ため、殆どの粒状金属錫は上面が比較的平らで且つ周縁
が比較的切り立った形状を有している。また、図3は本
発明の表面処理鋼板に形成された金属錫層の厚さ方向に
おける成分分析をオージェ電子分光とアルゴンイオンス
パッタリングを組み合わせた深さ方向分析を用いて測定
したものである。
【0031】先に述べたように本発明の表面処理鋼板
は、錫めっき後に溶錫処理を施すことなく粒状に突起し
た金属錫部と残部の平坦な金属錫部とが混在した金属錫
層を形成させるものであり、このような金属錫層は、例
えばフェノールスルホン酸:10〜40g/l(硫酸換
算)、2価錫イオン濃度:15〜40g/l、水酸化フ
ェノール(例えば、カテコール、レゾルシンハイドロキ
ノン等):0.5〜30g/l、残部が水および不可避
的不純物からなるめっき浴中において、鋼板を10〜5
0Aの電流密度でカソード電解処理することにより得る
ことができる。また、この際には錫めっきの付着形態に
応じて電解時間及び電解パターンが調整される。また、
金属錫層の上部に形成される化成処理層は、例えば浴組
成をCrO3:15〜40g/l、H2SO4:0.2〜
0.5g/l、電流密度を20〜40A/dm2とし、
クロメート付着量に応じて電解時間及び電解パターンを
調整することにより得られる。
【0032】
【実施例】冷延鋼板を電解アルカリ脱脂、水洗、電解酸
洗、水洗後、下記(A)に示す条件[1]〜[4]のいずれか
で電気錫めっきを施し、次いで下記の(B)に示す条件
で化成処理を施した後、通常の塗油を施して試験に供し
た。なお、錫めっきの前処理は通常の缶用鋼板の電気錫
めっきラインの処理条件に準じて行ない、また、錫めっ
き浴はいずれも流速2m/sec、浴温45℃とした。 (A) 電気錫めっき条件 条件[1] ・めっき浴組成;フェノールスルホン酸:20g/l
(硫酸換算)、2価錫イオン濃度:35g/l、カテコ
ール:5g/l ・電流密度:15〜30A/dm2 ・電解時間及び電解パターンは錫めっきの付着形態に応
じて調整した。 条件[2] ・めっき浴組成;メタンスルホン酸:40g/l(硫酸
換算)、2価錫イオン濃度:40g/l、カテコール:
2g/l ・電流密度:20〜40A/dm2 ・電解時間及び電解パターンは錫めっきの付着形態に応
じて調整した。
【0033】条件[3] ・めっき浴組成;フェノールスルホン酸:30g/l
(硫酸換算)、2価錫イオン濃度:35g/l、エトキ
シ化ナフトールスルホン酸:5g/l ・電流密度:15〜30A/dm2 ・電解時間はめっき付着量に応じて調整した。 ・金属錫が均一になるように錫めっき層を調製した。 条件[4] ・めっき浴組成;フェノールスルホン酸:30g/l
(硫酸換算)、2価錫イオン濃度:35g/l、エトキ
シ化ナフトールスルホン酸:5g/l ・電流密度:15〜30A/dm2 ・電解時間はめっき付着量に応じて調整した。 ・電解後に溶錫処理を行い、島状の金属錫と錫−鉄合金
層が混在しためっき表面となるように錫めっき層を調製
した。
【0034】(B) 化成処理条件 ・浴温:45℃ ・浴組成;CrO3:20g/l、H2SO4:0.20
g/l ・電流密度:10〜30A/dm2、 ・電解時間及び電解パターンはクロメート付着量に応じ
て調整した。
【0035】製造された表面処理鋼板を切断後、所定形
状にスリット加工して缶胴用ブランクを作成し、以下の
手順でラミネートを施した。厚さ12μmポリエチレン
テレフタレートフィルムの片面に2〜4g/m2の接着
剤を塗布し、140℃以下の温度で加熱乾燥した。前記
フィルムを215℃に予熱された各表面処理鋼板に接着
剤層を介して貼り合わせ、加圧ロールを通して熱圧着し
た。その際、缶胴ブランクの溶接継ぎ目部に該当する部
分にラミネート避け部を設けた。この後、所定のブラン
キングを行い、高速溶接、溶接部補修およびネックイン
加工、さらにフランジ加工を実施した。
【0036】また、比較のためラミネートの代わりに通
常の缶塗装に使用されるエポキシフェノール系の塗料を
表面処理鋼板に塗装し、208℃×10分間の焼付処理
を施し、焼付け後の膜厚が5μmの塗膜を有する供試材
を作成した。高速溶接はスードロニック社製のワイヤシ
ーム溶接機FBB5600を使用し、ワイヤー供給速度
70m/minの条件で行った。得られた供試材につい
て以下の特性を評価した。その結果を各表面処理鋼板の
皮膜構成とともに表1〜表4に示す。
【0037】(1) 高速溶接性 溶接電流の設定値を変えて溶接を行い、十分な溶接強度
が得られる最小電流設定値と散りや孔あき等の溶接欠陥
が目立ちはじめる最大電流値との間の適正電流設定範囲
を調べ、実用性及び操業の可否を評価した。その評価基
準は以下の通りである。 ○:実用可能(合格) △:適正電流設定範囲がわずかであり実用不能(不合
格) ×:適正電流設定範囲が存在しない(不合格)
【0038】(2) ラミネート密着性及び塗料密着性 缶胴の周長に対して加工率6〜20%のネックイン加工
を施した加工部に対して、1.5%食塩水、130℃、
30分間のレトルト処理を行い、レトルト後の加工部の
フィルムまたは塗膜の剥離の有無を観察した。その評価
基準は以下の通りである。 ○:剥離無し(合格) ×:剥離あり(不合格) (3) 耐錫剥離性 溶接機で100缶連続製缶した後、Zバーへの金属粉の
付着の有無および缶への金属粉の付着の有無を評価し
た。その評価基準は以下の通りである。 ○:Zバー及び缶ともに金属粉の付着は軽微(合格) ×:缶への金属粉の付着あり(不合格)
【0039】(4) 耐食性 ラミネートまたは塗装後溶接前の表面処理鋼板のラミネ
ート避け部または塗装避け部に補修塗装を行った後、カ
ッターで下地に達する傷を入れ、38℃、3.5%食塩
水への浸漬、水洗処理を行った後、30℃相対湿度90
%で1週間暴露し、錆の発生状況を評価した。その評価
基準は以下の通りである。 ○:錆発生無し(合格) ×:錆発生あり(不合格) (5) 色調 既存の薄めっきぶりきに20μm厚さの白色顔料入りフ
ィルムをラミネートした鋼板表面の明度(L値)と比較
して、ラミネートまたは塗装後のL値の低下が20%以
内に納まるか否かで評価した。その評価基準は以下の通
りである。 ○:20%未満(合格) ×:20%以上(不合格)
【0040】なお、本実施例では金属錫層を構成する粒
状金属錫部の厚さは皮膜断面方向からの透過電子顕微鏡
による観察により測定した。この際、断面試料の作成用
の装置としては Dupont-Sorvall MT6000 型ウルトラミ
クロトームを使用し、樹脂包埋した供試材を同装置に固
定した Diatome 社製ダイヤモンドナイフで供試材断面
方向に超薄切化して観察用試料とした。試料断面の観察
用の透過電子顕微鏡としては日本電子(株)製 200CX を
用い、観察時の加速電圧は200kVとした。また、平
坦な金属錫部の厚さは皮膜断面方向からの透過電子顕微
鏡による観察では測定が困難であるため、その測定には
オージェ電子分光とアルゴンイオンスパッタリングを組
み合わせた深さ方向分析を用いた。この測定用の装置と
してはPerkin-Elmer 社製のSAM-600を用い、以下のよう
な条件で行なった。
【0041】すなわち、スパッタ時間を横軸として錫お
よび鉄のオージェ電子強度の変化を測定し、スパッタレ
ートと元素間の相対感度因子から深さ方向の組成変化を
求めた。測定時の電子線の加速電圧は5kV、試料吸収
電流は0.15μAとした。また、この条件での電子線
のビーム径は0.5μm以下である。スパッタレートは
既知の膜厚の錫めっき皮膜を用いて求めた。アルゴンイ
オン銃の加速電圧、エミッション電流をそれぞれ3k
V、2.5μAとした時の錫のスパッタレートは8nm
/secであった。相対感度因子にはアルバック・ファ
イ社の求めた値を用いた。また、粒状金属錫部の粒の面
積と粒状金属錫部及び平坦な金属錫部の各被覆面積率は
走査型電子顕微鏡による観察により測定した。観察用の
走査型電子顕微鏡としては日本電子(株)製 JSM-840Fを
用い、観察時の加速電圧は15kVとした。
【0042】表1〜表4において比較例1〜比較例13
は、金属錫層または化成処理層に関するいずれかの条件
が本発明範囲から外れているため、高速溶接性、ラミネ
ート密着性、耐錫剥離性、耐食性または色調のうちのい
ずれかの特性が劣っている。また、比較例15は金属錫
層を溶錫処理を施すことなく形成したものであるが、そ
の金属錫層は均一な厚さでのものあるためラミネート密
着性が劣っている。また、比較例16は粒状金属錫層を
溶錫処理により形成したものであるためラミネート密着
性が劣っている。
【0043】比較例16〜比較例19は島状(若しくは
不連続状)の金属錫層を有する既存の代表的な溶接缶表
面処理鋼板である。これら比較例のうち、比較例17及
び比較例18は錫めっき層及び化成処理層の構成を同一
とした上で、前者にはPETフィルムをラミネートし、
後者には従来使用されているエポキシフェノール系塗料
による塗膜を形成したものであるが、両者を比較すると
ラミネートと塗膜とは密着性に関して異なる挙動を示す
ことが判る。
【0044】また、比較例16、比較例18及び比較例
19は錫めっき層及び化成処理層の構成を同一とした上
で、ラミネート後のネックイン加工を比較例16では加
工率20%で、比較例18では加工率12%で、さらに
比較例19では加工率6%でそれぞれ実施したものであ
るが、このような既存の溶接缶表面処理鋼板において
も、加工率が6%程度のネックイン加工では十分なラミ
ネート密着性が得られるが、加工率が10%を超えるよ
うな厳しいネックイン加工では十分なラミネート密着性
が得られないことが判る。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
【表3】
【0048】
【表4】
【0049】
【発明の効果】以上述べた本発明のラミネート溶接缶用
表面処理鋼板によれば、鋼板の板厚に拘りなく優れた高
速溶接性が得られるととももに、加工率15%以上のネ
ックイン加工にも十分に耐えるラミネート密着性を有
し、しかも良好な耐食性、耐錫剥離性及び色調を有し、
また特別な工程を経ることなく安価に製造することがで
きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のラミネート溶接缶用表面処理鋼板の金
属錫層及び化成処理層からなる皮膜の断面を模式的に示
す説明図
【図2】本発明のラミネート溶接缶用表面処理鋼板の製
造過程において鋼板面に形成された粒状金属錫の粒構造
の断面を示す電子顕微鏡拡大写真
【図3】本発明のラミネート溶接缶用表面処理鋼板につ
いて、金属錫層を構成する粒状金属錫部および平坦な金
属錫錫部の厚さ方向における成分分析結果を示すグラフ
【符号の説明】
1…鋼板、2…粒状金属錫部、3…平坦な金属錫部、4
…金属クロム層、5…クロム水和酸化物層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 // B29C 63/06 B29C 63/06

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 板厚0.19mm以上の鋼板の少なくと
    も片面に、溶錫処理を施すことなく形成され、且つ粒状
    に突起した金属錫部と残部の平坦な金属錫部とが混在し
    た金属錫層を有し、その上部に金属クロム層とその上層
    のクロム水和酸化物層とからなる化成処理層を有する表
    面処理鋼板であって、前記金属錫層は、前記粒状に突起
    した金属錫部のうちの90%以上の個数の各金属錫部
    が、最大厚み部の厚さが0.2〜0.8μmで且つ板上
    部から観察したときの粒の面積が0.2〜3.0μm2
    であり、この最大厚み部の厚さと粒の面積を満足する粒
    状に突起した金属錫部による鋼板面の被覆面積率が10
    %以上であり、前記平坦な金属錫部は厚さが0.01〜
    0.04μmで且つ鋼板面の被覆面積率が60%以上で
    あり、前記化成処理層は、前記金属クロム層のクロム付
    着量が5mg/m2以上、前記クロム水和酸化物層のク
    ロム付着量が金属クロム換算で5mg/m2以上15m
    g/m2未満、金属クロム層とクロム水和酸化物層のク
    ロム付着量の合計が金属クロム換算で10〜30mg/
    2である、耐食性、溶接性及びラミネート密着性に優
    れたラミネート溶接缶用表面処理鋼板。
  2. 【請求項2】 板厚0.19mm未満の鋼板の少なくと
    も片面に、溶錫処理を施すことなく形成され、且つ粒状
    に突起した金属錫部と残部の平坦な金属錫部とが混在し
    た金属錫層を有し、その上部に金属クロム層とその上層
    のクロム水和酸化物層とからなる化成処理層を有する表
    面処理鋼板であって、前記金属錫層は、前記粒状に突起
    した金属錫部のうちの90%以上の個数の各金属錫部
    が、最大厚み部の厚さが0.3〜0.8μmで且つ板上
    部から観察したときの粒の面積が0.2〜3.0μm2
    であり、この最大厚み部の厚さと粒の面積を満足する粒
    状に突起した金属錫部による鋼板面の被覆面積率が10
    %以上であり、前記平坦な金属錫部は厚さが0.01〜
    0.04μmで且つ鋼板面の被覆面積率が60%以上で
    あり、前記化成処理層は、前記金属クロム層のクロム付
    着量が5mg/m2以上、前記クロム水和酸化物層のク
    ロム付着量が金属クロム換算で5mg/m2以上15m
    g/m2未満、金属クロム層とクロム水和酸化物層のク
    ロム付着量の合計が金属クロム換算で10〜30mg/
    2である、耐食性、溶接性及びラミネート密着性に優
    れたラミネート溶接缶用表面処理鋼板。
  3. 【請求項3】 金属クロム層のクロム付着量が10mg
    /m2以上である、請求項1または2に記載の耐食性、
    溶接性及びラミネート密着性に優れたラミネート溶接缶
    用表面処理鋼板。
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